Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 タイの産業連関表を用いた CO2 原単位の推計 Estimation of CO2 intensities using an input-output table of Thailand 森 泉 由 恵 *・ 本 藤 祐 樹 Yue Moriizumi ** Hiroki Hondo (原稿受付日 2007 年 12 月 10 日,受理日 2008 年 4 月 4 日) Abstract The objective of this study is to develop a database for the evaluation of environmental impacts in Thailand. We estimate sectoral CO2 intensities based on input-output analysis with energy balance table in Thailand. The results show that the electricity sector is the largest source of CO2 emissions whereas the cement sector has the highest CO2 intensity. As a case study, we perform an analysis of CO2 emission structure of agricultural sectors by using the developed database. This analysis finds that the indirect CO2 emissions from the agricultural services sector and the overseas production of import goods, particularly chemical fertilizers, are significant on the production of agricultural goods in Thailand. The developed database can be applied for various analyses such as the assessment of macro-level environmental impacts as well as the Life Cycle Assessment (LCA) of products, services, technologies and systems. 1.はじめに 国は,第 1 位の輸入相手国,第 2 位の輸出相手国である(2006 年)11).また,2007 年 11 月には日タイ経済連携協定が発 グローバリゼーションの進展によって世界経済の緊密度 効され,協力関係の一層の強化が予想される.このような は高まり,自国の生産,消費活動が他国の環境に及ぼす影 背景から,本研究では,タイを対象として,環境影響評価 響は無視できないものとなっている.アジアにおいては地 の基礎となる産業連関表部門別の CO2 原単位の推計を行っ 域統合化の動きも同時進行しており,貿易等の域内活動に た.今後,バイオマスを始めとする再生可能エネルギーの より引き起こされる環境負荷への対策はますます重要とな 活用など,さまざまな分野でわが国の技術協力や CDM を る.今後,地球温暖化をはじめとする環境問題に対して, 含めた投資が求められる.本研究の推計結果は,その効果 アジア全体で連携して取り組んで行くことが不可欠である. や影響の評価に資することができる. 環境問題に対して実効性のある対策を講じるためには, 現状を的確に把握し,対策の定量的評価をライフサイクル 2.燃原料消費量の推計 の視点から行うことが肝要であり,科学的かつ客観的なデ ータの整備が求められる.近年,産業連関表を利用したラ 2.1 推計の基本的枠組み イフサイクル分析/評価(LCA)が活発に行われており,特 産業連関表(以下,IO 表)の部門別 CO2 原単位を推計す に我が国においては,その土台となる産業連関表をベース るためには,IO 表の部門ごとに燃原料消費量を推計する必 とした環境負荷データの蓄積が進んでいる 1~5) 要がある.本章は,推計対象とした燃原料種および推計方 .産業連関 法について述べる. 表による環境負荷原単位は,部門数が限られているため個 別製品の評価には対応しきれないなどの制約はあるが,国 タイでは,1975 年から 5 年毎に IO 表が公表されている 内での波及効果を全て網羅できる点,マクロ評価ができる (変則的に 1998 年版も公表).部門数は,行,列ともに 180 6~ 部門である.本研究では,最新の IO 表である 2000 年版を 9) .しかし,こうした環境影響評価のための基礎的なデータ 使用した 12).一方,燃原料消費量については,物量単位と は,アジア諸国においては未整備な状況にある. 熱量単位の 2 種類のエネルギーバランス表(以下,EB 表) 点から非常に有効であり,様々な分析に利用されている アジア諸国の中でも,タイとわが国は深い相互依存関係 が作成され,毎年, 「Thailand Energy Situation」 (以下,TES) にある.わが国の対タイ直接投資はアジアでは中国に次ぐ 第 2 位(2006 年末投資残高)であり の中で公表されている 10) ,タイにとってわが 13) .本研究では,EB 表の業種別の 燃原料消費量を主たる基礎データとして,IO 表の部門別燃 原料消費量を推計した. * 2.2 推計対象とした燃原料種 横浜国立大学大学院環境情報研究院 〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7 e-mail [email protected] ** 横浜国立大学大学院環境情報研究院 〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7 e-mail [email protected] 表 1 にタイEB表が対象とする燃原料種と対応するIO部 門を示す.本研究では,1.無煙炭から 19.電力までの 19 種 の燃原料を推計の対象とした i .また,EB表には計上され 1 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 表 1 EB 表燃原料種と IO 部門との対応 EB表燃原料種 1.無煙炭 2.瀝青炭 3.褐炭 4.コークス 5.ブリケット他 6.原油 7.コンデンセート 8.天然ガス(生産) 9.天然ガス(販売) 10.NGL 11.LPG 12.レギュラーガソリン 13.プレミアムガソリン 14.ジェット燃料 15.灯油 16.高速ディーゼル 17.低速ディーセル 18.重油 19.電力 (20.燃料木材) (21.木炭) (22.籾殻) (23.バガス) (3)EB 表燃原料消費量の配分 (2)で決定された対応に従って,各燃原料の各部門への産 IO表部門 30.石炭・褐炭 [輸入品] 30.石炭・褐炭 [輸入品] 30.石炭・褐炭 [国産品] 94.その他石炭石油製品 [輸入品] 30.石炭・褐炭 [輸入品] 31.原油・天然ガス 31.原油・天然ガス 31.原油・天然ガス 136.パイプライン 31.原油・天然ガス 93.石油精製・ガス分離,136.パイプライン 93.石油精製・ガス分離 93.石油精製・ガス分離 93.石油精製・ガス分離 93.石油精製・ガス分離 [国産品] 93.石油精製・ガス分離,94.他石炭石油製品 93.石油精製・ガス分離 [国産品] 93.石油精製・ガス分離,94.他石炭石油製品 135.電力 (26.木炭・燃料木材) (26.木炭・燃料木材) (49.精米) (55.製糖) 出額比率を求め,その比率を EB 表の燃原料消費量に乗じ ることで,各 IO 部門の燃原料消費量を推計した.例えば, 「30.石炭・褐炭」部門から「1.米」~「29.内水面漁業」部 門への産出構造より無煙炭の 29 部門への産出額比率を求 め,その比率を〈A1.農林水産業〉の無煙炭消費量に乗じる ことで,IO 部門別無煙炭消費量を推計した. ただし,一部の燃原料種に関しては,〈A3.製造業〉をさ らに詳細に分類した 9 業種における消費量が TES に掲載さ れている.したがって,これらの燃原料種については,こ の TES の各種製造業の消費量に,産出額比率を乗じること で,各 IO 部門の消費量を推計した. なお,1 つの IO 供給部門が複数の燃原料種を産出してい る場合(例えば,「93.石油精製・ガス分離」部門の重油, ガソリン等の産出)は,各 IO 需要部門への産出額比率は全 ての燃原料種の間で等しいと仮定した.また,1 つの燃原 料が複数の IO 部門の生産物である場合(例えば, 「93.石油 精製・ガス分離」および「136.パイプライン」部門から生 産される LPG)は,対応する全ての部門を合計した産出額 ていないが,石油化学工業における石油系炭化水素ガス消 比率を用いた. 費量と,骨材以外の用途に用いられる石灰石消費量につい (1)自動車輸送用燃原料,(2)発電用燃原料,(3)エネルギー ても推計を行った. 転換用燃原料は,燃原料消費量推計における重要性が高い 2.3 燃原料消費量の推計方法 ため特殊な扱いをした.以下にその推計方法を述べる. (1)EB 表業種-IO 部門対応 2.4 特殊な推計手法を用いた燃原料 EB 表 11 業種における最終エネルギー消費量を,IO 表 180 (1)自動車輸送用燃料 レギュラー・プレミアムガソリンの 98%,高速ディーゼ 部門に配分するため,EB 表の業種と IO 部門の対応を決定 ルの 76%が自動車輸送により消費される.自動車輸送によ した(表 2).例えば, 〈農林水産業〉には,IO 表の「1.米」 部門から「29.内水面漁業」部門が対応する.対応は,IO 表 2 EB 表業種と IO 部門との対応 表の部門定義に基づくものであり,燃原料種に関わらず共 通である.なお,タイ EB 表では, 〈B.民生セクター〉が業 EB表業種(最終エネルギー消費) IO表部門 A.産業セクター A1.農林水産業 1.米~29.内水面漁業 A2.鉱業 30.石炭・褐炭~41.その他鉱業 A3.製造業 42.屠殺~92.その他化学製品 95.ゴムシート・ブロック~134.その他製造業 A4.建設業 138.住宅建築~144.その他建設 B.民生セクター B1.民生家庭 民間消費支出 B2.民生業務 137.水道~148.ホテル他宿泊所 158.倉庫~180.分類不明 C.運輸セクター C1.自動車輸送 150.バス・タクシー~152.陸上輸送サービス 157.その他輸送サービス C2.マイカー輸送 民間消費支出 C3.鉄道輸送 149.鉄道輸送 C4.航空輸送 156.航空輸送 C5.海運輸送 153.外洋輸送~155.水運輸送サービス D.非エネルギー消費 EB表業種(エネルギー転換) IO表部門 E..石油精製業 93.石油精製・ガス分離, 94.その他石炭石油製品 F.天然ガス処理業 136.パイプライン G.電気事業 135.電力 H.その他転換業 26.木炭・燃料木材 務用と家庭用に分類されていない.よって,別途 TES に記 載されている民生用燃原料種別消費量(輸送を除く)を用 いて, 〈B.民生セクター〉を〈B1.民生家庭〉と〈B2.民生業 務〉とに分割した.同様に,〈C.自動車輸送〉を〈C1.自動 車輸送〉と〈C2.マイカー輸送〉とに分割した. (2)EB 表燃原料種-IO 部門対応 表 1 は,前述のとおり,EB表燃原料種とIO表の原燃料供 給部門 ii との対応を示すものである.EB表の燃原料消費量 (例えば,農林水産業の無煙炭消費量)は,(1)で対応が決 定されたIO部門(「1.米」~「29.内水面漁業」の 29 部門) における無煙炭消費量の合計値である.そのため,無煙炭 の供給部門(「30.石炭・褐炭」部門)の産出構造を利用し て,無煙炭消費量を需要部門としてのIO表 29 部門に分配す る必要がある.よって,EB表の各燃原料を産出するIO部門 を検討し,その対応を決定した. 2 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 る燃料消費量は,(ⅰ)輸送部門における事業用輸送,(ⅱ) ③「93.石油精製・ガス分離」と「94.その他石炭・石油製品」 輸送部門以外の部門による自家輸送,(ⅲ)民間消費支出部 部門から各部門への産出額(X’)より a’と b’を差し引 門によるマイカー輸送に分類される.(ⅰ) (ⅱ)が〈C1.自動 いて,自動車輸送用ガソリン,高速ディーゼル購入額(図 車輸送〉に,(ⅲ)が〈C2.マイカー輸送〉に含まれる.一方, 中 c’)を求めた.得られた購入額(c’)をもとに産出額比 IO 表では,(ⅰ)は各輸送部門に,(ⅱ)は自家輸送を行った 率を算出し,産出額比率を〈C1.自動車輸送〉 〈C2.マイカー それぞれの部門に,(ⅲ)は「民間消費支出」部門に計上さ 輸送〉でのガソリン,高速ディーゼル消費量に乗じて,部 れている.本研究では,各 IO 部門の活動にともなうエネル 門別の自動車輸送用の燃料消費量(図中 c)を推計した. ギー消費量を正確に推計することに主眼を置き,自家輸送 推計の結果,自動車輸送用燃料の消費比率は,(ⅰ)輸送 用の仮設部門は設置せず,自家輸送に伴う燃料消費量はそ 部門による消費が 41%,(ⅱ)自家輸送による消費が 30%, れを行った各部門に計上することとした. (ⅲ)マイカー輸送用による消費が 29%となった. 表 1 に示した通り,ガソリン,高速ディーゼルの生産部 (2)発電用燃原料 タイにおける発電事業は,電力公社(Electricity Generating 門は「93.石油精製・ガス分離」, 「94.その他石炭・石油製品」 部門である.この 2 部門からはガソリン,高速ディーゼル Authority of Thailand , 以 下 , EGAT) , 独 立 発 電 事 業 者 以外にも多種の燃原料が生産されている.そのため,平均 (Independent Power Producer,以下,IPP),小規模発電事業 的な石油製品の産出構造を用いて各種の石炭・石油製品消 者(Small Power Producer,以下,SPP)により行われている iii . 費量を一律に推計すると,誤差が大きくなる可能性がある. 送電は,原則として全てEGATが行う.IPPは,発電した電 そこで,以下のような方法で,EB 表の〈C1.自動車輸送〉 力を全量EGATに売電する.SPPのEGATへの契約売電容量 および〈C2.マイカー輸送〉の燃料消費量を各 IO 部門へ配 は最大 60MW(場合によっては 90MW)で,同じ工業団地 分した(図 1). 内であれば余剰電力,蒸気を直接需要家に売ることが認め ① 各部門のコークス,LPG,灯油,ジェット燃料,低速デ られている.図 2 にタイの 2000 年の発電構成を示す. ィーゼル,重油消費量(図中 a),および,自動車輸送以外 EB 表に〈G. 電気事業〉による発電量として計上されて の目的のガソリン,高速ディーゼル消費量(図中 b)を推 いるのは,EGAT,IPP,SPP により発電され,EGAT によ 計する(基本的には 2.3 節で示した推計方法を利用). り送電された電力量(図中①)のみである.よって,本研 ② ①で得られた消費量 a,b に,タイの統計「Oil and 究では,発電電力量については,①EGAT 送電分のみを「135. 14) Thailand」 から得られる各燃原料の単価を掛け合わせて, 電力」部門に計上し,②SPP 自家消費分,③工業団地内消 コークス,LPG,灯油,ジェット燃料,低速ディーゼル, 費分をゼロと仮定した.これに対して,発電用の燃原料消 重油購入額(図中 a’),および自動車輸送以外の目的での 費量については,EGAT による送電分(図中①)は〈G. 電 ガソリン,高速ディーゼル購入額(図中 b’)を算出する. 気事業〉に,SPP による自家消費分(図中②)と工業団地 内消費分(図中③)は,自家発電を行った各製造業に計上 「石油精製・ガス分離」 部門産出額 X’ 「その他石炭・石油製品」 部門産出額 94 93 コークス購入額 されている.よって,〈G. 電気事業〉の燃料消費量は.全 LPG購入額 て「135.電力」部門に計上した.一方,②③のために消費 a’= a×単価 低速ディーゼル購入額 石油化学工業による自家発電用の石油系炭化水素ガス消費 重油購入額 量が記載されている.EB 表では,石油系炭化水素ガスによ ガソリン購入額(自動車輸送以外) 高速ディーゼル購入額(自動車輸送以外) 産出額 比率 部門別ガソリン・高速ディーゼル 消費量(自動車輸送用) する各 IO 部門に適切に計上されていることになる. また,タイの統計「Electric Power in Thailand」15)には, ジェット燃料購入額 ガソリン・高速ディーゼル購入額 (自動車輸送用) c’ された燃料は,明示的に発電燃料とは示されないが,対応 灯油購入額 b’= b×単価 SPP c’=X’-a’-b’ 10,148 GWh IPP EGAT 22,146 GWh 63,683 GWh =c ②SPP自家消費分 ガソリン・高速ディーゼル 消費量(EB表) ③工業団地内消費分 図 1 各 IO 部門における自動車輸送用燃料消費量の推計 ①EGAT送電分 (95,977GWh) 図 2 タイの発電構成(2000 年) 3 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 る発電量は①EGAT 送電分に含まれているが,発電のため 製・ガス分離」部門における原油の燃焼比率は 0.14,コン の燃原料消費量は計上されていない.本研究では,新たに デンセートはゼロ, 「136.パイプライン」部門における天然 「石油系炭化水素ガス」の項目を設け,その消費量を「135. ガス(生産)の燃焼比率は 0.18,天然ガス(販売)消費は 電力」部門に計上した. 1 となった. 他方,電力は発電(エネルギー転換)時に CO2 排出を伴 (3)エネルギー転換用燃原料 エネルギー転換業における燃原料消費量は,主に自家消 い,その利用時には CO2 を排出しない.よって, 「135.電力」 費と転換ロスである.推計では,以下のように消費量を計 部門における各発電用燃料消費の燃焼比率は 1 となり,全 上した. 部門における電力消費の燃焼比率はゼロとなる. ① 天然ガス(生産および販売)の自家消費は,天然ガスの (2)素材生産 処理や配送のための燃料消費として「136.パイプライン」 EB 表の〈D.非エネルギー消費〉には,素材生産の際の原 部門に計上した.自家消費量の合計は天然ガスの一次供給 料投入量が記載されている.非燃焼分の投入量を考慮した 量の 20%にのぼり,日本と比較して非常に大きな値となっ 結果,「86. 石油化学製品」部門における NGL の燃焼比率 ている.しかし,TES に自家消費と明記されていることか はゼロ,LPG は 0.79,「87.塗料」部門におけるコンデンセ ら,本推計では全量を「136.パイプライン」部門の自家消 ートの燃焼比率はゼロとなった. 費として計上することとした. 本研究では,石灰石起源のCO2 発生量を推計するため, ② EB 表には〈E.石油精製業〉の転換ロスとして 146ktoe 新たに「石灰石」の項目を設け,消費量を計上した.タイ (原油)が計上されている.しかし,TES には石油精製業 のDepartment of Mineral Resourcesによる鉱物資源の生産・ の転換ロスは 5,921ktoe であると明記されており,また, 消費に関する統計(以下,DMR統計 16))には,石灰石消費 EB 表においても〈E.石油精製業〉への燃料投入量と石油製 量 , 消 費額 ,単 価 が 「 Cement industry 」「 Industrial rock 品生産量との差は 5,921ktoe となっている.よって,本推計 construction」 「Other industries」の 3 分類で記載されている. では,5,921ktoe 全量を「93.石油精製・ガス分離」部門に計 DMR統計の石灰石消費額合計と,IO表「39.石灰石」部門 上した.なお,燃料種については不明であるため,原料で の産出額とはほぼ一致する.しかし, 「Cement industry」の ある原油を燃焼させたと仮定した. 消費額と, 「39.石灰石」部門から「102.セメント」部門への ③ 電力の自家消費分(所内動力分)と送電ロス分は,発電 産出額とは大きく乖離している.本研究では,以下の 2 つ にともなう消費量として「135.電力」部門に計上した. の理由により,DMR統計の「Cement industry」の値をセメ ント用の石灰石消費量, 「Industrial rock construction」の値を 3.直接 CO2 排出量の推計 骨材用の石灰石消費量とした.理由は,①タイIO表の「39. 石灰石」部門から「102.セメント」部門への産出額には, 3.1 燃焼比率 セメント用石灰石だけでなく骨材用石灰石も含まれている. 本章では,部門別 CO2 原単位推計の基礎となる部門別直 ②2000 年のタイにおけるセメント生産量(重量)を 1 とし 接 CO2 排出量の推計方法および推計結果を示す.部門別直 たとき,「Cement industry」の石灰石消費量(重量)は 0.8 接 CO2 排出量は,2 章で得られた部門別燃原料消費量に, となり,セメント製造時の石灰石投入量原単位として妥当 燃焼比率と CO2 排出係数を乗じることで求められる.以下, な値である.以上の理由により,DMR統計「Cement industry」 燃焼比率(3.1 節),CO2 排出係数(3.2 節),推計結果(3.3 の値を石灰石の消費量として「102.セメント」部門に計上 節)について述べる. した iv .また,「Other industries」の値は「39.石灰石」部門 燃焼比率は,燃原料消費量に占める燃料消費量の割合を の産出額比率を用いて「102.セメント」部門以外の各部門 示すものである.投入した燃原料を全て燃焼させる消費の に分配した.石灰石の燃焼比率は全部門で 1 とした. 場合には 1 となるが,原料として使用し燃焼を伴わない消 3.2 CO2 排出係数 費を含む場合には,0~1 の値となる.原料としての利用は, タイ政府は,「1996 年改訂版温室効果ガス目録のための (1)エネルギー転換,(2)素材生産の際に行われる. IPCC ガイドライン」17)にしたがって CO2 排出量を推計して (1)エネルギー転換 いる.よって,本推計でも同ガイドラインの CO2 排出係数 エネルギー転換部門で消費される原油と天然ガスは原料 を用いた. として用いられ,転換時には CO2 排出を伴わないので,そ 3.3 部門別直接 CO2 排出量の推計結果 れらの燃焼比率はゼロとなる.ただし,転換の際の自家消 部門別の燃原料消費量に,燃焼比率と CO2 排出係数を掛 費分と転換ロス分は,燃料消費として計上する必要がある. け合わせて部門別直接 CO2 排出量を推計した.その結果, これらを考慮して EB 表に基づき推計した結果, 「93.石油精 タイの 2000 年の直接 CO2 排出量は,2 億 650 万 t-CO2 と推 4 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 表 3 CO2 排出量推計値の比較 計された.推計値について,本研究と IEA(International Energy Agency) ,U.S.DOE(U.S. Department of Energy)のも のを比較した 18)19).表 3 に示すとおり,本研究の値が最も CO2排出量 [Mt-CO2] 大きく,IEA の値と U.S.DOE の値はほぼ等しい.本研究の 一次エネルギー供給量 [ktoe] 本研究 207 78,087 IEA U.S.DOE 159 161 72,148 64,353 値が IEA の値よりも大きい(約 4800 万 t-CO2)のは,主と して①石油精製時の転換ロスによる排出量が大きい(約 電力 セメント 石油精製 民間消費支出 道路貨物輸送 パイプライン 航空輸送 バス・タクシー 沿岸・海洋漁業 沿海・内水面輸送 石油化学製品 原油・天然ガス 基礎化学製品 農業サービス 外洋輸送 建設用土石製品 紙・板紙 卸売 非農業公共事業 非鉄金属 飲食店 織物 他金属加工製品 特殊産業機械 窯業製品・陶器 その他 1800 万 t-CO2),②天然ガス処理・配送にともなう自家消費 分を計上している(約 900 万 t-CO2),③石灰石起源の CO2 排出量を計上している(約 1900 万 t-CO2)ためである. また同様に,推計の基礎となる一次エネルギー消費量 v も本研究の値(TESによる数値)はIEAの値 20) よりも大き い(約 6,000ktoe).その要因は主に,①コンデンセート消 費量(約 7 割が非エネルギー使用,残りはエネルギー転換 用)を計上している(2,044ktoe),②天然ガス処理・配送に ともなう自家消費分を計上している(1,927ktoe),③水力発 電の一次エネルギー換算値が異なる(817ktoe)ためである. 一方で,石炭消費量や原油消費量,電力消費量などはほぼ 等しい.よって,推計値に差が生じたのは,2 つの統計の エネルギーバランス表の作成方法が異なることに起因する ものであり,推計方法を同じくすれば,大きな差は生じな いものと思われる.なお,U.S.DOE の一次エネルギー消費 量がIEAの値よりも小さいのは,バイオマスエネルギーの 消費量が計上されていないためである. 図 3 に IO 表の部門別 CO2 排出量を示す.「135.電力」部 石炭系燃料 天然ガス系燃料 石油系燃料 その他 0 門からの排出量が最も多く,全体の 29%を占める.「135. 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 CO2排出量 [1000t-CO2] 電力」部門の排出量の 55%は,天然ガスによる.2 番目に 図 3 部門別直接 CO2 排出量(2000 年) 排出量が多いのは「102.セメント」部門で,当該部門の CO2 排出量の 66%は石灰石起源,31%が石炭系燃料起源である. [I-Ad]型原単位,②輸入財生産にともなう海外での排出量も 「民間消費支出」部門は,石油系燃料による排出がほぼ 考慮した[I-A]型原単位である.ただし,海外での排出分は, 100%を占めるが,そのうちの 8 割以上が輸送用のガソリン, 輸入財をタイ国内での生産・技術構造のもとで生産したと ディーゼルによる排出である.その他, 「93.石油精製」 「136. の仮定に基づく数値である.以下に導出式を示す. パイプライン」部門等のエネルギー生産部門, 「151.道路貨 ①[I-Ad]型原単位 物輸送」部門をはじめとする輸送関連部門の排出が多い. ε = eT (I − A d )−1 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (1) 「その他」は,排出量が多い上位 25 部門を除いた残りの 156 部門の排出量を示すが, 「その他」の排出量は 1 割に満 ただし, eT は生産額あたりの直接 CO2 排出量 e j を要素と たない. するベクトル( T は転置の意味), A d は国産財のみの投入 係数 Adij を要素とする行列である. ②[I-A]型原単位 4.誘発 CO2 原単位の推計 ε = eT (I − A )−1 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ( 2) 4.1 誘発 CO2 原単位の推計方法 ただし, A は国産財のみの投入係数 Adij を要素とする行列 前章までに得られた部門別直接 CO2 排出量をもとに,各 A d と,輸入財を国産財であると仮定したときの投入係数 部門の誘発 CO2 原単位を推計した.これにより,最終需要 Amij を要素とする行列 Am とを足したものである. を満たす直接的な生産だけでなく,波及効果も含めた直接 4.2 誘発 CO2 原単位の推計結果 間接の生産に伴う CO2 排出量を求めることができる.推計 「102. 表 4 に誘発 CO2 原単位が大きい上位 10 部門を示す. では,以下の 2 種類の原単位を推計した.①タイ国内で生 セメント」部門は,生産額あたりの直接 CO2 排出量 e j が多 産された国産財生産にともなう排出量のみを考慮した いため,総排出量が最大の「135.電力」部門よりも原単位 5 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 表 4 CO2 原単位(上位 10 部門) 3 [ kg-CO2 / 10 Baht ] 直接原単位 セメント 450.8 電力 213.2 基礎化学製品 88.7 その他非金属製品 14.4 コンクリート・セメント製品 2.1 建設用土石製品 78.7 パイプライン 95.1 鉄鋼 18.7 航空輸送 68.1 道路貨物輸送 59.0 [I-Ad]型 ステムが急速に拡大している.「24.農業サービス」部門か らの CO2 排出は,主に農業機械用燃料消費に起因すると推 [I-A]型 502.9 256.0 160.5 156.0 154.7 137.7 133.1 123.6 118.9 98.7 494.4 248.0 103.1 138.3 139.0 122.5 130.0 103.9 109.5 83.2 察されるが,特に「2.メイズ」 「4.キャッサバ」 「6.豆類・ナ ッツ」部門においてその傾向が顕著である. 海外での CO2 排出量が大きいのは,「84.基礎化学製品」 部門である.当該部門は,肥料製造のための原料を生産し ている.タイでは,化学肥料の原料のほぼ全てを輸入に依 存している.Thai Central Chemical など大手肥料メーカー3 社を除く残りは中小企業であり,輸入した原料を使用目的 に応じた成分割合に配合するのみで,原料からの生産は行 わない. 「84.基礎化学製品」部門からの排出は, 「1.米」 「8. が大きくなった.「84.基礎化学製品」部門は,輸入財生産 果物」部門で特に大きい. にともなう海外での CO2 排出量が多いのが特徴である. なお, 「6.豆類・ナッツ」「11.オイルパーム」部門では, 「103.コンクリート・セメント製品」と「104.その他非金属 自部門およびその他部門からの排出量が大きいが,これら 製品」部門は,誘発原単位に比べて直接原単位が極めて小 は自家輸送,道路貨物輸送に起因するものである. さい.これは, 「102.セメント」部門からの間接的な排出が 多いことに起因する. 「105.鉄鋼」部門も同様に, 「135.電力」 5.おわりに 部門からの波及効果が大きい. 本研究では,タイの産業連関表の部門別 CO2 原単位の推 4.3 農業部門の CO2 排出構造の分析 計方法について述べるとともに,推計結果を提示した. 推計結果をもとに,タイ農業部門の CO2 排出構造の分析 3.3 節で述べたように,本研究と IEA など他の統計とでは を行った.タイにおける農業部門は,GDP に占める割合こ CO2 排出量の推計値に差があり,その主たる要因はエネル そ低下したものの,依然として地域経済の重要な基盤であ ギー転換業における燃料消費量の違いである.転換ロスや る.また,近年では食糧供給という基本的役割に加え,バ 配送ロス,エネルギー転換業による自家消費に関するタイ イオマス資源の有効活用による温暖化緩和への貢献が期待 統計の数値には疑問が残ったが,本研究では全てタイ政府 されている. による公式統計を基礎として推計を行うという方針のもと, 表 5 に農業部門の CO2 原単位を示す.表頭は農業部門(生 一定の仮定をおいて推計を行った.よって,本研究の CO2 産額が大きい上位 10 部門),表側は投入部門を示す. 「国内」 原単位の値は,若干大きく推計されている可能性があるこ 「海外」はそれぞれ,国内における排出量,海外における とを示唆するとともに,他の統計を利用するなど,さらに 排出量を表す.タイ農業部門の CO2 排出構造は,①「24. 正確な推計を行うことを今後の課題として明記しておきた 農業サービス」部門の排出量が大きいことと,②海外での い. 排出量が大きいことが特徴である. また,温暖化への影響を正確に評価するためには,CO2 「24.農業サービス」部門は,耕起,植付け,収穫といっ 以外の温室効果ガスに関するデータも必要となる.特に, た農作業を受託するほか,灌漑システムの運用などのサー タイでは農業や畜産業が盛んであるため,稲作における ビスを行う.タイでは,農家における労働力不足および農 CH4 排出量,畑作における施肥にともなう N2O 排出量,家 作業の機械化が進行しており,こうしたサービスの外注シ 表 5 農業部門の CO2 排出構造 米 果物 野菜 天然ゴム サトウキビ メイズ キャッサバ 他農作物 豆類・ナッツ オイルパーム [kg-CO2/1000Baht] 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 自部門 2.8 0.0 5.3 0.0 5.6 0.0 0.1 0.0 4.9 0.0 2.3 0.2 1.7 0.0 3.0 0.1 9.5 0.0 7.4 0.0 農業サービス 4.9 0.0 4.7 0.0 2.3 0.0 0.8 0.0 3.5 0.0 8.3 0.8 9.8 0.0 0.8 0.1 10.7 0.0 1.5 0.0 基礎化学製品 0.0 4.2 0.0 5.1 0.0 2.6 0.1 3.0 0.0 2.9 0.0 3.0 0.0 1.3 0.0 1.8 0.0 1.8 0.0 1.5 肥料・農薬 0.1 1.8 0.1 0.9 0.1 0.7 0.0 1.0 0.2 1.0 0.3 1.0 0.5 0.1 0.4 0.1 0.6 0.1 0.4 0.1 石油精製・ガス分離 1.3 0.5 1.8 0.6 1.5 0.4 0.3 0.2 1.7 0.4 1.8 0.6 2.0 0.3 1.1 0.4 3.2 0.5 2.1 0.4 電力 0.6 1.3 1.1 1.6 1.7 1.2 0.4 0.9 1.1 1.1 0.9 1.2 0.9 0.5 2.9 1.3 1.2 0.8 1.9 0.9 その他 合計 国内生産額[億Baht] 1.0 1.8 1.9 2.4 2.4 2.0 0.9 1.1 2.3 1.8 1.6 2.0 1.8 1.2 3.2 2.1 1.7 2.0 4.9 1.8 10.7 9.6 14.7 10.6 13.5 6.9 2.6 6.2 13.8 7.3 15.2 8.8 16.8 3.5 11.4 5.9 27.0 5.2 18.2 4.7 20.4 25.3 20.4 8.8 21.2 23.9 20.2 17.4 32.1 22.9 1,155 737 504 449 252 171 119 114 90 69 6 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 29, No. 4 9) 畜の消化管内発酵や排泄物による CH4・N2O 排出量の影響 は大きいと予想される 池田明里,篠崎美貴,菅幹雄,早見均,藤原浩一,吉岡 完治;環境分析用産業連関表,KEO モノグラフシリーズ 7, 2) .また,本研究では対象外とした (1996),慶應義塾大学産業研究所. が,工場からの廃水や農業廃棄物を含む廃棄物処理にとも 10) 財務省,日本銀行;本邦対外資産負債残高統計,(2007). なう CO2・CH4・N2O 排出量も考慮しなければならない. 11) Global Trade Information Services, Inc (GTIS); World Trade タイでは輸送用バイオ燃料の本格的な導入が開始されて Atlas database 12) National Economic and Social Development Board (NESDB); いる.今後のさらなる普及にあたり,原料となる農産物の input-output table of Thailand 2000. 生産,および工場運営における環境負荷の評価を行うこと 13) Department of Alternative Energy Development and Efficiency が不可欠である.今後は,基礎的データの整備を進めると (DEDE); Thailand Energy Situation 2000. ともに,持続的なバイオ燃料生産システム確立に関する政 14) Department of Alternative Energy Development and Efficiency (DEDE); Oil and Thailand 2000. 策提言に向けた定量的評価を行う予定である. 15) Department of Alternative Energy Development and Efficiency なお,紙面の都合上,すべての財・サービスの CO2 原単 (DEDE); Electric Power in Thailand 2000. 位を掲載することが出来なかった.これらは,別途インタ 16) Department ーネット上で公表している.また,十分に記述できなかっ of Mineral Resources (DMR); Mineral Consumption of Thailand 1998-2002. http://www.dmr.go.th/stat.php (アクセス日 2007.9.28) た推計方法の詳細に関しても,あわせて掲載している 21). 17) Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC); Revised 1996 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas 謝辞 Inventories Reference Manual Vol.3, (1996). 本研究の実施にあたり,タイ国家経済社会開発委員会事 18) International Energy Agency (IEA); CO2 Emissions from Fuel 務局(NESDB)の Watcharapol Pumkaew 氏,および慶應義塾 Combustion 2002 Edition. 19) Energy Information Administration (Official Energy Statistics 大学商学研究科の Piyawan Suksri 氏に多大なるご協力を戴 from the U.S. Government); いた.ここに記して謝意を表する. http://www.eia.doe.gov/pub/international/iealf/tableh1co2.xls http://www.eia.doe.gov/pub/international/iealf/tablee1.xls ( ア クセス日 2007.9.28) 参考文献 1) 本藤祐樹,森泉由恵,外岡豊;産業連関表(1995 年表)部門 20) International Energy Agency (IEA); Energy Balances of 別直接エネルギー消費量および直接 CO2 排出量の推計,電 Non-OECD Countries 2000-2001. 21) 森泉由恵,本藤祐樹;タイの産業連関表を用いた CO2 原 力中央研究所研究報告 Y01908,(2001). 2) 単位の推計(詳細版). 本藤祐樹,森泉由恵,外岡豊,神成陽容;1995 年産業連 関表を用いた温室効果ガス排出原単位の推計,日本エネル http://www.yokohama-mot.jp/hondo/hiroki/top.html ギー学会誌,81(9),(2002),828-844. 3) 南齋規介,森口祐一,東野達; 産業連関表による環境負 荷原単位データブック(3EID)-LCA のインベントリデータ i 本論文では,植物由来の燃原料消費を起源とする CO2 排出量 は考慮しておらず,表 1 の 20-23 の燃原料種は推計対象外とし ているが,文献 21)では別途推計を行っている. ii 推計方法の説明における混乱を避けるため,一部,IO 表の 行側(産出側)の部門を「IO 供給部門」,列側(投入側)の部 門を「IO 需要部門」と呼ぶこととする. iii 現在では VSPP(Very Small Power Producer)が加わっている. iv 骨材を需要する部門にセメント製造にともなう CO2 排出が 波及する事を避けるため,原単位推計の際にセメント製造にと もなう CO2 排出を「103.コンクリート・セメント製品」部門に 仮計上することが考えられる.しかし,タイ IO 表ではコンク リート用セメントが「103.コンクリート・セメント製品」部門 を通過せずに,直接,建設部門へと産出されている.よって, 本推計ではセメント製造にともなう CO2 排出量を「102.セメン ト」部門に計上した. v 表 3 に示した本研究の 1 次エネルギー消費量には,植物由来 の燃原料(表 1 の 20-23)も含まれている. として-,(2002),国立環境研究所地球環境研究センター. 4) 朝倉啓一郎・早見均・溝下雅子・中村政男・中野諭・篠 崎美貴・鷲津明由・吉岡完治;環境分析用産業連関表,(2001), 慶應義塾大学出版会. 5) Nakamura, S., Kondo, Y ; Input-Output Analysis of Waste Management, J. Industrial Ecology, 6-1, (2002), 39-63. 6) Hondo, H ; Life Cycle GHG Analysis of Power Generation Systems: Japanese Case, Energy, 30(11-12), (2005), 2042–2056. 7) Hondo, H., Moriizumi, Y., Sakao, T ;A Method for Technology Selection considering Environmental and Socio-Economic Impacts: Input-Output Optimization Model and its Application to Housing Policy, Int. J. LCA, 11(6), (2006), 383-393. 8) 日本建築学会;建物の LCA 指針-温暖化・資源消費・廃 棄物対策のための評価ツール-,(2006),丸善. 7
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