博 士 ( 獣 医 学 ) 村 瀬 敏 之 学 位 論 文 題 名 StudiesonthemechanlSmoranemainduCed byBaろesZaぎ fろs〇砲finfectionindogs (イ ヌのB〇6e sぬ餌6 s〇凡Z 感染症における貧血発現機序に関する研究) 学 位論文内容の要旨 パ ペ シア症 において は、バベ シア原虫 の赤血球 寄生率が低 いにもか かわらず 高 度の 貧 血 が発 生 する が、 その機序 について は解明され ていない 。本研究 では、イ ヌのBabesiagibsoni丶染 症におけ る貧血の 発現機序を検討した。日,gi bson i原虫 の赤血球 内増殖を 体外培養系を用いて検討した。イヌ成熟赤血球をB. g ibso ni-: 染 赤血球と 混合して packedcellvolume(PCV)10%で培養 したところ 、原虫寄生率 は直線的 に増加し 8∼9日目に 4.O%に達し た(培養開始時O .4%)。赤血球加齢と 原虫 増 殖 との 関 連を 検討 するため に、瀉血 により急性 失血性貧 血を呈し ているイ ヌから調 裂した網 状赤血球および成熟赤血球を、B, gibso ni感染赤血球と混合して 培養 し た 。網 状 赤血 球 培 養系 に おい て PCV3% の条 件 で培 養 し た場 合 、原 虫 寄 生 率の 最 高 値は 、 8日 目に 34.1%に 達 した 。 一 方、 成熟赤 血球培養 系では5日 目で 3.6%であ った。網 状赤血球 培養系を用 いた場合 、100日以上 の原虫の 継代培養が 可能であ った。 8.gibsoni-虫の増 殖にとも ない溶血 が認められたため、培養にともなう赤血球 の形 態 学 的お よ び生 化学 的変化を 検討した ところ、網 状赤血球 培養系に おいて赤 血球 の 異 常形 態 (奇 形赤 血球)が 光学顕徽 鏡および走 査型電子 顕微鏡下 で観察さ れた。ま た、赤血 球のメ卜 ヘモグロビ ン濃度は 、培養前 の1,5%に 対して6日目で 17.5% に 増加 し た 。同 様 に、 培 養 上清 中 のマ 口 ン ジア ルデヒド 濃度は1.47か ら 4.74uMに増加 したことか ら、赤血 球の酸化 障害が示 唆された 。また、 原虫増殖期 に赤血球のグルコース消費および乳酸産:生の増加傾向が認められた。 B, gibsoni-染 耐過後に 脾臓摘出により貧血を再発し、慢性貧血を持続している イ ヌ (慢性 感染貧血犬 )の骨髄 から採取 したマク 口ファー ジ(骨髄 マク□ファ ― ジ) による自 己、およ び非自己正 常イヌ赤 血球に対 する貪食率は、それそれ915、 およ び9.9(% )であう た。ー方、非感染犬骨髄マクロファージによる貪食率はそ れそれ3.5 、および2.9(%)であった。抗原虫薬であるdim inaz enediace tura teの 投与 により、 慢性感染 貧血犬の骨髄マク口ファージによる赤血球貪食率は低下し、 それとともにPCVの上昇が認められた。B.gi bson iの急性感染犬におしヽても、慢性 感 染 貧血犬 と同様に、 骨髄マク □ファ― ジによる 赤血球貪 食能の亢 進が認めら れ た が 、この 場合も自己 および非 自己正常 赤血球に 対する貪 食率に差 は認められ な か っ た。さ らに、非感 染犬マク ロファー ジは正常 赤血球よ りも、原 虫とともに 培 養さ れた赤血 球を多〈 貪食した。 以上 の成績よ り8.gibsoni感染犬においては、原虫の増殖にともない、原虫寄生 赤血 球のみな らず非寄 生赤血球までもが物理的および生化学的障害を受けること、 そ の 結果、 そのような 障害赤血 球に対す る宿主マ クロファ ―ジの赤 血球貪食能 が 亢 進 するた めに、原虫 寄生率が 低いにも かかわら ず高度の 貧血が発 生するもの と 考え られた。 -192 - 学位論 文審査の要旨 主 査 教 授 副査 副査 教授 教授 副 査 助 教 授 前 出 吉 光 橋本 小沼 晃 操 杉 本 千 尋 学 位 論 文 題 名 Studies on the mechanism of anema induced by Babesる a魯 ワ ろ S〇 形 ZinfeCtionindogS ( イ ヌ の Baろ es施 餌 6s0れ Z感 染 症 に お け る 貧 血 発 現 機 序 に 関 す る 研 究 ) バベ シア 症に おい て は、 バベ シア 原虫の赤血球寄生率が低いにもかかわらず、高度 の 貧 血が 発生 する が、 そ の機 序に つい ては 解明 され てい なぃ 。申 請者は、イヌのB ab esi a gibs oni感染症における貧血の 発現機序を検討した。最初にB.g ib so ni 原虫の体外培養 法 を 検討 し、 イヌ 網状 赤 血球 を用 いた 同原虫の培養法を確立した。すなわち、瀉血によ り 急性失血性 貧血を呈しているイヌから調製した網状赤血球を、B. gi b so n i 感染赤血球と混 合してPa cke d ce ll v ol um e (P CV ) 3% ,3 7℃の条件で培養した場合、赤血球への原虫寄生率 は 、8日 目に 3 4.1%に 達し た。 この 網状赤血球培養系を用 いた場合、1 00 日以上の原虫 の 継代培養が 可能であった。次に、B . gi bs on i培養にともなう赤血球の形態学的および生化 学 的変 化を 検討 した と ころ 、赤 血球 の形態異常が光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡 下 で 観察 され た。 また 、 赤血 球の メト ヘモグロビン濃度は、培養前の1. 5%に対して培養6 日目で17 .5%に、.培養上清中のマロンジアルデヒド濃度は培養前 の1 .4 7 〃M から培養6日 目 には 4. 74/i Mに それ ぞれ 増加 した こと から 、赤 血 球の 酸化 障害が示唆された。また 、 原 虫増 殖期 に赤 血球 の グル コー ス消 費量,および乳酸産生量の増加傾向が認められた 。 B . g ib s o ni 感染耐過後に脾臓摘出により貧血を再発し、慢性貧血を持続しているイヌ(慢 性感染貧血 犬)の骨髄から採取したマクロファージ(骨髄マク口フ ァージ)による自己、 および非自 己正常イヌ赤血球の貪食率は、それぞれ9 . 5 、および9 . 9 (%)であった。一方、 正常犬骨髄マク口ファージによる赤血球貪食率は、それぞれ3 . 5 、および2 .9 (%)であった。 抗原虫薬で あるd im in az en edi a c et u ra t e の投与により、慢性感染貧血犬の骨髄マク口ファー ジ によ る赤 血球貪食率は低下し、それとともにPC Vの上昇が認められた。B.g ib so ni の急 性 感染 犬に おい ても 、 慢性 感染 貧血 犬と同様に、骨髄マクロファージによる赤血球貪 食 能 の亢 進が 認め られ た が、 この 場合 も自己および非自己正常赤血球に対する貪食率に 差 は 認め られ なか った 。 さら に、 非感 染犬マクロファージは正常赤血球よりも、原虫と と もに培養された赤血球を多く貪食したミ これらの 成績から、申請者はB . g ibs on i感染犬においては、原虫の増殖にともない、原 虫 寄生 赤血 球の みな ら ず非 寄生 赤血 球にも物理的および生化学的障害が生じること、 そ の 結果 、そ のよ うな 障 害赤 血球 に対 する宿主マク口ファージの赤血球貪食能が亢進す る た め に 、 原 虫 寄 生 率 が 低 い に も か か わ ら ず 高 度 の 貧 血 が 発 生 する もの と推 測し た。 以上 のよ うに 申請 者 は、 バベ シア 症の貧血発生機序に関して重要な知見を提供した 。 よ って 、審 査員 一同 は 、村 瀬敏 之氏 が博士(獣医学)の学位を受ける資格を有するも の と認めた。 ― 193 -
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