1.PTAの会議

群馬県教育委員会 平成16年発行「PTAのABC」より抜粋
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実践編
1.PTAの会議
PTAの会議には、総会をはじめ、実行委員会・学級委員会・学年委員会・専門委員会などがあります。それ
ぞれに会議を開いてPTAの活動のあり方、運営の仕方等を話しあいによって決めます。
総会の計画や運営委員会のあり方
総会は、PTA全会員によって構成され、予算・決算・役員承認・事業計画・事業報告などPTA活動の基本と
なることがらを決める最高の意思決定の議決機関です。この総会は、年に1、2回しか開かれないのが現状の
ようです。
総会に次ぐ議決機関としての役割を果たすのが運営委員会です。ここでは、専門委員会・学年委員会など
の組織の代表を加えることによって、会員一人ひとりの意見や要求を反映させることができます。
(1)運営委員会
会員・各委員・正副委員長が決定すれば、運営委員会を開くことができます。この運営委員会に執行機関
という性格をもたせているPTAが多いようです。運営委員会の職務内容はいろいろありますが、総会と関係
が深いものとしては、総会の準備、PTAの事業計画、PTAの組織・運営の検討などです。
(2)総会
総会は、みんなで討議し結論を見いだすために開くものですから、前もって議題や議案内容を知らせておく
必要があります。
出席した会員が充足感をもてるように、授業参観と組みあわせたり、レクリエーションや学習活動を組み入
れたりして斬新な会を作り上げる工夫が大事です。
会議の進め方や司会の仕方
会議を進める場合は、議事規則に基づいて行います。この議事規則には次のような原則があります。
① 会員のすべてに対して公正であること。
② 会員のすべてが平等に取り扱われること。
③ 議事は一つずつ順番に取り上げること。
④ 多数者の意見で議事が決定されること。
⑤ 少数者の意見が尊重されること。
これらは、事務の正解さ、時間の節約、会議の秩序・統一・公平を期するために守らなければなりません。
(堅苦しくなく、巧みに運用することが大切です。)
会議をリードするのは司会者です。司会者が司会についての知識を身につけたり、会議への事前準備をし
たりしておくことによって会議が順調に進みます。会議の前に準備すべき点をあげてみると次のようです。
① 会議の目的や性格をよく知っておくこと。
② 取り上げる問題についてよく調べておくこと。
③ 話しあいの種類や目的に応じて、進め方の計画を立てること。
④ 会議に参加する人はどんな人たちか調べること。
⑤ 進行予定を主催者とよく打ちあわせておくこと。
⑥ 委員の出席しやすい日時に設定すること。
群馬県教育委員会 平成16年発行「PTAのABC」より抜粋
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実践編
2.学年・学級PTA活動
これまでは一般的にいって、学年・学級PTA活動より専門委員会活動のほうが、活発に行われていたように
思います。しかし、子どもを健やかに育て、心豊かな人間に成長させるために、親が何をすべきかなどの身
近な問題について話しあったり、子どもの実態を把握しながらより良い方策を考えあったりするために、学
年・学級PTAは、PTA組織の中で最も基本的な単位といえます。そのうえ親や教師は毎日子どもとじかに接し
ているわけですから、双方が手を携えて、数少ない話しあいの場を充実させることにより、大きな実りが期待
されると思われます。これからのPTA活動では、学年・学級PTA活動を重視していくことが望まれます。
学級PTAの運営
「PTA学級懇談会に父母の参加が少ない。」とか「出席しても意見が出ず、話しあいにならなかった。」などと
いうことをよく耳にします。みんなが参加でき、学習できる学級PTAの運営のためにはどのようにしたらよいで
しょうか。
① 働いている父母が参加できる日時や会場を考えて計画する。
② 父母と教師が信頼しあい、ともに会員として学びあう関係を作る。
③ 年間プログラムを作り、計画的に学習、実践し、評価する。
特に、”大事なこと”を”数少なく”計画すること。
④ 学級PTAを、PTA規約の中にはっきり位置づける。
⑤ 必要経費を予算化して、効率的な運営を図る。
⑥ 活動状況を『学級PTAだより』などで全会員に知らせる。
⑦ ときには、子どもの参加を含めた楽しい集会の方法も工夫する。
⑧ 話しあいを深めるために、事前にテーマを十分検討して会員に知らせておく。
学級PTAの会を楽しく充実したものにするために
「本音の出ないPTA集会に出ても仕方がない。」「仕事を休んで出るほど楽しくもなさそう。」という声の多い中
で、「きょうのPTAの会は、出たかいがあった。」といったPTA会員の声をまとめたものがありますので、次に
記してみましょう。
・教師の本音がたっぷり聞けた。
・親同士の意見交換がよくできた。
・話だけでなく、資料も提供され、家へ帰ってから夫婦や親子の話し合いができた。
・子どもたち全体の様子がよ<わかるような、教師の具体的な話があった。
・子どもの作文や具体的な行動について、心温まる話が聞けた。
・教師の人生観・価値観がわかるような話があり、親も教育について考える機会をもてた。
・子どもの実際の姿を見ることによって、学校における子どもの様子が理解できた。
などです。
学年PTAの運営
学年委員や学年委員長は、同一学年の親と教師が協力して学習し子どもを健全に育てていくための実践
活動を考えることが大切です。学年委員会を進めるために留意することを次に掲げてみます。
① 会員相互の学習を中心に、自主的・主体的に運営する。
② 会員の意志や希望を尊重した学習プログラムを編成する。
③ 各学級PTAの諸問題について、情報交換や連絡調整に努める。
④ 魅力ある雰囲気づくりや学習の形態を工夫する。たとえば講演会やパネルディスカッション、講座など
のように参加者がただ聞くだけでなく、積極的に参加できるような形態(バズ・セッションなど)も取り入れてみ
る。
⑤ 活動内容を『学年PTAだより』や広報紙などで全会員に知らせる。
PTA学年行事といえば、親睦のみを追求し親子レクリエーション等だけで終わっていることも少なくありませ
ん。しかし、”子どもを育てる”という重責を負う会員の資質の向上を図るためにも、あるいは就労する母親が
増加している現実から見ても、子育てについての学習を基礎に据えるなど、思いきって行事の見直し・精選を
進めることも大切です。
「PTAだより」のすすめ
一人でも多くの会員が、ためらわずに参加できるような会を設定する努力が必要ですが、出たいと思っても
やむを得ない事情で会に出られない会員にとって、PTAだよりはとてもありがたい教育情報源ですし、これを
読むことにより次は出ようという気持ちにしてくれるものです。
PTAだよりを出す意義は、
①どのような活動が展開されていて、どのような方向に進もうとしているかを会員が理解することができる。
②行事に参加した会員も参加しない会員も、活動を認識しみんなで活動しているという連帯感がもてる。
③PTA活動を公開し、その足跡を示すことによって、PTA会員の活動の指針となる。
などでしょう。
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実践編
3.専門委員会の活動
結成当時のPTAは、学校の設備充実などについての資金集めが本務であるような印象を与え、成人教育
団体・社会教育団体としてのPTAは理解されにくかったようです。現在でも、まだPTA本来の活動である「親と
教師の自主的な学習や実践の団体である」ということは、会員の間にも十分ゆきわたっているとはいいにくい
のが実情でしょう。
これからのPTA活動では、家庭や地域の教育力を高めるような学習活動や実践活動を自主的に進めていく
ことが大切です。
専門委員会の種類と役割(幼・小・中PTAの例)
PTAには、総会の決定に基づき、具体的な計画を実行していく機関として各種の委員会があります。
委員会の種類は、各PTAのおかれた地域の実情・課題によって異なりますが、一般に、専門委員会、学年・
学級委員会、あるいは地区委員およびこれらの委員会をまとめたり、調整したりする運営委員会などが考え
られます。このほか、一時的に必要な活動を進めるために特別委員会を設けることがあります。特別委員会
は、そのめざす活動が終われば当然解消するものです。
(1)成人教育委員会・企画研修委員会
会員が生涯学習の立場から、よりよい親・教師としてその資質を向上するための研修事業を企画・実施す
る委員会です。PTAによっては年に1、2回の講演会や趣味の会(手芸教室・料理教室・エアロビクス講習な
ど)やレクリエーション行事に終始しているところもあるようです。しかし、地域の公民館などを中心とした生涯
学習グループの活動が活発になり、また働く母親が増加している現状から、PTAは“必要なこと”を”数少なく”
計画することに留意するほうがよいと思われます。やはり、子どもの健全育成に直接かかわる親や教師の資
質向上に役立つ行事や事業を中心に進めることが大切です。
(2)進路指導委員会
子どもが小さいときから、自分を知り、自分の人生を考え、いずれ自分に適した進路を選択できるようにす
るには、親や教師はどのように指導・援助していったらよいかなどの学習を、企画・運営していく委員会です。
子どもが中学生になったとたん、進路指導を始めるのではなく、幼いときから子どもが持っている「大きくな
ったら○○になりたい」などの夢を育み、成長とともに子どもの適性・興味・能力などに応じて子ども自らが進
路決定できるよう、学校と家庭が連携していくことが極めて大切です。
(3)保健委員会
社会体育が地域の中で活発に行われるようになっている最近では、従来のPTAの親睦や体力向上をねら
いとして企画するスポーツ・レクリエーションなどは見直しの方向にあるようです。PTAでは、むしろ子どもの
心身両面から健康の維持増進に努めることが重視されつつあります。不登校の問題や子どもたちの精神的
な面での問題、また受験体制や情報機器の普及による子どもの日常生活の変化に伴う問題などが、当面
PTAでも扱っていかなくてはならない大きな課題といえるでしょう。さらに、性情報のはんらんする状況の中
で、性教育の必要性はいうまでもなく、反面、性教育の方法の難しさも指摘されており、これも今後の課題で
す。
(4)広報委員会
広報委員会は、PTA広報紙を発行するのが主な仕事です。PTA活動を全会員に伝えることは、欠席者への
配慮のみでなく、活動を公開するという点でも大切です。加えてPTA活動の記録保存にも役立つばかりか、
会員の間の世論喚起の意味でも重要です。また、広報紙を校区の住民にも配布するなど地域全体で子ども
を育てる雰囲気づくり、開かれた学校・PTAをつくっていくことが必要です。
広報紙作成にあたっては、会員がいちばん知りたいと思っていることを取り上げるようにして、「読まれる」
広報紙づくりを心がける必要があります。ただし、会員相互の中で見解が分かれる問題については、裁断を
下したり、方向を示唆したりすることは避けるべきです。
(5)校外生活委員会
子どもたちの学校外における社会生活を正しく指導していくことは非常に大切なことです。学校では同学年
による集団生活をしていますが、地域では学年を越えた集団の中での社会性の育成が必要です。しかし、最
近では、小学生でも同じクラスの子以外は遊ばない傾向もあり、また中学生では部活動で帰宅時間も遅く、
地域での催しや行事に参加することは皆無に等しいといえます。このように、子どもたちが異年齢集団で交
流する機会がますます少なくなる上に、最近の事故や性犯罪等の事件を考えると、地域の教育力の重要性
を改めて考えさせられます。
また、街頭交通安全指導や巡回パトロールが再検討されているPTAもあるようですが、地域の実態や子ど
もの実情をしっかりふまえて、子どもがいずれ自立していけるような方向をめざしたいものです。いずれにし
ても地区委員会や他の健全育成団体との連携によって、時代に即応した取り組みを図り、よりよい成果をあ
げていきたいものです。
(6)その他の委員会
地域の実情や学校の規模によって委員会の設置状況は様々ですが、以上のほかに補導・給食・安全など
の委員会も設置されているようです。
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実践編
4.事業計画の立案
PTA活動が盛んで、すぐれた研修や事業の計画を立て、実践している単位PTAも増えてきました。今後さら
に、会員の資質の向上に役立ち、子どもの幸せにつながる活動を実現するための事業計画はどう立案した
らよいか考えてみましょう。
事業計画のたて方
事業計画の作成に当たっては、会員の要望や意見をくみ取り立案することが大切です。また、専門委員会
相互の連絡や調整、学校との連携をはじめ、地域の各種団体との連携も十分配慮してほしいものです。特
に、留意すべきことをあげてみましょう。
①その年度の目標・努力点などを踏まえ、会員の願いや要求を十分くみ入れたものにすること。
②地域や学校の課題解決に役立つような創意に満ちたものであること。
③その事業をしなければならない「課題」が明確になっていること。
④今までの事業や行事を反省し、時代の進展や要求とともに、改善し新しいアイディアを盛り込むこと。
⑤事業は単なる繰り返しでなく、長期の見とおしの中に位置づけられた質的な進歩があること。
⑥会員が積極的に参加し、活動しやすいものであること。
各委員会はそれぞれの事業計画を立てる際に、全体とのかかわりと委員会としての特性を考慮することが
大切です。また、PTAの目的は、会員相互の学習により「児童生徒の健全な成長を図る」ことにあります。し
たがって、中心となる事業は、それを実現するためのものが望まれます。
事業を進めるうえでの留意点
どんな事業でも、全員参加はほとんど望めません。参加できなかった会員のために、広報等で事業内容と
結果について知らせることが大切です。そのことが、会員の関心を呼び起こすとともに、次の事業への参加を
促すことにもつながります。
また、会員からアンケートをとったり、会員の意見を求めるなどするとともに、関係者はあとで反省会をもち、
次の計画の参考にしたいものです。
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実践編
5.広報活動
PTAの活動や運営は、会員一人ひとりの意志が反映されなければなりません。そのためには、PTAの活動
の状況や学習の成果を会員全員に知らせ、課題や問題点を一緒に考えあうことが必要です。そしてこのこと
は会員一人ひとりの意識を高める啓発的な役割があります。また、会員の共通理解や連帯感を深め、会の
運営を円滑にする働きもあります。PTAの集会活動や会議の様子を欠席者にもできるだけ多く伝えることに
よってPTAの活動を一層活性化することができるのです。
広報紙は、PTA活動を広める上で大きな役割があります。また、全会員を対象に配布するものですので、最
優先で予算づけを行い、PTAの中での広報紙の発行を担当する部や専門委員会を設けるなど、できるだけ
積極的に発行するように心がけることが大切です。例えば「広報部」「広報専門委員会」として専門部の中に
位置づける必要があります。
PTAの広報紙は、学校や学級が出す「学校だより」「学級通信」とは、性格が違います。学校任せにしないで
PTA自らが企画し、発行することが大事です。発行回数は、各学期ごとに2回、年6回ぐらいが理想ですが、学
期1回、年3回ぐらいの発行が多いようです。
広報紙の取材の方法
広報専門委員会で決めた掲載テーマによって記事を作ります。その取材方法は次のようです。
①インタビュー
特定の人や不特定多数の人たちにインタビューして、それをそのまま記事にする場合があります。これは、
関係者に会って話を聞いたり、講演会・音楽会等の催しものがあった場合に聴衆の感想を聞いたりする方法
です。
②ルポルタージュ
広報委員が直接「給食センター」等の現地に足を運んで、実際に見たり聞いたりしたことを記事にする方法
です。取材に出向くときには、2、3人で行くと見落としてしまうことがらも少なくなります。それらを記事として掲
載すれば、広報紙に活気を与えることになります。
③アンケート調査
PTA新聞にかかわる人が多ければ多いほど、その記事に関心を持つ人も多くなると思います。ただし、アン
ケートは、多くの人の意見を吸い上げることができる反面、質問の量が限られるため、回答者の全体的な意
見がとらえにくいという欠点があります。
④座談会
立場の異なる人4、5人による座談会をテープに取り、後でテープを起こしてそれを要約し、記事にする方法
です。テープ起こしは、その場に立ちあった人が担当することが大事です。
紙面づくり
読みやすく、親しみのあるPTA広報紙にするためには、広報紙を学校と家庭を結ぶパイプ役と考えて、でき
るだけ多くの会員の考えを載せることが大切です。そして、記事の文章が「読みやすいこと」「わかりやすいこ
と」「事実を正確に伝えていること」が必要です。
また、文章はできるだけ短くするのが望ましく、長くても普通60字ぐらいにするのが適当であると言われて
います。広報紙の記事には「お知らせの記事」と、読者に「考えさせる記事」との二通りがあります。また、そ
れぞれの 記事を紙面にどのように配置するかのレイアウトが重要な意味を持ちます。
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実践編
6.家庭教育学級やPTAセミナー
PTAの学習活動では、親と教師が子どもを幸せにするために必要な知識や技術を自らの力で学んでいこう
という自立的な相互学習が大切にされています。つぎに、「家庭教育学級」「PTAセミナー」の活動例等をあげ
ておきますので、子どもや地域の実態などを考慮し、参考にしてください。
(1)ねらい
父母と教師が連携協力し、子どもとの接し方を学習する中で子どもの心を見る目を養い、家庭の教育力を
高め、児童生徒の健全育成を図る。
(2)内 容
①子どもの発達の理解や心理に関する講義・実技実習等
②児童生徒の理解援助に関するシンポジウム・講演会(公開)
(3)実施上のエ夫
①実施に当たっては、土曜日の午後、日曜日及び夜間等に開催し、父母及び教師の参加しやすい時間を設
定しましょう。
②参加できない会員に対しては、広報を通じて、学習内容を周知するよう配慮しましょう。
③会場は、学校のほか、公民館等公共施設の利用についても配慮しましょう。