スゴ衣開発秘話とス ゴ衣の今後の 展望 ㈱ワコール ワコールブランド事業本部インナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画一課チーフデザイナー 石浦亜矢 ① 脇役だった「極衣」に注目 スゴ衣デビューの 2007 年秋冬企画に纏わる、スゴ衣新製品開発の新たな試みについて ② 綿伝説を乗り越えて 肌着は最低でも 30%以上の綿を含む素材でないと売れないという、インナー業界では常識だ った「綿伝説」を覆す大胆な発想で勝負。商品がお客様に評価されるまでは綿伝説を信じる 販売店との激論が繰り広げられました。 ③ 店頭納品ギリギリまで課題山積み・・・想像以上の難題に四苦八苦! 「薄い・軽い・暖かい」いたってシンプルなコンセプトを表現するために多くの関係部門が それぞれの専門知識を生かして難題を解決していった経緯を紹介。 ④ 予想を超える売れ行きと加熱する機能肌着商戦 次々と難題をクリアした理想のあったかインナー「スゴ衣」は瞬く間にお客様に喜んでいた だけるインナーとして愛されるようになりました。その要因分析とともに、スゴ衣がもたら したあらたな機能肌着商戦について紹介。 ⑤ スゴ衣の今後の展望 これからのスゴ衣の展望を少しご紹介。 -1- オーガニックコットンの現況 NPO 日本オーガニックコットン協会 理事長 日比 暉 1)オーガニックコットン製品に対する消費者のイメージ オーガニックコットンは「環境に優しい」と認識する一方、「安心・肌に優しい」と感じ る傾向がある。(野村総合研究所調査) 2)オーガニックコットンとオーガニックコットン製品 オーガニックコットンは有機栽培によってつくられた綿花のことで、食用農作物との輪作 が欠かせない。農作物の綿花を原料として、製造工程(紡績・織布または編み立て、染色 加工、縫製)を経てオーガニックコットン製品として店頭で販売される。農業での原料生 産(熱帯・亜熱帯の80カ国以上)と工業での製造加工によって商品化される国際商品であ る。オーガニックコットンの生産量は、 2007/08 年度、 146,000 トン(世界綿花生産の 0.55%、 22 カ国)、前年比 2.5 倍。2008/09 年度の生産予想は、低く見て前年比 54%増。 3)認証の必要性とその方法 オーガニックコットンと通常の綿花(conventional cotton)とは、化学分析などで識別でき ない。そのため、毎年第三者の認証機関の検査員が現地検査を行い栽培過程をチェックし て、認証する。農業段階の認証基準・検査方法は国が関与している。しかし、繊維製品の 製造工程の認証基準については、民間ベースで策定され、有機農業と同じように認証機関 により行われている。日本では、日本のオーガニックコットン協会が違う方法で認証を行 ってきた(2010 年末まで)。 4)認証基準について 有機栽培(綿花を含む)については、米国、EU、インド、日本などで、それぞれ国が定める 基準があり、認証機関が認証を行い、証明書を発行している。しかし、繊維製品について は、国の規定はない。代わりに、世界オーガニック繊維製品基準(GOTS)を、IWG(国 際作業グループ)がつくり、それに基づいて認証を行っている。構成メンバーは、日本オ ーガニックコットン協会 (日本)、OTA (米国)、Soil 協会 (英国)、IVN (ドイツ)。他に、オ ーガニック・エクスチェンジの認証基準がある。 5)経産省のガイドラインによる使用率表示と対策 日本では、2010 年 4 月から、経産省の「オーガニックコットン混率表示のガイドライン」 が施行される予定となっている。これにより、オーガニックコットン製品のトレーサビリ ティが厳しく問われることとなる。しかし、綿製品製造のサプライチェーンには多くの小 規模な工場が関与しているので、認証経費と社内整備に大きな負担がかかり、GOTS 認 証を受けられない会社が出てくることは明白である。そのためにオーガニックコットン商 -2- 品化が抑制されることは望ましいことではないので、その対策について業界で真剣に検討 されている。 -3- コラーゲン線維束構 築における XII 型コラーゲンの機能解析と 商品への応用 日本メナード化粧品㈱ 総合研究所 研究技術部門 皮膚科学第二研究グループ 主任研究員 山羽宏行 皮膚における主要な成分である I 型コラーゲンは、太い線維束を構築し、3 次元的に組み 合うことで、皮膚に強い張力を与え、組織の形状や強度を決める重要な役割を担っている。 コラーゲン線維が形成される過程は古くから研究され、広く知られるようになったが、一方 でつくられたコラーゲン線維が束ねられ、線維束となるメカニズムについては、まだ不明な 点が多い。本演題では、皮膚のシワ、タルミを防ぐ新たなアプローチについて、コラーゲン の線維束構築に着目した我々の研究結果を中心に考察する。 コラーゲン線維束構築を誘導する代表的な成分として IX 型、XII 型、XIV 型コラーゲンが あり、それらは、自身では線維を構築することなく、その他の線維状コラーゲンを修飾する。 特徴としてコラーゲン構造と非コラーゲン構造を有していることがあげられ、線維束構築を 誘導するメカニズムとして、コラーゲン構造部分でコラーゲン線維と接着し、フリーとなる 非コラーゲン部分が線維間の反発を低減して線維束構築が進むと考えられている。 我々は、加齢に伴う XII 型コラーゲン発現の変化及び I 型コラーゲンの線維束構築の変化 を評価した。継代数の異なる線維芽細胞における遺伝子発現解析を行った結果、加齢により XII 型コラーゲンの mRNA 発現が低下した。これらの線維芽細胞を I 型コラーゲンで作製した ゲルに包埋培養した結果、加齢に伴いゲルの収縮量が減少した。さらに、ゲルを走査型電子 顕微鏡(SEM)観察した結果、コラーゲン線維束の構築量は加齢とともに低下した。これらの現 象は、加齢に伴う皮膚の弾力性の低下やシワ、タルミの形成の原因となっていると考えられ た。 さらに、コラーゲンゲル包埋培養モデルにおける XII 型コラーゲンの分布を免疫 SEM によ り観察した結果、XII 型コラーゲンは、コラーゲン線維束部分に局在しており、加齢に伴い その量は減少した。したがって、XII 型コラーゲンは、I 型コラーゲンの線維束構築に影響し、 加齢に伴う組織の強度や柔軟性の変化に関与していると考えられた。 従来、皮膚の主要成分である I 型コラーゲンを増やすことにより、皮膚のシワ、タルミを 防ぐ試みがされてきた。しかしながら、産生されたコラーゲンがどのように構築されるかに よって、組織の強度や形、機能が異なってくる。我々は、皮膚の老化防止の新しいアプロー チとして、加齢により低下するコラーゲンの線維束構築能力を改善することを目的とし、線 維束構築を促進する有効成分の研究及び商品への応用を行った。 -4- リンパ管の機能低下 が引き起こす しわ形 成メカニズムの解明 と その薬剤開発 ㈱資生堂リサーチセンター 加治屋健太朗 皮膚のリンパ管は、真皮に存在し、真皮内の余分な水分やタンパクなどの不要な因子を回 収するのに重要な役割をしている。また、リンパ管の機能低下はむくみなどの諸症状を引き 起こすことが知られる。一方で、リンパ管の皮膚老化への関わりについてはまったく未知であ った。そこで、まず紫外線を恒常的に浴びた光老化皮膚のリンパ管の変化について解析すると、 1 光老化部位では皮膚リンパ管の数が顕著に減少していることを見出し 、リンパ管の機能が老化 にかかわることが示唆された。 皮膚リンパ管の機能と老化との関連を詳細に検討するために、単回の紫外線による皮膚のリン パ管の変化を解析すると、リンパ管が顕著に拡張して機能が低下することを見出した。 また、 リンパ管の機能低下により炎症性細胞が回収されず皮膚にとどまって炎症状態を長引かせて、皮 膚のダメージにつながることを示した。さらに、紫外線照射によるリンパ管の機能低下には、表 皮で産生されるリンパ管活性化因子VEGFCの発現低下が関与していることを新たに発見した。 2 VEGFC は、リンパ管内皮細胞の増殖を促しリンパ管の機能を促進することが知られている 。こ れらの結果は、VEGFCの発現を上昇させることでリンパ管の機能を促進することが、紫 外線にともなう皮膚ダメージ、ひいては光老化を緩和する有効的な方法であると考えられた。 そこで、表皮でVEGFCの発現を促進する薬剤を約700種からスクリーニングした結果、M ACC(N-methyl-trans-4-aminomethylcyclohexanecarboxamidehydrochloride)に、V EGFCの発現を濃度依存的に増加させる効果を見出した。また、MACCは紫外線照射後 に低下するVEGFCの発現を回復することがわかった。最後に、リンパ管内皮細胞を真皮 内に含む3次元皮膚モデルを作製し、MACCの効果を解析した。その結果、MACCは皮 膚モデル内でリンパ管の管腔形成を有意に促進し、MACCがVEGFCの発現を表皮細胞 で誘導して、リンパ管の機能を促進していることが示された。 我々は、初めて皮膚のリンパ管が紫外線にともなう皮膚ダメージに重要な役割を果たして いることを示し、特に紫外線照射後のVEGFCの発現低下がリンパ管の機能低下を引き起 こすことを明らかにした。本研究で我々が見出したMACCは、VEGFC発現を上昇させ、 リンパ管の機能を促進することで紫外線による皮膚ダメージを緩和する全く新規でしかも効 果的な皮膚老化を抑制する方法を提供すると考えられる。 参考文献 1 Kajiya et al., Journal of Dermatological Science 2007, 47: 241-3 2 Kajiya et al., Journal of Investigative Dermatology 2009, 129: 1292-8 -5- 太陽紫外線が皮膚に与える影響― 光老化 とその制御― 同志社大学 市橋正光 太陽光線に含まれる紫外線は DNA に吸収され、損傷を与える。健康なヒト細胞は除去修 復機構により DNA の傷を元通りに正しく修復する高い能力をもっている。色素性乾皮症 (Xeroderma pigmnetosum, XP)は除去修復能に欠損があるため、紫外線誘発 DNA 損傷 部位に誤った塩基を挿入するため遺伝子変異を高発する。そのため、XP 患児は小児期に紫 外線曝露部位の肌に皮膚がんや小色素班(シミ)が発症する。健康なヒトでも生涯で浴びる 紫外線量が多いと有棘細胞がんになりやい。 健康な人でも多量の紫外線を浴びる顔や手背には若年からシミがでる。XP 患児の皮膚症 状からシミは遺伝子変異により生じると考えられる。一方、シワは遺伝子変異ではなく、紫 外線 B と A による真皮線維蛋白質の切断に関わる酵素(matrix metalloproteinases, MMPs) の発現亢進のためと考えられている。 晴れた真夏の正午頃に 1 時間太陽光線を浴びると色白の日本人では強い日焼け(サンバー ン)で数時間後から皮膚は赤くなり始める。数日後にはメラニン色素が生成され、皮膚は褐 色となる。これら急性反応が生じるので、皮膚の細胞遺伝子 DNA が紫外線を吸収し、ピリ ミジン 2 量体(シクロブタン型と 6-4 光生成物型)を生じるためと理解されている。急性反 応では同時に表皮ランゲルハンス細胞の DNA も傷を受け、機能を失う。そのため、皮膚免 疫は紫外線を浴びた翌日から約 10 日間は抑制された状態が続く。その皮膚に大量の紫外線 を浴びると紫外線を浴びていない皮膚を介する細胞性免疫が抑制され、抗原特異的トレラン スが誘導される。 急性反応を数十年続けると、光老化と呼ばれるシミ・シワなどの皮膚の慢性障害が発症す る。さらに、皮膚の良性・悪性腫瘍も生じる。高齢社会の日本では 65 歳以上になっても若 者と共に健康で美しく働くためには、紫外線による皮膚の慢性障害を予防し皮膚の若さを維 持することは重要である。さらに最近は、赤外線を大量に浴びるとシワができやすいことが 遺伝子レベルで提示され、注目されている。一方、可視光線と赤外線はシミやシワなど光老 化皮膚の治療に有効であり、実際に多くの患者が光治療を受けている。 紫外線 B が生体に有益な点はビタミン D の生合成である。近年、紫外線の有害性が明らか となり、紫外線防止が徹底した結果、血液中のビタミン D 濃度が低下し、骨折や内臓がん発 症の頻度が高くなるなどの弊害が指摘されている。更に紫外線 B でも少量は、逆に皮膚のバ リア機能に有益な面があることを示唆する研究データも出始めている。 本講演では、太陽紫外線の有害性を分子レベルで説明し、また、紫外線による慢性損傷の 治療法および光線の有益な側面に関して要点を紹介する。 -6-
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