近年の食中毒発生状況

2014 年
5月号
近年の食中毒発生状況
今回は、厚生労働省の食中毒事件一覧速報より、近年の食中毒発生状況および食中毒の主な原因微生物の特徴とその予防策につい
てご紹介します。
① 食中毒発生状況の推移
平成25年は、事件数・患者数ともに前年より減少し、特に事件数は過去10年間で最も少なくなりました(図1)。
病因物質別では、前年に引き続き事件数・患者数ともにノロウイルスが1位になっています(図2・図3)。
1,800
45,000
1,600
40,000
事件数
事 1,400
件
数 1,200
牛ユッケや牛レバーの
生食禁止により、肉の生
患
者
30,000 数
35,000
患者数
食の危険性が周知され
てきており、それに伴い
肉由来の食中毒(カンピ
1,000
25,000
800
20,000
性大腸菌など)が減少し
600
15,000
ているようだ。
400
10,000
200
5,000
0
0
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
事件数(平成25年実績)
×
×
×
患者数(平成25年実績)
30,000
1位:ノロウイルス
1位:ノロウイルス
600
2位:カンピロバクター
25,000
2位:カンピロバクター
3位:病原大腸菌※
3位:アニサキス
500
牛レバー
ユッケ
図1.食中毒発生件数(事件数・患者数)の推移
700
ロバクターや腸管出血
20,000
※腸管出血性大腸菌を除く
400
15,000
300
10,000
200
5,000
100
0
0
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
ノロウイルス
サルモネラ属菌
図2.病因物質別
※※
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
カンピロバクター
アニサキス
ノロウイルス
黄色ブドウ球菌
その他のウイルス
その他のウイルス
食中毒発生状況(事件数)
図3.病因物質別
カンピロバクター
病原大腸菌※
サルモネラ属菌
ウエルシュ菌
※※
食中毒発生状況(患者数)
※※食中毒事件数・患者数上位6位(平成 25 年実績)の細菌・ウイルス・寄生虫を記載
ノロウイルスは相変わらず猛威をふるっており、引き続き各施設で衛生管理の強化に努める必要が
ある。カンピロバクターは減少傾向だが、依然として肉の生食による事故が発生している。
一方、平成25年よりアニサキスなどの寄生虫による食中毒が病因物質として報告されるようになり、
早速アニサキスが事件数で3位にランクインしている。
② ノロウイルス食中毒発生状況
ノロウイルス食中毒は年間を通して発生しますが、特に12月から翌年1月にかけて流行のピークを迎えます(図4・図5)。
平成25年末までは、ノロウイルス食中毒が例年以上に発生している感覚はありませんでしたが、平成26年1月17日に報道された浜松市
の学校給食パンによるノロウイルス食中毒事件以後、相次いでノロウイルス食中毒事件が報道されています。
ノロウイルスには総合的な対策が必要です。個人の衛生管理、施設内の清掃・消毒、食品の加熱温度管理をそれぞれの持ち場で徹底
します。これらを徹底するためには従業員教育を繰り返すことが重要なポイントとなります。繰り返し教育を行い、従業員全員で予
防策を実施しましょう。
140
9,000
H26
120
H26
8,000
H25
H24
100
H24
6,000
H23
80
H25
7,000
H23
5,000
H22
H22
4,000
60
3,000
40
2,000
20
1,000
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
0
図4.ノロウイルスによる食中毒発生件数(事件数)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
図5.ノロウイルスによる食中毒発生件数(患者数)
注)平成 26 年のデータは平成 26 年 5 月 1 月現在で未報告があるため、今後追加が見込まれます。
③
① 食中毒の主な原因微生物の特徴と予防策
食中毒の主な原因微生物の特徴と予防策
平成25年に発生した食中毒の主な原因微生物の特徴とその予防策を表1にまとめました。ノロウイルスは細菌に比べて非常に小さい
など予防する上で厄介な特徴があるため、より高いレベルの衛生管理が求められます。一方、カンピロバクターやサルモネラ属菌は
食品の十分な加熱や二次汚染の防止など基本的な予防策を徹底すれば比較的容易に防げるはずですが、近年は食中毒事故が相次いで
発生しています。今一度これらの原因微生物の特徴と予防策を確認し、各施設で食中毒撲滅に努めましょう。
主な原因微生物
ノロウイルス
主な特徴
・細菌よりも極めて小さく、手のシ
ワなどに入り込む
・ヒトの腸管内で増える
・症状が出ない不顕性感染を起こ
し、糞便中にウイルスを排出
・環境中で感染性を長期間維持
・症状回復後も2週間から1ヶ月
程度糞便中にウイルスを排出
潜んでいる場所
二枚貝、飲料水、糞
便・嘔吐物、ドアノブ等
の環境、ヒトの手指な
ど(赤字は感染による)
共通の特徴と予防策
・少量で感染するため、食中
毒予防の3原則(以下、3原則)
「増やさない」が適用されない
・手指や調理器具等を介して
二次汚染する
<共通の予防ポイント>
3原則のうちの「つけない」を
徹底する
・衛生的手洗い
・衛生手袋やマスクの正しい
・微好気性で、酸素が少しある環 鶏、牛、豚、羊、犬、
着用
境を好む
猫、鳩などの動物の消 ・衛生的な作業着の着用
・汚染された食品(特に鶏肉)、飲 化管内(これらの動物 ・非加熱食品、加熱後の食品
料水の摂取や、動物との接触に の糞便からも検出され の取扱い
よってヒトに感染する
ることがある)
・食器・調理器具の洗浄・消毒
カンピロバクター
・乾燥や低温には強いが、熱や酸
には弱い
・汚染された鶏卵・食肉等の食品
の摂取や、ヒトやペットとの接触に
よってヒトに感染する
鶏、豚、牛などの動物
の腸管や河川、下水な
ど自然界に広く分布し
ている
その他予防のポイント
①持ち込まない
・感染したら仕事を休む
・健康状態の把握・管理
・定期的な検便検査の実施
②拡げない
・嘔吐物の適切な処理
・定期的な施設内の清掃・消毒
③加熱する
・食品の中心温度85~90℃で90
秒以上
①加熱
・食品の中心温度65℃で1分以上
②手洗い
・鶏肉を扱った手指は、他のもの
に触る前に必ず洗浄
③器具類の使い分け
・包丁、まな板等の器具は用途別
に分ける
①加熱
・食品の中心温度75℃で1分以上
②手洗い
・生肉・生卵を扱った手指は、他
のものに触る前に必ず洗浄
③冷却
・卵は冷蔵保管し、早めに使用
④迅速
・卵の割り置きはやめる
サルモネラ属菌
表1.食中毒の主な原因微生物の特徴と予防策
参考・出典:厚生労働省 HP,東京都福祉保健局 HP,公益社団法人日本食品衛生協会;
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