デリバティブの理論

現代ファイナンス論講義ノート No.11
デリバティブの理論
蛭川雅之
2014 年 12 月 22 日
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
1 デリバティブ
1.1 デリバティブとは?
• デリバティブ(金融派生商品)とは、一般に以下の取引種類を組み
合わせたものである。
1. 先物 (Futures)・先渡し (Forward)· · · 今回解説
2. スワップ (Swap)· · · 今回解説
3. オプション (Option)· · · 次回解説
• デリバティブには必ず原資産 (Underlying Asset) が存在する。
– 原資産の例:債券、株式、通貨、商品. . .
2014 年 12 月 22 日
1
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
1.2 デリバティブ取引の目的
1. リスク回避 (Risk Hedge)
• 金利・為替等の変動に伴い、現在および将来のポジションから
損失が発生するのを防止する。
2. 裁定 (Arbitrage)
• 市場差等に由来する相場の歪み・乖離をとらえて利ざやを得る。
• 一般に、ローリスク・ローリターンである。
3. 投機 (Speculation)
• 短期的な相場変動の目論見から利ざやを得る。
• 一般に、ハイリスク・ハイリターンである。
2014 年 12 月 22 日
2
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
2 先物取引
2.1 先物取引とは?
定義 1 先物とは、将来の特定期日(限月)に、現時点で決めた価格で特定
の商品を売買する契約をいう。
• 契約時点で金銭のやり取りは発生しない。
– 代金決済は将来の特定期日に行われる。
• 先物取引 (Futures) と先渡し取引 (Forward) に分かれる。
2014 年 12 月 22 日
3
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
2.2 先物取引 vs. 先渡し取引
先物 (Futures)
形
態
対象商品
決済方法
先渡し (Forward)
先物取引所経由。
店頭取引。
取引所が定めたものに限定。
売り手と買い手の合意で決定。
(例)商品、債券、通貨. . .
(例)為替予約. . .
期日前に反対売買を行い、
期日に現物を受け渡す。
取引を清算する。
履行の保証
取引所に証拠金を差し入れて
いるため、リスクは少ない。
2014 年 12 月 22 日
4
相手方の信用力による。
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
2.3 先物取引
• 先物取引は取引所経由で行われる。
– 取引所は売り手・買い手それぞれの信用リスク(カウンター
パーティー・リスク, Counterparty Risk) を肩代わりする。
– 先物市場参加者は取引所会員(例:証券会社、商品取引業者)
に証拠金を差し入れる義務を負う。
• 期日に商品の受け渡しを行うことはまずない。
– 毎日評価損益を計算し(= 値洗い, Marked to Market)、証拠
金残高に反映させる。
– 期日前に反対取引を行い、その時点の先物価格との差額を決済
する(= 差金決済)。
2014 年 12 月 22 日
5
現代ファイナンス論講義ノート No.11
2014 年 12 月 22 日
6
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
■先物取引の例:長期国債先物
2014 年 12 月 22 日
7
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
■先渡し取引の例:為替予約
• 現在 1,000,000 円を持っており、ドル預金で 1 年間運用したい。
• 直物為替レートが 1 ドル= 120 円、現在のドル金利が年 3% であ
るとする。
– 現在の 1,000,000 円は (1, 000, 000 ÷ 120 =)8,333.33 ドルと等
価である。
– 8,333.33 ドルをドル預金で運用すると、1 年後の元利合計は
8,583.33 ドルである。
• 1 年後に 8,583.33 ドルを円に再両替する際、円高になっていると受
け取る円貨が目減りする。
– 為替予約で 1 年後の円貨を確定したいが、この場合に適用され
る為替レート(先物為替レート)はいくらが妥当か?
2014 年 12 月 22 日
8
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
• 現在の円金利が年 1% であるとする。
– 1,000,000 円 を 円 預 金 で 運 用 す る と 、1 年 後 の 元 利 合 計 は
1,010,000 円である。
– 先物為替レートは円・ドル運用が無差別になるような交換比
率、即ち、
1, 010, 000 円
= 117.67(円/ドル)
8, 583.33 ドル
となる。
2014 年 12 月 22 日
9
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
• 直物と先物の価格差を直先スプレッドという。
• 先物相場が直物相場に比べて円高になっている状態をディスカ
ウント (Discount)、一方、円安になっている状態をプレミアム
(Premium) という。
1. ドル金利が円金利より高い場合はディスカウントである。
– 直先スプレッドの前に“d”を付す。
2. ドル金利が円金利より低い場合はプレミアムである。
– 直先スプレッドの前に“p”を付す。
2014 年 12 月 22 日
10
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
3 スワップ取引
3.1 スワップ取引とは?
定義 2 スワップ取引とは、将来の特定期日に原資産を予め定めた方法で
契約当事者間で交換する契約をいう。
• 交換される対象は金利(例:固定 vs. 変動)、通貨(例:円建て vs.
ドル建て)など多岐にわたる。
• スワップ取引の目的は以下の通り。
1. 市場変動リスクの削減。
2. 市場の歪みの是正。
3. オフバランス取引であることを利用した、資本効率性の改善。
2014 年 12 月 22 日
11
現代ファイナンス論講義ノート No.11
3.2 金利スワップ
2014 年 12 月 22 日
12
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
3.3 金利スワップの価値
2014 年 12 月 22 日
13
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
■契約時点
2014 年 12 月 22 日
14
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
■3 年経過後
2014 年 12 月 22 日
15
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
3.4 通貨スワップ
2014 年 12 月 22 日
16
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
3.5 通貨スワップ債
定義 3 通貨スワップ債とは、リスクを限定することなどを目的として、
発行時に通貨スワップを行う外貨建て債券をいう。
• 以下のような手法で、外貨建て債務が円建て債務に転換される。
– 通貨スワップ(円建て利払額は一定)
– 長期先物為替予約(円建て利払額は変動)
• 実質的には円建て債券発行(=円資金調達)と変わらない。
2014 年 12 月 22 日
17
現代ファイナンス論講義ノート No.11
米ドル債発行条件
• 発行額(元本):100 百万ドル
• 期間:5 年
• 表面利率:3.00% (= 5 年物スワップ固定金利)
• 発行価額:100.00%
2014 年 12 月 22 日
18
担当:蛭川雅之
現代ファイナンス論講義ノート No.11
担当:蛭川雅之
円建て債務への転換
• 直物為替レート:1 ドル= 120 円
– 円建て想定元本:12,000 百万円
• 期間:5 年
• 円建て利率:1.00% (= 5 年物スワップ固定金利)
2014 年 12 月 22 日
19
現代ファイナンス論講義ノート No.11
通貨スワップ vs 長期先物為替予約
2014 年 12 月 22 日
20
担当:蛭川雅之