木造軸組工法による耐火構造認定取得について

平成 18 年 10 月 19 日
報道関係者各位
社団法人日本木造住宅産業協会
会長
矢野
龍
木造軸組工法による耐火構造認定取得について
社団法人日本木造住宅産業協会(会長
矢野
龍:住友林業株式会社代表取締役社長)
(以下「木
住協」)は、平成18年10月2日付けで、国土交通省より建築基準法第二条第7号ならびに同法
施行令第107条の規定に基づく木造軸組工法による耐火構造の国土交通大臣認定を受けました
ので、お知らせいたします。
本認定取得は、指定性能評価機関ベターリビングでの数々の性能評価試験を経て、性能評価書
を受け、本年7月24日に国土交通省に申請したものが認定されたものです。木住協では引き続
き、耐火構造の設計バリエーションを増加する為に、追加仕様の大臣認定取得に向けて取組んで
いきます。本認定の概要は以下の通りです。
1、目的と効果について
① 建築物の用途や防火地域内等での木造建築物に対する建築制限があるため、木住協ではかね
てより、その規制をクリアして木造のイメージアップを図るべく、木造建築物の防耐火性能
の向上を目的に研究を重ねてきた。
② 従来、木造軸組工法による主要構造部を1時間準耐火構造にすることは可能であったが、耐
火構造とすることができなかったため、多くの制約を受けていた。これが木造建築物の更な
る発展と普及を妨げていたことは否めず、今回取得した大臣認定により、木造軸組工法によ
る耐火建築物の建設が実現することとなり、
「火に弱い木造」というイメージも払拭されよう。
③ 防火地域内の木造住宅(3・4 階建て、共同住宅)や、木造による特殊建築物や幼稚園、老人ホ
ームなどの建築も可能に。
2、大臣認定取得について
H17.9.27 付けで取得済だった間仕切壁の認定を含めて、全17認定。
3、今後の運用(講習会受講の義務化等)について
① 本認定内容をまとめた「木造軸組工法による耐火建築物設計マニュアル」を作成し、講習会
受講の義務化と工事自主検査の徹底など、確実な設計・施工による木造耐火建築物の普及を
図っていく。
② 講習会等の予定は別途ご案内。本認定を利用する木造耐火構造の設計・工事監理および施工
の自主検査に携わる者には、講習会の受講を義務付け。受講修了者登録の後、年末から運用
を開始する予定。
本ニュースリリースについてのお問合せは
社団法人日本木造住宅産業協会
TEL:03-5425-6263
技術開発部
FAX:03-5425-6260
飯山
道久
URL:http://www.mokujukyo.or.jp
認定取得までの経緯と認定の効用
木住協では、平成16年度より技術開発委員会の中に木造防耐火性能研究WGを組織して、木
造軸組工法による耐火構造の国土交通大臣認定取得を検討して来た。指定性能評価機関ベターリ
ビングでの試験と性能評価を経て本年7月24日に国土交通省に申請していた木造軸組工法によ
る耐火構造が、10月2日付けで大臣認定を受けることができた。
従来、木造軸組工法による主要構造部を1時間準耐火構造にすることは可能であったが、耐火
構造とすることはできなかったため、多くの制約を受けていた。今回取得した建築基準法第二条
第7号ならびに同法施行令第107条の規定に基づく耐火構造の国土交通大臣認定により、木造
軸組工法による耐火建築物の建設が実現できることになった。
この認定により、耐火建築物とすることが要求される又は、主要構造部に必要な耐火性能が要
求される次のようなものの建築が可能となり、木造軸組工法の適用範囲拡大が期待される。
① 防火地域の 100 ㎡を超え、または階数が3以上の建築物(法第 61 条)
② 準防火地域の 1,500 ㎡超え、または地階を除く階数が4以上の建築物(法第 62 条)
③ 建築基準法以外の法規により耐火建築物の規制がかかる老人施設や保育園等
④ 高さが 13m又は軒高さが 9mを超える地階を除く階数が 4 以上の建築物(法第 21 条)
⑤ 3 階建て以上の特殊建築物(法第 27 条)
建築基準法による規制
防火地域指定ごとに建設可能な規模と要求される防耐火性能の関係を戸建住宅と共同住宅につ
いて整理すると図 1-1 のようになる。
建築基準法による規制に対し、耐火建築物であれば、地域によらず、建築規模によらず、建物
用途によらず、いかなる建築物も建設可能となる。
※準防木三戸とは、準防火地域に建設される木造三階建て住宅で、法62条、令136条の2に定める技術的基準(外
壁・軒裏防火構造、隣地 1m以内防火戸設置他)に適合するもの
※準防木三共とは、準防火地域又はその他地域に建設される木造三階建て共同住宅で、法27条、令115条の2の2に適合
(主要構造部の1時間準耐火他)するもの。
図 1-1
建築地域、用途及び建築規模と建築物に要求される耐火性能の関係
関連法令:建築基準法
第二条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところに
よる。
一 ~六 省略
七
耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了
するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に
必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート
造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大
臣の認定を受けたものをいう。
七の二以下省略
関連法令:建築基準法施行令
第百七条
法第二条第七号 の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。
一
次の表に掲げる建築物の部分にあつては、当該部分に通常の火災による火熱がそれぞれ次
の表に掲げる時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷
を生じないものであること。
建築物の部分 建築物の階
最 上 階 及 び 最 上 最上階から数え 最上階から数えた
階 か ら 数 え た 階 た階数が五以上 階数が十五以上の
数 が 二 以 上 で 四 で十四以内の階 階
以内の階
壁
間仕切壁(耐力壁に限る。) 一時間
二時間
二時間
外壁(耐力壁に限る。)
一時間
二時間
二時間
柱
一時間
二時間
三時間
床
一時間
二時間
二時間
はり
一時間
二時間
三時間
屋根
三十分間
階段
三十分間
一 この表において、第二条第一項第八号の規定により階数に算入されない屋上部分がある建築
物の部分の最上階は、当該屋上部分の直下階とする。
二 前号の屋上部分については、この表中最上階の部分の時間と同一の時間によるものとする。
三 この表における階数の算定については、第二条第一項第八号の規定にかかわらず、地階の部
分の階数は、すべて算入するものとする。
二
壁及び床にあつては、これらに通常の火災による火熱が一時間(非耐力壁である外壁の延
焼のおそれのある部分以外の部分にあつては、三十分間)加えられた場合に、当該加熱面以
外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が当該面に接する可燃物が燃焼するおそれのあ
る温度として国土交通大臣が定める温度(以下「可燃物燃焼温度」という。)以上に上昇し
ないものであること。
三
外壁及び屋根にあつては、これらに屋内において発生する通常の火災による火熱が一時間
(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分及び屋根にあつては、三十分
間)加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないものであ
ること。
当面の運用ルール
運用にあたり、次をルールとする。
① 本書に基づき木造軸組工法耐火建築物を設計するもの、工事監理するものは、木住協会員
会社(賛助会員含む)の所属員とし、木住協が主催する「木造軸組工法による耐火建築物設計マ
ニュアル講習会」
(以下、講習会と略)を予め受講しなければならない。受講者は木住協に登
録する。
②
本書に基づき木造軸組工法耐火建築物を施工するものは、木住協会員会社とし、講習会を
受講したものによる工事自主検査を実施しなければならない。
③ 確認申請には、木住協で発行する耐火構造認定書(写し)を添付しなければならない。耐火構
造認定書(写し)は申込みに応じて、木住協の管理のもと、講習会受講者を有する会員会社
へ有償にて発行する。発行手数料は別途定める。
④ 工事自主検査を実施するものは、
「木造耐火建築物工事自主検査チェックリスト」を用いて
工事自主検査を行い、適正に施工されていることを確認しなければならない。
⑤ 木住協は必要に応じて、施工会社に対して「木造耐火建築物工事自主検査チェックリスト」
の提出を求めることができる。
⑥ 別途、木住協が認めた場合は上記①~③についてこの限りでない。
木住協仕様に基づき設計・施工される木造軸組工法による耐火建築物が、確実に要求される防
耐火性能が確保されるよう、業務の窓口は会員が行うこととし、当面は木住協の管理が可能な、
会員会社による設計・工事監理及び会員会社による施工を原則としたクローズドな運用を図るこ
ととした。
但し、木住協仕様に基づく耐火建築物の業務(設計、工事監理、施工)に携わるものの一部に
非会員であるものが含まれる場合などでも、講習会の受講と物件に係る確実な報告等、別途木住
協が認めた場合にはこの限りではないとしている。この場合は事務局との別途相談事項としてい
る。
木住協 耐火構造大臣認定
部位
耐火時間 耐火時間 耐火時間
非損傷性 遮熱性 遮炎性
外壁
1時間
1時間
間仕切壁
1時間
1時間
床
1時間
1時間
屋根
30分
-
認定番号
備考
認定取得H18.10.02
耐力壁面材が屋外側木質系ボー
ド、屋内側は9種ボード任意・なし
も含む
グラスウール断熱材充てん/化粧窯業系サイディング・ALCパネル・セメント 認定取得H18.10.02
板表張/強化せっこうボード・アルミニウムはく張ガラス繊維クロス・強化せっ 耐力壁面材が屋外側セメント板、
FP060BE-0032 こうボード裏張/木製軸組造外壁
屋内側は9種ボード任意・なしも
含む
1時間
グラスウール断熱材充てん/化粧窯業系サイディング・ALCパネル・火山性ガ 認定取得H18.10.02
ラス質複層板表張/強化せっこうボード・アルミニウムはく張ガラス繊維クロ 耐力壁面材が屋外側火山性ガラ
FP060BE-0033 ス・強化せっこうボード裏張/木製軸組造外壁
ス質複層板、屋内側は9種ボード
任意・なしも含む
グラスウール断熱材充てん/化粧窯業系サイディング・ALCパネル・せっこう 認定取得H18.10.02
ボード表張/強化せっこうボード・アルミニウムはく張ガラス繊維クロス・強化 耐力壁面材が屋外側せっこう
FP060BE-0034 せっこうボード裏張/木製軸組造外壁
ボード、屋内側は9種ボード任
意・なしも含む
両面強化せっこうボード重張/木製軸組造間仕切壁
認定取得H17.09.27
断熱材なし 耐力壁面材は9種
FP060BP-0019
ボード任意で片面または両面、な
しも含む
グラスウール断熱材充てん/両面強化せっこうボード・アルミニウムはく張ガ 認定取得H18.10.02
ラス繊維クロス・強化せっこうボード張/木製軸組造間仕切壁
断熱材あり 耐力壁面材は9種
FP060BP-0026
ボード任意で片面または両面、な
しも含む
片面強化せっこうボード・強化せっこうボード・木質系ボード張/片面強化せっ 認定取得H18.10.02
こうボード重張/木製軸組造間仕切壁
断熱材なし 柱面合せ耐力壁面
FP060BP-0027
材が木質系ボードで片面(必須)
または両面
-
片面強化せっこうボード・強化せっこうボード・セメント板張/片面強化せっこう 認定取得H18.10.02
ボード重張/木製軸組造間仕切壁
断熱材なし 柱面合せ耐力壁面
FP060BP-0028
材がセメント板で片面(必須)また
は両面
片面強化せっこうボード・強化せっこうボード・火山性ガラス質複層板張/片面 認定取得H18.10.02
強化せっこうボード重張/木製軸組造間仕切壁
断熱材なし 柱面合せ耐力壁面
FP060BP-0029
材が火山性ガラス質複層板で片
面(必須)または両面
片面強化せっこうボード・強化せっこうボード・せっこうボード張/片面強化せっ 認定取得H18.10.02
こうボード重張/木製軸組造間仕切壁
断熱材なし 柱面合せ耐力壁面
FP060BP-0030
材がせっこうボードで片面(必須)
または両面
グラスウール断熱材充てん/強化せっこうボード・強化せっこうボード・木質系 認定取得H18.10.02
断熱材あり 上張(床下地板)が
FP060FL-0046 ボード上張/強化せっこうボード重下張/木製軸組造床
木質系ボード
グラスウール断熱材充てん/強化せっこうボード・強化せっこうボード・セメント 認定取得H18.10.02
断熱材あり 上張(床下地板)が
FP060FL-0047 板上張/強化せっこうボード重下張/木製軸組造床
セメント板
-
強化せっこうボード・強化せっこうボード・木質系ボード上張/強化せっこう
認定取得H18.10.02
断熱材なし 上張(床下地板)が
FP060FL-0048 ボード重下張/木製軸組造床
木質系ボード
強化せっこうボード・強化せっこうボード・セメント板上張/強化せっこうボード 認定取得H18.10.02
重下張/木製軸組造床
断熱材なし 上張(床下地板)が
FP060FL-0049
セメント板
人造鉱物繊維断熱材充てん/木質系ボード表張/強化せっこうボード重張/木 認定取得H18.10.02
表張(野地板等)が木質系ボード
FP030RF-0158 製軸組造屋根
30分
名称
グラスウール断熱材充てん/化粧窯業系サイディング・ALCパネル・木質系
ボード表張/強化せっこうボード・アルミニウムはく張ガラス繊維クロス・強化
FP060BE-0031 せっこうボード裏張/木製軸組造外壁
人造鉱物繊維断熱材充てん/セメント板表張/強化せっこうボード重張/木製 認定取得H18.10.02
表張(野地板等)がセメント板
FP030RF-0159 軸組造屋根
人造鉱物繊維断熱材充てん/火山性ガラス質複層板表張/強化せっこうボー 認定取得H18.10.02
表張(野地板等)が火山性ガラス
FP030RF-0160 ド重張/木製軸組造屋根
質複層板
階段
30分
-
-
H12建設省告示第1399号による鉄造・鉄筋コンクリート造など
耐火試験写真
2006.06.06
外壁屋外側(ALC35+サイディング 15)1体目
①1時間加熱後、放置2時間の時点。
合板表面でも 180℃程度でピーク。この後さらに3
時間放置。着火から6時間少々で試験終了。
②炉から試験体を出した直後の様子。
サイディング(厚 15mm)は亀裂もあり、目地は開
④ALCを剥がしたところ。
透湿防水シートは、大半が融解している。
胴縁には炭化もなし。合板表面に一部変色あり。
⑤合板も剥がしたところ。
内部の木部・断熱材とも損傷なし。
いているが、脱落はない。
③サイディングを剥がしたところ。
ALC(厚 35mm)表面に、細かな亀裂と煤(サイ
ディング塗膜からか)はあるが、大きな変形もない。
⑥断熱材も取除いたところ。
柱・間柱に変色や炭化は見られない。合格。
2006.1.25
屋根(1体目)
①試験風景。中央の梁材の長期許容応力に当る
荷重を載荷して耐火試験を実施。
④下張り強化せっこうボードを外したところ。
断熱材の変色も見られない。
②30分加熱+炉内放置後、炉から出された試
験体。上張り強化せっこうボード(15mm 厚)
の目地は開いており、亀裂も見られるが、脱落
はない。表面の紙は炭化している。
⑤断熱材を取除いたところ。梁や野縁を加熱面
から見上げたもの。どこにも変色も見られない。
③上張り強化せっこうボードを取除いた、下張
り強化せっこうボード(12.5mm 厚)の表面。
表面の紙は変色しているがほとんど炭化してい
ない。
⑥非加熱面から見下ろしたもの。梁のみでなく
野縁にも炭化や変形もなく、性能評価試験とし
て合格。
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