歴史的な出来事に思う 歴史的な出来事 日本の歴史的転換点として思い浮かぶものは、最も新しい出来事でいえば太平洋戦争の敗戦で あろうか。もちろん多くの人は生きて体験したわけではない。しかし、現人神と言われた天皇が 象徴天皇になり、様々な民主主義的な体制が導入されたという意味で、歴史的転換点であったこ とは言うまでもない。 7 月も終わろうとしている。何となく過ぎ去ろうとしている 7 月であるが、この一ヶ月を振り 返ってみると歴史的とも表現できるような出来事が起こった月でもある。世界を見渡してみると、 アメリカとキューバが何と 54 年振りに外交関係の正常化に踏み切った。また、核開発疑惑で長 年に渡って経済封鎖をされていたイランが欧米などの 6 カ国と核問題で合意した。中東の大国イ ランが国際的な経済舞台に再登場する日も近い。 日本に目を向けると、安全保障関連法案が衆院を通過した。集団的自衛権行使を容認した法案 は憲法違反であるとの追及の中での強行採決であった。憲法違反であれば、当然、問題である。 その場合は憲法の改正を議論すればよい。中国の東シナ海や南沙ならびに西沙への進出、また北 朝鮮の核とミサイルの開発を見ていると、日本の防衛は何とも心もとない。平和憲法さえ守って いれば、他国が軍事的な攻撃をしかけてこないだろうと考えるのは勝手であるが、他国はそこま でお人好しではない。人類の歴史は、殺戮と戦争の歴史である。今この瞬間にも世界各地で戦争 が行われている。日本にいつ軍事的な攻撃が仕掛けられるか分からない。というより日米安保が 破棄された途端に、日本に向けて何らかの攻撃が仕掛けられてくるのは明らかである。備えあれ ば憂いなしである。 東芝の利益水増し 歴史的な出来事と比べると、天下の東芝の事件は何とも醜い。大会社のトップに上り詰めるほ どの人たちの価値観は常人とは若干異なっているのであろうか。利益を水増しして自らの立場を 良く見せようとしており、何とも浅ましい。人間に共通のさがであろうか。 また、鹿よけの電気柵による感電事故も一人の浅はかな欲が招いた事故である。電気柵は手作 りで、電気柵の設置を知らせる表示・看板がなく、自動的に回路を遮断する漏電遮断器が設置さ れておらず、また電流を一瞬だけ断続的に流すための電気柵電源装置がなく電流が継続して流れ 続けていた。このために 2 人の命が奪われた。設備費の倹約のために自分で手作りの電気柵を設 置したのであろう。何とも愚かな、信じがたい行為である。暴走運転の犠牲になる人も後を絶た ない。このようなことで犠牲になった人は全く浮かばれない。 情報漏えい それにしても情報漏えいがたびたび起こっている。ベネッセ HD では、1 億件の個人情報が流 出した。内部犯行で使われたのはスマホ一つである。日本年金機構はサイバーテロに襲われた。 極めて脆弱なシステムと担当者の無知が事態を大きくした。アメリカでも元や現の公務員など数 千万人の個人情報がサイバーテロに遭った。愛媛大学でも何百件かの個人情報が流出した。今の 時代、ウェブ上に個人情報を登録すれば流出は当然と考えておいたほうがよい。 情報流出の中でも何とも面白い事件が起こった。不倫を奨励するカナダの出会い系サイト「ア シュレイ・マディソン」の運営会社が、同サイトがハッカーによる攻撃を受けたと発表した。7 月 20 日のことである。利用者を特定できる一部の情報が、インターネット上に一時流出した。 アシュレイ・マディソン社は 2001 年に創設し、 「人生一度、不倫をしましょう」を売り言葉に業 務を拡大して、利用者は現在、世界 46 カ国で 3700 万人を超えるとのことである。日本でも 180 万人もの利用者があると言われている。氏名、顔写真、その他の情報がネット上で公開されれば、 容易に個人の特定ができる。不倫サイトに登録した人たちは、しばらく寝苦しい夜が続くことに なる。3700 万人以上が登録とは、不倫一つするにしてもネットは実に便利な媒体であるようだ。 しかし、情報流出の危険性は 100%と言ってよい。流出した場合は、家庭でのゴタゴタや社会的 な信用喪失など、かなりな痛手となって跳ね返ってくることを覚悟しておかねばならない。 7 月も終わり 7 月も終わろうとしている。日本各地で、例年のように暑い日が続いている。世界を見渡すと 歴史的な出来事もあった。また日本でも集団的自衛権行使の幅が大きく広がりそうな法案が衆院 を通過した。その一方、東芝利益水増し事件や電気柵感電死事故のようなことも起こっている。 また、ハッカー攻撃にあった不倫を奨励するカナダの出会い系サイトの登録者が世界で 3700 万 人以上、日本でも 180 万人以上という、人間の飽くなき欲望に思わず感動を覚えるような出来事 もあった。 ところで、ロシアで開催されている水泳の世界大会で、シンクロナイズドスイミングのデュエ ットとチームのテクニカルルーチンの 2 種目で、日本が 2 つの銅メダルを獲得した。シンクロで は 8 年ぶりのメダル獲得である。メダル獲得の立役者は、何と言っても昨年 10 年ぶりにコーチ に復帰した井村氏である。徹底したスパルタ指導で、1 日の練習時間は 12 時間以上、その過酷さ に今年の 3 月には代表チーム 12 人の中で 2 人が離脱したほどである。それでも指導の手を緩め ない。その鬼のコーチが日本に 8 年ぶりのメダルをもたらしたのである。スパルタ指導への反発 があって井村氏をコーチから外していた期間は、日本のシンクロの定位置は世界で 5 番程度であ った。井村氏のコーチ復帰により世界トップとの戦いに妥協はないことを改めて認識させられた。 競争とは縁もゆかりもない「ゆとり教育」を押し進めて国力を低下させた文科省が新国立競技場 の建設問題で、また物議を醸している。鬼コーチ井村氏のような腹の座った実力者が今こそ求め られている。 平成 27 年 7 月 29 日 矢田部龍一
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