アルコールの影響

2006/12/1
福岡病院 CPAP ニュース No12
いよいよ師走、忘年会など、飲酒機会が増えると思われますので、今回はアルコールの話です。
1.飲酒の睡眠時無呼吸に及ぼす影響は?
アルコールを摂取すると、普段イビキをかかない人でもイビキをかくことがあることは良く知られています。
アルコール摂取で咽頭が狭くなり、また鼻の通りが悪くなる(Am Rev Respir Dis 1985;132:1238)ことがその原因と考え
られています。では、睡眠時無呼吸の人はどうなるのでしょうか?
これについては、オーストラリア人での研
究でアルコールを体重1kgあたり0.5g(体重60∼70kgの人で大ビール1本相当)を就寝90分前に摂取した場合で、
無呼吸低呼吸の回数が約1.5倍に増加した報告(Eur Respir J 2000;16:909)、日本人での研究でアルコールを体重1kgあ
たり2ml(体重60∼70kgの人で大ビール4本相当)を飲ませた場合、無呼吸低呼吸が約2倍に増加した報告(Psychiatry
Clin Neurosci 2000;54:332)などがあります。
ただしこれらは主に軽症の睡眠時無呼吸での検討であり、CPAPを要するような重症の患者さんが、大酒して
CPAPをしないで寝た場合はもっと恐ろしい結果が予想されます。アルコールは無呼吸にともなう目覚めの反応を
鈍くする結果無呼吸の持続時間を延長させるので、無呼吸による低酸素が著しくなり、重症の睡眠時無呼吸の患
者さんの場合、危険なレベルに達する可能性があります。
2.飲酒のCPAP治療に及ぼす影響は?
イビキだけの患者さんに、イビキを防止するCPAP圧を飲酒・非飲酒時で比較した研究では、飲酒時には必要な
CPAP圧が上昇する(4.8→6.2 cmH2O)と報告されています(Alcohol Clin Exp Res 1988;12:801)。しかしCPAP施行中
の患者さんに、体重1kgあたり0.75 ∼1ml(体重60∼70kgの人で大ビール1.5∼2本相当)を就寝1時間前から30
分で飲んでもらって調べた研究では、適切なCPAP圧が設定されている場合は、CPAPの治療効果にはアルコール
の影響は無かったと報告されています(Chest 1991;99:339)。したがって、CPAPは飲酒時でも有効であり、また、飲
酒時にこそ体を守るため、また翌日の快適な生活のために必要と言えます。飲んだらCPAP、酔ったらCPAP!
3.飲酒の睡眠に対する影響
健常人に対してアルコールは寝つきを良くするが、特に一夜の後半の睡眠が浅く、途切れやすいものとなり、
全体としては睡眠の質が悪くなることが知られています。睡眠時無呼吸の患者さんでは、無呼吸の悪化を伴うた
め、睡眠の質はさらに劣化することになります。
4.お酒のカロリー
お酒にも当然のことながらカロリーがあります。アルコールそのものの熱量は1gあたり7㌔カロリーとされてい
ます。実際のお酒には様々な成分があり、その分が加わります。以下に日本食品標準成分表から求めたカロリー
を記します。大ビールを365日飲むと92000㌔カロリーで、体脂肪13kg相当です。ビール腹といわれるゆえんです。
量(ml)
アルコール濃度(%)
アルコール量(ml)
㌔カロリー
ビール
大瓶1本
633
4.6
29
253
発泡酒
小カン
350
5.3
19
149
日本酒
1合
180
16
29
192
焼酎 25 度
6・4 お湯割1杯
108
25
27
158
赤ワイン
1/4 ボトル
180
12
22
131
ウイスキー
ダブル
60
40
24
142