DU、低圧式X-DFエンジンで巻き返し図る

(第三種郵便物認可)
≪特
集≫
日 刊 海 事 通 信
2014 年(平成 26 年)9 月 19 日(金)
DFエンジン/ガスエンジン-その広がる可能性-③(終)
DU、低圧式X-DFエンジンで巻き返し図る
相磯取締役「成功するまでやる覚悟」
ディーゼルユナイテッド(DU)は、約20億円を投資し、相生事業所(兵庫県相生市)
に世界最大となる6シリンダータイプのフルスケールテストエンジン(『W6X72DF』)の設
置を進めている。来年1月に稼働開始予定で、船主やオペレーターなどの顧客に対し、
バルチラの低圧式X-DFエンジンの信頼性・安全性をアピールし、MANのME-GI
に巻き返しを図っていく考え。相磯三郎取締役 営業部長に現況と今後の見通しを聞いた。
〔相生にフルスケールテストエンジン設置〕
―DFエンジン(2ストローク)への取り組み
状況は?
「ライセンサーのバルチラが昨年、イタリア
の ト リ エ ス テ で 、 D Fエ ン ジ ン の テ ス ト 機
『RTX-5DF』を100%ロードでお客様にお披露目
してデビューを飾った。
実は、
それに先立って、
DUからバルチラに対し、
『低圧式DFエンジン
を開発しよう』と提案していた。2011年から相
相磯三郎取締役 営業部長
生事業所で単筒による要素試験を開始し、昨年
8月からはイタリア・トリエステにて6筒での
がある。スウェーデン船主(TERNTANK)の1万
試験を実施し、デビューということになった」
5000重量トン型プロダクト船4隻向けと中国船
「現在、
相生事業所に世界最大の6シリンダー
主(浙江華祥海運)の1万4000㎥型内航LNG
タイプのフルスケールテストエンジン
『W6X72DF』
船1隻向けとなっている。プロダクト船が16年
の設置作業を進めている。来年1月に稼働開始
初め、内航LNG船が15年夏に就航予定だ」
し、そこでお客様にお披露目して、
市場デビュー
「比較的小口径の『50DF』型については、実
を目指している。日本の船主様に、低圧式X-
証試験も完了し、商用の商談も進んでいる。そ
DFエンジンの信頼性・安全性をより認識して
して、われわれが注力する大型LNG船向けの
いただくには、国内に実機を設置する必要があ
『62DF』型、
『72DF』型の受注に向け、フルスケー
ると、ライセンサーと話し合い、テストエンジ
ルテストエンジンを相生事業所に設置すること
ン設置に至った」
になった。LNG船が一番、われわれの低圧式
―X-DFエンジンの受注実績は?
X-DFエンジンの技術的メリットを発揮でき
「ライセンサーの実績として(8月末時点)、
『5RT-flex50DF』型は2件・計5台の受注実績
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る船だと考えている」
(第三種郵便物認可)
日 刊 海 事 通 信
2014 年(平成 26 年)9 月 19 日(金)
〔安全・安心の低圧式X-DFエンジンにメリッ
ト〕
―現在の引き合い状況について。
「お客様からは、バルチラの低圧式X-DFエ
ンジンに高い関心を寄せていただき、
LNG船、
LNG燃料船向けの両方で、コンスタントに引
き合いの話をいただいている。受注実績が出て
いる『50DF』型については、小型LNG船、小
「RTX-5DF」
型タンカー、フィーダーコンテナ船などの実案
件でのお話を多数いただいている」
されることがあるが、苦労した甲斐があって、
―バルチラの低圧式X-DFエンジンのメリッ
かなり抑え込みに成功してきている。燃料ガス
トは?
の噴射時期を適切に調整することで、ノッキン
「希薄・予混合燃焼方式を採用した、われわ
グ(異常爆発)を抑え込むことを3年かけて取
れのX-DFエンジンは、低圧式コンプレッサ
り組んできた。技術的課題克服のメドは既につ
(16バール)で燃料ガスを供給できる。他社の
いている」
DFエンジンと違い、高圧式コンプレッサ(300
バール)や排気ガス後処理装置を必要としない
〔成功するまでやる覚悟で取り組む〕
ため、燃料供給システムや排気ガス後処理装置
―シェールガス関連のLNG船をターゲットに
に掛かる初期投資費用を大幅に抑えることがで
した受注目標は?
きる。また、コンプレッサに必要な電力量も小
「17年以降に本格化する米国からのシェール
さいため、運航コストを抑えられ、それに加え
ガス輸送にあわせ就航が見込まれる100隻規模
て、燃料供給システムに掛かる保守費用も大幅
のLNG船建造計画をターゲットとし、当初は
に抑えることが可能だ」
年間2~3隻(1隻当たり2台換算で4~6台)
「船内を300バールもの高圧の配管が走り回っ
くらいは受注していきたいと考えている」
ているというのは、あまり気持ちの良いことで
―顧客である、オペレーター・船主に対してP
はないだろう。安全・安心でランニングコスト
Rするポイントは?
も安い低圧式X-DFエンジンのメリットをお
「LNG船の主機としては、4サイクルの
客様に最大限PRしていく。トータルプラント
電気推進(DFDE)が先行しているので、
コストで考えていただければ、造船所様にとっ
船主様は実績のあるものから採用していきた
ても、船主様にとっても、そのメリットは明ら
いとお考えになるだろう。X-DFエンジンは
かなはず。手前味噌だが、良いこと尽くめのエ
世の中でまだ十分に実証された技術ではない
ンジンだと自負している」
が、お客様からは、『信頼性が確認できれば、
―時折、克服すべき技術的課題があると指摘さ
是非採用したい』と仰っていただいている。
れる。
商用機が来年夏には出るし、相生事業所のフ
「確かに、過早着火などの問題について指摘
ルスケールテストエンジンを実際にご覧いた
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(第三種郵便物認可)
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だければ、バルチラの低圧式X-DFエンジン
ては、いち早く市場投入し、成功するまでやる
の信頼性・安全性を納得していただけると考
覚悟を持って取り組んでいる。DFエンジンの
えている」
市場において、バルチラが重要なプレーヤーだ
「良いものを早く市場に出して、成功するま
と認識されるまで、頑張っていきたい」
で、そこでナンバー1になるまで、執拗に固執
(聞き手:木村哲博)
する戦略が重要だと考えている。われわれとし
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