第 30 回 日本バイオフィードバック学術総会抄録集 会期:2002 年6月 14 日(金) ・20 日(土) 会長:九州大学医学部心療内科 久保千春 会場:九州大学医学部同窓会館 6.種々の機能的便秘に対するバイオフィードバック療法(BF)の取り組み 大腸肛門病センター高野病院 ○高野 正博 豊田 正美 機能的便秘による排便機能障害者は,若年者・高齢者共に増加し,患者のQOLを低下させているが,いくつかの 病型に分類される. 1.直腸型便秘;習慣的に直腸に便を溜めていき,直腸の拡張→便意の低下から,さらには巨大結腸となり,と くに高齢者では運動不足,体力低下,全身合併症,食事量の不足,便意の抑制,肛門疾患合併等が増悪因 子となっている. 2.異糞症;小児特有の排便障害で,排便習慣が悪く大腸全体にすっかり便が溜まってしまい硬い便の周りを 伝わって下痢便が出てきて便を漏らす. 3.過敏性直腸症候群(IRS);直腸の過敏性が著しく,このため排便困難,残便感,便意頻1・1などの症状 が患者を苦しめる.過敏性腸症候群(IBS)の病態の一部として現れることが多いが,IBSが軽快したあと も直腸の過敏状態が残ることが多い. 4.奇異性括約筋運動(Paradoxical movement);患者が肛門を閉めようとすると開き,逆に開こうとしても かえって閉まる状態になるものである.患者にとって便が漏れる,また反対に排便困難になり困惑した状 態となる. これらの多くは習慣的のもので,さらには心因性要因が大きく関与していることが多い. 以上にあげた機能的排便障害にはBFが有効な治療手段となる.肛門挙筋の下垂によって排便の力みがきかな い症例では肛門挙筋を締め上げる訓練を行う.直腸感覚低下で便の貯留が自覚できない症例では直腸感覚を向上 させ,また肛門と連動させた排出訓練を行う.括約筋が奇異性に動く症例でも正しく括約筋を閉めたり緩めたり する練習を行う.以上の治療に先立って,各種直腸肛門機能検査を行いその結果を分析し,病態を正しく診断す る.生活の改善からはじめて,薬物療法による排便コントロールを行い,心因性要因の関与が大のときは心身症 的アプローチを加える.肛門挙筋力の低下によって力みが阻害される場合は,締め上げも含め筋力を増大させる BFに電気刺激療法を併せ行っている.以上種々の直腸肛門機能障害に対して,症例に応じたBFを応用し,良 好な成績を得ているので発表する.
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