スリランカ特別報告 2004年12月

スリランカ特別報告
2002 年 11 月スリランカ政府は「e-Sri Lanka」を策定、世界銀行の援助を受けながら電子
政府等の政策を推し進めている。同国にて 2004 年 11 月 29 日の週を「IT week」と宣言し、
(1) IITC 2004 (International Information Technology Conference)、2) ICEG 2004
(International Conference on e-Governance)、3) ASOCIO (Asian-Oceanian Computing
Industry Organization))第 22 回総会及び ASOCIO ICT Summit 2004 の 3 つの IT 国際
会議、さらに、ASOCIO/INFOTEL 展示会が開催、同国の IT に対する積極的な姿勢がうか
がえた。特に 1983 年から 20 年間続いた内戦が 2 年前停戦となり、現在では国際機関や各
国から援助を受け活性化しつつある。特に IT 分野においては、国際機関からの援助の多さ
とともに、日本語を流暢に操る日本向けソフトウェア開発会社 2 社、2∼3%程度の低い大
学進学率をあげるためのコロンボ大学の取り組みが印象的だった。以下、スリランカの概
況及び IT 状況を、他のアジア諸国との比較において紹介したい。
■スリランカ概況■
<<スリランカ国とは>>
スリランカといえば、紅茶が有名だ。紅茶はゴム、ココナツ、米と並ぶ主な農産物で国の
産業の 33%を農業、21%工業(ほとんどが繊維製品)、サービス業が 46%を占める。ゴム
は原料を直接マレーシアに輸出、マレーシアでタイヤに加工している。
大国インドの南、インド洋に浮かぶ北海道ほどの大きさの国に人口約 2,000 万人、実質的
な首都コロンボには 80 万人が住む。
アジア地域で人口 2,000 万人の国は台湾、マレーシア、
ネパール。民族的にはシンハラ人 74%、タミル人 18%、ムーア人 7%から構成され、宗教
的には仏教 69%、ヒンドゥ教 15%、キリスト教 8%、イスラム教 7%となっている。公用
語はシンハラ語、タミル語であるが、連結語として英語。特に IT 関係業務ではほとんどが
英語で問題ない。社会主義国で大統領と首相は別々に選ばれる。政権が変わるたびに政策
もころころ変わるといわれる。一人当たり GDP は 947 ドル、識字率 92%、平均寿命 72 歳、
失業率 8.6%となっている(*1)。一人当たり GNP はインドネシア、中国、フィリピンがほ
ぼ同じレベルである。スリランカは 5 歳から学校へ通う。識字率は 92%と、途上国として
は高い数字で、シンガポール・タイ・フィリピンと並ぶ。これは社会主義国ゆえ小中高校
(5・4・2 年、小学校は 5 歳から)が義務教育で無料、大学までの教育費までも無料である
ためだ。一方で国が負担する教育費が莫大なため、大学進学率は 2∼3%に留まるという問
題も抱えている。医療費も国の負担で国民は無料で受けられるため、平均寿命は 72 歳と高
い。
<<450 年間のイギリス等の支配、20 年以上にわたる国内民族紛争の歴史>>
四方を海に囲まれ貿易拠点として栄え、16世紀初めにポルトガル、17世紀中頃からオラン
ダ、18世紀末からイギリスと通算450年にわたる植民地支配の時代を経て、1948年、英連
邦の自治領セイロンとして独立、1972年にスリランカ共和国に国名を変更し、1978年にス
リランカ民主社会主義共和国と現在の国名に変更した。その後、北部・東部を中心に、シ
ンハラ人とタミル人との民族紛争が特に1983年から20年も続いていていたため(2002年2
月停戦合意)
、あらゆる意味で尾を引いている。特に経済的には、80年代から90年代に急成
長した他のアジア諸国に比べ(*2)、紛争で莫大な金を費やしただけでなく、国際的な信用が
1
低下し財産・資産や人材も失い、近年の国際化の波に乗り遅れてしまった。また、道路や
電力等のインフラ整備が遅れ、コロンボ港の機能を活用して国内の産業発展を遂げる機会
を失った。また7つ世界遺産と美しいビーチに加え英語が通じるという観光資源も産業とし
て活かすことができなかった。内戦以前のスリランカには、余暇を過ごす観光客が毎年50
万人も訪れていたが、内戦時に最盛期の半数近くまで減っていた。が、2002年の停戦後以
後は大幅な増加傾向を見せ、2003年には50万人(*3)まで回復している。また停戦合意後は
コロンボ市内で1回爆弾事件があったのみである。
<<南アジア諸国・宗主国イギリスとの関わり>>
スリランカはSAARC(南アジア地域協力連合。東南アジアにおけるASEANのような連合;
バングラデッシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ
の7カ国)加盟国であり、それらの国と結びつきが強く、特に経済的にはインドと強く繋が
りがある。尚、スリランカのワーカーレベル(労働者、メイド)は中東やイギリスに出稼
ぎに行くようだ。現在のスリランカ憲法や政治体制はイギリスの150年に渡る支配により、
イギリスを模範とし、スリランカ人の意識は「look east」ならぬ「look west」で、英語の
能力は高い。
<<コロンボ市内の様子>>
今回、初めてスリランカを訪れたが、道路やホテルなどのインフラは整備されているが全
体的に古いという印象を受けた。空港は老朽化しており、道路は一般道は比較的整備され
ているものの高速道路はない。ヒルトンホテルをはじめとしコロンボ市にある5つぐらいの
5つ星ホテルは、どれも1970年後半から1980年前半に建築されたもの。20年間続いた内戦
の影響で、新しいホテルは1つもない。80年代から90年代にかけて新築ホテルが建設ラッシ
ュ・外資系企業の投資で活気溢れる東南アジア諸国とは様相が異なる。社会主義国という
こともあいまって、ホテルを含めたサービスはよいとはいえない。同じ社会主義国の中国
やベトナムは、最近のビジネスマンや観光客の増加により、ホテル間の競争が激化してき
たことから、サービスも格段によくなっているが、スリランカはインド人ビジネスマンは
多いものの、その他外資系企業のビジネスマンは中国や他の東南アジアと比較すると低い
割合に留まるため、サービスも洗練されていない。
<<国際機関による多額の援助>>
とはいえ、2002 年の停戦から、現在では国際機関や各国から援助を受け、スリランカは活
性化しつつある。今回スリランカを訪問して、非常に多くの国際機関が援助していること
がわかった。2001∼2002 年の平均値を取ると、総額 5.4 億ドルの援助が行なわれている。
援助総額の内訳としては、トップドナーである日本がその 45%にあたる 2.4 億ドルを支出、
アジア開発銀行が全体の 20%の 1 億ドル、世界銀行が全体の 12%を拠出している
(http://www.oecd.org/dataoecd/0/7/1878751.gif)。この他、ドイツが 6%、続いてオラン
ダ、ノルウェー、スウェーデン、米国などが 3%程度を占める。紛争の復興支援として、電
力・水・道路などの基礎インフラ分野への支援が多いが、IT関連にも援助している。2002
年国のIT政策である「e-Sri Lanka」実施のため、世界銀行による 50∼60 億ルピー(円)
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のローンが今年 11 月承認された。スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)も協力している。
このほか、中等教育の近代化に対してはアジア開発銀行が協力し、全国に 800 のComputer
Learning Centre (CLC)を設置するプロジェクトが実施中だ(既に 547 ヵ所設置済み)。世
界銀行は 2 百万ドル拠出し(スリランカ政府は百万ドル拠出)Distance Learning Center
を支援、多くの国際機関からの援助が目立つ。日本はJICAにより、現在 2002 年から 3 年
間「情報技術分野人材育成計画」プロジェクトを実施している。コロンボ大学スクールオ
ブコンピューティング(UCSC)の能力向上を図ることを目的として、WBTに関する研修、
WBTモジュールの開発、WBT関連の研究開発を実施、日本人リーダが 1 名と専門家 1 名が
派遣されている。ビジネスベースではTATAなどインドの大手企業やヨーロッパ企業の進出
が多い。日本企業としては、NTTコミュニケーションズ社が 1997 年からスリランカテレコ
ム社に対し、支援(出資、CEO派遣による経営改善、技術指導)を多大な成果を挙げてい
る。東南アジアにおけるIT援助は、日本・韓国・アジア諸国に加え、ベンダーの投資・援
助も多いが、スリランカは紛争の復興支援という意味合いが強いということ、人口 2,000
万人でマーケットサイズがあまり大きくないこと、また地理的に南アジアに位置すること
などからこのような援助体制になっているものと思われる。
<<ノリタケや NTT コミュニケーションズを初めとした日系企業 67 社進出>>
日系企業は現在 67 社進出している。内訳は製造 13 社、商社 8 社、建設 10 社、その他 36
社、ノリタケや NTT コミュニケーションズ(1997 年時点でスリランカテレコムの 35%の
株を保有)、FDK Lanka(富士通系、従業員 3000 人)、YKK などが挙げられる。町中には
東芝ノートブックや日立などの宣伝も多く、それらの製品の販売店が多いことがわかる。
■スリランカ IT 概況■
<<スリランカの IT 概況、スリランカ人のメリットとは>>
2002年11月スリランカ政府は「e-Sri Lanka」を策定、世界銀行とスウェーデン国際開発協
力庁(SIDA)の援助を受けながら電子政府等の施策を推し進めている。「e-Sri Lanka」は
インフラ整備、人材育成、産業振興、電子政府促進を目標に、50∼60億ルピー(円)の世
界銀行のローンとスリランカ政府資金により、民間企業ICT Agencyが実施している(ICT
Agencyは特別法に基いて設立)。どのような方向性に位置づけるのかはドナーである世界銀
行の意向が大きいという。現在、IT全般は科学技術省、首相府が管轄し、通信は郵便・通
信・高地開発省が担当している。電子政府のモデルはインドの先進的な州政府としている
ようだ。IT全般の目標としては、80年代はシンガポールを目標にしていたが、いまやシン
ガポールは発展し過ぎてモデルにならないという。なお、スリランカには8つの自由貿易地
区(Export Processing Zones)と3つの工業団地、3つのITパークなどがある。大手ベンダ
ーは、スリランカ国内のマーケットはあまり大きくないため、マイクロソフトはこれまで
進出していなかったが去年から進出している。
スリランカ人のメリットとして、労働の質、知的レベルの高い若年労働力、低い労働コス
ト、及び親日感情がメリットとして挙げられる。また英語が得意なことから欧米向アウト
ソーシングも請け負っているようである。デメリットとしては、労働層がうすいこと、日
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本からの地理的距離(純粋な直行便が週に 1 便、そうでない直行便が 2 便。経由便はシン
ガポール・バンコク・香港経由、飛行時間は約 10 時間)、政治不安、古いインフラ、高度
な技術者の不足などが挙げられる。
給料は、大卒 IT 技術者で 1∼2 万円、シニアプログラマだと 6∼7 万円程度。IT 企業大手
になると大学新卒でも 3∼5 万円の好待遇。大学教授(公務員)1 ヶ月 3 万 5 千円∼4 万円。
スタッフは 1 万円。なお、インドから国家 IT 試験を導入、イギリス、オーストラリアから
も試験制度を導入するなど、海外から多く取り入れられている。
< < 日 本 語 を 流 暢 に 操 る 日 本 向 け ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 会 社 ∼ John Keells Computer
Servicess 社、Altech Lanka (Pvt.) Ltd 社>>
1)John Keells Computer Services 社
11 月 29 日∼12 月 3 日「IT week」で開催された 3 つの IT 国際会議の一つ、ASOCIO
(Asian-Oceanian Computing Industry Organization)が BMICH で開催された。最初は首
相が挨拶から始まり、20 カ国から 600 名が参加、Microsoft、Intel、IBM、スリランカテ
レコム等がスポンサーとなっていた。コロンボで最大の会議場である BMICH は 1970 年代
中国のサポートによって建設されたものである。ASOCIO/INFOTEL の展示会場では、マ
イクロソフトのような大手外資系企業と並び、スリランカの PC
House 社の独自ブランド
の PANORA はじめ、ハード・ソフト・周辺機器等のスリランカローカル会社が多く出展す
る中、日本語を流暢に話す担当者がいるソフトウェア開発会社があった。トップクラスの
複合企業 John Keells グループのコンピュータサービス部門 John Keells Computer
Services(JKCS)で、包括的な IT ソリューションを提供している。1998 年に創立され、
エミレイツ航空(アラブ首長国連邦)、ブラーセン航空(ノルウェー)
、NTT コミュニケー
ションズ(日本)、P&O ネドロイド(イギリス)などが主な顧客だ。大きな資本を後ろ盾
に、日本向け業務は 8 人のチームで主にソフトウェアを開発、やり取りは全て日本語で行
っている。日本企業からの信頼も厚いようだ。
2)Altech Lanka (Pvt.) Ltd 社
もう 1 社、Altech Lanka (Pvt.) Ltd.社を紹介したい。日本人女性今井 Director が 14 人の
スリランカ人スタッフとともに奮闘している。スリランカ人は言語習得が早いといわれ、
14 人のスリランカ人スタッフはほとんどが日本語検定 2 級を取得、堪能な日本語を話す。
Altech Lanka (Pvt.) Ltd.社はアルプス技研の 100%出資会社で 2001 年設立、アルプス技研
のソフト開発子会社であるアルテック情報システムの業務を請け負う。ウェブ系、Linux
系(Java など)、Windows(.net)を中心に、カスタマイズ、新規の両方を開発している。コ
ストでは中国、ベトナムにはかなわないのでニッチなところを重点的に経営しているよう
だ。
アルテック情報システムの海外支社はスリランカ、ミャンマー、中国に支社がある。スリ
ランカはソフトウェア開発のみに従事しているが、もともと人材派遣業もやっていたこと
から、ミャンマー総合研究所で実施しているミャンマーでの IT 研修にスリランカ人を派遣、
日本語&IT をセットで研修し情報処理技術者試験合格+日本語習得と効果を挙げている。
情報処理術者試験の合格率の高さには、経済産業省も注目している。また、ミャンマーか
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ら2人スリランカの職場に OJT として 10 週間派遣、彼らが将来ミャンマー国内のインス
トラクターとなるべく育成している。
スリランカ人の特徴として、納期を守るために徹夜で働く日本人の働き方が理解するのが
難しい。Altech Lanka 社では AOTS などの日本での招聘研修を積極的に受けさせている。
これは日本で研修させ OJT などで一緒に働くと、日本人の仕事のやり方(非常に几帳面で
要求が厳しいところ)を理解できるためという。しかし中には日本からの帰国早々に転職
をしてしまうこともあるようだ。スリランカ人は英語が得意なので、従来から中東や欧米
型のオフショア業務が多く入ってくるが、それらの要求はあまり厳しくない。一方で日本
型オフショアは要求が非常に厳しいため、スリランカ人が慣れるのに時間がかかる。また
スリランカは労働法が厳しく、容易に解雇ができないので、勤務時間含め規則を自分たち
で決めさせ、責任を持たせることにしているのだそうだ。
スリランカでは大学卒業生の数が少なく、国立大学で情報系の学科があるのは 10 大学、3
機関、卒業生は IT 専門で 200 名∼300 名。スリランカには有名な IT 企業が 5 つあり、①
Millennium IT、②John Keells Compueter Service、③IFS、④Virtusa、⑤Informatics
International で、最も優秀な卒業生はこの 5 社が何百人のオーダーで採用、引き抜きも早
い。給料は 3∼5 万ルピー(1 ルピーは約 1 円)と高額。Altech Lanka 社では、Junior:1
万 8 千ルピー、Senior:7 万ルピー以上(日本語堪能)、Middle はその中間としている。例
えば銀行などでも大卒 1 万ルピー強程度。転職は中国に比べると頻繁ではないが、IT 業界
で 5∼10 年いることは珍しい。海外流出組みも多く、イギリス、オーストラリアが多い。
大卒は特にプライドが高く(テレコム会社だと大卒新卒で1部屋が与えられ秘書もつくが、
理論はわかっていても実務はできない)、お金が就職のインセンティブとなるようだ。
<<スリランカの教育事情∼教育は無料、2−3%の大学進学率>>
次のスリランカの教育事情を紹介したい。スリランカの教育は 5 歳から始まり、小中高校
(5・4・2 年)が義務教育で無料、大学まで無料であるため枠が非常に狭く、全体の 2∼3%
しか進学できない状況だ。国立大学で情報系の学科があるのは 10 大学、3 機関、卒業生は
IT専門で 200 名∼300 名(ただしOpen Universityを除く)。また枠を増やしたところで、
職が少なく大卒者は就職できない(ソフトウェア企業は 100 社程度といわれているが、小
規模企業が多い)。イギリスの教育制度を手本にしているので、理論重視で実学はあまり学
ばない。高校卒業後Aベル試験を受験、15%程度が合格し大学入学資格を得る。そのうち、
トップ 2∼3%(人口比)のみが大学に進学できる。実際どの大学に進学するかは本人の希
望と、試験の結果により、教育省傘下のUniversity Grants Commissionが決定する。現在、
大学は 12 校(Open Universityを含めると 13 校)
(6 万人が在籍、年間 1 万 3 千人が入学、
1 万人が卒業)、14 の各種機関(大学院、研究所、スクール)がある。Ph.Dコースに進学
するものは、その多くはイギリスやオーストラリア、米国に留学する。
<<BIT(Bachelor of IT)プログラム、その他の e-Learning>>
このように大学進学率が低いことをうけ、UCSC では、2001 年から BIT(Bachelor of IT)
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プログラムが実施されている。その後、スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)から援助を
受け、民間の IT 研修機関の授業に通い(UCSC には通えない)、一部 e-Learning の機能を
使いながら BIT プログラムを実施している。1∼3 年毎に試験を受け、合格者のみが UCSC
から各々の資格が授与される。1 年目で Certificate、2 年目で Advanced Certificate、3年
目で学士が授与される(部分的に資格を取得することも可能で、数千人規模の人が既に取
得)。3 年終了・合格時の学位は、正規に UCSC と通った場合と同等の学位で、現在第 1 期
生として 63 名が卒業した。まだ始まったばかりで評価が出るのはもう少し時間がかかりそ
うだ。このプログラム受講者及び前述の民間 IT 研修機関に通うものは、2∼3%の高い競争
率の正規大学に進学できなかった人が主な対象者となる。現在スリランカには 49(コロン
ボ 17、キャンディ 9、ゴール 4、他 19)の民間 IT 研修機関がある。英国認定の授業などを
実施している。
このような動きは他国でも見られる。中国の場合は、人口の割りに大学が少なく中国も大
学進学率は数%と非常に狭き門となっている。人材育成のため、中国政府は、ソフトウェ
ア学院 35 ヶ所(ソフトウェア人材育成の専門学校。対象者は大学に入れなかった学生)、
ネットワーク学院 68 校(生涯教育。対象者は幅広い)を中国各地に設置している。
この他の e-Learning は世界銀行が援助して設立された Distance Learning Center がある。
世銀が 2 百万ドル、スリランカ政府が百万ドルを拠出している。世界各国で 60 カ所の DLC
があり、サテライトでつないで公的・民間セクターの能力開発のための研修を実施してい
おり、様々な機関で教育の拡大がなされている。
<<オープンソースソフトウェア(OSS)事情>>
最後にオープンソースソフトウェア事情を紹介したい。スリランカには Lanka Software
Foundation(昨年設立)と Lanka Linux Users Group(1995 年設立)の大きな 2 つの OSS
コミュニティがある。昨年スリランカで Linux 会議を開催、一般にも OSS が認知され始め
た。
「e-Sri Lanka」政策の実施部隊である ICT Agency とも話し合いを始め、100,000 台の
PC をサポートつきでホームユーザ用に導入するプロジェクトにオープンソースを利用す
るよう、働きかけているそうだ。Lanka Software Foundation で関わっている 70 名のうち、
4 名を会社(IBM、John Keells Compueter Service 等)がフルタイムで従業員に給料を支
払い、フロントラインの OSS プロジェクトに参加させている。スリランカでは主に Apach
関連のウェブ開発に注力、現在世界の Apach 関連プログラマのうち 75%はスリランカ人で
ある。数年ではセイロン紅茶のように世界のブランドソフトウェアを作るのは無理で、10
年ぐらいの長期プランでスリランカのソフトウェアブランドを作りたいとの意気込みを聞
いた。
■注■
(*1)出典はGDP・平均寿命・識字率:2003 年Central Bank of Sri Lanka
(http://www.lanka.net/centralbank)
識字率:UNESCO
(http://www.uis.unesco.org/TEMPLATE/html/Exceltables/education/View_Table_Literacy_04March04.xls)
(*2) しかしながら、80 年代から 90 年代の経済成長は 80 年代で平均 4%、90 年代で 5%程度のプラスで、
落ち込んだわけではない。2001 年にマイナス成長となったがその後は回復。しかしながら、他のアジア諸
6
国がこの期間 5%∼10%の成長を遂げたので、差がついてしまった
(*3) (財)国際情報化協力センター『アジア情報化レポート 2004 スリランカ』2004.
■参考文献■
(財)国際情報化協力センター『アジア情報化レポート 2004 スリランカ』2004.
(調査研究部
7
浅井知子)