2015年度入試情報 2015年度大学入試センター試験概況分析 2015/2/6 このほど、大学入試センターから 2015 年度大学入試センター試験(以下、センター試験)の実施結果が発表され、 受験者数、科目別平均点などが判明した。今年度は新学習指導要領への移行に伴い、数学と理科が新課程に沿った 出題に切り替わった。その理科では 17 年ぶりに得点調整が実施されるなど話題が多いセンター試験となった。 以下、今年度のセンター試験の概況を振り返る。 ■志願者数・受験者数は前年並み 2015 年度センター試験は 1 月 17・18 日の2日 間にわたり、全国 690 の試験会場で実施された。 数学と理科では新課程科目に加えて、既卒生用に 旧課程科目が出題されたほか、理科では科目変更 に伴う実施方法の変更があった。試験の実施は複 雑化したものの、全国的には大きな混乱もなく終 了した。 志願者数は 559,132 人(昨年 560,672 人:前年 比 99.7%) 、受験者数は 530,537 人(昨年 532,350 人:前年比 99.7%)といずれも前年から大きな変 化はなかった【図表1】。ただし、大学入試センタ ーが発表した志願者数の現卒別の内訳をみると、 現役生が 18 歳人口の増加に伴い、昨年から約1万 2千人増加(前年比 102.7%)した一方、既卒生 は約1万3千人減少(前年比 88.2%)した。既卒 生の減少は今春入試のトピックである【図表2】。 ■科目別の受験状況 【図表3】は、受験科目数別の受験者の割合を 昨今で比較したものである。目につくのは、 「8科 目」受験者の減少と、「7科目」「4~6科目」受 験者の増加である。 2012 年度に理科、地歴・公民の第1解答科目成 績利用が導入されて以降、8科目受験者は減少を 続けている。2015 年度の理科、地歴・公民の2科 目受験者の状況をみると、理科では同 94%、地歴・ 公民では前年比 97%、と理科で減少率が高い。こ れは文系生の理科2科目受験が減ったためであろ う。理科では 2015 年度から出題科目が再編され、 理科①と理科②に分かれた。文系学部のほとんどは 理科①のみで受験可能である。このため、理科2時 間分を受験するCパターン(理科①+理科②1科目) やDパターン(理科②2科目)で受験する文系生は ほとんどいなかったと思われる。 また理科②を中心に受験する理系生においても、 理科②は昨年までの理科を比べて出題範囲が広が っており、理科2科目の受験を取りやめる者が増え 【図表1】 センター試験 受験者数推移 年度 2006 年度 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 11 年度 12 年度 13 年度 14 年度 15 年度 受験者数 総数 本試験のみ 追試験のみ 本+追・再 506,459 506,241 125 93 511,272 511,105 77 90 504,387 504,136 65 186 507,621 507,345 125 151 520,600 519,707 453 440 527,793 527,405 204 184 526,311 525,838 129 344 543,271 542,943 233 95 532,350 531,987 158 205 530,537 530,177 280 80 受験率 91.9% 92.4% 92.8% 93.3% 94.1% 94.4% 94.7% 94.8% 94.9% 94.9% ※大学入試センター資料より ※受験率は志願者数に対する割合 【図表2】 センター試験 現役・既卒別志願者数推移 <現役> <既卒> 【図表3】 センター試験 受験科目数別受験者の割合 ※大学入試センター資料より ※理科の基礎を付した科目は2科目で1科目と数える -1© Kawaijuku Educational Institution. ていそうだ。 ■数学・理科以外にも新課程を意識した出題 数学と理科は新しい教育課程からの出題となり、新課程固有分野をはじめとした内容の変化が注目を集めた。 「数 学Ⅰ・数学A」は、課程の移行に伴い全問必須から、数学Aの各分野が選択問題となる構成へ変化した。新たな出 題分野となった「データの分析」の問題では、ヒストグラム、四分位数、箱ひげ図などが扱われたが、問題文が長 く、計算よりも読解力や図を読み解く力が求められた。 「数学Ⅱ・数学B」では、新たに「確率分布と統計的な推測」 が出題された。期待値・分散の計算、正規分布、信頼区間に関する問題と項目内の内容が幅広く扱われ、正規分布 の問題では正規分布表が示された。 「数学Ⅱ・数学B」は、計算量の増加、複数分野の知識を要求する問いなどが多 く例年と比べても難しい内容であった。 理科②の各科目は出題範囲が拡大した。旧課程ではⅡにあたる内容も範囲となり、これまでのセンター試験では 出題されてこなかった分野の出題がみられた。例を挙げると「物理」では、旧課程では「物理Ⅱ」の選択分野であ り、多くの大学の個別試験でも出題範囲から外れていた「原子」が扱われた。 「生物」では、チラコイドで行われる 反応過程(光合成)についての問題や共進化に関する問題など、新課程で新たに教科書に記載された内容の出題が あった。 数学、理科以外の教科についても、各所に新課程を意識した出題がみられた。例えば「英語」では、全体として 実践的なコミュニケーション能力を問う出題となった。地理歴史では、 「地理B」で統計表や統計地図、グラフなど の図表を多用しており、単純な知識を問うものでなく、図表の読み取りや理解力を試す問題が中心であった。歴史 分野でも、 「世界史B」で日本に触れる出題や日本地図、吉備真備の図版を使用するなど、日本史との関連を意識し た出題もみられた。反対に「日本史B」では外交史が増加したほか、各時代における日本と海外との人の往来をテ ーマにした出題など、グローバル化を意識したともいえる出題があった。 ■17 年ぶりに得点調整を実施 【図表4】は大学入試センターが公表した主な科目の平均点の一覧である。 「英語」が前年並みとなったほか、昨年過去最低の平均点となった「国語」が 20 点上昇し 119 点と標準的な難易 度となった。 【図表4】 センター試験 主要科目平均点・受験者数(本試験) 平均点 受験者数 一方、 「数学Ⅱ・数学B」は 40 点を割 教科・科目名 14 年度 15 年度 差 14 年度 15 年度 差 りこみ、過去最低となった。既卒生の多 英語 118.87 116.17 -2.7 525,217 523,354 -1,863 くが旧課程科目を受験していることも 外国語 リスニングテスト 33.16 35.39 +2.2 519,172 516,428 -2,744 数学Ⅰ 39.65 32.38 -7.3 7,187 5,277 -1,910 平均点を押し下げた要因であろう。第1 数学① 数学Ⅰ・数学A (62.08) 61.27 (-0.81) 338,406 +251 問~第4問まで新課程と共通問題であ 旧数学Ⅰ・旧数学A 62.08 70.33 +8.3 391,273 53,118 数学Ⅱ 32.80 23.83 -9.0 6,333 4,944 -1,389 った「旧数学Ⅱ・旧数学B」の平均点は 39.31 (-14.63) 301,184 50 点と決して高くはないものの、 「数学 数学② 数学Ⅱ・数学B (53.94) -2,539 旧数学Ⅱ・旧数学B 53.94 49.90 -4.0 355,423 51,700 Ⅱ・数学B」との平均点差は 10 点開い 国語 98.67 119.22 +20.6 503,587 501,415 -2,172 物理基礎 31.52 13,289 ており、受験者層の学力差が反映されて 化学基礎 35.30 88,263 いる様子がうかがえた。 理科① 生物基礎 26.66 116,591 このほか、 「地理歴史」では「地理B」 地学基礎 26.99 41,617 物理 (61.64) 64.31 (+2.67) 129,193 で昨年から大きく平均点ダウンしたほ 化学 (69.42) 62.50 (-6.92) 175,296 か、理科②の新課程科目で軒並み低めの 生物 (53.25) 54.99 (+1.74) 68,336 (50.22) 40.91 (-9.31) 1,992 平均点となるなど、理系生が多く受験す 理科② 地学 物理Ⅰ 61.64 69.94 +8.3 160,823 29,832 る科目で平均点ダウンが目立った。理科 化学Ⅰ 69.42 66.67 -2.8 233,632 43,347 ②では1月 23 日の中間集計時点で、新 生物Ⅰ 53.25 60.87 +7.6 188,400 22,026 地学Ⅰ 50.22 58.72 +8.5 17,668 2,893 課程科目の「生物」と旧課程科目の「物 世界史B 68.38 65.64 -2.7 85,943 84,053 -1,890 地理 理Ⅰ」の平均点に 20 点以上の開きが出 日本史B 66.32 62.01 -4.3 153,204 155,273 +2,069 歴史 たため、17 年ぶりとなる得点調整が実 地理B 69.68 58.59 -11.1 146,472 146,846 +374 現代社会 58.32 58.99 +0.7 77,825 76,698 -1,127 施された。得点調整は、当初より対象科 倫理 60.87 53.39 -7.5 33,761 30,740 -3,021 公民 目ではなかった旧課程科目の「理科総合 政治・経済 53.85 54.79 +0.9 48,363 45,300 -3,063 倫理,政治・経済 67.29 59.57 -7.7 48,789 48,659 -130 A」「理科総合B」と、受験者数が1万 ※大学入試センター資料より、数値は得点調整後のもの 人未満であった「地学」「地学Ⅰ」を除 ※数学・理科の昨年度平均点欄は同一名称科目の平均点を記載 く6科目が対象となった。調整後は「生 -2© Kawaijuku Educational Institution. 物」で最大8点が加点された。図表は得点調整後の平均点であり、理科②の平均点も得点調整対象外の「地学」を 除いて極端に低い科目はなくなっている。 ■総合型平均点-文系で上昇、理系は前年並み 【図表5】 センター試験 総合型平均点推移 【図表5】は河合塾が推定するセンター試験の 7科目型の平均点推移である。7科目文系型(900 点満点)が 543 点(前年差+9 点)、7 科目理系型(900 点満点)が 567 点(前年差+1 点)となった。 文系では理科①が生物基礎、地学基礎でやや低 めだったものの、化学基礎の平均点は7割を超え ており、比較的得点しやすかった。加えて、国語 の平均点が上昇したことも平均点を押し上げた。 理系の平均点は、地理Bや数学Ⅱ・数学Bなど の平均点がダウンした影響が強く、文系とは異な る動きとなった。なお、理系平均点は当初ダウン が見込まれたが、理科②の主要科目の平均点が得 点調整により上昇したことから、前年並みの平均 点に落ち着くことになった。 【図表6】は河合塾が実施した自 己採点集計「センター・リサーチ」参 加者の成績分布である。 【図表6】 センター・リサーチ 7科目型受験者の成績分布 文系では平均点の上昇もあり、今 年の分布はやや右にシフトしている。 とくに低い得点率帯で受験生が減少 しており、反対に得点率6~8割の 層で増加している。 理系では、今年の分布はなだらか に広がる形になっている。平均点に ほとんど変化がなかったものの、780 点以上の高得点者層は増加、得点率 65~85%の難関から中堅まで広く国 公立大を狙う層では減少している。 こういった状況が国公立大の志願動 向にも影響している。 ※得点調整を反映させたデータで作成 -3© Kawaijuku Educational Institution.
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