科学・技術と人間セミナー(ゲーム理論入門) 第 6 回演習 第 6 回演習

科学・技術と人間セミナー(ゲーム理論入門) 第 6 回演習
第 6 回演習問題:テキスト p.133 練習問題 6-1 と次の追加問題を行え. (ヒント&注意:下の例題を参考にせよ. p.133 練習問題
6-1 の答 (p.290) には不足があります. また, 答 (p.290) ではプレイヤー 2 の情報集合は u21 , u22 の順ですので注意せよ)
基本事項: 展開形ゲームにおいて, プレイヤー i の 全ての情報集合において行動を選択する戦略 を i の 行動戦略 と言う. 戦略
形ゲームと同様に確率を用いない行動戦略を純戦略と言う. 展開形ゲームにおける各プレイヤーの戦略は, そのプレイヤーの行
動戦略となる. 互いに最適応戦略になっている全プレイヤーの行動戦略の組が展開形ゲームのナッシュ均衡点である.
定義 6.1(p.128): 展開形ゲームにおいて, すべての部分ゲーム (全体のゲーム自身も含む) にナッシュ均衡点を導く行動戦略の
組を部分ゲーム完全均衡点と言う.
注意. 部分ゲーム完全均衡点は先読み推論 (後向き帰納法) により求められる. 部分ゲーム完全均衡点の集合はナッシュ均衡点
の集合の部分集合である. 真の部分ゲームが存在しない展開形ゲームにおいては部分ゲーム完全均衡点の集合とナッシュ均衡
点の集合は等しい.
追加問題:次の展開形 2 人ゲームの部分ゲーム完全均衡点を (純戦略の範囲で) 求めよ. また,純戦略によるナッシュ均衡点で
部分ゲーム完全均衡点でない物があれば求めよ. ここで, 情報集合 uij はプレイヤー i の j 番目の情報集合である. また, 左がプ
レイヤー 1 の利得であり, 右がプレイヤー 2 の利得である.
(1)
3, 0
(2)
3, 0
u21
u11
2,
2
u21
u11
N
x2
N
v11
v21
u12
v11
y2 4, 1
v21
u12
x1
Y
x
1
Y
v12
u22
v
1,
3
12
y1
x2
y1
v22
v22
y2 5, 4
x2
2, 2
y2 4, 1
x2
y2
1, 3
5, 4
例題. 次の展開形 2 人ゲームの部分ゲーム完全均衡点を (純戦略の範囲で) 求めよ. また,純戦略によるナッシュ均衡点で部分
ゲーム完全均衡点でない物があれば求めよ. ここで, 情報集合 uij はプレイヤー i の j 番目の情報集合である. また, 左がプレイ
ヤー 1 の利得であり, 右がプレイヤー 2 の利得である.
u21
x2
(1)
u12
v12
u11
Y
v21
x1
y1
u22
v22
v11
N
u21
3, 2
x2
(2)
u12
y2 1, 3
x2
y2
3, 2
v21
x1
y1
Y
v11
x2
v22
1, 1
N
2, 5
y2 1, 3
v12
u11
3, 2
y2
3, 2
1, 1
2, 5
(解) (1) この展開形ゲームを行動戦略の戦略形ゲームに変換すると
HH
HH 2 x2 − x2 x2 − y2
HH
1
Y − x1
(3, 2)
(3, 2)
y2 − x2
y2 − y2
(1, 3)
(1, 3)
Y − y1
(3, 2)
(1, 1)
(3, 2)
(1, 1)
N − x1
(2, 5)
(2, 5)
(2, 5)
(2, 5)
N − y1
(2, 5)
(2, 5)
(2, 5)
(2, 5)
プレイヤー 1 と 2 の純戦略の組 (Y − y1 , x2 − x2 ), (Y − y1 , y2 − x2 ), (N − x1 , y2 − y2 ), (N − y1 , y2 − y2 ) がナッシュ均衡点で
ある.
部分ゲーム完全均衡点は先読み推論により求める. 情報集合 u21 におけるプレイヤー 2 の最適応戦略は y2 , 情報集合 u22 にお
けるプレイヤー 2 の最適応戦略は x2 である. よって, 情報集合 u12 におけるプレイヤー 1 の最適応戦略は y1 である. この時, プ
レイヤー 1 と 2 の利得の組は (3, 2) であるから, 情報集合 u11 におけるプレイヤー 1 の最適応戦略は Y である. 従って, プレイ
ヤー 1 と 2 の純戦略の組 (Y − y1 , y2 − x2 ) が部分ゲーム完全均衡点である.
よって,(Y − y1 , x2 − x2 ), (N − x1 , y2 − y2 ), (N − y1 , y2 − y2 ) はナッシュ均衡点であるが部分ゲーム完全均衡点ではない.
裏面に続く
1
u21
x2
(2)
u12
v21
x1
y2 1, 3
v12
u11
Y
y1
x2
v22
v11
N
3, 2
y2
3, 2
1, 1
2, 5
この展開形ゲームを行動戦略の戦略形ゲームに変換すると
HH
HH 2
x2
H
1
H
Y − x1
(3, 2)
y2
(1, 3)
Y − y1
(3, 2)
(1, 1)
N − x1
(2, 5)
(2, 5)
N − y1
(2, 5)
(2, 5)
プレイヤー 1 と 2 の純戦略の組 (Y − y1 , x2 ), (N − x1 , y2 ), (N − y1 , y2 ) がナッシュ均衡点である.
部分ゲーム完全均衡点は先読み推論により求める. 情報集合 u21 においてプレイヤー 2 は点 v21 にいるか点 v22 にいるか分か
らないので, 情報集合 u12 におけるプレイヤー 1 の戦略を考慮しないと戦略を選択できない.
そこで, 点 v12 から後の部分ゲームのナッシュ均衡点を調べると
HH
HH 2
x2
HH
1
x1
(3, 2)
y1
(3, 2)
y2
(1, 3)
(1, 1)
より点 v12 から後の部分ゲームのナッシュ均衡点は (x1 , y2 ), (y1 , x2 ) である. (x1 , y2 ) の時,プレイヤー 1 と 2 の利得の組は
(1, 3) であるから, 情報集合 u11 におけるプレイヤー 1 の最適応戦略は N である. (y1 , x2 ) の時,プレイヤー 1 と 2 の利得の組
は (3, 2) であるから, 情報集合 u11 におけるプレイヤー 1 の最適応戦略は Y である. 従って, プレイヤー 1 と 2 の純戦略の組
(N − x1 , y2 ), (Y − y1 , x2 ) が部分ゲーム完全均衡点である.
よって,(N − y1 , y2 ) はナッシュ均衡点であるが部分ゲーム完全均衡点ではない.
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