講演の概要 - 北海道留萌振興局

留萌信用金庫と留萌振興局の包括連携協定に基づく事業
第7回 留萌・元気づくりセミナー 開催概要
開催日時:平成 26年 1 月28日(火)15時~17時
場
テーマ
講 師
所:留萌合同庁舎 2階講堂
「スポーツに学ぶ地域振興」
スポーツジャーナリスト 伊藤 龍治 氏
◇留萌管内に関わるスポーツ関係者
笠谷昌生
…札幌オリンピック金メダリストの笠谷幸生氏の実兄。明治大学時代、スキージャンプ選
手として活躍し、大学卒業後は羽幌炭鉱に所属、羽幌に 50m 級のジャンプ台(当時は大
倉シャンツェと並ぶ大型シャンツェだった)を完成させたほか、国内外の競技会に出場。
引退後は羽幌炭鉱のコーチとなり、後進の育成に励んだ。
講師の伊藤氏は、スキーワックスマンとして笠谷幸生氏の選手時代を支えていた。
花田家
…スキーで活躍した兄弟。母が留萌市出身(資料参照)。
阿部雅司
…小平町出身のスキーノルディック複合選手。
都澤凡夫(みやこざわただお)
…留萌市出身。ヤクルト監督の若松勉氏と小中学校同級生(資料参照)。筑波大学男子バ
レーボール部監督として、全日本学生選手権6連覇を達成。現在は、Vプレミアリーグ昇
格を目指す、Vリーグチーム、「つくばユナイテッド SunGAIA(つくば市)」の監督。
◇スポーツで考える地域活性化
地域活性化に繋がった取組、事例について紹介。
<日ハム型>
食肉偽装問題があり、
企業イメージが落ちた時期だったが、
北海道を拠点とするチームとなり、
アメリカ人のヒルマン監督を起用したことが成功に繋がった。ヒルマン監督が掲げた旗印が『フ
ァンサービスファースト』。札幌ドームの開幕戦で選手やチーム関係者が並んで握手をしながら
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「いらっしゃいませ」といって観客を迎え入れた。当時、日本のプロ野球では他に例がなかった
こと。
北海道に根付くチームとして成長したのは、そこから始まっている。人気選手の新庄がいたこ
とにより、エンターテイメントベースボールが成功して、今日の日本ハムファイターズに至って
いる。
<ノンプロ型>
スキージャンプでいうところの雪印メグミルクスキー部。雪印という一企業が、日本のジャン
プ競技を支えてきた。今では、(企業が競技を支えている例は)片手ぐらいしかない。雪印、土
屋ホーム、東京美装、日本空調ぐらい。
小樽出身のスキージャンパー、田中翔大選手の所属は『加森観光&井原水産』である。
田中選手が、所属先がなくトレーニングジムでアルバイトをしている時に、客だった加森観光
の社長がその人間性に惚れ込んで、友達だった井原水産の社長にも話をして、年間の活動費を出
すようになったという。2 社がスポンサーになって、今季で3シーズン目。留萌の企業である井
原水産には、お礼を言いたい。
<大学型>
札幌大学から地域総合型スポーツクラブを作りたいと相談があり、設立総会のあとの基調講演
を行った。地域には高齢者が多いことから、大学の体育館を利用して、歩く練習をしたり、大学
生が付き添って階段を上り下りしたりすることも、立派な地域総合型スポーツクラブとしての活
動だろうと提案をしたことがある。すでに札幌大学は、そういった取組をスタートしている。
<自治体型>
わかりやすい例は、スキージャンプに力を入れる下川町。町の予算で子ども用から大人用まで
大小4つのジャンプ台を作った。さらに、町は、指導者として下川町出身の元複合選手、伊藤克
彦を教育委員会の職員として採用し、幼稚園・小学校・中学校・高校という一貫教育が出来るよ
うになった。町はリフトやナイター照明も設置し、ついには、この町から葛西紀明、伊東大貴、
伊藤有希の3人のソチオリンピック代表を輩出するまでになった。前回オリンピックは5人中4
人が下川町出身。
ここまで徹底しているのは下川町くらいで、上川町は原田雅彦、高梨沙羅が出身だが、下川町
までの取組はしていない。
<総合型>
(大学型として紹介した)札幌大学が NPO 法人として立ち上げた、近隣住民、大学生や OB、
大学講師らの専門的知識を提供する総合型スポーツクラブがこの例に当たる。
◇スポーツ F4 成功のための条件
スポーツは、ファイティングスピリットだけで考えるのではなく、大前提にあるのがフェアプレ
ー、フレンドシップ精神。この方程式があってこそ、初めてそのスポーツはフューチャーマインド
という未来にむけての繁栄が約束されるもの。
◇スポーツに学ぶ、発想転換
12月25日の北海道新聞、札幌圏版に、「札幌五輪、再び開催したら!?」と言う記事を書い
たところ、多くの反響があった。北海道の地域特性を活かし、スキーは日本海側気候に影響される
雪の多い山間部、スケートは太平洋・オホーツク海側気候に影響される平野部での開催が可能。札
幌周辺にはFISの規定を満たす標高差を持つ滑降用のスキー場はないため、札幌から150km
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ぐらいでスキーワールドカップを開催している富良野市でスキーの高速系種目を実施し、倶知安
町・ニセコ町でスキー技術系種目を実施すれば、「冬季五輪・北海道バージョン」として北海道へ
の招致を検討できるのではないか。
ラグビーは、7 人制にルールを変えて、オリンピック種目となった。野球も、回数を減らし、オ
リンピック種目への復活を目指しているように、発想の転換が活きる。2007 年ノルディックスキ
ー世界選手権札幌大会では、開閉できる特性を活用し、札幌ドームが競技会場となったのも発想の
転換だった。
◇スポーツは文化となりえるか
サッカー選手のリオ・ファーディナントは、2001 年に、母を日本に招いての来日中、大阪府池
田市で発生した小学校無差別殺傷事件の発生を知り、母が楽しみにしていた京都旅行をキャンセル
し、急遽池田小学校へと足を運び、校門前に献花をしたという。「国籍も肌の色も超え、1人の人
間として哀悼の意を捧げたかった」と、以降も来日の際に、度々池田小学校に花束を贈るなど、追
悼の意を表しているという。
長野オリンピックでのスキージャンプ団体の金メダル獲得の裏には、テストジャンパーたち「影
の金メダリスト」の存在があったから。会場の白馬は試合前から大雪で、日本は1回目を終えて4
位。ところがその後、試合は雪で中断。雪はやまず、テストジャンパーが飛べるかどうかで、試合
続行の可否が決まる状況だったところ、25 人のテストジャンパー達が視界がほとんどきかないジ
ャンプ台から間を空けずに何度も飛び、鮮やかなジャンプを決めることが出来たことで、試合は再
開され、日本は大逆転の金メダルをつかんだ。
◇地域活性化のヒント
関心がないと感動に繋がらない。地域の活性化には、地域連携が必要だが、例えば、誰でも何処
でも出来るパークゴルフの大会を天北地域のイベントとして開催すれば、多くの人に関心をもって
もらえ、大会の実施で感動も生まれる。市町村対抗イベントも効果的。
◇スポーツ合宿の誘致について
道内の合宿誘致成功例
・北見、網走
~主にラグビーの社会人、
学生の合宿誘致に成功しており、
年間6億円の経済効果がある。
近隣町にも、効果が波及している。現在はラグビー合宿のメッカ。地元高校のレベルも上
がっている。
・士別市
~陸上競技の合宿が盛ん。自治体が力を入れて取り組んでいる。
・稚内市
~バスケットボールの合宿が盛ん。レラカムイの合宿がきっかけで、昨年は33団体、
4,000 人ほどが合宿で訪れた。合宿で訪れているチームの練習試合を組む、「稚内サマー
リーグ」を体育協会で組織。スポーツ合宿協議会を組織し、「スポーツ振興協賛金」(個
人 5 千円、法人・団体 1 万円)を募り、チームの規模により 20~25 万円の合宿助成金
を出している。助成の条件は、スポーツ教室開催。
・下川町
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~町としてジャンプ台を 3 台建設し、小・中・高一貫して選手を育成。元ジャンプ選手を
教育委員会の職員として採用し、コーチとして専任。
誘致のメリット
・有名なチームの合宿を誘致できれば、そのチームとの練習試合目当てで、日本中からチーム
が集まってくる。
・バレーボールのような屋内競技なら、既存の体育館で足りる。
・子ども達へのスポーツ教室や、高齢者施設の慰問などをしてもらえれば、地域の活性化に繋
がる。
・北海道の子どもの体力は全国最下位であり、スポーツに触れる機会を増やすことで、改善に
繋げられる。
・バレーボールVリーグチームの都澤氏は、留萌市出身であり、管内でのチーム合宿誘致の検
討に繋げられるのではないか。
◇留萌から考える夕陽と夏季体験移住促進について
留萌管内は、全部の市町村が日本海に面し、夕陽が美しいところが売り。そうした優位性にスト
ーリーを持たせ(例えば、「留萌」は“萌えたものを留める”ところとして、恋が熟成された夫婦
が美しい夕陽を観ながら滞在する旅行先といったこと)、大手百貨店が売り出して人気(6 組 12
人の販売に対し、17 倍の競争率)となった体験型福袋でのツアーが考えられる。百貨店はストー
リー性を求めており、夕陽が見える居住先、滞在先を準備して、売り込むと良い。
◇最後に
日本海という小さな地域に関わる4国が連携して、「環日本海オリンピック」があってもいい。
スポーツは、夢のあるもの。
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