環境大臣賞 中学生 祖母と共に四半世紀生きる猫 遠藤 奏夏(えんどう

◎環境大臣賞 中学生
祖母と共に四半世紀生きる猫
遠藤 奏夏(えんどう
かな)
お茶の水女子大学附属中学校
三年
母方の祖父母の家には、可愛い猫がいる。
その猫の名は「ゴロちゃん」。茶トラで毛並みが美しく、目が大きくてとても美形で、よ
く通る高くて澄んだ鳴き声を持つ雄猫だ。幼い頃によくゴロゴロと喉を鳴らし、家の中を
ゴロンと長く伸びて転がっていたことが名前の由来だが、外見も性格も雄猫なのにどこ
か女らしさが漂っている。私もゴロちゃんのことが大好きで、この文章も、私の隣で寝て
いるゴロちゃんに癒されながら書いている。
そんなゴロちゃんも、今年で二十四歳の老猫だ。人間の年齢に換算すると疾うに百
歳を超し、百二十歳近いのだが、まだまだ元気に日々過ごしている。猫の寿命は十五
歳位だと言われているのに、何故ゴロちゃんはこの年でも元気なのだろうか? 祖父
母の家では、ゴロちゃんの他にも今までに様々な生き物を飼っているが、全ての生き
物が寿命以上に長く生きたという。ペットが長生きする理由には、祖母の弛まぬ努力が
隠されていた。
祖母がこれまでに世話をしてきた動物は、セキセイインコ・小軍鶏・ジャンガリアンハ
ムスター・アカハライモリ・雑種の中型犬などで、ミシシッピアカミミガメとゴロちゃんは、
現在も祖父母と共に暮らしている。
ゴロちゃんは、三兄弟の中、唯一の雄猫で、一匹だけ祖父母の家に引き取られた。
私が生まれた時、既に八才になっており落ち着きつつあったが、やんちゃ盛りの頃は
網戸に登ったり、家中を全速力で走り回ったりと、元気が有り余っていたそうだ。
二十四歳という超長寿猫は、動物写真家の岩合光昭さんにも驚かれ、祖母の行き届
いた世話を褒められたという。しかしゴロちゃんは一度、生命の危機に瀕したことがあ
る。それは今年のお正月のことで餌も水もとれず寝たきりになってしまったのだ。それ
までも高齢になってからは時々体調を崩していたが、今回は一番症状が重く、獣医か
らも「春までもつか分からない」と言われたそうだ。祖母はそれでも諦めずに、ゴロちゃ
んにとって最も過ごしやすい環境作りや、少しでも栄養のとれる餌を試行錯誤して作る
など、懸命な努力を続けた。その結果、ある日ゴロちゃんは突然立ち上がり、自分の力
で歩くまでに回復したのだ。今も祖母に介助されながら、自力で生活している。
「動物を飼う時は、絶えず細やかな心遣いが必要」と祖母は日頃から言っている。ペッ
トの食生活や環境に配慮し、体を壊した時は適切な病院で診てもらうことが、ペットの
長生きにつながった。また、私が祖母に「動物愛護とは?」と問うたところ、「命を全うさ
せてあげること」と教えてくれた。今もゴロちゃんの面倒を見るため祖母は夜中に何度
も起きたり、餌を一日何回も手から食べさせたりと苦労は多い。しかし、その献身的な
世話のお陰で、ペット達は最後まで幸せに過ごすことが出来るのだ。
ペットに可愛い洋服を着せたり、贅沢な環境を与えることも、動物を愛する方法の一
つかもしれない。最新医療で延命することも可能な時代だが、果たしてそれらの方法
は動物にとって本当に幸せなのだろうか。特別なことはせず、動物の目線に立ち、出
来ることをしてあげることで、飼い主の愛情は必ずペットに伝わり、ペットも飼い主と過
ごす時間に幸せを感じる。そして一緒に生きていることに対して喜びの感情が生まれ
ることで、祖母の飼っている生き物達は寿命を全う出来るのだと私は思う。「動物愛護」
と言っても、人それぞれ解釈の仕方は異なるが、私は祖母の考え方に共感し心を打た
れた。ペットに強い覚悟を持ち接する祖母を、私は尊敬している。
ゴロちゃんには、これからもずっとずっと長生きして欲しい。それが、祖母と私達家族
の、一番の願いである。