離島・地域医療 実 習 報 告 書

離島・地域医療
実 習 報 告 書
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 国際島嶼医療学講座
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター
はじめに
国際島嶼医療学講座
教授 嶽﨑俊郎
地域医療には、地域により様々な形態がありますが、離島へき地の地域医療の現場
においてはプライマリ・ケアを中心とした幅広い年齢にわたる多様な疾患の診断治療
に加え、患者さんの家族や社会的背景を考慮した全人的医療、チーム医療、行政と連
携した保健や福祉との関わりなどが求められ実践されています。地域医療の現場では、
これまでに大学で学んだことを応用し、総合的に患者さんをみることを学ぶことがで
きます。また、離島へき地は医療資源が限られているが故に、包括的な医療や医師の
役割が理解しやすい上に、医師としてのやりがいも実感できる長所を有しています。
離島・地域医療実習は、鹿児島大学医学部の教育理念である、「人間性豊かな」、「地域
に貢献する」医学・医療の担い手を育成することの実践でもあります。
この報告書は、6年生100名に対して、必須科目として行った離島・地域医療実習の
学生レポートを中心に、実習前および実習後の学生へのアンケートを合わせて、まと
めたものです。南北600kmに点在する離島を実習地域にしていることもあり、解決すべ
きいくつかの課題はあるものの、レポートからは学生の生き生きとした体験をうかが
い知ることができます。
今年も例年同様、特に大きな問題もなく、実習を行うことができました。これは、
実習を受け入れて頂いた離島やへき地、本土における地域医療機関の先生方やスタッ
フ、榮鶴医学部長や熊本医学部・歯学部附属病院長を始めとする大学の先生方、事務
担当の方々、離島へき地医療人育成センターおよび国際島嶼医療学講座のスタッフの
おかげであります。さらに、榮鶴医学部長を始め、教務委員会医学科部会の先生方、
および臨床および基礎教室の教授の先生方には、当実習の重要性を十分ご理解頂き、
実習経費を大学側で支援することを決めて頂きました。学生ともども感謝申し上げた
いと思います。
今後、当実習を受けた学生が研鑽と経験を積み重ね、良い医師に育っていくことを
願っています。
目 次
◆学習目標
1
◆実習日程と医療機関・実習の流れ
2
◆実習の内容と方法
3
◆鹿児島の島々
4
◆実習施設紹介
薩摩川内市里診療所
9
薩摩川内市下甑手打診療所
11
医療法人 義順顕彰会 田上病院
13
種子島産婦人科医院
14
肝付町立病院
16
鹿児島県立大島病院
19
大島郡医師会病院
20
介護老人保健施設 虹の丘
20
瀬戸内町へき地診療所
21
奄美市住用国民健康保険診療所
22
医療法人 朝戸医院
25
介護老人保健施設 沖永良部 寿恵苑
26
医療法人 英世会 大蔵医院
27
パナウル診療所
29
姶良市立北山診療所
31
医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック
32
◆離島・地域医療実習に関する学生のアンケート結果
33
◆学生による自己評価
47
◆実習総括
53
◆学生レポート
○上甑島実習コース(薩摩川内市里診療所)
57
○下甑島実習コース(薩摩川内市下甑手打診療所)
73
○種子島実習コース(医療法人 義順顕彰会 田上病院、種子島産婦人科医院)
97
○内之浦実習コース(肝付町立病院、岸良診療所、特別養護老人ホーム銀河の里)
125
○奄美大島実習コース
143
(鹿児島県立大島病院、大島郡医師会病院、介護老人保健施設虹の丘、瀬戸内町へき地診療所)
○沖永良部島実習コース
165
(医療法人朝戸医院、介護老人保健施設 沖永良部寿恵苑、医療法人英世会大蔵医院)
○与論島実習コース(パナウル診療所)
191
○へき地・在宅医療実習コース
225
(姶良市北山診療所、医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック)
学習目標
GIO (General Instructional Objective:学習終了時に期待される成果を示したもの=一般目標)
離島へき地を含む地域社会で求められる医療・保健・福祉・介護の活動について学ぶ。
SBO (Specific Behavioral Objectives :GIOを達成したことを示すために何ができるか=行動目標)
1.離島へき地のプライマリ・ケアを述べることができる。
2.離島へき地の救急医療を述べることができる。
3.離島へき地の保健・福祉・介護を述べることができる。
4.地域における在宅介護を述べることができる。
5.離島へき地での遠隔医療を述べることができる。
6.離島へき地医療現場を通じて医療の原点に立ち返り、全人的医療を述べることができる。
1
実習日程と医療機関
合計 100 名
実習の流れ
12月 21日(水)
オリエンテーション
12月 28日(水)
実習先の希望提出開始(web)
実習生のプロフィール提出開始(web)
事前アンケート提出開始(web)
1月15日(日)
1月24日(火)
上記〆切
マッチング結果の提示(web・掲示)
変更受付
2月10日(金)
変更〆切→マッチング最終決定
3月初旬
オリエンテーション
※個人情報に関する誓約書
印鑑持参
※ITKarte利用申請書
※実習1週間前の月曜:生協でチケットやクーポンの受け取り
※実習1週間前の水曜:17時~IT Karteの使用説明(医療情報部/村永先生)
を受ける。
4-6月
現地での実習
ITKarteの使用(web)
評価票の提出(web)
事後アンケート提出(web)
レポート提出(メールまたはファイルを直接提出)
レポート提出最終期限 7月31日
2
実習の内容と方法
1)実習内容
離島へき地における地域包括医療を理解するために、離島医療現場の医師といっしょに行動しなが
ら、離島医療システムや現場における医師の役割を修得します。外来診療、巡回診療や訪問診療で
は様々な科にまたがる患者さんを通じてプライマリ・ケアを体験します。
また、デモ症例を用いた遠隔医療も体験します。また、離島医療で重要である保健・福祉分野におけ
る医師の役割についても体験し、理解を深めます。これらの体験を通じて、医師のあるべき姿やどの
様な医師になりたいのかについて考えてもらいます。
2)実習方法
指定された5期間のうち1つの期間に1つの医療機関群で実習を行います。事前にwebで個人プロ
フィール情報を収集し、実習先に送付します。また、離島医療や実習に関する事前と事後アンケート
を行い、実習の評価と今後の改善に利用します。
実習期間
①4/2~4/6
②4/23~4/27
③5/28~6/1
④6/4~6/8
⑤6/25~6/29
移 動 日
土曜
3月31日
4月21日
5月26日
6月2日
6月23日
土曜
日曜
4月1日
4月22日
5月27日
6月3日
6月24日
月~金
月~金
月~金
月~金
月~金
日曜
月曜
月~金
<下甑島>手打
高速船シーホーク
<上甑島>里
フェリーニューこしき
高速船シーホーク
<種子島>
プリンセスわかさ
高速船トッピー
<奄美大島>
クイーンコーラルプラス
クイーンコーラル8
なみのうえ・あかつき
<沖永良部島>
クイーンコーラルプラス
クイーンコーラル8
なみのうえ・あかつき
<与論島>
クイーンコーラルプラス
クイーンコーラル8
なみのうえ・あかつき
実習
月曜
4月2日
4月23日
5月28日
6月4日
6月25日
8:45
11:25
8:40
13:00
18:00
18:00
18:00
5:00
5:00
5:00
18:00
18:00
18:00
11:30
11:30
11:30
18:00
18:00
18:00
13:40
13:40
13:40
10:20
移 動 日
金曜
土曜
4月6日
4月7日
4月27日
4月28日
6月1日
6月2日
6月8日
6月9日
6月30日
6月29日
土曜
金曜
15:25
17:00
16:10
17:00
14:00
14:50
17:30
16:25
12:40
12:10
14:35
実
習
3
21:20
21:20
21:20
8:30
8:30
8:30
14:30
14:30
14:40
8:30
8:30
8:30
12:10
12:10
12:10
8:30
8:30
8:30
鹿児島の島々
鹿児島県には、獅子島から与論島まで、南北約600キロメートルにわたって、人が住んでいる28の島々があ
ります。これらの島々の総面積は全国第1位である約2,500平方キロメートルで、県の総面積の約27%を占
めています。緑豊かな鹿児島の離島は観光地としても有名です。
実習先は下の地図上、
の箇所です。
鹿児島県
薩摩川内市里診療所
甑島
姶良市立北山診療所
肝付町立病院
薩摩川内市下甑手打診療所
ナカノ在宅医療クリニック
種子島
屋久島
田上病院
種子島産婦人科医院
トカラ列島
県立大島病院
大島郡医師会病院
虹の丘
奄美大島
奄美市住用国民
健康保険診療所
瀬戸内町へき地診療所
喜界島
徳之島
沖永良部島
与論島
朝戸医院、福山医院(寿恵苑)
大蔵医院
パナウル診療所
4
上甑島
◆人口:
2,750人
◆面積:
44.14平方キロメートル
◆位置:
川内市から31kmに位置する島。所要時間は串木野市の串
木野港からフェリーで里港まで85分。高速船で55分です。
◆その他: 海底の砂れきが沿岸流によって運ばれ、波の作用によっ
て水面上に現れたトンボロ地形が有名です。長目の浜な
ど景勝地が多く、上甑島と中甑島は、甑大明神橋と鹿の
子大橋でつながっています。
下甑島
◆人口:
3,109人
◆面積:
66.12平方キロメートル
◆位置:
甑列島一番下に位置する島です。串木野市から高速船
「シーホーク」が就航しており、鹿島港まで所要時間は
100分です。
◆その他: ナポレオン岩・鹿島崖など景勝地も多く、海水浴やキャン
プ、クルージング、スクーバダイビングなども楽しめます。
また手打診療所はコミック・テレビドラマで話題になった
「Dr. コトー診療所」のモデルになりました。
種子島
◆人口:
34,128人
◆面積:
444.99平方キロメートル
◆位置:
県本土から南方に43km、鹿児島市から115kmに位置する
島です。鹿児島市からフェリーで3時間30分~、飛行機で
は30~40分です。
◆その他: 中種子町の犬城海岸(いんじょうかいがん)は「新鹿児
島百景」に選ばれており素晴らしい景色を満喫できます。
また、サーフスポットしても大変有名です。南種子町には
「種子島宇宙センター」があります。
5
奄美大島
◆人口:
68,617人
◆面積:
712.38平方キロメートル
鹿児島市の南南西約380kmに位置する島です。鹿児島
市からフェリーで約11時間。鹿児島空港から飛行機で約
50分です。
◆その他: 奄美には国の特別天然記念物に指定されている「アマ
ミノクロウサギ」や「ルリカケス」など希少な生き物たち
が生息しています。またマングローブの原生林など貴重
な自然が色濃く残っています。
◆位置:
沖永良部島
◆人口:
14,551人
◆面積:
93.65平方キロメートル
◆位置:
鹿児島から南へ536km、北緯27度線上に位置します。
鹿児島空港から所要時間1時間30分、奄美空港から35分
です。
◆その他: 東洋一の昇竜洞ほか200~300の大鍾乳洞群を有するこ
とから「花と鍾乳洞の島」とも呼ばれています。また日本
銘木百選にも選ばれた「日本一のガジュマルの木」は県
内外の人気者です。
与論島
◆人口: 5,731人
◆面積: 20.47平方キロメートル
◆位置: 鹿児島から南へ563kmに位置し、南方には沖縄本島を望
むことができます。鹿児島空港から1時間45分、那覇空港
から45分で到着です。
◆その他: 正式名称は「よろんじま」。大杯になみなみと島製造の
黒糖焼酎を注ぎ、次々と回し飲みをして客人を歓迎する
という、与論献奉は島独特の習慣(儀式)です。
6
実習コース・実習先
紹
介
7
◆◆◆ 上甑島実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
8:00~12:00
外来見学
14:30~18:00
訪問診療同行・外来見学
火
8:00~12:00
介護保険施設見学
13:30~17:00
島内医療体制見学
水
8:00~12:00
外来見学
13:30~17:00
訪問診療同行
木
8:00~12:00
特別養護老人ホーム見学
14:30~18:00
特別養護老人ホーム見学
(定期健診)・外来見学
金
8:00~12:00
外来見学
移動(鹿児島へ)
●里町(里港)
●
約35km
里診療所
トンボロ地形
里海峡のトンボロは、海底の砂れきが岸の近くの海水の流れによって運ばれ、波の作用によって
水面上に現われたものです。島と島を繋ぎ、細長く高さは低い地形をしています。
里の東浦を東~南東方向から襲う台風と、西浦を冬の西~北西の季節風によって、沿岸海底の
砂れきが押し上げられてできたものであろうと言われています。
8
薩摩川内市里診療所
診療所外観
鈴木 済 先生
郵便番号
896-1101
住所/電話/FAX
鹿児島県薩摩川内市里町里1922番地/電話09969-3-2023 FAX09969-3-2836
管理者(院長・所長)
鈴木 済 (すずき
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、歯科
診療時間
平日 8:00~17:00 (月・木は18:00まで)
土曜日・日曜日・祝日・・休診
病床数
0床
スタッフ
医師1名、歯科医師1名、歯科衛生士1名、歯科助手1名、看護師4名、歯科技工士1名、事
務4名
設備
心電図、上部・下部消化管内視鏡、エコー、レントゲン、CT、呼吸機能検査装置、血圧脈
波装置、Holter心電計
院長からのメッセージ
小さな離島において無床の診療所が医療を通じて、地域住民に対してどのような役
割を果たしているか体験して欲しい。
わたる)
実習施設の特徴・実習内容
対象人口1300名弱の無床の診療所。
外来診療、在宅訪問診療、特別養護老人ホーム定期健診や特別養護老人ホーム、介護保険施設での
介護現場での実習。
実習を通して住民や働いている人々と交流し、離島地域の医療や福祉の現状を体験して欲しい。
里港とフェリーニューこしき
長目の浜
9
◆◆◆ 下甑島実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
診療内容・実施予定
8:30~12:00
入院患者の回診
外来患者の診察
水
8:30~12:00
入院患者の回診
外来患者の診察
人工透析の見学
木
8:30~10:30
10:30~12:00
外来患者の診察
瀬々野浦診療所の出張診療
8:30~12:00
入院患者の回診
外来患者の診察
人工透析の見学
金
時間
鹿児島から移動 シーホーク
(串木野8:10→手打10:35)~
オリエンテーション
月
火
午後
診療内容・実施予定
1:00~5:15
外来患者の診察
1:00~5:15
外来患者の診察
1:00~5:15
外来患者の診察
1:00~3:00
3:00~5:15
片野浦診療所の出張診療
外来患者の診察
1:00~
外来患者の診察→移動
約52km
瀬々野浦 ●
片野浦 ●
●
手打
10
● 長浜
薩摩川内市下甑 手打診療所
診療所外観
瀬戸上 健二郎 先生
郵便番号
896-1601
住所/電話/FAX
薩摩川内市下甑町手打956 /電話 09969-7-0031
管理者(院長・所長)
瀬戸上
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科・外科・小児科
診療時間
平日 午前 9:00~午後17:15
土曜日 ・日曜日・祝日・年末年始・・休診
病床数
19床
スタッフ
医師1人、看護師13人、事務4人、給食婦4名、介助員4名
設備
心電図、内視鏡、人工呼吸器、エコー、レントゲン、手術室、CT、血液透析器、生化学分析装置、
呼吸機能検査装置、血ガス分析器、Holter心電計
院長からのメッセージ
少ないスタッフで、離島医療の重責を担っている。そこでの住民との接し方や島の独自の医
療を体験してほしい。
FAX 09969-7-0362
健二郎
実習施設の特徴・実習内容
当診療所は病床数19床で医師1名、看護師13名、事務員4名、給食婦4名、介助員4名で運営しています。
主な診療は、入院・外来の診察、週3回の人工透析、週1回の出張診療、在宅訪問などを行っています。
実習生の方々には、患者さんの診察を通して住民との接し方を体験して戴きたい。
診察室
血液透析室
11
◆◆◆ 種子島実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
9:00~12:00
オリエンテーション
14:00~17:00
外来見学
火
9:00~12:00
種子島産婦人科医院外来
18:00~21:00
産婦人科・小児科検診
救急外来見学(18:00~21:00)
水
9:00~12:00
訪問看護ステーション
野の花見学
14:00~17:00
介護老人福祉施設 百合砂苑
見学・リハビリ・透析見学
木
9:00~12:00
田上診療所(中種子町)見学
14:00~21:00
わらび苑見学
救急外来見学(18:00-21:00)
金
9:00~12:00
外来見学
13:00~
まとめ→移動
●わらび苑
百合砂苑 ●
田上病院・野の花
●
●
西之表港 ● 種子島産婦人科医院
約115km
新種子島空港
●
● 田上診療所
約30km
●宇宙センター
12
社会医療法人義順顕彰会 田上病院
病院外観
田上 容正 会長
田上 容祥 院長
郵便番号
891-3198
住所/電話/FAX
西之表市西之表7463/電話 0997-22-0960 FAX0997-22-1313
管理者(院長・所長)
田上 容祥 (病院長)
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、外科、整形外科、脳神経外科、小児科、循環器科、眼科、麻酔科 、耳鼻咽喉科、
皮膚科、泌尿器科 、心療内科、リハビリテーション科、放射線科、呼吸器科、リウマチ
科
診療時間
受付:7:30~17:00となっております。※予約センター0997-22-0933
(ただし、12:00を過ぎて受付された方は基本的には14:00からの診察になります。)
診察:9:00~12:30 14:00~17:30
病床数
一般病棟200床(うち回復リハビリテーション病床48床)、
結核病床2床、感染症病床2床
スタッフ
関連施設
介護老人保健施設 わらび苑、わらび苑 在宅介護支援センター、
介護老人福祉施設 百合砂苑、訪問看護ステーション 野の花、田上診療所
実習施設の特徴・実習内容
田上病院は民間施設ですが、種子島の医療・保健・福祉の中心病院として活動しています。昭和44年に診療所と
して開設されその後、平成6年に202床の中核病院となっています。しかし、県本土にある中核病院と違い開業医の
いない診療科目も多く、プライマリ・ケアから、鹿児島大学病院、鹿児島市立病院等と連携して専門医療まで幅広く
診療を行っています。また、訪問看護施設、老人福祉施設、医療機関の少ない中種子町に診療所を開設し、島内の医
療福祉の充実を図っています。また、公立種子島産婦人科医院は、島民の強い希望があり、島内唯一の産科施設と
して平成19年1月に開設されました。まだ開設後新しい病院ですが、田上病院小児科による新生児回診や2月には
オープンシステムでの田上病院での婦人科手術が行われています。
今回の実習では離島の少ない医療資源を有効に使うために、どのような医療機関が連携して離島での地域医療
を支えているかを学んでほしいと思います。
13
種子島産婦人科医院
住吉 稔 院長
医院外観
郵便番号
891-3101
住所/電話/FAX
西之表市西之表9952-1/電話 0997-22-0260/0997-23-2281
管理者(院長・所長)
住吉 稔
メールアドレス
[email protected]
診療科目
産婦人科
診療時間
9:00~12:00,14:00~17:00
病床数
17床
スタッフ
医師1名、助産師1名、看護師11名、調理4名、事務5名
土・日・祝休診
設備
院長からのメッセージ
離島の産婦人科医療で気をつけるべきことは、母体搬送をするべきかどうかを
なるべく早期に判断することだと思って努力しています。
実習施設の特徴・実習内容
種子島は、基幹病院がある鹿児島市より南へ115㎞の海上に浮かぶ南北に細長い島です。
当院は人口31.771人(平成24年4月末)の種子島唯一の産婦人科医療施設で、年間約220件の分娩を扱っています。
平成23年度は帝王切開18例、婦人科手術26例となりましたが、うち婦人科手術19例は腹腔鏡下手術等で、近くの
麻酔科、外科を有する総合病院にてオープンシステムで行っています。
実習としては、ふだんの産婦人診療風景を見てもらうことで、離島医療に対する理解を深めてもらいたいと思います。
14
◆◆◆内之浦実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
8:30~12:30
外来患者の診療見学
14:00~17:00
訪問診療同行
火
8:30~12:30
岸良診療所の出張診療見学
14:00~17:00
理学療法患者見学
水
8:30~12:30
外来患者の診療見学
14:00~17:00
手術見学
木
8:30~12:30
特別養護老人ホーム銀河の里
及びグループホーム見学
14:00~17:00
病棟回診見学
金
8:30~12:30
岸良診療所の出張診療見学
14:00~17:00
眼科外来患者の診療見学
→移動(鹿児島へ)
肝付町立病院
内之浦湾全景
肝付町立病院
付近の地図
15
肝付町立病院
病院外観
井畔 能文 院長
吉本 史明 副院長
郵便番号
893-1401
住所/電話/FAX
肝属郡肝付町北方1953番地 /電話 0994-67-2721 /FAX 0994-67-2741
管理者(所長)
井畔 能文(いぐろ よしふみ)
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科・外科・泌尿器科・眼科(金)
診療時間
平日8:30~17:00
土・日・祝・年末年始休診
病床数
40床
スタッフ
医師3名、看護師26名、放射線技師1名、事務4名、看護助手4名、
管理栄養士1名、臨床検査技師1名、作業療法士1名、薬剤師1名
設備
心電図、エコー、レントゲン、手術室、CT、生化学分析装置、全自動血算器、呼吸機
能検査装置、血ガス分析器、各種内視鏡(上・下部消化管、気管支、膀胱)、理学療
法室、人工呼吸器、骨蜜度測定装置
所長からのメッセージ
肝付町内之浦地区の高齢化率は45%で、老介護や独居老人も数多く、また、交
通手段をもたない患者も増えてきております。1番近い二次医療機関まで1時間程
度要するため、なんとか地区内で完結した医療が提供できるよう、各種検査をは
じめ手術まで行っております。
限られた医療資源でプライマリ―ケアから救急医療、在宅医療や保健・福祉を
含めた地域包括医療の幅広い医療を体験し、理解することで将来何らかの形で
も、地域医療に貢献してもらえれば幸いです。
実習施設の特徴・実習内容
旧内之浦町唯一の有床病院として人口約4,000人の医療を担っています。周辺医療機関からも離れており、一次
救急医療病院として24時間体制で急患対応しています。また、無医地区の診療所に週二回(火・金)出張診療も行い、
平成23年4月には眼科を開設し、毎週一回(金)の診療を行っています。
常勤医3名体制となった平成22年6月からは、さまざまな手術を行えるようになり、町内はもとより、町外からも来
院される患者も増えてきました。
診療機器は、腹腔鏡、超音波凝固切開装置など手術用機器のほか、CT、各種内視鏡(上部・下部消化管、気管支、膀
胱)、心・腹部エコー、骨密度測定装置などを備え、生化学検査もすぐに結果が出るように対応しています。
在宅医療や各種健診、地域保健活動にも協力し、国保直診の目指す地域包括ケアを目標に努力しています。
短期間の実習ですが、外来診療はもちろん、内視鏡等各種検査や手術の見学、無医地区診療所や訪問診療への
同行など、地域医療の現場を体験していただきます。
隣には、温泉保養センター、病院敷地の真下は白砂青松の海辺(約1.5Km)が広がり、ロケット発射基地など見所多
数、さらには新鮮な魚介類も味わえます。
16
◆◆◆奄美大島実習コース◆◆◆
実習日程
奄美大島実習コースA
該当実習期間:4/2-4/6、5/28-6/1、6/4-6/8、6/25-6/29
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
8:30~12:30
県立大島病院実習
13:00~17:00
県立大島病院実習
夜:救急外来
火
8:30~12:30
県立大島病院実習
13:00~17:00
県立大島病院実習
夜:救急外来
水
8:30~12:30
大島郡医師会病院実習
介護老人保健施設虹の丘
14:00~17:00
名瀬→古仁屋
バスで移動
木
8:30~12:30
瀬戸内町へき地診療所
(巡回診療実習)
14:00~17:00
瀬戸内町へき地診療所
金
8:30~12:30
瀬戸内町へき地診療所
13:30
古仁屋→名瀬
バスで移動
・ 古仁屋に着いたら、民宿「海」に電話してバス停まで
迎えに来てもらう。
・ 一度瀬戸内町へき地診療所に行き、翌日の実習時間・
内容等を確認する。
奄美大島実習コースB
該当実習期間:4/23-4/27
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
8:30~12:30
県立大島病院実習
13:00~17:00
県立大島病院実習
夜:救急外来
火
8:30~12:30
県立大島病院実習
13:00~17:00
県立大島病院実習
夜:救急外来
水
8:30~12:30
大島郡医師会病院実習
介護老人保健施設虹の丘
14:00~17:00
県立大島病院実習
木
8:30~12:30
住用国民健康保険診療所実習
外来
14:00~17:00
住用国民健康保険診療所実習
訪問診療
金
8:30~12:30
住用国民健康保険診療所実習
外来
13:30
住用国民健康保険診療所実習
訪問診療、移動(鹿児島へ)
17
約370km
18
鹿児島県立大島病院
病院全景
眞田 純一 院長
郵便番号
894-0015
住所/電話/FAX
奄美市名瀬真名津町18番1号/電話 0997-52-3611/FAX 0997-53-9017
管理者(院長・所長)
眞田 純一
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、消化器科、循環器科、整形外科、眼科、精神科 、脳神経外科、耳鼻
咽喉科、神経内科 、産婦人科、 歯科・口腔外科、小児科、皮膚科、放射線
科、 外科、泌尿器科 、麻酔科 、臨床病理部、透析科
診療時間
受付8:30~10:00 ※詳しくはホームページ参照
土・日・祝・年末年始休診
病床数
400床
スタッフ
常勤医師40名、非常勤2名、研修医(管理型定員12名、鹿児島大学協力型若干名)
看護師252名、薬剤師8名、臨床検査技師13名、診療放射線技師9名、理学療法部4
名、栄養士3名、事務職員18名、労務職員23名
設備
心電図(各種ホルター心電計)、節電図、脳波、APG(Air plethysmo graphy)、血管
弾性測定装置、レントゲン(各種)、マンモグラフィー装置、循環器X線血管造影装
置、X線骨密度測定装置、レーザー(YAG、マルチカラー )、ガンマカメラ、核医学
診断装置、CT(2基、64列)、MRI、リニアック、体外衝撃波結石粉砕装置、高圧O2タン
ク(2基)、血液透析器、人工呼吸器(病棟用12機)、内視鏡(胃・食道・大腸・十二指
腸・直腸・気管支・膀胱・など)、超音波内視鏡、超音波(各科)、全自動生化学分析装
置、全自動尿分析装置、血液ガス分析装置、呼吸機能検査装置、NICU(6床)、手術
室(6室)他
院長からのメッセージ
離島・へき地医療では専門医ではなく医学知識を広くもち、急性期・回復期・維持
期の一連を全て診る必要がある。又 急性期での病状判断(後方へ送るべきか
否か)、最小限度の救急処置の能力が必要である。従って当病院は総合病院であ
る点を利用し救急、産科、小児科さらには老人施設やへき地診療所等で見識を広
めていただきたく、現在の医療の問題を確認・把握していただきたい。
運用350床
(結核病床15、感染床4、エイズ床1)
実習施設の特徴・実習内容
a
b
c
d
e
人口14万人を背景とする群島唯一の総合病院である。病院機能評価認定施設で各科の認定医、専門
医研修指定病院であります。厚労省の管理型・協力型研修指定病院で、救急指定病院、地域医療支援
病院、災害拠点病院、地域がん拠点病院、第二種感染症指定病院、へき地医療拠点病院、エイズ拠点
病院、地域周産期母子医療センター他の認定を受けている。従って幅広く一次医療から三次医療まで
係る事が可能であります。
老健施設の経験、見学を取り入れる。
へき地診療所(古仁屋)の実施研修を取り入れる。
各グループ状況に応じて予定をたてている。
救急医療の実習として当直の指導医と研修医とで行う。 又 PM7:00~AM0:00迄の当直実習が週に2・3回あり。
(救急患者・・年間約8,500名)
その間お産(年約700例)の現場実習を入れている。
注)1週間の滞在のうち1日は瀬戸内町へき地診療所へ行き、
お産の実地研修(分娩見学:年間約600例)
巡回診療を見学予定。
大島郡医師会病院
桜井 修吾 院長
病院外観
郵便番号
894-0046
住所/電話/FAX
奄美市名瀬小宿3411/電話 0997-54-8111/FAX 0997-54-8870
管理者(院長・所長)
桜井 修吾
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科
循環器科 消化器科
神経内科 整形外科 皮膚科 耳鼻いんこう
科 呼吸器科 リウマチ科 アレルギー科 リハビリテーション科 放射線科
診療時間
月~金 9:00~12:00、13:00~17:00
土 9:00~12:00
土曜日午後、日曜日、祝日 休診
病床数
188床
スタッフ
常勤医5名
設備
胃透視、レントゲン、胃カメラ、気管支ファイバー、心電図、ABI、ヘリカルCT、血液
検査、HolterECG、エコー 他
院長からのメッセージ
短期間の滞在ですので、漠然とした印象しか残らないと思いますが、何らかの目
的を持ってこられたらよろしいかと思います。歓迎いたします。
非常勤医11名
介護老人保健施設 虹の丘
施設外観
喜入 厚 先生
郵便番号
894-0046
住所/電話/FAX
奄美市名瀬大字小宿3416-1/電話 0997-54-8888/FAX 0997-54-8800
管理者(院長・所長)
喜入 厚
メールアドレス
[email protected]
院長からのメッセージ
高齢者の自立支援(リハビリ等を通して)を行う中間施設としての機能および介
護保険制度についても学んでいただきたい。
20
瀬戸内町へき地診療所
準備中
上村 豪 所長
診療所外観
郵便番号
894-1507
住所/電話/FAX
大島郡瀬戸内町古仁屋瀬久井西13-2
中尾 祐樹 先生
電話 09977-2-3211/FAX 09977-2-3762
管理者(院長・所長)
上村 豪
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、外科
診療時間
8:30~12:00/14:00~17:00
土・日・祝・年末年始休診
病床数
19床
スタッフ
医師2名、看護師13名、放射線技師1人、事務8人、看護助手3人、調理員4人
設備
心電図、人工呼吸器、エコー、レントゲン、手術室、CT、生化学分析装置、全自動血
算器、呼吸機能検査装置、血ガス分析器、Holter心電計
院長からのメッセージ
へき地の診療所であっても都会の総合病院であっても基本的な考えは同じで、
「自分がしてもらいたいことを患者さんにも提供する」ということです。自分や自
分の身内と思って検査、診断、治療、説明、紹介などするように心がけること。
そうすることで医師として人として成長するのではと思いつつ、私自身日々努力
しているところです。なかなか容易にはできませんが‥‥。
実習施設の特徴・実習内容
自治医大卒の医師(内科系1人、外科系1人)計2人で診療しています。通常1人が診療所で外来診療(胃・大腸内
視鏡、各種超音波検査も含む)や各種検診、入院患者(19床)の管理を担当し、もう1人が巡回診療をしていま
す。いわゆる「町のお医者さん」として赤ちゃんからお年寄りまで、慢性期疾患から救急疾患(応急処置、必要
に応じて搬送)まで特殊な疾患を除いたほぼすべての治療に携われることが魅力的です。巡回診療では主に
慢性疾患の管理が中心となりますが、巡回バスという全国でも珍しい形態で診療を行っています。
是非一度体験して下さい。
21
奄美市住用国民健康保険診療所
郵便番号
894-1202
住所/電話/FAX
鹿児島県奄美市住用町西仲間72-9
電話 0997-69-2620/FAX 0997-69-2307
管理者(院長・所長)
野崎 義弘(のざき よしひろ)
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、外科、小児科、整形外科
診療時間
9:00~12:00、14:00~17:00(月~金)
※火曜・金曜の午後は施設回診14:00~15:30(現在は施設なし)
※木曜の午後は往診14:00~15:30
土・日・祝・年末年始休診
病床数
なし
スタッフ
医師1 名、看護師2 名、事務1 名、看護助手1 名、管理栄養士0 名
設備
エコー、レントゲン、血圧脈波、骨塩定量、上・下部内視鏡、生化学分析装置、呼吸
機能検査装置、Holter心電計、心電計
院長からのメッセージ
人口約1,500名の町で唯一の診療機関です。楽しく継続できる医療をしていきた
いと電子カルテを活用しております。
実習施設の特徴・実習内容
休診状態が2年ほどあり平成16年から公設民営で再開した診療所です。平成22年10月に豪雨災害で天
井近くまで浸水しました。
避難所では電子カルテの情報が役立ちました。
平成23年から同じ所で診療再開しております。救命胴衣準備しておりますので安心してお越しください。
再来年役場2階へ立て直す予定です。まだ施設が再開していないので2日間の間に外来と訪問診療を中
心に見ていただきます。地域に密着した診療所での日々の実際の臨床の現場を体験していただきます。
診療所の面白さ、へき地の楽しさがわかっていただくといいですね。
22
【巡回診療 週間予定表】
A
※巡回は曜日固定ではありません。月により変更があります。
午前
午後
診療内容・実施予定
診療内容・実施予定
与路島巡回診療
巡回バス見学
請島巡回診療
請島巡回診療・バス見学
へき地診療所
巡回バス見学
木
本島西部巡回バス診療①
久慈方面
本島西部巡回診療①
金
本島西部巡回バス診療②
西古見方面
本島西部巡回診療②
月
火
水
午前
午後
診療内容・実施予定
診療内容・実施予定
B
月
火
水
木
金
へき地診療所
巡回バス見学
加計呂麻巡回バス診療①
芝方面
加計呂麻巡回バス診療②
渡連方面
加計呂麻巡回バス診療③
諸鈍方面
加計呂麻巡回バス診療①
加計呂麻巡回バス診療④
西阿室・阿多地方面
加計呂麻巡回バス診療②
加計呂麻巡回バス診療③
加計呂麻巡回バス診療④
●
23
瀬戸内へき地診療所
◆◆◆沖永良部島実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
9:00~12:30
朝戸医院実習
14:00~15:30
朝戸医院実習
火
9:00~12:30
大蔵医院実習
14:00~17:00
大蔵医院実習
水
9:00~12:30
大蔵医院実習
14:00~17:00
大蔵医院実習
木
9:00~12:30
福山医院(寿恵苑)実習
金
9:00~12:30
朝戸医院(まとめ)
14:00~
14:30
タラソテラピー体験
(予約不要)
フェリー乗船
★各診療所の位置関係
★寿恵苑・朝戸医院周辺
屋子母海岸にかかる虹
24
医療法人 朝戸医院
朝戸
医院外観
末男 院長
郵便番号
891-9112
住所/電話/FAX
鹿児島県大島郡和泊町和泊14番地
管理者(院長・所長)
朝戸
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、消化器科、外科、整形外科、眼科
診療時間
平日 午前9:00 ~午後12:30、午後2:00~午後3:30
土曜 午前9:00 ~午後12:30
休診・・・土曜午後、日曜、祝祭日
病床数
19床
スタッフ
医師1名(プラス前期研修医1名)、看護師10名、介護師6名、理学療法師1名 ほか
設備
ECG、内視鏡(上部、下部消化管)、エコー(腹部、心臓、表在兼用)、CT、CR、Holter_ECG、
遠隔画像診断システム、通所リハ、居宅介護支援 等
院長からのメッセージ
外科系有床診療所です。離島とはいえ地理的ハンディを除けば本土の医療機関と違
わない医療ができると思います。介護保険を含めて地域に根ざした自己完結的な医
療を目指していますが人口7500名の地域コミュニティで殆どすべての患者、家族が
顔見知りであり家庭医としてはやりがいがあります。離島医療の厳しさだけでなく一
開業医としての楽しさも体感していただきたいです。
電話 0997-92-1131/FAX 0997-81-4005
末男
施設の特徴・実習内容
昭和57年10月外科系有床診療所として開設。腹部外科、骨折、交通外傷等島内唯一の外科診療所としていろいろな外科、
整形外科的疾患に対応してきました。地域のニーズの多様化により最近は高齢者医療、介護保険事業のほか平成18年から
鹿大眼科医局より医師派遣を得て眼科診療も行っています。また離島診療というハンディの克服にIT技術を応用する試み
を行っており院内LAN構築、画像、診療データのデジタルファイリング、放射線科専門医による遠隔画像診断システムの導
入、また高速通信回線を利用したリアルタイム映像送受信による遠隔診療の実験などを行っています。
1日半の実習ですので診療見学が中心になると思いますが訪問診療の同行、上部、下部消化管ファイバースコープ、腹部、
心臓エコー、CT、CRなど日常行っている検査、外来小手術などには一緒に入っていただきます。またデイケアの送迎車添
乗、利用者のバイタルチェック、リハビリ、なども見学、経験していただきます。
この実習を通じて第一線の開業医の医療活動を見ていただき、家庭医療、地域医療について考える機会となればうれし
いです。
25
介護老人保健施設 沖永良部 寿恵苑 (医療法人慈心会 福山医院)
福山 茂雄 院長 (福山医院)
寿恵苑外観
郵便番号
891-9112
住所/電話/FAX
鹿児島県大島郡和泊町和泊95-1 電話 0997-92-3691/FAX 0997-92-3691
【福山医院】大島郡和泊町和泊96-5 電話 0997-92-0033/FAX 0997-92-0033
管理者(院長・所長)
福山
メールアドレス
[email protected]
診療科目
介護老人保健施設及びデイケア
茂雄
(福山医院・・内科、小児科)
診療時間
病床数
寿恵苑・・・50床、福山医院・・・17床
スタッフ
寿恵苑・・・45名、福山医院・・・13名
設備
介護老人保健施設に必要な設備は殆ど揃えている。福山医院はルーチン検査は殆
ど可能。
院長からのメッセージ
離島の施設のネックは人員基準の中で特に看護師、PTの確保に頭を悩ませている。
当施設はOTは1名おり基準は満たしているが、PTがなかなか定着しないのが最大
の悩みである。現在募集中。
築18年目で機器の劣化が進んでいるが迅速に対応して入所者の居住環境の維持
には最大の関心を払っている。
施設の特徴・実習内容
労働基準に則り、入所者の介護と職員の労働時間のバラ
ンスを考慮した組み合わせの日課を組み実践しています。
朝8:20~夕5:00を基本労働時間とし、必ず朝礼を行い朝礼
前のラジオ体操が始業始めです。
施設職員の勤務は大まかに分けると事務3名、介護看護
業務23名、デイケア対応業務6名、調理業務・栄養士8名、ほ
か5名です。医療はこれ等部門何れもが必要なので、関心
のある方はすべて入ってベテランの職員から知識を得て貰
いたいと思います。 施設入所の方々の基礎疾患はほぼ
定まっており、それについての知識も得てください。老健入
所中の方々の入所後の羅患疾患に対しては診療所で行っ
ている。したがって診療所は病院並みの機器を設備をして
おり、8割方の検査が可能である。診療所は老健付属の印
象があるからか外来はすくなく1日30名以下で珍しい患者
も時々見られる。学生達が一生と残る思い出になるような
実習になればと願っています。
2010年10月3日(日) 南日本新聞
26
医療法人英世会 大蔵医院
診療所外観
大蔵 英世 院長
大蔵 聡 先生
郵便番号
891-9214
住所/電話/FAX
鹿児島県大島郡知名町知名16-2/電話 0997-93-5033/FAX 0997-93-5036
管理者(院長・所長)
大蔵
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、胃腸科、循環器科、小児科
診療時間
平日 午前8:30~午後5:00
土曜 午前8:30~午後0:00
休診・・・日曜、祝祭日
病床数
17床
スタッフ
医師2人、看護師7人、栄養士1人、事務4人、給食3人
設備
CT,エコー(2台)、レーザー、上下内視鏡、レントゲン、ホルター心電図
院長からのメッセージ
特殊なことはやっていません。標準的家庭医を目標としています。
英世
施設の特徴・実習内容
地方の平均的家庭医として何でも診療しています。診療の内容もですが、診療のスタイル・やり方を見て
下さい。広く浅く、エラーを少なく診療する努力をしていることが理解できると思います。
能力を超える無理をしないよう守備範囲を守るように心がけています。
27
◆◆◆与論島実習コース◆◆◆
実習日程
午前
時間
午後
診療内容・実施予定
時間
診療内容・実施予定
月
8:30~12:00
9:00まで検査(予約)
検査終了後一般外来診察
14:00~
16:00~18:00
講義
外来診察
火
8:30~12:00
同上
14:00~
16:00~18:00
訪問診察
外来診察
水
9:00~
福祉センター研修
14:00~
16:00~18:00
訪問診察
外来診察
木
8:30~12:00
検査・診察
14:00~
16:00~18:00
訪問診察
外来診察
金
8:30~
検査・診察
12:10
フェリー乗船
*往診は依頼があればいつでも往診します。
*検診・会議なども課外事業として入ることあり
与論パナウル診療所
●
●
与論活性化センター
●
与論港
与論献奉
フェリー in 与論港
28
パナウル診療所
診療所外観
古川 誠二 先生
郵便番号
891-9308
住所/電話/FAX
大島郡与論町大字那間2747-1/電話 0997-97-2073/FAX 0997-97-5164
管理者(院長・所長)
古川 誠二 (こかわ
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科・外科・小児科
診療時間
平日 午前 8:30~12:00
午後 16:00~18:00
土曜日 午前 9:00~12:00 午後 休診
日曜日: 休診
せいじ)
病床数
スタッフ
設備
心電図、内視鏡(胃カメラ・大腸ファイバー・気管支ファイバー)エコー(腹部・心臓兼
用)、単純レントゲン、電子カルテ、全自動血算器、呼吸機能検査器、 Holter心電計,
動脈硬化測定器
院長からのメッセージ
1)人間とは、医師とは何者か?じっくりと自分自身に問いかけてほしい。
2)島嶼の医療システムを理解してほしい。3000年の歴史を持つ限られた島の
生活空間の中で築き上げてきた生活様式、文化、価値観、常識など全般の
理解と、そこに暮らす人間関係のあり方。
3)プライマリ・ケアとはなにか?その基礎から臨床まで。プライマリ・ヘルスケア
の実践との連携を考えて、世界の発展途上国のことにも関心を持ってほしい。
4)在宅医療の現状とその問題点 地域社会、家族との関係においてどのよう
に変化していくか。与論の現状とその変遷。
5)海と健康 代替療法、総合医療等を理解してほしい。
6)医療システムの中の開業医の立場とあり方について考えてほしい。
施設の特徴・実習内容
1) 木造平屋建築の外来と健康増進室があり、薬局は院内処方で対応。検査はSRL西日本に依頼。
検尿、赤沈、CBCは院内で。レントゲン室、牽引、SSP等の簡単なリハビリ実施。
2) スタッフは医師1名、看護師3名、事務部4名。
3) プライマリ・ケア医として地域とともにいかに生きるか。実技と地域の人間としての生き方についても
実習。実技では内科一般、外科の小手技、小児、皮膚科、眼科などの治療を幅広く行い、腹部エ
コー、胃カメラ大腸ファイバーなどの実習も行う。
4) 島嶼医療のポイントであるトリアージについえも考えてもらう。救急搬送すべきか、時間の余裕は?
ターミナルケアの見取りなども機会があれば実習していただく。
29
◆◆◆へき地・在宅医療実習コース◆◆◆
実習日程
■北山診療所
診療内容・実施予定
月
朝7時45分オリエンテーション、8時から外来研修(受付・問診・診察見学)
昼食後、2時から4時まで学生だけで市役所へ移動
姶良市の保険の仕組みと市民の保健事情を事務部門から学ぶ
市役所で解散
火
外来研修(見学と体験)
午後訪問診療有り
一人の外来患者を診察 午後カルテ作成をして検討
実 習 日 程
学生A
■ナカノ在宅医療クリニ ク
8時30分~9時
スタッフミーティング参加
9時~12時30分
在宅医療に関するレクチャー
(中野Dr.担当)
水
木
学生B
13時30分~17時30分
退院前カンファレンス、ケアカンファレンス、新患者往診同行
(中野Dr.担当)
8時30分~9時
スタッフミーティング参加
9時~12時30分
訪問看護同行
(ナカノ訪問看護ステーション)
訪問診療同行
(松尾Dr.または中野Dr.同行)
訪問看護同行
(松尾Dr.または中野Dr.同行)
訪問診療同行
(ナカノ訪問看護ステーション)
13時30分~17時30分
9時~12時30分
金
13時30分~17時30分
北山診療所
● ナカノ在宅医療クリニック
●
鹿大
鹿大
●
30
●
姶良市立北山診療所
診療所外観
※他 出張所として 木津志出張診療所、
堂山出張診療所、木場出張診療所あり
毛利
通宏
先生
郵便番号
899-5541
住所/電話/FAX
姶良郡姶良市北山842番地/電話 0995-68-0282 /FAX 0995-54-4123
管理者(院長・所長)
毛利
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科、小児科、プライマリ・ケア科
【専門外来】第1・第2・第3土曜日・・・消化器外来
第4土曜日・・・循環器外来、整形外科外来
診療時間
平日・土曜 8:30~12:30, 13:30~17:15
木曜日・日曜日・・休診
※水曜・金曜の午後は出張診療と往診の為不在になる可能性あり
病床数
0床
スタッフ
医師1名、看護師3名
通宏
設備
院長からのメッセージ
過疎化・高齢化の進んだへき地で生活する住民は、地域に強い愛着を持
ちつつも、大病院での臓器専門性の高い現代医療の情報に社会的格差
や不利を感じています。私達職員はそのような地域住民の「心理と生
活」に視点を置く、質の高いプライマリ・ケアを提供できるよう努力します。
プライマリ・ケアは、病気だけに関心を寄せるのではなく、心理社会的に
人を見ることからスタートしますが、地域に共に住むかかりつけであれば
こそできる人間的な繋がりの元で初期の健康問題を整理し、専門医に紹
介をしつつ継続的に診療していきます。また、最も基本的・必須の事なが
ら今の医療保険制度では介入しにくい、介護の病気の予防教育を住民と
共に行います。
施設の特徴・実習内容
本診療所は、姶良町立の無床診療所であり、昭和37年の開設以来、本町の北部に位置する過疎・山間地域
である北山地区の住民の福祉増進のために、国民健康保険直営診療所、また第2種へき地診療所として
医療活動を行っております。
平成14年に現在地へ新築移転し、現在では3つの往診拠点としての出張診療所を有し、医師1名と3名の
看護師で運営しております。平均来所者数は30名程ではありますが、診療圏内の高齢化率は60%を超え
ており、このたびの制度改正により創設された「在宅療養支援診療所」として、地域特性に沿った診療所
として往診体制の充実などの整備を図っています。
また、国保直診という特性を生かし、介護・疾病予防などの各種健康教室や相談窓口の設置も積極的に
行い、地域住民との連帯を強め、北山地区に住む全ての人のホームドクターでありたいと思います。
平成21年から、待望の専門外来が毎週土曜日に開かれることになりました。腹部エコー、胃内視鏡検査、
大腸内視鏡検査、整形外来診療が専門医によってなされるようになり、へき地が負う格差をひとつ減ら
すことが出来ました。
今後も北山診療所はpatient orientedというよりも更にhuman orientedのmindで仕事を続けていきま
す。北山では症状や疾病ではなく人間に関心をもって実習して下さい。
31
医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック
クリニック外観
中野 一司 先生
郵便番号
890-0007
住所/電話/FAX
鹿児島市伊敷台6丁目27番地10 /電話 099-218-3300 /FAX 099-218-3301
管理者(院長・所長)
中野
メールアドレス
[email protected]
診療科目
内科・在宅医療
診療時間
平日 8:30~17:30(土曜、祝日は平常営業)※昼休み12:30~13:30
日曜日・・休診
※緊急往診は365日、24時間対応
病床数
0床
スタッフ
医師6名(常勤3名、非常勤3名)、看護師12名(常勤12名)、理学療法士1名(常勤1名)、作
業療法士1名(常勤1名)、事務職員6名(常勤6名)、運転士3名(非常勤3名)
一司
設備
院長からのメッセージ
わが国では、超高齢社会を迎え、医療システムが大きく変わろうとしています。病院
医療(急性期医療、治療医学、病気を治す医療キュア)から、在宅医療(慢性期医療、予
防医学、生活を支える医療ケア)へのパラダイムシフトです。
本実習では、高度最先端医療とは別の意味で、時代の最先端医療である在宅医
療の現場を、未来の医療を担う若き医学生に是非堪能していただきたいと考えてい
ます。
施設の特徴・実習内容
当クリニックは、1999年9月に在宅医療専門の診療所として個人開業し、2003年10月に医療法人ナカノ会とな
り、2004年11月にナカノ訪問看護ステーションを併設しております。鹿児島市を舞台にした地域連携ネットワー
ク型在宅医療システムの構築が当医療法人の大きな目標で、ITのフル活用はナカノ在宅医療クリニック開業
当初からの理念の一つです。スタッフ全員が、院内メーリングリストおよび電子カルテで情報を共有化し、また
教育支援ツールとしてもITを有効活用しております。毎朝、8時30分から9時までは、スタッフ全員でのスタッフ
ミーティングを行い、9時から、訪問診療、訪問看護を開始します。本実習では、訪問診療、訪問看護に同行し、
また、緊急の往診にも同行してもらい、在宅医療の現場を学んでいただきます。白衣は着ませんので、平服で
来てください。
ナカノ訪問看護ステーション 外観
32
離島へき地医療に関する
学生のアンケート結果
33
6年生離島・地域医療実習アンケート
「これまでの離島に行った回数」
「これまでの離島医療実習の回数」
(実習前) (実習前) 2%
5%
31%
34%
23%
70%
0回
1回
2回
13%
3回以上
0回
1回
22%
2回
3回以上
「離島と本土との医療の違い」(n=100)
人数(前)
人数(後)
80
69
70
人 60
数
(人) 50
44
42
40
30
25
20
10
6 4
2
8
0
違いはない
少し違う
かなり違う
34
全く違う
無回答
「離島へき地医療への興味」(n=100)
人数(前)
60
51
人数(後)
54
50
人 40
数
(人) 30
20
19
22
15
14
6 8
10
7
2 2
0
「離島へき地医療に対してやりがいを感じるか」 (n=100)
人数(前)
60
53
50
人
数
(人)
40
30
人数(後)
48
33
24
22
20
10
10
1 2
0
35
7
「離島へき地での勤務をどう考えるか」 (n=100)
人数(前)
60
50
50
人
数
(人)
人数(後)
47
40
30
23
10
19
17
20
6
11
10
11
2 4
0
「離島へき地で勤務するとしたらどの時期がよいか」 (n=100、複数回答可)
人数(前)
人数(後)
卒後臨床研修
後期研修
15
14
7
18
29
28
後期研修後
定年前後
独身時
結婚して子どもがうまれるまで
子どもが幼稚園(保育園)まで
7
8
子どもが小学校まで
25
11
10
10
11
子育て終了後
3
その他
0
5
34
38
28
28
35
6
10
15
20
人数(人)
36
25
30
35
40
「離島へき地医療の魅力」(n=100、複数回答可)
人数(前)
人数(後)
75
72
プライマリ・ケアや地域包括医療を学べる
38
患者さんと医師との信頼関係が得られる
59
65
68
地域社会や文化を理解した医療ができる
42
46
生活・自然環境が良い
17
個人の力を発揮できる
29
53
地域貢献を実感できる
医療の責任者として重要な役割を担う
42
23
22
多くの広範な経験をすることができ早期に医療技術
を修得できる
49
全人的医療を行える
ひとりの患者さんを長期に診ることができる
29
35
在宅医療や終末期医療など社会のニーズの高い領
域を修得、実践できる
4
2
その他
0
10
20
30
40
61
46
50
53
64
58
60
70
80
「離島勤務で不安に思うこと」(n=100、複数回答可)
人数(前)
人数(後)
医療レベル
55
48
自分の能力の遅れ
医療の相談ができない
38
代診の確保
36
育児
48
41
39
46
生活の利便性
人間関係
26
交通の便
30
45
5
4
その他
0
10
20
30
40
人数(人)
37
65
50
53
子供の教育
家族の理解
64
53
52
50
52
57
55
60
70
「あなたは今後どのように離島医療に関わりたいですか」
(n=100、複数回答可)
人数(前)
人数(後)
29
28
離島医療の現場
離島医療現場への巡回診療
61
42
本土での支援
72
47
3
3
その他
0
10
20
30
40
人数(人)
38
50
60
70
80
「離島医療に携わる人を増やすために必要なことは何ですか?」
・このような研修を繰り返していくことのみ。
・根気、義務化
・大学などに所属している場合、離島医療にかかわった後のフォローが必要だと思います。
・
「離島」のレッテルをはりすぎないこと
・休みを取れるかなどのサポート体制
・大学教育の中でプライマリケアを学ぶ時間をもっと作ること。初期または後期研修のコースとして設
けてもよい。
・島出身の人の入学
・学生のうちに実習で離島医療を体験させ、その魅力を感じてもらう。
・医局制度の完全な復活。行政による離島医療従事者への手厚い手当。
・離島枠の増加
・資金と設備
・期間を定めて,不安を解消できればいいと思う。
・
「医療人が少ない→勤務体制の激務化→さらなる医療人の減少」というスパイラルが生じているので、
まずは金銭を含めた好待遇により医療人の絶対的な数を増やす必要があると思う。
・医局との連携
・システムづくり、総合医の育成
・本土と離島の交通費が安くなれば…
・本土との連携(特に人材)をより強めること。若い頃に短期間で良いので離島医療を経験する機会を
もつこと。
医療者に対しての組織的サポート。(金銭的、知識的、労働環境面)
・全国からの見学を行い続ける事だと思う。
・私は今回の実習で離島医療に興味を持ったので、今回のような離島実習の機会をもう少し増やしてみ
ること。
・医師が足りずに困っている現状を実際に見てみること
・持ち回り制にすること
・子育ての環境を整えること
・鹿児島大学のように離島実習を各大学病院で取り入れて、その現状を自分で体感すること
・離島医療の魅力を伝え、広めていくこと
・離島と県本土の間での情報の遅れなどがないようにすること
・主幹病院との連携、バックアップの体制を完成させ、何かあった時すぐに相談、搬送などができるよ
うにする。
・奨学金制度の充実
・病院実習だけでなく漁業体験など楽しい思い出をつくれると、離島実習全体が楽しくなりいい印象が
生まれる。
39
・一年生の時から、離島医療の魅力を学生に伝える講義を行えばいいと思います。
・このような離島実習を重ねることで、離島医療が面白いと感じる人はもう少し増えると思う。
・今回のように離島医療に生で触れる機会をふやすことではないでしょうか。
・離島でも充実な生活が過ごせることを知らせる。
・一人の医師が長期間務めるのではなく、限られた年数でも働ける制度を作ること(特に産婦人科)
・離島での現状の問題点や魅力をもっとアピールすること。
・最先端の医療にも触れることのできる機会。本土の病院にも相談あるいは搬送しやすい環境づくり。
・離島医療の必要性をもっとアピールする。離島での実際の生活をもっと知ってもらう。
・低学年のうちに感動体験(血圧測定や往診)させる
・魅力を増やすこと
・入局者を増やす。
・しっかりとした連携があること。勉強できる環境
・離島医療を一生するわけではないので、その離島医療を経験した後の医療者としての何らかの保障。
・離島医療をもっと身近に感じるようにするために、低学年のうちに離島実習をカリキュラムに組み込
む。
・人材の確保。一生は難しくてもある程度の年数なら携わりたいという人はいると思う。あとはもし自
分で手に負えなくなったときの本土でのサポート体制。
・離島医療の現状を知ること
・都市部総合病院と連携して、期限を区切ったローテーションをすること。
・地域の医師が学会や勉強会にいける機会を得られるように、医師が休暇をとる場合には県や市町村単
位で他の医師の派遣をできる体制をつくる。住民にも代わりの医師に対する理解を求める。また、若
手の意欲のある医師の不安を軽減するため、専門性の高い関連病院と提携し相談しやすい環境を作る。
・離島医療に対する理解
・地域医療を行うにあたって、必要な知識・技術はなにか、魅力はなにかがわかることと、養成プログ
ラムがあればいいと思います。
・医療技術・情報の均一性および島の人の医療への理解
・休日の確保
・離島実習はすごくいいと思う。島の先生方の話を聞いたり、島の自然に接したり人と触れ合ったりす
ることで島の魅力を感じることができた。
・代診の確保のために行政が動いていることを、もっと積極的に示していくこと
・自治医大のように義務年限を課す。
・地域枠など、入学前からの設定。学生時の実習。
・離島・僻地医療をするとしたら、ある程度の経験年数のある医師でないと無理だと思う。そのため、
若者だけでなく、50、60代の医師に第二の活躍場である離島・僻地があることを発信していく。
・今回の離島実習のように、学生のうちから離島医療を体験できる機会を設ける。
・今回の実習のように良さを体験できる機会が増えればいいと思う。
・コミュニケーション能力、忍耐力
・大学1・2年時から離島実習に参加してもらう。県外の方にも離島医療に参加してもらえる機会を増
40
やす。
・離島実習をもっと様々な学年、学科、他大学で行うこと。
・大学の実習などを通して離島医療との触れ合いを増やす。講義だけでは感じることのできない魅力が
たくさんあった。
・医者5年目から離島医療の義務化を行う。離島医療の魅力を伝える。
・離島で実習を行う機会を増やし、離島医療の魅力をできるだけ多くの人に知ってもらう必要がある。
・学生時代、研修医時代に離島医療を体験する時間を増やす。
・給料を高めにする。3 人程の医師看護師など混ぜてまとめて派遣する。
・離島出身者を増やす。奨学金の制度を見直す。(勤務年数のしばりを連続にするのでなく合計にする)
・離島、地域を好きになってもらうこと
・支援体制を充実させること。
・交代要員の確保
・各離島から医学生を出す。
・
(医師の)家族に対する follow が必要であると思う(経済的、教育的)
。やはり給与 up は人を増やす
ために最も確実な方法である。それが難しければ、一定期間離島で働くことを(教員のように)duty に
すること。
必ず、いつでも相談できる上級医を身近に配すること。そうすれば若い医師ももっと積極的に離島に
行く気になれると考える。
・離島・僻地勤務を強制する大学入試地域枠の拡大
・交通の便を良くする。(安く、早く)
・地元の人を医師にする。
・マンパワーの確保
・総合診療を教える、講義、初期研修制度を充実させること。
・低学年のうちから離島実習を組み込み、離島の素晴らしさを実感させ、抵抗をなくしておき、初期・
後期研修医を強制的にローテートして離島に派遣すれば良いと思う。同時に複数の医師がいた方が行
くのに不安感、抵抗感がない気がする。
・離島でプライマリケア医として初期研修以外でも短期のローテーションで働けるようなしくみ。長期
的に離島で働く道も、短期働いたのち、再びスムーズに本土ではたらけると垣根が低くなると思う。
・報奨金などのインセンティブを与える。人間らしい生活の保証(休みがとれる、自分の時間がある、
等)
。本土に帰りたくなったら帰らせてもらえること
・連絡網の発達。
・離島に医師を配置するようなシステムを作ること。現場はぎりぎりの状態である。または島に愛のあ
る人を医師にする。
・卒後臨床研修に 1 年の離島での診療を必須するコースをつくり、全国的に告知する。
・離島に行く人に押し付けるのではなく、みんなで支えるシステムを作るのが重要だと思います。地域
や離島でしか学べないものもたくさんあると思うので、交代で地域の医療を担う必要があると思いま
す。
・離島医療に関わる医療従事者への福利厚生を手厚くする。離島医療への興味の喚起・離島医療の現状
41
の正しい理解。
・今回のような実地での体験を増やすこと。見学だけでなくある程度学生に責任をもたせること。医療
だけでなく、その土地の自然や取り巻く環境に関することを伝えること。
42
「離島医療をよくするためのあなたの提案」
・もっと情報を発信して離島医療の現状を知ってもらう。先入観、偏見を持っている医師はたくさんい
ると思います。
・本腰を入れてお金と優秀な人材を投入する。
・経営にコストパフォーマンスだけを求めず、医薬品などもばら売りにできるなどの対策を取ってほし
い。経済的に困窮することは一番離島医療を衰退させると思う。
・自分の専門性を掘り下げるため修行する時期を確保する。
・内之浦では良い医療が行われていたと思うので、そのモデルを参考にする。
・何人かでチームを組んでローテーションする。
・もっと低学年のうちから触れさせてもいいのではないか。
・離島に関する授業の割合を増やす。
・子供が小さい時期だと、島では地域で子供の面倒をみてくれるので、自分が忙しくでも子供があまり
寂しい思いをしないのかなと思いました。そういう意味では子供が幼稚園~小学生の時期に、女医さ
んが短期間離島に行くと育児の不安が減るのかなと思います。
・診療の連携・相談ができる環境を作ること
・鹿児島市内での開業を制限する。
・地域住民と医療人の相互理解
・人員の確保は当然だが、種子島では搬送のノウハウは完璧であったので、医療の改善ではなく、交通
手段の質(搬送時間の短縮)の改善が必要だと思う。
・鹿児島県に属す医師を増やすために、試験段階とは別に、入学後に地域枠を設けて、学費援助をする
仕組みがあったら良いと思う。
・卒後のキャリアモデルを提示、実施し見通しがつくようにする。
・医師の数を増やし、様々な専門家の診療を可能にする。社会・保健・福祉を充実させる。
・離島の社会的環境の充実、改善
・医師の数を増やす。
・若いうちから離島医療に関わることも勿論良いと思いますが、知識と経験を積んだ中堅以降の人が離
島医療に関わるような流れを作ることが必要だと感じました。
・医療者がいつでも相談できるバックアップ体制
・中学生や高校生などの授業で講義をする事で、早い段階からのシーディングを行う事
・勤務する年数をあらかじめ決めておいてローテート制度を敷くこと。地域医療で学んだ知識や能力を
還元する制度を構築することも大事。
・ITを用いた遠隔医療
・離島と本土の連携と、遠隔医療の充実
・里診療所のような医療を提供すること
・離島の現状を知る機会を増やすべきだと思います。
・予算を優先的に確保して、施設面の拡充を図る。
43
・プライマリ・ケアと救急の両方に特化した研修病院を増やす。血液検査等の結果情報を早く取得でき
るようにする。
・各医局に人材の派遣を義務化する。
・交通の便が良くなればもっと離島医療にかかわりやすくなると思います。
・3 年生くらいの早い時期に離島実習をして、早い時期から離島医療に接していければいいと感じた。
・行政や大学病院、大病院などの連携とバックアップ
・離島実習での印象をよくし、将来離島も悪くないなぁという気持ちを植えうける。
・医療機関の発達と医療スタッフの増員
・医療だけでなく、島の人への健康に対する啓蒙活動を増やすことで、病院にかからなくてもいい方は
増えるように感じる。
・その島その島で先生方が色々大変苦労なさって工夫されており、特に私が思いつくことはありません
でした。ただ、やはり離島医療に携わる医師が少ないことは問題点だと思いました。
・連携をしっかりとる。
・離島の医師に任せきりにならないよう、大学などからも支援を行う。離島医療に貢献した医師を評価
し、モチベーションが上がるようにする制度をつくる。
・離島での現状の問題点や魅力をもっとアピールすること。
・医師の数よりは質(幅広い分野に精通している人)。定年後の再雇用。
・体験実習や課外実習などで離島と関わることのできる頻度がもっと高くなればいいと思いました。
・一時しのぎではない人材の育成と確保
・いろんな面での優遇、代診の確保
・離島出身の入学者を増やす。
・家族がいるとなかなか理解が得られない場合もあると思うので、長期可能な人と短期の人など制度の
充実。
・離島医療後の就職先
・人員の確保。学生が離島医療について考える機会を増やし理解を深めさせる(チュートリアルの回数増、
離島実習の日数増など)。
・短期間でも普段離島医療に携わっている医師の代わりの医師を派遣する体制
・離島医療を経験する機会を増やすこと
・若い世代だけでなく、准教授・教授世代のような経験豊富な世代を中心としたローテーション。学べ
る大先輩がいらっしゃれば、若い世代ももっと安心できる。しかし、離島医療自体は、医師の理念や
熱意もとても大切だと思うので、ローテーションによる弊害もあると思う。ただし数の確保はできる
のではないでしょうか。
・複数人体制で医療を継続してけるよう人員を確保する。
・このような実習を低学年から始める。
・医療従事者の仲間が増えて行くことは大きなアドバンテージになると思います。
・離島医療が今どういう状況かということの理解が深まるシンポジウムなどの勉強会
・医師の休日に代診する医師を派遣する。
・離島実習みたいなものをもっと低学年のときにするといいと思う。実習より島の自然や人々に接する
44
機会が増えれば、若い人が離島医療にもっと興味を持つのではないかと思う。
・
「どこまで予防に介入するか」や「どのレベルの病気まで島で診るか」について、健康余命や費用対効
果を積極的に検証し続けることが重要と考える。行政へのアプローチになると共に、島の医師として
は研究や論文作成の機会を得られることとなり、「島でもキャリアを積める」との実感が得られる。
・離島医療の魅力を身をもって伝えるような教員がいればいいと思う。
・大学、行政、その離島の他の病院との連携を良くすること
・北山では地元出身の看護士さん達が一般の看護士以上の役割を果たしていたので、希望する看護士さ
んにより多くの医療知識を勉強する場を与え、医師の仕事をカバーできるようにする。
・離島で働く医師のバックアップの充実
・今のままでいいと思う。都会の医療の方がぎすぎすしていて問題。
・離島枠の拡充
・次世代の医師の育成
・短期の実習を学生や医師にさせる機会をもっと増やす。実際に経験すれば先入観と現実の違いを体感
でき離島医療の魅力が伝わると思う。
・代診の確保
・予防医学に力を入れる。
・交通の便、ネットワーク環境の整備を徹底する。
・総合診療医の育成。施設の充実。
・やはり体験してもらうのが一番。全国にメディアを通して宣伝する。
・県立大島や田上病院など離島の中でも比較的大きな病院を中心にもう少し専門性を上げて離島内で医
療が完結できるようにする。そのためには大学から医局員が派遣されるべきだと思うのですが、さま
ざまな科が撤退しているのでまずは大学の医局員が増えることが優先かと思います。
・地元の人との連携
・患者さんを規模の大きい病院へ搬送するか迷ったとき、すぐに相談できる体制をつくる。
・転居などに伴う費用の負担(一部でも)
・プライマリー専門医の増員が必要である。
・地域の公的医療機関が疲弊している現状である。国レベルで対策をしなければ今後も厳しいのではな
いか。地域住民に医療についての啓蒙化を図ること、一次予防を推進すること。
・今回の離島医療実習だけでなく、もっと学生のうちから離島に行き現場を体験する機会が増えれば良
いと思う。
・ITKarte などの遠隔医療システムの充実
・医療という点だけではなく、地域全体の活性化。高等教育機関の設置(医学部を作る、等)。
・離島医療に携わる人の報酬を良くする。
・正しい医療情報の一般への開示
・低学年、中学年、高学年それぞれに離島実習を行い、いずれ携わる人を増やす。本土との連携をもっ
と密にする。
・ベテランの先生から、卒後間もない先生まで、さまざまな立場、年齢の先生方が短期間だけでも離島
の医療を経験すること。
45
・プライマリ・ケア、家庭医療を一つの専門分野として確立させ、大学や初期研修などでしっかりトレ
ーニングする機会を設ける。
・テレビ電話などですぐに専門家の意見を仰げるようにする。また、新たな知識を得るためのインター
ネットでの勉強会など。
・離島出身の医師を増やす。ただし、根本的な問題の解決にはならないと思う。
・プライマリーケアに特化した診療科をつくり、教育を行うことでしっかりとイメージを持ってぶれる
ことなく研修を行うことができるようになると思います。
・単身では行きやすいし、大きな病院にいるよりもはるかにたくさんの経験をすることができると思い
ます。決まった期間を交代で、もしくは派遣で、という形が一番いいのではないかと思います。
・離島医療には興味があるけれど離島での生活に不安を抱いている人が多いように感じるので、離島医
療に関わる医療従事者への福利厚生を手厚くして少しでも離島での生活に不自由を感じないように取
り計らう。
・恒常的な医療スタッフの輩出。登竜門のように、必ず経験すべき医療技術として認知させること。離
島医療でしか学べないことをより明確に示す。
46
平成24年度 鹿児島大学医学部離島地域医療実習
学生自己評価のまとめ
●目的
離島地域医療実習を行うにあたり実習の問題点を明らかにし、
よりよい実習プログラムを提供する目的で学生に対し
実習終了後に実習に対するアンケートを行った。
●対象
平成24年度の離島地域医療実習に参加した
医学部医学科6年生100名
●方法
国際島嶼医療学講座のホームページから学生用のID、
パスワードで専用ページに入り、それぞれの項目を入力する
型式とした。
47
行動目標がどれくらい達成できましたか?
離島へき地のプライマリ・ケアを述べることができる
地域における在宅医療を述べることができる
2%
1% 6%
4% 6%
13%
24%
27%
21%
56%
40%
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
離島へき地の救急医療を述べることができる
1%
離島へき地での遠隔医療を述べることができる
5% 6% 15%
6%
6% 7%
24%
23%
27%
46%
34%
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
離島へき地医療現場を通じて医療の原点に立ち返り、
全人的医療を述べることができる
離島へき地の保健・福祉・介護を述べることができる
1%
5% 6%
2%
18%
6%
30%
22%
26%
44%
40%
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
よく述べることができる
述べることができる
ある程度述べることができる
あまり述べることができない
述べることができない
無回答
48
離島へき地を含む地域社会で求められる医療・保健・福祉・介護の活動について体験し、
医療者として習得しなければいけないのは何だと思いますか?
責任感、人徳
島への愛情
利他と慈愛の心
視界の広さ
心に垣根を作らないこと
相手のニーズを聞き出すこと
地域医療に対する熱意
家族・地域に溶け込むことのできる人間性
人当たりの良さ、協調性
謙虚さ、一般常識、思いやり
人の話を聞く姿勢
地域の習慣や人間性を理解する姿勢
離島医療を担う精神
新しい治療などを自分で学ぼうとする姿勢
患者さんが本当に何を望んでいるか考えること
医療に対する自分の理念・信念を持つこと
地元の人との繋がりを大切にする心
地域の考え方に対応できる柔軟性
優しさと寛大さ
なんでもやってみようとする好奇心
行政等各機関との連携
チーム医療
他職種の方との連携
本土の医師との良好な関係
医療スタッフとの連携
common disease症例の経験
人生経験
医師としての経験
自分のできる能力を自覚すること
幅広い症例を経験すること
時間外の急患などへの対応
医学的基礎知識
離島僻地の特徴を知ること
様々な福祉・介護などの法律
自分の医療分野での専門性
地域社会の生活・文化・言語等への理解
経済的センス
総合医としての知識
専門分野にとらわれない広い知識
保健・福祉・介護システムの深い理解
その地域の言葉、習慣
在宅医療についての知識
プライマリ・ケア
医療、保険制度に対する理解
患者の背景の理解
離島の地域の名称
福祉施設の現況(疾患・設備の問題点等)
地域の習慣や人間性を理解する
健康診断の結果を評価できる知識
地域の実情
予防・健康教育のための技術と知識
医療を取り巻く社会問題を把握すること
感染症などの疫学知識
救急の知識、技能
患者へ説明する能力
搬送症例の見極め能力
総合的に診る能力
臨床診断能力
緊急を要する病態を見抜く力
緊急性があるかの鑑別ができる能力
機器に頼らない診断力
重要な疾患かどうかを判断する能力
聞くという能力
情ある行動力
救急への対応
総合的な診療能力
自己管理能力
地域住民と良好な関係を築く能力
地域からの信頼をえる力
一定程度は島内で解決できる技術力
致命的な疾患を見逃さない診断力
検査・処置の能力
緊急性の高い疾患をトリアージする能力
理学所見だけで診断をする力
生活習慣病に対する管理能力
行政との交渉力
医療スタッフとの信頼関係を構築する能力
患者の背景に隠れる生活環境を理解する力
離島環境でも生活していける力
限られた医療資源でもある程度診断できる力
地域全体の健康を把握し向上させる力
疾患だけでなく人を見る力
山道も脱輪しない運転技術
対話能力
訪問看護など在宅治療の管理
健康診断を行う能力
三次医療施設等に紹介する能力
訪問診療での診察
専門科の専門性をある程度高める
情報アンテナのはり方と取捨選択できる能力
医療機器の基本操作とトラブル解決
救急疾患に対する対処
診察技術
基本的手技
外科的手技
最低限度のことは一人でこなせる技量
ある程度の検査を自分でこなせる技術
予防医療の指導ができる
聴診、内視鏡
全人的医療技術
血圧を内科的にコントロールすること
軽~中等度の外傷に適切な対応をする技術
胸腹部エコーの扱い方
地域の人の生活についての知識
地域の地理的・文化的背景の理解
リハビリ・介護に関する基礎知識
地域の生活スタイルを知る
小児から高齢者まで幅広く診察できる知識
49
離島へき地を含む地域医療での診療に参加するためには、
事前準備として自分が身につけておくべき知識、技術はどのようなことが必要ですか?
知識
技術
common diseaseの基礎知識
薬の知識
ITカルテの利用法
カルテの書き方
高齢者に多い病気についての知識
救急にも対応できる知識・経験
その土地の特色、言葉
地域の背景(その土地の歴史・文化・風土・生活)
離島の慣習および島の地理
見逃してはいけない疾患の知識とその対応
日常において多い疾患への知識
医療保険制度の知識
歩行時の補助の方法
移乗介助方法
島で治療できない場合の対処法
疾患に対する広く浅い知識
都市部との違い
地理的・文化的問題
自分ができることの認識
解剖学的知識(手技に必要となる)
医療機器に関する知識
緩和医療に関する知識
幅広い医学的知識
(内科学、外科学、小児科学、老年医療、救急医学、
整形外科学、栄養学、解剖学、生理 等)
島に関する知識
その地域における地理とそれに関わる知識
社会保険福祉の知識
限られた医療資源でもある程度診断できる知識
鹿児島の医療構造(一次二次三次)
地域の所在や人口、人口比率、産業などの基本情報
特に細菌、ウイルス感染症の知識
介護申請についての知識
予防接種についての知識
相談できる関連施設について
介護に関する知識
専門分野外の知識
その地域で多い疾患についての知識
介護施設の名称や目的
疾患の基本的知識
疫学知識
離島へき地以外の医療機関の様子
地域医療の現状
病棟患者の管理
コミュニケーション能力
問診、診察を系統化すること
トリアージと搬送の判断能力
エコー、胃カメラ、X線といった検査技術
レントゲンやCTの扱い方の技術
バイタルサインの測定法
血圧測定、心電図
プライマリケアの技術、知識
理学所見の取り方
採血などの基本手技
問診
地域に特徴的な疾患(エイ毒の対処法など)
OSCEレベルの手技
画像診断能力
予診の取り方
基本的外科手技
包帯巻き、固定具の使い方
尿検査
遠隔医療のための技術
限られた医療資源の有効活用
内科的鑑別診断能力
外科的鑑別診断能力
よくある外傷には対応できるだけの技術
応急処置ができる技術
一般整形外科疾患に対する簡易な処置
積極的に高齢者に話しかける姿勢
介護・福祉の設備・人材を整えるための交渉力等
車の運転技術
検査器具を自分で使いこなす技術
総合的な判断力
OSCEで問われるような診察手技
話をよく聞く
急速転化する疾患の診断
各部位の診察法
内視鏡
50
実習内容と実習先での対応
実習成果
実習先での、学生の質問への対応
1%
4%
9%
8%
10%
22%
66%
80%
大変適切に答えてくれた
大いにプラスになった
プラスになった
少しはプラスになった
あまりプラスにならなかった
プラスにならなかった
無回答
適切に答えてくれた
おおよそ答えてくれた
あまり適切に答えてくれなかった
適切に答えてくれなかった
無回答
あなたが医師として働く上で習得すべき事を、
離島・地域医療実習で理解できましたか?
実習先での、学生の患者さんへの接し方や態度、
その他技術的なことに関しての改善点の指摘
1%
1%
8%
6%
9%
14%
37%
53%
29%
42%
大変適切に指摘してもらった
大変よく理解できた
適切に指摘してもらった
よく理解できた
おおよそ指摘してもらった
おおよそ理解できた
あまり適切に指摘してもらえなかった
あまり理解できなかった
適切に指摘してもらえなかった
全く理解できなかった
無回答
無回答
51
実習準備、交通、生活、経費
事前の情報提供
交通
4%
2%
7%
7%
10%
43%
37%
15%
38%
37%
全く支障なし
ほとんど支障なし
大変支障あり
十分
だいたい十分
普通
やや支障あり
やや不十分
不十分
無回答
無回答
生活
7% 1%
経費
7%
4%
1%
7%
43%
35%
53%
42%
全く支障なし
ほとんど支障なし
特に問題なし
あまり問題なし
やや支障あり
大変支障あり
少し負担になる
大変負担になる
無回答
無回答
大学側窓口の対応
1%
2%
8%
16%
50%
23%
十分
だいたい十分
普通
やや不十分
不十分
無回答
52
平成24年度離島地域医療実習
総括
平成24年度の離島・地域医療実習は学士学生を含む6年生100名を対象に、平成24
年3~6月(3月は海外での臨床実習などで4~6月に実施できない9名)に行いました。
実施場所は、昨年同様、上甑島の薩摩川内市里診療所、下甑島の薩摩川内市下甑
手打診療所、種子島の田上病院、訪問看護ステーション野の花、介護老人福祉施設
百合砂苑、田上診療所、奄美大島の県立大島病院、瀬戸内町へき地診療所、大島郡
医師会病院、介護老人保健施設虹の丘、沖永良部島の朝戸医院、大蔵医院、寿恵園、
与論島のパナウル診療所、本土山間部へき地の姶良市北山診療所、鹿児島市のナカ
ノ在宅医療クリニックに加え、新たに肝属町立病院、さらに奄美大島コースに奄美
市住用診療所にも加わって頂きました。いずれも離島や本土の地域医療に重要な働
きを担っている医療福祉機関であり、学生が地域医療を幅広く学ぶ上で大いに役だ
ちました。
実習は特に支障なく行うことができ、学生の事前、事後のアンケート、レポート
提出は例年同様、webを用いて行いました。課題である実習経費も、学生による一
部負担はあるものの大学からの支援を頂き、学生共々、大変感謝しています。
本実習は、離島・地域医療への理解を深めるために、離島へき地現場で実際に行
われているプライマリ・ケア、救急医療、遠隔医療、保健・福祉を含めた地域包括
医療、チーム医療、全人的医療を、生きたロールモデルとして体験しながら学べる
ことが大きな特徴です。期間が5日間と限られていることと、カバーする領域が広
範囲にわたることより、学べることは限られていますが、実際に離島・地域医療現
場を体験し、医師を始め医療スタッフ、患者さん、住民から直接、話を聞き、幅広
く医療を知り、感じて、これからの医療人としての自分を考える機会は貴重です。
これらは、良医として育っていく上で重要な体験になると考えています。また、地
域医療を理解するためには、まず、その地域を知ることが重要であり、その一端は
理解できたと思います。
実習に参加して、これまで持っていた離島へき地医療に関する考えやイメージが
実際と異なっていた学生が多かったことはレポートから伺い知ることができます。
実習前後でのアンケート結果では、「離島と本土との医療の違いが無い」と回答し
た学生が増え、離島へき地医療への興味ややりがいを感じる学生の割合が増えてい
ました。行動目標では、特にプライマリ・ケアや在宅医療、全人的医療に関して達
成度が高くなっていました。
学生のコメントから、離島・地域医療への捉え方は多岐にわたっていることも伺
われます。離島へき地を含む地域医療に興味のある学生だけでなく、興味のなかっ
た学生にも学ぶ機会を与えることが医学教育上、重要だと考えています。その意味
から、実習を体験して新たな視点が得られたことを記載している学生が多かったこ
とは、嬉しい成果です。
学生時代における離島・地域医療および同保健福祉現場での体験は、将来、様々
な場で活躍する医師として、幅広く医療を理解するために有用であり、今後とも是
非、継続したいと考えています。最後に、実習を担当、支援して頂いた関係諸氏の
方々に改めて感謝申し上げるとともに、学生の皆さんが良い医師に育ち、将来、何
らかの形で、離島へき地を含む地域医療に貢献してくれることを願っています。
学生レポート
55
手打診療所
薩摩川内市里診療所
里診療所外観
甑大明神橋
なまこ池 フェリーニューこしき
トンボロ地形
57
平 成 24 年 3 月 5 日 ( 月 ) ~ 3 月 9 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
才田
千晶
3 月 5 日(月)
午前:里診療所、午後:往診、夜間診療 (17 〜 18 時 )
7 時 50 分からの朝礼に参加し、自己紹介をさせていただいた。午前中は 8 時から外来患者さんを見学。今日は少し患者さんが多
かったとのことで、 8 時から 12 時まで 4 時間みっちり患者さんの外来が続いた。
症例 1 : 10 代女児、主訴は尾骨痛。 1 ヶ月ほど前に尻餅をついてから尾骨部の痛みが消えないとのことで受診された。検査所見
では尾骨部の圧痛あり、 S3 領域の感覚異常は認めなかった。尾骨骨折は特に処置を必要とせず、どうしても痛みが続く場合のみ
手術で摘出するということであり、今回は経過観察となった。
症例 2 : 30 代女性、主訴は咳嗽。喘息の既往があるが、最近病院受診できず、吸入ステロイド薬を中断されているとのこと。聴
診ではwheezesを聴取した。喘息のコントロール目的で吸入ステロイド薬を処方。
午後は近くにある介護施設の、もやーどの里と寿里苑への往診に同行した。
2 週間に 1 回往診する方が決まっていて、なにか症状があるというよりは、いつもと変わりがないかをチェックするのがほとんど
であるということ。今回の往診は介護施設であったが、定期的に医師が往診にきてくれるというのは患者さんにも、施設や家族の
方にも安心できる仕組みだと思った。
診療所に戻ると、 3 日間頭痛の改善しない 80 代女性が受診。頭痛は後頭部がずきずき痛み、昨夜は痛みで眠れなかったとのこと。
脳神経の異常なし。 Barre 徴候 ( − ) 。念のため CT を施行し、くも膜下出血や脳出血の所見は認めなかった。緊張性頭痛の診断
で薬を処方され帰宅。
夜間診療では日中に受診できない人のために月水の週 2 日、 1 時間の外来時間を設けているそうで、仕事後に感冒症状があり受診
される方や、学校教諭で健康診断書の作成に来られた方などが来院された。
3 月 6 日(火)
午前:もやーどの里
午前中はデイサービスとグループホームを併設した介護施設での実習だった。入居されている方はほとんど生活が自立されていて、
施設内を自由に行き来している様子だった。皆さんの血圧、脈拍、体温を測定したが、なかなかスムーズにできずご迷惑をおかけ
してしまった。ワーファリン内服中の方で脈拍が触れにくい方がいらっしゃり、レートが 25 回/分だった時にはまさか…と思っ
たが、いつも大体そのぐらいとのことで、思い込みはよくないなと感じた。あと、施設にいる方々は自分の血圧の値を大体把握さ
れており、私たち以上に健康に気をつけていらっしゃるのかなと思った。
午後:処置見学、島内見学
症例:左前額部の老人性尤贅の切除。特に有害なものではないが、少し邪魔になるとのことで切除することになった。局所麻酔で
切開、切除。 2 針縫合。
その後は事務長さんに上甑と中甑を車で案内していただいた。天気はあいにくの曇りであったが、甑島を代表する景勝地の長目の
浜を始め、なまこ池や貝池、甑大明神橋と鹿の子大橋を渡り中甑の様々な展望台やその集落の診療所などを見学。島は広大な海に
囲まれ、島内ののんびりとした空気はやはり自然に囲まれているからこそだと感じた。今度は是非晴れているときにまた訪れてみ
たいと思う。また集落には診療所のない場所もあり、島の人々は車がないと生活がままならないと感じた。診療所では巡回バスも
出しているそうだが、やはりある程度分散して医師がいた方が島民の不安は解消されるのではないかと思う。色々なことを考える、
いい機会だった。
【長目の浜】
【なまこ池】
【甑大明神橋より】
3月7日 ( 水 )
午前:里診療所、午後:往診
今日は月曜よりも患者さんが少
なく、余裕のある外来であった。
症例 1 : 90 歳女性。定期的な
診察のため受診。僧帽弁逆流の
既往あり、聴診で全収縮期雑音
を聴取した。睫毛内反あり、抜毛した。また変形性膝関節症に対してヒアルロン酸を関節腔内注射した。
症例 2 : 40 代女性。主訴は水様性下痢。朝から食事なし、飲水もしていない。腹部の圧痛なし。
感染性胃腸炎の診断で輸液を行った。
午後は個人宅と介護施設への往診。
症例 3 : 80 代女性。大動脈弁狭窄の既往あり、在宅酸素療法施行中。起座で努力様呼吸。手指末端にチアノーゼ ( + ) 。酸素
3L 投与で SpO2 87% 、血圧80/60 mmHg。昇圧剤を処方した。
3月8日 ( 木 )
午前:寿里苑、午後:寿里苑、夜間診療
今日は朝から夕方まで介護施設での実習。ここでは日常生活のなかで介助を必要とされる方がほとんどで、火曜日に実習したもや
ーどとはまた違った雰囲気であった。入居者の方とお話する時間がたくさんあり、耳が遠いのに里の方言も加わって四苦八苦した
けれど、 98 歳になる方と少なからず通じ合うことができてとても嬉しかった。寝たきりの方の移乗や、おむつ交換、リハビリ、
食事介助、点眼など 1 日という短い時間のなかで介護士の方々がたくさんの仕事を抱えて働いていらっしゃるのを見て、これから
58
の高齢社会にはまだまだ介護士の方が必要だと強く感じた。
夜間診療では慢性の心房細動の既往がある方の聴診をする機会があり、全くリズムが不整であるのが確認できた。
3月9日 ( 金 )
午前:外来
症例 1 : 29 歳女性。主訴は胃痛、心窩部痛、食後の胃違和感。前日に発熱あったが、今朝は解熱。先週も同様の症状があったと
のこと。腹部診察では右下腹部McBurney点に圧痛あり。その他特に異常所見を認めなかった。虫垂炎も鑑別にあがったが、解熱
しているということから否定的。前日にも強いストレスを感じていたとのことより、神経性胃炎の診断となった。
症例 2 : 70 代男性。妻がアルツハイマー型認知症であり、応対についての相談で受診された。認知症への理解を得るとともに、
これから症状が改善するのは難しいということを説明。自分一人でなんとかしようとせず、周りに相談しておくことを勧めた。認
知症を理解することは普通でも難しいのに、さらにその生活を支えていくのが高齢者であるという、老老介護の難しさを目の当た
りにした症例であった。
感想
上甑を訪れたのは初めてでしたが、着いたその日から土地の人々の優しさを感じることが出来ました。日曜日の夕方の便で里港に
到着し、宿へ向かうと、お孫さんの初節句のお祝いが開かれており、その場に飛び入り参加させていただきました。突然の参加に
も関わらず暖かく迎えてくださり、たくさんの方々とお話をすることができ、一日目からとても楽しい時間を過ごすことができま
した。
月曜日からは診療所でお世話になりましたが、 8 時から外来が始まって、 12 時になるまで全然患者さんが途絶えないのにびっく
りしました。大学病院での外来は何らかの症状があって、紹介状を持って来院される方がほとんどですが、診療所には健康である
ことを確かめにくる方が非常に多い印象があります。実際に、自分から定期的にいらっしゃる方もあれば、診療所の送迎車で定期
的に来院される方がほとんどであるということでした。医師は病気を見つけ、治療するのが仕事だと思いがちですが、里における
地域医療では健康を維持・増進する一次予防の役割も実践されていると感じました。
また今回の実習では診療所だけでなく色々な形の介護施設での実習も体験することができ、大変勉強になりました。実際に介護
士の方々がどのように仕事をされているのかを体験することで、高齢者を支える医療のあり方や、実際に自分の父母に介護が必要
となったときのことを考えるいい機会になったと思います。診療所に訪れる方は圧倒的に高齢の方が多く、その上多くの方が 80
歳をゆうに超えていらっしゃいます。また島には高校がないために中学を卒業するとほとんどが島を出て、島に帰ってくる方は少
ないという話も聞きました。往診に伺うと、 90 代の方がほとんど一人で生活されていることもあり、超高齢社会のなかで高齢者
を支える仕組みがより整備される必要があると思いました。
里診療所では鈴木先生をはじめ看護師の皆さん、事務のお二人で診察から処置、薬剤の処方、会計処理などの病院業務をすべて
こなされ、里に住む人々の健康を支えていらっしゃっており、その役割の重要性と責任の重さは計り知れません。離島・へき地で
医師として生活する為にはとにかく責任が伴うとは思っていましたが、やはり確実な診療技術と、基礎的な知識を正確かつ広範囲
に自分のものにしてある必要があると強く感じました。鈴木先生には、全然知識の足りていない私にも外来の合間に実際の診療に
基づいたことを優しく教えていただき、本当に身になる勉強ができました。また看護師、事務の皆さんにも優しく声をかけていた
だいたり、島でのお話を伺ったり、とても楽しい時間を過ごすこと
が出来ました。診療帰りにいただいたサワーポメロはとても美味し
かったです!また医学のことだけでなく、島の美味しい料理を食べ
お酒を飲みながらたくさんのお話を伺う時間もとても楽しく、自分
の今後の糧になりました。 1 週間という短い期間でしたが、診療所
の皆さんには本当にお世話になりました。鹿児島市内ではできない
貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。
【診療所外観】
氏
名
田中
【往診等に利用する診療所の車】
貴子
3 月 5 日(月)
実習先:里診療所(午前)、往診(午後)、里診療所(夜間診療)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学した。 8 時から 12 時まで休む間もないくらい患者さんが多かった。 14 : 30 から
は往診。その後は予防接種や施設の患者さんを診たり、鈴木先生にいろんな話を聞いたりした。 17 時から 18 時までは、働いて
いる人のために夜間診療をしていた。夜間診療でも患者さんが多くきて忙しそうだった。
症例 1 :
男性
【主訴】
左膝関節の痛み
【検査所見】
両側膝関節の X 線写真を施行し、左膝関節の関節裂隙の狭小化が認
められた。変形性膝関節症と診断し、ヒアルロン酸を関節内注射した。
症例 2 :
男児
5 ヶ月
症例 3 :
女性
【主訴】
【主訴】
頭痛
DTP 接種
【検査所見】
子供が泣くだろうと思っていたが、泣かなくてすぐに終わった。
頭部 CT を施行したところ、脳出血やくも膜下出血は認めず、緊張型頭痛と診
断した。
3 月 6 日(火)
実習先:もやーど(午前)、里診療所・上甑島と中甑島見学(午後)
内容:午前中は昨日往診でも伺った、『もやーど』で実習をした。ステイとデイケアどちらも見学した。ステイの方のバイタルを
とらせてもらった。みなさんと歌を歌ったり、ゲートボールをしたり、昼食の見学をした。午後からは、患者さんの処置(左前額
部の老人性疣贅の切除)を見学し、その後里診療所の事務長さんに島内見学に連れて行ってもらった。いろんな話が聞けておもし
59
ろかった。
3 月 7 日(水)
実習先:里診療所(午前)、往診(午後)
内容: 8 時から 12 時は里診療所で外来見学をし、高血圧症の患者さんの血圧測定を行った。 13 時半から往診で、一人暮らしの
患者さんや施設の患者さんのところに伺った。
症例 1 :
80 代
女性
【主訴】
左趾爪の変色
【検査所見】
爪の一部を取り、 KOH 染色を行ったが白癬は認めなかった。
そのため、加齢によるものとして、患者さんに説明をした上で、経過観察となった。
症例 2 :
41 歳
男性
【主訴】
腰痛
【検査所見】
感覚異常や膝蓋腱反射・アキレス腱反射の異常、 red flag 徴候などは
認めなかったため、急性腰痛症として対処した。疼痛部位に局所麻酔をし、動ける範囲で動くように指示をした。
症例 3 :
往診で診た夫婦の患者さん
【所見】
夫婦で施設に入っていらっしゃった。同じ部屋で生活しており、このような方
法もあるのだなあと思った。
3 月 8 日(木)
実習先:寿里園、里診療所(夜間診療)
内容: 8 時半から 17 時まで寿里園で実習を行った。寿里園では入居者の方と会話をした。昼食時には寿里園の昼食を一緒に頂い
た。とてもおいしかった。その後は往診に参加し、リハビリにも参加した。その後、里診療所に戻り、夜間診療を見学した。
症例 1 :
男性
【主訴】
顔面、手背の火傷
【所見・処置】
顔面の口の周囲及び額部、手背を火傷していた。疼痛があり、
水疱形成は見られず、熱傷震度の判定としては第Ⅰ度とした。疼痛除去のためにリンデロン軟膏外用の処置を行った。
3 月 9 日(金)
実習先:里診療所(午前中)
内容:里での最後の実習日。里診療所で外来とエコー、内視鏡検査の見学をした。診察がない時間には物理療法の部屋にいらっし
ゃった患者さんたちの様子も見学した。また、妻が認知症になり、一緒に住んでいる夫が相談にも来た。このような離島ではご老
人の人数も増え、年配の夫婦だけで生活しているという方も多く、すぐに相談できる隣人、施設の方、医療者の存在がとても大切
だと感じた。
症例 1 :
29 歳
女性
【主訴】
腹痛、発熱
【検査所見】
心窩部を押すと気分が和らぎ、McBurney点にてやや圧痛を認
めた。しかし、一週間前にも同様の症状をみとめており、その際には自然に改善したことから、ストレスからきたものとして経過
観察となった。
症例 2 :
【主訴】
妻の認知症について
【対応】
最近になって妻の認知症が進行し、先生に相談にきていた。認知症の方と
はどのような対応をしていくべきなのか、丁寧に説明をした。
感想
私たちが里に到着した日は残念ながら雨が降っていた。到着したのが 18 時過ぎだったので、着いてえびす屋の方にご飯を食べ
るところがあるのか伺ったところ、 100 年ぶりに生まれた女の子のお孫さんの初節句のお祝いに参加して良いと言われ、思う存分
おいしいご飯とお酒を頂きました。そのお祝いの席に、里の方もたくさんいらしており、いろんな話を聞けて楽しく過ごすことが
できました。
実習初日
の午前中は
本当に忙し
くて、診療
所の方がた
は働いている人が少ないのに、とても大変だなあと思いました。月曜日の夜は、里診療所の方が歓迎会をしてくださって、漁り火
でおいしい海の幸としゃぶしゃぶとお酒をたくさん頂き、とてもお腹いっぱいになりました。アワビや、キビナゴの刺身などとて
も新鮮でおいしかったです。また、いろんな地元の話もしてくださって、鈴木先生がしているような里での医療のように、地元に
根付いた医療もやってみたいと感じました。
往診にも 2 回同行させていただいたのですが、特に一人暮らしの方や、診療所まで来ることが出来ない方にとっては大切な診察
方法だと感じました。往診から帰ってくると、予防接種の患者さんや、施設の患者さんがきたりし
て、その都度患者さんを診る先生や診療所の方はとても忙しそうでした。
水曜日の夜はえびす屋さんの方がごはんに誘ってくださり、本当にありがたかったです。マトダ
イの刺身も頂きました。そのお刺身は初めて頂いたのですが、とても甘くておいしかったです。わ
ざわざ私たちのために釣ってきてくださってありがとうございます!!何から何までお世話になっ
て、とてもたのしい実習生活を送ることができました。
木曜日の実習では、寿里園の方も入居者の方もとても親切で、いい経験が出来ました。生活介護
士の方々は忙しい中、よく徘徊する方も看ていて・・・少ない人数で全員を看るということは本当
に大変だなと感じました。しかし、外来でも感じたのですが、離島ではお年寄りの方の人数の割合
も多くて、このような施設が本当に大切だと感じました。また、施設で働いている方も地元の方が
多くて、入居者の方をよく理解していて、良い仕組みだと感じました。
木曜日の夜は鈴木先生の
同級生のお寿司屋さんに連れて行ってもらいました。そこでもたくさん食べて飲んで、とても楽し
かったです。先生は夜間診療もあった日だったにも関わらず、私たちをもてなしてくださって、と
60
ても感謝しています。鈴木先生は私たちにいろんなことを教えてくださったり、質問に対しても真面目に教えてくださって、とて
も勉強になりました。また、一週間という短い期間ではありましたが、里の方々の私たち学生に対する将来への期待を感じること
が出来る良い機会にもなりました。将来医療者として、どのように社会に貢献していくのかを考える機会にもなりました。この経
験を生かしていけるように努力していきたいです。
最後になりましたが、えびす屋の方々、里診療所の方々、また私たちに親切にしてくださった里のみなさま、ほんとうにありが
とうございました。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
生駒
今日子
5 月 28 日(月)
実習先:里診療所
内容: 7 時 40 分頃に診療所に到着すると、すでに外来診療を待つ方々がいらっしゃった。
朝礼の時に学生の自己紹介を済ませると、 8 時に外来開始、カルテは 10 冊ぐらい積みあ
がっていた。その後もたびたびカルテは重ねられ、鈴木先生は休みなく 25 人ぐらいの患
者さんの定期外来をこなし、看護師の方も共に非常に忙しそうだった。午後は訪問診療で
介護施設や個人のお宅を訪問した後、夜間診療で 5 時から 6 時まで働く人の診療や予防注
射などを見学できた。
症例 1 : 80 代男性、主訴は息苦しさ。既往に食道カルチノーマがあり、 X 線胸部写真で
胸水による肺の圧排の所見を認めている。 4 月よりも胸水の増加傾向が認められたため、
胸部エコーにて胸水を確認後、胸水穿刺を行って500mlほどの血性胸水を抜いた。呼吸困
診療所の皆さん(大村さん撮影)
難感の改善が期待できる一方で、胸水の組織診、培養、アミラーゼ、 ADA 、蛋白、糖、 LDH 、 CEA などの項目を検査に出し
た。鑑別としては肺癌、結核、感染症、膵炎、胸膜中皮腫などが挙げられる。
症例 2 :高齢女性及び男性が複数、主訴は関節痛。変形性膝関節症での定期外来が目立った。肩関節や膝関節にヒアルロン酸を注
入していて、鈴木先生に注射の角度などを教わることができた。
症例 3 : 9 才女児、予防注射による受診。日本脳炎の予防注射が行われた。定期接種は、 MR ワクチン(麻疹・風疹)、 DPH
(ジフテリア・百日咳・破傷風)、日本脳炎、ポリオ。
5 月 29 日(火)
実習先:もやーど里(午前)、島内医療体制見学(午後)
内容:高齢者特別支援施設であるもやーど里は、居住サービスとデイサービスがあり、私はまずデイサービスの方で実習させてい
ただいた。送迎バスでもやーどまで来られた利用者の方々の体温・脈拍・血圧測定で健康チェックを行い、その後コミュニケーシ
ョンをとりながら室内ゴルフを楽しんだ。その後さらに居住者の方のリハビリに同行した。
症例 1 : 85 才、男性。主訴:膝関節痛。過去に腰椎、膝関節の激痛があり、検査値で血沈上昇、 RF(-) 、 CK 正常、 CRP 上昇
があった。リウマチ性多発筋痛症を疑い、現在ステロイド処方にて経過を見ている。当時の激しい痛みによりあまり動いていなか
ったが、現在になって ADL の制限もあるためリハビリで動けるようになれたらとの希望。最終的には立位が可能になりたい。
まず、下肢全体の可動域を上げるストレッチを行った。さらに膝関節に負担をかけないように支えながら、足の上げ下ろしを行っ
た。立位はまだ痛みがあるということで、本日は車椅子に移乗後、車椅子の足での移動訓練を行った。介護士さんとの軽妙な掛け
合いを楽しみながら患者さんを見守っていたら、今まではしていなかった車椅子の移動 50m ほどが自分でできた。終わってから
特に膝の痛みは訴えなかったものの、急激に運動量が増えた後の疲労には注意しなければならないと思った。
午後は、診療所の事務長、礒道さんに上甑島、中甑島を車で案内していただいた。里診療所は現在歯科を除けば鈴木先生一人で診
療を続けている。上甑診療所には入院ベッドがあり、さらに平良診療所と浦内診療所の二つの出張診療所があるが、現在はどちら
も休診となっている。小学校が閉鎖されたことや、 100 円バスの普及で上甑診療所に通えるようになったことが要因であるそうだ。
また上甑には村永医院という民間の診療所もあるとのこと。
中甑島の山の頂上からは、下甑島の鹿島診療所が遠くに臨めた。中甑と下甑を結ぶ橋が 7 年後には完成予定だということである。
現在、里の住民の方々は船で下甑にいくよりも県本土に行く方が近いという感覚であるというが、橋の完成後に人の流れはどう変
わっていくのだろうか。
5 月 30 日(水)
実習地:里診療所
内容:午前は診療所にて外来見学・血圧測定を行った。
症例 1 : 92 才女性。朝から何もする気が起きず、日課の寺参りや炊事もできなかった。「最近急に認知障害がでてきているので
は ? 」という先生や看護師さんの印象があり、 10 日前の内服確認のための自宅訪問では、今日薬をもらってきたばかりだと答え
たとのこと。 HDS-R では 21/30 (以前は 27/30 )で、復唱、短期記憶に障害があった。慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、正
常圧水頭症を鑑別に挙げ、 CT 検査にて、右前頭部~側頭部にかけ低吸収像を認め、慢性硬膜下血腫の所見があった。血腫除去手
術などの適応かを串木野市の脳神経外科センターにコンサルトする予定だが、遠隔地に住んでいる子供が甑島に戻ってくる週末ま
では往診などでフォローとなった。(金曜に転倒により前腕の軽度の負傷あり、再度受診してもらったが、受け答えには答えるが
少しぼんやりしているような状態であった。)
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症例 2 : 80 代女性。定期受診で聴診をさせていただいたが、汎収縮期雑音が胸骨両側第 2 肋間、左側第 3 肋間、心尖部と聴取で
きた。先生によると MR は心尖部以外で響くことはあまりないとのことなので、その部位以外の雑音は AS も合併している可能性
がある。しかし本人は無症状であり、経過観察を続ける。
午後は往診にて、グループホーム、個人宅を回った。物が粗雑に積み上げられて部屋の一部だけを生活空間にしているような患者
さんのお宅では、食配の昼食をきちんと食べているか、 2 週間分の薬ポケットの残薬、デイケアの連絡帳などをチェックして患者
さんの現在の状態把握を行っていた。
5 月 31 日(木)
実習地:養護老人ホーム寿里苑(午前、午後)、里診療所(夜間診療)
内容:里診療所の隣接地である寿里苑で実習をさせていただいた。私が配属されたのは 2 丁目と呼ばれる第 2 ユニットで、車椅子
での自律移動ができる患者さんや患者さん同士の会話が可能な人が比較的多い 10 人ほどのユニットになっていた。
症例 1 : 80 才代の女性。認知症による徘徊がある。 2 か月前に中足骨 3.4 番を骨折し、現在は後遺症などもなく元気に徘徊して
いるらしいが、右眼の緑内障により、視界も遮られるためか頭や顔をぶつけたことがあるため、自由に歩行させるのは難しかった。
座位で日中は過ごせているが、手先を落ち着かせることが困難で、机の上を触る、ひと肌を触る、さする、服のボタンをいじる、
服の端の折り返しを触るなど、指先の触覚で何かを感じ取っているようだった。緑内障が悪くなる前までは、お盆を拭いたり床の
拭いたりとお掃除を熱心にしてくれていたということで、現在もその名残なのか、素手で机の上のごみを取るようなしぐさを見せ
たり、床に触れようとするなどの動きが見られた。
意思疎通を感じさせる言葉は多くはなかったが、「あじろいか(かわいい)」、「ひようなさらんとか(寒くないのですか)」と
いう言葉をたまに私にかけてくださった。また、御親戚の方や同じ集落の方のお名前を何人も出して昔の思い出話をずっと話して
いて、この時ほど島の言葉がわかったらよかったのにと思ったことはなかった。
5 時より診療所に戻り夜間診療を見学した。鼻水が出て心配という親子連れが複数いて、どちらも重篤感をあまり感じさせなかっ
たのだが、何かあるとすぐに診療所に連れてくる親が増えてきて、親が敏感だと子供も敏感になるという先生のお話は非常にため
になった。
6 月 1 日(金)
実習地:里診療所(午前)
内容:本日は時間をおいてぽつぽつと患者さんがいらっしゃる日だった。
症例 1 : 34 才の男性、職場健診にて来院。心電図、胸部レントゲン、腹部エコー、上部消化管内視鏡を施行。胸部レントゲンで
は肺野に肋骨が 11 本映り、今後は肺気腫にも注意が必要と考えられる。内視鏡では食道に軽度のびらん、また胃食道移行部の粘
膜で胃粘膜が上昇しているのが確認できた。胃内に空気を注入したところ、複数のゲップが出て、噴門部の弛緩がある疑いがある。
逆流性食道炎にも注意しなければならない。
症例 2 : 73 才の男性、強い肩の痛みを訴えている。前回受診時に撮影した頸部レントゲン像を核にすると、第 5 ~第 7 頸椎間の
狭窄があったため、頸椎狭窄による神経圧迫と考えられる。また、左手第 2 指根部と右足底に強い角化を認め、プレパラートに表
皮を採取、 KOH にて角質細胞を融解し観察したが真菌などの原因は観察できず。別医では掌蹠膿胞(角化?)症と診断されたと
のこと。
感想
これまで離島に行ったことがない私は、どことなく離島に住む人たちを特別に捉えていて、うまくやっていけるのだろうかという
不安がまずありました。さらに今回の実習では、恐らく毎日忙しくて実習地やその土地に住む人々のことをあまり知ることもでき
ないかもしれないだろうから残念だなと勝手に考えていたのですが、甑島の里町を訪れて、自分の考えていた予想など完全に吹き
飛ぶような、非常に有意義で楽しく真剣な実習、さらに穏やかで明るいのんびりとした離島生活を送ることができました。
まず里港に降り立って、宿泊地である民宿えびす屋に向かって荷物を引いて歩いていると、遠くから歩いてくる小学生が挨拶を
してくれました。私が普段生活している圏内ではまず考えられないことで、その後も人の行き交う時はいつも(車の中からで
も!)挨拶が交わされていました。立ち寄ったスーパーでは「どこから来たの?」と声をかけてもらい、「学生さん頑張って
ね!」と温かく迎えてもらえました。里町には「見知らぬ人・船がいたら警察に通報を!」という看板があるのですが、毎日これ
だけ挨拶していたら、確かに不審な人はすぐ見つかってしまうに違いないと思いました…。
実習初日にお会いした鈴木先生は、黙っていると少し強面で、私も最初は緊張していたのですが、看護師さん達との楽しいやり取
りにたくさん笑わせていただきました。定期外来受診の患者さんたちで待合室がいっぱいの日は、待合室も非常に賑やかなのです
が、診療室ではいつでも軽妙な会話が交わされ、真面目に見学せねばと思っていても耐え切れず笑ってしまう出来事が多々あり、
患者さんも笑顔で帰られていく姿を見て、体だけでなく心も元気になれる診療の姿がここにはあるのだと感じました。
里町での実習は、診療所での診察や往診に限らず、高齢者特別支援施設もやーど里でのデイケアのお手伝い、養護老人ホーム寿里
苑でのお手伝いにも行かせていただきましたのですが、診療所に定期外来でいらっしゃった患者さんをデイケアでお迎えしたり、
またデイケアにいらっしゃった患者さんのご自宅に往診に行ったりと、養護老人ホームで往診があったりと、同じ患者さんを多方
向の立場から見ることができたことは非常に貴重な機会だと感じました。また、里町の人や医療従事者として働いている方々の親
御さんが、診療所や施設にいらっしゃったりデイケアを利用していたりと、なかなか鹿児島市内では感じることができない、人は
一つの立場で生きているのではない、また人と人は繋がって生活しているのだという実感を得ることができました。今までは患者
と医師という立場は不動のものと思いがちだったのですが、いつか私が誰かのお世話になる、あるいは家族など近しい人が誰かの
お世話になる可能性もあるのだから、自分だけで頑張らず、お互い様で生きていっていいのかもと今更ながら思うようになりまし
た。
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さて、実習 2 日目の見学では、診療所の他にも一の浦海水浴場、長目の浜展望所、なまこ池・
貝池、甑大明神と甑大明神橋なども案内していただきました。その中でも一度甑島を訪れたこ
とがあるという相棒の鶴丸さんの希望により、思い出の深い甑大明神橋までもう一度行こう、
ということになりました。実習最終日の午後をフリーにしてもらい、二人で坂道対策のために
電動自転車をレンタルし、この先は自動販売機もなくなるということで昼食と飲み物を購入し
て準備万端で臨みましたが、昼過ぎの暑さと二人の体力低下によりあまり距離を稼げず、船の
時間も迫ってきたため途中で断念することになりました。その後は平たんな道を選び長目の浜
や亀城跡、近くの展望所で里町を一望し爽やかな風に吹かれながら昼食をとりましたが、ど
ことなくスッキリしないのでいつかもう一度頑張ってみたいなと考えています。
( 海の幸満載でご馳走様でした )
一週間、本当に実のある貴重な経験をすることができました。最後になりましたが、質問に
答えられなくても優しくレクチャーをしてくださった上にとってもおいしいご飯に連れていっ
てくださった鈴木先生、三枝さんはじめその話術を見習いたいいつまでも美人でステキな看護
師さん達、観光に連れていってくださりさらにお酒の席でも楽しい礒道さん、大山さん、実習
で何をしていいかわからずうろうろしていても笑顔で快く受け入れてくださった方々、実習先
で甑島弁がわからず変な受け答えばかりしても怒らずお話してくださったたくさんの方々、電
子レンジ・冷蔵庫を使えるようにしてくださった民宿えびす屋の方々(とっても助かりまし
た)、明るく挨拶してくれた子供たち、たくさんの人に感謝の気持ちでいっぱいです。御恩返し
目指していた甑大明神
はまず医師になってから、ということで、国家試験頑張ります!本当にどうもありがとうござい
(甑大明神橋の上から)
ました。
氏
名
鶴丸
美樹
5 月 28 日(月)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夜間)
内容:午前中は朝礼で職員の方との挨拶を済ませ、外来患者さんの診療を見学した。
症例 1 : 80 歳代、男性、胸水貯留
胸部レントゲンでは左中下肺野を中心に透過性が低下した所見あり。胸水貯留を疑い、超音波で左側の肋間から観察したところ
echo free spaceあり。左側の第 6 肋間に胸腔穿刺を行い排液したところ、得られた胸水は血性で約 500mL であった。自覚症状は
乏しかったものの、胸水貯留の原因として感染症、肺癌、悪性中皮腫、結核、膵炎を疑い、胸水の培養検査、タンパク量、細胞成
分の測定、 LDH 、 CEA 、 ADA 、ヒアルロン酸、アミラーゼの生化学検査をオーダーした。
症例 2 :男性、便秘の訴え
2 日ほど排便がないとの訴えで来院。腹痛なく、腹部診察ののち、直腸診を行うも便の移送の程度を確認するも直腸につまってい
る様子ではなかった。すぐに KUB を撮影したところ、大腸内に便の貯留を認めた他にイレウスや狭窄、捻転の所見はなかったた
め、下剤を処方しそれでも排便がない場合は再度来院するよう指導した。
症例 3 :男性、創傷
今朝魚をつっていたところはねた魚の背鰭で右前腕遠位部にきずができ腫れて痛いため来院。創傷部位は 3 箇所でうち 2 箇所は発
赤、熱感、腫張、圧痛あり、残り 1 箇所は発赤あり。炎症反応が強く創部に感染を伴っている所見のため、抗生剤と消炎鎮痛剤を
処方し、より悪化し黄色の膿が出てくるようになった際は切開が必要である旨を告げ診察を終了した。
午後は往診で、生活支援ハウスもやーど里の入所者さん 2 人、在宅の方 2 人のもとを訪問した。以前は外来まで来られていた方が
さまざまな事情で来院できなくなり往診するようになったそうで、どの方も容体は比較的落ち着いているようであった。往診では、
血圧測定や診察のほかにも残薬袋を直接確認しここ最近の生活の様子を尋ねる場面が多かった。また、 2 週間に 1 度の機会なので
ご家族が聞いておきたいことなどを前もって準備しているような様子も見られた。
17 時~ 18 時までは夜間診療を見学した。夜間診療とはいっても、救急の疾患が多いというよりは日中の時間帯に来院できない
方が来る場合が多いようであった。
5 月 29 日(火)
実習先:生活支援施設もやーど里(午前)、島内案内(午後)
内容:午前中は生活支援施設もやーど里でデイサービスの方々と一緒に過ごす機会をいただいた。スタッフの方と挨拶をしたあと、
各集落から送迎バスでやってきた利用者の方々を出迎え、お茶を配りながら交流をした。 14 名の利用者の方はとても賑やかに過
ごされており、ある利用者の方に「上甑はいい島ですね」と話しかけると「ここは空気もいいし、気持ち良いし、みんな優しくて
いい人がいっぱいよ。いい島でしょー」と笑顔で教えてくださり、さらに学生だとわかると「若いうちにいっぱいがんばんなさ
い」と励ましの言葉もいただいた。お茶の時間が終わると、利用者さん全員でゲートボールのレクリエーションをした。杖をゲー
トボールの木槌に持ち替えて競い合いながら体を動かす様子はとてもイキイキとされており、「おねぇちゃんボールとめてー」と
言われ、うまいところにボールが行くよう微調整するのがなかなか難しいのだが、利用者さんの楽しい気持ちを大事に盛り上げて
おられるスタッフの方の配慮に触れとても勉強になった。その後は利用者の方がお昼を召し上がり昼寝をするまで近くで見学させ
ていただき施設の実習を終えた。
午後は車で島内を案内していただいた。
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場所:長目の浜展望所
美しいトンボロ地形と、手前より海鼠池(なまこいけ)、貝池、鍬崎池(くわざきいけ)が望める。ここでは、海水、淡水と塩濃
度が大きく違うために,独特の生態系を形作っているそうだ。貝池では赤い色素をもつバクテリアがいた。
場所:大明神大橋
上甑と中甑をつなぐ橋から。橋の名前の由来は岩自体がご神体として甑大明神を祀っているため。この橋から眺めた海は太陽の光
で輝きが増し素晴らしい眺めだった。
5 月 30 日(水)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)
内容:午前中は診療所で外来見学をした。本日から患者さんの血圧測定を任された。緊張のせいかはじめは時間をかけすぎてしま
い反省し、次からは患者さんの腕がしびれないようにスムーズに測定するのを心掛けた。
症例 1 : 91 歳女性
いつも朝の日課で行くはずの寺に出向いておらず本人がぼーっとした様子であったのを心配され来院。いつもは着替えてくるが、
その日はエプロン姿で来院した。
朝からぼーっとしていてお寺に行く気にもなれず、そのため着替えや朝食の準備もできなかったとのこと。最近、認知機能の低下
が疑われていたため改訂長谷川式簡易知能評価スケール( HDS - R )を行った。結果は 21 点で見当識と記銘力の低下が認めら
れた。急に進行した認知症なので、甲状腺機能低下症や正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫を疑い、甲状腺ホルモン測定のオーダーを
出し、頭部 CT を撮影したところ、右側に脳実質を圧排した low density area が認められ、側脳室の圧排と軽度の mid line shift
が存在した。慢性硬膜下血腫の診断で経過は長いものと思われた。患者さん本人に転倒した記憶はなく、外傷はなかった。高齢者
の慢性硬膜下血腫では血腫を除去することで認知機能も回復する見込みがあるため、後日脳神経外科センターで血腫除去を検討し
ていただく方針で受診するまでの数日は経過を見ることにした。
高齢者の認知機能低下を見た際に、狭義の認知症しか頭に浮かばないとこのような治療のできる認知症を見過ごしてしまう可能
性がある。今回の症例は大変貴重な経験になった。
午後は往診で、喜多人で生活されている方のもとを訪れた。診療所に帰ってからは、往診で出された薬を確認して袋につめる作業
をさせていただき、はじめての経験だった。
5 月 31 日(木)
実習先:老人ホーム寿里苑
内容:一日寿里苑で介護体験実習を行った。
この施設は 3 つのユニットに分かれて居住区があり、 80~100 歳を中心とした高齢の方々が生活されている場で、介護度はさまざ
まであった。
午前中は、ユニットの方々の血圧測定を任され、またリビングで休まれている利用者の方と雑談をして過ごした。初めはどう接
してよいのか戸惑う場面も多く、スタッフの方に助けられながらすこしずつ話ができるようになっていった。
ある女性の方が施設内を一周するというので見守りと声掛けをする機会をいただき、一緒について歩行の練習を介助した。
Parkinsonism のある方だったので、歩き出しに「せーの」と声をかけて足を出しやすくし、「 1 , 2 、 3 、 4 」と歩行に合わせ
て声掛けも行った。声掛けが歩行とうまく合うと、歩幅も大きくなり本人さんもスムーズに足を運べるようだったが、方向を変え
たり止まったりして調子が合わなくなると姿勢を崩されるので慎重に介助を行った。
昼食では、配膳を手伝った際に、それぞれの介護度に合わせて食事の形態も工夫されていることに気付いた。また、皿に斜めに角
度がついてすくいやすいようになっていたり、コップの持ち手が大きく持ちやすくなっていたり器具にも特徴があった。食事の際
はむせる方や、 1 品見落とす方がいるのでスタッフさんはその都度様子を見ながら声かえを行っていた。
午後 14 時 30 分からは里診療所からの往診があり、その時は施設内の診察室で見学を行った。寿里苑では看護師の方は一人で、
その日往診の利用者さんたちの体調をすべて把握して残薬の確認などをされていた。特に大きく容体の悪化した方はいなかったが、
この方は食事中よくむせていた、とかこの方は排泄の訴えが強かったなどそれぞれの生活での問題点を感じ始めていたころだった
ので、診察室で聞き出す医学的な問題点と生活のなかでの介護上の問題点はまた違った視点でとらえていく必要があるのではない
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かと感じた。そして、それが医学的に改善のできるものであるか、介護において改善できるのはさまざまで、利用者さんの数だけ
工夫できるのが理想なのではないかと思う。しかし、実際の現場で 1 人のスタッフの方が 1 人の利用者の方と過ごせる時間は限ら
れたものであり、医療者が接する以上の思いを持って介護をされている方々には現実的な負担もたくさんあるのではないだろうか。
往診のあとはリハビリの場に参加させていただき、ストレッチの運動や歌を歌うなどして 1 時間ほど過ごした。
高齢の方と話す場面に慣れておらず、さらに里の言葉もわからないため何度も聞き返す中で、利用者の方の機嫌を損ねてしまうこ
とが多々あり戸惑ったが、スタッフの方の計らいでその方から歌を教えていただくことができ、最後には握手をしてお礼を言えた
のでほっとした。
6 月 1 日(金)
実習先:診療所(午前)
内容:実習最終日で外来見学を行った。本日は外来の患者さんがあまり多くなく鈴木先生にさまざまな話題でお話しをしていただ
いた。
症例:男性、健康診断
健康診断を行うため来院。採血、心電図、胸部レントゲン、腹部エコー、上部内視鏡検査を行った。心電図、腹部エコーは問題
なく。胸部レントゲンでは、横隔膜が第 11 肋骨にかかる横隔膜低位があり、肺の軽度過膨張が認められた。喫煙歴もあるため
COPDに注意した経過観察が必要と判断した。また、上部消化管内視鏡検査では、下部食道にびらんを認め、検査中に胃内の圧を
上げると食道を通じてガスが抜けてくる様子が観察できたため胃食道逆流症の疑いが考えられた。
午前の外来が終了するとスタッフの方も集まってくださり、挨拶と記念撮影をした。
診療所受付にて記念撮影
きびなご
感想
今回の離島実習ではじめに出会ったのが島の方のあたたかさだった。フェリーで里港に到着し宿までの道を歩いていると、道行く
小学生が「こんにちは」と漏れなく挨拶をしてくれる。また、子供だけでなく自転車や車で通りすぎる方も会釈をしてくださって、
慣れていないこちらは何となく戸惑ってしまった。次第にこれが島の方の接し方なのだとわかると自分も自然に挨拶をするように
なっていった。また、商店や飲食店に訪れた際にも声をかけていただき、「里診療所で実習をさせてもらっている鹿大の学生で
す」というと、みなさんからなおのこと暖かく迎えていただけた気がした。
診療を見学させていただくと、血圧管理、肩関節・膝関節炎の処置、睫毛乱生症、坐骨神経痛、整形外科疾患、神経疾患が多かっ
た。こういったプライマリケアは日常の不便さを訴えてこられる方が多く、畑仕事や網の手入れなどの負担を減らすように指導す
ることもあった。一方で、高齢にもかかわらずそういった作業をできるというのは日常にしみ込んだ行為だからだとも思うので、
難しいところだと思う。また、高齢者だけでなく小児の患者さんも来院するので、予防接種、健康診断、風邪や喘息も見なければ
ならない。兄弟姉妹でかかりつけなので、地域で子供を育てる感覚が診療所にもあるように感じた。また、予防接種や介護保険に
ついても診療所と役場が連携して把握している様子も見ることがあった。これも地域に根付いている診療の特徴だと思う。
診察中に印象的だったのは、問診の一言目の「どう、変わりはない?」というフレーズだった。大学病院の外来では初診の患者
さんの診断の過程を見せていただくことが多かったので、日ごろからかかりつけ医として接している先生の様子は新鮮だった。
島での医療は 24 時間 365 日。そう思うと窮屈に感じるが、「何かあったらいつでも連絡してね」といえる環境は、患者さんにと
ってはもちろん、ある意味医者にとっても安心できる要素ではあると気付いた。先生とお話ししていて、地域で診療をするには、
その地域性をよく理解し、また理解しようと興味を持って島のひとと接していく姿勢が大事なのだと思った。
地域性と求められている医療の関係性の中で医師の在り様もさまざまで、どれがよいとか悪いというわけではなく、必要とする人
がいる限りどの立場で働く医師も必要なのだと感じた。「離島の診療所では大学のように専門性の高い領域まで手を出すことはで
きないが、患者さんの背景を踏まえて生活に根付いた治療ができる。最先端の医療か地域医療かと問われた時は、あとは自分がど
ちらに魅力を見いだせるかだ。」といった内容を先生にお話しいただいた。先生の実感を伴ったお話しやその柔軟な考え方を聞い
て、自分が今後医師として患者さんとどうかかわっていきたいかよく考えていきたいと思った。
また、今回は介護施設で 1 日体験実習をさせていただいて、高齢化の進む地域で介護の占める役割の大きさを実感した。しかし、
その職が社会的に十分な地位を認められているとはいいがたい現状がある。医療と介護の連携はもちろん必要だが、それ以前に介
護にかける人員を増やして負担を軽減する工夫も必要だと思う。医療と同じかそれ以上に介護の現場にも大きな問題があると思う。
今回の実習では、診療所の鈴木先生をはじめ、事務、看護師、薬剤師のみなさん、もやーど里、寿里苑のスタッフの方、さらに
診療を見学させていただいた患者さん、施設の利用者さんに大変お世話になりました。みなさんに教えていただいて、島の医療に
ついて学べましたし、島の自然の豊かさにも触れることができました。とても貴重な経験をさせていただいたと思っております。
本当にありがとうございました。
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平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
鬼塚
一聡
6月4日 ( 月 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 ) 、夜間診療 (17 ~ 18 時 )
内容:午前は 8 時から診療が開始するのだが、 7 時 20 分には患者さんがすでに列を作っていた。 7 時 30 分に病院を開けて、な
だれこむ患者さんの数に驚きながら診療の開始を待った。診療が始まりまず午前中に一番感じたのは、高齢者が多いからか高血圧
の患者さん、脂質異常症の患者さん、関節 ( 膝・肩・肘など ) 変形の患者さんが多いということです。午前中だけで 50 人位の患
者さんが来ましたが、関節へのヒアルロン酸の注射が処置としては最も多かったです。そのなかで特に印象に残った症例を 2 つ挙
げたいと思います。
症例 1 : 70 歳・女性、主訴:右手の腫れと痛み
先生は経過を聞いた後すぐレントゲンをとる準備を始め、技師さんがいないため、全て自分で撮っていました。画像上明らかに骨
折が見られたため、ギブスで固定して、三角巾で吊って処置していました。このように、画像を撮るのにも全部自分でしなくては
いけないということは、大学病院で実習している自分にはすごく驚きでした。
症例 2 : 80 前後?
女性
主訴:関節痛
もともと病歴の長い RA の患者さんで、なぜ自分の印象に残ったかというと、ヒアルロン酸の注射を膝に計 2 本、肩に計 4 本も打
っていたからです。いままで処置でヒアルロン酸の局部注射を見たことがなかったのですごく衝撃でした。
午後 ( 訪問診療 )
1 件目:慢性呼吸不全 (COPD) の患者さんで、在宅酸素療法を受けている方で、それでも SPO2 が91%くらいだったと記憶してい
ます。特に処置はせず、問診、診察をして終了しました。
2 件目:食道癌術後の寝たきりの患者さんで、主訴は発熱でした。本人は何かを訴えていましたが、聞き取れませんでした。診療
が終わった後で家族の方が点滴について先生のところに相談しに行っているのを見て、先生が頼りにされているのがよくわかりま
した。
夜間診療:子供 3 人の検診以外は患者さんの来ない日で、先生も珍しいとおっしゃっていました。
6月5日 ( 火 )
実習先:介護保険施設
内容: 8 時 30 分に介護保険施設に到着し、まず職員の方々に挨拶をしてから、実際にそこに入居していらっしゃる方々とお話を
しました。島に関するお話などを聞けました。そこから移動して、朝のラジオ体操を一緒にやりました。その後、入居者の方々は
レクリエーションとしてパターゴルフみたいなものを始めましたが、もう一人がそっちについて、自分はリハビリが行われている
ところを見学しました。職員の方は資格を持ってないようでしたが、 PT ・ OT のかたから教わったリハビリを行っていました。
実際に僕が見たおばあちゃんは、車椅子への移乗が自分でできるようになったり、トイレまで自分で行けるほど改善した方もいる
みたいで、効果がでているということを感じました。
午後:事務長さんに車を出していただいて観光に行きました。その時のことは感想で書こうと思います。
6月6日 ( 水 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 )
内容:この日もやはり関節のヒアルロン酸の注射をされる方が多くて、高齢のかたはやはり何らかの関節の症状を持っているんだ
と改めて実感しました。その中でも印象に残っている症例を挙げます。
症例 1 :?歳
女性
むずむず脚症候群
聞いたことはありましたが、実際の患者さんを見るのは初めてでした。この方は関節症もあるらしく、ヒアルロン酸の注射をして
薬を処方されていましたが、何が処方されたか聞けなかったので、自分で調べてみたところ、L-DOPAやバルプロ酸が効果がある
ようです。
症例 2 :?歳
女性
主訴:頻尿
先生は腹部診察で膀胱が張っていることから残尿があると考え、導尿したところ 110cc ほどあり、尿沈渣のなかには白血球があり
ました。このように常に尿がある状態だと尿路感染症にかかりやすくなると先生はおっしゃられていました。膀胱炎の診断で、抗
菌薬を使って、経過観察としたと記憶しています。
この日は前日に亡くなった方がいたそうで、しかも独居の方だったため、異常死体として扱われ、警察とともに先生が現場に向か
われました。事件性がないことと、トロポニン T が上がっていたことから、心筋梗塞として死亡診断書を先生が書かれているのを
見て、この町の全てが患者さんで、誰が亡くなっても先生が主治医だということを強くかんじさせられました。
午後 ( 訪問診療 )
特に記憶に残っている症例を 2 つ挙げます。
症例 1 :慢性硬膜下血腫で右片麻痺及びブローカー失語の患者さんで、発語はできないがこちらの言うことは理解できている様子。
特に症状に著変なく、診察して終了。
症例 2 :潜水病の男性で、頸髄以下の麻痺がある患者さんでした。午前中は車椅子で奥さんと散歩されたそうで、診察をして終了
しました。しかし、やはり麻痺があるので、膀胱直腸障害があり、介護は大変だと感じました。
6月7日 ( 木 )
実習先:特別養護老人ホーム見学 ( 午前・午後 ) 、夜間診療 (17 ~ 18 時 )
66
内容: 8 時 30 分に診療所の裏にある施設に行き、職員の方に挨拶してから実習を始めました。はじめはお茶を飲んでいる入居者
と話す・・・ということでしたが、自分のコミュニケーション能力の不足でうまくいかず、うまく話せた方も痴呆症がある方で、
同じ話を繰り返すなど、かなり精神的に辛い実習でした。それから、お風呂などに入る方のベッドの移乗を手伝ったり、マーゲン
チューブで食事されてる方に、食事を注入したりして、お昼ごはんもそこでいただきました。午後からも、実習内容は変わらず、
うまくコミュニケーションがとれず、かなりそこのスタッフの方に手伝って頂きました。これらのことは経験が全てなので、いい
経験ができたと思います。
夜間診療
内容:この日も比較的患者さんは少なく、ヒアルロン酸の注射を打つ患者さんや、診察と処方だけで終わる患者さんばかりでした。
6月8日 ( 金 )
実習先:診療所 ( 午前 )
内容:実は月・水にも健康診断の方が来ていたのですが、ここでそれにふれようと思います。この日の検診は先生がエコーもカメ
ラも全部行うので、かかる責任の重大さに自分は耐えられるのかと思いました。この日の患者さんは脂肪肝と食道ヘルニアからの
胃炎という所見でした。この日に他に症例を 1 つ挙げます。
症例:?歳
女性
主訴:便潜血
昨日実習に行ったところからの紹介で、先生は肛門鏡で観察されて、炎症による出血ということで、整腸剤をだされていましたが、
ほんとうは CF をしたいとおっしゃっていました。
以上で実習の内容は終わりで、以下感想に移ろうと思います。
感想
自分ははじめ、何の影響かはわかりませんが、離島というものは島以外の人には非常に冷たくて、診療所でも、知らない人がいよ
うものなら帰ってしまう・・・というかなりネガティブな印象をもって島に来たのですがまず来た日曜が全国からイカを釣りに来
る大会があったそうで、道行く人も気軽に挨拶してくださるし、旅館までの道を尋ねても丁寧に答えていただけて、実習が始まる
前からかなり島に対する抱いていた印象が変わりました。港から診療所を経由して宿までは、車通学に慣れて全く歩いていない僕
らには相当たいへんでしたが、これも実習と思い頑張れました。
月曜は、自分の想像では 20 人位かなーと患者さんの数を考えていたので、前述の通り、外にあふれている患者さんを見て、こん
なに多くの患者さんがいるのかと驚きました。結局処方だけや、処置だけの患者さんを含めて 60 人近くが午前中だけで来たそう
で、しかも別にそれが特別多い方ではないということで、患者さんの数は想像以上でした。夜は先生や事務の方々に飲みに連れて
行っていただきました。刺身が新鮮でおいしいし、初めて貝の踊り食いを食べるなどかなり贅沢をさせて頂き、最後に食べた締め
のキビナゴの茶漬けも最高においしかったです。
火曜は、午前中はあっという間にすぎていって、お昼に観光になったのですが、僕ら二人は半そでの T シャツしか持ってきてない
のに、雨が降って、おまけに気温も低い状態で観光が始まりました。山の上の風力発電を見たり、里を一望したり、池から海へ行
ったりとかなり楽しい観光でしたが、いかんせん天気のせいで半分くらいしか楽しめませんでした。
水曜は晴れて、この日に観光なら・・・と思いながら過ごしました。この日は大きな出来事は検死があったことで、それ以外は普
段通りの一日だったと記憶しています。夜間診療の日でもなかったので、訪問診療が終わり次第宿に戻りました。
木曜は特老で全くコミュニケーションがとれなかったため、完全にへこんでしまいました。医師になるためにはそのようなスキル
も磨かなくてはいけないと気持ちを新たにしました。その日の夜に、先生に里の一軒のお寿司屋さんに連れて行って頂き、学生と
しては、薬品会社の弁当か、何かのイベントでしか食べられない『廻らないお寿司』をいただきました。実習でもお世話になった
うえに 2 度もお食事に連れて行っていただき本当に感謝しています。
最後になりますが、里に一人の医者として存在しておられる先生の責任の重さを感じる一週間でした。患者さんの血圧を測るだけ
でも、これで正しいのかな・・・と不安な自分に、問診、検査から、診断、治療に至るまですべての患者さんを長期にわたって診
続けるような責任は果たせないし、それができる技量もないと思いました。それを長い間行い、島の人たちから信頼を得ている先
生の知識、技術、人柄を本当に尊敬しています。一週間という短い期間でしたが、すごく貴重な体験をさせていただきました。本
当にありがとうございました。
氏
名
篠原
宏樹
6 月 4 日(月)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夜間急患)
内容:午前中は診療所で外来患者さんの診察を見学。症例 1 : 80 歳、男性、主訴は、膝の痛み。変形性膝関節症で定期的に診察
を受けており、今回も、関節腔にヒアルロン酸を注射した。症例 2 : 56 歳、男性、主訴は、右足先の痛み。関節リウマチを罹患
している患者さんで、今回は、レントゲン検査を行ったが、骨に異常は見られなかったため、関節リウマチによる炎症が波及した
と判断し、消炎鎮痛剤を注射。午後は、往診。症例 1 : 86 歳、女性、主訴は、呼吸困難。COPDで定期的に訪問診療を受けてお
り、レスピレーターで呼吸管理を行っている。症例 2 : 84 歳、男性、主訴は、発熱。食道癌の放射線治療後の患者さんで、肺炎
を起こしており、点滴で抗生剤を投与中だったが、発熱が続き、処方薬の変更を考慮したが、今夜まで様子をみることになった。
夜間診療は、小児の定期健診以外、患者さんは来なかった。
6 月 5 日(火)
実習先:介護保険施設(午前)、島内医療体制見学(午後)
内容:午前中は、介護保険施設を見学。デイケアの患者さんと話をしたり、ゲームをしたり、また、介護保険についての説明を受
67
けた。午後は、診療所の事務長と、島内の医療体制の見学をした。島内を車でまわり、いろいろな説明を受けた。上甑診療所との
連携の仕組みや違いなどの説明を受けた。
6 月 6 日(水)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんの診察を見学。症例 1 : 51 歳、男性、主訴は、健康診断。検査は、胸部 X 線、心電図、腹
部超音波検査、GIFを施行。エコー上、 bright liver 、深部エコーの減衰が見られ、軽度の脂肪肝がみられた。症例 2 : 67 歳、
男性、主訴は、定期診察。前立腺肥大症を患っていて、服薬の副作用で女性化乳房がみられており、まだ軽度ということで服薬投
与量の変更を考慮。症例 3 : 80 歳、女性、主訴は、骨折。家の玄関先で転倒し、手をついたみたいで、左手首が赤く腫脹してい
た。レントゲン検査で、左橈骨の外顆骨折。湿布を貼付後、肘上から左手首までギプス固定。症例 4 : 78 歳、女性、主訴は、頻
尿、排尿痛。検尿を施行し、視野上、多数の白血球を認め、急性膀胱炎と診断し、抗菌薬を処方した。症例 5 : 68 歳、男性、主
訴は、両下腿から足先にかけての痒み。むずむず脚症候群 ( レストレスレッグス症候群 ) の患者さんで、今回の診察は経過をみる
もので、特に症状の大きな変化は見られなかったので、生活指導で診察を終えた。症状がひどくなった場合には、抗ドーパミン薬
の処方の必要があることも患者さんには説明をした。午後は、往診。症例 1 : 82 歳、女性、主訴は、眼が見えない。糖尿病性網
膜症で眼が見えない患者さんで、高血圧、高脂血症も患っている。今回の往診は、定期診察であって、症状の進行は見られなかっ
た。症例 2 : 80 歳、男性、主訴は、片麻痺、失語。外傷性硬膜外血腫が原因で、右片麻痺、運動性失語がみられる。糖尿病の既
往あり。二次性のてんかん、緑内障も罹患している。今回の診察では、症状の進行は見られなかった。だが、腰部と臀部の中間ぐ
らいの位置に褥瘡のような小さな傷の所見あり。体位変換や、起きて散歩など軽い運動をするよう指示した。症例 3 : 70 歳、男
性、潜水病。主訴は、排尿障害。頚髄以下の麻痺がみられる。神経因性膀胱で排尿障害がみられ、膀胱瘻を造設した。今回は、そ
の後の経過をみるもので、症状の変化は特にみられなかった。
6 月 7 日(木)
実習先:特別養護老人ホーム(終日)、診療所(夜間急患)
内容:特別養護老人ホームを見学。入所者の往診を見学。ユニットに配属され、介護士の指導のもと、一人の入所者の担当となっ
た。それ以外に、ユニットの入所者の方々と会話やゲーム、食事をしたりして時を過ごした。往診後には、入所者の方々と一緒に
リハビリ体操を行った。夜間診療は、診療所で外来患者の診察を見学。症例 1 : 70 歳、男性、主訴は、膝の痛み。定期的に診察
を受けている患者さんで、両膝にヒアルロン酸を注射した。
6 月 8 日(金)
実習先:診療所(午前)
内容:午前中は診療所で外来患者さんの診察を見学。症例 1 : 93 歳、男性、主訴は、血尿。特別養護老人ホームの入所者で、今
朝、血尿がみられ、両下腿に軽度浮腫が認められた。導尿を行い、顕微鏡上、一視野に白血球を多数認められ、膀胱炎と診断し、
抗菌薬を処方した。症例 2 : 79 歳、女性、主訴は、腰痛と脚の痺れ。痛みは無く、間欠跛行もみられない。一応、湿布薬を処方
したが、痛みや痺れが続くようであれば、整形外科を受診するよう薦めた。症例 3 : 86 歳、男性、主訴は、全身の痛み。関節リ
ウマチで治療中の患者さんで全身が痛く、夜中に叫ぶこともある。今回の診察では、関節リウマチの所見はみられなかったが、骨
の変形による痛みと、関節リウマチの炎症作用による痛みが考えられ、坐薬の処方と腰部にヒアルロン酸の注射を施行した。今後、
リハビリも必要になることも、患者さんに説明した。症例 4 : 81 歳、女性、主訴は、便潜血。特別養護老人ホームの入所者で、
朝、便所で血便がみられたので、来院した。食欲も問題なくて、腹部診察でも主だった所見は無かった。肛門鏡で、肛門部に近い
場所の粘膜からの出血を確認し、今回は経過観察ということになった。症例 5 : 73 歳、男性、主訴は、首、腰の痛み。定期的に
受診されている患者さんで、今回も前回同様、首と腰にヒアルロン酸を注射した。症例 6 : 78 歳、女性、主訴は、膝の痛み。変
形性膝関節症で定期的に外来受診されている患者さんで、今回も前回同様、膝関節の関節腔にヒアルロン酸を注射した。症例 7 :
44 歳、男性、主訴は、健康診断。検査は、胸部 X 線、心電図、腹部超音波検査、GIFを施行。GIFで、胃粘膜の委縮が認められ、
急性胃炎と診断された。また、食道胃接合部に小さな粘膜病変もみられたので、アルコールや煙草を控えるよう指導した。
遠隔医療実習記録
今回の実習では、外来見学が主で、遠隔システムを利用する機会はありませんでした。
感想
私は、今回、離島に初めて行きましたが、離島の生活には、本当に驚かされることばかりでした。まず、感じたのは、時間が非常
にゆっくり流れているということでした。島全体の雰囲気が、非常に穏やかに感じられ、とても優しい気持ちになれました。最初
は、店が少なく、また、ご飯を食べるところもなくて、昼ご飯と夜ご飯を確保するのがかなり大変でした。島内に飲食店が何軒か
ありましたが、学生が行くには、少し高い店ばかりで、所持金が足りるか、心配でした。でも、鈴木先生や診療所の方々に海鮮料
理をご馳走になり、また、お寿司もご馳走になり、鹿児島市にいては味わえない海の幸を堪能できて、本当に幸せでした。特に、
きびなごは本当によく食べました。この一週間で、約三年間で食べる量のきびなごを食べたと思います。旅館の女将さんも、サー
ビスでカレーライスや唐揚げを準備して下さって、本当に感謝しています。旅館も一人部屋を準備して下さって、五日間、夜はと
てもゆっくり出来ました。温泉も最高でした。
月曜日、初日の外来見学、まず驚かされたのは、鈴木先生が、診察、処置、超音波検査、内視鏡検査、 X 線検査を全て一人でこ
なされていて、本当に凄いと思いましたし、勉強になることも多々ありました。その上、往診もされていて、離島の医師不足を目
の当たりにしたような気がしました。早急の改善は厳しいと思いますが、離島における医師を増員する必要があると感じました。
また、診療所に来られる患者さんは、高齢者が多く、関節の痛みを訴えられている患者さんが多い印象を受けました。この一週
間の外来見学で、ヒアルロン酸の関節腔への注射をかなり見学したと思います。ひょっとしたら、自分でも出来るのではと錯覚す
68
る程でした。また、これも外来を見学させてもらって感じたことですが、鈴木先生をはじめ、診療所の方々と患者さんとの距離が
非常に近いということです。往診に行く時も、鈴木先生とすれ違う度に、島の皆さんは会釈をして、挨拶をしていました。先生に
お話を聞くと、島の人ならば、誰でも分かるとおっしゃっていました。島の中でこのような関係が築けることが、本当に羨ましか
ったです。また、子供達も、島全体で育てるという雰囲気が感じられ、とても温かい気持ちになりました。
火曜日の午後は、診療所の事務長さんが島内の観光コースを案内してくれました。不幸なことに、天候は最悪でしたが、晴天の日
に訪れたら、きっと最高のコースだと思いました。この観光コースを今度は、実習ではなく、プライベートで訪れたいと思います。
また、島到着の日に島内で行われていたイカ釣り大会も、本当に楽しそうだったので、この大会にも是非、参加してみたいです。
木曜日の特別養護老人ホーム訪問では、実際に介護士の仕事を見学して、介護士という仕事の大変さも少しは分かりましたし、ま
た、普段、接することのない認知症の患者さんの担当を任せられ、苦労したことも多々ありましたが、人のお世話をすることの大
変さを実体験で学ぶことが出来て、すごい貴重な時間が送れたと思います。
最初は、離島実習は、少し面倒くさい感じもしましたし、不安な思いでいっぱいでしたが、鈴木先生をはじめ、診療所の皆さん、
島民の方々が何も分からない実習生にとても優しく接して下さって、本当に居心地がよく、とても楽しかったです。また、何より、
料理がとても美味しくて、苦なことは、診療所と旅館が遠いということ以外、何もありませんでした。初期研修で、離島を一ヶ月
まわりますが、機会があれば、また是非、上甑島を訪れたいと思います。
鈴木先生を始め、里診療所の皆様には、五日間という非常に短い期間でしたが、かけがえのない貴重な体験をさせてもらいまし
た。本当にありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
伊福
達成
6 月 25 日 ( 月 )
実習先 : 訪問看護 ( 午後 ) 、里診療所(5時~ 6 時 )
内容 :
訪問看護
変形性膝関節症の方が多かった。膝から関節液を抜いて、ヒアルロン酸を注入したり、関節液を抜かずにヒアルロン酸を注射して
いた。最近では、ステロイドは使わないということだった。
加齢による膝周辺の筋萎縮と軟骨の変性により関節痛と腫脹がみられる疾患である。日常多く遭遇する疾患であり、日本では O 脚
に伴い内側型の本症が多い。典型的なエックス線像は、骨棘の出現、内側関節裂隙の狭小化、骨硬化像、嚢腫像などである。
変形性膝関節症の治療では、重要なのは膝関節伸展筋の筋力強化であり、大腿四頭筋の強化訓練が大切である。まずは等尺性収縮、
伸展位からの下肢挙上訓練で十分である。
関節内注射としては近年関節液成分であるヒアルロン酸の注入が行われており、以前多かつたステロイドの関節内注射は激減して
いる。
夜間診療
小学生の女の子が、土曜日から熱があり乾いた咳が出るということで来院された。
先生は、マイコプラズマ肺炎を念頭において、 X 線をとられていた。心陰影の裏側に病変部位を見つけた。心臓の裏側もしっかり
見ることの大切さを学んだ。
健康な小児~若年者に好発する (乳幼児 , 高齢者ではまれ )
2 週間の潜伏期の後、気管支炎や肺炎を起こし、発熱の他、夜間に睡眠障害を起こすほどの激しい乾性咳嗽が長期間続くことが特
徴である。マクロライド系が第一選択である。
6 月 26 日 ( 火 )
実習先 : もやーど ( 午前 ) 、島内案内 ( 午後 )
内容 :
< もやーど >
8 時 30 分~施設内案内
9 時 00 分~デイケアを利用されている方々と、ゲートボール
11 分 20 分~介護保険についての説明
施設の名前であるもやーどは、もやい ( 共同で行う ) やどから来ているそうです。お年寄りの方々と一緒にゲートボールをしなが
らお話をすることで色々な背景の方々がいることが分かりました。みなさん、今の年寄りはこういう場所があるから幸せだとおっ
しゃってました。
午後は、里診療所の事務長さんが島内を案内してくださいました。
長目の浜、貝池、なまず池、甑大明神橋、中甑と下甑をつなぐ橋の建設中の所、今年
の実習で初めて晴れの観光だったそうです。
6 月 27 日 ( 水 )
実習先 : 里診療所 ( 午前・午後 )
・レビー小体型認知症の患者さんが来られて、歩き方がパーキンソン様歩行だった。
【レビー小体型認知症】 Lewy 小体が大脳皮質領域に出現し、進行性認知症とパーキ
69
ンソニズムを呈する神経変性疾患である。幻視が初発症状となることが多く、症状は変動しやすい。パーキンソニズム、自律神経
症状がみられる。
・気管支喘息の患者さんは、ステロイドの内服を前医にて行っていたため、ステロイドの長期投与による副腎機能低下があるため、
内服を続けているそうでした。
・前立腺癌術後の患者さんは、本土でフォロー中。 PSA が落ち着いているので、本土まで 3 ヶ月ごとに行くのは大変とおっしゃ
っていた。
【前立腺癌】前立腺外腺(辺縁域)の被膜下より発生し、 95 %以上が腺癌である。 60 代以降,年齢とともに罹患率が急激に増
加する。アンドロケンで発育促進、エストロゲンで発育抑制される。初期には無症状または会陰部不快感が認められ、進行すると
血尿・排尿障害がみられる。骨転移を起こし、骨痛をきたす。骨痛部は Xp で不規則な骨形成像を呈する。骨転移は骨形成性であ
ることが特徴である。
6 月 28 日 ( 木 )
実習先 : 寿里苑、夜間診療
内容
午前・午後とも寿里苑にお世話になった。軽度の認知症の患者さんやデイケアの患者さんがい
た。乾癬の患者さんの標本をすぐに取り顕微鏡で見て確定診断を下していたのを見て、先生の
レベルの高さを感じました。
6 月 29 日 ( 金 )
実習先 : 里診療所 ( 午前 )
膀胱炎の患者が来た。熱の症状はなかった。
【膀胱炎】主として尿道からの上行性経路による細菌感染(主に大腸菌)によって生じる膀胱粘膜の炎症である。尿道が短く感染
しやすいため女性に多く、男性では結石や排尿障害(前立腺肥大症など)がある場合に多い。急性膀胱炎では、頻尿、排尿時痛、
尿混濁が trias である。他に、下腹部不快感、残尿感、血尿などがみられる。発熱は伴わない。
感想
今回の実習では、直前に下甑から上甑に変更になり、内心複雑でした。しかし、結果的に上甑に行かせていただいてよかったと思
っています。まず思ったことは先生のレベルが高いということです。また、病院だけでなく、色々な施設を見させていただけてよ
かったと思っています。離島の病院での施設や出来る手技についても学ばせて頂きました。
初日は午後から参加しました。船に酔ってしまい、きつかったけれど船を降りるとすぐに病院がありよかったです。昼に、一時間
ほど実習をし、なんと夜にはお食事にまで連れて行ってもらえました。次の日は、もやーどに行った後、島内案内をしてもらえま
した。今回来た 6 年生の中で晴れたのは自分たちだけだったそうで、とてもいい体験をさせていただきました。水曜日は、一日中、
里診療所での実習でした。先生は、自分たちの質問にも丁寧に答えて下さいました。木曜日は、寿里苑での実習でしたが、食事を
食べさせるお手伝いや自分たちの出来る限りでのお手伝いをしました。
実習最後の日にも食事に連れて行っていただけて本当に嬉しかったです。
今回の実習を通して、実際に離島医療を体験させていただけたことをとても感謝しております。また、機会があったらお世話にな
りたいと思っております。
氏
名
齋藤
友樹
6 月 25 日(月)
実習先;里診療所(午前)往診(午後)夜間診療(午後)
内容:午前中は診療所で外来見学
症例①
60 代女性
主訴
関節痛
変形性膝関節症の方で、注射をして黄色に混濁している関節腋を抜き、ヒアルロン酸を注射した。
症例②
視床部の脳梗塞の患者さん
脳梗塞だが麻痺症状が初発症状ではなく、ハンチントン舞踏病のような症状が初発症状で来院された。大脳の深部付近で脳梗塞を
起こすとこのような症状が麻痺よりも先に出てくることがあると、指導していただいた。
症例③
30 代男性
職場健診
腹部エコーと消化管内視鏡で消化管を検査した。やや脂肪肝のある方だった。腹部エコーの際に、脂肪肝があれば肝腎コントラス
トがはっきりすること、門脈の走行が肝区域の決定に重要であること、脾静脈をターゲットにしてそこから膵臓、上腸間脈静脈、
下腸間脈静脈や門脈を割り出していくと説明していただいた。
症例④
コーレス骨折の患者さん
骨粗鬆症がベースにある方で、転倒して手をついた際に、コーレス骨折を起こした。コーレス骨折で来院する患者さんは多い、と
のことだった。骨粗鬆症を発症すると、大腿骨頚部骨折、上腕骨頭部骨折、腰椎骨折を起こしやすく、特に高齢者は転倒して大腿
骨頚部骨折を起こし、そのまま寝たきりになってしまうことが多いと説明していただいた。
症例⑤
緑内障の患者さん
頭痛で受診されたが、精査すると緑内障の発作が原因で眼圧が上昇し、頭痛を起こしていた。頭痛の鑑別には緑内障の発作も頭に
入れておくようにと指導していただいた。
症例⑥
70 代男性
前立腺肥大症
70
前立腺肥大症はα 1 ブロッカーが第一選択で、尿閉が強いと自己導尿、手術も考えるとのことだった。
50 代男性
症例⑦
潜函病、潜水病
深い所に潜って急に浮上したため、高圧環境下で血液に溶解していた窒素が気泡化して血管を閉塞して起こる。この患者さんは頸
髄の損傷で、頸髄以下が麻痺し、車いす生活となった。また神経因性膀胱もあり、導尿や膀胱瘻の設置を検討している。
60 代女性
症例⑧
尿路感染症
尿路感染症の疑いで来院された。発熱あり。 CVA knock pain あり。尿検査で尿の混濁があった。
60 代女性
症例⑨
右手の痺れ
右手にジリジリとした痺れがあると訴えて受診した。どんな時に痺れが出るか、どんな状態かを問診し、首周囲の筋肉の緊張が神
経を圧迫して、痺れ感が出ていると判断した。脳梗塞や、脳出血など脳の疾患からくる痺れは、よくなったり悪くなったりはしな
い。首周囲の筋肉のストッレチ程度しか対処方法はないとの説明だった。
80 代の男性
症例⑩
腹部 CT で上行結腸に腫瘍があり、肝臓に大きな嚢胞があった。肝臓の嚢胞は大きくても問題ないが、上行結腸癌のため翌日に救
急車でフェリーニ乗船して、南風病院に入院となった。
午後から伊福くんも合流して、個人宅と生活支援ハウスのもやーどに往診に行った。
症例は寝たきりの高齢者が多く、診療所に受診することが困難な人で、体温、血圧などバイタルのチェック、食欲の有無、排便、
排尿の状態を問診して薬を処方し、変形性膝関節症など関節症のある患者さんにはヒアルロン酸を注射した。
往診後には午後 5 時から夜間診療があった。
5 歳くらいの女の子
症例①
主訴発熱
昨日から発熱があり、右の耳下腺周囲が腫れているとの訴えだった。ムンプス(流行性耳下腺炎)が考えられたが耳下腺の腫脹は
もっと大きく、症状も強いはず。抗体検査ができないので完全に否定も肯定もできないため、発熱が収まるまでは、幼稚園は欠席
し、発熱がずっと続くようなら再び来院するよう指示した。
6 月 26 (火)
実習先
生活支援ハウスもやーど(午前)島内観光(午後)
午前中は生活支援ハウスもやーどでデイケア、訪問看護、リハビリ訓練の見学をした。朝の朝礼で自己紹介し、 1 日方針を各部署
のスタッフさんが述べたのち、主任の方に施設を一通り案内していただいた。施設を利用していない人にも、訪問給食を行ってお
り、 1 日 50 食程度配達しているとのことだった。 9 時ごろにデイケアを受ける方が到着されお話をし、ゲートボールをした。そ
の後、訪問看護とその方のリハビリ訓練を見学した。施設のスタッフさんが理学療法士から、リハビリ訓練の計画と方法を学び、
実践することで、下肢を動かすことも出来なかった状態から歩行器を使用して歩ける数メートル歩ける程度まで回復した。今後の
目標は歩行器を使用して施設内を歩けるようになることで、そのためにも本人の意欲を高めていくことがますます大切になるとの
説明だった。終わりに主任さんから、鹿児島における介護保険、施設の仕組みなどを説明していただいた。
午後は島内観光に連れていっていただいた。梅雨の真っ最中だったが、天気も比較的よく、晴れ男ぶりを発揮した。自然が美しい
島で、高台から見下ろす景色が素晴らしく、海と大きな池それを分ける砂浜の光景が強く印象に残っている。その頃鹿児島市に火
山灰がたびたび市街地まで降っていた時期なので、久しぶりに思いっきり深呼吸をして、空気のおいしさを感じた時間だった。
6 月 27 日(水)
実習先:診療所(午前)午後往診 16 : 30 ~カンファレンス
内容:午前は診療所で外来診療を見学した。
症例①
小学生の女の子
主訴
咳
乾性の咳が止まらないことで来院した。胸部x線撮影で、心臓の後方に肺炎の所見があった。マイコプラズマ肺炎の可能性が高く、
マクロライド系の抗生剤を処方した。胸部x線写真では、心臓付近や肺尖部の肋骨、鎖骨と重なる部位は所見が読みにくいので注
意して読影する必要があると指導していただいた。
症例② 60 代の男性
Levy 小体型認知症
筋固縮や歩行障害など Parkinson 症状があるが、安静時震戦は見られなかった。前立腺癌に対するホルモン療法を受けられており、
女性化乳房や胸に有痛性のしこりもあった。
PML リウマチ性多発性筋痛症
症例③
発熱があり、食欲の低下がある。近位部、近位筋の固縮、痛みがあった。炎症所見として CRP 上昇、赤沈亢進がある。ステロイ
ドが著効するため全身の筋痛の訴えがあれば、常に鑑別診断で頭に置いておく必要があると指導していただいた。
午後は強い雨の降る中、往診に出かけた。
症例
80 代女性
一人暮らし
もやーどのデイケアを受けられていた方だった。アルツハイマー型の認知症で、同じ質問を何度も繰り返されていた。昔の記憶は
比較的しっかりしており、アルツハイマー型の認知症は近時型の記憶障害であると実感できた。甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、
慢性硬膜下血腫による認知症は原疾患を治療すれば改善するので、見落とさないように認知症の鑑別診断で重要だと指摘していた
だいた。
16 : 30 から、もやーどの職員さんと合同カンファレンスを行った。入所者で気になる症状がある方に対しての議論があった。
6 月 28 日(木)
実習先
特別養護老人ホーム
午前から特別養護老人ホームで職員の方について、入所者の方のお世話を手伝った。入所者の方は、かなり認知症が進行している
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方から、認知度がしっかりしている人まで様々だった。職員数が少なく、介護が大変とのことだった。 14 : 30 から先生が往診
にこられ、 17 : 00 からは診療所で夜間診療を見学した。
6 月 29 日(金)
実習先
症例①
診療所(午前)
70 代男性
間欠性跛行
慢性閉塞性動脈性硬化症の方だった。ABI(上肢と下肢の血圧差)や膝窩動脈、足背動脈が触知できるか、壊死や潰瘍はないかで
腰部脊柱管狭窄症、馬尾神経の損傷と鑑別診断する。
症例②
30 代男性
感染性粉瘤
耳介の後方に、脂肪を分泌する脂腺に細菌が入り化膿したため切開し、排菌した。
4 、感想
6 月 24 日に、今にも大雨が降りそうな悪天候の下、上甑島に向けて出発しました。出発 30 分程度で気分が悪くなり、船酔いに
苦しみながら、ようやく里港に到着しました。宿舎に電話すると女将さんが車で向かいに来てくださり、診療所や飲食店の場所を
案内してもらい宿に着きました。集合時間を厳守するようにとのメールを医局からもらっていたので、徒歩で診療所まで、どれく
らい時間がかかるか確かめに行きました。道中、磯の香りを感じたり、カニが道路を横切っているのを目にしたりして、小学生の
時に白浜に海水浴に行っていた時と似たような光景で、懐かしい思いがしました。 10 分程度で診療所に到着し、向かいの中学校
の芝生が目に留まり、船酔いの気分を和らげたくて、 1 時間ほどウオーキングしました。校庭から診療所の方向を見ると、普段は
下宿のベランダから見ると遠く蒼く見える山が、迫ってくるぐらい大きく緑色をしていることに、やっぱり遠くまできたんだなと
何かしみじみ思うものがありました。
初日の診療所では、朝礼で自己紹介し、 1 週間よろしくお願いしますと挨拶しました。続いて外来診療の見学でしたが、先生の机
に山のように積まれたカルテを見て、びっくりしました。ポリクリの外来診療は多くても 5 、 6 件なので、やはり地域医療、プラ
イマリー診療はかなり多くの外来患者さんが来院するのだなと思いました。里診療所では、先生は勿論、看護師さん、スタッフの
皆さんは手際よく、丁寧に流れるように仕事をされていました。問診、バイタルのチェック、注射などの処置、内視鏡検査、 X 線
や CT 撮影すべてに無駄がありませんでした。それでもカルテの数は増える一方で、最終的に 55 件だったと聞かされ本当にびっ
くりしました。「地域医療では様々な疾患の患者さんが受診するので、医師は一つの専門知識だけでなく幅広い知識と技量が要求
される、ありふれた疾患が多いが、その中で重症の病気を見落としてはならない」と指導していただきました。また問診で誰にで
も同じ内容を聞かれるので質問すると、「バイタルが正常で、ご飯がおいしく食べられて、睡眠がとれて、排便、排尿がしっかり
していればまずは問題なし」、と判断できるとのことでした。
初日の夜に歓迎会を開いていただき、きびなごの刺身や丸焼き、えびやナガラメを御馳走になりました。地元でとれた魚ばかりで、
とても新鮮でした。特にナガラメはまだ生きたままで、それを網焼きにし、醤油をかけて再び火にかけて食べた時の食感は最高で、
味も美味しく、忘れられない会食になりました。 2 日目の島内観光では、上甑島の美しい自然を満喫できました。海、山、池どれ
も心落ち着く情景でした。老人ホームや生活支援施設で実際に高齢者の方に接する機会を提供していただいたのも貴重な経験でし
た。スタッフの皆さんに丁寧に指導していただけました。診療所に通えない方の為に、往診も日常業務として行われていました。
土砂降りの雨の中の往診は忘れられない思い出になりました。木曜日の夜は寿司の握りを御馳走になりました。これも地元の魚ば
かりで新鮮で頬が落ちそうになりました。寿司屋の亭主から、先生がどれだけ里の地域の方々の健康に貢献しておられるか、信望
を得ておられるかを聞きました。地道に日々の激務をこなされ、地域医療に貢献されていることが、地元の人に伝わっているのだ
と実感しました。
1 週間でしたが、里診療所で地域医療の実習が経験できたことを嬉しく思います。又、私は里診療所の実習生として、地域の方々
から温かい励ましを受けました。大変有り難く思っています。業務でお忙しい中、疾患の説明や読影の仕方、心電図の読み方など
も指導していただけました。医療スタッフの方もいつも笑顔で接していただき、気持ちよく実習することが出来ました。鈴木先生
はじめ診療所のスタッフの皆様、宿舎のご主人、女将さん、お世話になった方々、本当にありがとうございました。
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手打診療所
薩摩川内市下甑手打診療所
手打診療所外観
診療所外観
甑大明神橋
ナポレオン岩
瀬々野浦診療所
鹿島断崖
しんきろうの丘
トンボロ地形
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実 習 期 間
氏
名
東
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
千尋
◎4月2日 ( 月 )
実習先:移動 ( 午前 ) 、診療所 ( 午後 )
内容:午後は先生やスタッフの方々に御挨拶をし、診療所内の案内をしていただいた。病棟の患者さん達に挨拶をして回り、カル
テを一通り読んだ。外来見学では、再診で薬をもらいに来る患者さんがほとんどだった。
夕飯時に瀬戸上先生、研修医の飯福先生と回診をした。瀬戸上先生が、一人で食事が摂れない患者さんの補助をされた姿に感動し
た。
◎4月3日 ( 火 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、診療所 ( 午後 )
内容: 8 時 30 分からナースステーションにて朝カンファを行った。看護師さんが深夜帯当直の申し送りをしている様子を見て、
夜間の病棟の管理は基本的に看護師さんのみで行っていることを知り、看護師さんの存在の大きさを感じた。
先生の外来が一段落すると、過去に手打診療所で診たアスベスト肺の患者さんの画像を見せてくださった。アスベスト暴露のピー
クから 30 年ほど経過した現在、アスベスト肺の患者さんが急増しているという。国家試験レベルの知識を教えてくださり、大変
勉強になった。
外来見学。 4 歳男児。 3 日間続く下痢・嘔吐。食欲なし。帰宅し様子を見ることに。翌日、下痢・嘔吐が続くため入院となった。
この日から、昼食後に病棟患者の血圧測定を行う役目を任された。事前に練習していたおかげで、スムーズに測定することができ
た。新村先生に感謝。
病棟の患者さんと談話もした。島のことや、患者さんの職業、家族のことなど様々なお話を聞かせてくださった。
20:00 救急搬送。 85 歳女性。トイレにて転倒、救急車到着時には鼻出血あり。搬送時には止血されていた。右頬骨骨折、右肘関
節部打撲。 CT 施行、上顎洞に出血。 ITKarte の症例に使用することになった。
◎4月4日 ( 水 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、診療所 ( 午後 )
内容:朝の申し送りにて昨夜の救急搬送の患者さんについて意見交換がなされた。また、夜間に起床してベッド上にて排尿をして
しまう入院患者さんについて、日中寝かせないように注意して観察する方針が出された。
病棟の患者さんと談話した。日中寝かせない患者さんとも談話室にて会話し、退屈して眠くならないように注意した。
外来見学では、弁置換後の術後フォローの患者さんが 2 人続けて来院した。ワーファリンを内服しており定期的な採血が必要との
ことであった。島で生活しながら術後フォローができるのは、患者さんにとって大変重要なことと感じた。
本土から応援にいらしている専門の医師のもと、透析治療の見学をさせていただいた。透析設備のない上甑の患者さんは、渡航し
て串木野の病院に通院しなければいけないと知り、透析室のある手打診療所の存在の重要性を感じた。
昼食後の血圧測定では、脳梗塞の後遺症で四肢に強い拘縮のある方の血圧を測定するのが困難であった。毎日の測定結果があるこ
とから、看護師さんたちは計測できているのだと考える。コツを教えていただこうと思う。
外来見学。主訴腹痛、 1 週間続く夜間の下痢、福祉施設に入居中、本日早朝より 39 度の発熱、食欲なく朝食・昼食を摂れず、腹
部エコー、心電図、採血、 CT を施行、 Cre2.7 、 CRP3.8 。腸炎、腎不全と診断し、脱水のため点滴を行う必要あり入院となっ
た。
◎4月5日 ( 木 )
実習先:巡回診療 ( 午前 ) 、巡回診療・診療所 ( 午後 )
内容:明け方 5 時、サメ咬傷の患者が救急搬送されてきた。傷口約 15cm 。縫合ののち帰宅。午前中、外来を数件診察した後、巡
回診療に出た。診療所に到着すると、すでに待合室は診察を待つ患者さんで溢れ返っていた。流れるように血圧測定を行った。待
合室とつながった部屋で測定したため、患者さんたちの会話がすぐそこで聞こえており、始めは集中して聴診器の音を聞かなけれ
ばいけなかったが、回数を重ねていくうちに大きな声のする中でもしっかりと測定できるようになっていった。自分の成長を感じ
ることができて嬉しかった。昼食のときや移動時に、先生が観光地に連れていってくださったこともとても良い思い出となった。
◎4月6日 ( 金 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、移動 ( 午後 )
内容:事務的な仕事や宿舎の清掃などを行った。診療所のスタッフの方々に御挨拶を済ませ、島を離れる寂しさの募る中、しぶし
ぶ帰りの船に乗船した。
遠隔医療実習記録
<年齢>
85 歳
<性別>
女性
<主訴>
鼻出血
<所見>意識清明。右顔面腫脹。鼻出血は止血済み。右肘部位にも腫脹があるが、屈折可。転倒時に意識消失なく、 TIA や
Adam-Stokes は否定的。
<相談内容>
◎頭部 CT 読影のお願い
この度は大変お世話になっております。
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4 月 3 日 ( 火)18:30頃、トイレで右側に転倒し、緊急搬送された患者さんです。
搬送時、鼻出血、右顔面腫脹がありました。意識障害はありませんでした。救急車で来院時、鼻出血は止まっていました。 CT に
て頬骨骨折を認め、前頭洞・上顎洞まで出血を認めます。右顔面の腫脹・疼痛があり、入院となりました。
貴科的御高診よろしくお願い致します。
<紹介医からの回答>
もう少し上のレベルの画像も送信してください。いただいた CT 画像は、頬骨レベルまでしかありませんでした。意識障害は無い
ということでしたが、一時的な意識消失は無かったでしょうか。
もし、一時的にでも意識消失の可能性があれば、硬膜外 ( 下 ) 血腫等の恐れもあります。
( 今後、慢性硬膜下血腫ができる恐れもあります。 )
頭部全体の CT 画像の送信はできますでしょうか。
頭部外傷の方の場合は、 1 週間後に CT を再検査するのと、神経学的なフォローアップが重要です。意識レベル低下以前に、
ADL が次第に低下するとか、認知症が亜急性的に進行する等の症状の変化が見られたら、硬膜下血腫の可能性を考えて CT を行
うべきだと思います。
<使ってみて有効であった点>
重篤な疾患が隠れている可能性のある症例を扱う際には、一人で診断を下すよりも、他の医師の意見を聞くことができる方がとて
も心強いと感じた。また、自分の知識では足りない部分のアドバイスをいただけることは、正確な診断を下すうえで大変重要であ
り、患者さんのためにも必要であると感じた。
<新たに追加もしくは改善してほしい点>
画像の貼り付けなど操作が複雑な部分があったので、もっと簡便な操作方法になると ITKarte も気軽に利用できるようになり、さ
らに普及していくと思った。また、実際に利用してみて感じたこととして、文字だけで患者さんの状態を伝えることがいかに難し
いかが分かった。限られた文字数の中で症状を正確に述べるためには、自分にもある程度の知識がないと、的外れな内容になり相
手の医師が診断するのに苦労することになることを知った。
感想
離島実習が始まるまでは、楽しみ半分、不安半分というのが本音であった。離島での生活というものがほとんど想像できなかった
からである。電波は入るのか、テレビは映るのか、買い物に困らないか、移動の船の中はどうだろう、などなど、挙げればキリが
ないほど分からないことだらけであった。
そんな状態で手打診療所に到着した初日、先生との挨拶も十分にできないうちに突然「行動開始!」の号令が出され、私たちは右
も左も分からない診療所内で何をすれば良いか途方に暮れてしまった。本土に帰りたいとすぐに思った。(後に、その時は先生が
たった 1 人で大勢の外来をこなしており診療時間を大幅に超えそうな時であったことが分かった。)初日の実習を何とか終え宿舎
に帰る頃には、まだ 1 日しか過ぎてないことが恐ろしかった。
恐る恐る診療所に出向いた 2 日目、すれ違う看護師さんや患者さんが、元気よく声をかけてきてくださった。「昨日はよく眠れ
た?」「ご飯はおいしかった?」など、まるで以前からずっと知り合いだったかのような雰囲気に驚かされたと同時に、とても温
かい気持ちになった。先生ともゆっくりお話しする時間をいただき、先生の温かい人柄を垣間見ることができて、初日に受けた印
象は勘違いであったことが分かった。また、この日から研修医の先生がいらっしゃり、後ろに付かせていただけたおかげで様々な
ことを見学できた。昼食後に病棟の患者さんの血圧を測る仕事が任され、自分たちの役割も見出せた。こういったおかげで、 2 日
目の実習が終わる頃にはすっかり診療所が居心地良くなっていた。
それからの毎日は、信じられないほどあっという間に過ぎていった。どの患者さんも先生を尊敬し感謝しており、診療所全体が笑
顔と笑い声で溢れている様子を毎日体感できた。訪れる方々は、誰かしらが親戚や知り合いで、まるで島全体が家族のようであっ
た。患者さんから島の話をいろいろ聞かせていただいたり、実習が終わってから近くを散歩してみたりするうちに、どんどんその
土地に愛着が湧いていった。周囲の景色や、地元の方々の人柄、穏やかな時間の流れ、島の全てが私を癒してくれた。妙な話だが、
この島が自分の生まれ育った故郷のような錯覚さえ覚えるほど、 1 週間ですっかり島の魅力に取りつかれてしまった。もし、自分
が医師免許を持ってこの土地に来ていたら、あまりの居心地の良さに住み着いていたかもしれないと思った。
このような貴重な体験ができ、温かい気持ちで 1 週間を過ごせたのは、ひとえに手打診療所の先生やスタッフの皆様方のおかげで
す。私たちとまるで家族のように接してくださり、元気をたくさん分けていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。本当に
ありがとうございました。
氏
名
引地
美菜子
4 月 2 日(月)
実習先:診療所 ( 午前、午後 )
内容:串木野から高速船に乗って 10 時 20 分に長浜に到着しました。長浜まで手打診療所の事務長である和田さんが迎えに来て
くださいました。 1 週間の実習にしては荷物が多かったようで驚かれていました。最初に宿舎に向かいましたが、その途中で近く
にスーパーや下甑唯一の信号機 ( 交通安全指導のためにあるそうです ) 、「おふくろさん」の記念碑などの紹介をされました。診
療所には 11 時頃に着き、午前中は入院されている患者さんや、そのご家族とお話しをしました。下甑の中で病床のある診療所は
手打診療所だけなので、とても頼りになる大事な場所だとおっしゃっていました。今回 1 週間お世話になる手打診療所が下甑に住
む人々にとって大切な存在であることを認識しました。
午後は鹿児島市内の病院から 2 週に 1 回交代で来ている先生の外来を見学させていただきました。先生は診療所で水曜に行われる
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透析のためにいらっしゃっているそうです。そのおかげで海を渡って透析を受けにいかなければならなかった患者さんの負担が大
分減ったそうです。まだ透析の見学は出来ていませんが、離島での医療はそのような周りの地域からのサポートが大きな役割を果
たしていると感じました。
最後に瀬戸上先生と研修医の先生と一緒に病棟の回診をしました。患者さんに温かい声をかけながら回診される先生を見てこの 1
週間でたくさんのことを学びたいと改めて実感しました。
4月3日 ( 火 )
実習先:診療所 ( 午前、午後 )
内容:朝の 8 時半からのミーティングに参加しました。 2 日の夜は急患の患者さんはいなかったそうです。その後は瀬戸上先生の
外来診察を見学しました。アスベストによる石綿肺や結核既往のある患者さんを診ました。最近、石綿肺の患者さんの数が増えて
いるそうで、その中で結核に感染しているかどうかを見極めることが大切だということを学びました。レントゲン写真をいくつか
見せていただいて石綿肺や結核の所見についても勉強しました。
午後は 13 時から病棟に入院している患者さん全員の検温、脈拍、血圧の測定を行いました。離島実習に出発する前に血圧測定の
練習をしていったのであまり焦らずに測ることができました。高齢の方ばかりだったので血管が破れないか心配でしたが大丈夫で
した。実際に患者さんの血圧を測る機会は今までの実習ではあまりなかったのでとても貴重な経験になりました。その後は 14 時
から午後の外来診察の見学、X線とCTの撮り方の勉強をして 2 日目の実習終了となりました。
4月4日 ( 水 )
実習先:診療所 ( 午前、午後 )
内容:朝は 8 時半からのミーティングに参加。外来診察の見学、透析の見学をしました。透析の見学は今までの実習でも何度かあ
りましたが、透析中の患者さんとゆっくり話せる機会は初めてでした。透析を始めたばかりの頃は頭痛がひどかったが体がだんだ
ん慣れてきて最近はなくなったという話や、土日の二日間透析をしないと顔がむくんだ感じがするが透析するとすーっと良くなる
感じがするといった患者さんが感じた話しなどを聞くことができました。その後は、診察室のパソコンを借りて遠隔医療実習をし
ました。症例は、 2 日の 20 時に急患で運ばれてきた、顔面の打撲と鼻出血を主訴とした患者さんでした。
午後は昨日と同じく 13 時から入院患者さんの検温、脈拍、血圧測定を行った後、外来診察の見学をしました。 88 歳の女性で発
熱と下痢を主訴とした患者さんが入院となりました。 CRP は 3.8 と上昇していましたが、腹部の診察で圧痛を認めたのみで、エ
コー、CTで異常所見はありませんでした。下痢は服用している薬が原因かもしれませんが、熱が39.1度と高熱のため尿路感染な
どを疑いながら精査をしていく方針となりました。
前 2 日間は天気が悪く暴風となっていたため実習後に散歩が出来ませんでしたが、今日は風も落ち着いて暖かかったので浜辺の散
歩をしました。宿舎の近くにある喫茶店「α夢」でコーヒーも飲めてとっても良い 1 日でした。
4月5日 ( 木 )
実習先:手打、瀬々野浦診療所 ( 午前 )
片野浦、手打診療所 ( 午後 )
内容: 8 時半からミーティングに参加。夜は急患があって研修医の先生はほとんど眠れなかったようで大変そうでした。外来診察
を少し見学して 10 時に往診、巡回診療に出発しました。てっきり自転車で行くのかと思っていましたが、先生と一緒に車での出
発となりました。先生に自転車で行ける距離じゃないよと言われましたが、自転車での往診を楽しみにしていたのですこし残念で
した。在宅の患者さんの家を往診しながら山を越えて瀬々野浦診療所に向かいました。血圧を測りながら診療所にいらっしゃる患
者さんとお話しが出来て楽しい時間でした。その後は診療所の近くの民宿浦島さんで昼食をとりました。アットホームな雰囲気で
料理もとても美味しかったです。昼食後は先生と 3 人で浜辺を散歩しました。ナポレオン岩の写真も撮って少し観光気分も味わえ
ました。
午後も在宅の患者さんの往診をして、途中しんきろうの丘で記念写真を撮ったりしながら片野浦診療所に行きました。瀬々野浦診
療所にいらっしゃる患者さん達もそうでしたが、待合室や診察室でにぎやかに話をされていてとても明るい印象を受けました。夫
婦で一緒に診察を受ける方も多く、とても仲が良くて、こちらまでほっこりした温かい気持ちになりました。また、診療所の外で
の瀬戸上先生と下甑島の方たちの触れ合いを間近で見ることができ、先生が本当に島の人々から慕われていることを心から実感す
ることが出来ました。天気も良くドライブ日和で今日もとても良い 1 日でした。明日の朝は青瀬で漁師さんとの朝御飯を食べに出
かけます。 4 時 40 分出発なので早起きです。
4月6日 ( 金 )
実習先:診療所 ( 午前 )
診療所早起きをして研修医の先生と一緒に青瀬に向かいました。待ち合わせの 5 時 15 分になっても誰もいなく、風が強かったの
で漁は中止なのかなと思いました。数分後に続々と漁師さんが現れました。 5 時 45 分頃に漁に出発しました。夜明けの海がとて
も綺麗でした。漁の場所に着く頃には空が大分明るくなってきており、魚を狙った鳥たちも集まってきました。カモメがほとんど
でしたが、カラスとトンビも混ざっていました。鳥の種類によって魚の狙い方が違って面白かったです。獲れた魚はアジ、ブリ、
ヒラメ、エイなど様々で、この日は他の日に比べて大漁だったそうです。漁に連れて行ってもらったお礼と朝ごはんにむけて、魚
の箱詰めの手伝いをしました。しかし、実習開始時間に間に合わなさそうだったので途中で帰ることになりました。急いで診療所
に帰ったら、瀬戸上先生から「朝ごはんを食べるのも実習!」と言われました。患者さんや事務長さん、看護師さんからも「食べ
てくれば良かったのに」と声をかけられたので、ますます「漁師の朝ごはん」への想いがつのりました。次の実習生には是非、時
間を気にせず満喫してきて欲しいです。この日は実習が午前中だけだったのでお世話になった方々に挨拶をして終わりました。
遠隔医療実習記録
[ 症例 ]85 歳
女性
76
主訴:顔面打撲、鼻出血
18:30 頃トイレで右側に転倒し、鼻出血と右顔面腫脹を認めた。 20:10 手打診療所に救急車で搬入された。来院時鼻出血は止まっ
ていて、 CT で胸骨骨折、前頭洞・上顎洞に出血を認めた。右顔面の腫脹、疼痛があり、入院となった。右肘部位も腫脹があるが
屈伸可。転倒時は意識障害なく、 TIAや Adam-Stokes 発作も否定的。骨折については経過観察としているが、今回遠隔システム
で村永先生に治療方針の相談を行った。
感想
今回、 4 月 2 日から 4 月 6 日までの 5 日間の日程で下甑の手打診療所で実習をさせていただきました。病床もあるため、想像して
いたよりも大きな診療所でした。挨拶の時に瀬戸上先生から「手打診療所での実習は患者さんと話すことでたくさんのことを学
ぶ」ように言われました。ポリクリの実習でも患者さんと話すことでたくさんの事を学びましたが、実習中には他にも検査や診察
の仕方なども勉強しなければいけなかったので、今回のような実習は初めてでした。実際にこの 5 日間は、外来、入院患者さん、
そのご家族、往診先の方々など、たくさんの方との触れ合いがありました。お話をすることで、下甑に住む人々の生活も見えてき
た気がします。また、診療所に対する気持ちなどもきかせてくださいました。診療所で実習して感じたことの一つに医師、看護師
さん、事務長さんなどの診療所のスタッフの方々、患者さん同士の距離の近さでした。大学での実習中「チーム医療」という言葉
を多く耳にしましたが、ここでは意識しなくともそういうものが根付いているのではないかな、と思いました。私も短い期間でし
たが、その中に混ざって実習出来たことを本当に嬉しく思います。また、瀬戸上先生の声は周りの人に元気を与える声でした。先
生の「上等、満点!」が大好きになって、真似してみたりしました。私もいつかあんな風に自信をもって患者さんに声をかけられ
る様になりたいです。
最終日に皆さんに挨拶したときに、たくさんの方が「またお医者さんになったら来てね」と声をかけてくださりとても嬉しかった
です。手打診療所での実習はとても楽しく、是非また戻ってたくさんの事を勉強させていただきたいです。このような、大学病院
での実習とは一味違う経験が出来る地域・離島実習をする機会があって本当に良かったです。瀬戸上先生をはじめ、下甑島でお世
話になった方々に感謝します。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
有村
俊博
4 月 23 日(月)
8 時 45 分のフェリーで下甑へ向かい、 10 時 20 分下甑に到着する。そこからバスで 20 分、手打診療所へ向かう。宿泊施設に
荷物を下ろし、診療所事務の和田さんに近くのお店の場所や診療所の場所を教えていただき 11 時 30 分に診療所で瀬戸上先生か
ら説明を受け、実習開始する。午前中は瀬戸上先生と研修医の飯福先生との面談で終了する。
午後からは入院患者さんの体温、血圧、心拍数を測る。入院患者は 17 名であった。血圧計がデジタルではなく水銀血圧計であっ
たのでかなり初日は血圧を測定するのに時間をとった。上腕動脈の走行を思い出し、実際拍動を確かめ、触診法で収縮期血圧の見
当をつけて整脈音の出現、消失をとるというのをオスキーで勉強していたが、実際患者さんの血圧を水銀式血圧計で測定するのは
初めてだった。自分たちが学生で 1 週間実習に来ている旨を患者さんに伝えると、皆とても親切に対応してくださった。なかなか
音が行きとれず何度も圧を上げたり下げたりしたが多くの患者さんは不満など口にすることなく対応してくださったので 1 時間半
かかったもののなんとかやりとげた。リューマチ患者さんが一人おられて、マンシェットをまこうとしても肘関節が伸展せず血圧
の測定ができなかった。看護師の方にどうしたらいいか尋ねたところ、ゆっくり伸展させるとよいとのことだった。
その後は IT カルテを作成した。肺炎疑いで入院し血尿が認められた患者さん、腹部単純 CT で左
腎に大きさ40mm×60mmの低吸収域を認め、腎嚢胞を疑ったが、腎臓内科の先生の意見を聞くた
めに IT カルテを作成しようとする。しかし画像の取り込みがうまく出来ず、研修医の先生にも相
談するが取り込めずこの日は断念する。この作業に時間をとり外来見学は出来ず今日の実習は終了
する。
4 月 24 日(火)
8 時に朝食をとり実習が始まる。最初、昨日断念した IT カルテ作成を継続する。画像が取り込め
なかったのはまず DVD-R に画像を取り込むことができなかったことが一つの原因であった。そこで画像を DVD-R ではなく
USB メモリに保存して IT カルテにはりつけることを試みたが、パソコンのセキュリティ上 USB を差し込むことができず取り
こめなかった。単純腹部 CT を評価してもらうことが目的なので画像を送れないことには話にならないので私用のパソコンで取り
込み送ることにした。データはすぐ削除し情報管理はきちんと行った。 IT カルテ作成に時間がかかり外来のピーク時を過ぎてし
まいほとんど外来見学は出来なかった。昼食まで時間があったので外来でエコー実習を行う。研修医の飯福先生に心エコーや腹部
エコーを一通り教えてもらう。心エコーでは傍胸骨左縁長軸像、傍胸骨左縁短軸像、心尖部四空像を描出できるようになった。
昼食後は昨日と同様に体温、血圧、心拍数をはかり記録する。昨日の反省から検温しながら心拍数を測り、そして血圧を測るよう
に工夫する。リューマチで肘関節伸展が厳しい患者さんも今日は教えられたとおりゆっくり時間をかけて伸展させマンシェットを
まく。そのリューマチ患者さんとはコミュニケーションがとれず、ただ苦悶の表情を示すので力の加減の
注意しながら行う。ただ血圧を測るだけなのにいろいろ考えさせられた。この日は 1 時間ほどで測定し終
わった。
その後は学校検診で診療所にきた海星中学の生徒さんの血圧を測定した。 15 人くらいだが血圧に時間を
かけるわけにはいかないので集中して測定する。病棟の患者さんと比べ音がはっきりと聞こえとても測り
やすい。また病棟では収縮期血圧が 140~150mmHg の人が多いが中学生は 90~120mmHg で同じように
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測っては時間がかかると感じ、上げ幅も低めにした。 5 時に夕食をとってこの日の実習は終了だった。
4 月 25 日(水)
8 時に診療所につくとまだ診療時間ではないけれど、すでに患者さんがいらっしゃっていた。しかも待合室ではなく診察室で座っ
ておられた。尋ねると猫に引っかかれたらしく、左下腿にタオルをぐるぐる巻きにしており血が染み込んでいた。看護師もまだ来
ておらず、本人も落ち着いて受け答えできているので緊急性はないと思い、先生を待つように伝えた。しかし実際はかなり深刻で、
左下腿外側が50mm× 200mm 長方形状に表皮がめくれておりかなり出血していた。しかもめくれた表皮を患者自らはさみで切断
したらしかった。本来なら洗浄してめくれた表皮を戻して縫うことで完治するということだが、今回はそれができないため肉芽が
形成された後、腹部から表皮を切除し皮弁を形成することになった。また猫に限らずこういう場合は破傷風感染予防も行うことも
教えてもらった。
その後は降圧薬の処方がほとんどで学生が血圧を測定し、その後先生が診察するという流れだった。残念なことに瀬戸上先生は風
邪をひいて動けず先生の診察を見学することは出来なかった。
この日の午後は検温をいつも通りこなせなかった。血圧測定がなかなかうまくいかず 2 日連続で迷惑をかけた患者さんにこの日は
怒鳴られた。測定をお願いしたところ「どうせ測れんのだろう。もう嫌だ」といわれてしまい昨日まで何度も測りなおしたのが迷
惑だったことに気づき反省した。学生ということに甘えて時間をかけて何度測っても許されると思っ
ていたことを反省した。白衣をきて患者さんと向き合えばその人にとっては医師の立場とそう変わら
ないことを改めて知った。しかしこの点を除けば 30 分と短時間でこなせるようになった。外来見学
をしたのち患者が少なくなり、時間ができたので学生同士で採血実習をした。研修医の先生指導のも
と行った。若いので血管がはっきりみてとれイメージさえ作れば簡単だった。しかし高齢者になると
動脈硬化が原因で難しいらしい。その辺も意識して今後は採血見て行こう思う。 5 時で実習終了する。
4 月 26 日(木)
今日も 8 時に診療所で朝食をとり、患者さんの血圧を測定して先生に診察してもらう形式で外来見学をした。やはり高血圧の患者
が多く降圧剤の処方をお願いするのみの方が多かった。
9 時半から往診で瀬々野浦地区へ向かう。人数の関係で学生は先に事務の方と行って準備と血圧測定をこなした。研修医の先生が
数をこなすためにはどうしても 3 分診療にならざるを得ないとおっしゃっていたのが印象的だった。大学で教わった患者さんとの
コミュニケーションも時と場合によっては省略していく必要がある。またこの瀬々野浦地区診療所が Dr. コトー診療所の舞台で漫
画に描かれていたナポレオン岩、海岸の様子も見学した。
午後から診療所に来ることのできない高齢者のお宅を訪問診察した。一人暮らしで足腰が悪い患者さんがおられたが、処方された
薬を服用せず自己中断していた。痛み止めが効果がないのですべての薬を飲まなくなったとのことだった。血圧が高く降圧薬は必
要と説明したけれど本人はあまり分かっていないようだった。高齢者にどう薬を服用させていくか大切だと感じた。 4 軒ほど回っ
たがその他の家庭では民生委員の方やご家族の方のサポートがしっかりしていて薬の服用もきっち
りされている。 1 件目の場合も 2 週に 1 回の医師の介入ではどうしてもサポートが足りない。そう
いう高齢者に対してはサポートする体制作りを行政は構築する必要があると思う。
その後は片野浦地区で同様の診察をした。午後 3 時に終了し診療所へ帰る。その後は外来見学した。
その中で子宮筋腫の患者さんがいらっしゃって見学する。エコーでかなり大きい多発筋腫を確認出
来た。これから産婦人科を受診し、治療方針を決定する。 5 時まで外来見学をして今日は終了する。
4 月 27 日(金)
最終日、 8 時に朝食をすませ外来見学する。建設現場で資材の下敷きになり腸管損傷で手術をし、その後経過観察している症例を
見た。ここで遅発性イレウスという病態を教えてもらった。外傷後一定期間後に小腸が閉塞するというものであった。かなり稀有
な症例でこれを指摘したのはその時研修に来ていた 2 年目の研修医の先生だったとのことだった。診療している場所は関係なくそ
の人の技量次第で正確な診断が下せることを知る。風邪で療養していた瀬戸上先生も回復されて最後は離島医療の問題点、これか
らの展望などを話してくださった。
午前で実習は終了し午後からの船で帰宅する。
4.遠隔医療実習記録
【症例】 88 歳
女性
【現病歴】心不全、肺炎疑いで入院中に血尿を認め、血液検査でHb8.3(4/20)~7.5(4/23)の結果が出たため CT を施行した。左腎に
40mm× 60 mm の低吸収域を認めた。腎嚢胞を疑い腎臓内科、泌尿器科にコンサルトした。
【検査結果】血液検査WBC 7910, RBC 297, Hb 7.5, Hct 23.8, Plt 22.5,T-Bil 0.3, AST 21, ALT 17, LD 273, GT 22, ALP 205,
T-Pro 7.3,Alb 2.6, BUN 22, UA 7.1, Cre 1.8
【返信】腎嚢胞疑いとのことだったが腎臓内科の先生は尿管、腎盂の拡大が見られ水腎症が疑われるとの返信であった。また拡大
した腎盂に毛羽立った像が見られたのでそのレベルより下の像が欲しいとの希望があった。貧血はこの程度の変化は腎性貧血によ
るものと考えられ、急激な変化とは思われず今後の採血で変化をみて対応していく必要がある。この旨を研修医の先生に伝えた。
【 IT カルテ】
離島・僻地医療で一人であらゆる分野の疾患を見ていくのは難しい。
腎嚢胞を疑っているが、貧血の進行が気になるため、4/24に腹部単純 CT 写真を添付し専門医に相談した。同日に、もう少し上下
の CT スライスがほしいという返信があったため、追加の画像を送った。同日と翌々日に返信があり、①写真からするとシストと
いうよりは腎盂の拡大ではないか(水腎症)、②腎臓のレベルで、やや毛羽立った写真があり気になるため、可能であれば、腎臓
78
から下のレベルの写真がほしい、③貧血の程度としては、この 3 日間で急激には変化が無いので、腎不全による腎性貧血で、慢性
のものである可能性が高く、次の採血でこれ以上進まないようなら大丈夫だと思われる、④ Cre1.8 については、今までの腎機能
の推移と尿所見を見てほしい、ということであった。以上の返信を研修医の先生に伝え、慎重に follow していくこととなった。
感想
離島実習で 5 日間手打診療所にてお世話になった。初日から瀬戸上先生は風邪をひいていた。漫画
になり、そしてドラマ化もされた Dr. コトーを間近でみて話をきいてみたいと思っていたので少し
残念な気もした。しかしこのことで離島・僻地医療が抱える問題に気付いた。離島・僻地ではそこ
で中心となって働いている医師が体調を崩した時、学会等で長らく留守にする場合、代りになる先
生がいない。瀬戸上先生は 70 歳をこえ本来引退していてもおかしくない年齢である。
実習の最後に瀬戸上先生がこのテーマでお話をしてくださった。離島・僻地医療は鹿児島大学がこ
の先、日本でトップを走れる分野であること、しかし今回の瀬戸上先生のような状態になった時の体制が不十分であること、今も
この分野では長崎大学が先頭をはしっていることなど教わった。
長崎大学で何が行われているか調べた。
昭和 45 年に「長崎県医学修学資金貸与制度」、
昭和 47 年全国的に「自治医科大学派遣制度」が創設
→離島・僻地へ医師を派遣するための第一歩。奨学金を支給し離島僻地で勤務する医師を確保。また自治医科大学の学生にも協力
を求める。
昭和 53 年医学修学資金貸与制度による県養成医の離島勤務開始
→長崎県医学修学資金貸与制度利用した医師が勤務開始。機材もなければ人手も不足し困難を極めたようだった。しかしこれが礎
となり今日に生きている。
平成 3 年には離島医療情報システム(遠隔画像診断システム)が導入
→鹿児島大学で本格運用になったのは平成 19 年なのでかなり早期に導入されている。
平成 16 年「長崎県離島・へき地医療支援センター」を設置。
→初期研修制度改革で大学医局へ医師が戻され医師不足になった。常勤医を募集する。
平成 16 年長崎大学大学院医歯薬総合研究科「離島・へき地医療学講座」が開設
→離島医療専門家養成、学生教育、効率的な地域医療情報システムの開発など
平成 16 年から初期臨床研修が義務化
平成 17 年初期臨床研修医、大学院生に対する医師研修資金貸与制度
平成 18 年後期臨床研修医に対する医師研修資金貸与制度を創設
長崎も鹿児島と同様に人材不足、機材不足に悩まされていることがわかった。奨学金貸与や医療情報システム導入、初期研修での
離島僻地勤務の義務化などすでに鹿児島大学でも始まっているものばかりだが早くから行っている。私たち学生が今回参加してい
るこの実習も同様の形式で長崎も行われている。しかし離島医療講座について鹿児島大学は他大学に先んじて講座開設している。
だが長崎モデルを参考に鹿児島の離島僻地医療も進化してきたことは確かだと思う。
長崎には 57 の診療所があり常勤務医がいるものが 28 で円滑に行われていると記載されているがその勤務医が倒れたりした場合
の体制も調べてみたところ「しますっけっと団」というものがあり登録している医師は 9 名であった。派遣実績を見ると平成 23
年度は 6 診療所で 35 日間であった。内容が詳しく書かれていなかったのでどういう状況で何人の医師がどの期間代替診療を行っ
たかわからなかったが、これは機能しているようで研修医の数も増え欠損なく診療がなされていると。記載があった。
鹿児島ではどうかというと瀬戸上先生がおっしゃるにはまだそのあたりは不十分で体調を崩した場合、学会等で出張の場合 3 日休
むとすると一日おきに違う医師が派遣されてくるとのことで非効率であるとのことだった。調べが足りなかったのかどういう対応
をしているのかは分からなかったが、まだシステムが確立していないのかと思う。長崎のシステムにしても登録医は 9 名と少なく
まだまだ人材確保できてはいない。鹿児島も同じであるが、今回の実習で離島医療は思っている以上に面白いことに気付いた。研
修医の先生が 4 月に診察した症例ではサメに噛みつかれ外傷を負ったものや原因不明の意識障害で自衛隊に搬送要請をして市立病
院まで搬送した症例など市内の病院ではまず研修医が一人で対応することのないものばかりであった。瀬戸上先生もなるべく研修
医のみで対応するように指導していらっしゃるので否応なく力もつく。島ではあまり力がつかないというのは誤った考えだった。
そういう認識が持てたのも今回の実習で大きな収穫だったと思う。離島・僻地医療実習が平成 20 年に始まって 5 年目だけれども
こういう経験をすることで離島での医療活動を本職に考える人も増えると思う。少なくとも私は研修医でまた下甑手打診療所で研
修をしたいと思っている。離島・僻地医療に興味を持つ医師を増やすにはまず行って見てもらうのが一番と感じた。先入観を払拭
し、この分野で仕事をしてきたいと思う医師はこれから増えるのではないか。そのためにも今後もこのような実習を毎年やってい
くことが一番の近道と私は考える。
最後に瀬戸上先生、研修医の飯福先生、看護師の方々、事務の方々にはとてもよくしてもらい、充実した 5 日間を過ごすことがで
きた。感謝したい。
氏
名
矢野
圭輔
4 月 23 日(月)
実習先:下甑島へ移動(午前)、診療所(午後)
内容:診療所でお昼ご飯をいただいてから実習開始。入院患者さんの血圧・体温・脈拍測定を行った。そのあとは、入院患者さん
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のひとりの CT 撮影を見学し、画像診断を IT Karte を使って大学病院の先生に依頼しようとしたがうまくいかず、緊急性はなか
ったのでこの日は断念した(患者さんの詳細は「 4 .遠隔医療実習記録」に記載した)。そして外来を見学した。症例:高齢の男
性。左手首に硬い腫瘤を触れる。腫瘤は、可動性なく皮膚との癒着もない。痛みや痺れも特になく、全身状態は良好であった。ガ
ングリオンの診断で、注射針で腫瘤を穿刺しシリンジを用いて内容物を吸引する処置が行われた。内容物の性状は、透明で非常に
粘稠度が高かった。処置後、穿刺部の感染などなく、経過は良好である。
4 月 24 日(火)
実習先:手打診療所(終日)
内容:外来で実習。先生が行う診察の前に患者さんの血圧を測定しておく、という形で診療の手伝いをさせていただいた。その後
は学生同士で胸腹部エコーの練習をした。前日と同様に入院患者さんの血圧・体温・脈拍測定を済ませ、外来で中学生の健診見学
があり、そこで心電図の電極の付け方を勉強した。
4 月 25 日(水)
実習先:手打診療所(終日)
内容:患者さんの血圧を測らせていただきながら、外来を見学した。前日と同様に、エコーの練習をし、この日は採血の練習もし
た。入院患者さんの、病室から検査室までの車椅子を使った往復を、手伝わせていただいた。胸部単純 X 線撮影も見学した。症
例:高齢の男性。カラスの網にかかっていた野良猫を助けようとして、猫に逆上され、噛まれてしまった。右下肢背側(右ふくら
はぎ)に縦 15 センチ横 5 センチほどの大きな傷があった。創傷部位の表皮は、受傷直後はぶらさがって付いていたが、患者さん
本人がはさみで切り落としたのでなくなっていた。創を生理食塩水で十分洗浄したのち、褥創治療に用いるラップを用いて創部を
保護した。表皮が残っていれば、洗浄したのち表皮を縫合することで治癒が見込めたが、表皮が残っていないため、ラップ療法に
て肉芽組織ができるのを待って、植皮を行う。また、破傷風予防のための注射が施された。
4 月 26 日(木)
実習先:手打診療所、片野浦診療所・瀬々之浦診療所(巡回診療)、往診
内容:これまで通りの外来実習を終えてから手打診療所を出発し、瀬々之浦診療所と片野浦診療所への巡回診療に同行させていた
だいた。ここらでも全ての患者さんの血圧測定を行った。途中、家々を回っての往診があった。(また、道中、しんきろうの丘や
ナポレオン岩など、下甑島の観光名所を案内していただいた。)手打診療所に戻ってからは、再び外来で実習を行った。症例:中
年女性。ここ 1 ヶ月で、腹部が大きくなった。体重も増加しており、腹部に腫瘤を触れる気がするとのことで来院した。閉経はし
ていない。子宮筋腫か卵巣腫瘍が疑われるとのことで腹部エコーを行い、すぐに婦人科を受診することが勧められた。
4 月 27 日(金)
実習先:手打診療所(午前)、串木野港へ移動(午後)
内容:最終日も外来患者さんの血圧測定。また、逆流性食道炎による胸焼けが疑われた患者さんの胃カメラを見学した。本患者さ
んは、鈍的外傷後、遅発性にイレウスを来たし、胃と小腸の吻合術を施行された珍しい患者さんであった。スタッフの方々、入院
患者さんに挨拶回りを済ませ、バスと高速船で串木野港へ移動。実習の全行程を終えた。
遠隔医療実習記録
症例: 88 歳、女性。肺炎と心不全疑いで入院中。 4 月 22 日から血尿と蛋白尿を認めている(潜血 ++ 、蛋白+++)。血液検査
結果は、白血球数 7910 、赤血球数 297 万、ヘモグロビン 7.5 、ヘマトクリット23.8、血小板数22.5万であった。生化学検査では、
総ビリルビン 0.3 、 AST 21 、 ALT 17 、 LD 273 、GT 22、 ALP 205 、総蛋白 7.3 、アルブミン 2.6 、 BUN 22 、 UA 7.1 、
Cre 1.8 であった。
Hb が、 8.3 ( 4 月 20 日)→ 7.5 ( 4 月 23 日)で、貧血が急速に進行していると判断。原因検索のため、腹部 CT を撮影した
ところ、左腎に 60 ×40mm大の充実生の低吸収域を認めた。腎嚢胞を疑っている。
紹介医からの回答:腹部 CT 画像からすると、腎嚢胞よりも腎盂の拡大が疑わしい。貧血の程度は、 4 月 20 〜 23 日では急激な
変化とは言えず、腎不全による腎性貧血で、慢性のものの可能性が高い。誤差や輸液での希釈でも出る範囲なので、慎重に follow
する必要はある。 Cre 1.8 は、今までの腎機能の推移と尿所見はどうか、というのも注意するべきである。
ITkarte を実際の患者さんの診療で使用し、大学病院の先生方と直接連絡を取り紹介相談ができたので、その便利さや有用性を実
感した。しかし、紹介相談のメールを一通送信するだけでも、まず画像をアップロードし ITkarte 上に登録して、患者情報を入力
し紹介内容を書いて、登録された画像から添付したいものを選んで…といったように、踏まなければいけない手順が多すぎて時間
がかかってしまうと感じた。このような面倒な手順は、おそらく個人情報保護の観点からも必要なものであろうが、改善できるな
ら、送信に行き着くまでに開かなければならないページ数を減らすなど、もっと扱い易く時間のかからないシステムであって欲し
い。
感想
鹿児島一次医療系の概説講義で、瀬戸上健二郎先生ご本人からお話を聞かせていただいたこともあり、漫画「 Dr. コトー診療
所」を読んだこともあったが、実際に離島・へき地の現場へ赴き、離島医療を目で見て肌で感じたのは今回が初めてであった。普
段の臨床実習ではなかなかできない数多くのことを体験し、大変勉強になったと感じている。特に、実習期間中本当に多くの患者
さんのバイタル測定をさせていただき、実践的な知識が身に付いた。いくつか例を挙げると、①水銀柱血圧計を用いた血圧測定に
おいて、高齢者になると Korotkoff 音がなかなか聴こえない場合もある。②同様な血圧測定において、聴診器のチェストピースを
あてる前に体表から上腕動脈の触診を試みるが、収縮期血圧が180mmHg前後になるような高血圧の患者さんでは、その時点で脈
が力強く触れる。③とう骨動脈の触診にて脈拍を測ると、高齢者になると脈の触れ方が一定ではない(不整である)患者も少なか
らずいる。また、他に習得できた実践的な知識として、心電図の電極の付け方が挙げられる。中学生の健診を見学した際につけら
80
れるようになった。四誘導では、右手首に赤・左手首に黄・右足首に黒・左足首に緑をつける。胸部誘導では、 V1~6 はそれぞれ、
第 4 肋間胸骨右縁に赤・第 4 肋間胸骨左縁に黄・ V2 と V4 の間に緑・第 5 肋間の左鎖骨中線上に茶色・ V4 と V6 の間に黒・
V4 と同じ高さの左中腋窩線上に紫をつける。見学した翌日、入院患者さんの心電図検査があり、勉強したことを思い出しながら
電極をつけたら、綺麗な心電図波形を描出できたときは嬉しかった。患者さんが途切れ診察室が空いている時間には、採血・エコ
ーの練習もした。エコーはまだ、思った通りの画像が出せず、しかも画像を見ても所見が言えないので習得は不十分ではあるが、
こうした機会に練習することで、新たな問題点や疑問点が見えた。とりあえずもう一度、基本的なところから復習しようと思う。
瀬戸上先生が風邪をひかれ、診療所にあまり来られていなかった。直接ご指導いただく機会が少なかったのは残念だったが、先
生御自身もおっしゃっていたように「離島の医師が怪我や病気で診療ができなくなったときはどうするのか」ということは、離島
医療の問題点を考える上でのひとつのテーマであろう。代診を頼める医師がいるのか、いるとして円滑に代診が行われるシステム
が整っているのか。瀬戸上先生のお話では、以前よりは代診を頼み易くはなっているが、例えば 3 日間の代診を頼めば大学病院か
ら 1 日ごとに違う医師が来て診察を行うのが現状で、とても効率的で質の高い医療が提供できるとは言えない。
以前、「あれだけメディアで取り上げられ、 CT まで配備された手打診療所は、もはや離島・へき地の診療所ではない」という
言葉を聞いたことがあった。しかし、やはり手打診療所は間違いなく離島・へき地の診療所で、そこで行われるのは離島医療であ
ると感じた。その特徴は、まず、患者さんはほとんど高齢者で、高血圧症に対するコントロール薬を処方されながら、外来フォロ
ーあるいは往診にてフォローされている。重症度の高い交通外傷などはめったにないが、軽〜中等度の外傷は日常的によく見られ
る。一方で、入院中の患者さんや初診で診療所に来られた方の疾患に偏りはあまりなく、幅広いので、離島に限らない総合診察の
医療が求められる。実際の診療現場がそうであったように、きちんとした研修を行っている真面目な(実習期間中に診療所で勤務
されていた飯福沙織先生のような)人ならば研修医でもできることは多く、学生にとっても実践的な知識や手技が身に付く現場だ
と思うが、それはいつでも相談できて身近にいる上級医の存在あってこそではないだろうか。ご高齢になられても院長として勤務
されている瀬戸上先生のお姿を拝見し、結局ヒューマニズムに支えられている部分は少なからずあり今後も離島医療を続けていく
上で後継者をどう育てていくかが問題になりそうだと思った。『「困っている人を助けたい」というヒューマニズムこそ、医療の
原点である』という考え方に基づけば、離島医療は原点に立ち返って医療を学べるところだとも考えられる。自分のこれからの医
師としての人生の中で、もう一度離島・へき地の医療現場で研修・勤務したいと思う。
最後になりましたが、手打診療所スタッフの皆様、私達学生 3 名を受け入れて下さって本当にありがとうございました。診療の
現場においても、学生に出来そうなことには積極的に関わらせていただき、たくさんの有益な体験をすることができました。それ
だけではなく生活面の心配までして下さって、スタッフの皆様の優しさが嬉しかったです。大雨が降ったときは、わざわざスーパ
ーから宿舎までの道のりを車で送っていただいたことも、本当に助かりました。瀬戸上先生からは、天然物のぶりのお刺身をいた
だきました。研修医 2 年目の先生として勤務されていた飯福先生は、お忙しい中、エコーや採血の練習に付き合って下さり、そし
てときには学生を励まし素晴らしい相談相手になって下さいました。スタッフの皆様の心遣いのお陰で、初めての土地での実習も
不安や心配ごとがほとんどなく過ごすことができました。いつかまた、手打診療所に戻って、島の医療に貢献できたらと思ってい
ます。お世話になりました。ありがとうございました。
氏
名
山神
大
4 月 23 日(月)
8:45 高速船シーホークで下甑島へ
10:30 下甑島長浜港に到着。バスで移動。下甑支所前で和田さんと合流。宿舎へ案内され、荷物を運びいれる。その後、近くの雑
貨屋(2か所 ) の場所を確認し、手打診療所へ。瀬戸上健二郎先生、研修医の先生及びスタッフの方にあいさつし、そのまま外来見
学。
12:00 診療所で昼食(研修医の先生と)
13:00 入院患者さんの検温・脈拍測定・血圧測定 ( 所要時間 90 分 )
14:30 外来見学と ITKarte を用いた実習
17:00 診療所で夕食。帰舎。
その後、雑貨屋①へ。夜食を買い込み意気揚々と帰舎。風呂に入り、だらだらして就寝。
手打診療所
宿舎
雑貨屋①
4 月 24 日(火)
7:00 起床。 30 分程宿舎周辺を散策。手打浜・武家屋敷通り・新田神社を見て回る。
8:00 診療所で朝食。朝食後 ITKarte を用い症例①を相談。その後研修医控室でエコーの練習。
12:00 診療所で昼食(研修医の先生と)
13:00 入院患者さんの検温・脈拍測定・血圧測定(所要時間 45 分)
14:00 地元中学生の健康診断のお手伝い(血圧測定)。終了後、心電図の四肢誘導と胸部誘導の電極の付け方を研修医の先生に教
わる。
81
17:00 診療所で夕食。帰舎。
その後、雑貨屋②へ。夜食を買い込みにやにやしながら帰舎。風呂のお湯の出が悪く困りつつも、なんだかんだ就寝。
手打浜
武家屋敷通り
新田神社
4 月 25 日(水)
7:00 起床。宿舎周辺を散策。おふくろさんの碑を発見する。
8:00 診療所で朝食
8:30 ナースステーションで引き継ぎ
9:00 外来患者さんの血圧を測るお手伝い。その後、学生同士で採血の練習とエコーの練習。
12:00 診療所内で昼食(研修医の先生と)
13:00 入院患者さんの検温・脈拍測定・血圧測定(所要時間 30 分)。入院患者さんを検査室へ搬送。外来患者さんの血圧を測る
お手伝い。
17:00 診療所で夕食。帰舎。
帰舎後、夜食を求めて土砂降りの雨の中雑貨屋①へ走る。雑貨屋①で看護師 A さんに遭遇し宿舎まで車で送ってもらう。ありがた
くて、うれしくて、風呂入って、就寝。
おふくろさんの碑
エコー実習
採血の練習
4 月 26 日(木)
7:00 起床
13:00 個人宅へ往診( 4 軒)
8:00 診療所で朝食
14:00 片野浦出張診療所へ往診
8:30 ナースステーションで引き継ぎ
14:30 個人宅へ往診( 2 軒)
9:00 外来患者さんの血圧を測るお手伝い。
15:00 手打診療所で外来患者さんの血圧を測るお手伝い
10:00 瀬々野浦診療所へ往診(血圧測定のお手伝い)
17:00 診療所で夕食。帰舎。
12:00 瀬々野浦診療所近くの民宿「浦島」で昼食
帰舎後、また雑貨屋①へ。いつものように就寝。
しんきろうの丘
瀬々野浦診療所
ナポレオン岩
4 月 27 日(金)
6:30 起床。宿舎の片づけと掃除。
8:00 診療所で朝食
8:30 ナースステーションで引き継ぎ
9:00 外来患者さんの血圧を測るお手伝い。外来患者さんの胃カメラ見学。
12:00 診療所で昼食(研修医の先生と)
14:00 先生・スタッフにあいさつをして診療所をあとに。おみやげに、宿舎近くの吉永酒造で下甑の焼酎「甑州」を購入。長浜港
へバスで移動。
15:30 高速船シーホークで串木野新港へ。
17:00 串木野新港に到着。帰宅で実習終了。
遠隔医療実習記録
症例①
88 歳
女性
肺炎と心不全疑いで入院中。
4/22から血尿( 2 +)、蛋白尿( 3 +)を認める。
血液検査では、 WBC 7910, RBC 297, Hb 7.5, Hct 23.8, Plt 22.5,
生化学検査では、 T-Bil 0.3, AST 21, ALT 17, LD 273, GT 22, ALP 205, T-Pro 7.3, Alb 2.6, BUN 22, UA 7.1, Cre 1.8
Hb 8.3 (4/20)→ 7.5 (4/23)で貧血が進行している。
腹部単純 CT で左腎に 60x40mm 大の充実性の低吸収域を認める。
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腎嚢胞を疑っているが、貧血の進行が気になるため、4/24に腹部単純 CT 写真を添付し専門医に相談した。同日に、もう少し上下
の CT スライスがほしいという返信があったため、追加の画像を送った。同日と翌々日に返信があり、①写真からするとシストと
いうよりは腎盂の拡大ではないか(水腎症)、②腎臓のレベルで、やや毛羽立った写真があり気になるため、可能であれば、腎臓
から下のレベルの写真がほしい、③貧血の程度としては、この 3 日間で急激には変化が無いので、腎不全による腎性貧血で、慢性
のものである可能性が高く、次の採血でこれ以上進まないようなら大丈夫だと思われる、④ Cre1.8 については、今までの腎機能
の推移と尿所見を見てほしい、ということであった。以上の返信を研修医の先生に伝え、慎重に follow していくこととなった。
初めて ITKarte を使ってみて感じたこと
・相談の返信が考えていたよりも迅速かつ丁寧だったことに驚きました。相談する先生の都合にもよると思いますが、スピーディ
ーな対応に遠隔医療の頼もしさを感じました。
・Thinkなどの電子カルテと連動していれば、患者さんの病歴や検査データを打ち込む手間が省けてよいと思いました。しかし個
人情報保護の問題もあり、セキュリティー面の強化も必要だと思います。
感想
平成 24 年 4 月 23 日から 27 日までの 5 日間、薩摩川内市下甑手打診療所にお世話になり、離島医療実習をさせていただきまし
た。鹿児島県は離島や医療過疎地域が多いため、離島・僻地医療は鹿児島の今後の医療にとってさらに重要になると思います。そ
のようなプライマリケアを中心とする医療を学生時代に体験できたことは、これからの医療や自分の将来の進路を改めて考えるき
っかけになりました。
離島・僻地での医療は、医学だけでなく、保健・福祉・介護などの知識も必要で、全人的に人を診なければならない煩わしさを感
じていました。また相談できる医師も少なく、基本的にすべて一人で対処しなければならず、将来、離島・僻地医療に関わること
を考えると、とても不安に思っていました。
しかし、実際に患者さん宅へ往き、患者さんと話し、患者さん一人ひとりの生活を知ると、全人的に人を診るおもしろさを感じる
ことができました。また、診療所の限られた機器やスタッフでの医療に不安を感じていましたが、研修医の先生が一人でバリバリ
やっているのを見ると、一人でやらなければいけないという不安よりも、一人でやってやろうという意欲の方が大きくなりました。
さらに、今回初めて遠隔医療システムを使ったのですが、相談の返信が考えていたよりも迅速かつ丁寧で、遠隔医療の頼もしさを
感じました。
今回離島医療や離島での生活を体験してみて、新たに考えさせられることもありました。私が診療所でお世話になっているときに、
瀬戸上先生は風邪を引いておられて、出てこられない日がありました。診療所には研修医の先生がいたので医療は継続していたの
ですが、もしも診療所のスタッフが医療を継続できなくなったときに、変わりのスタッフをどうするのかという問題を考えさせら
れました。離島や僻地の勤務を強制する大学入試の地域枠拡大などの対策が必要だと思いました。
また実習をとおして、プライマリケアという医療の原点を感じることができました。しかし、これから離島・僻地医療が鹿児島の
今後の医療にとってさらに重要になることを考えると、プラマリケアは医療の原点でありながら最先端の医療であると感じました。
最後になりましたが、瀬戸上先生や研修医の飯福先生、手打診療所のスタッフの方々には大変お世話になりました。 5 日間という
短い間でしたが、大学では学べないことを学ばせていただきました。今回の実習で学んだことを忘れず、全人的に人を診られる医
療者になりたいと思います。ありがとうございました。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
上野
晃寛
5 月 28 日(月)
手打は 3 年ぶり 2 度目の訪問である。前回の訪問は、学士編入後約 1 年経過した頃であった。串木野から乗船する時に診療所に電
話し、事務長の和田さんの懐かしいお声を聞いた。
3 年ぶりの甑島は、深い藍色をたたえた海も、切り立った緑の崖も、少しも変わることがなかった。コミュニティーバスに乗るこ
と約 15 分、手打についた。和田さんのお出迎えで診療所に到着。
有難いことに、瀬戸上先生も看護師さんたちも、私のことを覚えてくださっていた。心なしかきれいになった院内のことをお手伝
いさんに尋ねると、地域ボランティアがクリーニングしたという。手打診療所ならではの話である。
3 年前は、前職の整骨の知識と、解剖がおわってはじめに習った循環器の知識ぐらいで臨んだ実習であったが、いつしか 6 年生と
なって一応すべての科について基礎知識は得た…はずである。 3 年前と見方がどう違うか自分でも楽しみである。
さっそく見学した外来にて、
症例1.
90 歳男性の発熱と dementia 、入院中の患者さんの精査である。頭部 CT 異常所見なし。発熱の原因が不明で咳も長引
いていたことから、本日胸部 CT を施行。胸膜の肥厚石灰化が下葉の一部にみられたが、採石等の従事歴もないことから加齢によ
る変化と考えられた。その他肺野に異常所見なく、抗生剤も効きはじめて解熱傾向にあることから、このまま経過観察することと
なった。 dementia も、熱発による一過性のせん妄だったのか話もしっかりされていて、戦時中の大陸での戦績をお聞きすること
ができた。
症例2.
68 歳女性。風邪の後の咽頭の違和感が残存、および右膝の疼痛。咽頭の違和感は経過観察。膝痛については、患者さん
の強い希望でヒアルロン酸を注射したが、「おお痛い」と大変痛がり、注射を希望したことを後悔されていた。
症例3.
60 代女性、右膝関節水腫。穿刺処置。
症例4.
70 歳男性、特発性食道狭窄により大学の 1 外科で治療されていた方。バイパス術後とのことであったが、一旦島に戻ら
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れて島で療養の予定である。本日は食道造影を施行し、狭窄はあるものの完全閉塞でないことが分かった。
症例5.
年齢・性別は不明。ご家族から、 dementia の患者の成年後見制度に関する診断書のご相談。生老病死の一続きが、島の
診療所にはある。
症例6.
87 歳女性、昨夜完全房室ブロックがあり、アダムス・ストークス発作を起こし鹿島診療所から入院依頼されてきた患者
である。関西にいるご子息が迎えに来るまで入院することとなった。入院前の ECG では典型的な完全房室ブロックを呈し、 HR
はわずか 36/ 分であった。ペースメーカーの絶対的適応である。
5 月 29 日(火)
午前の外来
症例1.
12 歳女性、昨夜からの左側腹部痛である。尿意を感ずるも尿量は少なく、徐々に側腹部が痛くなってきたとのこと。瀬
戸上先生に予診を命じられ、どぎまぎしながらもOSCEを思い出して一通り予診する。末血、 CRP と尿検査をするよう指示を受
けたところで、南風病院からの研修医である松田先生に引き継いだ。残念ながら尿は出なかったが、膀胱炎の疑いにて抗生剤投与、
経過観察する。
症例2.
数年前に来られた、外傷後の遅発性十二指腸イレウスについて瀬戸上先生のミニレクチャー。学会報告するような珍しい
症例も、島では時にみることがある、とおっしゃっていた。
症例3.
24 歳女性、子供とともに溶連菌感染後の再検査。咽頭ぬぐい液採取。
症例4.
62 歳女性、昨夜転倒した模様で、前頭部打撲にて施設から搬送された。前頭部がコブダイのごとく腫れている。 black
eye やBattle兆候は、現時点では認めない。
もともと小児麻痺があり意思疎通もやや困難な患者さんであったが、頭部 CT 撮像のため CT 室に搬入した。ところが…
あれこれ手を尽くして抑制をかけるが、ジスキネジア様の動きが一向に収まらない。何を言ってもじっとすることができない。や
むなく点滴を流し、挿管やマスクの準備までしてセルシンを5mg使うこととなった。5mgずつ 3 回投与したが、結局動きは治まら
ず、ブレブレの CT を読影する羽目になった。ともあれ、 CT 上明らかな骨折や頭蓋内出血はないが、大事をとって入院となった。
ナースステーション横に急ごしらえで床に寝られる部屋を作り、そこへ入室した。来院から 2 時間近くたっていた。
症例5.
13 歳女性、原因不明の(?)左手首切創である。松田先生が直ちに縫合したが、瀬戸上先生曰く「リストカットだね」
との事だったので、見学は遠慮した。聞けば、まだ若い母親が結腸癌の末期とのこと。
昼食をいただこうと思って二階に上がったら、昨夜鼻出血が止まらず入院した 60 代の男性が、昼食をとったとたんにまた出血し
始め、瀬戸上先生が止血にかかっていた。「手打式」という、串団子状に綿球を連ねたものを挿入し、しばし圧迫。 10 分… 15
分。まだ止まらない。見ている私の集中力が途切れかけたのが先生に伝わってしまったのか、先生が「こういうとき大事なのは、
気力と体力。何が何でも止めてやるんだという気力と、それを可能にする体力なんだよ」とおっしゃって、どきりとした。私は学
生としては大分年増であるけれども、先生から見れば子どもの世代ほどに若い。にもかかわらず、集中力が 15 分も持たなかった
ことを恥じた。
昼をゆっくりいただいて下におりると、午後の外来が始まるところだった。
症例6.
68 歳男性の下腹部痛。心窩部の不快感で昨日来院したが、胃腸薬と下剤投与で経過観察していた患者である。腹部 CT
施行したが明らかな消化管病変が見つからない。回盲部に dirty fat sign があるとかないとか、結石らしきものがあるとか学生同
士で議論していると、「 IT Karte でやってみなさい」との瀬戸上先生の指示で、さっそく処理に取り掛かった。講習を受けたの
は私一人なのだが、ジェネレーションギャップか、あとの二人のほうがサクサクとコンピュータを操作している。忸怩たる思いで
いると、さきほどの鼻出血の患者さんが再度出血し始めた。やや心配性なキャラクターもあって、本人の不安感も強いことから、
ヘリ搬送を要請することとなった。救急車に患者さんを乗せ、近くの中学校まで搬送してランデブーするという。
まさかヘリ搬送まで体験できるとは思わなかった。到着後 5 分もしないうちにヘリのローターの音が聞こえてきた。市立病院か
らの、意外に小ぶりなドクターヘリは、島の中学にふわりと着陸した。デモでなく実際の搬送であるから、はしゃぎたいのを必死
にこらえて患者を見送った。
症例7.
ヘリ搬送から帰ってくると、 5 歳男児が肘の骨折疑いで来院していた。転んだあと右ひじを痛がっている。肘内障の疑い
が濃厚とのことであるが、先生が数回整復操作をするも痛みがやまない。レントゲン上明らかな骨折はないが、橈骨近位部は骨端
線ではっきりしない。応急の固定をして整形を受診することとなった。肘を直角で固定してあげて、ということで、昔取った杵柄
で湿布とアルフェンス固定させていただいた。
5 月 30 日(水)
午前中
一昨日入院した完全房室ブロックの女性、昨夜から体調を崩し、今朝から背中を痛が
って食事もとれないという。心血管系のイベントを疑い、胸部 CT を施行する。単純 CT の限界はあるものの、胸水以外明らかな
大動脈解離など異常はなかった。痛みの出方から、アダムス・ストークス発作時に脊椎を痛めた可能性も考慮したが、 CT および
単純 X 線でも圧迫骨折はなかった。
外来では、
症例1.
51 歳男性の右母指腫脹。数日前釣りに行き、何かを刺してから腫脹してきたという。場合によっては切開の可能性もあ
ることを説明し、抗生剤投与する。
そうこうするうち、昨日の下腹部痛の男性が明瞭な腹膜刺激症状を呈し始めた。瀬戸上先生が別途依頼していた読影依頼の返事
が来て、壊疽性虫垂炎の疑い濃厚とのこと。急きょ午後に手術と決まった。
わずか 5 日間の離島実習で、ヘリ搬送と緊急手術が体験できるのは、わがグループくらいである。「引きが強い」のは誰なのだ
84
ろうという話になった。
午後からのオペに備えて定時に昼食をとり、恒例になった午後 1 時の入院患者のバイタルチェックを済ますと、下では瀬戸上先
生が入院患者の皮膚腫瘍を切除していた。我々がバイタルチェックを済ませた患者から下に呼んだらしい。計 2 件、独特の器械結
びで皮膚癌らしきものを切除した。すき間時間をうまく使ってさっと仕事を済ませるところは、さすがである。
オペのほうは、鹿島診療所から応援の知念先生を呼んでいるので、到着次第の開始である。 1 月以来のオペとのことで、看護師
さんらがバタバタと準備をすすめる。
午後 2 時過ぎ、手術開始。読影でも虫垂が同定できないほどであったので、腹膜を開けると案の定大量の膿が出現した。癒着が著
しく、直腸膀胱窩まで膿瘍が広がっていた。虫垂炎ではないのか?と迷いつつ、回盲部を切り分けてゆく。もしかすると憩室の穿
孔かとも思われた。ろう孔と思われるところから造影剤を入れると、結腸が写った。変形してうねった虫垂を切除し、ろう孔を閉
じた。オペ室に患者家族を呼んで概略を説明し手術終了。術前から出現していたイレウスが、術後も続くことが何より気がかりだ
という。瀬戸上先生も「こんなにひどいのは一生に一度遭遇するかしないか」とのことであった。患者の奥さんと思われる女性が、
瀬戸上先生に手を合わせていたのが印象的だった。
ビッグイベント満載の 3 日目を終了しようかという頃、午前に CT をとった患者さんの容体が不安定で、 VT を連発するようにな
ったとのこと。もともとアダムス・ストークスを起こして倒れ、自分で気づいて起きたような独居老人である。関西にいる息子さ
んは緊急性が今一つ飲み込めていないらしく、「 6 月まで持たせておいて」と言っているらしい。それまでもつのかどうか。地方
の独居老人と都会の子ども。ここにいる限りにおいては孤独死こそ避けられたものの、この国が抱える大きな問題が垣間見えた。
5 月 31 日(木)
いつも通り 8 時 30 分に夜勤の看護師さんから日勤への引き継ぎに参加する。相変わらず、房室ブロックの患者の容態は不安定だ。
朝のフェリーに合わせて、南風からの松田先生も 1 カ月の研修を終えて帰ってしまい、しかも今日は瀬々野浦・片野浦への巡回診
療日である。何かあったときは、瀬戸上先生おひとりである。考えてみれば、先生が島にいらしてからずっとこの状態であったの
だ。先生の背負ってこられた重圧を思うと改めて頭が下がる。
出発前にさっと回診を済ませる。件の患者に自身の容態を説明する。やはり、息子が迎えに来るまでここでよいという。さもなく
ば、息子の嫁の実家がある九州の北部に行って手術してもよいという。どう考えてもそこまでの道中が持ちそうにない。そのこと
を説明しても、患者の決意は固かった。瀬戸上先生も、直ちに息子さんに迎えに来てもらって関西で手術を受けるか、すぐに鹿児
島で手術するかを、ゴリ押しすれば通せそうな雰囲気ではあったが、なぜかそれ以上強くおっしゃることはなかった。
先生の運転するカローラで、まずは瀬々野浦に向かう。ナポレオン岩とも 3 年ぶり
の再会である。山道を越える頃、重い曇天がにわかに晴れてきた。
診療所へ着くと、まるで公民館にスターがやってきたかのように患者さんたちが先生を迎え入れる。ほとんどは、高血圧などの慢
性病の管理のみであるが、先生の到着を 1 週間待ちわびていた患者さんは、最近起きた膝痛などの症状を先生に訴える。
我々は血圧測定係である。血圧計 2 台に学生 3 人なので、私は主に患者さんの呼び出し係として、血圧測定と診察の各所で渋滞し
ないよう調整した。別の車で来た看護師さん・事務員さんたちは薬の処方と会計で大わらわである。
30 人余りの患者さんの診察・処方を終えると、成年後見人関連の相談を受けていた独居老人の元へ向かう。 HDS-R を携え公営
住宅の一室へ。錆びて閉まりの悪くなったドアを開ける。
出迎えた患者は、
症例1.
84 歳女性。先生の話では、以前は歩けなかったとのことであるが、身ぎれいに室内を整え愛想よく迎えてくれた。世間
話に続いて、 HDS-R を試みる。名前、生年月日は完答。しかし…日付、物品想起になってくると答えに詰まる。アルツハイマー
によくみられる繕い反応もある。馴染みの先生から投げかけられる奇異な質問の数々に、患者の笑顔が消えた。重苦しい空気が流
れる。
結果は 4 点。我々が同席したことで患者の緊張を強めてしまった感はあるが、認知症は明らかだった。瀬戸上先生は、答えられず
に焦り落ち込む患者を軽くなだめて、患者の家を後にした。
民宿でおいしい昼食をごちそうしていただいた後、往診を一軒済ませて片野浦へ向かう。片野浦でも同様に巡回診療を済ませ、診
療所へ戻った。毎週毎週休むことなく続くこの仕事に、改めて敬服した。
6 月 1 日(金)
あっという間に実習最終日になった。前回も感じたが、島にいると 1 日 1 日は長いが 1 週間はあっという間に過ぎる。多分、 1 か
月や 1 年も、こうしてあっという間に過ぎてゆくのだろう。唯一心残りだった「きびなごを食べる」という目標は、この朝の看護
師さんの差し入れによって達成された。前日に差し入れていただいたデコポンも香りがよく甘かった。
完全房室ブロックは、いよいよ危険な状態になってきた。腕を動かすだけでも気分が悪くなって吐きそうになる。ちょっと体動す
るだけで、モニターの心拍は 190 ~ 200 を示した。瀬戸上先生が本人にヘリ搬送の可能性を話すと、あれほど固かった患者の意思
があっさり覆った。とにかく楽になりたい、搬送してよいという。関西のご子息はすでに先生が呼んだのか、こちらへ向かってい
るという。島でなく、市立病院へ向かうよう連絡する。
午前の外来
症例1.
81 歳男性、食道癌術後 10 年程度経過した患者の嚥下困難。ガストログラフィン施行し、吻合部の下側に狭窄が認めら
れた。近々内視鏡を行うこととし、ここ 2 、 3 日食事がとれないので今日は点滴をする。針を刺させていただいたが、残念ながら
血管から外れ、「○○さ~ん!」と、ベテラン看護師を呼ばれてしまった。
要請していたヘリが間もなく来るという。外来患者はお待ちいただき、ランデブーポイントの中学校に向かう。窓から中学生たち
が鈴なりになって見ていた。平均すると年 4 回というヘリ搬送に、 2 回も巡りあってしまった。今回は、当然ながら前回の鼻出血
85
より危険な状態ということで、市立病院の先生も前回より厳しい表情である。搬送中に致死的な発作を起こさぬよう祈りつつ、ヘ
リを見送った。
帰ってくると、患者さんが大勢待っていた。ただし、都市部の病院のようにイライラしながら待っている患者は誰一人もいなかっ
た。
症例2.
73 歳女性、高血圧の治療中。久しぶりに ECG をとる。学生が導子をつけ、記録。異常なし。
症例3.
81 歳女性。円背( ++ )、腰痛が増強し来院した。腰部レントゲン 2 方向撮影の結果、典型的な骨粗鬆症像を呈してい
る。エルシトニン筋注した。
症例4.
80 歳女性、陳旧性の肺結核および気管支拡張症・肺アスペルギルス症の経過観察で CT 撮像。ファンガスボールは明ら
かに縮小しており、経過良好と思われた。
市立病院から連絡があり、無事に病院に到着したという。瀬戸上先生は、患者のご子息に「元気になったら島へ帰してあげてくだ
さい」と頼んだとのこと。無事に手術が終わって、あの患者さんが帰ってくるのを見届けたい思いを置いて、島を後にした。
IT カルテ実習記録
壊疽性虫垂炎疑いの患者の CT に、以下の文面をつけて総合診療部・村永先生あてに送った。返信の確認は、実習終了までに間に
合わずできなかった。
「このたびはお世話になります。昨日心窩部の不快感を訴え来院しましたが、下剤、胃薬にて経過を観察しておりました。本日昼
食後から急激な下腹部痛を訴え再度来院されました。38.1度の発熱があり、採血の結果 WBC の上昇( 15820 )と CRP の上昇
( 7.0 )があります。現在軽い便秘がありますが、下痢はありません。腸蠕動音は低下しています。触診にて(右)下腹部に強い
圧痛を認めます。
既往歴:逆流性食道炎、便秘症、脊柱管狭窄症貴科的御高診よろしくお願い申し上げます。」
感想
ここに来るたびに、瀬戸上先生のお人柄と、先生・診療所スタッフ・島民の関係に魅了される。もし今、医師免許があればここ
に残って、しばらく先生にご指導いただき、猫の手ぐらいの役には立ちたいという気持ちにかられる。一方で、先生やスタッフが
行政や島民とともに長年かけて作ってきたこの診療所に、安易な気持ちで居残ってはいけないということも強く感じる。
今回、ドクターヘリを 2 回要請し、準緊急手術もあった。ヘリのうち 1 件は止血困難な鼻出血であった。「鼻血でヘリ搬送」と
いう言葉だけを聞けば、なんと大げさなと思う。実際、他の診療所から市内へ送った患者は、入院先からすぐに外出し、「なんで
あんな症状で送ってきたんだ」と言われたそうである。
しかし、ここは本土から比較的近いとはいえ離島である。鼻出血とて、止まらずに出続ければ重篤な状態にならないとは限らない。
なにより、タイミングを逃すと島から出られなくなる、ということからくる患者の不安感は計り知れない。どんな田舎でも、陸続
きのところとは条件が違うのである。
搬送後に瀬戸上先生とお話ししたとき、「搬送の際、離島の事情をなかなか理解してもらえないことがある」とおっしゃってい
た。ヘリコプターというハードも整い、自衛隊ヘリより手続きが簡単なドクターヘリも運用が始まったが、肝心の、送り手と受け
手の意思の疎通が必ずしも十分でないというのは、何とももどかしい思いである。
もう 1 件のヘリ搬送症例では、手術も拒んで、ここにしばらくいるという患者の意思が、突如翻った。先生の、「パターナリズ
ムはよくないとかなんとか言われているけれど、患者のホントの意思などというものは状態が悪化したりして追い詰められないと
出てこないものなんだ。そのとき医者がどういう風に患者に接するかだ」という言葉が耳に残る。離島という環境で、生と死のぎ
りぎりの判断を幾度となく迫られてきた先生だからこそ、実感として言える言葉である。
専門医制度についても、離島医療の視点からは必ずしも好ましくない部分がある。各分野ごとに特化した医師が養成されることは、
それはそれで素晴らしいことではあるけれども、細分化した専門医だけになってしまったら、離島やへき地の医療はどうなってし
まうのか。特定の医療行為についてそれぞれ別途に資格を取得しなければならなくなったとしたら、それこそ離島では何もできる
ことがなくなってしまう。
社会がどんどん複雑化するに従い、実質的になんの問題もないことなのに、手続き上支障があってできないとか、各種法令や制度
に対するコンプライアンスを重視するあまり身動きが取れない、ということが増えているように思う。社会がそれだけ成熟した証
拠だ、という向きもあるが、一方で、四角四面の決まりごとにとらわれて、人間が本来持っている能力や活力が失われているとし
たら、それはそれで残念なことである。
離島だから何でもあり、離島医療は本土の医療とは別物、などという気はない。しかし、離島という環境では、医療に限らず、各
人ができることは何でもこなす、こなさざるを得ないという事情がある。もともと、人間はそうして生活してきたのではないか。
先生がこれまで歩んでこられたように、島での医療の限界を常に冷静に心に置きつつも、専門以外のことも進んで勉強して果敢に
挑み、治せる患者はここで治すんだという姿勢に、医師の原点、医療の原点を見る気がする。
最後に、瀬戸上先生をはじめ、診療所の皆さん、貴重な体験をさせていただいた患者さん、島の皆さんたちに、心からお礼を申し
上げたい。
氏
名
山田
洸夢
5 月 28 日(月)
実習先:診療所(午前 ~ 午後)
天気は快晴。特に問題もなく定刻に到着しました。荷物を置くために宿舎へと向かう。そこでまず、宿舎の綺麗さに驚く。直前の
数週間をすごしていた場所が風呂トイレ共同で築数十年の所だった私としてはこんなにも素晴らしいところで寝泊りできるのがあ
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りがたくて仕方がありませんでした。なんたって、トイレがウォシュレット。和式から三段階くらいのレベルアップです。ここは
天国ですか。といった本筋とは関係ない部分での興奮を必死に抑えつつ診療所へと向かう。診療所ではまず瀬戸上先生とお会いし、
挨拶をさせていただきました。お話をしている途中で患者さんが来たという事で外来見学へ。数人見たのちに昼休み。午後は入院
患者さんの検温、血圧測定をしつつ外来見学。小児の予防接種も数件ありました。
症例 1 :女性。風邪っぽく、咽喉が痛いとの主訴で来院。ただ、そちらよりも「最近歩くと膝が痛い。」という訴えの方が強かっ
た。膝にヒアルロン注射をしてほしいとのこと。先生は必要なしと判断するも、患者さんの訴えが強かったため処置を行う事とな
った。
症例 2 : 70 歳男性。
症例 3 : 87 歳女性。昨晩失神し頭を打ったという事で来院。心電図検査にて、Ⅲ度の完全房室ブロックと診断される。失神はそ
れによるアダム・ストークス発作と考えられる。現在独居。関西に子供さんがおり、来月そちらに行くという話も出ている。入院
しておとなしくしておけば治るから、ペースメーカーの使用はしない、と拒否。入院し、薬物治療にて経過観察となる。
5 月 29 日(火)
実習先:診療所(午前 ~ 午後)
内容:午前中は外来見学。途中何人かの患者さんの血圧を測らせていただきました。今日は何かと忙しく気がつくと昼休みになっ
たという盛りだくさんな半日でした。午後になり病棟業務 ( バイタルチェック ) を行ったり、外来を見学したりしてすごしている
と、昨日の夜に入院した患者さんの鼻出血が止まらないという話が。それが入院後に何度もあったことや、患者さん自身の不安も
強いという事で本土に搬送という事になりました。搬送…そうです、ドクターヘリの登場です。 ( こういった言い方は患者さんに
は申し訳ないのですが、 ) 実際にヘリでの搬送を見る事ができたのは貴重な体験でした。飛んで来る様、飛んで行く様はとても頼
りがいがあるもので、将来医師になった際に一度は乗ってみたいという想いが生まれました。そんな事を考えながら診療所に戻る
と、雲梯から落ちたという男の子が。結果として本当に盛り沢山な一日だったのでした。
症例 1 : 12 歳女性。主訴:左腹部痛
昨日の夕方から痛かったが我慢ができた。今日の朝起きると痛みが増していた。金曜日ご
ろから尿があまり出ていない。エコー上は膀胱に尿がたまっている以外は特記事項なし。検尿検査は尿が出なかったためできなか
った。抗生剤を処方し経過観察。
症例 2 : 62 歳女性
夜間に転倒し前額部を打撲。施設に入所の方。表情はよく、鼻血も出ていない。脳内出血、骨折の有無を確
認するために CT 撮影を行うも落ち着かず撮影に時間がかかった。画像上は出血、骨折ともに確認できず。鎮静に時間がかかり、
セルシンを使用したこともあり入院となった。
症例 3 : 12 歳女性
主訴:左手切創
本人いわく、「一昨日の寝る前に怪我をした。」とのことだが具体的にはよく覚えていな
いとのこと。他にも同じような傷があり、リストカットとも考えられる。傷口を縫合し帰宅させた。
症例 4 :60~70代男性
主訴:鼻腔出血
28 日の夜に入院。僧房弁の手術を数年前に行い、現在バイアスピリンを服用中。今ま
でにも何度か鼻出血があったが今回ほどではなかった。入院後も数回出血が止まらず、本人も不安が強いため耳鼻科受診をさせる
ことに。市立病院耳鼻科へと転院が決まりドクターヘリにて搬送となった。
5 月 30 日(水)
実習先:診療所(午前 ~ 午後)
内容:午前中は入院患者さんの病室移動を手伝ったり、CTを撮ったりして過ごしました。と、瀬戸上先生から、「はい、こ
れ。」とプリントを渡されました。それは昨日腹痛で入院した患者さんの画像を本土の先生にコンサルトしていたものの返書で、
診断は『壊疽性虫垂炎疑い』となっていました。瀬戸上先生も異論がないという事で、午後からオペをすることになりました。手
打診療所で 2012 年に入って二度目の手術に立ち会えることになり、ドクターヘリといい今回の実習では本当にいろいろなものが
見学できてありがたい限りです。虫垂炎の手術を行う前に、皮膚癌疑いの患者さんの皮膚切開術も 2 件行われました。外来でサラ
ッとやっていたのが印象的でした。そして虫垂炎の手術です。大学での手術と違って道具や機材も万全とは言えない状態での手術
で、虫垂炎なのかはっきりしない ( 憩室炎? ) という状況でしたが、無事に終える事ができました。そして大学との一番の違いは
手術室に窓があるといったところでしょうか。
5 月 31 日(木)
実習先:診療所( ~10:00 )、往診( 10:00~ )
内容:午前中に入院患者さんの回診や外来を数人見たあと、 10 時から往診へと出発。まずは瀬々野浦へと向かいます。途中の道
はまさに山道といった曲がりくねり具合、そして幅の狭さで事故が起きないのかと不安になりました。そして瀬戸上先生が運転し
てくださったのですが、意外と峠を攻めるタイプだったというのが印象的でした。さて、瀬々野浦につくと診療所にはすでに沢山
の住民の方が。「来るのが遅いよー」という声とともに歓迎されつつ診察スタート。学生 3 人で手分けして血圧を測りつつ先生が
診察をするという形で進めていくこととなり、チームワークが良かったせいか結構早い段階で患者さんの診察が終了。その後は認
知症の可能性がある方の家に長谷川式評価法を行いに行くこととなりました。評価の結果は認知症という事になりそうでしたが、
学生が同席したせいで少し緊張もしていたようで、実際はもう少し高く点数が出たのかもしれません。ただし、独居という事もあ
り、これからの生活が心配でもあります。こういった患者さんの今後の生活をどうするかというのも私たちが考えて行かねばなら
ないのだという風に認識しました。その後、大変おいしいお昼ご飯を頂いた後にもう一軒往診をし、片野浦へと向かいました。途
中は、有名な蜃気楼の丘で写真をとらせていただいたりしつつ到着。私たちの先輩はここを歩いて往診していたのかと思うと頭が
上がりません。片野浦でもすでに患者さんたちは到着しており、先ほどと同じように診察を進めていきました。瀬々野浦でも片野
浦でも、診察が終わった後に患者さんたちが楽しそうにお話をしていたのが印象的で、週に一度の往診の場が地域の交流の場にも
なっていると感じました。その後手打診療所に戻り病棟業務などをしながら時間は過ぎていきました。
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6 月 1 日(金)
実習先:診療所(午前)
ついに最終日となってしまいました。思えばあっという間の一週間でしたが、ヘリ搬送といい手術といい濃密な一週間だったなぁ
と考えつつ、最終日もしっかり実習をしようと気合を入れてスタート。とはいえ 3 時の船で帰らねばならないので午前中だけ。最
終日は密度で勝負です。朝の申し送りでは、月曜に入院した完全房室ブロックの患者さんが夜中に発作が何度も起きていたという
話が出ました。実際に申し送りしている際にも発作が起こっており、今日の様子次第ではヘリでの市立病院への搬送も考えて行か
なければいけないだろうという事に。その後は外来を主に見学していたのですが、昨日は往診で外来はあまりできなかったという
事もあってか患者さんの数が今週で一番多かったです。そういう話をしていると、件の患者さんの発作が出たという連絡が。瀬戸
上先生の判断によりドクターヘリでの搬送が決まりました。普通なら年に 4 回程度しかないというヘリ搬送でしたが、なんと今週
は 2 回もあったという事に。僕たちにとっては良い経験ですが決して良い事ではないのでしょう。ただ、いざという時に 15 分で
( 手続等の時間も考えると実際は 1 時間以内で ) 鹿児島まで飛べる手段があるというのは離島で医療を行っていくうえでとても心
強いものになると感じました。無事引継ぎをしてヘリは離陸。その後の連絡では無事に到着し、午後にでもペースメーカー埋め込
みを行うという事でした。診療所に戻るとさらに患者さんは増えており、食道狭窄症の患者さんや、骨粗鬆症の患者さん、肺結核
後遺症の患者さんなどの画像撮影なども行いながら外来は終わっていきました。やはり今週で一番忙しいものとなり、私たちがや
れること、やらないといけない事も多く、今週の総括としてふさわしいものとなりました。その後、先生や職員さんに挨拶をし、
手打診療所に別れを告げることに。幸い天気にも恵まれ、無事串木野に船も到着し、一週間の離島実習は終わりを迎えたのでした。
4 .遠隔医療実習記録
【患者】 68 歳男性
【主訴】腹痛
【症状と所見】体温:38.1℃。下腹部痛。触診にて圧痛を確認。腸蠕動音低下。単純 CT にて胆嚢に高吸収域、右下腹部に高吸収
域 ( 結石? ) を確認
【遠隔システムを用いた相談内容】
『昨日心窩部の不快感を訴え来院しましたが、下剤・胃薬にて経過を観察しておりました。本日昼食後から急激な下腹部痛を訴え
再度来院されました。
38.1℃の発熱があり、採血の結果 WBC の上昇 (15820) と CRP の上昇 (7.0) があります。現在軽い便秘がありますが、下痢はあ
りません。腸蠕動音は低下しています。触診にて下腹部に強い圧痛を認めます。
既往歴;逆流性食道炎、便秘症、脊柱管狭窄症』
使ってみて有効であった点:遠隔地にいる先生に意見を求めやすい。 ( 気軽に紹介できるという精神的な意味も含めて。 )
意見を求める際に画像を送るのは言うまでもなく重要であるが、画質を落とすことなく、ほぼリアルタイムで行えるのは有効だと
感じた。
新たに追加もしくは改善して欲しい点:とはいえ画像の添付の仕方が煩わしかった。電子カルテが入っているパソコンはインター
ネットに接続できない場合が多いと思われるので、 IT カルテに画像を取り込む際には USB メモリなどを使う必要が多くなると
思う。そうでない方法もあったのかもしれないがその方法以外はよくわからなかった。そして返事が返ってきたのか確認できなか
った。返事があったのか、見方がよくわからなかっただけなのかはわかりませんが…
5 .感想
瀬戸上先生の患者さんに対する接し方を見ていて私は、先生は、患者さんを説得する必要がある際には、患者さん自身の内側から
そういった意見が自然に出てくるようにしているようにしているのではないかと感じた。たとえばやる必要はないと言っているに
もかかわらず、どうしても膝にヒアルロン酸を注射してほしいという患者さんに対しても、「絶対に駄目だ」と断るのではなく、
最終的には打ってあげていた。結局患者さん注射によって余計に足が痛くなっており、やっぱりやめておけばよかった、と言って
帰って行った。その姿を見て、きっとこの患者さんは無理にしなくても良い治療をどうしてもしたいという事だろうなと感じたの
である。離島のような場所では患者さんとたびたび衝突するわけにもいけないだろうし、こういったことが、地域で強い信頼を受
けることへとつながり、円滑に医療を行っていける理由なのだろうと感じた。もちろんこういう事を行うためには深い知識と経験
が必要だろう。実際に完全房室ブロックの患者さんもはじめはペースメーカーを埋め込む手術はしないと言っていて、先生は ( 私
から見ると ) あっさりそれを承認していた。しかし先生はいずれ発作が多くなってくるとペースメーカーの埋め込みは絶対に必要
だし、土壇場になったら本人も希望するだろうと考えており、すぐにそれができるように準備や心構えもしていたのだった。そう
いう事を予測し、そのとおりになっていったことはさすがと思わずにはいられなかった。それができるからこそ長年、下甑の住民
に信頼され医療を行ってくる事ができたのだろうと感じた。
また、手打診療所では患者さんを入院させるハードルが本土の病院に比べて低いとも感じた。ただし、それはほかの病院だと入院
させないような疾患というだけであって、その患者さんの生活状況、社会的背景を考えると確かに入院させた方が良い場合が多い
ので一概にすぐに入院させていると言っていいものでもないのだろう。たとえば独居の高齢者の方などは風邪などでも入院させて
いたのだが、確かに家で一人だと何が起こるかわからないので入院させていた方が安心であろう。
また、診療所に訪れる患者さんは多くが高齢の方ではあったが、小児も決して少ないとは言えないくらい訪れていた。さらに疾患
としても内科的なものから骨折、打撲、切創といった外科的なものまで幅広さがあり、臓器も頭部 ( 脳 ) から心臓、消化器、骨と
様々な領域にわたっている。離島の医師は時には ( 多くの場合は ?) 、一人でそれをやっていく必要があり、オールマイティーさは
ぜったいに必要になってくる。さらにそれをこなす体力だって必要になってくるだろう。やはり生半可な思いでは勤まるものでは
ないと感じた。さらにそこでできること、できない事の判断も早く下さなければいけなくそれには経験が必要になってくるのでは
なかろうか。まとめると、離島医療で最も理想とされる医師は、幅広い知識と深い経験を持った体力のある医師という事である。
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しかし、そんなに理想的な医師はそうそういるともおもわれないので、実際は何人かの医師で回していくというのが現実的になっ
てくる。そういった点では手打診療所は、経験と知識のある瀬戸上先生と、体力のある研修医の先生方、といった形で回しており、
とても効率が良いようにも思えた。
最後になりましたが、瀬戸上先生をはじめとした手打診療所のみなさんには本当にお世話になりました。一週間という短い時間で
はありましたが大変良い経験をさせていただきました。今回学んだことを今後に生かしていきたいと思います。
氏
名
柚木
良介
5 月 28 日(月)
8 時 45 分のシーホークに乗り出発。上甑島の里港を経由し、下甑島長浜港に到着。海の透明度が高かった。そこからバスに乗り
手打診療所へ向かう。ついてすぐに瀬戸上先生とお会いした。「君の夢は?」と尋ねられた。
午前:外来見学。印象に残ったこと
①瀬戸上先生に「大丈夫、満点」といわれるととてもうれしそうな顔をする患者さんたち。
②看護師さんたちに「~~くん、次よ」と呼ばれる患者さん。昔からの知り合いなのだろうか、今まで実習した病院のような堅苦
しさはなく、密接な人間関係があることが感じられた。
③膝が痛いのでヒアルロン酸を打ってくれと訴える患者さん。先生は必要ないと何度も伝えたが、それでも打ってくれという患者
さん。それならばと、先生はヒアルロン酸を注射したが、その注射に対してとても痛がっていた。割と患者さんの意向を重視して
いる印象を受けた。
午後:検温、脈拍・血圧測定+印象に残ったこと
④血圧測定を行う機会が今まで少なかったため、戸惑ってしまった。 1 週間でスムーズにできるようになりたい。
⑤特発性食道狭窄の 70 歳男性の患者さんに、ガストログラフィンを行った。手打診療所には、CT、レントゲン、透視などの設
備が整っている。
⑥Adams-Stokes発作を起こした 87 歳女性の患者さん。完全房室ブロックから発作を起こし、鹿島診療所から紹介さ
れてきた。心電図の装着を行った。心電図でははっきりとAV block の所見が見て取れた。心臓ペースメーカーの適応であるが、
本人は断固として拒否。病識の欠如が見られた。入院してゆっくりすれば治ると思い込んでいるようだった。夕方 17 時過ぎに終
了。
5 月 29 日(火)
8 : 30 申し送り
午前:外来+病棟
①寝ているときに前額部を打ったらしいと連れてこられた、施設に入所している 62 歳女性。骨折しているかどうかを調べるため
にCTを撮影することになった。しかし、固定をはずそうと動き続けたため、セルシンを用いて鎮静をかけた。呼吸抑制の可能性
もあるため、気管挿管の準備をしてからの撮影となった。撮影中も動きが収まらなかったため画像はぶれていたが、骨折はなさそ
うということであった。鎮静がかかっておりそのまま帰すと危ないということで入院することになった。
②リストカットできた 13 歳女性。本人は、何でこうなっているのか分からない、寝る前までしか覚えていないと言っていた。研
修でこられている先生が縫合することとなった。大学や、市内の病院では、吸収糸を用いて埋没法を行うだろうなというような傷
であったが、絹糸で表皮縫合を行っていた。糸は絹糸しかないということである。また、清潔と不潔の領域もあいまいだった。瀬
戸上先生の考えとして、清潔にこだわりすぎると逆に良くないということである。また、手術室に窓をつけたのも、島の空気を吸
っていれば良くなるという考えのもとらしい。
③昨晩運ばれてきた鼻出血が止まらない患者さん。ボスミンタンポンで圧迫止血するも、奥の方の血管から出血している様で、な
かなか止まらない。弁置換手術の既往があり、バイアスピリンを服用している。
④下腹部痛でこられた 68 歳の男性。昨日の昼から急に痛み出したらしい。数日前に便秘ということで受診されていた。その時は
下剤を処方されている。今回、聴診で腸蠕動音の低下があった。 CT 撮影すると回盲部付近に炎症所見がみられ、胆嚢に結石、右
の尿管に結石らしきものが見られた。待合室で待っている間、痛みが治まってきた。尿管結石の既往があり、それが疑われた。し
かし、 WBC 、 CRP の上昇から炎症も疑われたため、入院して抗生剤点滴で様子を見ることとなった。
⑤ ITKarte を用いてこの腹痛の方の画像をコンサルトした。しようとしていたところ、上記の鼻出血の患者さんを市立病院にヘリ
搬送するということで、見学に行った。
⑥ヘリ搬送。近くの海陽中学校がランデブーポイントだった。向かう車の中で、看護師さんが、ドクターヘリはかっこいいような
報道をされているけど、離島では、夜間や天候の悪い時はヘリが来るまでたとえ AMI でも待っておかなければならず、患者さん
はもちろん医療スタッフの負担もかなり大きく、大変だということをおっしゃっていた。
⑦ 5 歳の男の子。こけてひじを打ち、痛みを訴えている。骨折あるいは肘内症疑いでレントゲン撮影ののち、シーネ・三角巾で固
定。
5 月 30 日(水)
8 : 30 申し送り
午前:
①食道潰瘍の内視鏡生検を行っていた。
②昨日の下腹部痛を訴えていた 68 歳男性。再度単純腹部レントゲン撮影したところ、腸管ガスの著明な増加がみられ、また、触
診にて反張痛も見られた。遠隔で出していた CT の読影の返書により、壊疽性虫垂炎疑いと診断されており、午後手術を行った。
89
午後:
③左頚部にある 1~2 ㎝大のほくろのようなものを外来で切除していた。鑷子を用いず、ペアンと持針器で手を用いて不潔にならな
いように縫合していた。
④左手にある角化した部位の切除。上記と同様に縫合していた。
⑤壊疽性虫垂炎疑いの患者さんの緊急手術。手洗いをさせていただいた。鹿島診療所の先生も手伝いに来られていた。開腹すると
ダグラス窩膿瘍、腹膜炎などが所見としてあった。虫垂を切除したが、炎症による癒着や、膿瘍を形成していたため、解剖学的な
構造がはっきりせず、大変な手術であったということであった。後日、回腸の憩室炎穿破の可能性もあったとおっしゃっていた。
術後のイレウスについて考慮する必要がある。閉腹する前、患者さんの御家族を手術室に招き、状態と今後のことを説明なさって
いた。笑気ガスを用いて麻酔をかけていた。
⑥昨日AVblockで Adams-Stoks 発作を起こした患者さんが VT 発作を起こした。数回で元に戻るということである。
5 月 31 日(木)
8 : 30 申し送り
今日は出張診療の日で、瀬戸上先生と瀬々野浦と片野浦へ向かった。瀬々野浦はテレビでよくみるナポレオン岩が目の前にあり、
とても風光明媚なところであった。 Dr. コト―のモデルになった場所でもある。(帰った後に手打診療所の Dr. コト―の漫画で風
景の確認をしたのはまた別の話。)診療所に着くとすでに患者さんがまちかまえており、先生が中に入るなり「おはようございま
~す。いや、もう遅いからおそようございますか・・はははははは!」と元気のよい声が聞こえてきた。待合室はとても和気あい
あいとしており、みんな仲良しであった。そこで、先生の診察の前に血圧測定をさせていただいた。なんどもやったのでコツがわ
かってきてスムーズにできるようになった。お昼を浦島食堂でごちそうになり、往診に向かった。瀬々野浦をたち、片野浦に向か
った。途中、しんきろうの丘で写真を撮った。瀬々野浦を上から眺めることができた。自動車道が無かったころは歩いて山を越え
て往診していたということである。片野浦でも同じように血圧測定を行った。何とも味のある診療所であった。印象として、瀬々
野浦は全体的に陽気な人が多くきていて、高血圧の方が多かった。片野浦は、自分が測った方々の中の話ではあるが、血圧の高い
方が全くいなかった。集落によって違いが現れているのかと感じた。手打にもどったあとは、外来見学、病棟で患者さんと少しお
話などなど、いつもよりも少しゆっくりとできた。
6 月 1 日(金)
最終日
①ご飯が食べられないという患者さんのガストログラフィンを行った。 15 年前に食道を摘出し、胃と吻合したところが狭窄を起
こしていた。その患者さんが、透視の機械を見て、「えらい機械があるなぁ、 CT もあるし何でもあるわ。甑島なめんなよ!」と
つぶやいていたのが印象的だった。
② Adam-Stokes 症候群で、よるに頻脈、失神を繰り返していた患者さんを緊急ヘリ搬送。ランデブーポイントに向かう間も、発
作を起こしたらしい。市立病院に運ばれて、心臓ペーシングを行うということだった。
③骨粗鬆症で、椎体圧迫骨折をおこしている 81 歳女性のレントゲン撮影を行った。
④ Aspergilloma の 79 歳女性。肺結核の既往があり、 CT で典型的な所見だった。
⑤ 39 歳女性、ムカデに顔を噛まれた患者さん。ステロイドとキョウミノを筋注。
遠隔医療実習記録
下腹部痛を訴える男性。
月曜日に心窩部の不快感で来院。便秘傾向あったため下剤・胃薬で経過観察。火曜日に下腹部痛を訴え
て再度来院。 CT 上にて、回盲部付近の脂肪に炎症像がみられた。 WBC16,000 、 CRP7.0 。しかし、外来にいる間に、症状軽快。
CT 所見、血液所見と身体所見が合わないため、 ITKarte を用いて、 CT 画像の読影依頼。
感想:非常に使うのに手間がかかる。結局、実習でいる間に返事が来なかった。手打診療所では、今給黎総合病院と提携していて、
読影依頼ができるシステムになっている。瀬戸上先生がこちらでも相談しており、水曜日に、壊疽性虫垂炎疑いという診断が送ら
れてきた。水曜日には、身体所見で反張痛もみられ、腹部レントゲンでも著明な小腸ガスがみられ、汎発性腹膜炎、腸管イレウス
を起こしていた。急性の疾患の場合に時間がかかるようであれば、あまり信頼できるシステムではないかと思う。
感想
下甑での離島実習は 1 週間、移動を考えると実質 4 日間という大変短い時間ではあったが、大変充実した実習だった。帰るときに
は 1 か月ぐらい居たような感覚を持った。手打診療所での外来見学、入院患者さんの検温、血圧測定、瀬々野浦、片野浦への出張
診療、年間 4 例ぐらいだというヘリ搬送が 2 回、そして、緊急オペもあり、離島医療のフルコースともいえるべき内容が経験出来
た。手打診療所へ行った時の印象として、結構色々な機器が揃っているなというものだった。 CT 、透視、レントゲン、エコー、
内視鏡、マッサージ用の電気、エルゴメーター、血液検査、などなど・・・。とくに、放射線科の先生が扱う領域の機器を研修医
の先生が扱っているのを見て、ここにいたら、何でも経験できるなと感じた。外来見学においては、どの患者さんも、瀬戸上先生
に「大丈夫、上等満点」といわれるとにこにこして、時には手を合わせる患者さんもいた。検査結果を詳しく説明するのではなく、
大丈夫といわれることこそが、島の患者さんにとっては大事なことだろうと思うとともに、先生がこれまでされてきたことへの、
絶対的な信頼から来るものであろうと感じた。また、看護師さんと患者さんも知り合いばかりであり、待合室、診察室が和気あい
あいとしていた。
来る患者さんはほとんどが、血圧測って、薬をもらって帰る患者さんであったが、ときに重症な患者さんも運ばれてくる。一番
印象に残っている患者さんは、完全房室ブロックで Adams-Stokes 発作を起こし、鹿島診療所から運ばれてきた患者さんである。
ペースメーカー適応であったが、手術はしないと完全に拒否されていた。それに対し瀬戸上先生は、無理に説得して手術させよう
としなかった。治療すれば治るであろうに、患者の意思を最大限重視するのだな、とその時は感じていた。大学病院などでは説得
90
にかかるのだろうなとも感じた。そこからみるみる状態が悪くなってきて、 VT 、意識消失などを起こすようになった。それでも
先生は焦らずに、家族の意思や、本人の意思を確認していた。最終的には、本人も、ご家族も同意され、市立病院にヘリ搬送し、
ペースメーカー植え込みを行うということになった。ちなみに、以前は手打診療所でもペースメーカーの植え込みを行っていたら
しい。それにも驚いた。どうして、無理にでも説得しなかったのか疑問であったが、最終日の先生のお話で解決した。最後にそれ
について印象に残ったことを記したいと思う。
Living
Willという言葉があるが、患者の意思は変わるもので、問題に直面しないと本当の意思は見えてこないということである。
今回も、先生は最後には考えが変わると思っていたからこそ、無理には言わなかったそうだ。死に直面しても何もしなくていいと
いえば、それが患者の本当の意思でそれはそれで尊重すべきものである。患者は、病気、医療側に対し、「不安、恐怖、無知、不
信」を持っている。それがゆえに時には、患者の意思を尊重しつつも、意思を変えさせなければならないことがあり、そこをプロ
として調整するのが医師の役割であり、患者の意思を尊重するといって、何もしないのは逃げているのと一緒という話はとても印
象に残った。逃げないために、常に自分が当事者という自覚を持ち続け、今、目の前で起こっていることに対処するということは
ずっと心にとどめておきたいと思った。
離島実習は、希望を出す段階では与論島とか、滅多にいかないであろう遠いところに行きたいと思っていたが、縁あって下甑島
に行かせていただくことになって、瀬戸上先生はじめ手打診療所のスタッフの方々、患者さんに出会うことができて、今では本当
に行くことができて良かったと思います。もう一度、何らかの形で訪れたいと思います。 1 週間、本当にありがとうございました。
お世話になりました。
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
田中
志朗
6 月 4 日月曜日
串木野港から高速船シーホークにて長浜港に 10 時 20 分についた。高速船は揺れると聞いていたが思ったよりは揺れなかった。
その後バスで移動したが、停留所を間違え終点の手打港まで行ってしまい、事務長の和田さんに電話して迎えに来ていただいた。
最初からご迷惑をおかけして大変申し訳なかった。
瀬戸上先生にお会いし挨拶をする間もなく診察を見学させていただいた。いきなりで驚いたが看護師の方々もあたたかく迎えてい
ただいてとてもうれしかった。瀬戸上先生と研修医 2 年目の先生の持ち回りでこの診療所をやりくりしていると聞いて改めて大変
だと感じた。
見学させえていただいた患者さんの中で印象に残ったものは後縦靭帯骨化症の術後の方で膀胱排尿障害と手足のしびれが残ってい
る方だった。血尿が出ていて尿道バルーンを入れる処置をして様子を見るとのことだった。午後からは入院患者さんの検温、血圧、
脈を測らせていただいた。なかなかまとまってたくさんの人の血圧を測ることはなかったので手早くできず、時間がかかった。ま
た一人一人の名前の確認から挨拶、会話などコミュニケーションをしっかりとることが大事だとよくわかった。また、一カ月に三
日ほど来ているという現在院生の三浦先生とも話をさせていただいた。先生の感想としては離島は普段はやはりゆっくりとしての
んびりしたいイメージとのことだった。夕方になると外来が空いていたため三浦先生にエコーと心電図のレクチャーを受けた。 5
時過ぎに病院にて夕食をいただき寮に帰宅して 1 日目の実習は終了となった。
6 月 5 日火曜日
朝 8 時前に診療所に行き朝ご飯をいただき、午前中は外来の見学をしつつ、外来の患者さんの血圧などを測らせていただいた。印
象としてはやはり年配の方が多く、 80 代や 70 代と、 60 代の親子で来ている方などもいた。また、定期の薬の処方をしてもら
いに来ている方も多く、診察の時間がすごく短いことにも驚いた。これは、医者と患者のそれぞれの距離感がすごく近いことにも
関係していると思った。珍しく 8 歳の女の子が耳下腺の腫脹で来院し、ムンプス疑いで痛み止めを出して様子見になっていた。診
療所内で子どもを見かけることが少なかったのでとても印象に残っている。高齢者の方には変形性膝関節症などの膝の関節痛の方
も多く、ヒアルロン酸の注射を打つ方も多かった。
特に印象に残っている症例は 80 代の女性で胸部に腫瘤があるのに気付いて来院された方なのだが、そのままオペ室に行き試験切
除されていた。
91
午後からは患者さんの数も少なく瀬戸上先生が相手をできるとのことだったので IT カルテの送信の症例を決めていただいた。こ
のまま何事もなく終わるかと思っていたら夕方 5 時過ぎになって自宅で吐血した 79 歳の女性が救急車で搬送されてきて急遽上部
消化管内視鏡検査となった。人出が少ない中、なんとか胃カメラを行ったところマロリーワイスではないかとの診断だった。入院
して様子を見ることとなりこの日の実習は終了となった。
6 月 6 日水曜日
午前中は外来見学しつつ血圧を測り、午後は入院患者さんのバイタルを計測した。患者さんの数も少なくこれといったことはない
のんびりとした 1 日だった。昼からは入院している患者さんのそれぞれの説明を研修医二年目の上之園先生にしていただいた。先
生が下甑に来た時期は自分たちとほぼ変わらないぐらいだったはずだが患者さんのだいたいの状態を把握されており感心した。今
日で三浦先生が鹿児島に帰るとのことだったので皆で挨拶し見送った。基本的に外来は朝一番に集中しており、それを過ぎるとあ
まり人は来ないため今日の実習は終了となった。
6 月 7 日木曜日
午前中は 8 時半からナースステーションで看護師カンファに参加し、その後 9 時半まで外来を見た後、午前中は瀬々野浦診療所、
午後からは片野浦診療所へと出張診療に出かけた。瀬々野浦診療所では学生が事前に血圧を測り、一人の診察にかかる時間はすご
く短かったが患者さんは笑顔で週一回の健康診断も兼ねていて、顔を見せるだけでも十分といった雰囲気が感じられた。昼ご飯を
瀬々野浦診療所近くの食堂で先生にごちそうしていただき、ナポレオン岩を眺めた。あいにくと天気が悪く靄が出ていたためきれ
いには見えなかったが、みんなでどの辺がナポレオンに見えて誰が呼び出したのかといったことを話し合ったりした。片野浦診療
所に移動する途中にしんきろうの丘も見せていただきここから眺める景色を歩いて往診しながら見た人がいるのかと感慨深く思っ
た。片野浦診療所でも午前中と同じく血圧を測って診察という流れで行い、問題なく終了し手打診療所に戻った。
帰ってきてから入院患者さんの大腸内視鏡を行うとのことで見学した。途中少し、無理をして腸を傷つけたかもしれないとのこと
なので回復室で様子を見るとのことだった。今日はもう終わりかなと思っていた 17 時くらいに一人の患者さんが来院し、診察の
結果気になった瀬戸上先生が CT をとったところ、くも膜下出血があり、急遽ヘリにて市内に搬送することになった。時間がぎり
ぎりであり日没以降はヘリを飛ばせないとのことで、実際ドクターヘリは飛ばなかったが、県の防災ヘリが何とか飛んでくれると
のこととなった。受け入れ先の決定などでごたごたしつつも、日没も近いこともありバタバタと搬送の用意を手伝った。付き添い
で上之園先生が付いていくこととなり、先生自体もまさかこんなことになるとは思ってなかったとおっしゃっていた。最初は市立
病院の脳外科に搬送予定だったが今日の手術は出来ないとのことだったので診療所を送り出した後、大学病院に変更となった。し
かし、電話が通じなかったため車で追いかけることとなり、山の上にあるヘリポートまで行きヘリが下りてくるのを見ることがで
きた。その後、瀬戸上先生に話しをうかがったところ、どこに送り出すか、それともここにおいておくかなど送る側と受け入れる
側の両方に状況判断と選択の責任があるとおっしゃっていたのが印象的だった。年間で 4 件ほどのヘリ搬送が先週に引き続き今週
もあったことからこういうこともあるのだなと思った。昨日と違いイベントが多い 1 日だった。
6 月 8 日金曜日
今日は瀬戸上先生が鹿児島大学医学部で講義があるとのことだったが、昨日、上之園先生がヘリ搬送に同行しており、診療所に医
師が一人だったため、できる限り診察してから出発されるとのことだった。
印象に残った症例は朝の外来で腹痛にて来院された 70 代の女性で、エコーをしたところ見たことがないくらい著明な胆管拡張を
きたしており、急遽入院ということになった。オペが必要かもしれないとのことで迷っておられたが、結局は出発することにされ
た。昼食をいただいて挨拶をし、帰ることになったが、瀬戸上先生がやはり患者さんで気になることがあったらしくとんぼ返りを
されてきていて長浜港でまたお会いした。先生に挨拶し、高速船に乗り込み帰宅となった。
遠隔医療実習記録
症例
主訴
呼吸困難
70 代の男性で気管支腫瘍がありそれにより咳嗽、喘鳴あり CT 画像により診断をお願いした。当時送ったときは気管支腫瘤が見
逃されていたとのことだったが今回はしっかりと気管支腫瘤と診断されて戻ってきた。
改善点としてはもう少し貼り付けられる画像のやり方が簡単になるか枚数を多く貼り付けられるようにすると便利になるのではと
思った。
感想
下甑島に着いて最初に思ったことは意外と近いなということだった。市内から車で 30 分ほどで串木野新港に着き、船に乗ってい
る時間は実質 2 時間ないくらい。実際は港に船が出る 1 時間前にはついていたので時間がかかった気がするがそれを差し引いても
離島というイメージから考えていた距離からは下甑島は大分近いと感じた。これだけの距離であったらドクターヘリなどのヘリ搬
送が行われるようになった現在は重病の患者さんでも手早く送ることができるようになって、島のデメリットも大分小さくなって
いるのではないかと思った。実際には実習中にヘリ搬送があったように、それだけで解決するような単純な問題というわけではな
かったが、それでも少し前よりは確実に改善されているのではないかと思った。
離島での診療は患者の普段の状態をできるだけ把握することによって、現在の患者の状態の重症度を自分が対処できることなのか、
それともいち早く大きな市内の病院に送ることが大事なのか判断する判断力が大事だと感じた。離島の診療所ですべての疾患や怪
我に対処することは、施設やマンパワーの面からみても難しく、大変なことが今回の実習でよく理解できた。もちろん、離島にい
る医師のスキルが足りなくて離島でできる処置などをできず送るなどはもってのほかだが、自分の限界を知っておくというのはと
ても大事だと思った。実際これは離島だけでなく当直をしているときなどにおいてもとても大事なことで自分で無理と思ったらす
ぐさま、専門の先生に連絡することだと今までに話しをうかがった先生方もよくおっしゃられていた。
しかし、少ない人数で離島に住む多くの人の命を預かるということは大変な重圧で、普段の何も大きなことのないのんびりとした
92
診療を見ているだけではわからない苦労があるのだろうなと思った。また、大学病院などと違って入院している患者さんにも一人
暮らしの高齢者で家に帰りたくないので入院させてくれといった人もいて医療がどこまで面倒を見るかといった難しい問題も関わ
ってくると感じた。その分、医者と患者の距離がとても近く、地域に密着して人の役に立てているという実感を感じることの多い
やりがいのあることだと思った。
今回の実習において、瀬戸上先生を始め、初日から迎えに来ていただくなどのご迷惑をおかけした事務長の和田さんや、その他看
護師や事務の方々には、大変温かく迎えていただき、また食事の差し入れやお土産などもたくさんいただきまして、本当にありが
とうございました。この実習でほんの少しですが離島医療というものの一端くらいはつかめたのではないかと思います。これから
先の医療にかかわっていくうえでこの実習が少しでも役にたてられるよう頑張っていきたいと思います。
氏
名
服部
悠一
6月4日 ( 月 )
実習先:手打診療所 ( 午前、午後 )
朝 8 時 45 分の高速船に乗り、下甑島へと出発した。もっと揺れるかと思っていたが、意外とそうでもなく快適な睡眠時間を得
ることができた。
予定通り 10 時 20 分に長浜港に着き、すぐに手打港行きのコミュニティバスに乗り込んだ。 20 分ほどで着く予定であったが、
バスをおりるタイミングを誤り、終点の手打港まで行ってしまった。その後事務長の和田さんがわざわざ迎えに来てくださった。
出だしからご迷惑をおかけして大変申し訳なかった。その後和田さんの案内で宿舎に荷物を置き、着替えてすぐに診療所に向かっ
た。
診療所に着くと、さっそく Dr. コトーでお馴染みの瀬戸上先生が診察をされており、後ろから見学をした。患者さんは後縦靭帯
骨化症の方で、手術はされていたが、手足のしびれと排尿障害のある方であった。膀胱のエコーを見るとかなり尿が溜まっており、
尿道カテーテルの留置を行う運びとなった。
その後何人か患者さんを見る中で血圧を測らせて頂いた。久々であったので最初は手間取ってしまったが、それでも優しく接して
いただきとてもありがたかった。
外来が一段落すると瀬戸上先生とお話しする機会があり、自己紹介をしたあとに「夢は大きく持って、小さくまとまるな」という
ありがたいお言葉を頂いた。
昼食は病院食を頂いた。最近食生活が乱れていたところだったのでヘルシーでよかった。昼食の後は入院患者さんのバイタルチェ
ックを皆で手分けして行った。血圧測定も人それぞれで測り易さが異なり、なかなか難しかった。
その後は外来の患者さんはあまりいらっしゃらなかったので、今週の月〜水で大学からお手伝いにいらしている三浦先生が心電図
やエコーの実習をしてくださった。特にエコーについては、侵襲も少なく腕によっては得られる情報も多いので医師をやるうえで
しっかり身につけたいと思った。
6月5日 ( 火 )
実習先:手打診療所 ( 午前、午後 )
午前の外来は 9 時頃から始まり、昨日と同じく何人か血圧測定を行った。患者さんで乳房のしこりを訴える方がいて、悪性の可能
性もあるということでそのまま手術室で試験切除となった。離島医療は何でもやるということをまさに実感した瞬間であった。
昼食に昨日と同様病院食を頂いたあとは入院患者さんのバイタルチェックを行った。昨日なかなかうまく測れなかった方も少しは
うまく測れたような気がした。何事も経験を積むことが上達への道なのだと感じた。
午後は外来の患者さんは少なかったので、 ITKarte の実習を行った。症例は過去の実際の症例を瀬戸上先生が提示してくださった。
四苦八苦しながら何とか完了した。
17 時近くになり、ぼちぼち今日も終わりかと思っていた時に、今から救急車で吐血の患者さんが来るとの連絡が。慌てて診察室
に向かった。患者さんの状態は安定しておりバイタルも問題なかったが、精査のためそのまま上部消化管内視鏡を行うこととなっ
た。食道部からの出血が認められ、マロリーワイス症候群の診断でそのまま入院となった。
晩御飯は病院食に加えて瀬戸上先生からの差し入れでお刺身を頂いた。とても美味しかった。
6月6日 ( 水 )
実習先:手打診療所 ( 午前、午後 )
午前中は外来の患者さんが多く、学生で手分けして血圧測定をひっきりなしに行った。だが 11 時前ぐらいにはだいたい終わって、
昼食までひとときの休息を得た。
昼食後は日課となった入院患者さんのバイタルチェックを行った。
午後は外来も少なく、研修医の上ノ薗先生と病棟を軽く回診して、その後は特にイベントもなく終わった。
6月7日 ( 木 )
実習先:手打診療所、瀬々野浦出張診療所 ( 午前 )
片野浦出張診療所、手打診療所 ( 午後 )
午前は、 10 時頃まで手打診療所で外来見学をした後、瀬戸上先生とともに瀬々野浦診療所に向かった。着くと大勢の患者さんが
待っており、手分けして血圧測定を行った。患者さんは皆さん落ち着いた経過の方が多く、定期の薬を出すだけの方が多かった。
お昼を近くの食堂で瀬戸上先生と一緒に頂いた後、回診に出かけた。こうやって皆さんが元気にしているかどうかを見て回るのも
かかりつけ医の役割なんだと感じた。その後、片野浦診療所に向かう途中のしんきろうの丘で車を停めていただき、漫画にも登場
した石碑を見ることができた。
片野浦診療所でも多くの患者さんが待っており、同じように血圧測定を行った。瀬々野浦と同様落ち着いた経過の方ばかりであっ
93
た。その後は同じように在宅の方を往診で回った。
手打診療所に戻り、しばらく休んでいると、貧血がある患者さんの精査目的で下部消化管内視鏡をやるとのことであったので見学
した。奥まで挿入するのが難しそうであったため、途中で検査終了となった。
その後は特にイベントもなかったため、早めの夕飯を済ませてそろそろ宿舎に戻ろうかと思っていたときに、朝頭痛と嘔吐があっ
たという患者さんがいらっしゃった。血圧も 190 台であったため頭部 CT まで施行したところ、急性クモ膜下出血であった。すぐ
にヘリ搬送の手続きを行い、県の防災ヘリにて大学へと搬送されていった。
6月8日 ( 金)
実習先:手打診療所 ( 午前 )
最終日なので、いつもより早めに起きて宿舎の片付けをした。
瀬戸上先生は今日は大学で講義の予定で、 10 時過ぎのシーホークに乗る予定であり、また研修医の上ノ薗先生も昨日のヘリ搬送
に同行しており不在であったため、午前の外来は瀬戸上先生がいる間にこなさなければならずいつもより慌ただしい雰囲気であっ
た。腹痛を訴える患者さんがいらっしゃって、腹部エコーを施行したところ結石ははっきりしなかったものの胆嚢が腫大しており、
胆嚢炎が疑われそのまま入院となった。その後ぎりぎりまで外来をこなされた後、瀬戸上先生の出発の時間となったため、 1 週間
の御礼を述べて先生を見送った。
瀬戸上先生が出発されてから一段落して休憩していると、まもなく昼食の時間となった。今日は病院食に加え伊勢海老を頂いた。
昼食後は職員の方々に挨拶をして、宿舎に戻り片付けの最終チェックをした。 14 時半ごろにバスに乗り、長浜港へ行くと事務長
の和田さんが。聞くところによると、瀬戸上先生は入院患者さんの都合で次の便にて戻ってくるとのことであった。船が着き、短
い時間であったが乗降の際に瀬戸上先生に再度御礼を述べて船へと乗り込んだ。朝の便で島に戻ってこられた上ノ薗先生の話では
かなり揺れたとのことであったが、座っている分にはそこまで気にならないぐらいで、うたた寝をしながら過ごした。
17 時ごろ、予定通り串木野新港に無事到着し、解散となった。
4 .遠隔医療実習記録
90 歳
女性
主訴
呼吸困難、咳嗽
所見
胸部 CT にて、気管に腫瘍性の病変を認める。
相談内容
腫瘍の評価
専門医の回答:数カ月後に再度評価を行い、増大傾向であれば気管支鏡を。変わらなければ年齢を考えると喘息に準じた治療を行
う。
有効であった点
改善すべき点
離島にいながらにして専門医の意見を仰げることは素晴らしいと思う。
操作がやや難しい。
5 .感想
今まで離島を訪れたことのない私にとっては、離島医療というのは話では聞くもののあまりピンとこなかった。であるから、今
回実習という形で離島医療を体験できることを楽しみにしていた。ましてや、私が今回実習で訪れた下甑島は、言わずと知れた
「 Dr. コトー診療所」のモデルとなった瀬戸上先生がいらっしゃる所である。コトー先生というと、離島で一人で何でもやってし
まうスーパードクターというイメージであり、これを現実の離島医療に当てはめるとどういった感じなんだろう、というのも今回
の実習で体験したいと思った。ちなみに今まで「 Dr. コトー診療所」は読んだことがなかったので、 4 、 5 月の実習の合間に図書
館で借りて予習をした上で今回の実習に臨んだ。
実際に下甑島に行って思ったこととしては、離島といっても本土と違う病気が流行るわけでもなく、外来や入院でいらっしゃる
患者さん方は本土でも見るような疾患ばかりであった。ただ違うのは、本土ではそれぞれ専門の先生が見るのに対し、離島ではそ
うは言ってられないということである。実際に滞在した 1 週間の中でも、乳房のしこりの試験切除、上部消化管内視鏡、下部消化
管内視鏡などの手技を見学することができた。前の週には憩室炎に対して開腹手術を行ったとのことであったし、過去に大腿骨頚
部骨折の整復手術やペースメーカーの植え込み術も多数経験があるとのことであった。このように、島に他の医師がいない以上、
その分自分に求められる守備範囲も広くなるのだと感じた。
また、今回急性クモ膜下出血の症例に対するヘリ搬送があったように、離島で手に負えない症例に対して本土の病院との連携を
行なっていくというのも大変重要なことであると感じた。瀬戸上先生がおっしゃるには、搬送するしないで本土の医師と意見が食
い違うことも考えられるので、患者さんのためを思えば、こちらが悪者になってでも無理を通してお願いすることも必要となると
のことであった(実は、今回も普段お願いしている市立病院が学会の関係上麻酔科医が手薄で、手術はできないとのことで代わり
の受け入れ先を探すのに難渋した)。先生のこの言葉から、離島の方々の医療を背負っている重みというのを感じた。
また、現在離島に医師が足りないということが度々話題にあがる。この下甑島の瀬戸上先生ももう 70 歳を超えておられ、先生
の後継者についても今後考えていかなければならない問題かと思う。実際に離島で働くというのは、生活、医師としてのスキルア
ップ、子供の教育等、本土とは異なりなかなか難しいところもあるかと思う。私自身、今後離島で島民の方々の医療を背負ってう
まくやっていける自身はまだ到底持ち合わせていない。それでも、直接離島で働くという選択肢以外にも本土において離島医療と
関わっていく道というのもあるように思う。であるから、こういった離島実習や、研修中の地域医療研修等を通して、皆それぞれ
が向き合い、考えていかなければならない問題だと感じた。
最後に、瀬戸上先生を始めとして、手打診療所、瀬々野浦診療所、片野浦診療所のスタッフの方々にはこの 1 週間大変お世話に
なりました。この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
94
氏
名
湯通堂
和樹
6 月 4 日(月)
実習先:診療所
内容:昼まで診療所にて外来を見学。昼食後、入院患者の血圧測定を行った。午後より、エコーの取り方、心電図の読み方につい
て教わった。
症例①:男性、主訴は排尿困難、後縦靱帯骨化症の手術をしたことがあり、排尿障害・手足の痺れが残存している。エコーにて膀
胱に尿が溜まっていたため、膀胱カテーテルの留置を行った。
症例②:女性、主訴は乳房のしこり、乳房に可動性良好な径 1 センチ程度の腫瘤を触知し、切開にて腫瘤を切除した。
6 月 5 日(火)
実習先:診療所
内容:午前は外来患者の血圧を測定。午後は、入院患者の血圧を測定、外来を見学。
症例①:男性、主訴は血尿、昨日の膀胱カテーテルを入れた患者が血尿を訴えて再来院。出血の程度は軽度と考えられ、経過観察。
症例②:女性、主訴は吐血、血尿を訴える夫の付き添いとして診療所に来たが、その帰り道吐血をした。上部消化管内視鏡検査に
て、 Mallory-Weiss 様の所見が見られ、出血も軽度であったため、入院にて保存的治療となった。
6 月 6 日(水)
実習先:診療所
内容:午前は外来患者の血圧測定。午後は、入院患者の血圧を測定、以前いた患者について説明。
症例:女性、主訴は咳嗽・喘鳴・呼吸困難、喘息様の所見であったが、 CT にて気道内に腫瘤を発見、専門病院にて生検を勧める
も、本人の希望で拒否。
6 月 7 日(木)
実習先:診療所、瀬々野浦出張診療所、往診、片野浦出張診療所
内容:朝は診療所にて外来患者の血圧を測定。その後、出張診療所にて外来患者の血圧を測定、往診を見学。夕方、診療所にて緊
急性のある患者をヘリにて本土へ送る様子を見学。
症例①:女性、主訴は下血、下部消化管内視鏡検査を行ったが、目立った出血の原因は見つからなかった。
症例②:男性、主訴は頭痛・吐き気。朝方より頭痛と吐き気があり、 1 度嘔吐もしており、夕方に受診した。 CT にてクモ膜下出
血が疑われたため、防災ヘリにて大学病院へと搬送された。
6 月 8 日(金)
実習先:診療所
内容:午前は外来患者の血圧測定。
4.遠隔医療実習記録
症例:女性、 91 歳、主訴は喘鳴、呼吸困難、咳嗽。 CT にて気道を圧迫する腫瘤を確認。診断及び今後の治療方針について相談。
紹介医からの回答は、 2 ヶ月後に再度検査を行い、腫瘤が増大傾向なら生検を施行、そうでないなら高齢であるため、喘息に準じ
た保存的治療を行っていくべきとのことでした。
有効な点は、やはり他の医師の意見を参考にでき、選択肢の一つとして利用できるということだと思います。特に、他の医師がど
ういった点に注目し、どういった考えでその結論に至ったかが分かるため、自分の考えと同じであっても着眼点の違いがあったり、
逆に自分とは違う考えであったら、その考えと自分の考えでより妥当性の高い考察を選択したりすることもできます。
改善して欲しい点は、 CT の場合、必要な写真が多いため操作が煩雑になってしまう点。
5.感想
今回の実習で 1 番印象に残ったのは、ヘリによる緊急搬送だったと思います。症例は、朝に頭痛・吐き気がしており、夕方歩い
て来院してきた患者さんで、クモ膜下出血が疑われ、 CT を施行しクモ膜下出血と診断されました。緊急性があると判断されたた
め、ヘリによる搬送が必要でしたが、ドクターヘリが飛べる時間を過ぎていたため防災ヘリに搬送を要請することになりました。
受け入れ病院は、当初市立病院が受け入れられるとのことでしたが、麻酔科医がおらず緊急手術が必要な場合でも手術はできない
ため、万が一の時は覚悟して欲しいと患者さんに伝えておいて欲しいとのことでした。そのため、急遽受け入れ病院を変更するた
め、他の病院に連絡し、大学病院へ送ることとなりました。そういったことをしている間も、患者さんのバイタルを取ったり、処
置を施したり、搬送中に必要なものを準備したりと、とても慌ただしい印象でした。
この一連の事態で思ったことは、受け入れ病院の対応の仕方についてもう少し何とかならなかったかなということです。受け入れ
病院もなんとかして受け入れてようとしてくれたのでしょうが、「受け入れます、ただし患者には手術はできないので死ぬかもし
れないと伝えてください」という内容の発言ではなくて、「手術が出来ないので他の病院をあたってください、もし他の病院がだ
めだったら受け入れます」という内容の発言であれば、送り出す側も迷うことなく他の病院にかけあうことができたのではないか
と思います。そういったちょっとした気配りが、こういう緊急事態にこそ必要となってくるのではないかと感じました。
全体としての感想は、離島医療というのはやはり難しいものだと思いました。別に大学でやる医療が簡単というわけではないです
が、さまざまな分野の知識・手技が必要なうえに、グループによって患者を分担するといったこともできないため、 1 対 1 で患者
へ対応していき、全ての作業を一人で背負うのは、大学とは別系統の難しさだと思いました。
最後になりますが、今回の実習を受け入れてくださった診療所のみなさんありがとうございました。
95
医療法人義順顕彰会 田上病院
種子島産婦人科医院
田上病院外観
種子島産婦人科医院外観
高速船トッピー
宇宙センター
馬立の岩屋
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平 成 24 年 3 月 5 日 ( 月 ) ~ 3 月 9 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
新村
卓也
3 月 4 日(日)
14 時発のトッピーで種子島に向かいました。港では田上病院の事務の方が待っていて下さり、病院まで案内していただきました。
この日はフリーだったので、市街地を散歩したり史跡巡りなどをしたりして過ごしました。
3 月 5 日(月)
実習先:田上病院(午前)
午前中は麻酔科部長の高山千史先生から、種子島の周産期医療の問題について講義してもらいました。高山先生は麻酔科医という
立場ですが、種子島の周産期医療に幅広く関わってこられた方です。以前は 3 つあった産婦人科医院が 1 つになり、島でただ一人
の産婦人科医となった医師も休診を宣言するという事態に至った経緯や、その後後任の医師を探すと共に周産期医療の体制を改善
しようと苦労されたことについて熱く語ってくださいました。こうした問題は医療
者側の努力だけではなく、地域住民の方々に理解を深めてもらい、問題意識を共有
することが大事であるというお話が印象的でした。
午後は種子島開発総合センターに連れて行ってもらいました。今年から、病院での
実習だけでなく種子島の文化や歴史についても学んでもらいたいとのご配慮で、展
示物などを見学しながらのんびりすごしました。
3 月 6 日(火)
実習先:種子島産婦人科(午前)、種子島産婦人科(午後)、田上病院(夜間急
外)
午前は種子島産婦人科で実習を行いました。主に外来を見学させて頂きました。 Leopold
触診法を教えて頂き、何名かの患者さんで先生の指導のもと診察させていただきました。
また、流産の処置も見学することができました。先生が患者さんや家族に優しく語りかけ
ている姿が印象的でした。
午後は同じく種子島産婦人科で小児科検診を見学しました。ここではオープンシステムが
導入され、田上病院の小児科の医師が種子島
産婦人科に出向き、検診を行っていました。
検診は 1 名だけでしたが、原始反射等の診察をさせてもらいました。
小児科検診が早く終わったので、空いた時間を利用して種子島宇宙センター見学に出
かけました。センターへは田上病院事務の方が送迎してくださいました。宇宙博物館
を 1 時間ほどかけて見学しました。テラスから海岸を一望できる場所があり、美しい
景色を楽しむことが出来ました。
夜は 5 時半から救急外来を見学しました。 3 名ほど受診されましたが、いずれの方も
インフルエンザ様の症状でした。高校受験を直前に控えた方もおられ、親御さんが心配そうにしておられたのが印象的でした。先
生は「他の受験生にうつす可能性もあるため、保健室受験してください」と何度も説得していましたが、親御さんは納得されてい
ない様子でした。受験の時期にインフルエンザに罹患してしまうと、受験生のみならず家族にとっても対応の仕方が難しくなると
感じました。空いた時間にインフルエンザ簡易検査キットの説明などもしていただきました。
救急外来見学が終わった後、種子島産婦人科の住吉先生にお食事に誘っていただきました。種子島産の魚や貝などを使った料理を
いただきながら焼酎を楽しむ贅沢な一時でした。
3 月 7 日(水)
実習先:わらび苑(午前)、百合砂苑(午後)
当初の予定に変更があり、午前はわらび苑で実習を行いました。わらび苑は介護老人保健施設ですが、平均要介護度が高く、自宅
に復帰できる方は残念ながらあまりいないとのことでした。種子島のような高齢化が進んだ地域ではやむを得ないということでし
た。施設長の有川先生の回診に同行させていただきました。有川先生が入所者の方一人ひとりに声をかけ、話を聞いている姿が印
象的でした。回診の後、お一人の患者さんからわらび苑での生活などについて話を聞きました。
午後は介護老人福祉施設百合砂苑で実習を行いました。
施設長の小浜さんから、認知症の高齢者に対する接し方についてお話を伺いました。入所者が徘徊など問題行動を取っても無理や
りやめさせることはせず、気が済むまで付き合うようにしていると自然と問題行動が減ってくるというお話が印象的でした。その
後、約 2 時間ほど入所者の方々とお話させて頂きましたが、実際入所者の方々は皆穏やかな表情をされ、楽しそうに談笑されてい
る方もいらっしゃいました。
3 月 8 日(木)
実習先:田上診療所(午前)、訪問看護ステーション野の花(午後)、田上病院(夜間急外)
午前は田上診療所で外来見学を行いました。
田上診療所は中種子町にある診療所で、田上病院がカバーしきれない地域の医療を担っている存在です。普段は竹野先生お一人で
診療されていますが、曜日によって整形外科の医師などが応援に来る日もあるそうです。
田上診療所では電子カルテが導入されており、他施設で記載されたカルテ等もいつでも参照できるようになっていました。下腹部
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痛を訴える 30 代女性など、初診の方も数名いらっしゃいましたが、先生は触診などの身体診察から驚くほど多くの情報を引き出
し、理路整然と診断を進めていらっしゃいました。また診察の内容を詳細にカルテに記載されていたのが印象的でした。診療所で
あることのハンデを全く感じさせない診察でした。口腔咽頭所見など様々な身体所見の解釈などについても教えていただきました。
また、診察の合間にスタッフの方手作りのお団子などをいただきました。おいしかったです。
午後は訪問看護ステーション野の花の訪問看護に同行させてもらいました。訪問したお宅は 2 件で、いずれも 90 代女性の方が
ご家族の介護を受けながら暮らしていました。看護師さんが体温や血圧、 SpO2 などを測定したり話を聞いたりして健康状態をチ
ェックしていました。ステーションの事務所に戻った後、看護師さんから訪問看護の現状などについてお話を聞くことが出来まし
た。訪問看護は患者が自宅で暮らせるという大きなメリットがある反面、家族が常に家で介護しなければならないこと、通常の在
宅介護サービスと比べ割高なことなどから、利用者数がなかなか増えないということでした。
夕方 5 時半から 9 時までは再び夜間救急外来を見学しました。施設入居中の 74 歳男性が発熱のため受診されました。 SpO2 が
70%台で、聴診でクラックルが認められたため胸部 X 線撮影を行ったところ明らかな肺炎像があり、重症肺炎の診断で入院となり
ました。すぐに担当の内科医にコンサルトされ、ラクテックの輸液とメロペンの投与開始が指示されました。
3 月 9 日(金)
実習先:田上病院(午前)
午前中は、循環器内科、小児科、整形外科の外来を 1 時間ずつ見学しました。午後
は宿舎の片付けを行い、 15 時半のトッピーで帰りました。
感想:
今回、はじめて種子島に足を踏み入れ、 1 週間という短い期間でしたが種子島の
様々な場所を訪れることができました。残念ながら雨の日が多かったのですが、海
岸沿いの綺麗な景色が印象的でした。実習ではどこの施設でも暖かく迎えてくださ
り、丁寧に対応して頂きました。 1 年間のポリクリを終えた後ですが今回の実習で初めて経験したことも多く、ポリクリ中にもっ
と勉強しておけばよかったと反省した面もありました。特に救急外来では患者さんの問診や診察などをさせていただいたのですが、
自分の力不足を感じました。今後の勉強に活かしたいと思います。
全実習を通じて、田上病院スタッフの方々には大変お世話になりました。実習施設まで送迎してもらったうえ、かなり遠方にある
種子島宇宙センターにも連れていってもらいました。お忙しい中かなりご迷惑をおかけしてしまった部分もあると思いますが、貴
重な経験をすることができました。心より御礼申し上げます。
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
加世田
圭一郎
4月1日 ( 日 )
種子島に到着した初日に、実習先の田上病院から車を貸していただ
き、種子島の多くの名所に出かけた。
①千倉の岩屋
名前の由来は、干潮時には千人位が座れるほど広い場所ということ。
干潮時にだけ現れる洞窟で、このように中に入れたことは相当運が
いい、と地元の方から言われ大変嬉しかった。
②門倉岬
鉄砲伝来の地として有名。岬からの景色が最高だった。
③種子島宇宙センター
JAXA の職員食堂で昼食。
④インギー鶏
昔、種子島に漂着したイギリス船を島民の
方々が救助した際、感謝の気持ちとして贈ら
れたという鶏。巨大。
上記のとおり、種子島の自然の豊かさに触れ
ることができた。
4月2日 ( 月 )
実習先:田上病院 ( 午前 ) 、鉄砲館 ( 午後 )
内容:午前中は田上病院医局でオリエンテーション。その後、麻酔科部長の高山先生から種子島産婦人科の歴史、先生が活動され
ている「命の意味」についてお話を伺った。午後は鉄砲館を訪れ、種子島の風土や文化、歴史について学んだ。
4月3日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科
内容:午前中は種子島産婦人科医院で外来見学。午後は帝王切開、お産を見学。
4月4日 ( 水 )
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体調不良で欠席。申し訳ありませんでした。
4月5日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 ) 、介護老人保健施設わらび苑 ( 午後 )
内容:午前中は中種子町の田上診療所で外来診療見学。午後はわらび苑で有川施設長、介護部長、リハビリ科部長のお話を伺った。
入居している方とお話しする時間も頂いた。
4月6日 ( 金 )
実習先:田上病院 ( 午前 )
内容:午前中は外来見学。高山先生、市長、事務長の昼食に参加させていただいた。午後は 14 時発のフェリーで種子島出航。
遠隔医療実習記録:なし
感想:
今回の離島実習では、医師の先生方と患者との距離感の近さを強く感じた。外来での診察中、患者が病気のことだけでなく日常
のことも積極的に話していた。非常に親しい様子が伝わってきた。先生に晩御飯をご馳走になった際も、店に居合わせた客が先生
方に慕って話しかけている様子が大変印象的であった。大学病院でのポリクリ実習で目にしてきた医師と患者のやりとりとは大分
異なっているように感じた。サーフィンや愛犬を話題に盛り上がるフランクなやりとりは仲のよい友人同士のようであった。
次に、想像を超えて、病院・診療所で一人一人の先生方の担当する医療業務は本当に多いように感じた。先生方のタフさに驚い
た。また、田上病院と産婦人科医院が協力してなんとか島内でお産ができる状態にしていることや、以前種子島から産婦人科医が
不在になってしまったエピソードを伺って、医師不足や医師の都市部への偏在などの問題を身近なものとして感じた。住吉先生の
種子島赴任後お産 1000 人目の取材に、病院にテレビ局のスタッフが来ていた。その場に居合わすことができてよかった。感慨深
かった。
先生方のお話を伺って、離島医療を支えている医師の役割について学べた。医師の少ない環境での医療行為の責任や苦労という
ものは非常に大きい。医療体制を整えるためには行政にも働きかけることが必要なのだと知った。高山先生と市長の昼食に参加さ
せていただいた際は大変緊張した。
種子島の離島実習はとても濃いもので貴重な経験になった。
今回お世話になった方々に感謝しています。楽しく実習させていただきました。先生方にご馳走になった伊勢海老を代表する海
の幸の数々は驚くほど美味でした。ありがとうございました。
氏
名
紙谷
美帆
4 月 2 日(月)
実習先:田上病院(午前)
麻酔科の高山先生から種子島の医療の特徴を伺いました。
先生のお話から、
・田上病院は二次病院だけれど、離島の性格上、脳外科など三次医療も請け負うこと。
・島内で救急車を受け入れられるのは田上病院だけであること。
ということを知りました。また種子島の唯一の産婦人科が休診し、公立病院として再始動した経緯を教えて頂きました。そして離
島医療に限定されず、先生が取り組んでおられる「いのちの授業」のお話も伺い、中学生とのお手紙のやり取りを見せて頂きまし
た。
4 月 3 日(火)
実習先:種子島産婦人科医院(午前午後)
朝 9 時に病院に伺って待機していると、「さっき戻って来たよ」と住吉先生が帰っていらっしゃいました。午前 3 時に自衛隊の
ヘリで緊急搬送をなさって、西之表港に 9 時にお戻りになったばかりでした。
しかし先生はそのまますぐに診察室に向かわれて、外来の患者さんを次々と診察されました。
その内に二階の分娩室でお産が始まりました。なんと先生が赴任されてから 1001 例目のお産で、その前日がちょうど 1000 例
目でした。本土からテレビ局が取材に来ていました。テレビだけでなく、新聞にも写真入りで取り上げられました。その後にもう
1 件、自然分娩がありました。
午後からは帝王切開の手術でした。骨盤位のために帝王切開となった症例で、先生の鮮やかな回旋の手技でとてもスムーズに生
まれて来ました。田上病院から麻酔をかけにいらしていた高山先生が赤ちゃんの手をお母さんの頬にタッチさせるのが感動的で、
先生のアイデアに脱帽でした。
妊婦さんがもし家を離れて船に揺られて本土に渡って出産することになれば、身体的精神的、そして経済的にも大変苦労が多いと
思うのですが、こうして帝王切開でも島で出来るというのは、島の妊婦さんやこれから妊婦さんになる女性にとって、本当に心強
いだろうと感じました。
4 月 4 日(水)
実習先:田上病院(午前)、特別養護老人ホーム百合砂苑、訪問看護(午後)
午前中は透析室を見学しました。
大学二年次の夏休みに離島医療講座にご仲介頂いて甑島へ実習に行ったのですが、そちらで甑島で透析が出来るようになった話を
伺って、島の透析の重要性を知りました。田上病院には約 20 床の透析ベッドがあり、この日もほぼ全ベッドが埋まっていました。
100
種子島は各町に透析の施設があり、原則自分の町で透析を受けるようになっているの
ですが、総合病院が安心ということで中種子町からも数名の患者さんがいらっしゃっ
ているとのことでした。
午後からはまず特別養護老人ホーム百合砂苑に見学に行きました。
園長先生にお話を伺い、その中で最も印象に残ったのが、認知症の方の徘徊にどう
いうふうに付き合っているかというお話です。百合砂苑では玄関に携帯電話と、夏は
日傘 2 本、冬はコート 2 着を置いているそうです。それで認知症の方が「おうちに帰
らないと…」と玄関から出て行こうとしたら、介護職員は引き留めずに一緒に出てい
きます。 1 時間も歩くと満足されるそうで、そうしたら携帯電話で車を呼んで、偶然
通りがかった風で施設へ乗せて帰るそうです。
そういった方法を私は全く初めて聞いたので、感動して、家族を預けるならそういった所が良いと思いました。
時間の関係で急いで百合砂苑から戻ると、次は訪問看護へ連れて行って頂きました。訪問看護は本土と同じであると感じ、特に
差異は見つけられなかったのですが、ちょうど伺った先のお宅では寝たきりの患者さんがお二人(姉妹)でした。それは大変なご
苦労だと思うのですが、家族の面倒を家庭内で見る文化がまだ強く残っているのだろうかと思いました。ただこの訪問看護やヘル
パーさんの介助が入っており、医療資源の援助は浸透しているように感じました。
4 月 5 日(木)
実習先:田上診療所(午前)、老人保健施設わらび苑(午後)
午前は車で 50 分ほどの中種子町の、田上診療所へ伺いました。
患者さんは高血圧などの慢性疾患のコントロールのために薬を貰いに来る方や、ちょうど流行しているようでインフルエンザの
子どもなどが多かったです。竹野院長はお一人で、午前中の外来で 61 人もの患者さんを診察しておられました。
39 ℃台の高熱、嘔吐、意識混濁の見られた患者さんがいて、救急車で田上病院へ運ばれて行きました。
午後からは老人保健施設のわらび苑に伺いました。
老人保健施設は医師が常駐しており、看護師の数も多いので、気管切開があったり、常時痰の吸引が必要であったりという重症
例が多く集まると言うことでした。また、入所者の平均年齢は 87 歳、要介護度の平均は 4.2 と、かなりハードな施設でした。
種子島の老人保健の特徴としては、身寄りのない人が多いことを教えて頂きました。子供が仕事のために島から出ていき、その
まま島に戻らなかったために、家族に面倒を見てもらうということが難しい方が多いそうです。離島医療の問題の中核の一つなの
ではないかと思いました。
4 月 6 日(金)
実習先:田上病院(午前)
午前中、田上病院で内科と整形外科の外来を見学させて頂きました。診察室は一見大学病院と見間違うような雰囲気ですが、患
者さんが医師を尊敬して信頼している様子がとても伝わってきました。どこか嬉しそうに診察室に入ってくる患者さんが多かった
です。
「(知り合いと沢山会えるから)楽しみと思うて来いなー」と言った患者さんに、内科の田上先生が「ゆっくりして行けなー」
と仰っていたのが印象的でした。待合室には患者さんが多くおられましたがお喋りでとても賑やかで、種子島の一大サロンとして
の役割を果たしていると思いました。
この日の 14 時発のフェリーで種子島を離れました。
4 .遠隔医療実習記録
実際に使用する例に立ち会えませんでした。
5 .感想
<離島医療について>
診療自体は本土と変わらず、問題は医療アクセスに尽きると実感しました。常勤医のいる診療科が限られていたり、人員・設備
のために島で出来ない手術があることです。ただし大学からの派遣がかなり密にあるために、曜日を選べばほとんどの科が受診で
きる状態であり、既にベストの状態なのではないかと感じました。
この状態を維持するために、島に送る人員を確保することが現在の最も重要な課題であると考えます。
<離島での生活について>
出発日は 4 月 1 日でしたので、乗船場は島に赴任する先生たちの見送りで大変賑やかでした。
ちょうど入港した屋久島からのフェリーには「◯◯先生ありがとう」「◯◯ちゃんまた屋久島に来てね」という横断幕が幾つも掛
かり、反対に種子島に出発するフェリーには「◯◯先生頑張って」という横断幕、またフレー!フレー!の声が響いていました。
私は福岡県の出身ですので、鹿児島の、大変鹿児島らしい独特の風物詩であると感じました。
フェリーは予想よりもずっと揺れて、かなり酔いました。虚ろな目で天井を見ながら、「こうやってドンブラコと運ばれて来た
荷物にはきっと付加価値がつくので、物価が高いだろう」と予想したのですが、実際にスーパーに行って見てみたら、物価は本土
と全く同じでした。
田上病院麻酔科の高山先生に連れて行って頂いたお店で、「鹿児島大学なら、 K ちゃんって知ってる?」と聞かれました。二人の
方に聞かれました。 K ちゃんは今年鹿大を卒業して研修医になった方で、種子島のご出身です。島の人間関係の濃密さを感じた瞬
間でした。
そうしてこの日は悪天候のために船が欠航でした。
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「船が欠航で商品の入荷が遅れています」というスーパーの張り紙を見て、島で暮らすにはこういうこ
とと折り合っていくことが必要なのだろうなと思いました。
産婦人科医院の住吉先生に連れて行って頂いたお店では、飲みにいらっしゃった住吉先生のお友達に
種子島の言葉を教えて頂きました。おはようは「けそうめっかり申さん」、こんにちはは「今日はめっ
かり申さん」、こんばんはは「こんにょうめっかり申さん」、但し今ではほとんど使われていないそう
です。奥さんのことは「ばきい」と言って、馬より貴いと書くそうです。
種子島は海が綺麗で人も穏やかで、とても楽しいところでした。帰りのフェリーで、種子島から本土
に転校していくと思しき少女が、離れていく島に向かって大きな声で「バイバイ!!」と絶叫していま
したが、私も種子島が恋しくて涙が出そうでした。
実習に来るまでは、正直なところ離島医療にあまり興味がありませんでしたが、先生たちのお仕事や
島での暮らしを知って、すっかり島が好きになってしまいました。
全て、お忙しい時間を割いてご指導下さった先生方、実習が円滑に実り多いものになるように心を砕いて下さった事務の皆さま
のおかげです。本当にありがとうございました。末筆ながら、心よりお礼を申し上げます。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
鎌田
博之
4 月 23 日 ( 月 )
実習先:田上病院
麻酔科高山先生の講義
内容:種子島の麻酔科医としての仕事,種子島における産婦人科医療の過去と現在について学んだ.午後は,種子島の歴史につ
いて学んだ.
4 月 24 日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院
内容:午前中は,住吉先生の外来見学をした. Leopold 診察を実際にさせてもらった.妊娠期は,さまざまな妊婦さんが来られ
ていた.午後は,小児科の先生の小児検診を見学した.その後,お産の近い方がおられるということで待機し,お産の見
学をした.夜は,ご飯をごちそうになりながら.住吉先生のお話を聞かせていただいた.
4 月 25 日 ( 水 )
実習先:訪問看護ステーション野の花,介護老人福祉施設
百合砂苑
内容:午前中は,訪問看護に行く看護師さんについて家を回った. 96 歳の方は,娘さんと一緒に暮らしており,移動は車椅子
であったが,お話はとてもしっかりされていた.体調はよく,体温,血圧は問題なかったが,右の膝関節が痛く,痛みで
夜起きることもあるとのことで午後田上病院整形外科を受診することとなった.午後は,百合砂苑という施設に行き,施
設者の方の説明の後,入所者の方々とお話をした.夜は,地元のライオンズクラブの会合に参加させていただき,種子島
の会社の経営者の方々と話をした.
4 月 26 日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 中種子町 ) ,介護老人保健施設
わらび苑
内容:午前中は,田上診療所の竹野先生の外来を見学した.実際に聴診等の診察もさせていただき勉強になった.糖尿病の患者
さんが多かった.その後,猿蟹川という共生工房も少しの間見学した.午後は,わらび苑を見学し,施設長先生から介護
に関わる法律やそれに基づく施設の特徴を学んだ.その後,入所者の方とレクレーションを行った.夜は救急外来の見学
をした.
4 月 27 日 ( 金 )
実習先:田上病院,高山先生講義
内容:整形外科 ( 山口先生 ) ,循環器内科 ( 田上先生 ) ,脳神経外科 ( 新納先生 ) の外来を見学した.特に覚えている症例は,
循環器内科の初診の患者さんで, 75 歳男性,で足のむくみと息切れを主訴にこられた. 3 年前に心疾患 ? で 3 週入院さ
れ,今年 4 月に下腿の皮疹,消化管出血?の精査のため今村分院を受診.一週間前から足のむくみと歩行時の息切れを訴
え,田上病院循環器内科を受診された.現症は,体温,血圧は問題なし,聴診上も問題なかった.眼瞼結膜は蒼白で貧血
所見 (+) .両下腿に紫斑あり,左足に優位であった.両下腿浮腫あり.胸写で心拡大あり, CTR60% ぐらい,うっ血な
し.心エコーでは EF 良好,左室壁肥厚 (+) . ECG では HR75 回 /min, ST-T change(−) ,肥大所見は測れなかった.完
全右脚ブロック . 血液データでは貧血あり.心機能は特に問題なく,ラシックスで浮腫の経過を見る方針となった.外来
見学の後,高山先生の命の授業について講義をしていただいた.
4. 感想
今回 1 週間種子島で実習を行い,とても充実した日々を送らせていただいた.すべてを書くことは出来ないが,ほんとに多くの
方から多くを学ばせていただいた.
今回種子島を実習先に選んだのは,種子島で産婦人科が無くなり,住吉先生が来られたという南日本新聞の記事を見ており,実
際にその現場を見てみたかったからというのが大きかった.また,自分のルーツが種子島にあるということを昔から祖父母より聞
いておりなんとなく親近感がわいており,一度いってみたいと思っていたのもあった.種子島に行くとき天気が悪く,船がかなり
揺れ,大変であった.船で長時間かかるという以外にも,島に着いてから家族から連絡があったとき初めて聞いたが,ちょうど同
102
じ頃にでたトッピーがクジラとぶつかるという大きな事故があったと聞いて,やはり離島というのは移動にもかなりの負担が強い
られているということが分かった.種子島に着いたら意外と街だなという印象だった.田上病院の事務長徳永さんが迎えにきてく
ださっており,着くとすぐ病院や周辺の案内をしていただいた. 22 日, 23 日午後は,種子島の観光をさせていただいた.種子
島宇宙センター,千座の岩屋,浦田海岸,鉄砲館,月窓亭等に行った.それぞれの場所で,多くの人と会い,話をして交流できた.
種子島の人々は,温かく,「どこからきたとね〜」と気軽に話しかけてくださった.道を聞いた時も親切に教えてくださった.い
い土地だなと初日にして思った.
月曜は,麻酔科の高山先生の講義を受けた.高山先生は,これまで会った先生の中でも一番といえるほど熱い先生で,本当に種
子島のことを思っているのだという気持ちが伝わってきた.その中で学んだことは,種子島の麻酔医としての仕事で,離島ならで
は,また,先生ご自身が考える麻酔科医としての患者さんとの関わり方について学んだ.また,種子島における産婦人科医療につ
いても学んだ.高山先生は,種子島の産婦人科問題に当初から関わられ,尽力されており,離島における産婦人科医療の問題につ
いて詳しく教えていただいた.前医の苦悩と決心,高山先生の働き,離島の住民の考え方の変遷,行政や大学の動き,住吉先生が
種子島に来られた経緯等,様々な立場の人々の考えを教わった.最後の日には,命の授業についての講義をしていただいた.子ど
もたちへの命の大切さを教えるという趣旨の活動で,すごい先生だなと思った.寺田恵子さんのメッセージは大事にしていきたい
と感じた.また,高山先生には,種子島の要人とも会わせていただき, 25 日はライオンズクラブの方々, 27 日は種子島副市長
と話をできた.医療関係者以外の方々と話をする機会は少なく,話はとてもおもしろく聞かせていただき,いろいろな人生を教え
ていただいた.高校の先輩方もいて,ある方の息子さんは実は高校の同級生だったと世間は狭いとも感じた.
火曜は,住吉先生の所で離島での産婦人科医療を学んだ.住吉先生は,神様のような先生でやさしく,人柄が素晴らしく,妊婦
さんからの信頼も絶大であった.外来でも,先生の知り合いのだれだれさんのだれというようにほとんどの方が知り合いで,離島
ならではの風景をみることができた.離島医療の魅力の一つだと感じた.また,家族のいる離島でお産ができることのありがたさ
を語っていた妊婦さんの言葉も印象的だった.午後には分娩も見ることが出来た.何度見ても分娩は感動的で,住吉先生に何度も
ありがとうと言っていた妊婦さんとそのご家族の光景は心に焼き付いている.その夜,住吉先生には,料亭に連れて行っていただ
き,大きな伊勢エビをごちそうになった.初めてあんな大きな伊勢エビを見た.先生と話をしていくにつれてますます先生のよう
な先生になりたいという想いが増していった. 2 次会では,先生のサーフィン仲間のバーに連れて行ってもらった.種子島にはい
ろいろな所から来ているのだなということが分かった.そこで出会った美容師のとしあきさんとは,離島の ( 特に産婦人科の ) 医
者と患者側の関係について話をし,患者側の視点での考えを聞かせてもらった.いい医者になろうとさらに思ったバーでの一時で
あった.
田上診療所は,まさに田舎の診療所といった歴史がありそうな診療所で,竹野先生は,患者さんに対してやさしく,時に厳しく
指導をする患者さんの信頼を得た先生であった.診療所は近くの公立病院が外来定員制を始めたためもあって,患者さんであふれ
かえっていた.患者さん一人一人とは長くつきあっていて,気心知れた感じで診察が進んでいく光景はいいなと思った.また,診
察のことについても教わった.聴診や脈診もさせていただいた.脈診の取り方等診察は奥深いなと思い,これから頑張って身につ
けていこうと感じた.
今回,島民の方と触れ合うことが多く出来たことが,この実習で得たことの一つだと感じている.島民のお年寄りの方とは,施
設以外でも訪問看護や外来,食堂でも話し,種子島のことやその方が前にしていた ( もしくは現在の ) 仕事について聞くことは,
とても興味深かった.月窓亭では,種子島の方言のことについて学び,種子島の鎌田の家系についても少し話を聞けた.種子島の
方言は,興味深く,鹿児島弁と博多・熊本弁と大阪弁が混ざったような感じ?であった.鹿児島弁は祖父母に鍛えられていたので
これまで県本土では苦労したことはなかったが,なかなか種子島では聞き取れなかったこともあった.これも,地域医療,離島医
療ならではのことだと思うが,私は面白く感じた.鹿児島市では考えられないが,種子島では道端で声をかけられることもあり,
コミュニティーの中で生きていることを実感できた.なので,実習後半では,何人かに自分でも声をかけてみた.意外と話が弾み,
犬を連れて散歩していた方は,下の街の精神科ドクターの奥さんだったということもあった.奥さんの話だと,以前は福岡にいた
こともあり,島の生活は少し寂しい所もあるということだった.島は温かい,人とのつながりが強いということは確かだが,都会
に比べマイナスな点もやはりあるという点にも気づかされた一時であった.
今回は,本当に多くの先生方や医療スタッフ,そして島民の方々のおかげで実習を送ることが出来ました.特に,最初から最後
まで忙しい勤務の中お世話してくださった高山先生,離島医療の素晴らしさ,産婦人科の魅力を教えてくださった住吉先生,そし
て,田上病院の先生方,医療スタッフ,徳永事務長をはじめとした事務の方々本当にありがとうございました.これから力をつけ
て種子島に還元できるよう頑張っていきたいと思います.
氏
名
木下
伊寿美
4 月 23 日 ( 月 )
実習先:田上病院 ( 午前 ) ,種子島開発総合センター ( 午後 )
内容:午前中は田上病院で高山先生のレクチャーを受けた.種子島の地域医療や都市部の医療との差異,種子島産婦人科休診の経
緯とこれからの課題等について学ぶことが出来た.午後は種子島開発センターで種子島の歴史について学び,島民の方々とも交流
が出来た.
4 月 24 日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院
内容:午前中は外来を見学. Leopold 触診法やエコーについて指導をしていただいた.午後は小児科健診の見学後,経産婦さんの
経腟分娩に立ち会わせていただけた.
103
4 月 25 日 ( 水 )
実習先:訪問看護ステーション野の花 ( 午前 ) ,介護老人福祉施設百合苑 ( 午後 )
内容:午前中は訪問看護に同行させていただいた.午後は介護老人福祉施設で入居者の方々とお話をさせていただいた.
4 月 26 日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 ) ,わらび苑 ( 午後 ) ,田上病院 ( 午後 )
内容:午前中は田上診療所で外来を見学.午後はわらび苑で入居者の方々とレクレーションをした後,田上病院で救急外来実習.
Walk-in 患者さんのみで救急搬送はなかった.
4 月 27 日 ( 金 )
実習先:田上病院 ( 午前 )
内容:午前中は田上病院で整形外科,循環器内科,脳神経外科の外来見学.
感想
《離島医療実習》
初めて田上病院内を案内された時,診療科の多さとその専門性の高さに驚いた.というのも,いわゆる一次医療を行う診療所を
イメージしていたからだ.しかし,田上病院の高山先生のお話を伺って得心した.
一次医療,二次医療,三次医療を人口サイズで見た時,厚労省は三次医療が 100 万人,二次医療は 10 〜 20 万人規模の場所に
設置するようにしているそうだ.種子島の人口は約 3 万 2 千人で人口サイズから言えば本来二次医療を行う中核病院すらないはず
だが,地域特性ゆえに中核病院である田上病院があるそうだ.とは言うものの,一次医療を行わないわけでもなく,かかりつけ医
としての役割も果たし, HCU という血液浄化療法や高圧酸素療法,人工透析など三次医療が担う役割も果たしている.確かに大
都市と比べると人口は少ないが,緊急性の高い疾患が無い訳がなく,例えばくも膜下出血は年間に 20 例あるそうで,このような
ことを考慮した時,専門性の高い医師の常駐する病院があることの意義は大きいように思う.人口サイズで単純に行う医療を規定
するのも効率化を図るという意味では有効だが,こと種子島に関しては疾患別あるいはその地域が持っている人を含めた医療資源
でそこで何次医療が行われているかが決まるという印象を受けた.しかし,医療資源は都市よりも流動的でかつ不安定なもののよ
うだ.これは種子島の産婦人科休診の一連の出来事が物語っているように思う.種子島全体で見ると,人口サイズの割に診療科が
多いがそれを支える医師の数が少なく,一人減ればその負担が残りの人にのしかかるだろう.患者さんの多さもそれに拍車をかけ
ている印象を持った.医師の少なさは大学からの支援でカバーしているようだが,それでも外来見学時に目の当たりにした患者さ
んの多さには目を見張るものがあった.今回の実習で最も印象的だったのは一人一人の医師が generalist でありその科の
specialist で,より専門性を極めている都市部の医師とはまた異なる特徴を持っているように感じたことだ.この特徴は“かかり
つけ医としての一次医療から中核病院としての二次医療,行える範囲でより専門性の高い三次医療”を行うという種子島の地域医
療をそのまま反映しているように思う.
種子島の地域医療というものを感じたのは行われる医療内容だけではない.先生と夕食をご一緒させていただいた時,食事先で
も先生に気軽に声をかける方が多く,かかりつけ医という単にprimary careという意味の距離の近さではない,責任の重さがその
ままやりがいとして目に見えて返ってくるだろうと推し量ることが出来る地域の方々との距離の近さに驚かされた.
幸運にも種子島産婦人科医院で実習をした日に経腟分娩に立ち会うことが出来た.ここ 2
〜 3 日で初めての分娩だったそうだ.産婦人科休診に揺れた種子島でまだ課題は残っている
ものの,お産が年々増えているそうで,それだけ島で産みたいと思っている人が多いことの
表れだ.妊婦さんのお母さんが懸命に励ましている姿,我が子を見た時の嬉しそうな顔は離
島であっても都市部であっても違いなど無く,だからこそ“分娩は離島だからといって本土
より安全性が劣るということがあってはならない”と種子島の産科診療に警鐘を鳴らした池
田先生の言葉が重く響いた.責任の重さとそれゆえのやりがいが目に見えること,だからこ
そ generalist であると同時に専門性を身につける必要があること,島民との距離の近さ,そ
れが種子島の地域医療であり地域に密着した医療という言葉に込められているものだと思う.
最後になりましたが,お忙しい中にも関わらずご指導して下さった田上病院,種子島産婦
人科医院,百合苑,わらび苑,田上診療所の先生方を始め多くのスタッフの方々に感謝致し
ます.本当に有難うございました.
《種子島観光日記》
6 月 22 日(日)
出発日は朝から生憎の空模様でフェリー運航も危ぶまれましたが条件付きで出航.フェリ
ー内で実習仲間と観光計画を立てたり,甲板に出たりと旅を満喫しようとしたもののそれも
錦江湾を抜けるまでの話で外海は時化て揺れる揺れる.皆,大人しく横になることに.
種子島に到着すると田上病院の事務の方が迎えに来て下さっていました(本当に有難うご
ざいました).今日 1 日,観光用に車を貸していただけるとのことで,まずは昼食を近場で
とって途中にある観光スポットに寄りながら宇宙センターを目指すことと相成りました.
昼食はせっかくだから種子島らしいものが食べられるところをとコンビニに入り,店員さ
んにお勧めのお店を聞く.近くに有名なところがあるそうで,そこで海鮮丼をいただきまし
た.余談ですが,このお店,実習期間中に先生方との食事会で何度かお世話になることに….
104
お腹を満たした後,早速観光に出発.海岸線沿いに車を走らせて“種子島の聖地・パワースポット”と銘打ってあった『雄龍雌
龍の岩』に到着.なんでも昔,仲の良い達五郎と達江という夫婦が崖崩れで投げ出された海に突然岩が隣り合って出現したという.
時化ていたせいで岩に打ち付ける波が激しく,神秘的というよりも迫力のある光景.晴れていれば海の色に岩が映えただろうけれ
ど,天気ばかりはどうしようもなく…残念.再び車に乗り,さらに南下.道は分岐がほとんど無く 1 本で周りも民家が時々見える
もののほとんど何も無く,のどかな感じで今更ながら島に来たのだと実感.道の分岐に掲げてある標識通りに進んで難なく本日
main の種子島宇宙センターに到着.
宇宙センターは海岸を臨む場所に位置し,敷地内はとにかく広く良く整備され,広場は一面の
芝生で覆われており,とにかく綺麗.
まずはお決まりの宇宙科学技術館で宇宙科学を学び,ミュージアムショップで宇宙食やロケ
ットや宇宙関連のグッズを眺めた後,ロケット発射場は見逃してはいけないだろうと展望所へ.
テレビのニュースでよく見る光景と全く同じものが眼前に広がり,皆感動.良い思い出になり
ました.
時間も夕方になり,今度は往路と逆の海岸沿いを走り,本日最後の観光スポット『千座の
岩』を目指しながら宿舎に戻ることに.太平洋の荒波が作り出した海蝕洞窟で千人座れる程の
広さがあることからこの名前が付いたらしい.実際に千人座れるかはさておき,写真ではなか
なか伝わりにくいですが確かに洞窟内は想像よりも広く,自然が長い時間をかけてこれを作り
上げたことを思うとただただ驚くばかり.雨垂れ石を穿つと言うが,それのスケールが大きい
バージョンかとぼんやりと思う.
6 月 23 日(月)
午後から実習の一環として種子島開発センターを訪ね,島の歴史について学び,
そのまま観光に.まずは近くの月窓亭へ.もともと羽生道潔が建てたもので,種子
島家歴代当主が居住したそうです.お茶と安納芋,黒砂糖をいただきながら(非常
に美味でした)現在,ボランティアでここを管理・案内している島民の方々から種
子島の歴史や島の方言などのお話を聞く.余談ですが 2 階に案内していただいた時
に司馬遼太郎さんのサインを見つけて驚きました.質問してみると確かに司馬遼太
郎さんがここを訪れたそうです.ちょっと感動.最後に記念撮影をし,月窓亭を後
にしました.色々お話をしていただいて本当に有難うございました.
昨日は南下したからと今日は北へと向かうことに.次の目的地は“日本の水浴場
88 選”の一つ『浦田海水浴場』.白い砂浜と青い海の色合いが絶妙.とにかく,
美しいの一言に尽きます.海開きはまだのようで人っ子一人おらず,独占状態.
最後は喜志鹿崎灯台.かの司馬遼太郎さんも訪れた種子島最北端の灯台.が,タイムアップで中に入れず.しかし高台に建って
いることもあり,眺めは十分.
帰りは月窓亭で食べた安納芋の味が忘れられず,どこかに売っていないかと淡い期待を抱き,種子島最大規模の安納芋農園があ
る安納を経由して宿舎へ戻ろうということになりました.結局,見つかりませんでしたが.
観光時間が確保出来たのは 2 日間でしたが,その短い時間でも沢山の島民の方のお世話になりました.とても温かく迎えて下さ
り,嬉しかったです.本当に有難うございました.
氏
名
謝
新
4 月 23 日 ( 月 )
実習先:田上病院
内容:高山先生によりオリエンテーション。島の医療事情と離島医療について説明して頂きました。
4 月 24 日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院
内容:外来見学(新生児検診など)。午後は分娩 1 例見学。島での正常分娩なんですが、
正常分娩を見るのが初めてなので、新鮮で感動的でした。夜は住吉院長先生との交流会
で先生からの人生や勉強のアドバイスを受けながら楽しくお酒をいただけました。
4 月 25 日 ( 水 )
実習先:午前:野の花、午後:介護老人福祉施設
百合砂苑
内容:訪問看護見学:離島の訪問看護を見学し、利用者と話もでき、小さいなプレゼン
トを頂きました。午後は百合砂苑の利用者との交流で楽しく話させて頂きました。
4 月 26 日 ( 木 )
実習先:田上診療所、わらび苑、田上病院
内容:午前は診療所と関連施設の見学、午後はわらび苑の見学と利用者との交流。夜は救急外来見学でした。小児高熱と腹痛の患
者さんがきましたが、急性度それほど高くなかった。
4 月 27 日 ( 金 )
実習先:田上病院
105
内容:循環、整形、脳外の外来見学
遠隔医療実習記録
今回の実習かなり内容が詰まっており、遠隔医療システムを利用する機会がありませんでした。
感想
今回大学の離島・地域医療実習で一週間、種子島で実習させていただきました。
田上病院、診療所、産婦人科を見学させて頂き、先生達の話を聞いて一番強く感じたのは、種子島の医療は医療関係者と患者、島
の住民達で築きあげたことでした。離島とはいえ、基本の医療から高度な透析 HCU まで利用できると伺いました。どんな医療が
求められているかをよく知り、それをちゃんと提供している種子島の医療 ( 関連 ) 施設に感動しました。それが離島医療と普通の
医療の一番大きい違いであり相似でもありました。都会の医療と比べて離島では厳しいものがありますが、それでも離島ニーズを
しっかり応じて医療を提供・展開していく、地域に密着した医療こそ離島医療であると思いました。「だから!地域によって提供
している医療が違う!」と高山先生が言いました。その通りですが、自分の中でこの当たり前のことでもすごく新しい概念で胸が
感動でいっぱいでした。
最初のオリエンテーションでは「離島医療とは何?」と高山先生に質問されましたが、そのとき答えられませんでした。一週間の
実習で離島医療のすべてを知ることは難しいと思いますが、自分なりに離島医療につ
いてイメージ掴めたと思います。それは地域に密着した医療で人と人の距離が近いこ
と、病気よりもっとじっくり患者さんのことを診ることができることでした。外来見
学で見たのは大学病院で見る“先生と患者”ではなく、友人同士の会話でした。こん
なに情と愛のある外来を初めてみました。これこそ離島医療ではないかと思いました。
種子島の自然も印象的でした。実習の空き時間を利用して種子島をまわってみました
が、感動の連続でした。綺麗な海、豊かな植物、動物達に囲まれ自然の中に生きるこ
とを強く感じさせられました。実習の疲れはいつもこの素晴らしい自然と海の幸で癒
されました。自然だけではありません、文化、歴史もあって、 1543 年の鉄砲伝来
から JAXA でロケットを打ち上げ、鉄砲館、ロケット基地、宇宙センターなど古代
から現代までのすべてが記録されていて、また、目で確かめることができる素晴ら
しい実物と素材が種子島にもありました。いろいろ見学しているうちに種子島のこ
とを知ることができて、そしてもっと知りたいと思いました。
一週間は短かったですが、たくさんのところを見回ったおかげで島の方々と交流
する機会もたくさんありました。皆さんはユーモアのセンス抜群で親切に種子島の
ことを教えてくれました。島の歴史や島の方言などためになる話をたくさん聞けて楽しい時間を過
ごせました、機会があればまたぜひ話したいと思います。そして、宇宙センターで全国各地から来
た宇宙留学の小学生とも交流できました。知らない人とこんなに話せるとは都会ではとっても考え
られませんでした。
優しいのは人間だけではありませんでした。種子島の動物も親切で優しいことがわかりました。島
ではペット連れている人をよく見かけます。話しかけてみると熱心に話してくれますが、ペット達
もすぐ仲良くしてくれます。都会ではいつも動物達に攻撃的な態度をとられる私ですが、とても不
思議でした。動物にこんなに甘えられたのは初めてで感動がとまりませんでした。
一週間はとても短く、種子島のことや離島医療のことはまだまだ知りたいことがたくさんありま
すが、自分の中でのイメージができたので、とても有意で充実した一週間でした。多くの先生方、
職員の方々に迷惑かけましたが、一週間本当にお世話になりました。種子島でできた素晴らしい経
験を今後の勉強や生活にぜひいかしていきたいと思います。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
井上
志穂
5 月 28 日(月)
実習先:田上病院
麻酔科、高山先生からオリエンテーション。種子島の産婦人科についての講義。
地域医療と一言で言っても、その医療のレベルというのは地域によって、またそこに従事する医師や医療関係のスタッフによって
も異なってくるもの。医療機器が少なくて、最低限のもので応急処置だけをする医療というのは、種子島の場合には当てはまらな
い。
種子島の田上病院では、産婦人科以外のすべての科がそろっているし、緊急のオペもすることができる。最先端ではないにして
も、私たちが想像する地域医療とは異なるもの。
地域での出産は、里帰り出産などもあり多くなってきている。島内での出産が一例あるだけで 30 万ほどの医療費の流出を防ぐ
ことができる。 2007 年 4 月、島で唯一の産婦人科の産科の休診宣言が出され、島内での出産ができなくなるといった危機に直面
することになった。このときの一番の問題は島民の産科への意識であり、周産期教育や島の現状を必死に訴えることで島民の理解
106
を促し、協力を得ることができた。助産師や他の職業の方との協力が不可欠であった。
患者さんというのは、「患者さん自身の専門家」。病気の専門家である私たちドクターにとって、患者さんに認められ、患者さ
んの正確な情報を提供してもらうことで初めて一緒に病気を治すことができる。患者さんは、医療の専門的なことであっても、き
ちんと説明すればわかってくれる。信頼関係が何よりも大事。
子供たちを対象に「いのちの授業」を実施している。子供たちのお母さんたちがどんなふうにしておなかの中で赤ちゃんを育て
ていくのか、出産がどういったものなのか、劇を交えて伝えていく。最後には小学校 5 年生になった子供たちがお母さんにだっこ
され、生まれたときどんなだったのか、小さい頃はどんな子だったのか聞く時間が設けられる。そこでかわされた言葉は「生まれ
てきてくれてありがとう」。
5 月 29 日(火)
実習先:種子島産婦人科(午前・午後)、田上病院
救急外来(夕方~夜)
妊婦健診、婦人科のがん検診がほとんど。妊婦さんの数の多さに驚いた。前回カイザーのお母さんに対するカイザー、骨盤位が
治らなかった場合のカイザー以外は自然分娩。骨盤位は、寝る姿勢やさかご体操、足の指のお灸でほとんどなおる。入院は全 5 人
で分娩後 3 人、切迫早産 2 人(ウテメリン点滴)。隔週で鹿大からの応援があり、週末は住吉先生もお休みをとれる。隔週水曜、
木曜午後はオペ日。
陣痛が何度もきているがなかなか生まれてこないお母さんにラミナリア挿入、陣痛促進剤を投与し、次の日午前 8 時ごろ、自然
分娩に立ち会うことができた。
小児科の先生と一緒に新生児健診 3 人。お母さんへの問診、胸部聴診、股関節の可動域制限ないか、反射に異常がないかを見て
いく。
救急外来
1 ) 14 歳
男
突き指―
2)
男
息苦しい―
9歳
受診取り消し(湿布、痛み止めいらないとのことだったため)
鼻水、咳のため、ホクナリンテープ、フスタゾール、ムコダイン処方。
救急外来で多めに処方をすると時間外にくることが癖になるため、最低限の処方で
次の日、改めて受診してもらうのが基本。
5 月 30 日(水)
実習先:訪問看護
訪問先は 96 歳
野の花(午前)、百合砂苑(午後)
女性。 CRF による K 上昇で栄養管理を行っていたが、最近さらに上昇し、栄養指導を行った。食べられるも
の、食べてはいけないもの、食べられるが嫌いなものが多く、食事の世話をしている娘さんがとても大変そうだった。もう 96 歳
だからと好きなことを食べて好きなことをするのか、長生きするためにたくさんのことを我慢するのか。ナースだけでなくドクタ
ー、栄養士、リハビリ、ケアマネージャーなどの連携が必須。
百合砂苑には認知症の方がほとんど。認知症との付き合い方が大切。基本的に拘束はせず、徘徊・経管自己抜管には本人が落ち
着いてしなくなるまで、職員がとことん付き合う。 10 人~ 12 人のユニットケアを基本としている。種子島は高齢者率 30 %を
超えているが、サーファーだけでなく、高齢者からのあこがれの島として有名になることが目標。
コミュニケーションをとる中で、同じことを何度も繰り返し聞いたり、同じことを何度も確認に行きたがったりするが、根気強
く答え続けると覚えてくれた。認知症の程度にもよるとは思うが、認知症のおばあちゃんというよりは自分の祖母と普通に会話す
るのと大差なく、会話を楽しむことができた。ただ、実習に行って 2 時間半、ほとんど座っ
て話をするだけだったので、スタッフの方の話や仕事、役割分担、苦労などの話を聞きたかった。
5 月 31 日(木)
実習先:田上診療(午前)、わらび苑(午後)、田上病院
救急外来(夕方~夜)
西之表から車で 40 分、中種子にある。患者は多く、具合が悪いというか、薬をもらいに、先生の顔を見に来るといった感じを
受けた。 DM のコントロール中の患者さんが多い。症状をよくし、治療を進めることも大切だが、患者さんが飲みたくないといっ
た薬を無理強いすることや、こうしたほうがいからと押し付けるような言い方はしていなかった。
診療所の外来中に、交代で猿蟹川という施設を見学。身体障害、精神障害をもつ方たちが施設や病院のリネンのクリーニング、
黒糖づくり、食塩つくりを行っている。種子島にこういった施設はひとつしかなく、種子島全土をバスが走って、施設への送迎を
行っている。障害を持つ方にとって仕事があるというのは生きがいにつながることもあり、障害の程度によりできることが限られ
ていたり、他の人の何倍も時間がかかってしまうこともまれではないが、ここの施設で働く方たちがいるからこそ、病院や施設で
清潔なシーツを使うことができると思うと、とても重要な役割を果たしていると思った。
わらび苑は介護老人保健施設だが、高齢化が進み自宅に帰れる人はあまりいない。法律の改正で在宅に返すことが推奨されるこ
とになり、少しずつでも、家に帰すようにしようと全スタッフで考えているところである。しかし、実際家に帰すといっても厳し
い方が多いのが現状。
お話をさせていただいたのは 70 歳のおじいさん。若いころは東京を拠点として日本中を駆け回るばりばりの営業マンで、東京
の話で盛り上がった。種子島に戻ってきて 2 年たったころ脳卒中で下半身麻痺、施設に入って 5 年目。仕事の話や奥さんのことを
いろいろ話してくれたが、こんなになってしまっては・・・とときどき遠い目で外を見ていた。何といえばよいのかわからず、ま
た口を開いてくれるまで待ったり、他の話題を振ったりした。
・救急外来
時間外受診
8 人。
・救急搬送
88 歳
女性
意味不明の言葉を言う
搬送中、意識Ⅱ‐ 20 、血圧が低下しているとの報告だった。脳梗塞の既往あり、右片麻痺到着時の BP196/80 、 HR 65 。ルー
107
トとるときの痛みで、振り払い、痛いと叫ぶ。末梢冷感強い。採血、ソルデム 1 を点滴し、頭部 CT 撮影。画像上は陳旧性の梗塞
のみしか見られず、採血でも異常なかったため点滴終了後、家に帰した。 TIAか?
84 歳
男性
嘔吐
夕方 5 時ごろから緑黄色の嘔吐が続く。数日前から嘔吐はあった。腹痛はない。X-P ニボーあり、 CT にて渦状の所見があり、絞
扼歳イレウス疑い。外科にコンサルト。緊急オペとなった。直腸カルチ、前立腺癌、 CRF( 透析中 ) 、イレウス歴あり。
6 月 1 日(金)
実習場所:田上病院
循環器外来、整形外科外来(午前)
循環器では定期健診多かった。 TG 、LDL-Chol.高い人多い。糖尿コントロール中、不整脈治療
の患者さん多かった。整形外科では、痛みによるステロイド注射、関節・背中への注射がほとんど。
介護度の認定の問診もあった。高齢者が多いため、転倒による骨折が多いとのことだった。
IT カルテ
利用する機会はなかった。
感想
自然が多く、人もあたたかい種子島で 1 週間実習できたことを本当に感謝しています。これまで
何度も宮崎での地域医療実習には参加し、行く場所によって、もしくはその地域を担っている医師
によって、地域医療の印象というのは変わっていました。種子島では、比較的大きな病院があり、
ある程度の医療が受けられるし、患者さんと医師との距離もある程度適度な距離感が保たれている
のかなと感じました。数年前に種子島で産婦人科がなくなるかもしれないという危機があったこと
は知らずに種子島にいったのですが、島民に島の現状を理解してもらい、歩みよって受け入れても
らい、協力を受けるのには、想像以上の苦労があったのではないかと思います。市からの支援によ
り住吉先生が赴任し、今では妊婦さんが毎日健診に訪れ、島内で元気な赤ちゃんの誕生は当然のよ
うに行われています。とはいっても、産婦人科医は島でただ一人だけですし、後任も決まっていな
いという問題は抱えたままでいます。私は産婦人科志望で、この離島実習で産婦人科の実習ができ
るのを楽しみにしていたのですが、もし、私自身のことを考えたら、何が起こってもおかしくない
お産を、助産師さんや看護師さんはいるにしても自分一人でやらなくてはならないというのは、そ
うたやすく引き受けられるものではないと思います。種子島では産婦人科に限らず、常勤が一人し
かいない科の先生方がいらっしゃるようですが、鹿児島市からの支援と島民や病院で働くスタッフ
の理解がないと成り立たないものだと思います。そして、先生の人情や一生懸命さというのは、島
民が協力しようと思う気持ちに大きく関係することではないかと思うのです。
高山先生のお話で、ひとつはっとしたのは、患者さんは話せばわかるということです。例として
オペ前の麻酔の説明を出し、麻酔がどういった仕組みで効いて、今回はどういった方法を使うのか、
また選択の余地がある場合には最大限患者さんに選んでもらうとのことでした。私は麻酔科のオペ
前の説明に立ち会ったことはないのですが、その説明書を見せてもらったときに、正直、麻酔の仕
組みなど説明しても難しくてわからないのではないかと思ってしまいました。しかし、先生のお話では高齢の方でも 90 %の方は
ほぼ理解できると聞いて、自分が思いあがっていたことに気づき恥ずかしくなりました。患者さんにとっては自分の身に起こるこ
と。説明すればわかろうとして聞くし、きちんと説明すればそんなに難しいことではないではないかとのことでした。医学のこと
を勉強していない人には専門的な難しいことはわからないからということではなく、理解できるように説明できるようにならなく
てはと感じました。そして、そこから信頼関係が生まれてくるのだと思います。
今回の実習で一番うれしかったのは、お産に立ち会えたことです。合併症のないお母さんから、満期で生まれてくる元気な赤ち
ゃんを見ることができたのは貴重な体験だったように思います。陣痛が始まり、赤ちゃんが少しずつ産道を下りてくるときには、
お母さんの苦しみようは大変なものでしたが、赤ちゃんが無事に出てきておなか
に抱いたとき、何ともいえない幸せに満ちた表情で我が子を見つめていたのが忘
れられません。お父さんも立ち会われましたが、写真を何枚も何枚も撮りながら、
涙をこらえているような表情でした。このお父さんとお母さんの子供に生まれて
きてよかったねと言ってあげたい気持ちでした。こういう、命の誕生に立ち会え
る職業というのは大変ですが、本当に素敵な職業だなと思えた時間でした。
忙しい時間を割いて、私たちに医療を含め種子島のことを教えていただき、ま
たおいしい食事とともに一緒の時間を過ごせたことを幸せに思います。今回の実
習で学んだことを大事にしながら、鹿児島の医療に貢献できるよう、一生懸命勉
強します。
1 週間、お世話になりました。本当にありがとうございました。
108
氏
名
大庭
真梨愛
5 月 28 日 ( 月 )
実習先:田上病院
内容:種子島の産科医療継続の危機に際し、当時島に唯一の産婦人科医であっ
た池田医師を支え続けた田上病院麻酔科医高山医師に、当時のお話や地域医療
の概論的なお話を伺った。島内唯一の産婦人科医として、休診を宣言せざるを
えなかった種子島の周産期医療の当時の状況や池田医師の思い、休診宣言をき
っかけに開催された市民への勉強会の様子、勉強会を通しての市民の意識の変
化、今後の課題としての妊婦さんへの周産期教育や助産師不足など、当事者で
なければ語ることのできないお話を聞くことができました。
5 月 29 日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院・田上病院 ( 夜間 )
内容:外来では主に妊婦健診を見学させていただきました。レオポルド触診法をさせてもらったり、 NST の見方を教えていただ
いたり、子宮癌検診の診察に付き添わせていただいたりしました。 29 週の妊婦さんにレオポルド触診法をさせていただいたとき
は子宮底の高さくらいしかはっきり分からなかったのですが、 35 週の妊婦さんにさせていただいたときは胎児の背中の位置・頭
の位置ともにはっきり分かりました。病棟では小児科医による新生児検診に付き添わせていただきました。 1 人診察させてもらっ
たのですが、心雑音・呼吸音に異常がないか、先天性股関節脱臼がないか、原始反射の有無を確認するのだということを学びまし
た。
夜間の救急外来では 14 歳男性でつき指を主訴に受診された方、 9 歳男性で息苦しさや鼻汁を主訴に受診された方の外来を見学し
た。時間外に受診するのが癖になる人もいるので、お薬は基本的に 1 日分だけ処方し、翌日の時間内に各診療科の外来受診を促す
のをみて、何でもやってあげればいいというものではないのだと感じた。
5 月 30 日 ( 水 )
実習先:種子島産婦人科医院 ( 早朝 ) 、訪問看護ステーション野の花 ( 午前 )
介護老人福祉施設
百合砂苑 ( 午後 )
内容:実習期間中にお産があったら電話で連絡してもらえるよう住吉先生にお願いしていたため、早朝にお産に立ち会うことがで
きた。前日に触診させていただいた 35 週の妊婦さん (28 歳 1 経産 1 経妊 ) のお産だった。前日の夜にラミナリアという海藻を
乾燥・消毒したものを膣内に入れ子宮頚管を徐々に拡張させ分娩を誘導させていた。子宮口全開大になってから約 30 分程で出産。
経産婦ということもあり進行がスムーズで、いきみ方もとても上手だった。
午前中は一軒のお宅の訪問看護に同行させていただいた。車椅子にこそ乗っているが、 96 歳とは思えないほど元気なおばあさん
と、お世話をしている 60 代の娘さんが出迎えてくれた。看護師の牛野さんが簡単に診察した後、食事管理がうまくいっているか
娘さんに尋ねていた。慢性腎不全で K の値がここ最近高く、制限しなければならない食べ物が多いうえに好き嫌いが激しいので献
立を考えるのに困っているということだった。一度栄養士の方に献立例を考えてもらうことを提案し、娘さんの苦労をねぎらい、
おばあさんのお話も冗談を交えてニコニコしながら聞いてあげて、牛野さんの明るい人柄がこのご家族を支えているのだと感じた。
午後は百合砂苑で施設長の方にお話しを伺った後、利用者の方とコミュニケーションをとらせてもらった。認知症のおばあさんと
ずっとお話させていただいたが、出身地やなぜ種子島に来たのかを何度も尋ねたり、長らく施設を利用しているのに「初めてここ
に来た」「早く帰りたい、家族はまだ迎えに来ないのかしら」と見当違いのことをひたすら繰り返している様子だった。その様子
をみて「お迎えが遅くなるのかもねぇ。遅くなったときのために●●さんの分のご飯と泊まれるお部屋も準備してますからね。」
と告げたヘルパーの方の対応が印象的だった。
5 月 31 日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 ) ・わらび苑 ( 午後 ) ・田上病院 ( 夜間 )
田上診療所では竹野先生の外来を見学させていただきました。「診療所」というととても狭く古びた施設を想像していたのですが、
思っていたよりも立派な建物で、待合の患者さんもとても多く、自分の中のイメージを覆された。患者さんは高血圧か糖尿病か風
邪か腰痛ばかりだった。交代で「共生工房
猿蟹川」という障害者の方の働く授産施設に見学にいった。これまで種子島にはクリ
ーニング産業がなく病院のシーツ類は全て本土に委託していたが、搬送費削減のため種子島内で、かつ仕事があまりない障害者の
人たちにやってもらおうと事業を起こした目の付け所がすごいと思った。一番難しいのは作業のどの工程でもなく、施設利用者間
の人間関係だ、という施設長さんの言葉にはとても重みが感じられた。
わらび苑では施設長・看護師長・リハ主任・ケアマネージャーの方にそれぞれ現状や今後の課題、方針について伺った。その後施
設利用者の方としばらくお話をさせていただいた。
救急外来は前回と比べて患者が多かった。特に印象に残った 2 例を提示する。
症例 1 ) 84 歳男性、主訴は嘔吐。夕方ごろから緑黄色の吐物を嘔吐している。前立腺癌と直腸癌の手術歴がある。聴診上金属音
は聴取しなかったが、腹部の単純 X 線写真で消化管の著明な拡張と小腸ガスを認め、 CT では一部消化管のねじれを認め、絞扼性
イレウスを疑い緊急オペとなった。術後は排ガスもあり順調に回復しているということだった。
症例 2 ) 95 歳女性、ヘルパーさん訪問時に意識障害があり救急搬送された。来院時 JCS Ⅱ- 20 、血圧 198/98 、右片麻痺の
症状あり。脳卒中を疑い頭部 CT を撮ったが陳旧性脳梗塞があるくらいで新鮮な出血はみられなかった。心電図も採血結果も正常。
ソルデム 200 輸液後しばらくすると意識が回復してきた。慢性心房細動の既往があるため TIA と診断。緊急性は少ないと判断し、
帰宅させた。
109
6月1日 ( 金 )
実習先:田上病院 ( 午前中 )
9:00~ 10:00 整形外科外来 ( 山口医師 )
10:00 ~ 11:00 眼科外来 ( 田上医師 )
整形外科外来では骨折や腰痛、脳部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、肩関節炎などの患者さんが受診していた。
眼科ではコンタクトレンズのために受診する方が大半であった。一部眼内異物や麦粒腫、眼底出血の方もみられた。
<感想>
「地域医療」というと、設備もスタッフも足りていない、患者さんとの距離が近い、あらゆる疾患を 1 人で診なければならない、
などのイメージがありました。この 1 週間の実習を通してそのイメージが一部覆されることになりました。田上病院の院内を見て、
ある程度の診療科が揃っており立派な総合病院という印象を受けましたし、田上診療所も想像よりも立派な建物で待合の患者数も
多く、自分が思っていたよりも種子島の医療は進んでいるのだなと感じました。
また、初日に高山先生にうかがった種子島の産科医療存続の危機のお話の中で市民との勉強会を行った、というお話がありました
が、医療者の努力だけでなく市民にも教育をして協力を仰ぎ、「自分たちには何ができるのか」という姿勢で応えてくれる、とい
うまさに「地域一丸となった取り組み」というのは、離島だからこそできたのはないか
と感じました。外来や福祉サービスでのスタッフの方の患者さんへの接し方もとても温
かく、患者さんとの距離が近い医療というのは、患者さんにとって大きな安心を生み、
治療効果にもきっと多かれ少なかれ影響が出てくるのだろうと感じました。
地域の数だけ地域医療の在り方が、離島の数だけ離島医療の在り方があるのだと思い
ます。自分が将来どのような形で地域医療に携わるのかは分かりませんが、今回の実習
で学んだことを活かし、自分の働く場所に見合った地域医療を実践していければと思い
ます。最後になりましたが、田上病院の田上容正先生、田上容祥先生、高山先生を初め
とする医療スタッフの方々、事務長さんを初めとする事務の方々、種子島産婦人科医院の住吉先生を初めとする医療スタッフの
方々、訪問看護ステーション野の花の牛野さん、介護老人福祉施設
百合砂苑の施設長さんを初めとするスタッフの方々、田上診
療所の竹野先生を初めとする医療スタッフの方々、猿蟹川の施設長さん、わらび苑の施設長さんを初めとするスタッフの方々、お
世話になった全ての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。お忙しいところ充実した実習をさせていただき大変ありがとうございま
した。
氏
名
湯地
美佳
5 月 28 日(月)
実習先:田上病院
内容 : 田上病院全体の見学と高山先生の種子島の周産期医療の変革についての授業。
5 月 29 日(火)
実習先 : 種子島産婦人科医院(午前)、田上病院(午後)
内容:午前中は種子島産婦人科医院で外来患者さん、入院患者さんの診察を見学し、簡単な診察を行った。症例1:女性、妊婦検診
でこられた患者さんで、主訴は骨盤位の状態確認と胎児の発育の観察。今回は三人の患者さんがこのような状況でこられた。帝王
切開歴のある患者さんは帝王切開予定なので慌てず体位の指導のみで、経膣分娩の予定の患者さんは体位の指導に加えてお灸で骨
盤位の矯正をはかっていた。症例2:18歳、女性、主訴は 37 週未満での陣痛で入院中である。子宮収縮も認め切迫早産と診断し、
塩酸リトドリン(orマグネシウム)を投与して子宮収縮抑制中である。症例 3:0 歳、女性、新生児健診。頸部や鼠径部に単発の膿
か疹を認めたが単発で軽度の炎症であるため経過観察。午後は田上病院で救急外来の見学をした。症例 4 : 9 歳、男性、主訴は風
邪で、発熱、鼻汁、夜間の咳嗽あるため、L-カルボシステイン(去痰薬)、フェンジソ酸クロベラスチン(鎮咳薬)を処方した。
5 月 30 日(水)
実習先 : 種子島産婦人科医院(午前)、訪問看護ステーション野の花(午前)、介護老人福祉施設百合砂苑(午後)
内容 : 明朝に種子島産婦人科医院で出産にたちあうことができた。子宮口が 7 センチほど開大したところで駆けつけ、分娩を見学
することができた。母子共に状態良好で、胎盤も感染兆候なく、子宮収縮も良好だった。午前中は訪問看護ステーション野の花の
看護士さんと共に 96 歳の女性のご自宅を訪問した。血圧、脈拍数、呼吸数などのバイタルを取りつつ、歓談されていた。慢性腎
不全と下肢痛のある患者さんで痛みのコントロールや食事に関する相談があった。午後は介護老人福祉施設百合砂苑で認知症の患
者さんと会話を試みた。理解できない内容も多かったが、時に意思疎通も可能で、昔の話や歌を歌って過ごした。
5 月 31 日(木)
実習先:田上診療所、猿蟹川(午前)、わらび苑(午後)、田上病院(時間外救急)
内容 : 午前中は田上診療所で外来患者さんを見学した。途中共生工房猿蟹川を見学し塩・黒砂糖の生成過程やクリーニングのシス
テムについてご説明を伺った。症例1:55歳、男性、検査所見は血清グルコース
94mg/dl 、 HbA1c 9.3% 、抗 GAD 抗体 3.2U/ml 、
白内障手術予定がありより厳格なコントロールを必要するが、生活指導に難渋していた。インスリン、ボグリボースを処方した。
症例2:75歳、女性、嘔気などの体調不良で来院。心房細動の既往がある。心電図上特に異常なく、やや徐脈傾向。生理食塩水の輸
液で様子を見た。症例3:54歳、女性、膀胱炎と口内炎で来院。尿潜血反応陽性。レボフロキサシンを処方し、口内炎に対しては対
応を指導した。午後はわらび苑で施設を見学し入所している方とお話した。田上病院に戻り時間外救急を見学。症例1:84歳、男性、
主訴は数日間の食欲不振と昼からの頻回の嘔吐で、吐物は便様。腹部手術歴があり、前立腺がんと大腸がんの既往に加え、大動脈
瘤の合併症あり。腹部聴診で筋性防御なく金属音を聴取しない為麻痺性イレウスを疑った。腹部レントゲン写真上は鏡面像を示す。
110
透析中であるため造影なしの CT を行ったところ腸の捻転と拡張を認めたため絞扼性イレウスと診断し外科 Dr. に連絡をとり緊急
手術が手配された。症例2:84歳、女性、意識障害で搬送されてきた。脳梗塞、 ASO および慢性心房細動の既往があり脳梗塞を疑
って頭部 CT を施行した。 CT 上の所見は陳旧性脳梗塞以外に脳出血や浮腫の所見を認めない。血液所見では貧血および脱水など
の異常所見を認めず、意識の回復が見られ麻痺も増悪傾向にないため、 TIAと診断し一旦帰宅させ翌日診察とした。症例 3:4 歳、
男性。主訴は咳と 39 度代の発熱。機嫌は良好で扁桃腺の発赤 ・ 腫大を認めた。カルボシステイン等を処方し翌日小児科受診を奨
めた。症例4:93歳、女性、主訴は転倒による右下腿の疼痛。内出血を認めるが、腫張はなく骨折を疑う所見もなかったため翌日整
形外科受診を奨めた。
6 月 1 日(金)
実習先 : 田上病院(午前)
内容 : 午前は田上病院で整形外科 ・ 循環器内科 ・ 眼科の外来を見学。症例1:64歳、男性、
角膜潰瘍で入院中。全房蓄膿 ・ 角膜混濁も認め、真菌性と細菌性の可能性を考慮してメ
ロペネムとミコナゾールを結膜下注射および静脈注射した。症例2:75歳、男性、視力低
下と異常視が主訴で、両眼の白内障を認めた。まだ初期の段階であったため、経過観察
とした。症例3:72歳、女性、眼の乾燥が主訴、左角膜に横走性の上皮障害および翼状片
を認めた。ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を処方した。症例4:13歳、女性、主訴は起床
時眼脂で、異常所見なし。レボフロキサシンおよびフルオロメトロン点眼薬を処方した。
4 .遠隔医療実習記録
料亭井元の海鮮丼
使用しませんでした。
5 .感想
種子島に到着した初日は快晴で、さすが風光明媚をもって知られる景勝の地、空の青、海の緑青、砂浜の白、木々の緑・・と色彩
豊かな風景に目を奪われていました。食事も美味しく、特に海の幸が味わい深くありました。このようなのでうっかり観光気分に
浸ってしまいそうになりました。しかし、月曜日に高山先生に種子島の医療について 2007 年の島内唯一の産婦人科の休診宣言か
ら始まる周産期医療の変革と現状を中心にお話ししていただいたことで、この種子島の地に来た本来の目的を再確認し、心機一転
して実習を始めることができました。その日は種子島ライオンズクラブの代表の方々とお食事を交えてお話しする機会をも戴き、
地域医療に対する考え方も、それぞれの視点を伺ったことで、視野が開けたように思います。
火曜日は特に関心のあった種子島産婦人科医院で、妊婦検診をはじめて見学することができました。子宮と胎児の状態を調べる触
診を実際に行うことができ、良い後学になりました。住吉先生も奥様もとても人柄の温かい方で、様々なご配慮を戴き、また妊婦
の方々の快いご承諾もあり、翌水曜日にはご出産に立ち会うこともできました。出産は何度関わってもそれぞれの感動があり、ま
能野海水浴場近く
た医学的にも気づかされることが多いものでした。火曜日午前の
新生児健診で産まれて間もない赤子の心音を聞くと心も和みまし
た。
水曜日午前に出産に立ち会うことができ、モチベーションが更に
上がってきたところで訪問看護ステーション野の花、介護老人福
祉施設百合砂苑を見学し、高齢社会の現状と向き合いました。盲
目で認知症である患者さん ( この表現は余り良いものではござい
ませんが、適切な言葉が浮かばずすみません ) とお話しする機会
があり、幾度もある決まったジェスチャーを行うので不思議に思
っていたところ、最後のほうでその行動が過去の生活から来ていることが分かり、患者さんのこれまでの人生の一片を垣間見たよ
うな気がして、印象に残りました。
木曜日は、実習後半と言うこともあり弛みがちな自分を戒めるかのように多くの症例を見学できた日でした。特に午後の田上病院
の時間外救急では重症の患者さんが立て続けにいらっしゃり、緊迫した雰囲気に包まれました。一見非常に厳しい状態であると思
われた患者さんがルートを取り始めたとたん意識を回復してゆかれ、その日の内に一旦病院から出られるようになったことや、身
体所見では緊急性の高い兆候を余り示していないのに、画像所見をとったら急遽先生方を呼び出す必要のある症例があったことで、
自分の経験不足と勉強不足を痛感した 1 日となりました。そのような大変な状況にもかかわらず、冷静に対応されていた医療関係
者の方々に尊敬の念を感じました。
金曜日は田上病院外来の見学をし、大学病院とはまた異なったやり方もいくつか
あり、こういったやり方もあるのかと眼からうろこが落ちました。最後は西之表
市副市長の種子島様と、高山先生とのお食事で楽しく締めくくらせてくださりま
した。
最後に、乱文ではございますが、貴地実習にご助力くださった皆様に厚く御礼申
し上げます。周到なご計画とご尽力により短期間で充実した実習を行うことがで
きました。毎日美味しいものばかりいただくことができて幸せな 1 週間でした。
誠にありがたく存じます。また貴地でお会いすることあれば、よろしくご教導お
願いいたします。末筆ながら、重ねて御礼申し上げます。
プリンセスわかさ
111
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
生駒
尚子
6月4日 ( 月 )
実習先 : 田上病院
内容 : 麻酔科の高山先生から , 2007 年に種子島で起きた島内で唯一の産婦人科休診と , それに対しどのような対策が取られ現在に
至っているのかという話を伺った . 種子島の産婦人科医院休診の話は当時新聞でも大きく取り上げられ , 私自身も注目してみてい
た . 島民の意識が「なぜやめるのか」というものから「何が必要なのか , 何ができるのか」へと変わった , というような記事をみ
て , 何がきっかけでこの変化は起きたのだろうと思っていたのだが , 今回の高山先生から島民に語った具体的なエピソードを伺い ,
合点がいった .
また , 現在高山先生が島内で実施している「いのちの授業」についても伺った . 授業を受けた中学生の感想やその感想に対して高
山先生が書かれた返事も拝見した . 1 人 1 人の学生に返事を書く真心 , 1 人 1 人と向かい合う感覚を忙しくとも忘れてはいけない
と感じた .
6月5日 ( 火 )
実習先 : 種子島産婦人科医院
内容 : 外来見学と新生児健診見学
外来の多くは妊婦健診であった . 2 名の腹部触診をしたのだが , 背中がどちら側にあるのかを判断することはできなかった . 1 名
は骨盤位になっており子宮底に頭部を触れた . 骨盤位に対しては , 睡眠時の体位とお灸についてアドバイスがあった . また , 36 週
を超え「おなかが張っている」と訴えて来られた患者さんが 2 名いた . そのうち 1 名は子宮口の広がりや NST により陣痛だと判
断され入院となった . もう 1 名は自宅待機となった .
新生児健診は 3 生日の男児 1 名の見学をした . 田上病院から小児科医が派遣され健診を行っていた .
6月6日 ( 水 )
実習先 : 訪問看護ステーション野の花 ( 午前), 介護老人福祉施設百合砂苑 ( 午後), 田上病院 ( 夜間 )
内容 : 訪問看護同行 ( 午前), 介護老人福祉施設百合砂苑訪問 ( 午後), 救急外来見学 ( 夜間 )
午前 , 訪問看護に同行し , 86 歳女性のお宅に伺った . うっ血性心不全の患者さんであった . 訪問前に確認したところサービス内容
として全身状態の観察 , バイタルチェック , 病院・主治医との連携 , 皮膚・口腔内観察 , おむつ交換 , 食事・水分摂取量確認 , 在
宅介護の相談・助言 , 緊急時の相談・対応が記されていた . 実際に訪問し見学すると , 決められた時間以内に看護師さんが手際よ
く上記の処置のほとんどを行い , その間も明るい声でご本人やご家族と話をしている姿が印象的だった . また , ウェットティッシ
ュの保温器やペットボトルのふたの部分につける水の出方を調節する器具など , 便利グッズがたくさんあることも印象的であった .
日頃は座って疲れるのも忘れて折り紙やテレビに夢中になっている , という話を伺い , くれぐれも無理をして心臓に負担をかけ過
ぎないように念押しをした .
午後 , 介護老人福祉施設百合砂苑を訪問した . オープンスペース・廊下・個室すべてが広々としており , 天窓で外の光が入るよう
にもなっていた . 施設長から施設についてと施設の方針について説明を受けた . 入居者の平均年齢は 87 歳 , 平均要介護度は4.1,
現在の待機人数は約 130 人とのことだった . 入居者の心のケアに重点を置いているとのことで , 入居者の年齢や要介護度をみると
決して楽ではないであろうに , 認知症の入居者の徘徊には , 本人が落ち着くまで辛抱強く付き合うようにしているという話は驚か
された . 開かれた施設を目指し中高生のボランティアも受け入れていた . 入居者さんの心を和ませるのに一役買うべく犬や猫も敷
地内で飼育していた . 「心のケア」という目標に沿い , 様々なことに挑戦している印象を受けた .
夜間 , 田上病院で救急外来を見学した . 自宅のアルミサッシで指を切った小学生や腹痛と血便を訴える 30 歳代男性 , 顔に友達の
頭がぶつかり呼吸がしにくいと訴える小学生などが訪れた . 印象的だった症例 : 80 歳代男性
農作業中に鎌で自分の下腿を切り ,
出血が止まらないと来院した . カルテから抗凝固剤を服用していることが分かった . 創部の状態と出血が止まらないことから創部
を縫合し包帯で圧迫をした .
6月7日 ( 木 )
実習先 : 田上診療所 , 共生工房
猿蟹川 ( 午前), 介護老人保健施設わらび苑 ( 午後 )
内容 : 外来見学 , 猿蟹川見学 ( 午前), 介護老人保健施設わらび苑見学 ( 午後 )
午前 , 中種子町の田上診療所で外来見学を行った . 印象的だった症例 : 60 歳代男性 2 年前虫垂炎に伴う腹膜炎を 2 週間放置した
後 , 入院・手術を施行された . 現在人工肛門を用い , 小腸皮膚瘻が完治していなかった . 心窩部と臍部表面はケロイドになってい
た.
共生工房猿蟹川では , 施設の説明と施設見学を行った . 猿蟹川では , 種子島内の病院や診療所のリネンのクリーニング , 黒砂糖の
生産 , 塩の生産を行っていた . 特にクリーニング事業に関しては , 猿蟹川ができるまで種子島内にリネンのクリーニングを扱う場
所がなく本土に送っていたため , 現在は種子島内の病院や診療所などがすべて猿蟹川を利用しているとのことだった . そのため ,
利用者に支払われる金額も全国平均を大きく上回っているとのことだった . 黒砂糖や塩の製造施設は , それぞれが昔ながらの窯や
海水の塩分濃度を濃縮する採鹹装置を敷地内に建設し使用していた .
6月8日 ( 金 )
実習先 : 田上病院
内容 : 外来見学
循環器内科 , 眼科 , 整形外科の外来を見学した .
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循環器内科 : 患者さんの多くが手術後の定期フォローの患者さんや特定健診の受診者であった . 医師と顔見知りの患者さんが多く ,
リラックスして話しているように見えたが , 中には白衣高血圧で , 病院ではどうにも高い値が出てしまう、という患者さんもいた .
眼科 : 術後の患者さんや , 白内障や緑内障の定期フォロー , 「見えにくい」 , 「目が痛い」という患者さんがいた . 「目が痛い」
と訴えてきた患者さんは 2 名とも目に異物が入っており , 医師がピンセットで取ると楽になったと帰って行った . 「見えにくい」
ことを訴えてきた 80 歳代の患者さんは , 検査の値は前回と特に著変なかったため , 眼鏡をきれいに拭いたところ , よく見えるよ
うになったと帰って行った .
整形外科 : 脊椎すべり症・腰椎椎間板ヘルニアの手術予定の患者さんとご家族への手術の説明に同席した . 疾患の説明と手術が必
要な理由 , 2 度の手術を予定していること , ご本人の貧血が強く , 出血も考えると輸血が必要になるであろうこと , 手術上のリス
クなど , 医師が時間をかけて説明した .
4.遠隔医療実習は実施しませんでした .
5. 感想
今回の離島・地域医療実習で種子島を希望したのは , 個人的な理由も大きかったのだが , 2007 年に鹿児島県全体を揺るがした池田
医院閉鎖の問題が , 現在どのように改善されたのかを見てみたいとの思いからであった . 初日に田上病院麻酔科の高山先生からオ
リエンテーションとして池田医院閉鎖の問題が起こるまでの状況と問題になった時の島の様子 , そこから産婦人科医院の存続を目
指して様々な話し合いや協力が成され今に至っていること , 現在も今後を見据えてさらなる改善に努めていることについて話を伺
い , 圧倒された . 当時ほぼ新聞の情報のみを見ていた私がうかがい知ることの出来なかったことを今回知ることができた . そのお
話を伺った後で種子島産婦人科医院の住吉先生とお話をした時に , 隔週土日の完全休養日について「いつ電話が鳴るんじゃないか
という緊張感から解放される日があるというのは本当に気が休まる」と仰っていたのが本当に印象的であった . と同時に , その
「気が休まる」日がなかった池田医師のことを考えると日々がどれほど大変だったことだろうと心が痛んだ .
種子島へ来て , 種子島の周産期医療の問題解決のため , 島民や行政 , 他病院や大学を巻き込むスケールや , そのスケールを実現す
るための視点や実行力が必要であったことが分かった . 私自身もこのような視点の置き方が少しでもできるように成長していきた
いと感じた .
今回の実習で反省したことは , 訪問看護でのことである .
私が訪問した時 , 患者さんはベッドで横になり私たちを待っていた . 後で , 日頃はいすに座り , 疲れるのも忘れて折り紙やテレビ
に夢中になっている , という話を伺い , ベッドに寝ている状態でしか会っていない私は無意識のうちに , 彼女のことを必要以上に
「動けない患者さん」と認識してしまっていたことに気づいた . その足かせが , 患者さんになんと話しかけたらよいのだろうとい
う奇妙な萎縮のようなものにつながっていたのだと分かった . 「患者さんは患者さんだけれどその前に 1 人の人間」だということ
を常に忘れないようにと思ってきたが , 今回の経験は私自身にとってよい教訓となった .
1 週間の実習は , 本当にたくさんの方々に協力していただいていた . 本当に有難く , むしろ申し訳ないくらいで頭が下がるばかり
だった . 本当にどうもありがとうございました .
氏
名
鈴木
純貴
6月4日 ( 月 )
実習先:田上病院 ( 午前 )
内容:午前中はまず徳永事務長とオリエンテーションを行い、そのあと病院長先生と理事長
先生のところへ挨拶に伺った。次に麻酔科部長の高山先生から種子島産婦人科ができるまで
の経過や、先生自身が行っている「命の意味」の活動についてのお話を伺った。午後は病院
の近くにあるてっぽう館に行って種子島の今までの歴史全般、特に馬毛島でのとびうお漁や
鉄砲の伝来について勉強した。夕方 18 時からも高山先生の話の続きをビデオを交えながら
してもらった。
6月5日 ( 火 )
( 白谷雲水峡のくぐり杉にて )
実習先:種子島産婦人科 ( 午前 )
内容:午前中は種子島産婦人科で外来診療を見学。途中で田上病院の小児科の先生が新生児検診に来られたのでそちらも見学。午
後は観光する時間をいただいたので、南の方にある種子島宇宙開発センターにロケットを観に行った。
6月6日 ( 水 )
実習先:訪問看護ステーション野の花 ( 午前 ) 、特別養護老人ホーム百合砂苑 ( 午後 ) 、田上病院 ( 夜間救急 )
内容:午前中は訪問看護を 1 件見学させてもらった。
午後は特老で小浜施設長のお話を聞かせてもらった後、施設に入居されている方々としゃべる時間を設けていただいた。
夜は 18 時から 21 時まで田上病院で夜間救急を見学させてもらった。症例 1 : 84 歳、男性。主訴は止血困難。畑で農作業中に
誤って自身の鎌で左の下腿を切った。ペースメーカーを入れているため抗凝固薬を内服中。所見としては左下腿に 4 ㎝程の切創を
認める。止血のため 4 針縫合。抗生剤も処方し、明日もう一度整形外科を受診することとなった。
6月7日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 ) 、介護老人保健施設わらび苑 ( 午後 )
内容:午前中は中種子町にある田上診療所で外来診療の見学。途中で社会福祉法人百合砂
共生工房
猿蟹川にも見学にいった。
午後は老健わらび苑で有川施設長や介護部長、リハビリ科部長の話を聞いた後、施設に入居している方とおしゃべりをさせてもら
った。
113
6月8日 ( 金 )
実習先:田上病院 ( 午前 )
内容:午前中は 3 人で交替で循環器内科、整形外科、眼科の外来診療を見学させてもらった。症例 1 : 46 歳、女性。主訴は右膝
痛。変形性膝関節症の診断でひざが痛むということで膝関節に穿刺を行い、黄色の濁った関節液を 10ml 引けた。ヒアルロン酸を
注入し、鎮痛剤が処方された。掌蹠膿疱症をもともと持っているということで、その合併症としての関節炎と考えられるというこ
とであった。症例 2 : 49 歳、女性。主訴は腰痛。所見としては SLR テストで 60 度で陽性であった。これらより腰椎椎間板ヘ
ルニアが考えられ、確定診断のために後日 MRI をとることとなった。午後は 14 時発のフェリーで市内に戻った。
1 .遠隔医療実習記録
離島実習中は行わなかった。
2 .感想
私はサッカー部に所属している。サッカー部の OB 会長をしてくださっている住吉稔先
生が産婦人科医のいなくなった種子島に赴任されて島で唯一の産婦人科医として頑張って
いらっしゃるということを下の学年のころから聞いていたので、自然と住吉先生のいらっ
しゃる種子島を実習先に選んだ。群馬出身で、鹿児島に 6 年いたからには一度くらい種子
島に行っておきたかったというのも理由の一つである。ここからは少し余談ではある
( 住吉先生とサッカー協会の方々と観戦 )
が、僕は仲の良い友人と一緒の実習になることができたので(種子島は人気なのか一
番倍率が高かったので奇跡的!)、その二つ目の理由を更に広げるために、実習の前に二人で一日屋久島を観光してから種子島に
行くこととなった。屋久島では時間の関係上屋久杉には行かず、もののけ姫の森のモデルになったとされる白谷雲水峡に行った。
ガイドブックを見ると、屋久杉のコースに比べると登山道も楽そうなので軽い気持ちで向かったが ( 友達はクロックスで行った。
登山をなめてるとしか思えない ) 、途中からは豪雨も重なりとても険しい登山道だった。それでも往復 4 ~ 5 時間のコースを 2 時
間で回って、五右衛門風呂の温泉に入る時間的余裕をもって、離島の自然の険しさや壮大さ存分に感じつつ種子島行きのフェリー
に乗った。種子島に着くなり住吉先生に連絡すると、さっそく飲みに連れて行ってくれるということであった。そう、この日は絶
対に負けられないサッカー日本代表のW杯最終予選オマーン戦があったのである。居酒屋で試合を見始めると、熊毛郡のサッカー
協会の会長やら理事長の偉い方たちとバッタリ会い、一緒に飲むこととなり熱いサッカー議論が試合終了まで延々と繰り返された。
結果は日本の快勝ということで、昼間の登山の疲れも相まって寮に着くとすぐに心地よい眠りについた。
田上病院をはじめとする種子島での実習はとても充実していた。中でも田上病院の徳永事務長さんと麻酔科部長の高山先生には
とてもお世話になった。徳永事務長さんはとても学生思いの理解のある方で、週の始めの方はまず種子島のことを知ってほしいと
いうことでてっぽう館や宇宙開発センターに観光に行く時間を下さった。もともと離島などの僻地医療に興味があった私のような
人にとってはその地域のことを知れるというのはその地域への愛情に繋がり、将来その地域で仕事をしたいという目的にもなり得
るしとても大事なことだと思う。高山先生は田上病院で唯一の麻酔科医でありながら島の産婦人科医問題にも積極的に関わってき
た方で、そんな最前線で活躍してきた高山先生から裏話なども交えながら実際に当時の公立の種子島産婦人科が出来るまでの苦労
話を聞くととてもリアルで興味深かった。また、高山先生の話では地域医療は疾病だけを診るのではなく人を診る、患者さんや行
政などとも距離が近い!ということであったが、まさにその通りだと思った。私たち学生にいろいろな人と島でかかわってほしい
という考えのもと、木曜日のお昼には種子島の種子島副市長さん(強烈な名字。殿様の家系!)と、夜には南日本新聞社の記者さ
んと食事に連れて行ってもらい、医療だけに限らず島のことをいろいろと知れたので良かった。馬毛島の米軍基地移転の話なども
これからは興味を持ってニュースを聞けそうである。
老健や特老などを見学する中で島の現状なども知ることができた。特に印象に残っているのはわらび苑の介護部長さんの話で、そ
の方は大阪で働き始めてから種子島に来たが、多くの職員さんは島の出身で働くところが限られているために介護の仕事をしてい
るという感じで、資格を取ったり積極的にしない人もいるとかで大変だなと感じた。
最後に、改めて住吉先生には本当にお世話になり過ぎて感謝の言葉しか出てこない。僕たちが種子島に到着した日曜日にはなんと
昼間はサーフィンの大会に出ていたということでそのアクティブさには感心させられたし、以前の二の舞にならないようにサポー
ト体制が充実したうえで、それくらいの元気が先生自身にもあって島での生活を楽しんでいるからこそ、島で唯一の産婦人科とい
う役割をこなせるんだなと思った。この 1 週間で、住吉先生が島の人たちにとって如何に大事な存在か確認できる機会がたくさん
あった。私も将来離島で勤務できるかはわからないが、先生のように地域の方々に信頼されて医療ができるようになりたいと強く
思った。素晴らしい実習をありがとうございました。
( 住吉先生には火曜日にもご馳走を食べに連れて行ってもらった )
( 住吉家の愛犬・モモちゃん。
もっと上手に撮りたかった… )
114
氏
名
保坂
優斗
6月4日 ( 月 )
実習先:田上病院
内容:オリエンテーション、施設案内、高山先生のミニレクチャー。
6月5日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院
内容:住吉先生の外来を見学。主に妊婦検診。
症例 1 : 27 歳、女性、妊娠 35 週、エコーにて胎児の児頭大横径と腹部を測定しその値から体重を推定。胎児推定体重 2408g 。
母体が HBs 抗原陽性であり、産道感染を来す恐れがあるため出産後胎児に HB ワクチンと免疫グロブリンを投与することを説明。
出生後 48 時間以内と 2 カ月後に抗 HBs ヒト免疫グロブリン投与し、 2 か月、 3 か月、 5 か月目に HB ワクチンを投与するとの
こと。
症例 2 : 26 歳、女性、妊娠 36 週、胎児推定体重 3104g 、軽い陣痛があり、ビショップスコアでも高い値を示したため、近日中
に生まれるということが予想され、そのまま入院。
症例 3 : 24 歳、女性、妊娠 29 週、胎児推定体重 1486g 。前回受診時は正常位であったが、今回骨盤位になっていることが判明。
逆子体操や寝る向き、お灸を足の小指の付け根に添えると良いことを説明。
症例 4 : 47 歳、女性。主訴:排卵痛、子宮頚癌検診。前回の受診にて、子宮筋腫があることがわかっており、経膣的に超音波を
施行。筋腫の増大認めず、 1 年間経過観察。排卵痛に対しては鎮痛剤を処方。
症例 5 :女児。 1 ヶ月健診のため受診。主訴:特になく、気になる点としては便が 2 日に一度しか出ないことが時々あるとのこと。
腹部の膨隆なく腹部の聴診、触診にて器質的な疾患の可能性は低いと判断。その他、発達の遅れがないか、 Moro 反射、大泉門の
膨隆、股関節脱臼の有無、心雑音の有無などを診察。
6月6日 ( 水 )
実習先:訪問看護ステーション野の花 ( 午前 ) 介護老人福祉施設百合砂苑 ( 午後 ) 田上病院救急外来 ( 夜間 )
内容:午前中は 2 件の訪問予定があり 1 件は女性限定ということで 1 件のお宅を訪問。 96 歳、女性、高血圧、慢性腎不全を患っ
ており現在は下肢の疼痛により歩行困難のため訪問看護を頼んでいるとのこと。血圧の測定、体温、食事量などを問診後、腎性貧
血の予防のためエポエチン ( エリスロポエチン製剤 ) 皮下注施行。
午後から百合砂苑では、施設長の小濱さんから百合砂苑が独自に行っている取り組みについての話をお伺いしたあと、入所者の方
とお話させていただく時間を設けていただいた。
夜間の救急外来には 5 件の受診。
症例 1 : 84 歳、男性、主訴は左足の出血が止まらない。抗凝固薬と抗血小板薬を内服している方、農作業中、鎌で左下腿内側を
誤って切ってしまい、自ら止血を試みるも 10 分以上圧迫しても止まらなかったため受診。傷は切創で3cm程度、深さは皮下まで。
消毒後、 3,4 分圧迫を試みるも出血が止まる様子が無かったため、傷口を洗浄、ブラシで軽く擦った後縫合。
症例 2 :小学生低学年の女の子、窓のサッシで左手第 4 指をはさんだため母親と伴に受診された。指先に1cm程の傷口があり、傷
口から皮下組織が盛り上がっていたため、消毒後、縫合。
6月5日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 ) 、授産施設
猿蟹川 ( 午前 ) 、介護老人保健施設
わらび苑 ( 午後 )
内容:午前中は田上診療所で外来と、授産施設猿蟹川を見学させていただきました。
田上診療所の外来では高血圧や糖尿病などの基礎疾患に対して定期フォローのため受診する患者さんがほとんどでした。
介護老人保健施設の目的に ADL の向上、在宅復帰が掲げられているが、現場の介護士やリハスタッフの声を聞き、理想と現実の
ギャップがあり在宅復帰させるためには医療制度、スタッフ、支える人々、さまざまなところに多くの課題があるということを学
びました。
6月6日 ( 金 )
実習先:田上病院外来 ( 午前 )
内容:眼科、整形外科、循環器内科の外来を見学。
症例 1 : 50 代男性、緑膿菌角膜感染症の治療中の患者さんで治療前と治療経過中の写真を見せていただきました。治療は抗菌薬
の点眼、眼球結膜への抗菌薬の注射を施行。
症例 2 : 77 歳女性、主訴は両側大腿部のしびれで整形外科を受診。 MRI の所見より腰椎すべり症と診断。鎮痛剤や湿布による
疼痛管理を続けても痛みがひどく日常生活に支障を来すようであれば手術を検討するということで、しばらく経過観察。
症例 3 : 70 代男性、心筋梗塞後の心不全の経過観察を行っている患者さん。経過は良好で、降圧薬と抗脂血症薬の内服継続。
1.感想
鹿児島港よりフェリーで 4 ~ 5 時間、高速船トッピーなら 2~3 時間で着く種子島。人口はおよそ 32,000 人、 1 市 2 町の比較的大
きな島で、聞いていた以上に大きい島だなという印象を受けました。実習を通して種子島の人々と話をして感じたことはご高齢な
方もよく喋りよく笑い明るい人が多いということ、若者も島をこよなく愛しているということです。サーフィンをするためだけに
大都会から移住してきた若い人々が多いことにも驚きました。
実習をさせていただいた田上病院は種子島の医療の中核をなしており、 1 日の外来患者数はおよそ 400 ~ 600 人、病床数は 200 床、
常勤医は 16 名の病院です。西之表市の人は風邪や軽い怪我の場合でも受診するので、もちろんプライマリーな領域を診る病院で
あり、中種子、南種子で診ることが出来ない症例が集まって来るため、病院自体に専門性も求められます。さらに、本土から近い
115
こともあり大学病院から派遣される先生方が多くいらっしゃるため、他の島なら本土に送らないといけないような症例も疾患によ
っては島内で治療を完結させるが出来るということでした。高山先生のお言葉をお借りしますと、一次〜三次医療まで手がけてい
る病院だということです。これはとても素晴らしいことだと思いました。島民としても島内で医療が完結出来ることに越したこと
はないからです。ただ、これが他のどの島でも成り立つかというとそうではなく、疾病頻度から見て医療経済的に成り立つかどう
かが極めて重要だということです。医療機器のコスト、ドクターのコストを踏まえて病院の規模を考えないとたちまち破綻してし
まうということでした。では、なぜ一部の分野では高度な医療が出来るのか、意外に答えは簡単でした、幅広くみられるドクター
が専門的な知識と技術を持っているからということでした。私は将来、離島医療に貢献したいと思っているのですが、ジェネラリ
ストを目指すべきか、専門性を持つべきか悩んでいた私にとっては高山先生のお話は非常にためになりました。
また高山先生からは現在の種子島産婦人科医院の前身である池田医院が抱えていた離島ならではの周産期医療の問題点 ( 具体的に
は、大学、行政からの支援不足、民間との連携の難しさ、異常分娩の増加、島民の周産期医療に関する意識など ) 、池田先生の休
診宣言を受けてどのように周囲は変化していったか、また公立の種子島産婦人科医院になってどこが改善されたかなどをお話いた
だきました。上では島内で医療を完結出来るなら島民としてもありがたいと書きましたが、精神的な面だけでなく、母子の身体的
負担、経済学的な面からみても島内でお産を出来ることは非常に大切なことだなと感じました。
上で述べたように高山先生から種子島の周産期医療について色々と聞いただけに種子島産婦人科医院はとてもシビアな状況なの
ではないかと思って実習に臨んだのですが、産婦人科医院の院長である住吉先生を始め、スタッフの方々は非常ににこやかに妊婦
さんや患者さんに接しておりとてもいい雰囲気で診察が行われていました。住吉先生のお力や人柄によるものもあるかもしれませ
んが、公立の病院になってから行政の力もあって、助産師さんの数を増やすことが出来たこともその一因かなとおしゃっていまし
た。
種子島産婦人科医院の住吉先生と医院の前で。
住吉先生には夜もご馳走してもらい産婦人科の話、学生時代の話、サッカーの話とても楽しいお話を聞かせていただきました。お
忙しい中本当にありがとうございました。
今回の離島実習を通して改めて離島医療の抱える問題点、大変さを痛感させられたのと同時に、離島医療の魅力も感じることが出
来ました。それは、小さな医療圏であるぶん、住民の意識が変われば、行政を巻き込んで問題を改善出来るということです。本土
では問題にならないようなことかも知れませんが、地域一体となって問題に取り組
む姿勢は大変魅力的だなと思いました。そして、なによりの魅力は患者さんとドク
ターの距離感が近いこと。先生も患者さんのことを覚えており患者さんと冗談交じ
りで会話しながら診察をしており、患者さんもリラックスした状態で診察を受けて
おり先生に全幅の信頼を置いている姿はとても印象的でした。
今回の離島実習を通して、先生方、医療スタッフの方々、事務の方々、施設の
方々、患者さん、多くの方々のおかげでとても貴重な経験をさせていただきました。
お忙しい中色々と対応して下さり非常に暖かく接してくださり本当にありがとうご
ざいました。この経験を生かして医師として活躍出来るよう日々勉学に励んでまい
ります。
氏
名
神門
洋介
6 月 25 日(月)
実習先:田上病院(午前)、麻酔科医高山先生の講義
離島医療は一次医療が中心であるが、離島に住んでいる方々は当然二次医療、三次医療とも本土と同レベルで享受されるべきで
あり、そのために搬送のシステムなどが整えられているが、離島ですべての医療が完結することがやはり一番良い。しかし、コス
ト面などを考えるとどうしても設置できない機材はあるということであった。医療経済の事も考える必要がある。
また、離島医療をするうえで重要なことは患者さんとの距離は本土より確実に近いということであった。これは人口が少ない地
域の特色であり、都市部では絶対にないことである。現に高山先生も種子島では知らない方はいないのではないかと思うくらいで
あった。
6 月 26 日(火)
実習先:種子島産婦人科医院(午前)、田上病院(夜間)
産婦人科医院では妊婦健診と 1 か月健診を見学させていただいた。妊婦健診では、エコーを使って胎児の観察をされていたが、
胎児頭殿長などから体重を推測したり、性別を推察したりなどとても勉強になった。妊婦の方は住民票が種子島にない方も多く、
いわゆる里帰り出産というような故郷に戻って出産する方も多いようであった。
1 か月健診では吸啜反射、 Moro 反射、心音、呼吸音などを確認し、乳児が健康に育っているかを確認していた。
夜間救急では、症状として血尿、 39 度台の発熱のある高齢者がまず救急車で搬送されてきた。心電図には左脚ブロックはある
ものの、他に異常所見はなかった。その方は田上病院に入院歴があり、末期の肺癌であり、おそらくはそれに伴う免疫力低下によ
る尿路感染症あるいは肺炎であった。患者さんはルートをとり、全身状態を確認した後、呼吸器病棟に入院となった。
次に、感冒症状のある小児が母親とともにウォークインした。救急の時間帯ではあったが、重篤感はなく、熱も 36 度台であった
ため、感冒薬を処方して経過観察となった。
夜間救急を終えた後は、種子島産婦人科医院の住吉先生にお食事に連れて行っていただいた。そこでは、先生の島での医療を初め、
その前にどのような人生を歩んできたかを聞かせていただき、本当に貴重な時間となった。
116
左図:住吉先生との食事の様子
6 月 27 日(水)
実習先:田上診療所(午前)、百合砂
苑(午後)
午前中は田上診療所で外来の見学を
させていただいた。この診療所では特
に○○科と掲げることなく、すべての
科を、しかも一人でされていた。外来
にいらっしゃる患者さんは、皮膚科、
耳鼻科、脳外科、消化器科、循環器科
など様々であり、診察される先生の専門は心療内科であったが、即座に診療できる先生の偉大さがよく伝わってきて、私も自分の
専門分野だけではなく、ある程度までは全科に渡って診察できるようになりたいと思った。様々な主訴の患者さんがいらっしゃる
が、意外と多かったのが皮膚科の患者さんであった。よくメジャー科とマイナー科などとは言われるが、実際にはいわゆるマイナ
ー科の方が患者さんの需要はあるのかもしれない。
午後は老健施設である百合砂苑へと伺った。百合砂苑では施設の説明などを特に受けたわけではなかったが、そこにいらっしゃ
る入所者の方々と 2 時間程度お話をすることができた。認知症を患っている方が多かったものの、殆どの方は病院で見かけるより
も元気にされていて、種子島の歴史や、その方の昔の話、戦争の時の話など、たくさんの貴重な話を伺うことができた。
6 月 28 日(木)
実習先:田上病院透析室(午前)、わらび苑(午後)
田上病院の透析室に午前中は見学に行かせていただいた。この病院の透析は本土とほぼ変わらない設備であるため、殆どの透析
が必要な患者は田上病院で療養可能ということであった。ただし、常勤の先生はいらっしゃらず、非常勤で 1 人の先生が週に数日
間来るというのが現状であり、コメディカルの人員は足りているように感じたものの、全体としてマンパワーは確実に不足してい
た。透析を受ける患者さんの基礎疾患のほとんどは糖尿病であり、これは本土と変わらないものであった。中には両足のアンプタ
を施行された方もいらっしゃったが、前向きに生きておられるということであり、感心した。
午後は前日と同じような老健施設であるわらび苑の見学をさせていただいた。ここでは、特別養護老人施設などの施設がどのよ
うな歴史的背景でできたかを教わり、また種子島の老健施設の特徴についても話していただいた。講義の後は、そこに入居されて
いる方と 1 時間半くらいお話をさせていただいた。話をさせていただいた方の殆どが重度の認知症を抱えており、何度も名前を尋
ねられる、同じことを繰り返すなどの言動がみられたものの、双方で快くコミュニケーションがとれていたように思えた。
実習の後、高山先生と南日本新聞社の方に食事の機会を設けていただいた。そこでは、高山先生の麻酔科としての人生の歩みや、
ここ数年で種子島で起こった医療に関するイベントを話していただき、これも種子島の医療を知るうえでとても貴重な時間となっ
た。
下図:その時の料理
6 月 29 日(金)
実習先:田上病院(午前)
整形外科外来と小児科外来の二つの科の見学をさ
せていただいた。整形外科外来では、高齢者の好発
骨折である橈骨遠位端骨折、腰椎圧迫骨折、大腿骨
頚部骨折の治療後のフォローの患者さんが多かった。
種子島では整形外科は活発に活動しており、殆どの
外傷は島で対応できているらしかった。
小児科の外来では、浮腫を主訴とし、蛋白尿、低アルブミン血症、高コリンエステラーゼの検査結果が出たネフローゼ症候群の
患児を診ることができた。この患児はステロイド治療をされているらしかったが、ステロイドには発達障害の副作用があるので、
慎重に投与していかなければならないということであった。他には、発熱を主訴としたレンサ球菌陽性の患児を診させていただい
たが、咽頭の発赤ありで、アンピシリンを処方されていた。ただし、この患児の兄弟は当日に手術のための検査を予定されていた
が、レンサ球菌の潜伏期間が 2 ~ 3 日であったため、その患児の手術は延期となった。
種子島での少子化は本土よりも進んでいるのか、小児科の患児は少なく思えた。
外来見学終了後、高山先生とともに、種子島の市長と食事の機会を設けていただい
た。初めて市長という役職の方との食事であったが、とても気さくに話していただい
た。市長からは種子島の医療体制が成り立つまでのことを詳しく聞くことができた。
お忙しい中に時間を作っていただき、本当にありがたかった。
4 .感想
離島での生活を 1 週間ほど経験したが、確かに繁華街といえる程のものや、大型ショ
ッピングモール、遊覧施設などはないものの、生活する分には全く不自由なく暮らし
ていけることが実感として分かった。自然に囲まれているので、簡単に遊泳できたり、
山に登ったりとできそうであった。また、山岳から見る景色は絶景であった。ただ、
117
西之表港
高等学校や研究施設の充実加減を見ると、やはり子供の教育面、自分の医師としての駆け出しの時期の事を考えると、不便である
こともまた確かであると思う。
しかし、種子島で経験したような、のどかではあるが充実した日々の事を考えると、ある程度の技術と知識が身に着いた 50 ~
60 歳代になってから、このような離島で働けるのであれば、是非働きたいと思った。
医療の面から考えると、先述したように、離島医療は間違いなく一次医療である。しかし、離島の住民は二次医療、三次医療とも
本土と同じように享受できるべきであり、行政はそのような体制を整えていかねばならない。また、私たち医療人もそれに協力し
ていかなければならない。もちろん、離島の方々もそうなるように、離島の経済を支える人物や医療人の輩出などの努力はしなけ
ればならないのは当然であると思う。各々が協力することで、離島僻地の医療も、都市部での医療も成り立つのだと思う。
最後に、今回の実習を受け入れてくださった田上病院、種子島診療所、田上診療所、百合砂苑、わかさ苑のスタッフの方々、本当
にありがとうございました。今回の実習で学んだことを今後に活かせるように日々精進していきたく思います。
氏
名
戸田
薫
6 月 24 日(月)
実習先;田上病院
担当:高山千史先生(麻酔科部長)
内容;現種子島産婦人科が、以前池田病院であったころ、種子島で唯一の産婦
人科医師が休診をするということで、種子島でお産ができなくなる、という出
来事を発端にして、離島における周産期の恒久的なシステム作りをどのように
していったか、どんな困難があって、どう解決していったかを講義していただ
いた。問題点としては、まずは年間に最大で約 250 件ものお産を一人の産婦人
科医が取り扱うということに対して、種子島の住民の方々、および周囲の医療
関係者をも、あまり重く受け止めておらず、どれだけ危険であるかを理解していなかったということが挙げられていました。島内
で最初に行われた第 1 回の説明会では、医療的な説明からのアプローチでの説明のためか、島の住民からきこえてくるのは、危機
管理がまずいのでかえていこうというよりは慰留を願う発言が多く聞こえてくるといった、話し合いが進まないという状況でした。
第 2 回には、高山先生がどれだけ危険で産婦人科医をバックアップしていく体制作りを行うことがいかに大事かを語っていくこと
で、島民の意識もだいぶ変わっていったようです。その後、大学病院産婦人科、自治体、周辺医療関係者が奔走し、現在の種子島
産婦人科が成り立っているということを学びました。その後も、助産師の退職に伴う募集に関するやり取りなども非常に大変であ
ったことを聞くと、うまく運営が行っているようにみえるものでも、本当に大変な努力のもとに成り立っているのだと感じました。
また、麻酔科のご専門である高山先生より、患者との関わり合いの持ち方、説明のしかたなどをレクチャーしていただきました。
中でも、麻酔の術前説明では局所麻酔から全身麻酔の内容、麻酔の機序から書かれており、自分が患者だったら本当にしてほしい
説明だと思いました。また、術前の説明の話から informed consent の話になったのですが、高山先生は informed 理解
である
とおっしゃられており、大変感銘を受けました。術前説明は本当に不安を持っている患者さんにどれだけ正しく理解してもらえる
かなどが重要になってくるので本当に大事だと感じま
した。
午後:種子島宇宙センター
6 月 26 日(火)
午前;種子島産婦人科
担当;住吉稔先生
内容:妊婦健診・一ヶ月健診
#1
30w
24 歳
骨盤位であった妊婦に対し、お灸を足の小趾の至陰という場所に施行することで、頭位に戻すという治療法があることを初めて知
った。
#2
38w2d
頭位で正常経過であったが、破水、陣痛がまだ兆候なく、過期産になる前に誘導を行うという計画を事前にたて、患者さんにも理
解を得ていた。
#3
一ヶ月の小児
2 名の健診があったが、 Moro 反射、把握反射などの原始反射も正常にみられていた。
午後;種子島鉄砲館・西之表市役所・喜志鹿埼灯台・ヘゴ群生林・浦田海浜浴場
118
6 月 27 日(水)
午前
実習先:訪問看護ステーション
U.S
86 歳
野の花
女性
疾患;心不全(冠動脈狭窄)
看護の内容;バイタルチェック(体温・血圧・聴診)
おむつ交換、褥瘡の予防、体位変換、清拭など
所要時間: 30 分
午後
実習先;特別養護老人施設
百合砂苑
内容:施設長からの沿革の説明、その後入居者さんとの交流
認知症の入居者さんが、ほとんどで中には脳卒中の後遺症なのか、片麻痺の方もいらっしゃった。また、入居者さんがどれくらい
自分のことや周囲のことを理解しているかがしりえなかったが、 100 歳をこえるような方もいらっしゃって、非常に驚いたし、超
高齢化社会ということの福祉のサポートの仕方を考えさせられた。
6 月 28 日(木)
午前
実習先:田上診療所(中種子町)
内容:朝から昼の 12 時ごろまでひっきりなしに患者さんの外来を行われている先生につかせてもらい、物腰のやわらかさに感動
し、どんな要望や訴えにも耳を傾けていらっしゃる姿に本当に感銘を受けました。
印象に残った症例;
50 歳後半の男性
虫垂炎破裂後の汎発性腹膜炎→小腸皮膚瘻閉鎖不全
経過としては、 2 週間ほど腹痛を飲酒でごまかしていたが、虫垂が破裂し、腹膜炎を起こし、消化酵素が漏れ、小腸と皮膚に癒
着・瘻孔をきたすということであった。非常に傷の治りが悪く、皮膚外へ瘻孔から消化酵素が漏れていたところを先生が一ヶ月ほ
ど消毒しているという経過でした。
70 歳台の男性
主訴;頭痛
詳細を聞くと、ムカデに頭を刺され、放っておいたが、夜間に頭が痛くなり来院したとのこと。後頭神経の神経痛であった。
夜間:救急外来
17 : 30 〜
出向いた時にすでに、 8 歳の小学 3 年生が、救急搬送されていた。
主訴;頭が痛い
受傷機転;カブトムシをとるために木登りをしていたところ、 3m ほどから転落。地面がコンクリ
ートであったために、強く打った。
first survey において ABCDE に問題はなく、来院し、緊急で頭部 CT を施行された。頭部 CT で
は陥没骨折を起こしており、血腫などははっきりとは写っていなかったこと、頭部の受傷した部位
が 5mm 程度であったことから、経過観察とし、経過頭部 CT でも血腫の増大はみられなかったの
で、緊急手術は行われず、入院加療となった。
2 回目の頭部 CT を施行する前に待機する時間があったのだが、頭蓋内圧亢進のために頭痛、嘔吐、
さらに、共同偏視および眼振が見られた。
6 月 29 日(金)
実習先;田上病院・外来
見学科:循環器科・眼科
#1
86 歳
女性
疾患;心房内血栓
ワーファリン加療中
PT ーINRの値を見て、コントロールがうまくいっているかどうかを確認していた。高齢になれば、多くのかたが多かれ少なかれ
Af になるということは聞いていたが、多くかたが、ワーファリン加療中できちんと対応されていた。
#2
77 歳
女性
疾患;白内障術後経過観察
および HTLV-1 によるぶどう膜炎
感想;
5 日間の離島実習を終えて、率直にいえば種子島だからということもあるかもしれないが、離島というよりは県内の鹿児島市では
ない街に実習に来ている感覚でした。その上、田上病院の高山先生・徳永事務長・種子島産婦人科の住吉先生が良くしてくださり、
夜もほとんど飲み会で交流させていただき、異職種の交流として、南日本新聞社の種子島支部の記者さん、西之表市長などとお話
を聞かせていただきました。また、種子島産婦人科の住吉先生には分娩があるかもしれないという緊張感のなか、二次会まで連れ
ていってくださり、歓待していただきました。水曜日に鹿児島大学の産婦人科から河村先生と帝王切開をするということで、見学
させていただき、島での帝王切開という貴重な症例を経験させていただきました。住吉先生曰く、県内のなかには、麻酔科の先生
のサポート、助手付きというバックアップがあってのカイザーは恵まれた状況だということにも衝撃を覚えました。そうした状況
で、無事女児が取り上げられたときには本当にいろんな人の協力や尽力の上に成り立っている命なのだと思いました。そういうこ
119
とを発信していこうとされている、先生方のすごさということも気づくことができたことが、非常に大きいとおもいました。将来、
離島医療に何らかの形で無理なく、お互いが win-win な関係性で関わっていくことが出来たらいいと思いました。
最後に、離島実習が当たり前のものではなく、多くの方々のサポートのおかげで成り立つものであることを来てひしひしと実感し
ました。コーディネートの為にサポートしてくださった方々に、深く感謝しますとともにこの場をお借りして、御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
氏
名
冨永
佳吾
6 月 24 日 ( 日 )
実習先:田上病院
実習に着き次第、病院に来てくれとのことだったので、田上病院に向かう。そこでは、田上病院の紹介ビデオの撮影をしていて、
協力することになったが、特に出番はなかった。
撮影が終わり次第、他のメンバーと共に種子島宇宙センターを目指して南下した。普段はあまり話したことのないメンバーだった
が、意外と盛り上がった。そして、到着した時間に宇宙センターが閉館したのは良い思い出だった。その後、近くの高台に上った
が、思いの他きつく、体力の衰えをひしひしと感じた。しかし、登ったところから見た景色は最高だった。その後、田上病院に帰
ってカレーを食べてみんなとお酒を飲んで就寝。
6 月 25 日 ( 月 )
実習先:田上病院
朝集合して、院長にあいさつに伺った後、麻酔科の高山先生にレクチャーを受けた。麻酔の一般的な話、それをいかに患者さんに
伝えるかの話に始まり、種子島の医療について、また数年前にあった島全体を揺るがせた産婦人科の諸々の話、他にも高山先生が
行っている、命の重さ尊さを中学生に伝える活動のことなどを情熱的に教えてもらった。結構な時間だったと思うが、新鮮な内容
のことばかりだったので、あっと言う間に感じた。
昼からはまさかのフリータイムとなり、前日は南下したので、本日は北へという安直な発想で、また 4 人で北を目指した。あとそ
の前に、昼ごはんは高山病院の食堂で食べたが、高山先生直伝の 4 人で別々のものを注文して、みんなで分けて食べるミックスグ
リル作戦は、なかなかのものだった。話は戻ってドライブの方は、まず西之表市役所にいって観光課でお勧めスポットを聞くこと
から始まった。北の方のお勧めスポットを丁寧に教えて頂いて、とりあえず出発した。色々と回ってみたが、初めて行く場所はど
こも新鮮で良い経験ができた。ただ、天気がよかったらもっと最高だったなと今は思う。とりあえず、種子島の北端を経由して、
ぐるっと回って田上病院に帰った。二日目にして、種子島はほぼ一周できた。帰って、何かして就寝。
6 月 26 日 ( 火 )
実習先:種子島産婦人科医院
朝一度田上病院に集まり、車で種子島産婦人科医院へ向かった。着いたらすぐに住吉先生が対応してくれて、 4 人で住吉先生の後
について外来の診療の様子を見学させてもらった。忙しい中、色々教えてもらった。また、妊婦さんにもお願いして、触診もさせ
てもらえた。
Leopold 診察法を体験できた。帰ってから、 Leopold 法について調べたので下に記す。
Leopold maneuver
「概念」妊婦の腹部触診法の基本となるもの。
第 1 段法
第 2 段法
第 3 段法
第 4 段法
子宮底の高さ
子宮の形と大きさ
下降部の種類
下降部の位置
胎児部分の種類
羊水量、胎動、胎向
胎児の移動性
胎児の下降度
住吉先生は、ホームページの写真でみた感じは、眼光が鋭く厳しい先生だろうと勝手に想像していたが、実際は逆で、とても気さ
くで学生にも丁寧に色々教えてくださる先生だった。また、診察を受けにくる患者さん達にも慕われているように感じた。
また、住吉先生に晩御飯のお誘いを受けて、みんなで御馳走になった。最初の店では、普段は食べられないような豪華な料理を、
もう食べきれないと思うまで堪能して、住吉先生の色々な体験談などを聞かせてもらったり、私達の話を聞いてもらった。結論と
して分かったのは、住吉先生がとてつもなくタフだということだった。二次会は、大変シャレオツな bar に連れて行ってもらった。
とりあえず、飲んだことのないお酒を注文して、知識の幅が広がった。それから気持ちよく帰って、心地よく就寝。
6 月 27 日 ( 水 )
120
実習先:訪問看護ステーション野の花 ( 午前 )
チーフの牛野さんに付いて、田上病院から車で 5 分ほどのお宅にお邪魔した。 30 分の限られた時間の中だったので、手際良くバ
イタルを取って、その他皮膚の変化などかないかなど確認して、最近の話をして、病院に帰った。 96 歳のおばあちゃんだったが、
非常に元気で氷川きよしの話で大変盛り上がった。
実習先:介護老人福祉施設百合砂苑 ( 午後 )
施設長の小濱さんから簡単な説明を受けたあとで、ひたすら施設を利用しているみなさんと触れ合う。
6 月 28 日 ( 木 )
実習先:田上診療所 ( 午前 )
竹野先生の後に付かせてもらった、様々なケースを見させてもらったが、印象に残った症例は、 50 歳男性で虫垂炎を放置してい
たため、小腸と癒着をきたした患者だった。あの時は大変だったねと笑って言う、患者と先生をみて、すこし圧倒されてしまった。
わらび苑 ( 午後 ) :ひたすら施設利用者のみなさんと交流。
田上病院夜間救急外来 ( 夜 ) :参加させてもらえた症例は 1 件
T ・K
8歳
クワガタ取りをしている際に誤って木から転落(高さ約 2.5 m)
男
右後頭部陥没骨折
吐き気があり、傾眠、よびかけに対してはすぐ覚醒、筋力に左右差あり(左の筋力低下)
搬送後に撮った
CT では血腫の広がりは確認できなかったが、少し時間をおいて、血腫の広がりが認められたら、緊急開頭で血腫除去の予定。途
中、嘔吐と意識レベルの低下を確認した。また、左共同偏視も見られた。
6 月 29 日 ( 金 )
実習先:田上病院
小児外来:様々なケースを見させてもらったが、取りあえず、クループ症候群の男児の犬吠様咳を実際聞くことができたので、今
後忘れないと思う。
午前の診療が終わったら、あいさつして、市長さんともお会いして、フェリーで帰った。
帰りのフェリーで上映していた、リアルスチールに少し感動してしまった。
遠隔医療実習記録:体験する機会はなかった。
感想
今回の離島実習では、種子島の田上病院を中心に種子島の医療を色々と体験させてもらいました。船が苦手な自分はあまり離島に
あまり行ったことがなく、離島に対して勝手なイメージを持っていたが、今回の実習を通じてかなりそのイメージに変化がありま
した。もっとも強かったイメージは「不便」であったが、全くそんなことはなく、住む分には十分すぎるほどであると感じました。
また、医療と患者との距離がずいぶん近いなというのも今回の実習で感じました。
また、今回の実習は、割と時間に余裕があって、自分たちで島を北から南まで巡ってみたり、行く先々で地元の人と話をして触
れ合うことができました。それこそが今回の実習の醍醐味であり、非常に貴重な体験になったと思います。種子島とそこに住む人
のことを色々と知ることができて本当によかったと思える。来年、無事に医者になることができたら、地域医療の枠は、是非とも
また種子島に来て、高山先生にみっちりと鍛えてほしいと思ってたりします。最後
になりましたが、忙しい中、私達の指導をしてくださった先生方、関係者の皆さま
方、大変お世話になりました。ありがとうございました。
要望
出席はもっと簡略化してもいいんじゃないでしょうか?
大変忙しい中、先生にサ
インとハンコを人数分もらうのは大変手間がかかり、ナンセンスだと感じました。
写真:種子島組と浦田海水浴場にて
晴れていたら、遠くに大隅半島が見えるとか見えないとか・・・
氏
名
中村
昭彦
6 月 25 日 (月 )
実習先:田上病院医局
内容:麻酔科の高山先生より、
・種子島の医療圏と田上病院の位置づけ
・種子島の産婦人科問題について
・いのちの授業
の 3 点についてご教授いただいた。印象深いお話がとても多かったので、感想と合わせて後述したい。
6 月 26 日 (火 )
実習先:種子島産婦人科医院 (午前 ) 、田上病院 (夜間救急 )
内容:午前中は種子島産婦人科にて妊婦さんと乳幼児の検診を見学。症例:
日本に帰化された 30 代妊婦。妊娠 30 週過ぎまで
骨盤位であり、フォローされていたが、至陰に千年灸を据えることにより頭位に戻った。お灸によって逆子を直すという手法に驚
いたが、住吉先生の知識の深さと、海外出身の方であるゆえの文化的背景を感じさせる治療であった。現在は経過良好で待機分娩
となっている。午後は田上病院の夜間救急を見学。症例 1 :
担がん状態で発熱と意識障害をきたした 80 代男性。肝がんが肺に
転移しており、オペをせずに自宅で治療していたが、全身状態の悪化のため受診。以前の診察にて肺炎と腎盂腎炎を指摘されてお
り、今回は肺炎の悪化に伴う敗血症が疑われた。同伴の妻、妻の弟が、長期の継続的な入院加療を希望したため、担当の山口先生
121
より、「今回の悪化に対しては入院して抗生剤を使用すれば改善が見込まれること」及び、「入院は安心のためではなく治療のた
めであるので、肺炎が治療できた際は入院の継続ができないこと」について、ご説明がなされた上で入院となった。症例 2 : 4
歳男児。症状は鼻の調子が悪いということであった。鼻汁を確認し、発熱が微熱であることと本人が元気であること、アレルギー
の既往と内服薬の余りがあることから、鼻汁の吸引のみ行った。プライマリ・ケアに対する山口先生の丁寧な対応が印象的であっ
た。
6 月 27 日 (水 )
実習先:田上診療所 (午前中 ) 、老人介護福祉施設百合砂苑 (午後 )
内容:午前中は中種子の田上診療所にて、外来を見学。
症例: 80 代女性。午後に伺う予定であった百合砂苑にデイケア通所されており、ご家族とともに来院。主訴は高血圧であるが、
すでに血圧はコントロールされており、通院の間隔や服薬の管理も良好であったが、担当の竹野先生はゆったりと時間をとって患
者さんのご家族のお話に耳を傾けていらっしゃった。やはり、本土と比べて医療者と患者の関係が近いように思えた。竹野先生は
心療内科出身であり、患者さんの切れ目に精神分析のお話などをしていただき、とても充実した時間を過ごすことができた。午後
は、特養老人ホームである百合砂苑での実習であった。入所者さんの殆どは認知症をお持ちで、会話が噛み合わないことと便失禁
と思われるにおいに戸惑いつつ、それでも入所者さんの何人かには喜んでいただけたようで嬉しく感じた。
6 月 28 日 (木 )
実習先:田上病院
透析室 (午前中 ) 、老健施設わらび苑 (午後 )
内容:午前中は透析室の患者さんや慢性腎臓病で受診された患者さんの診察を見学。透析室に本土から Dr. が派遣されることによ
って、島でのシャントの管理や透析に伴いやすい心血管系の合併症の管理も円滑に行うことができていた。午後のわらび苑では、
まず老健施設、特別養護老人ホーム、長期療養型病床の質的・法的な違いと、わらび苑の入所者さんの男女・年齢構成、種子島に
おける老年医療・介護問題についてご説明をいただいた上で、施設の見学と入所者さんとの交流を行った。
前日に見学した百合砂苑との違いとして、リハビリが活発に行われている印象を受けた一方、やはり入所者さんの多くが程度の差
はあれ認知症をお持ちであり、老健施設の目標である『自宅に帰ること』は難しそうに思えた。本土でも、老健施設の役割が、終
の棲家としての特別養護老人ホームに近づいてきている場合が増えているが、離島でも同じような傾向が生じているように感じた。
入所者さんとの交流では、 90 代の明るい女性と楽しく会話をすることが出来た。親族が就学や仕事の都合で本土にいらっしゃり、
なかなか会いに来てくれないので、若い人が訪ねてくるととても嬉しい…と、何度もおっしゃっていたのが忘れられそうにない。
6 月 29 日 (金 )
実習先:田上病院
眼科外来、循環器内科外来
内容:田上病院にて外来を見学。症例: 60 代男性。細菌性角膜感染症の治療で来院。糖尿病性の免疫低下による緑膿菌感染症で
あったが今回受診時はすでに治癒しつつあったため、初診時の画像をお見せいただいたところ、角膜潰瘍が確認できた。ほかに白
内障や翼状片、糖尿病性網膜症など多彩な患者さんに加え、しばしばコンタクトレンズ処方希望のかたも受診されていて、照明の
暗さにもかかわらず診察の雰囲気はアットホームに感じられた。
4. 感想
種子島で学ぶことが出来た下記の 4 つのことについて記したい。
1) 高山先生のお話をお聞きして
~種子島の医療における田上病院の位置づけ~
2) 高山先生と住吉先生のお話をお聞きして
~種子島の産婦人科存続問題~
3) 種子島と奄美以南の共通点と相違点について
4) 観光におけるおすすめ
・高山先生のお話をお聞きして
~種子島の医療における田上病院の位置づけ~
種子島の人口は現在約 32,000 人であり、二次医療圏で対応すべき疾患は比較的少ない一方、離島という条件からしばしば 3 次医
療圏へのアクセスが問題となることをお聞きし、この実習中に大学病院と離島医療の疾患の違いを実感できるかどうか興味が湧い
た。もちろん、『田上病院で対応できる疾患は対応して、本土に運ぶべき患者さんを速やかに本土に送る』というシンプルな話で
済むわけではなく、ドクターヘリや防災ヘリ、自衛隊や海上保安庁にヘリ搬送をお願いする上での困難について、貴重なお話をお
聞きすることができた。
特に、
・徳之島で自衛隊のヘリが搬送依頼で出動中に墜落して、搬送をお願いしにくくなった
・逆に搬送で救われた患者さんから自衛隊にお礼のお手紙が届いたことによって再び快くヘリ搬送を引き受けていただけるように
なった、という 2 つの体験談は、搬送は制度を整えるのも大切である一方、やはり人と人のやり取りは心あってのものであると感
じた。特殊なパターンではあるが、種子島の側が他所から患者を受け入れる必要が出た場合、受け入れ態勢を整えることは病床数
からもスタッフの数からも非常に難しい。数年前に発生した高速船トッピーの浮遊物との衝突事故の際には、海流の関係で本土で
はなく種子島のほうに船が流されつつあったとお聞きした。高山先生は以前より種子島で災害医療のトリアージ訓練などをなさっ
ていらっしゃったものの、トッピーが本土に曳航されることが決定するまでの緊張は凄まじいものであったとのことだった。種子
島には海流の関係で船が近づきやすいのだろうか。鉄砲伝来やドラメルタン号、カシミア号の漂着といった歴史的な出来事からも、
災害医療の備えの必要性を感じさせられた。
・高山先生と住吉先生のお話をお聞きして
~種子島の産婦人科存続問題~
種子島の産婦人科存続問題については、 6 月に実習にお伺いしていた鹿児島大学産婦人科でも少しだけお話を伺っていたものの、
麻酔科医として池田先生をサポートされていた高山先生の生のお話をお伺いすると身が引き締まる思いであった。年間 250 件のお
122
産、病棟と外来の掛け持ち、ヘリ搬送の際も煩雑な手続きが必要で、休まる時間が皆無に等しい。その上、帝王切開を産婦人科医
1 名と麻酔科医 1 名という、大学病院では考えられないようなスタッフでこなさなければならなかったというのだから恐ろしい。
「安全のために診療所をやめる」という決断は、医学生の目には仕方ないことに映ったが、苦しい決断であったと感じられた。最
終的に住民や自治体の理解と支援、大学病院からのスタッフの応援を得て、今の種子島産婦人科医院が存在していることに対し、
ご尽力になられた高山先生や西之表市長さんには感銘を受けた。
・種子島と奄美以南の共通点と相違点について
種子島の市街地を散策すると、スーパーマーケットの品揃えや食品店の様子からお弁当文化が根付いていることが感じられた。
奄美群島同様、かつては多くの人が家族ぐるみで農業や漁業に取り組んできたのではなかろうか。わらび苑に入所されている方々
からも、畑仕事をなさっていた時のお話をうかがうことが出来た。
しかし、一週間滞在する中で感じたこととしては、奄美以南との共通点よりむしろ相違点であった。例えば、奄美以南は独自の
方言や沖縄の方言に近く、観光地の立札や民謡などに薩摩の支配の過酷さを伝えるものが多く存在していた。以前、奄美大島で流
しの歌い手さんが、薩摩の搾取と奄美の困窮を伝える『とうきび地獄』や、有毒のソテツを多量に食べることによる中毒の苦しみ
を伝える『なり地獄』の歌を歌っていらした時には動揺したものである。それに対し、種子島の方言は鹿児島本土に近く、また百
合砂苑やわらび苑での実習で「鹿児島本土から参りました」と自己紹介した際にも、本土のご家族のお話などをしてくださる方が
多く、ご高齢の方も含めて、大抵の人は鹿児島の方言や鹿児島本土の人に好意的なように感じられた。
・観光におけるおすすめ
種子島宇宙センター:
種子島の南端にあるロケット基地。田上病院から車で 1 時間あまりかかる。展示施設である技術館は月曜
日が休館で、また午後 5 時で閉館するので注意。展望台は登るのが少々疲れるが、見晴らしがとても良い。竹崎海水浴場の砂浜も
美しいので、軽い浜遊びが出来る服装 (サンダル、短パンにタオル持参など ) がおすすめ。
鉄砲館:
宿舎や田上病院のすぐ近くにあり、展示も充実している。ジオラマも含めてしっかり見学すれば 2 時間ほどかかるかも
しれない。入館料 420 円。
種子島の北方:
海水浴場、本土が見える灯台や、マングローブ林、ヘゴ原生林など、海と山の両方の美しい観光スポットが多い。
ただし、看板がそれ程詳しくなく、またスマートフォンのナビ機能は途中から圏外で使用不能になる可
能性が高く、たどり着くことが少々難しい。時間に余裕をもって観光に行きたい。ヘゴの葉の裏には胞
子がたくさん並んでおり、小さいスケールながらやはり壮観と言えそうだ。
その他:
時間と天候の都合で、その他の観光スポットには訪れることができなかった。又の機会には
千座の岩屋(ちくらのいわや)にも足を運んでみたい。
最後に、今回の実習で大変お世話になりました田上病院の田上先生、高山先生、種子島産婦人科医院の
住吉先生、田上診療所の竹野先生、そして田上病院、種子島産婦人科医院、田上診療所、百合砂苑、わ
らび苑の事務の皆様に心より御礼を申し上げます。
123
岸良診療所
肝付町立病院
JAXA基地
きびなご定置網漁
辺塚海岸
125
手打診療所
肝付町立病院
岸良診療所
特別養護老人ホーム銀河の里
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
安田
俊介
23 日(月)
8: 00 ~ 朝礼
8: 30 ~ 外来診療見学とリハビリ診療見学
〔症例 1 〕 80 歳代女性。ペースメーカー植込み部位が化膿したことにより来院
した。イソジンによる消毒、動脈血採血し培養へ提出。後日 MSSA が検出され
た。ペースメーカー感染は、リード部分までに感染が及ぶと開胸手術も必要にな
るという。
〔症例 2 〕 90 歳代男性。 3 日間ほど食事が摂れず意識障害が生じたことから、
家族から救急車の要請があった。心拍数、呼吸、血圧、体温に異常は無く、意識
レベルは傾眠傾向JCSⅡ -10 。心電図、胸部 X 線に異常は無かった。末梢血デー
タに異常なし。補液を行い、経過観察とした。
〔症例 3 〕 80 歳代女性。大動脈弁狭窄症により follow されている患者さんである。収縮期駆出性雑音がはっきりと聴取された。
同様に AS の患者さんがもう一名いらっしゃった。
リハビリ診療については、脊柱
第 2 診察室
間狭窄症の患者さんが多かった。
明るい雰囲気はまさに患者さんの
社交場である。
14: 00 ~ 訪問看護同行:病院から
車で 30 分程の患者さん宅へ。
90 歳代男性。既往に肺気腫、前
壁心筋梗塞。現在は深部静脈血栓
塞栓、下腿浮腫あり。認知機能低
下による妄想発言がある。
リハビリ室:ウォーターベッドが大人気
同居者無く、家の中は足の踏み場
もない惨憺たる状況である。食事や身の回りのことを全くできていない。訪問介護員(ホームヘルパー)が毎日訪れているが、在
宅での看護は無理な印象。本人が施設への入所を頑なに拒むために「これ以上打つ手が無い」という現状である。
バイタルチェックを行った。体温37.5℃、血圧は軽症高血圧。着衣の乱れあり、言動の異常もみられる。下腿の浮腫あり。薬の服
薬も殆ど出来ていないので、その指導をした。
看護士さんによると普段は「血圧も計らせて貰えない」とのことである。介護の内容とその意味について本人が理解できていない
ことが残念であり、やるせない気持ちになった。独居者に対する医療・看護サービスの難しさを感じる訪問看護同行になった。
24 日(火)
8: 30 ~ (外来診療見学)、病棟入浴介助体験
入院患者さんの入浴介助、その体験をさせて頂いた。
患者さんの多くは寝たきりであり、ストレッチャー浴である。思っていた以上の重労働であった。(意識のはっきりしている)患
者さんにとって入浴は気持ちの良いものであろう、表情が和らいでいたことが印象的である。衛生管理として不可欠であり、また
患者さんの QOL に直結する入浴の重要性を感じた。
14: 00 ~ 外来診療
76 歳男性。主訴は嘔吐とふらつき。 2 ヶ月前にも同様の症状を訴え、来院している。
来院時現症:血圧 180/100 mmHg 。顔色不良。嘔気あり。意識清明。
既往歴:脳出血、脳梗塞。高血圧性脳症。大腸癌手術歴あり。
2 回目の来院であり、脳の器質的疾患を除外する必要から精査( MRI 施行)を行う方針とした。びろうの樹脳神経外科(車で
30 分程)を受診することになった。
移動時、患者さんが車内で「便が 1 週間ほど出ていない」と。確か病院では「便は普段と変わらず」と言っていたような…すなわ
ち「(普段通り)便秘気味」ということであろう。大腸癌手術歴があることから、単純性イレウスが考えられた。 MRI では器質
的異常無く、また患者さんの状態も改善してきた。降圧薬と緩下剤が処方され、無事帰路についた。
25 日(水)
奨学金面接(日本学生支援機構)により帰鹿。
26 日(木)
8:30~ 特別養護老人ホーム銀河の里およびグループホーム見学
食事介助と入浴介助とを体験した。栄養と衛生とは、入院患者さんの QOL に直結する重要なものであることを改めて感じる。
126
13:00~ JAXA ( Japan Aerospace Exploration Agency :宇宙航空研究開発機構)見学
関係者だけが入ることの出来るエリア(コントロールセンター、Mセンター等)まで見学させて頂いた。私を含め 3 人の学生は皆
興奮気味。良い思い出となった。
27 日(金)
8: 15~ 岸良診療所出張診療見学
高血圧 follow 、慢性腰痛、慢性膝痛の患者さんが
多い。
主に、腰痛に対してはトリガーポイントブロック、
膝痛に対しては膝関節内にヒアルロン酸注入を行っ
た。私は血圧測定を担当。明るい雰囲気と笑い声の
絶えない診療であり、住民患者さんとの密接な繋が
りが感じられた。
14: 00~ 眼科外来診療見学:定期 follow (白内障術
後)
の患者さんが多い。
14: 30 救急外来。突然発語が出来なくなり、意識障害をきたした 80 歳代女性が搬入された。
現病歴: 1 時間ほど前、突然発語ができなくなった。
既往歴:詳細不明。
検査所見:頭部 CT により、陳旧性の梗塞巣を認める。出血は見られない。意識レベルJCSⅡ -10~20 。軽度の右方偏視あり。右
上下肢の感覚低下あり。深部腱反射異常なし。
経過:優位半球に広範囲にわたる脳梗塞が疑われた。近医で MRI による病巣検索を行うことになった。しばらく安静の後( 14:
50 頃)、意識レベルが急激に回復した(JCSⅠ -10 )。梗塞巣の再還流が起こったものと考えられる。
今後は精査による原因探索と、抗凝固療法を行うことになった。
【実習を終えて】
豊かな自然と「はやぶさ」の町、肝付町(旧内之浦町)で 5 日間実習をさせて頂いた。
肝付町は人口 17,000 人超、限界集落も存在する町である。地域医療と僻地医療、両者を学ぶ機会となった。
地域医療ではプライマリ・ケア( Primary Care )の必要性がよく語られる。
Primary Care :
国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能、のこと。
患者さんを定期的に follow し、「時点」ではなく「時系列:線」で診療されていたこと
が印象的である。患者さん個々に対して「普段、何をされている方なのか」「前回来院
時の話の内容と様子」など、先生・スタッフの方々がしっかり理解した上で、優しく話
しかける…そのような診療が行われていた。地域に密着、患者さんとの理想の関係・距
離感を実現している医療現場であった。
僻地医療については、限界集落に住む住民(対象: 19 人)に対して TV 電話が設置さ
れていた。実習期間内に TV 電話が使用されることはなかった。
限界集落ではないが、訪問診療・看護も行われており、地域を支える医療機関として
の役割を果たしている。地域・僻地医療の体制を整えることは重要であり、その取り組
みを垣間見ることができた。
病院内の実習の他にも、色々と楽しいイベントが。
JAXA の見学では、一般の方では立ち入ることの出来ない区域まで見学させて頂いた。
コントロールセンター、M(ミュー)センターの内部まで(さすがに撮影禁止)。
内之浦宇宙空間観測所と種子島宇宙センター、鹿児島県は宇宙への玄関である。打ち上げの場にも機会があれば是非、と思う。
34m パ ラ ボナ アン テ
観測ロケット発射場にて
127
M発射装置
M-V(ミュー・ファイブ)ロケット
岸良診療所よりすぐ~岸良港を望む
週半ばには盛大な歓迎会、金曜早朝に漁(地
引き網)体験が企画された。私は両方とも
参加できなかったのだが…同行の 2 人の学
生は口をそろえて「楽しかった」と。これ
ばかりは残念、の一言である。
地域・僻地医療の現状を知り、それを体
験できた貴重な 5 日間であった。「豊かな
自然と宇宙への玄関」内之浦を楽しむこと
もできた。個人的には今秋の「内之浦銀河
マラソン( 10km )」に参加しようかな、
と思っている。
暖かく迎えていただき、実習期間中には色々と教えていただきました。先生方、スタッフの方々、本当にありがとうございまし
た。
氏
名
篠崎
4 月 23 日
聖兒
月曜日
本院にて朝礼が 8 時から開始。自己紹介を終えた後にオリエンテーションおよび院内の案内を病院事務長さんから受ける。 9 時半
ごろから井畔病院長先生、福森先生の外来見学開始。
症例 1
ペースメーカーの創部感染の 70 代?の女性。採血をし、血液培養を提出。リード線を取り替えになる可能性もあるので、
検査結果によって手術の可能性もあることを患者さんに説明。
症例 2
80 代?の男性が背部痛を主訴に来院。背中をみたところセツとの診断。膿瘍化していたため、切開排膿を施行。
症例 3
11 時半に救急車で 96 歳男性が気分不良を主訴に搬送されてきた。当初は意識が朦朧としていたものの、しばらくする
と意識ははっきりしだし、受け答えもできるようになった。血圧、心電図、血糖、血液検査、Xpなどを施行するも、目立った異
常は認められなかった。家族の話では、ここ数日の体調不良で食事が満足にとれなかったとのこと。入院となる。
看護師さんの話では、高齢者が多いこの地域ではタクシー代わりに救急車を使う頻度が多いとのこと。ある人は、入院の準備もす
べて済ませ、おやつも準備し、入院初日の晩御飯をしっかりいただいていた、というエピソードを聞き、都市部のほうがこのよう
なことは多いと思っていたので、地域医療の新たな側面をみた。
昼ごはんは 300 円で大学の学食よりもおいしいごはんを食べさせていただき大満足。
午後は 14 時から院長先生、看護主任さんの訪問診療に同行させていただく。そこでは寝たきりの男性の胃瘻チューブ交換を見
学や、寝たきりの高齢者のフォローアップを中心に見学。道中は、となりのトトロに出てくるような狭い田舎道で、病院からも距
離がある。寝たきりの患者さんにとって、訪問診療は必須だと感じた。訪問先の気さくなおばあさんから、焼酎を 4 升もいただく。
人情味あふれる田舎ならではの体験をさせていただいた。また、話にはよく聞いていたが玄関の引き戸すべてに鍵がかかってない
ことに、田舎暮らしをしたことがない自分にとっては新鮮だった。
病院にもどり、食道癌患者にたいする食道ステント留置を見学。
実習が終わり病院の隣のホテルの温泉( 300 円)に入り汗を流す。温度もちょうどよく気持ちよかった。近くのAコープでお惣菜
を買い、宿泊先のコテージで食す。
コテージからの眺め
4 月 24 日
病院の昼食
宿泊したコテージ
火曜日
8 時 20 分から院長先生の岸良診療所の出張診療に同行させていただく。病院から 30 ~ 40 分ほどに位置していて、とても小
さく古い建物で、昔の役場をつかっているのだそうだ。その診療所で問診、血圧測定、カルテの記載などをさせていただく。
症例 1
胆管がん術後の 70 代の女性。定期的に受診されている方で、前回行った血液検査の結果を聞きに来た。腫瘍マーカーは
128
正常値で本人も一安心。
症低 2
変形性膝関節症の女性。膝関節へのヒアルロン酸注射を終えたあと筋力トレーニングの指導。
とにかく、変形性膝関節症、肩の痛み、腰痛、高血圧、心不全の患者が圧倒的に多い。また 70 歳代の患者は若いほう。 90 歳代
がたくさんいることに驚く。しかも若く見える方が多い。漁業や農業で体を動かし、魚をたくさん食べているせいだろうか。
診療の合間に岸良診療所からさらに 30 分ほどはなれた辺塚海岸に行ってはどうかと、院長先生からのお許しがあったので、辺塚
海岸まで行ってみる。そこには 19 世帯しかない限界集落があるところで、実際にその集落をみた。そのままではあるが、限界で
あると感じる。何をするにしても車がないと話にならない。ここには病院直通のTV電話が配置されているとのこと。技術の進歩
はこのようなところにも活かされているのだと感心する。辺塚海岸は非常にきれいなところだった。青い海、荒々しい波と白い砂
浜。市内では見られないきれいな浜だった。私はウインドサーフィン部で海は見慣れているのだが、テンションが上がり年甲斐も
なく 25 歳と 38 歳の野郎二人ではしゃいでしまった。
診療所の外観
辺塚海岸
診療風景
午後から、入院患者さんの、なかでも寝たきりの患者さんの入浴介助を体験する。全部で 10 人。自分たち 2 人が看護師さん 2 人
のサポートをする形でやらせていただいたのだが、暑い&きつい!まず患者さんを風呂用のベッドに移乗するのが一苦労。男 2 人
でやってもなかなかの力仕事なのに普段は女性 2 人で同じことをされていることに驚き。しかもこの看護師さんたち、午前中から
ずっと入浴介助をされているとのこと。自分には一日中はとても無理な気がした。なぜなら気切の患者さんも複数いらっしゃり、
お湯の掛け方にも気を使わなければいけないので、 10 人終わったころには汗びちゃびちゃで精神的にも疲れてしまったからだ。
今回入浴介助をさせていただいた 10 人のうち、コミュニケーションが取れたのはわずかに 1 人だけ。これが寝たきりの現実なの
か。寝たきりという辛さをあらためて痛感した。ただ、この病院は褥瘡の発生がないことが誇りだと病院長先生が熱くおっしゃっ
ていたとおり、褥瘡の患者さんはいらっしゃらず、日ごろ知ることのない看護師さんたちの偉大さを知るとてもいい機会になった。
4 月 25 日
水曜日
午前中は院長先生の外来見学。
症例 1
80 代男性。高血圧、不整脈の定期検診。血圧のコントロールは良好、アスピリン、ジギタリゼーションを継続。
症例 2
50 代男性。高血圧、心房細動の定期検診。脈を触診させていただいたが、確かに不規則。上記の男性の息子。母親は拡
張型心筋症を患っている。家族性によるものか。
空いた時間にリハビリ見学。 70 代の女性とおしゃべりをしたが、この女性は膝関節にステロイドとヒアルロン酸注射を行い、注
射の効果が続いている調子がよい今のうちにしっかりリハビリをして筋力を鍛えているとのこと。地域の名産をきくと、やはり伊
勢エビ。だがこの方は甲殻類アレルギーで食べることができないとのこと。そのほかにもご家族のことや地域のいろいろなお話を
聞かせていただき楽しいひと時をすごす。
午後 2 時から、産婦人科の吉永准教授がいらっしゃり、井畔先生とともに子宮脱の手術をされるのを見学した。経膣での子宮全摘
は大学では見たことがなかったのでしっかり見せていただく。
夜は歓迎会を開いてくださり、コテージで飲み会。院長先生が持ってきて下さったイセエビ、ウチワエビの刺身をはじめ、焼き肉、
鶏手羽の竜田揚げなど美味しい料理をたくさんいただく。二次会は自分たちの泊まっているコテージにて。本当においしい食事を
いただき、あたたかい人柄の方々と飲むことができ、すごく楽しかった。
前日の食事との格差…
→
伊勢海老の刺身
129
味噌汁
集合写真
4 月 26 日
二次会
木曜日
特別養護老人ホーム銀河の里の見学。入浴介助、食事介助を体験。直接入浴介助をすることはなかったが、着替えの手伝い、ドラ
イヤーをかってでる。寝たきりで、気切で口もきけず、意識もはっきりせず、それでも胃瘻で生きておられる姿をみて、複雑な気
持ちに。
左 ) ロケットと打ち上げ施設
右 ) えっがね丼。かなりの量。味噌汁つき
昼から事務長さんに連れられて、
はやぶさを打ち上げたJAX A
の基地を事務長さんのお知り合
いの職員さんに案内してもらう
という貴重な機会を得た。各施
設の説明はもちろん、実際の現
場の話や建造費など普段聞くこ
とのできない話や、一般人は普
段立ち入ることのできない打ち上げ施設を間近で見学させてもらったり、いまはもう使われてないものの、管制室で All system
clear →Fireのロケット発射ボタンを押させてもらったりと、大興奮の時間を過ごさせていただく。感謝感激。内之浦にきてよか
ったと日々思う。
夜はえっがね丼という伊勢海老のほか各種刺身がのった海鮮丼を食す。伊勢海老の味噌汁つきで量もあり予約しただけあって非常
においしいどんぶりだった。
4 月 27 日
金曜日
事務長さんの計らいで、朝 5 時過ぎから漁業体験をさせてもらう。きびなごの定置網漁の船に乗せていただいたが普段は絶対にで
きない貴重な体験だった。お土産にいただいたアジとイカは事務長さんの奥様が刺身にして下さり、お昼ご飯に食べさせていただ
いた。おいしい!!
午前中ははるばる長崎からいらっし
ゃった先生の整形外科診療見学。主に
腰痛と膝痛の患者が多かったが、とく
に腰痛に対するアプローチが特殊で、
後上腸骨棘のすこし上から仙腸関節に
むけて注射するというものだった。仙
腸関節から腰部へ反回する神経をブロ
ックすることにより痛みをおさえると
いうことらしい。実際に、注射をした
後、前かがみで歩いていた患者が背筋
朝日
大量のきびなご
を伸ばして歩くことができ、効果は目に見えてあった。このような新しい治療をみることができ、また、腰痛を訴える患者に対す
る系統的な診察の仕方を丁寧にレクチャーしてくださるなど、腰痛持ちの自分にとってとても勉強になった。
午後は大学からいらっしゃった眼科の先生の外来見学。見学中に急患が運び込まれる。
症例
70 代の女性。脳梗塞の既往。右半身麻痺あり。今回、デイケア施設にて構音障害と意識障害が認められ搬送。来院時JCS
200 。発症から一時間半だが tPA を行う施設までは距離があるため三時間以内の搬送は難しいとのこと。CT上は目立った病変な
し。血液検査上もワーファリゼーションは適切に行われている模様。搬送から 30 ~ 40 分ほどたった時点で意識レベルが JCS 1
にまで回復。そのまま他院へ搬送となった。微小な血栓が詰まった場合には再還流がありうるとのことであった。
この症例を見届けたのち、肝付町立病院から市内に帰る。垂水フェリーを使わずに桜島フェリーを使う道を選択したが、どの経路
130
も時間は変わらず 3 時間前後だった。
実習を終えての感想
地域医療実習を体験させてもらうことができ、そして内之浦を実習先に選ばせてもらい本当によかったと思います。それはまず、
地域の方々に密着して診療できるという地域医療の魅力的な側面を直にみることができたということがあります。中でも新鮮だっ
たのが訪問診療です。鍵の掛かっていない民家に勝手に ? あがり診察をし、治療をする。大学ではまず体験できないことでした。
また、先生方が、患者さんやそのご家族から先生、先生と慕われるところに深い信頼関係を感じ、魅力的に思いました。そしてそ
のような深い関係を患者と築いていらっしゃる井畔先生をはじめ、吉本先生、福森先生から学ぶことが多くありました。高齢者の
多い内之浦ですので、どうしても患者の話や動作などが緩慢で、忙しい中ではせかしたくなります。しかし、先生方はせかしたり
せずに患者の訴えに丁寧に耳を傾け、衣服の着脱などの動作が遅くても待ってあげておられました。これは見習わなければならな
い非常に大切なことだと感じます。実際に患者とおしゃべりしたときも、ここの病院の先生はじっくり話を聞いて下さってとても
いい先生だと、複数人の方がおっしゃっていました。やはり医師は腕前もさることながら、人間性が第一、今後自分が臨床の現場
に立った時に肝に銘じておかなければならないことです。また、診療とは直接関係のない農作物のこと、家族のこと、イベントの
ことを話のイントロダクションにつかっておられ、これこそ信頼関係構築の第一歩だと感じました。
この実習を通し地域医療が難しいなと感じた点は、やはり人手、設備、お金もろもろ足りない中でなんとかやりくりしなければな
らないことでしょう。学生時代にはベッドの回転数が云々などの病院の経営にかかわることはほとんど勉強しませんが(私の勉強
不足だけなのかもしれません)現実になんとかしなければならない大きな問題として存在しているわけで、将来これらのことにも
頭を悩ませなければならないのかと、不安になりました。
また、入浴介助を体験し、介護施設を訪れて再三思うことは、ほとんど植物のような状態(語弊があるかもしれません)の患者さ
んは幸せと言えるのだろうかということです。聞くところによりますと、患者さんのご家族も、患者さんを病院に預けっぱなしの
方が多く、本人もこれ以上の回復は望めない。ベッドは埋まっていくばかり。このジリ貧の状況を打開する画期的な方法があるの
かといえばそれもない。複雑な気持ちになりました。
このほかにも景色の奇麗な叶岳のコテージで寝泊まりしたのはいい思い出になりました。内之浦では宇宙センターの見学、漁業体
験など人生で初めての経験をさせていただいただけでなく、歓迎会にたくさんの人がいらっしゃり美味しいお酒と食べ物をいただ
き、本当に幸せな夜をすごさせていただきました。伊勢海老、本当においしかったです。味噌汁も最高でした。感謝感激です。ほ
んとうにありがとうございました。
最後になりましたが、丁寧にご指導して下さった井畔病院長先生、吉本副院長先生、福森先生、コメディカルスタッフの皆さまを
はじめ、貴重な体験の数々をさせて下さった田中事務長さん、飲み会でお世話になりました職員の皆さま、美味しいお昼ご飯を出
して下さった職員の皆さま、本当にありがとうございました。すごく有意義で楽しい実習をさせていただき幸せに思っています。
ぜひ後輩にも勧めたい実習となりました。ありがとうございました。
氏
名
田中
康広
4 月 23 日(月)
実習先:町立病院(午前)、訪問診療(午後)
内容: 8 時の朝礼に参加し自己紹介をする。 1 時間半ほど院内の案内を事務長さんにしてもらい、その後、院長先生の外来診察を
見学した。症例 1 :ペースメーカーの感染の処置。血培を出して陽性ならリード全部を取り換えるということだった。症例 2 :女
性、主訴は肩凝り。ヒアルロン酸を関節内注入した。胃カメラを数件見学。
午後は病院の車での訪問診療に同行した。類天疱瘡の男性の胃瘻チューブ交換など。 7 軒
ほどを回った。
4 月 24 日(火)
実習先:岸良診療所(午前)、町立病院(午後)
内容:午前は院長先生、看護師さんと共に岸良の診療所へ出張診療。症例 1 :女性、主訴
は不定愁訴で足がじんじんするということだった。高血圧あり。症例 2 :男性、膵癌術後
フォロー、症例 3 : 75 歳、女性、心不全フォロー、症例 4 : 85 歳、女性、老人性ユウ
ゼイ切除後抜糸。症例 5 :男性、胃癌術後の 2 週間で 4kg の体重減少に対し 1 日 5 回食事
を摂るように指導。数名の患者さんの血圧測定や予診を取らせてもらった。途中、診療所
から 20 分くらいのとても綺麗な海岸であるという辺塚海岸に車で行ってきていいよとい
う院長先生のお言葉に甘え、学生二人で車を借りてその海岸へ行ってみた。砂浜のとても
綺麗な海岸だった。
症例 6 :女性、変形性膝関節症、足の筋肉を鍛えるための運動指導。症例 7 : 77 歳、女
性、脳底動脈狭窄症。症例 7 : 75 歳、女性:下肢静脈瘤術後。
午後は肝付病院で入浴介助を行った。ストレッチャーに乗せたまま洗い、気管切開をし
ている患者さんも多く、ベッドからの移乗などにかなり体力を使い大変だった。 9 人ほど
131
体験した。
4 月 25 日(水)
実習先:町立病院
内容:午前はリハビリ室でリハビリテーションの見学。症例 1 :男性、振動病、蝋を溶かしたもので手を温めていた。ホットパッ
ク、電気治療、腰椎すべり症に対して牽引、ウォーターベッドなどの治療が行われていた。その後、外来見学。症例 1 :腰部脊柱
管狭窄症。症例 2 :間質性肺炎。
午後は手術見学。症例:女性、子宮脱に対して子宮全摘術施行。鹿児島大学から吉永先生が応援に来られていた。
4 月 26 日(木)
実習先:銀河の里(午前)、 JAXA 見学、町立病院(午後)
内容:午前は銀河の里で入浴介助、食事介助の見学を行った。入所者のほとん
どが女性で平均年齢が 87 歳くらいとかなり高齢でみなさんかなり静かな感じ
だった。中には 100 歳を越えた方で絵本を朗読するほどお元気な方もいて驚き
だった。隣接するグループホームも見学。帰りに事務長さんの計らいで、職員
さんの案内で JAXA の宇宙センター内の見学をさせてもらった。一般の見学者
が入れない所まで見せていただくことができとても良かった。ロケットの打ち
上げ場は大迫力だった。
午後は町立病院で、透視室で食道癌に対する透視下の食道ステント留置を見
学した。
4 月 27 日(金)
実習先:町立病院
内容:午前は整形外科外来を見学した。症例 1 : 85 歳、女性。主訴は腰痛。 SLR テスト、腱反射、 MMT などを行い、座骨神
経から来る痛みという診断で仙腸関節に注射を行った。症例 2 :女性。中指の腱鞘炎で注射を行った。午後は眼科外来を見学した。
ほとんどが白内障のフォローだった。
感想
内之浦は、離島・地域医療実習の実習先で唯一離島ではないのになぜ組み込まれているのかと思って行ってみたら、宿泊施設に
辿り着いて町を見下ろして納得しました。海と山に囲まれて陸の孤島といった感じでした。
訪問診療や岸良診療所に行く車窓からみえた家並や景色もどことなく
島のそれと似通った印象を受けました。患者さんの家から帰るときにお
土産に焼酎を頂いたり、地元の人達からも昔ながらの人の良さを感じま
した。
お世話になった肝付町立病院はベッド数が 40 床の病院でしたが、常
勤の医師が 3 名しかいらっしゃらず、その人数で訪問診療と週二日の出
張診療もこなされていたのでとても大変だろうなと思いました。岸良診
療所は行く前にすごいと聞かされていて実際行ってみたら机とベッドだ
けがある昔の診療所といった感じでした。しかしそこでも多くの患者さ
んが診察に訪れ、設備は簡素であっても医療というものがいかに必要と
されているかが実感できました。
町立病院の隣に温泉がありお風呂は毎日そこで入りとても快適でした。
実習の後に温泉に入りスーパーでお惣菜と酒を買ってバンガローに帰り、食べて飲んで寝るといった生活でとても楽しかったです。
水曜の夜にはバンガローの下の施設で歓迎会をしていただき、伊勢海老や新鮮な刺身を食べさせてもらい、二次会は院長先生をは
じめとした先生方、看護師さん、事務職員の方々に自分達のバンガローまで来られて、酒盛りをしてとても楽しかったです。
内之浦宇宙センターに行くのをすごく楽しみにしていたのですが、事務長さんに相談したら実習の合間に連れて行って下さり、
しかも事務長さんの知り合いの JAXA の職員さんが施設の中を詳しく案内して下さったので予想外の展開でとても嬉しく興奮しま
した。ロケットの発射台を間近で見られたり、管制室の中に入れたりと普通ではできない体験ができました。お土産に JAXA スト
ラップなども頂きました。
最終日には、これも事務長さんの計らいで、早朝に起きて漁師さんの定置網漁に参加させてもらいました。水平線から昇る朝日を
見ながら漁船に乗って出発し、網を一緒に引き上げたり、網に頭から刺さっているキビナゴを棒で叩き落としたりと初めての体験
ばかりでとても楽しかったです。帰りに鯵と烏賊を頂き、それを事務長さんがお昼にお刺身にして持ってきて下さったのでおいし
く頂きました。
内之浦実習では、訪問診療や出張診療と言った大学では学べない地域医療ならではの診療も見学でき、美味しいものも食べられ
て、綺麗な砂浜にも行けて、宇宙センター見学もでき、漁体験まででき、一週間なのにとても盛り沢山な濃い内容で行く前に想像
していたものより遥かに充実したものでした。こんな楽しい実習をさせてもらったのも、井畔院長、吉本副院長、福森先生、看護
132
師さん方、田中事務長をはじめとする事務職員の方々、調理スタッフの方々みなさんがとても優しく親切にして下さったからです。
本当に大変お世話になり有難うございました。実習先に肝付町立病院を選んで本当に良かったです。将来お世話になることがあれ
ばそのときはまたよろしくお願いします。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
川出
茂
5 月 28 日(月)
実習先:肝属町立病院(午前)
訪問診療(午後)
内容:朝 8 時から朝礼があり、自己紹介をした。 8 時 30 分から外来見学を行った。
症例 1 :変形性膝関節症の女性の患者さん。主訴は膝の痛み。膝関節にヒアルロン酸を注射した。
症例 2 :糖負荷試験を行った男性の患者さん。糖負荷試験の結果に異常はなかったが、インスリン分泌量が多いことを指摘されて
いた。
症例 3 :女性の患者さん。 CT 検査で総胆管結石が見つかった。 20 年前にも結石を 2 つ認めた。 30 日に腹部エコー検査を行う
ことになった。
症例 4 :女性の患者さん。主訴は左肩関節の痛み。肩関節周囲炎と診断され、ステロイド注射を行った。
症例 5 :男性の患者さん。僧帽弁逆流症があり、心尖部を最強点とする収縮期雑音を認める。また、胃潰瘍で吐血の既往があり、
血液検査で小球性貧血を認めた。
午後は訪問診療に同行した。症例 1 :女性の患者さん。全子宮脱を認め、経
過観察となった。
症例 2 :女性の患者さん。主訴は膝の痛み。両膝にヒアルロン酸注射を行った。帰り際に段ボール一杯のきゅうりと栄養ドリンク、
ジュースを頂いた。
症例 3 :男性の患者さん。手の拘縮、内反尖足を認める。聴診上異常は認めなかった。
5 月 29 日(火)
実習先:岸良診療所(午前)
肝属町立病院(午後)
内容:午前中は肝属町立病院から車で約 15 分の岸良診療所で診療の見学を行った。
症例 1 :女性の患者さん。主訴は労作時の喘鳴。胸部、腹部の聴診上異常は認めず、経過観察となった。
症例 2 :女性の患者さん。関節炎があり、手関節の変形を認める。朝のこわばりなどは認めなかった。血液検査でリウマチ因子や
抗 MMP 抗体を検査することとなった
症例 3 :女性の患者さん。主訴は左下肢の腫脹。数日前に足をぶつけた後から下肢の腫脹があったということで、 DVT が疑われ
た。
症例 4 :心房細動の男性の患者さん。血液検査の結果、ワーファリンが効きすぎていたため、ワーファリンを減量することがあっ
た。
午後は病棟で入浴介助を行った。患者さんの移乗、洗髪、洗体、着衣などの手伝いをした。
5 月 30 日(水)
実習先:肝属町立病院(午前)
内之浦宇宙センター
内容:午前中は外来見学とリハビリ見学を行った。
症例 1 :一週間前に風邪をひいた女性の患者さん。発熱は認めないが、咳と喉の痛みが残っている。
症例 2 :男性の患者さん。主訴は 2 日前からの発熱、頭痛、喉の痛み。来院時は発熱は認めなかった。一週間前に奥さんも頭痛を
認めていた。検査ではインフルエンザは陰性だった。
症例 3 :男性の患者さん。主訴は咳、血痰。左手指に冷感を認める。来院時酸素飽和度が90%だったが、診察時は 100% であった。
午後はヘルニアの手術見学の予定だったが、患者さんの熱発により延期となり、内之浦宇宙センターの見学に連れて行っていただ
いた。
5 月 31 日(木)
実習先:特別養護老人ホーム銀河の里及びグループホーム見学(午前)
肝属町立病院(午後)
内容:午前中は特別養護老人ホーム銀河の里で実習を行った。まず、グループホームで入所者の方たちとお話をした。その後銀河
の里で、おやつの介助や入浴の介助を行い、髪を乾かしたり、着衣の介助を行った。その後、食事の介助を行った。
午後は 14 時から回診の見学をし、その後下肢静脈瘤の静脈瘤抜去術の見学をした。手術見学では糸結びや鈎引き、埋没縫合をさ
せて頂いた。
6 月 1 日(金)
実習先:肝属町立病院(午前・午後)
内容:午前中は外来見学を行った。
133
症例 1 :膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の患者さん。画像検査で腫瘍の直径が 10 mmであり 3 カ月後フォローとなった。
症例 2 :女性の患者さん。主訴は背中のピリピリした痛み。患者さんは帯状疱疹を心配していたが、水庖のようなものを 1 つ認め
るだけであり、帯状疱疹ではないと判断された。
症例 3 :男性の患者さん。心電図で PR 間隔の延長を認め、 1 度房室ブロックと診断され、経過観察となった。
症例 4 :女性の患者さん。心エコーでは大動脈弁の逆流を認めるが、聴診では雑音は認めなかった。
症例 5 :女性の患者さん。自覚症状はない。内視鏡検査で逆流性食道炎と萎縮性胃炎を認めた。
午後は 14 時から眼科外来患者の診療の見学を行った。白内障、緑内障、黄斑変性、涙嚢炎、眼瞼内反の患者さんの診察・処置の
見学を行った。
感想
今回の離島・地域医療実習では 5 日間というとても短い期間でしたが、とても多くのことを学習させてもらいました。外来での
実習では患者さんの話を時間をかけて丁寧に聞く先生の姿がとても印象的でした。診察のなかで先生は患者さんの主訴だけでなく
常に「変わったことはないか」、「その後調子はどう」などと聞いていました。また、どの患者さんに対しても聴診や腹部診察な
ど全身の診察を行っていました。先生は、患者さんの疾患の管理だけでなく、健康状態の把握がとても大切であるとおっしゃって
いました。また、先生方は自分の専門分野以外の患者さんの診察や治療を行っており、離島・地域医療を行っていくにはとても幅
広い知識が必要であると実感しました。外来での実習では実際に診察をさせて頂きました。学生が診察するときも患者さんたちは
とても快く受け入れてくれてとてもありがたかったです。また、問
診を取る時には、方言がとても強かったため県外出身の自分にとっ
ては患者さんの話を理解することにとても苦労しました。実際に診
察をさせて頂く中で、患者さんの病態を把握し、どのような検査を
し、どこの専門病院に送るかなど自分の判断がとても重要であり、
責任重大であるなと思いました。
火曜日の午後は病棟で入浴介助実習をしました。患者さんはほと
んど寝たきりの患者さんでした。患者さんの移乗、洗髪、洗体、着
衣などの手伝いをさせていただきましたが、自分が想像していた以
上に大変でした。
水曜日の午前中にはリハビリの見学をさせていただき、多くの患者さんとお話しさせていただきました。ある患者さんが「私は
一人暮らしだからリハビリに来て友達とお話ができるのが楽しい」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。月曜日の訪問診
療実習や水曜日のリハビリ実習を終えて、この地域の人々のつながりがとても強いということを実感しました。
木曜日には特別養護老人ホーム・グループホームで実習させていただきました。グループホームでは、入所者の方々とお話をさ
せていただきました。グループホームは施設がとても充実していて、入所者の方々もテレビを見たり、お話をしたり楽しそうに過
ごしていました。特別養護老人ホームでは、入浴介助や食事の介助をさせていただきました。食事の介助では、なかなか口を開け
てくれず、とても大変でした。
肝属町立病院での実習は実際に自分の手を動かすことが多く、また患者さんとお話しする機会もあり、とても勉強になり充実し
た 5 日間でした。先生方にはお忙しい中丁寧に指導していただきました。ありがとうございました。先生方のおかげでとても楽し
く充実した 5 日間を過ごすことができました。また、地域医療を行っていく上でどのようなことが重要かということを実感するこ
とができました。今回の実習を終えて、実習をする前よりも地域医療に興味を持つことが出来ました。本当にありがとうございま
した。
氏
名
菊野
聡美
5 月 28 日(月)
実習先:肝属町立病院(午前)、訪問診療(午後)
内容:朝 8 時から朝礼があり、自己紹介を行った。
8 時 30 分から外来の見学をした。
症例 1 :女性。主訴は漬物石を足に落とした。左足第 1 指が腫れており、レントゲンを撮ったが、明らかな骨折等は認め
られなかった。経過観察で良いと判断され、湿布を処方された。
症例 2 :男性。院長に最近顔色が良くないことを指摘され、上部消化管内視鏡を施行された。胃癌が見つかり、貧血もあ
ったため、即入院となった。出来るだけ早く手術が必要と判断された。
症例 3 :男性。主訴は川に野菜を洗いに行った後に、腕がかゆくなった。野菜の農薬または川の水による接触性皮膚炎と
診断され、軟膏を処方された。
症例 4 :男性。原因となるような外傷なしに、上腕骨を骨折した。骨腫瘍も認められた。多発性骨髄腫が疑われ、M蛋白
など検査されたが異常は認められなかった。診断・加療目的に他院へ紹介された。
午後は 14 時から訪問診療に同行した。
症例 1 :女性。全子宮脱を認めた。経過観察の方針となった。
134
症例 2 :女性。主訴は膝の痛み。両膝にヒアルロン酸の注射を行った。帰り際に皆さんでどうぞと、段ボール一杯の胡瓜
と、栄養ドリンク、サイダーをいただいた。
症例 3 :男性。脳卒中の既往がある。片麻痺があり、手の拘縮、内反尖足を認めた。胸部聴診上、特に異常は認められな
かった。
5 月 29 日(火)
実習先:肝属町立病院(午前・午後)
内容:午前は 8 時 30 分から外来を見学した。
症例 1 :男性。前立腺癌により、前立腺全摘術後である。 PSA の上昇は見られず、術後経過は良好である。
症例 2 :女性。主訴は膝の痛み。膝に水が溜まっていたため、関節液の穿刺を行ったあと、ヒアルロン酸注射の処置をし
た。
症例 3 :男性。前立腺肥大により、排尿障害がある。 PSA は低値であり、現在のところ前立腺癌はないと判断された。
排尿障害に対してα遮断薬を処方された。
午後は 14 時から病棟で入浴介助を行った。入院患者さんの移乗、洗髪、洗体、着衣などの手伝いをした。
5 月 30 日(水)
実習先:肝属町立病院(午前)
内容:午前は 8 時 30 分から外来を見学した。
症例 1 :女性。主訴は肩のかゆみ。肩にダニが咬みついており、鑷子でダニの除去を行った。
症例 2 :男性。電気のこぎりで木を切っていて、指を切断し、大量に出血した。縫合が必要なほどの傷ではなかったため、
消毒後に、褥瘡用のテープを貼付された。
症例 3 :女性。主訴は 5 月初旬から咳、鼻水、痰が止まらない。夜間に目が覚めるほど頑固な咳が続いている。 5 月初旬
に他院を受診し、薬を処方されたが軽快しないため受診した。
症例 4 :男性。主訴は血痰と咳。左手指に冷感を認める。 20 年前に胸水穿刺をしたことがある。酸素飽和度は来院時
90 %であったが、診察時は 100 %に改善していた。
午後はヘルニアの手術を見学する予定であったが、患者さんの熱発により手術は延期となり、内之浦宇宙センターに連れて行って
いただいた。
5 月 31 日(木)
実習先:特別養護老人ホーム銀河の里及びグループホーム(午前)、肝属町立病院(午後)
内容:午前中は特別養護老人ホーム銀河の里に行った。まず、グループホームの入所者の方たちと 1 時間ほどお話をさせて
いただいた。次に特別養護老人ホームに移動し、おやつの介助をした。その後入浴介助を行い、髪を乾かしたり、着
衣の手伝いをした。最後に昼食の介助を行った。
午後は 14 時から回診の見学をした。その後下肢静脈瘤の静脈瘤抜去術を見学した。手術見学では糸結びや鈎引き、埋没縫合をさ
せていただいた。
6 月 1 日(金)
実習先:岸良診療所(午前)、肝属町立病院(午後)
内容:午前中は岸良診療所に行き、出張診療を見学した。
症例 1 :女性。主訴は腰の痛み。腰のトリガーポイント 6 か所に局所麻酔薬を注射した。湿布を処方された。
症例 2 :女性。高血圧の既往がある。胸部聴診上、特に異常は認められなかった。塩分を控えること、体重を減らすこと
を指導された。前回と同様の降圧薬を処方された。
症例 3 :女性。 3 日前から咳、痰、喉の痛みがある。抗生物質、咳止め、痰切れが処方された。
午後は 14 時から眼科外来の見学を行った。白内障、緑内障、黄斑変性、涙嚢炎、眼瞼内反などの患者さんが受診していた。
感想
今回の地域医療実習ではたくさんのことを経験させてもらった。外来を見学してまず感じた事は患者さんが高齢の方ばかりであ
るということだった。高齢化の進んだ町なのだなと思った。患者さんは「腰が痛い」「腕が痒い」「呼吸が苦しい」など様々な訴
えをしていた。先生方は専門分野に関係なく患者さんを診ており、
幅広い知識が必要であると思った。先生が地域医療では広く浅く
診ることが大事だとおっしゃっていた。その中で、どの患者さん
を専門病院に送るのかを的確に判断することが重要であり難しい
ことであると思った。また、外来見学では患者さんは皆私たち学
生に好意的に接してくださったことが非常に印象的であった。
「ぜひ診察してください」とシャツをめくり上げて聴診をさせて
くださった方が何人もいらっしゃった。予診、血圧測定、聴診、
腹部の触診など多くのことをさせていただいた。
135
火曜日の午後は病棟で入浴介助を行った。ほぼ寝たきりの方ばかりで、呼吸器を付けている方もいた。そのような方々の入浴介助
はとても難しくて想像以上に重労働だった。効率よく進むように随所に工夫がこらされていることが分かった。私は洗髪、洗体、
着衣、移乗などの手伝いをさせていただいた。なかなか入浴介助をする機会はなかったので、良い経験になった。
木曜日には肝属町立病院近くの特別養護老人ホーム、グループホームの見学をさせていただいた。グループホームでは入所者の
方々とお話をさせていただいた。お孫さんの話などいろいろなお話をしていただいて、とても楽しい時間を過ごした。認知症の方
達であるということだったが、皆さんグループホームを気に入っていて穏やかに過ごされているという印象だった。特別養護老人
ホームでは食事介助、入浴介助等をさせてもらった。食事介助では、なかなか口を開けてくれず、食物を口の中に入れても飲みこ
んでくれずそのまま吐きだしてしまい、とても苦労した。なかなか指示の通らない方の食事介助がいかに難しいかを実感した。
肝属町立病院での実習は毎日有意義に過ごすことができ、とても勉強になった。内之浦という大隅半島の端でどのような医療が行
われているかというのを経験できたのは貴重なことであると思う。医療者も患者さんも皆温かい人達ばかりで、私たちを歓迎して
くださりとても嬉しかった。
先生方には丁寧にご指導していただきまして本当にありがとうございました。毎日充実していて、 5 日間というのはあまりに短く
感じました。先生方のおかげで、今回の実習を通して地域医療に今まで以上に興味をもつことが出来ました。将来地域医療に携わ
りたいという思いが強くなりました。診察なども積極的にやらせていただいたり、時には研修や将来に対するアドバイスもいただ
いたりと、とてもお世話になりました。本当にありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
片野田
和沙
6 月 4 日(月)
実習先:肝付町立病院(午前)、訪問診療・訪問看護同行(午後)
内容:午前中は、朝礼に参加し、病院を案内していただいた後、外来患者さんの診療を見学した。金曜日から腹部膨満感が出現し
た高齢男性を診察した。排便がなく、発熱・嘔吐はみられなかった。打診では鼓音を呈し、触診では右下腹部に圧痛・腹膜刺激徴
候を認めた。もう一人の実習生とイレウスを疑ったが、私はここで別の場所に行かなければならなかったのでどんな診断がついた
のかはわからなかった。胃カメラの見学も行った。午後からは訪問診療・訪問看護に同行させていただいた。目が見えない方がお
一人で暮らしていたり、車がなければ移動が難しい所で老々介護が行われている現状を目の当たりにした。そして驚いたことに、
どの家の玄関にも鍵がかかっていなかった。しかし、ここの地域ではそれがスタンダードらしい。
6 月 5 日(火)
実習先:岸良診療所(午前)、肝付町立病院(午後)
内容:午前中は、岸良診療所で患者さんの診療見学や血圧測定を行った。何人に測定させていただいたか、明確な人数は覚えてい
ないが、とにかく今まで経験したことのない数の患者さんに血圧を測らせていただいた。おかげで少し自信がついた。午後は、肝
付町立病院で入浴介助の予定だったが変更となり、リハビリ見学やイレウスチューブ挿入の見学などを行った。昨日の患者さんは
やはりイレウスだったらしい。患者さんを移動させるとき、地域ならではのなかなか斬新な方法をとっていて興味深かった。
6 月 6 日(水)
実習先:肝付町立病院(午前・午後)
内容:午前中は外来患者さんの診療を見学した。高齢の方ばかりで、その場での診療だけでなくコンプライアンスを高めなければ
ならないと思う場面にいくつか遭遇した。他の患者さんの診察中に、自分の番はまだかと、診察室に入ってきた方もいた。良い意
味でも悪い意味でも自由奔放な患者さんが多かった。下肢静脈瘤の硬化療法も見学できた。午後は、下肢静脈瘤の手術見学を行っ
た。手洗いで入らせていただけるとは思っていなかったのでうれしかった。ストリッピング術の見学は 2 回目だったが、とても面
白かった。最後、皮膚を埋没縫合させてもらった。ポリクリで見学していた時からやってみたいと思っていたのでとても楽しかっ
た。先生に褒めていただけたのでさらにうれしかった。
6 月 7 日(木)
実習先:特別養護老人ホーム銀河の里・グループホーム(午前)、肝付町立病院(午後)
内容:
グループホームでは入居者の方やスタッフさんとお話しさせてもらった。自分の話術のなさを痛感した。銀河の里では入
浴介助を行った。着替えをもってきていなかったので体を洗うことはできなかったが、髪や手足を乾かしたり、服の着脱をさせて
いただいた。入居者の方に素手で接していらっしゃるのは奉仕の心として大変素晴らしく尊敬したが、衛生面での疑問を感じた。
難しい問題だと思った。午後は、せっかく内之浦にきたんだからということでロケット基地につれて行って下さった。こんなにい
い場所があるのだから、鹿児島県と内之浦はもっとアピールしたらいいのではないかと強く思った。
6 月 8 日(金)
実習先:肝付町立病院(午前・午後)
内容:午前は外来見学だった。自分の知識のなさを痛感したので勉強しようと思った。機械弁の患者さんの心音を聞かせてもらっ
たのが印象的だった。午後は眼科外来と経尿道的膀胱腫瘍切除術を見学させてもらった。週一回、大学から先生がいらっしゃって
眼科外来をされていたが、それまでは患者さん方は鹿屋までいっていたので、大変助かっているとのことだった。
136
遠隔医療実習記録:時間がなくて行うことができなかった。
感想
大隅に一人で運転して行ったことが一度もなかった
ので、まず無事に内之浦に着けるかどうかという不安
を抱えながらの出発だった。何とか無事に到着して、
宿泊兼実習先となる肝付町立病院に足を踏み入れた。
こちらが、私が宿泊させていただいた研修医室である。
一階にあったのでやや不安だったが、鍵がかけられた
のでよかった。荷物を片付け、一段落したところで、
部屋を出てすぐ前にあるお手洗いに向かった。そこで、
扉を開けた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、不可
解な動きをする茶色い虫だった。幼い頃は祖父母のい
る田舎で暮らし、現在は桜ケ丘の端っこで暮らしてい
るため、クモやヤモリ、その他の昆虫類には比較的免
疫はあったが、なぜかゴキブリは今までの人生でほと
んど目撃したことがなく、戦い方も知らなかったため、
私は静かにドアを閉め、部屋に侵入してこないよう細
心の注意を払いながらその場をあとにした。到着して
1 時間もたたないうちに心が折れた。それから金曜日
まで、わたしはゴキブリの恐怖と闘いながらこの部屋で過ごすことになる。
ちなみに、入浴に関してはすぐ隣にある「コスモピア内之浦」の温泉を利用させてもらった。営業時間は6:00~ 22:00 で大変便利
だった。岸良診療所は、まさに想像通りの診療所だった。
町立病院と同様に、こちらの診療所にも早い方は朝 5 時に予約を取りに来ていた。この日は雨だったにも関わらず、大勢の患者さ
んがいらっしゃっていた。皆さんお知り合いなのかと思うほど、待合室では話が弾んでいた。たぶん、本当に知り合いなのだろう。
移動中に先生が「この辺りは孤独死はほとんどない」とおっしゃっていたが、短い時間だったがそれを感じ取ることができた。
診察終了後の井畔先生
診察室
特別養護老人ホーム銀河の里・グループホ
ームはとても清潔感のあるところだった。ス
タッフのみなさんも優しくて、大変有意義な
実習を行うことができた。
病院実習だけでなく、飲み会を開いていた
だいたり、ロケット基地に連れて行っていた
だいたり、内之浦という場所も楽しむことが
できた。短い期間だったが、いろいろ考える
こともあり、大変有意義な時間を過ごすこと
ができた。
最後になりましたが、先生方をはじめ、看
護師さん、病棟スタッフのみなさんには大
変お世話になりました。本当にありがとう
ございました。いつかお役に立てる時が来
たら恩返しをしたいと思います。
137
氏
名
塩塚
健太
6 月 4 日(月)
実習先:肝付町立病院(午前)、訪問診療(午後)、診療所
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学した。症例 1 : 75 歳男性、主訴は右下腹部が張った感じがするとのこと。腸蠕動音
が軽度亢進しているように感じられた。右~上腹部にかけて腹部膨瘤が見られ、触診にて圧痛 (+) 。これらよりイレウスと診断し、
イレウスチューブを留置した。症例 2 : 60 代男性、主訴は下肢のしびれ。普段は何ともないのだが、歩行を 10 分程度続けてい
ると下肢にしびれが出現し、しばらく休むとしびれは収まるとのこと。間歇跛行で休めば治る、というところから短絡的に脊柱管
狭窄症と診断してしまい、下肢動脈の触診をしなかったのが反省点である。 ASO (閉塞性動脈硬化症)を否定するために、下肢
動脈の触診が必要である。腰部 X 線写真を撮り、本人に治療法のコンサルトをして診察終了。この他にも午前中で 20 人強の患者
を診察していて、イメージよりも患者の数が多いと感じた。午後は訪問診療に同行した。一軒目を回ったところで体調を崩し、こ
の日の実習はここで切り上げた。ご迷惑をおかけしてすいません。
6 月 5 日(火)
実習先:肝付町立病院
内容:体調が戻らず、午前の外来見学の序盤で離脱。そのまま点滴を打ちこまれる事態になってしまった。先生方、迅速かつ丁寧
な対応ありがとうございました。おかげですっかり良くなりましたが、本当にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでし
た。
6 月 6 日(水)
実習先:肝付町立病院
内容:午前中は外来見学。午後は下肢静脈瘤(バリックス)に対する硬化療法とストリッピング手術の症例を経験させていただい
た。症例 3 : 60 代女性、主訴は下肢の血管の腫脹。視診にて大伏在静脈に静脈瘤を確認。バリックスと診断し、静脈硬化療法を
施行した。静脈硬化療法は初めて経験したのだが、処置室にて 30 分ほどでできるので僻地でも十分に可能な治療法だと感じた。
症例 4 : 70 代女性、主訴は下肢静脈の腫脹。バリックスの診断で予定手術の方だった。バリックスに対するストリッピング手術
も初めて見学させていただいたのだが、これはある程度設備の整った施設でないとできない処置だと感じた。 1 日でバリックスに
対する異なるアプローチを経験できたのは良かった。
6 月 7 日(木)
実習先:特別養護老人ホーム
銀河の里(午前中)
内容:午前中は特別養護老人ホーム 銀河の里にて、施設見学、グループホーム見学、入浴介助体験を行った。グループホーム見
学では比較的自立されている入所者の方々と交流した。内之浦地域の話などが聞けたのでよかった。老人ホームに戻ると、入浴介
特別養護老人ホーム銀河の里にて
助を経験させていただいた。介助が必要な入居
グループホームの外観。綺麗な建物
者の中には、拘縮があり水気が残るとそこから
容易に苔癬に感染してしまうとのことで、ドラ
イヤーを使ってしっかり手掌、足の指の間など
を乾燥させていた。
午後は内之浦宇宙開発センターを見学させてい
ただいた。 JAXA が所有するこの施設は映画
「はやぶさ
遥かなる帰還」の撮影でも使われ
た場所で、実際に撮影に使われた場所を始め、関係者しか入れない場所なども見学させていただき、とても貴重な体験となった。
内之浦の特色でもあるので、これを全面に PR していけばいいのに、とも思った。
左写真から…●ロケット発射台のある建屋。 20 m以上ある!
●内之浦で打ち上げられたロケット群。
138
●小惑星探査機「はやぶさ」。
● JAXA の井出さんと。
6 月 8 日(金)
実習先:岸良診療所(午前)、肝付町立病院
内容:午前中は岸良診療所で外来実習。症例 5 : 70 代女性、定期診察の患者だった
が、聴診にて第 2 肋間胸骨左縁および右縁に収縮期駆出性雑音を聴取した。カルテに
よると僧帽弁狭窄症の診断がついているが、患者の希望により検査は行わないそうで
ある。午後は町立病院で眼科外来を見学した後、膀胱癌に対するTUR-BTを見学し、
1 週間の実習を終了した。→岸良診療所の外観。土砂降りで大変だった。
感想
今回、内之浦実習で肝付町立病院および岸良診療所、特別養護老人ホーム銀河の里で
実習させていただき、 1 週間内之浦に滞在した。内之浦地区は大隅半島の東端にある、
小さな漁師町である。行きはフェリーを使わずに行ったので 3 時間ぐらいかかるかと
思ったのだが、明け方に出発したことで交通量が少なく、 2 時間と少しで到着することができた。実際は桜島フェリーや垂水フェ
リーを使い、鹿屋から長いトンネルを一本抜けるとすぐ内之浦であり、鹿児島からは車で 2 時間半ぐらいの距離である。しかし、
地区に住んでいるほとんどの方が高齢であり、鹿屋まではバスを利用して行くしかないのだが、これが先に私が通った沿岸を迂回
する道路であり、 3 、 4 時間かけないと鹿屋まではいけなそうである。
このため、町で唯一の病院である肝付町立病院はまさに内之浦地区の医療を一手に担う施設である。病院には連日多くの方が外来
に訪れ、先生たちは日々忙殺されているようであった。患者たちの多くは高齢者であり、意思疎通が図りにくい方々も多くいた。
しかし、患者は長くかかっている方がほとんどで、先生と患者だけでなく、患者同士も顔見知りであるようだった。たとえば、看
護師が患者を診察室に入れるときに声かけをすると、患者同士で「○○さん、あんた呼ばれよるよ」といった会話が聞かれること
も多く、また待合のロビーでも患者同士が世間話で盛り上がっている光景がよく見られた。これは離島・僻地の病院の一つの特色
であると考えられるのであるが、肝付町立病院のような比較的大きな病院においても例外はないようであった。また、地域医療の
もう一つの特色に訪問診療があげられる。これにより、高齢で病院に通うことができない患者に対するケアができるうえ、患者も
お医者さんに診てもらえることで安心感を得られると考えられる。これら 2 つの特色は離島・僻地医療、つまりは地域医療に特有
のもので、大学病院や大病院がケアできない細やかな部分をカバーできていると感じた。
一方、肝付町立病院に限った特徴が、手術ができることだろう。僻地の病院でありながら、バリックスに対するストリッピング手
術や膀胱癌に対するTUR-BTなど、限られた設備の中での手術ができてしまうのも、先生方はじめ病院スタッフ全員の尽力のたま
ものだろうと思った。先生方の技術も素晴らしく、学ぶところの多い手術見学となった。
疾患に関しては、高齢者ということもあり、患者一人一人が多くの疾患を抱えているケースが多かったが、高血圧、糖尿病などを
基礎疾患に持つ人の割合がやはり多く、これらのコントロールや服薬指導など、患者一人ひとりに寄り添った診療を展開していく
必要があると感じた。この部分は離島・僻地医療に限ったことではなく、どこに行ってもできる限りやるべきことだと考えられる
ので、今回改めて認識できたことはよかったと思う。
最後になりましたが、今回実習にあたり熱心に指導していただきました井畔先生、森福先生、吉森先生、看護師・スタッフのみな
さん、特別養護老人ホームのスタッフのみなさん、旅館ふくのやさん、ありがとうございました。みなさんのおかげで、非常に有
意義な実習を行うことができました。また、体調不良になった時も迅速に対応していただき、ありがとうございました。ご迷惑を
おかけしてすいませんでした。今後またお会いする機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
井上
忠
6 月 25 日(月)
実習先:肝付町立病院
内容
:午前中は院内を紹介された後、外来を見学した。来院した患者は糖尿病、高血圧など生活習慣病が多かった。高齢者が多
く 70 歳の患者で若いという印象を受けた。外来の空いた時間に、入院患者で前日にタール便をした人の上部消化管検査を行った。
結果はびらんであった。その後リハビリテーションを見学した。電極をつけて電気を当てている人、牽引されている人、ウォータ
ーベッドに寝ている人、マッサージされている人と様々であった。作業療法士の人がマッサージは行っていた。午後は、入院患者
の経皮的胃瘻増設を見学した。先生はもともと呼吸器外科だとおっしゃっていたが、器用に内視鏡を胃に到達させ、内から光を照
らして穿刺部位を決定し胃瘻を完成させた。時間にして 10 分かからなかった。
6 月 26 日(火)
実習先:肝付町立病院、往診先
内容
: 11 時ころまでに外来の患者さんを全て診察し、その後往診に行った。 101 歳の女性、健康であるかの確認と腰部に鎮痛
剤を注射した。 50 代の男性、脳出血後寝たきり。変わりがないかの確認を行った。他に 2~3 件の家を往診して 13 時前に肝付町
立病院に帰ってきた。往診先は無医地区及び来院困難者の家であった。
139
午後からは、乳がんの女性の傷口洗浄とガーゼ交換を手伝った。手術、化学療法後とのことだったが、腫瘤は 10 cm× 10 cm
× 5 cm程度、潰瘍もあり、大学では見たことのないものだった。その後 93 歳女性の気胸の胸腔ドレーン入れ(局所麻酔下(プ
ロポフォール + キシロカイン)、胸腔鏡で胸腔内を確認した後、ドレーンを留置)を見学した。医学的には手術を行った方が患者
も楽になるということだったが、家族が手術は絶対に嫌だということでドレーン留置になった患者であった。先生方はどうしたら
よいか話し合いながら留置の向き、場所を決定していった。
6 月 27 日(水)
前日からの豪雨、霧で宿泊先から病院に行けず、雨が小康状態になったら病院に連
絡した。昼過ぎに雨が弱まったので、バンガローからの下山を試みた。しかしバン
ガローから病院へ続く道が 2 本ともで土砂崩れが発生しており、私たちは山の上に
隔離されてしまった。事務長が麓から土砂を少しどけて助けに来てくださったが、
帰りにさらに土砂崩れが発生して、事務長も車では下山できない状態になってしま
った。バンガロー待機の案もあったが食料の問題もあり、夕方に徒歩下山となった。
夜は外来の点滴ベッドで一夜を明かした。内之浦地区自体も午後 6 時過ぎまで外部
とつながる 3 本の道路全てが寸断され孤立した状態であった。
6 月 28 日(木)
実習地:肝付町立病院、特別養護老人ホーム銀河の里
内容
:午前中はグループホームで実習を行った。程度の軽い認知症の方が多く、その方々としゃべったり、間食の準備を手伝
ったりした。女性 8 人に男性 1 人であった。その後、特別養護老人ホームに移動し、施設の案内を受けた後、入浴介助を行ったり、
注入を行ったり、食事介助を行った。午後は病棟の回診を見学した。患者は慢性期が多く、年齢も 80 歳以上の患者が多かった。
高齢者が多かったためか、疾患としては、
脳血管障害後、心不全、転倒による骨折な
どが多かった。長期入患者としてALS患
者も入院していた。回診後は外来で眼瞼に
1 mm程度の膨隆を認める患者の膨隆を切
除する処置と左胸部に 4~5 mmの結節を認
める患者の結節を切除する処置を見学した。
その後昨日の土砂崩れの道路の土砂を取り
除いたとの報告を受け、事務長と車を取り
に行った。さまざまな所に土砂崩れの爪跡
が残されており、自然の力に恐怖を感じた。
6 月 29 日(金)
実習地:肝付町立病院
内容
:外来で問診等を行った。高血圧の薬剤調整、膝や肩が痛い患者にヒアルロ
ン酸やステロイド抗炎症薬などを注射したり、酔っぱらって転んだ患者の対応を行
ったりした。岸良の診療所での診療が予定されていたが、道路の陥没等によって中
止、休診となった。土砂崩れによる孤立地区である、津城地区の患者の薬が切れる
とのことで、先生方は緊急車両での往診と薬の処方に追われていた。病棟では熱発
の患者で、痰も汚かったのでレントゲンを撮影したところ肺炎が起きていたので抗
菌薬を開始した。その他、IVHを留置する処置を見学し、心不全により胸水貯留
が見られている患者にベッドサイドで胸腔ドレーンを挿入する処置を見学した。午
後はまた雨が予想され、道路がまた寸断される危険性があったので 12 時で実習終
了となった。
遠隔医療実習記録:ネット環境がなくできなかった。
感想
(内之浦の町、人について)
ロケット発射基地があり、その他はのどかな漁港という印象を受けた。高齢者が多く、町で若い人を見かけることは殆どなかった。
同じ鹿児島で陸続きのところにもこんなところがあるのだと、初めは正直驚いた。
食事をしに行ったお店の人はとても優しく、人の優しさを感じられる町だと思った。先生方、病院のスタッフの方々もたいへん優
しく飲み方に誘っていただいて話す機会があったのだが、皆、肝付の内之浦の町を愛していると感じた。
実習した時期がちょうど梅雨とかぶってしまい、残念ながら実習ができない日もあったが、人生でもそう経験しないようなことを
たくさん経験することができて、よかったと思う。へき地医療だけでなく、災害医療の一端も見ることができた。宿泊したキャン
プ場には、カニがいてイノシシに遭遇して、ムカデやゴキブリを退治してと、友人とサバイバルな生活を楽しむことができた。
(医療のレベルについて思ったこと)
140
できる範囲で内之浦で医療を完結できるように、さらに高次医療が必要ならば他に送るというスタンスでやっていた。しかし私が
実習している一週間の間、他の病院に紹介することはなく、内之浦の肝付町立病院で完結していたと思う。スタッフも看護師だけ
でなく、検査技師、作業療法師、管理栄養士とたくさんいて、外来患者に対して栄養指導を行っていた。長い患者は平成 8 年から
入院していたが、褥創もなかった。また、回診時の患者に対する看護師の理解度も深く、スタッフ、医療のレベルも高いと感じた。
(病院の意義について思ったこと)
外来は高齢の人が大半を占めていた。主訴については生活習慣病の薬が欲しいということから感染、蜂に刺された、肩こり、筋肉
痛、こけた、と幅広くいたがそれを 3 人の先生で診察しており、 3 人とも幅広く診察、治療を行っていたので凄いと思った。話を
しに来ただけのような患者もいたが、地域の人に安心を与え健康を守る拠点という印象を受けた。中央に集学的な病院があること
も大切だが、過疎や高齢化の進んだ地域では、その地域の病院あるいは診療所に来ることが限界である患者も多いので、その地域
に診療所などがあるということは大変意義深いことだと思う。
入院は慢性期の患者が多く、近くの特別養護老人ホームと合わせて、内之浦地区の看取りを担っている場所という印象を受けた。
40 床あるが随時満床に近く、その中で急患と看取りのバランスを取るのは難しそうだった。
(まとめ)
1 週間実習をしてきて、また今までポリクリやクリクラをおこなって地域医療を行う医者に求められることが少しではあるが私の
中で見えた気がする。今思うのは、医師は( 1 )その地域の人の健康を守ること、( 2 )地域の人に家族の死を受諾してもらうよ
うにすることが求められるのではないかと思う。都会の医療では医療が細分化しているので前者は行っても後者には携わらない、
またその逆、という医師が大部分になると思うが、地域ではその両者を行う必要があり、それができないと地域医療は行えないと
思う。私はまだまだ若輩者であるが、様々な経験を積んで将来はそのような医者になりたい。
氏
名
松本
龍
6 月 25 日(月)実習 1 日目
午前中は院長先生の外来を見学させていただいた。先生は心臓血管外科がご専門らしいが、外来に来られる患者さんは慢性期の心
不全や腰痛、上気道炎などの方ばかりで、特に症状もないという方も少なくなかった。処置も肩痛、膝傷の患者さんへのヒアルロ
ン酸注射や、腰痛を訴える患者さんに対するステロイド注射が多かった。
想像していたことではあるが、先生方も専門に関わらずすべての患者さんを診ていた。ただ、専門に関わらずというわけではなく、
むしろ自分の専門分野を基礎に他の分野も広く知識や技術を上乗せしているという印象であった。
例えば院長先生は、心音や血管雑音は特に入念に聞いているようであった。
午後は院長先生と往診に動向させていただいた。患者さんは外来と似ており慢性期の疾患や腰痛、膝痛などが主訴の方が多かった。
処置に関しても前述のように注射をすることが多かった。往診の先々でジュースやビールなどをもらうのは、往診ならではと思う。
途中で雨が降ってきたが、今度往診に来たときにでも返してくれればいいよと気軽に傘を貸してくれるのも、お互いの顔が見える
からこそであろう。
6 月 26 日(火)実習 2 日目
午前中は岸良診療所にて予診と簡単な診察をさせていただく。患者さんからは、先生として見られ、緊張というより責任のような
ものを感じた。自分の不用意な発言が患者さんを傷つける結果になりえ、一方で根拠もなくただ励ますということもその場凌ぎで
決して患者さんのためにはならない。知識不足を痛感しもっと勉強しなければと思ったが、そこで感じたものはテスト前に「面倒
だけど勉強しなきゃなぁ」という類のものではなく、モチベーションの伴ったむしろ心地よいものでもあった。自分が努力した分
だけ、知識や技術が向上した分だけ、患者さんにフィードバックできるという明確な事実があり、そういう気持ちは決してテスト
前に感じるような「いやいやな勉強」にはつながらないからだ。思うにこのようなモチベーションを得る機会が増えれば、医学教
育ももっと充実したものになるのではないだろうか。詰め込むという一定の座学は必要不可欠と認めたうえで、ある程度学生に責
任を持たせた教育なり現場なりがあればよいと思った。
閑話休題、訴えのある患者さんも勿論多いが、話を聞いてもらいにくる方もすくなからずいらっしゃるようであった。これも僻地
医療ならではだろう。診断をつけること、処置をすること、薬を処方することだけが医療ではなく、ゆっくり会話をすることもそ
の確かな一部であろう。患者さんが元気になることが目的であり、手段はさまざまであっていいはずだ。さらに言えば医者でなく
ても、看護師でなくても、人を元気にすることができるはずである。僻地医療の大きな魅力のひとつは、医療における医師の比重
というものがあまり大きくなく、病院スタッフ全体で、近所同士で、町全体で支えあうという構図が見えてくる。
外来も一息ついたとき、往診の車を借りて内之浦海岸に行った。長い浜辺とそれを囲むような山々。生憎の天気ではあったが、雨
雲はこんなにも分厚く圧倒するものかと感じたものだった。山の中腹に海岸を一望できる展望台があるらしい。今度行ってみよう。
午後は 94 歳という高齢の方の胸腔鏡による手術を見学させていただいた。
食事を終え、バンガローでゆっくりしているころに、横殴りの激しい雨が降り出す。
明日の天気を憂いながら、男 2 人で酒を飲み続けた。
6 月 27 日(水)実習 3 日目
141
昨晩の雨は降り止むことを知らず、 7 時に窓から
みた景色は深い霧につつまれ、まるで雲の中にい
るようであった。この天気では病院に辿り着くこ
とは困難と判断しその旨を病院に伝え、空の様子
を伺っていた。ただただ振り続ける雨は、地球中
の雨を降らしているのではと思うほどであった。
むしろ悪化し続けた雨も夕方にはやや改善したよ
うで、朝からピーナッツしか食べておらず飢えに
も耐えかねこともあり、下山を決意した。徐行し
ながら山道を下りていくも、何度かこんな天気の
なか山の向かう車とすれ違う。その時感じた嫌な
予感は的中し、その先は崖崩れで道がふさがって
いた。バックで山道を駆け上がり、再びバンガロ
ーへ。
新村先生や病院の事務長さんに連絡をとり、今後の行動を相談する。
その後助けに駆けつけた事務長さんも。その間にさらに山の下腹のほうで土砂崩れが起き、閉じ込められる形になった。
必要最低限の荷物だけを持ち、二人で歩いて下山をすることに。途中何度も崖崩れが起きている道を通る。
最終的に病院にたどり着いた時は、安堵の気持ちも勿論あったが、サバイバルを乗り越えた達成感のようなものが恍惚と湧いてき
たものだ。
今日の離島実習はこれにて終了。こんな経験したのはこれまでもこれからも僕ら二人だけだろう。
考えれば山の中腹に位置するこのバンガローは季節や天気の影響か僕ら以外は誰もおらず、まるで大海のぽつりと湧いて出た島の
ような「孤独」や「孤立」の象徴のようであった。そこに取り残され、ピーナッツで飢えをしのぎ、土砂をさけながら山を降りた
のは某ドラマ「 LOST 」の登場人物さながらであっただろう。
その日に病院となりのコスモピアにて二人で購入した「 JAXA 」の T シャツは大事にしまっておこうと思う。
6 月 28 日(木)実習 4 日目
昨晩の雨は大きな大きな爪痕を残したようで、ロケット基地付近の道が陥没し、さらに内之浦に向かう複数の道が通行止めで、
「陸の孤島」になっているようだ。
そんな中今日の実習は始まる。
午前中は「銀河の里」という老人ホームにて、施設見学や入浴介助等をさせていただく。
午後は町立病院にて回診を見学させていただいた。 14 年間入院されている方もおり、本当の意味での慢性期の病棟であった。
遠隔医療実習記録
朝から夕方まで実習をさせて頂いたことや、バンガローにはネットは開通していなかったこと、大雨による避難などが理由で遠
隔医療実習を行う十分な時間を確保できなかった。
感想
不幸にも連日の大雨、土砂崩れ等で外にでることすらできず、内之浦という町や住民のみなさんのことを知る機会にはめぐまれな
かった。ただ今回の実習を通じて感じたことは、医療スタッフと患者さん同士が互いの顔が見えていること。背景や生活の上の成
り立つ医療であること。そして先生方が僻地で、設備は不足しているとしても高水準の医療行っているという自負を持っているこ
とである
この度は院長先生初め、事務長さん、他の医療スタッフの方々、お忙しい中暖かく迎えていただき誠に有難うございました。次は
伊勢海老祭りの季節に、勿論天気の良い日に、また内之浦に遊びに行きたいと思います。
重ね重ね、様々なご親切なご対応、有難うございます。
142
鹿児島県立大島病院
瀬戸内町へき地診療所
大島郡医師会病院
グループホーム 虹の丘
県立大島病院外観
あやまる岬
グループホーム虹の丘外観
高速船トッピー
瀬戸内町へき地診療所外観
大島郡医師会病院外観
マングローブ群生地
143
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
飯嶋
真秀
4 月 2 日(月)
実習先:県立大島病院小児科(午前・午後)、救急外来(夜間)
内容:午前中は病棟と外来、午後は予防接種、夜間は救外
症例 1 : 2 歳、男性、主訴はぐったりしている(母親談)。体温38.7度、咳嗽、鼻漏あり。咽頭発赤あり、白苔はなし。アデノ
ウイルスは陰性。輸液点滴し、ウイルス性感染症の可能性が高いが細菌性の可能性も捨てきれないため抗生剤処方する。状態が急
変した場合には来院or電話するようにときちんと説明したうえで帰宅させた。
症例 2 : 86 歳、女性、主訴はなし。くも膜下出血疑いにて他院からの搬送。認知症の既往歴があり寝たきりの状態であった。
手術適応の有無を確認するため血液検査、心電図、心エコー検査を行った。右手にルート確保後、造影 CT を施行。左椎骨動脈の
動脈瘤破裂と水頭症と診断される。病巣が脳幹部に近くリスクが高いことと術後の ADL 回復がほとんど望めないことを家族に説
明し、納得をいただいたうえで手術はせず、対症療法でいくという方針が決まる。
4 月 3 日(火)
実習先:県立大島病院産婦人科(午前・午後)、救急外来(夜間)
内容:午前中は外来、午後は病棟、夜間は救外
症例 1 : 24 歳、女性、妊婦健診。妊娠 36 週、体重 90kg 、妊娠糖尿病。度重なる食事指導にもかかわらずこの 1 週間で体重
3kg 増加した。
以前から入院を勧めて栄養管理の徹底を説明するが本人は応じず。「炭水化物は止めてる。でも油ものばかり食
べてしまう」とあいまいな発言が目立つ。 Dr. と助産師が母体と胎児のリスクを強く説明するが本人の理解は得られず今回も入院
を拒絶し帰宅した。
症例 2 : 72 歳、女性、主訴はめまい。フラフラして倒れたということで救急車を要請。血圧 190/100 以外はバイタル正常、意
識状態 JCS-0 、既往歴として高血圧、脂質異常症があり降圧剤とスタチンを内服中。血液検査、心電図、胸部・腹部 X 線検査施行
するが異常はなし。くわしく話を聞くと最近畑仕事に精を出しすぎて疲労とストレスがたまっていたと説明する。輸液実施し、
Dr. が穏やかに会話していると徐々に血圧は低下し、症状も治まった。家族に説明し安静を指示し帰宅させた。
症例 3 : 81 歳、女性、主訴は右足付け根の痛み。転倒後から右股関節痛が生じたため救急車を要請。既往歴に両側膝・股関節
に変形性関節症。問診、触診の後に股関節の骨 X 線検査を施行し右大腿骨頸部骨折の診断となり手術目的で整形外科に入院となる。
4 月 4 日(水)
実習先:大島郡医師会病院・虹の丘老健施設(午前)
内容:施設見学、検査見学、介護制度のレクチャー、介護認定の主治医意見書作成
症例 1 : 69 歳、男性。平成 20 年 11 月左視床出血。後遺症として右片麻痺、脳血管性認知症。短期記憶低下、失見当識、失
認あり。右上肢・下肢の中程度麻痺と関節の拘縮を認める。移動は介助ありの車いす、食事は介助、栄養状態は良好。現在の内服
薬はエナリン、抑肝散、マグミット、セロクエル。
4 月 5 日(木)
実習先:瀬戸内へき地診療所(午前・午後)
内容:バス巡回診療(阿室釜、篠川、久慈、伊目、古志)
症例 1 : 78 歳、女性、主訴は足のむくみ。既往歴として肝嚢胞、特発性門脈圧亢進症。内服は利尿薬。症状に大きな変化なし。
定期的に上部消化管内視鏡検査を行っているが後日診療所に内視鏡検査のために来院してもらうことになった。
症例 2 : 80 歳、女性、 Malignant Lymphoma 。心窩部に 4 ㎝大の硬い腫瘤を触知する。Ann Arbor分類Ⅲ期以上であり緩和
ケアとなっている。現在は WHO ラダー第二段階の弱オピオイドのトラマールを内服中で疼痛コントロールは良好。やや食欲不振
と便秘があるが ADL は良好で経過観察。
症例 3 : 85 歳、女性、高血圧。バスの振動が怖いためバスの外で診療。上村先生の診察をとても楽しみにしていた。
症例 4 : 95 歳、女性、高血圧。集落一の高齢者。バスまで自力で来られないため往診。元気な姿を確認。聴診にて収縮期雑音
を聴取。診察とほのぼのとした会話のあと薬を手渡して終了。
症例 5 : 80 歳、男性、糖尿病。糖尿病性網膜症のため失明。妻も変形性関節症でぎりぎり杖歩行ができる状態でバスに二人で
来るのもどうにかこうにかという具合であった。
4 月 6 日(金)
実習先:瀬戸内へき地診療所(午前)
内容:診療所で外来見学、事務長による町医療の現状についてのレクチャー
症例 1 : 65 歳、男性、健診。腹部エコー検査施行。異常なし。
症例 2 : 75 歳、男性、高血圧、糖尿病。検査のため加計呂麻諸島より来院。血液検査と診察を行う。看護師さんが家族関係や
仕事など患者背景の詳細について手に取るように把握していた。
遠隔医療実習記録
利用する機会がありませんでした。
感想
奄美大島の中核病院で急性期医療を担う県病院、そこから引き渡された患者の慢性期医療を担う医師会病院、そして瀬戸内町の僻
地医療を担うへき地診療所と役割の異なる施設を見学できたことが非常に有意義でした。島全体の医療の現状を考える機会を得る
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ことができました。単に医師不足という問題だけでなく、過疎と高齢化、高い生活保護率、交通の不便さなどの島固有の地域性と
いう問題点を痛感しました。その一方で離島医療独特の患者さん一人一人の顔が見える医療を実践できることには魅力を感じまし
た。またベテランの先生はもちろん若手や研修医の先生が専門分野のみではなく総合医のように幅広く患者を診ていこうというス
タンスはとてもカッコよかったです。
今回の実習ではいろいろな先生とお話しする機会があって自分の将来の医師像というものを考えることができました。特に自治医
科大出身の先生方は気持ちも取り組み方も責任の重さも半端ないところがとても勉強になりました。地域医療に取り組むには患者
さんやその地域を思いやる心とか利他の気持ちがもちろん重要ですがそれだけでは駄目なのがよくわかりました。幅広く正確な医
療の知識と技術がそれも自分一人だけの状況でも実行していく力が前提なのだと強く思いました。そのためには日々今の自分が出
来ることと出来ないことを判断していかなければならないし、自分が出来ることを少しずつ広げていかなければならないし、出来
ないことは他の医師やスタッフ、他の病院や医療施設と常に連携をとっていかなければならない。そしてその医療を本当に必要と
して待っている患者さんがたくさんいる。医師たる者人生日々即ち精進あるのみ、タフな男にならなければと思いました。地域医
療に携わっている先生はそんなタフかつハートフルな方ばかりでした。
今の自分が将来離島医療にどう関われるのかということを考えてみました。自分は研究に少し興味があるのでどこかの医局に入る
と思います。医局の命令で県病院に行けと言われれば当然行きます。しかし一年か二年で大学に戻してくれと条件を言うと思いま
す(その条件が飲んでもらえないにしても)。それは島が嫌とかいうよりはやはり専門的なことがそこまでできない気がしてしま
うからです。へき地診療所に行けと命令されたら「無理です」と泣きを入れると思います。そもそもそこで戦えるスキルは医局入
りのコースを辿ったときには身についていないと思います。専門分野に入る前の研修医としての 1 年とか 2 年ならいい経験になり
そうかなと思いました。逆に引退前とか専門的な部分が落ち着いてから来るというのは少し不安を感じます。その段階ではまた幅
広くは診られなくなってしまっていると思います。やはり作戦としては地域医療を前面に押し出して初期研修医をねらって全国か
ら多数集められるようにすればいいと思います(もうやっているのでしょうが)。そうすれば根付く医師も少なからず出てくるの
ではないでしょうか。
最後に今回の実習でお世話になりました県立大島病院の眞田院長、医師会病院の桜井院長、虹の丘老健施設の喜入先生、瀬戸内へ
き地診療所長の上村先生をはじめ Dr. の先生方ならびにコメディカルや事務のスタッフの皆様には心より御礼申し上げます。一日
も早くいい医者になりわずかでも恩返しできるように精進いたします。本当にどうもありがとうございました。
氏
名
迫田
直樹
4 月 2 日(月)
実習先:県立大島病院
内科、救急外来(夜間)
内容:好きな科で実習していいとのことだったので、 1 日目は内科で実習させていただきました。午前中は新しく来た先生と一緒
に病棟で内科の患者さん、および撤退したため内科が診るようになった神経内科、皮膚科の患者さんの状態の把握のため回診を見
学しました。脳梗塞後の患者さん、肺炎、膠原病、急性期の患者さんから入院歴が数年におよぶ慢性期や療養の患者さんまでいて、
循環器と消化器以外の内科は全て内科が診ていました。午後からは外来で転院搬送されてきた患者さんの処置や挿管チューブの交
換、熱傷の患者さんへの処置などを見学しました。夜間は救急外来の見学をさせていただきました。くも膜下出血の患者さんが来
ましたが、もともと認知症もあり ADL も全介助だったため、家族と相談しオペはしない方針になりました。
4 月 3 日(火)
実習先:県立大島病院
外科、救急外来(夜間)
内容:県立大島病院 2 日目は外科で実習をしました。この日、外科は検査日だったため午前中は食道造影、胃カメラを見学しまし
た。午後からは整形外科の鮫咬傷の手術を見学して、その後、大腿骨頚部骨折に対する全人工股関節置換術のオペに入らさていた
だきました。心機能の悪い患者さんだったため、全身麻酔ではなく脊髄くも膜下麻酔でのオペとなりました。その後は研修医の先
生の指導のもと、ルートの取り方や挿管の仕方を練習しました。夜間の救急外来では、めまいを訴える患者さんが来ました。血圧
上昇していたため降圧薬を点滴し、血圧低下とともにめまいも改善されてきたため帰宅されました。
4 月 4 日(水)
実習先:介護老人保健施設
虹の丘、大島郡医師会病院
内容:午前中、介護老人保健施設の虹の丘と大島郡医師会病院を見学させていただきました。虹の丘では基本的な介護保険の話か
ら介護老人保健施設の役割などを教えていただきました。離島という特殊な環境から、介護保険を払っていても介護施設がないた
め制度を利用できない人も多くいることや大島郡医師会病院と併設していることからホスピスなどへの入所待ちのターミナルの患
者さんも受け入れていることなど奄美大島や虹の丘の現状についてもお話してくださいました。また、実際の患者さんの主治医意
見書も書かせていただき、 ADL や状態の評価の難しさを実感することができました。大島郡医師会病院では健診で来ていた人の
胃カメラを見せていただき、あとは病棟を案内していただきました。リハビリ施設や温泉などもあり、県立大島病院にくらべ慢性
期の患者さんが多い印象を受けました。また、外来の先生たちはほとんどが非常勤の先生方で離島の医師不足の深刻さを実感しま
した。
4 月 5 日(木)
実習先:瀬戸内町へき地診療所
内容:バスでの巡回診療に同行させていただきました。瀬戸内周辺は平地が少なく、山に囲まれた狭い平野に、ちいさな集落が点
在していました。集落は山に囲まれているため、車など交通手段を持たない高齢の方は巡回診療がなければ診療所に通うのにとて
も苦労する環境でした。バスが到着する前から患者さん達は待っていて、巡回診療が生活の一部になっているようでした。バスの
145
中の待合室では、患者さんどうし自分のところの畑はどうだとか、今日の血圧はどうだったかなど楽しそうに談笑していて交流の
場も兼ねていました。疾患としては高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や加齢からくる膝や腰の痛みが多くみられました。
中には癌の術後の患者さんや脳梗塞後の患者さん、心房細動など循環器やバセドウ病などの内分泌などさまざまな患者さんもいら
っしゃいました。また、バスまで直接来られない患者さん対しては個別に往診もしていました。
4 月 6 日(金)
実習先:瀬戸内町へき地診療所
内容:仮設診療所として使っている母子健康センターで村上豪先生の診察を見学させていただきました。もともと診療所にはレン
トゲンや胃カメラ、 CT などある程度設備もあったようですが、現在は仮設の診療所にあるエコーと、工事中の診療所にある胃カ
メラなどの限られた設備で診療を行っていました。また、 19 床入院設備も現在は使えないため、外来のみ診療していました。疾
患としてはやはり高血圧や高脂血症などの生活習慣病や術後のフォローの患者さんがメインでした。診療所近辺の患者さんが主に
なるため昨日の巡回診療よりは年齢層は低めでした。
感想
今回が初めての奄美大島だったため、奄美大島がどのような所で島の人たちがどのような生活を送っているのか、どんな医療が求
められているのかなど知らないことだらけの実習のスタートでした。最初に行った県立大島病院は島の中核を担う医療機関として
さまざまな急性期の患者さんがいました。離島といえば小さな診療所というイメージが強かったのですが、島には島の中核を担う
医療機関があるのだと知りました。ちょうど県立大島病院では本年度から神経内科と皮膚科が撤退し、離島の医師不足を目の当た
りにしました。また、その他の科でも先生たちの移動が多く、長期入院している患者さんにとっては何人も主治医変わる事があり
困惑している様子もうかがえました。医師不足は進んでいる一方、高齢化が進んでいる奄美大島では患者さんも多く外来にはたく
さんの患者さんが待っていました。離島の中核病院として手術も多く行われていて、病棟には術前や術後管理、肺炎など急性期の
患者さんから慢性期の患者さんまで幅広い患者さんがいました。また、患者さんや家族からの「どうしても県病院がいい」という
強い要望や、施設の空きの関係から長期療養の患者さんやターミナルの患者さんもみられ、島の実情をみた気がしました。実習中
は若手の先生や研修医の先生について回る事が多かったのですが、知識の豊富さや技術の高さに驚きました。特に自治医の先生た
ちはへき地に行けばすぐに一人で診療をしなくてはいけないため目的意識が高く、「 2 年後 3 年後には自分たちもこのレベルに達
していないと」と刺激を受けました。
2 日目の虹の丘では高齢者が増えていくなか、老人保健施設が少なく、近くに入所できる施設がなかったり、施設に空きがないた
め介護保険を払っていても制度を使う事ができない人達が島には多くいることを学びました。また、虹の丘は大島郡医師会病院と
隣接しているため、本来はホスピスで受け入れるべき医療行為の必要な患者さんも受け入れていて、島ならではの事情があるんだ
と感じました。
瀬戸内町へき地診療所は、まさに島の診療所のイメージそのままでした。瀬戸内町の人たちにとても感謝されていて、地域に根付
いた医療を垣間見る事ができました。巡回診療も「町立の診療所の自分たちがやらなくては」と強い使命感をもってやられていま
した。医療行為だけでなく、経営の方にも頭を使って、町の行政の負担にならないよう努力していたり、少しでもいい医療をしよ
うと他の診療所とも連携をとったりと様々な努力を、町の人たちもそれを感じてお互いに支えあい成り立っている診療所だなぁと
感じました。また、患者さん達も島の人同士が話す時は、現地の方言で何の話をしているのか全くわからなかったのですが、話し
かける時は気を使って僕らでも分かる言葉で話しかけてくださり、帰り際には「頑張ってね」とたくさんの人たちが声をかけて下
さり、生活に近い場で行う地域医療の魅力を改めて感じる事ができました。
また、移動の際には山肌が直に見えていたり、工事中で片側通行だったりと豪雨災害の傷跡をたくさん目にしました。主な生活道
路はだいぶ復旧が進んできたようですが、狭い抜け道のような道路はいまだに土砂で埋まっていて通行止めになっていました。
100 年に 1 度といわれるような規模の災害が 2 年も続いたため PTSD で苦しんでいる人もたくさんいるとの話も聞きました。島か
ら出ていく若者が多い中、「やっぱり島が好きだから」と島に戻ってきて働く同世代の人たちとも話をする機会もありました。
1 週間という短い期間でしたが、島の生活や医療、保健について実際に現場に行くことでたくさんのことを学び感じる事ができま
した。 4 月頭という忙しい時期に、実習を受け入れ指導してくださった先生や関係者の方々には感謝しています。ありがとうござ
いました。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
中村
優子
4 / 23 (月)
実習先:鹿児島県立大島病院
内容: 8 : 30 ~院長へ挨拶。診療科医師と調整のうえ、見学を希望した整形外科へ配属となった。
9 : 00 ~病棟で包交を見学。
9 : 30 ~ 14 : 00 外来見学。患者は関節リウマチ、変形性膝関節症、そして半数が高齢者の腰痛であった。また 40 ~ 50 歳
代とまだ若く、疾患があるとはいえ全く働けない状態には見えないが、生活保護を受給している者が大変多くみられた。
14 : 00 ~ 15 : 00 手術見学。局所麻酔下で 5 cm程度の背部のアテローム切除であった。
15 : 30 ~ 16 : 30 病棟回診。入院は大腿骨頸部骨折の患者が多い。他には頸椎症、人工関節置換術(股・膝)、橈骨遠位端
骨折など。中高年~高齢者が多く、若年者はいない。
16 : 30 ~ 17 : 00 院長による院内見学。
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17 : 00 ~ 20 : 00 救急外来を見学。 1 年目の初期研修医が初期対応を行う。
1 件目は施設入所中の 90 歳女性。主訴は貧血(Hb 5 %台)。消化管出血が疑われ、消化器内科が対応すると事前に指示があり、
救急ではルートを取ったのみで病棟管理となった。高齢者は血管が細くて固いので大変難しそうだった。
2 件目は 13 歳男児。主訴は発熱と嘔吐。家族歴からインフルエンザウイルス感染症およびロタウイルス感染症が疑われた。イン
フルエンザは簡易検査で陰性。現在は 37 度台に解熱しており、整腸剤を処方され帰宅となった。
4 / 24 (火)
8 : 15 ~整形外科病棟に集合し、包交を見学。本日、変形性膝関節症のため人工膝関節置換術を行う予定の患者について、現在
の状態と術式について説明を受けた。X線で見ると膝の内反が進んでおり、内側の関節裂隙が狭小化し、骨棘の形成が見られ、変
形が高度となっていることがわかった。
9 : 00 ~ 18 : 00
本日の整形外科患者の手術は 3 件で、すべてに手洗いのうえ参加した。県立大島病院の整形外科は 3 名の
医師で外来、入院、手術とすべての業務に対応しており、先生方は皆、大変忙しく、休む間もない。本日の手術も 1 件が終了に近
づくと 3 名のうちの 1 名の医師が先に手を下ろして 2 件目の手術の準備に向かう、といった状況であった。
1 件目。左膝人工関節置換術。大学病院でのクリクラで 1 度見学しており、手順などの大まかな流れを把握していたため、 1 度目
より考えながら手術を見学することができた。整形外科手術は他科の手術に比べて手洗いが念入りであり、術中にも何度も手袋を
変えるなど、清潔への意識がとても高く、緊張感があるように思う。
人工関節置換術は事前に十分なデザインを行ったうえで、膝蓋骨に沿って切開し、大腿骨遠位端、脛骨近位端を処理のうえ、人工
関節を挿入していくものであった。ボーンソー、ノミ、ハンマーなどの多彩な工具を用い、ある場面では大胆に、またある場面で
は数ミリ単位で骨を削って微調整していく。その手技は職人技だといつも感心する。
2 件目。大腿骨頸部骨折によるハンソンピン固定であった。人工骨頭置換術を行うのが一般的だがBMI 35 を超える肥満であり、
動脈硬化がかなり進行し、両側の椎骨動脈が高度に狭窄しているため、術中に出血量の多い人工骨頭置換術は不適であり、幸い骨
折部位のずれがないことからハンソンピンでの固定になったとのこと。
透視下でドリルを使い、ガイドを 2 本挿入したうえで、ハンソンピンを挿入する。手術の最後にマットレス縫合をさせてもらった。
クリクラでも整形外科にいたためマットレス縫合、糸結び、糸切りはかなり練習していたつもりであったが、実際の皮膚は表皮が
固くやや手間取った。何よりも実践の機会を与えてもらえたことが大変嬉しかった。
3 件目。左下肢切断。ベースにDMとASOがあり、蜂窩織炎となった患者である。
筋肉を処理したうえで大腿骨の遠位側を切断した。不用意に傷付けると大出血してしまうため大腿動脈の処理に最も注意を払い、
また切断後の幻肢症を防ぐため、坐骨神経と大腿神経に局麻を打ったうえで切断していた。救命のためとはいえアンプタは非常に
せつない気持ちになる手術だった。
手術中、手順や手技はもちろんのこと、術前術後の事項や主要な解剖、手術道具に至るまで先生方にいろいろと教えてもらうこと
が出来たこと、また微力ではあるがチームの一員として手伝いをさせてもらうことが出来たことが、大変勉強になった。
18 : 00 ~病棟患者のギプス施行と勉強会
4 / 25 (水)
9 : 00 ~ 11 : 30 介護老人保健施設虹の丘
事務長から介護保険制度について説明を受け、施設長の医師の案内により施設の見学を行った。認知症フロアの入所者と会話をし、
主治医意見書を記載する体験を行った。
11 : 30 ~ 13 : 00 医師会病院
院長の案内による病院見学。
4 / 26 (木)
8 : 20 ~院長と懇談、朝礼、外来見学。
患者さんは高血圧症や腰痛・関節痛で通院している高齢者が多い。
11 : 00 ~カヌー体験。院長はじめスタッフの皆様の心遣いでマングローブの森へカヌーをしに行かせていただく。初日から実
習が忙しかったため、この実習で唯一の観光となり、大変よい思い出となった。
14 : 00 ~往診、外来
約 8 名の患者さんの家庭を院長、看護師、教授とともに訪問。学生は血圧を測り、聴診をおこなった。膝関節や股関節の障害によ
り歩行が出来ない患者が多く、家族が不在の中、一人で臥床している高齢者もみられた。医師の訪問を心待ちにしており嬉しそう
な姿が印象に残った。また 2 週間程度食事が摂れておらず不調を訴える 40 歳のアルコール依存症患者さんに対しては、家族と話
をし、近隣の病院と連絡を取り、素早い対応で入院させることが出来た。
4 / 27 (金)
8 : 30 ~採血、朝礼、外来見学
院長夫妻に採血を行った。適切な血管を選び、狙った部位に針を刺すこと、また片手で作業をすることが難しく、 1 度目は失敗し、
2 回やらせていただいた。
診察の際、問診、血圧測定、胸部の聴診を行った。
感想
まず初めにお世話になった先生方にお礼を述べたいと思います。
大学でのクリクラで整形外科の面白さを知り、県立大島病院でも整形外科での実習を自ら希望したのですが、多忙な中、当日行わ
れた 3 件すべての手術で手洗いのうえ術野に入れていただき、多くの指導をしてくださったことに感謝しています。大学病院では
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脊椎・関節・腫瘍といったグループに分かれ、また病棟と外来で分担し診療にあたっていますが、県立大島病院の整形外科は 3 名
の医師で外来、入院、手術とすべての業務に対応しており、先生方は皆、大学病院に比べて慌ただしい中で手際よく働きながらも、
患者さんに優しく接する姿が印象深かったです。外来患者は関節リウマチ、変形性関節症、加齢に伴う膝・腰痛が多く、小児から
高齢者まで需要の多い科だということを改めて感じました。クリクラでも整形外科を選択していたためマットレス縫合、糸結び、
糸切りは医局の先生方から教わっており、かなり練習したつもりでいましたが、実際は表皮の硬さに手間取ってしまいました。で
すが何よりも術場で実践の機会を与えてもらえたことが大変嬉しかったです。
虹の丘では認知症フロアの入所者と会話をし、主治医意見書を記載する体験が印象深かったです。介護保険制度について学んで
はいても、実際に主治医意見書を作成するのとなると、認知症患者さんと意思の疎通がなかなか取れず、食事は自力か介助か、と
いった簡単な項目であっても本人から聴取することができませんでした。主治医意見書に必要な項目をすべて聞きだし、ADLの
評価をすることは大変困難であることが実感できました。
住用国保診療所では今回実習生を初めて受け入れたため、野崎先生が「医学生なので医療行為は一切何もさせてはいけないと思
っていた。」とのことで、初日の実習は医師の診療を見学する内容に留まっていましたが、翌日は学生側の要望を聞いて下さり、
余裕がある時間帯の診察時には、問診、血圧測定や胸部の聴診などの身体所見を取らせてもらうことが出来ました。また外来開始
前には先生自らが練習台となり採血もさせていただきました。以前、下甑の瀬戸上先生のところで離島実習した際にも感じたこと
ですが、離島・僻地だから医師なら誰でもいいという訳ではなく、地域に根差した医師だからこそ信頼され、信頼があるからこそ、
住用の人々は野崎先生に会いに診療所にやって来るのだという医師と患者の結び付きを強く感じました。また往診や家族の診察も
行うことで、患者の家庭の事情や経済的事情など問題も多く見えてきました。医療行為のみならず介護との橋渡しや「より良く暮
らすこと」にも気を配る、ハートフルな姿勢は野崎先生ならではだと感じました。
お忙しい中、親切に対応してくださった先生方には感謝するばかりで何の不満もありませんが、いずれの施設においても実習内
容は基本的には施設内を見学する、医師の診察や手技の様子を見学する、といったものに留まり、実際に考えたり手技を習得した
りする機会は無いに等しく、受け入れ先には、医学生に何をどの程度までさせることが許されているのかわからない、あるいは医
療行為を一切させてはいけないと思っていたという先生方さえいらっしゃいました。
奇しくも 6 年生の同時期はクリクラを行っており、興味・関心のある科、将来進むことを考えている科など、自らが選択した科
で主体的に実習しており、実際に様々な手技を体験させてくれていました。 6 年生になってまで 1 週間もの時間とお金を使い単な
る見学旅行のような実習を必修とする必要があるのか、もしくは低学年の時間のあるうちに来れば良いのではと疑問を感じました。
氏
名
横塚
紗永子
4 月 23 日(月)
実習先:県立大島病院
内容
小児科(午前)、
小児科(午後)、(夜間急患)
:午前中は、県立大島病院の小児科病棟にて、感染症の患者さんを中心に見る。
症例… 2 歳女児。先天性心奇形術後フォロー中。感染症を発症し、脱水と心不全に注意しながら水分バランスに注意しながら加療
中であった。
午後は小児科外来にて、予防接種見学を中心に、小児のワクチンについての知識を深めた。
夜間救急は、症例… 27 歳男性、換気扇に巻き込まれ右手指に複数の裂傷あり。止血されている。水道水でよく洗浄したのち、生
理食塩水でさらに洗浄し、約 15 針 4 か所を縫合。縫合後、破傷風トキソイドを注射し、帰宅された。
4 月 24 日(火)
実習先:県立大島病院
内容
総合内科(午前)、総合内科(午後)、(夜間急患)
:午前中は、県立大島病院の総合内科病棟にて、神経所見を中心に診察。
症例… 42 代女性。上肢、下肢ともに深部腱反射亢進、左右差なし。顔面の感覚に左右差あり。徒手筋力テスト上下肢ともに 3 前
後。構音障害あり。以上の所見より MRI 施行。頚髄 C2 ~ C7 に神経変性所見あり。よって多発性硬化症と判断され、ステロイ
ドパルス施行。
午後は、総合内科の病棟を中心に、気管カニューレの交換の実施、神経所見から、脳梗塞部位を特定する、胸腔ドレナージ挿入見
学、などを行った。
夜間救急は、 15 歳女性、部活中に意識消失し救急搬送。右下肢には持続するミクローヌス様の持続する筋収縮があった。てんか
んにて脳外科フォロー中。 23 日受診したばかりであった。抗てんかん薬を応急静脈投与するも、けいれんおさまらず。緊急性は
ないものの、高校入学からまもなく徳之島の親元を離れ、寮生活が始まっており、不安とストレスが強い様子だったこともあり、
入院し、後日担当医の診察となった。
4 月 25 日(水)
実習先:大島医師会病院、介護老人保健施設
内容
虹の丘
:おもに施設見学。
介護老人保健施設
虹の丘では、介護保険申請のための、意見書の模擬作成。
症例… 70 代男性。脳梗塞後、見当識障害あり。取り繕い行動もみられる。活動性の低下みられる。食事自立。排泄もおこなえる
が、ときどき間に合わない。要介護 1 であり、ショートステイを利用されていた。
4 月 26 日(木)
実習先:奄美市立住用国民健康保険診療所、大島郡医師会館
内容
:午前中は外来見学、および血圧測定、胸部聴診、簡単な問診などを行った。高血圧の定期フォロー、関節疼痛緩和のため
148
のヒアルロン酸関節内注射、腰痛や肩痛の患者さんへの神経ブロックの見学。午前と午後の診療の合間に、診療所近くのマングロ
ーブの森へカヌー探索に行かせていただいた。
午後は訪問診療、交通手段がない方や、訪問診療を行わないと孤立してしまう方など、高齢者に限らず、 40 代や 50 代の方の訪
問診療も行った。血圧測定と胸部の聴診、関節内注射や神経ブロックの補助を行った。
症例… 40 歳男性、約 10 年前に奄美大島の実家に帰省してからは、ひきこもりがちになり、日中からアルコールも摂取しており、
10 年前から約 30kg の体重減少。ここ 1 年程はアルコール以外のものはわずかしか摂取しておらず、体重減少も顕著で、精神科
あるいは、内科に入院のうえ、羸痩および栄養障害、アルコール依存およびアルコール性の身体障害についての精査が必要と考え
られ、 27 日に名瀬徳洲会病院に入院紹介となった。
夜間は大島郡医師会館において、消化器症例検討会に参加した。家庭医の先生方が県立大島病院に手術紹介となった患者さんの経
過を共有するのが主目的の症例検討会である。今回は、胃癌の症例で、 EMR 適応と間違う可能性のある、粘膜下浸潤癌の肉眼所
見が紹介されていた。
4 月 27 日(金)
実習先:奄美市立住用国民健康保険診療所、大島郡医師会館
内容
:午前中は外来見学。合間に町役場で捕獲したハブを見せていただく。昨日と同様の定期フォローの患者さんや、急性腹症
の症例あり。
症例… 20 代女性、仕事に出かけるバスを降車中に突如腹痛に見舞われ、当院受診。顔面蒼白。意識レベルの低下はなし。脈拍
45 と徐脈あり。血圧の低下は見られず。妊娠の可能性はなし。下血なし、月経周期整。輸液により脈拍 50 代後半に回復、徐々
に顔面の血色も回復。笑顔も見られるようになる。腹部エコーにおいて、異常所見なし。上部消化管の潰瘍の可能性が高く、後日
内視鏡による精査となった。
午後は、外来診療ののち、住用中学校において学校検診を行った。学校検診においては、眼瞼結膜の視診、頸部リンパ節触診、心
音・呼吸音聴診、肝・脾触診、側弯の診察、軟口蓋の視診、外耳道の視診を行った。訪問診療においては血圧測定、胸部聴診を行
った。夜間は大島郡医師会館において講演会を聞いた。東日本大震災に循環器医として長期フォローを大規模に行っている方の講
演であった。
遠隔医療実習記録:時間もなく、ネット環境も限定されていたため、行えなかった。
感想
離島実習は今回で二回目となりました。以前は 3 年の夏に、与論島の古川先生にお世話になりました。約三年前に診療所に実習
に行った際には、ほとんど何もわからない状態でした。身体診察や問診を始め、さまざまな知識や手技をひととおり学んだあとで
今回行った、離島実習では、わかることや、できることが増え、三年前に比べ、医療面ではとても有意義な実習でした。
離島の文化や風土は今回も、以前も存分に感じることができたと思います。奄美大島は同じ鹿児島県といえども、空気もしっと
りしていて、雨も多く、気候の違いを肌で感じることができた。食べ物や、方言、家屋なども、与論島とも鹿児島市とも違ってお
り、鹿児島県の文化的な広さを改めて感じた。また、住用の野崎先生のご厚意で行かせていただいた、マングローブ林のカヌーや、
個人的に行った、金作原散策は、緑の濃さや生命の息遣いの濃さに圧倒された。時間もゆっくりと流れていたように思う。食事も
沖縄と鹿児島の文化が混ざったようなメニューで、イカスミ汁、鶏飯、黒糖焼酎を始め、目にも、舌にも新鮮でかつ美味しいもの
がいっぱいで、毎日楽しい食事だった。奄美市立博物館にも行き、奄美の文化、風俗、自然をひととおり知ることができて、 150
円なのが素敵であった。沖縄のように観光客に特化しすぎているわけでもなく、しかし、 I ターンしてきた方々に対してや、旅行
者に対して排他的でもなく、とても良い雰囲気な土地だな、と思った。
大島病院で実習をさせていただき、老若男女問わす、疾患の軽重問わず、ほんとうにいろいろな患者さんがいらっしゃるんだな、
と思った。病棟においても、比較的経過の長い方もいらっしゃり、地域の医療の最後の砦を一手に引き受けているな、感じること
ができた。三年生の夏にパナウル診療所での医療に触れていたので、大島群島の中核病院を見たい、という気持ちも強くなってい
たので、見学できてよかった。病院の前のむつみ寮に泊まっていたので、救急車も予想以上に来るな、と思った。小児科の諸先生
方、総合内科の柳先生、初期研修医の先生方には大変よくしていただき、初めて訪れた奄美大島にも関わらず、不安や心細さなく、
快適に実習を行うことができたいへん感謝しております。
住用の診療所では、野崎先生をはじめ、野崎先生の奥様、スタッフの方々には、ほんとうに親切にしていただき、感謝しきれま
せん。とくに野崎先生には、外来や訪問診療、学校検診、医師会の勉強会と、奄美大島で、家庭医の先生方が日々どういう診療を
されているのか、最大限に見せていただき、とても勉強になりました。住用の診療所は今回初の離島実習の受け入れだったにも関
わらず、通常業務とともに、学生にも熱心に指導していただき、身体所見や問診もたくさんとらせていただきました。個人的には
学校検診に行けたことがとても楽しかったです。
いろいろと書きましたが、一番私が勉強になったのは、野崎先生の家庭医としての覚悟です。奄美の集中豪雨の折、住用の診療
所も浸水し、ご自身も下半分水につかっているのに、患者さんのデータが入っているノート PC を死守し、地域の医療情報を守っ
たこと。ご自身も被災されたのに、それでもなお道路が復旧するまでの二日間、不眠不休で地域の医療にあたられたこと。野崎先
生自身は声高に語られることはありませんでしたが、野崎先生に寄せられる地域の方の信頼はきっと豪雨のときに揺るぎないもの
になったんだろうな、と思いました。地域の方々もこの先生になら命を預けていい、と思われるためには、全身全霊で挑んでこそ
なのだ、と二日間先生の診療される姿を見ながら、思いました。このような感覚は離島という現場で実習させていただけたからこ
そ、感じとることができたと思います。野崎先生には広く色々なことを私に教えてくださったと思います。
離島実習のカリキュラムに関しては、 6 年次のクリクラでは、興味のある診療科に 4 週間行けない、のは他の日程で離島実習が
できるようにかえて欲しい、と思いました。個人的には 5 年の後半などに行きたい。
149
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
大川
政士
5 月 28 日 ( 月 )
実習先:県立大島病院 ( 外科 )
内容: 7 : 00 より主治医の先生と病棟回診を行い、体調などを伺いました。受け持
ち患者さんは 10 人前後でした。 7 : 30 より外科病棟のカンファレンスがはじまり、
病棟の患者さんの状態を全ドクターで確認しあってました。治療方針が決まっている
患者さんについては、気になるところがあれば報告し、新規の患者さんや治療方針が
決まってない患者さんについては主治医がプレゼンを行い、皆で話し合い議論をして
いました。 9 : 00 からは回診と包交が行いました。創の状態やドレーンの状態を確
認し適宜、処置を行いました。午後からはオペがあり、手洗いをさせて頂き、縫合な
ど手伝えることをさせていただきました。オペ後は再び回診を行い患者さんの話を伺
ったりしました。 20 : 00 より救急外来を見させていただきました。一年目の研修
医の先生と二年目の研修医の先生、それにバックアップとして上級医の先生が一人付く三人体制で救急外来を回していました。
Walk in 、救急車どちらもまず一年目の研修医が first touch を行い、それに対して二年目の研修医が指導を行い、二人では対応が
厳しそうな症例に対しては上級医の先生を呼び対応してもらう体制でした。一年目と二年目の先生で対応が明らかに違い、一年間
でこれほど力がつくのかと驚きました。夜間救急の症例は巻き爪や浣腸などといった全く救急性のない症例がその日は多かったが、
子供の発熱 ( 翌日小児科受診する運びになったが ) や動悸の患者さんが救急車で運ばれてきました。動悸の患者さんは PSVT であ
り ATP の急速静注ですぐに収まり、眼を見張る症例でした。
5 月 29 日 ( 火 )
実習先:県立大島病院
火曜日も午前の病棟業務は変わらず、回診にカンファに包交を行いました。火曜日は他の曜日と
違い原則オペがない日であり、外科の先生方は胃カメラ、大腸カメラを行っていました。実際に
カメラを触らして頂き大変勉強になりました。夕方からは乳がん検診の所見の取り方について教
えて頂きました。
県立大島病院にはクリニカルクラークシップも含めて約 1 カ月お世話になりました。患者さんを
入院から退院までみることができ、大変勉強になりました。特に思い出に残る症例は、実習初日
にお会いした時は挿管されていた患者さんです。徐々に呼吸状態も回復していき抜管し、実習最
終日にはマスクも外れて喋ることもできていました。毎日、血ガスをとらせていただき、微力で
はありましたが診療のお手伝いをし、元気になった姿をみてお別れでき率直に嬉しかったです。
5 月 30 日 ( 水 )
実習先:大島郡医師会病院、介護老人保健施設虹の丘
大島病院から車で 30 分ぐらいの所に位置している病院でした。到着し院長先生はじめ病院のスタッフの方々に温かく迎えてもら
いました。病院の簡単な説明をうけ、その後病院を見学して回りました。一通り見学が終わると、次に介護保険制度についての説
明を受けました。介護保険制度とは 40 歳以上の方々が加入者となって保険料を納め、介護が必要になったときには費用の一部を
支払って、介護サービスを利用できる仕組みです。介護サービスを受けられるのは、 65 歳以上の方 ( 第 1 号被保険者 ) 、 40 歳
から 64 歳までの方 ( 第 2 号保険者 ) であり、それぞれ、前者は介護が必要になれば原因如何に関わらず利用でき、後者は特定疾
患が原因となって介護が必要と認定された人が利用できる制度であることを教わりました。介護保険を利用するにあたり、まず、
介護保険担当窓口に「要介護認定申請」を行います。その後訪問調査、医師の意見書をもとに介護認定審査会に「要介護状態区
分」の判定が行われています。原則 30 日以内に、認定結果が通知され、介護サービス計画が作成され、サービスを利用するとい
った流れで行われている事がわかりました。今回の実習では介護サービスを利用するにあたり必要な医師の意見書の作成実習を行
いました。
72 歳男性
診断名:老人性認知症、糖尿病、高血圧症、アルコール依存症
症状としての安定性:安定
生活機能低下の直接の原因となっている疾病または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療内容:バイアスピリン、ディオバン
…
特別な医療:特になし。
日常生活の自立度等について: A1
認知症の中核症状
Ⅲb
短期記憶:問題あり
認知能力:いくらか困難
伝達能力:いくらか困難
認知症の周辺症状:無
その他の周辺症状:有
失見当識
身体の状態:筋力低下 ( 両下肢、両上肢 ) 、関節の拘縮、関節の痛み
移動:屋外歩行 ( 介助があれば可能 )
食事行為:自立ないしなんとか食べられる。
現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針:尿失禁、徘徊、低栄養、摂食嚥下障害
150
サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し:期待できる。
以上のような医師の意見書を作成しました。
5 月 31 日 ( 木 )
実習先:瀬戸内へき地診療所
この日は 8 : 00 にへき地診療所に到着し、そこから海上タクシーに乗って加計呂麻島
まで巡回診療に行きました。あいにくの雨模様であり、海は大荒れでした。やっとそっ
とで到着し、そこから巡回バスに乗り込み各集落へと出向いていきました。道中はがけ
崩れがたくさんあり、スリル満点の巡回診療でした。各集落到着すると、サイレンを鳴
らして患者さんに巡回診療が来たことを知らせ、あらかじめ決められた所に患者さんが集合することになっていました。バスの中
は非常に狭く感じましたが、エコーをはじめ、血圧計や簡単な診察道具は一式揃っており、基本的な薬剤も大凡揃っているそうで、
小さな診療所となっていました。ドクター一人に、看護師さん一人、それに町の職員の方二名の四人体制で診療を行っていました。
高血圧や高脂血症などの慢性疾患のフォローの患者さんが大多数を占め薬の調節や追加の処方等を行っていました。二週間に一回
のペースで診療しているそうで、採血等の結果は二週間後にわかるそうです。看護師さんが血圧や体温を測り、ドクターが聴診等
の診察をし、町の職員の方が会計から調剤まで行って、バスの運転まで行っていました。暴風雨の中の診療で美しい加計呂麻の自
然を満喫することはできませんでしたが、加計呂麻に住む人々の生活がほんの少し垣間見られた充実した実習であった。
6月1日 ( 金 )
実習先:瀬戸内へき地診療所
昨日と同様に 8 : 00 に診療所に到着し、今日は診療所の外来の見学をさせて頂きました。外来の患者さんはやはり慢性疾患が多
く、その他には、予防接種や、各種診断書をもらいに来る患者さんが多かったです。診療所は昨年の豪雨災害で被害に遭い、五月
から再開し始めたばかりで、まだ真新しい外来でした。カメラやエコー等も完備されていました。災害で故障していた CT も来週
から再稼働し始めるそうで、 CT が使えるようになると助かると先生方はおっしゃっていました。診療所と巡回をドクター二人で
交互に行っているらしく、それに昨日までは研修医の先生がいらしており、だいぶ助かっ
ていたそうです。お昼ご飯を頂き昼過ぎには名瀬の県立病院へ帰らせて頂きました。
感想
今回の離島実習はクリクラとあわせて計一か月奄美大島の方に滞在しました。離島実習、
クリクラを通して、離島医療についてはもちろん、離島での生活も肌で感じようと意気込
んで実習をスタートさせました。県立大島病院は鹿児島大学卒の研修医の先生方も多く、
気さくに話しかけて下さり、初めての奄美大島でありましたが不自由なく実習を行えまし
た。実習に関しても、外科、産婦人科、麻酔科と実習させていただきましたが、どの科の
先生方も熱心に指導してくださりました。またクリクラでありましたのでポリクリより一歩踏み込んだ実
習をさせて頂き大変勉強になりました。実習後は毎晩飲みに連れて行って下さり、屋仁川で多くの思い出
を作ることができました。お酒もご飯も最高においしい!と言わんばかりに、この一カ月で自身の体重が
過去最高を記録したのは充実していた証拠です。休日には釣りに行ったり、バーベキューをしたり、カヌ
ーに乗ったり多くのアクティビティも体験しました。飲みやそういった活動を通して島に生活する方々の
息づかいを感じることができました。気の合う仲間五人で一緒に頑張ろうと申し込んだ、クリクラ、離島
実習でしたが、実習も終盤にさしかかるにつれて多くの方々が手助けしてくださり、非常に充実した生活
を行えました。鹿児島大学に入学して本当に良かった!!
氏
名
川畑
俊聡
5 月 28 日(月)
実習先:県立大島病院小児科(終日)
内
容:病棟業務を見学(朝)、外来見学(午前)、予防接種(午後)
○症例 1
3 歳、女児。早朝に喘息発作で救急外来受診し、入院となった。
・入院時所見:陥没呼吸( + )、 SpO2
94%、呼気延長( + )、聴診: wheeze
2度
・入院後経過: O2 、β刺激薬吸引、プレドニゾロン投与で呼吸状態徐々に改善した。
5 月 29 日(火)
実習先:県立大島病院小児科(終日)
内
容: NICU 見学(午前)、カンファレンス(午後)、新生児回診(午後)
採血・ルート実習(午後)、夜間救急外来
○症例 2
9 歳、男児。既往に喘息あり。朝から咳が続いていて、夕方になっても治まらず心配になり、母親に連れられて夜間救急外来受診。
・受診時所見: SpO2
・既往: 2 歳
97%、呼気延長( + )、聴診: wheeze
1度
気管支喘息の診断で治療中
今回は、父親が治療、育児に協力的でなく、父母の不仲を背景として、患児が心因性に発作(おそらくは演技的なもの)を繰り返
している、という症例であった。基礎疾患として持っている喘息に対する理解も不十分で、精神的な問題もあるということも親の
151
受け入れが悪い。この子に対する救急外来のマニュアルも作られており、プライマリケアとして様々な背景を持った患者さんがい
る、ということを実感した一例であった。
5 月 30 日(水)
実習先:介護老人保健施設
内
虹の丘、大島郡医師会病院(午前)
容:施設見学、介護認定意見書作成実習
5 月 31 日(木)
実習先:瀬戸内町へき地診療所(終日)
内
容:施設見学、外来見学
6 月 1 日(金)
実習先:瀬戸内町へき地診療所(終日)
内
容:加計呂麻島巡回往診
感想
今回、奄美大島で県立大島病院、介護老人保健施設虹の丘、大島郡医師会病院、瀬戸内町へき地
診療所と 4 か所、それぞれ役割の異なる施設で実習させていただいた。
まず県立大島病院は、 1 次~ 3 次医療までを担う施設であり、離島における中核病院としての機
能・業務を実習を通じて学ばせていただいた。小児科で 2 日間お世話になった。県立大島病院で
は NICU を小児科の医師が中心となって見ていて、新生児を小児科的な視点で治療・管理を行っ
ているということだった。また先生方の御好意で、採血練習を(先生方を使って)させていただ
き、とてもいい経験になった。運よく失敗することなく採血できた。(どうせなら失敗して、対
処法を教えていただけたらよかったかも…半分冗談です)
虹の丘・医師会病院では、主に高齢者福祉・長寿医療について学ばせていただいた。リハビリ
テーション、高齢者医療の急性期~回復期、慢性期の管理を行っており、奄美大島の高齢者医療
の実際を見ることができた。虹の丘では介護認定意見書作成を実際に行わせていただき、診察の
難しさ、判定の責任を感じることができた。
瀬戸内町へき地診療所の 1 日目は、豪雨の中での実習であった。ここは先の奄美大島豪雨災害
で、診療所の裏山が崩れ、一時機能を停止した。( CT は 6 月に新しいものが入る予定だそう)
その後建物は建て替えられ新しくなったが、裏山の崩れた所は舗装されないままで、今にも再び
崩れそうであった。その斜面を背に外来見学し、時間があくと崩れないか様子をうかがっていた。
幸い何事も無く 1 日目は終わった。
2 日目は、巡回診療で加計呂麻島をまわった。巡回バスは想像していたよりも大きく、立派な
もので、中は待合と診察室に分かれており、診察室にはベッド、携帯エコーもあった。(写真)
診察に来る患者さんの表情は明るく、安心感に満ちたもので、
この 2 週間に 1 度の巡回診療が住民にどれだけ必要とされているのかが分かった。
移動していると、道路のいたる場所で(数十か所はあったろうか)土砂が崩れていた。工事の手
が入っていればまだいい方で、そのほとんどが手つかずのままになっていた。
前日の雨で、集落の一つに向かう道が通行不能となっていた。そのため途中で巡回バスから乗
用車に乗り換えて、迂回路を使用して診療へ向かった。
向かった先の公民館では、患者さんが先生たちのために座布団、椅子を用意して待ており、先生
方との信頼関係の厚さをうかがい知ることができた。
へき地診療所は通常、医師 2 人体制であり、 2 人で 365 日、 24 時間を分担してカバーしてい
る。その大変さは想像することも難しい。
若い先生方の気力・体力の充実がこうしたへき地の診療を支えているのだと強く感じた。
離島実習中に関わったすべての先生方、スタッフの方々に心から御礼申し上げます。奄美大島
にルーツを持つ人間として、いつか奄美に医療者として恩返しできたらと思います。
ありがと
うございました!
氏
名
眞田
雅人
5 月 27 日(日)
クリクラ実習で 5 月は県立大島病院で実習であり、船での移動などがなかったため、 17 時から
救急外来を見学させて頂く。
症例 1 : 84 歳、女性。主訴は、左臀部の疼痛。台所で家事をしていた時に、しりもちをついた
とのこと。レントゲンを施行し左大腿骨頚部骨折と診断し、整形外科に入院となり、後に ope と
なった。
症例 2 : 4 ヶ月、男児。昨日ベッドの上の床から 50cm の所から落下した。今日は元気で機嫌も
良かったが、母親が心配になり、来院された。身体所見も異常なく、機嫌や哺乳も異常なかった
ので経過観察となった。
152
症例 3 : 56 歳、男性。主訴は鼻出血。早朝、転倒したときに鼻を打ち、鼻出血が止まらず、来
院。頭部 CT を施行するが、異常なし。圧迫止血により、出血が収まった。
17 時から 23 時まで、救急外来を実習させてもらい、 8 名の患者さんが来院される。そのう
ち 3 名が救急車で搬送された。実習では、先生の指導のもと、心電図をつけさせてもらったり、
ルートをとらせてもらったり色々な手技をさせてもらった。
5 月 28 日(月)
県立大島病院での実習。朝 8 時 15 分からオリエンテーション。その後、麻酔科で実習させて
いただく。
症例 1 : 54 歳、女性。下行結腸癌。腹腔鏡下結腸切除術。全身麻酔 + 硬膜外麻酔
症例 2 : 73 歳、男性。 S 状結腸憩室穿孔。ストーマ造設術。全身麻酔 + 硬膜外麻酔
症例 3 :男性。PCI後止血中に CPA 。 CPR を施行し、心拍動が再開した。 CT 造影を施行す
る。
輸液の種類や、輸液の使用法、気管挿管の適応などを教えていただく。
5 月 29 日(火)
県立大島病院での実習。麻酔科で実習させていただく。
症例 1 : 82 歳、女性。左大腿骨転子部骨折。ガンマネイル。脊椎麻酔
症例 2 : 73 歳、男性。前立腺肥大。経尿道的前立腺手術。脊髄くも膜下麻酔
ルートをとらせていただいたり、マスク換気などを教えていただいた。
5 月 30 日(水)
医師会病院・虹の丘老健施設での実習。
介護保険の内容。制度のしくみや手続きやサービスの種類。高齢者福祉などについて教えていた
だく。
主治医意見書
87 歳、女性。
最終診察日:平成 24 年 5 月 20 日。意見書作成回数:初回。他科受診の有無:無
傷病に関する意見
診断名:アルツハイマー型認知症、右視床出血後、高血圧症
症状としての安定性:安定。治療内容:ドネペジル塩酸塩、デゾラム、ステープラ、オルメテ
ック
特別な医療:点滴の管理の処置
心身の状態に関する意見
日常生活の自立度について: J2 、Ⅱ a 。
認知症の中核症状:短期記憶問題あり。日常の意思決定を行うための認知能力は自立。
自分の意思の伝達能力は伝えられる。
認知症の周辺症状:無し。その他の精神神経症状:失見当識
身体の状態:麻痺(左下肢:軽度)
生活とサービスに関する意見
移動:屋外歩行は自立。車椅子は用いていない。装具は用いていない。
栄養・食生活:自立ないし何とか自分で食べられる。現在の栄養状態は良好。
今後発生の可能性の高い状態:徘徊。
サービス利用による生活機能の維持改善の見通し:期待できる。
医学的管理の必要性:施設介護。
サービス提供時における医学的観点からの留意事項:高血圧
感染症の有無:無し
上記のような主治医意見書を作成した。また、医師会病院の中を見学させていただいた。
5 月 31 日(木)
瀬戸内へき地診療所での実習。加計呂麻島で巡回バスに乗り、巡回診療の見学をさせていた
だく。先生が暴風のためか、いつもより診察に来られる患者さんの数が少ないと仰っていた。
40 人くらいの患者さんの診察を見学したが、多くの患者さんが高血圧症や高脂血症、白内障
の患者さんだった。巡回診療を終えた後、僻地診療所に戻り、入院患者さんの回診を見学させ
ていただいた。
6 月 1 日(金)
瀬戸内へき地診療所での実習。
症例 1 : 88 歳、女性。脂質異常症。腹部エコーを施行。脂肪肝のエコー所見である肝腎コン
トラストの増大が見られた。HMG-CoA還元酵素阻害薬を処方。
症例 2 : 1 歳、男児。風疹ワクチンの予防接種。皮下注射でワクチン注射される。
153
糖尿病の新しい治療薬や ATL について教えていただいた。
感想
今回、離島医療実習を体験して、離島や僻地での医療では、予防医学が最も重要であると感じ
た。生活習慣の改善への指導をすることで病気の発生を未然に防ぎ、病気の早期発見・早期治
療をすることが重要である。離島では、高齢者の割合が都市部よりも高いので、一度疾病が発
生してしまうと若年よりも病気の治療にかかる時間が長引いて、社会復帰するまでの時間が長
くなるからである。それに、離島では重篤な病気になっても、すぐに病院に行けるというわけ
でもないので、生活習慣病の管理が重要である。
また、離島では医師の数が少ないので、少ない人数で多くの患者さんを診察していかないとい
けない。そのためには、患者さんをただゆっくり診察していくだけでなく、てきぱきと診察し
なければならない。かといって、雑な診察をして重篤な疾患を見逃してはいけない。そのため
に必要になるのは、幅広い知識と重篤な疾患を見逃さない注意力だと感じた。
クリクラ実習と合わせて 1 ヶ月間奄美大島で病院実習を体験して、医師の先生方、研修医の先生方、看護師さんなどの医療スタ
ッフの方々がとても優しく、色々なことを指導してくださったおかげで、とても充実した実習をすることが出来ました。今回学ん
だことを、医師になってからも生かせるように頑張っていきます。本当にありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
内門
義博
6 月 4 日(月)
実習先:県立大島病院(総合内科)
内容:午前中は回診・病棟業務。午後は検査・ムンテラ・回診。基本的に研修医 1 年目の安部先生の指導の下、行動した。初めに
回診をしていただき、病棟患者の把握した後、研修医の病棟業務を見学した。
手技は皮下膿瘍の高齢女性の患部の洗浄を行った。他には肺炎後の患者のエコーや聴診を行った。また下記の患者の家族にムンテ
ラを行った。
<症例>
86 歳女性
主訴は足が痛くて歩けないとのこと。発熱あり。診察により下肢近位筋の激しい痛みを訴え、また血ガス CK の著し
い上昇を認め、赤い尿が出るというため横紋筋融解症と診断。後に血ガスで G(-) 桿菌が検出されたため、菌血症の状態であること
が分かった。ただちに 3 世代セフェムを投与するも熱はあまり下がらないので菌血症の状態が続けばカルバペネム系を投与するこ
とになった。ただ入院後 CK の値も徐々に落ち着き、尿の色も透明になってきたが熱は 37 度台が続く。病態の推測は、この患者
は過活動膀胱を合併していたため、近医にてムスカリン受容体拮抗薬を投与されていたため尿の貯留が著しい状態になり、そこか
らの尿路感染症により G(-) 桿菌が菌血症となってこの状態を引き起こしたのではないか、という結論になった。
6 月 5 日(火)
実習先:県立大島病院(総合内科)
内容:午前中:回診・病棟業務・問診
午後:病棟業務
回診では柳先生からレスピレーターは FiO2 、呼吸数、一回換気量、 PEEP により調節することと、 Vit. K に影響を与える因子と
して抗菌薬、食事、輸液があることを学んだ。また通常眼振は、どちらか片方にしか触れないので両側に触れるのは眼振ではなく、
全盲という細かなところも教えていただいた。安部先生からは血圧計がなくても脈の感覚を覚えれば、道具は必要ないことも学ん
だ。他には回診の際には、まず手を握ってショックがないか、次に熱がないか・表情は明るいか・下肢に浮腫はないか、などを確
認していることも教えていただいた。
横紋筋融解症の患者には一人で問診を行った。過去の副薬歴と他に PM/DM の可能性を疑い、ヘリオトロープ疹・ Gottron 徴候の
ないことを確認した。
見学した手技:皮下膿瘍の患部の洗浄。肺炎後の患者の左腋下に胸水貯留があったため胸腔穿刺を行った。
6 月 6 日(水)
実習先:大島郡医師会病院・介護老人保健施設虹の丘
内容:午前中:介護保険制度に関する講義と施設案内、主治医意見書の作成
まず、施設を案内していただく前に高齢者制度に関して説明していただいた。 65 歳以上は第一号被保険者で、 40 ~ 64 歳まで
の特定疾病の方のみ介護保険の対象となることを改めて確認できた。施設は 3 階建てで、一階が窓口、二階が認知症のある方の施
設、三階が認知のない方の部屋となっていた。建物の仕組みは、以前霧島での実習の際にも老人保健施設と同様で認知症のある方
の場所は勝手に徘徊しないようにエレベーターも上の階に行くためには、上→下→上というように 3 回ボタンを押さないと扉が開
かない仕組みになっているなど工夫がなされていた。
自分たちは二階に入所されている方の主治医意見書を作成することとなった。右視床出血と老人性認知症を合併されている 84 歳
女性の方で、だいぶ意思の疎通が困難であったため作成することは大変であったが、自分も将来作成する可能性は十分あると思う
ので非常にいい経験であったと思う。
その後は櫻井院長先生に医師会病院の案内をしていただき、薬の説明会を聞いて古仁屋に移動することとなった。
6 月 7 日(木)
154
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容;午前:外来
午後:ポリオ予防接種、外来
今日は 1 日、中尾先生の指導の下、外来を見学させていただいた。受診される患者数は午前だけで 40 近くあった。多くは血圧や
血糖コントロールの薬剤調整であったが、たまに変わった症例があった。ポリオの予防接種を受けたのちに下痢が止まらない 1 歳
の乳児や、全身に湿疹のある小学生・脳梗塞の既往後に嚥下困難となった老人・右肩が上がらない男性など、疾患はバラエティー
に富んでいて、それを診察している先生の知識の量はすごいなと感銘を受けた。先生にはエコーでの門脈と肝静脈の見分け方・肝
腎コントラストや胆嚢摘出後は肝内胆管が拡張することなどを教わった。
印象に残った症例は、お尻に湿疹ができた高齢の女性の方で、視診で見た瞬間に苔癬と診断したことであった。お尻や股とかにで
き分布が特徴的らしく、病棟とかでも高齢者によく見
られるらしい。
午後はポリオの予防接種を 34 人実施した。熱や便の
状態・聴診、咽頭の状態を確認してから生ワクチンを
飲ませていた。ポリオのワクチンは比較的甘いみたい
で、聴診の際泣き叫んでいた子供も摂取したら上機嫌
になっていたのが印象的だった。その後は診療所に戻
って外来の続きをし、 5 時半まで外来が続いて本日は
終了した。
6 月 8 日(金)
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容:午前・午後
巡回診療
今日は診療バスに乗って、集落を診療して回った。バスの中では問診・聴診・血圧測定・採血をした。他にはエコー・心電図もで
きるようだが、心電図は現在故障しているらしい。採血に関しては結果を次に巡回に来る 2 週間後に結果を伝えるようにしていた。
基本的には健康な人が多く薬剤調整と検査の予約が主であったが、前回の巡回の際には上顎癌の術後で痛みのために食事がとれな
く、脱水のため腎機能が著しく低下していた危険な方もいらしたようなので巡回診療の重要性を再認識することができた。
◎感想
奄美に日曜朝 5 時に到着。とりあえず寮に向かいひと眠りして起きると外は晴れている。テンションが上がり、急いで県病院で
研修している部活の先輩でもある安部先生に連絡を取る。もちろん車を借りて観光するためだ。
・・・まさかの不在。 ACLS の実習を受けに行っているため、夕方にしか帰ってこないとのことだった。。。
ってことで奄美の初日はレンタカーを借りてまず「ひさ倉」に鶏飯を食べに行き、マングローブの森でカヌーを漕ぎ、最後にきっ
と若い女性がいっぱいいるであろうという思いを膨らませて男 3 人で大浜海岸に行った。もちろんその発想が幻想に過ぎなかった
というのは言うまでもない。
そんなこんなで始まった離島実習。県立大島病院では総合内科を 2 日間実習した。まず驚いたのはそのカバー範囲の広さだった。
消化器から呼吸器・神経・膠原病まで様々な疾患の患者を抱えていて、先生方は専門外のことまでとても詳しく、回診の際に症状
の特徴やレスピレーターの原理、血圧の計り方を触診による脈圧で診る方法などを教えていただいてとても勉強になった。症例数
もとても多く、 2 日間という短い期間だったが学ぶことは多かった。また大学病院ではやらせてもらえなかった手技も多くさせて
いただき、貴重な体験をさせていただけたと思う。
医師会病院での実習では、診察に関して専門医が来る日が決まっているというのが離島医療ならではの問題点なのかなと感じた。
瀬戸内へき地診療所では 2 日間。海のきれいさにも感動したが何より道路の土砂崩れの多さにびっくりした 2 日だった。そのよう
な地域を巡回診療車で回ったのは、若干恐かった。巡回診療車では起伏の激しい道を何時間も回ったため、終始バス酔いをしてし
まったのだが、そういう場所でも多くの人が診察を希望して待っているのと、休憩場所で立ち寄った近辺の海の綺麗さ(今まで見
た海で一番きれいだった)のが印象的だった。
実習後には事務室のとしまさんに瀬戸内の観光名所でもあるヤドリ浜・ホノホシ海岸・ハートの見える丘などにもお忙しい中連れ
て行っていただいた。ホノホシ海岸の石の音やノリピーが事件を起こしたホテルなど現地の人しか知らないポイントを教えていた
だけたので、すごくありがたかった。
最後になりますが、島の先生方はとても優しく一週間ほぼ毎日ごちそうしていただきありがとうございました。特に研修医の先生
方、安部大先生・木山大先生・南曲大先生には 5 月のクリクラの猛者達が貪欲に給料を吸い取っていった後にもかかわらず、親切
にご馳走していただきありがとうございました。へき地の上村先生・中尾先生、 2 日間という短い期間でしたが、お世話になりま
した。おかげさまでこの 1 週間、正直予想以上に楽しく、有意義な実習を過ごすことができました。どうもありがとうございまし
た。
<離島実習に関して> 6 年生の忙しい時期にするのではなく、 5 年生のまだ時間が多くあるうちにしたほうが個人的にはいいと思
う。来年度はそこのところを検討していただきたい。
氏
名
上今別府
大作
6月4日
実習先:県立大島病院
内容:回診と手術見学
155
午前中の回診では、消化器、呼吸器、肝臓、乳腺、末梢血管など様々な疾患の患者さんが入院していることがわかりました。
午後の手術見学では、胆嚢摘出術と膿瘍ドレナージを見学させていただきました。
6月5日
実習先:県立大島病院
内容:朝のカンファでは患者数の多さに驚きました。回診では、昨日に引き続き、処置の見学などさせていただきました。検査見
学では胃カメラ、ERCPの見学をしました。胃カメラは健診の方もいらっしゃいました。頸動脈エコーや、救急でよくされている
FAST についても教えていただきました。
6月6日
実習先:大島郡医師会病院、介護老人保健施設虹の丘
内容:医師会病院では病院内の見学でした。大阪医科大学の研修医が一ヶ月間地域医療の枠で実習に来ていらっしゃいました。虹
の丘では入所者にお話を聞きながら、主治医意見書を書きました。私が担当した入所者は認知症・
脳卒中の方で、日常生活は自立しており、昔の仕事の話や施設でのイベントのことなどを話して下
さいました。
6月7日
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容:診療所にて外来見学
小児から老人まで、また高血圧や高脂血症から皮膚科、整形外科など多岐にわたって診療されてい
ました。方言がきつくて患者さんの話が聞きとれるか不安でしたが、先生に対しては方言をあまり
使わずに話していらっしゃったので私でも話の内容を理解することができました。外来診療中に交
通外傷のため救急車で運ばれてきた患者さんもいました。胸部を打撲されたということで FAST や
CT など検査を行い、 CT にて肋骨骨折がみつかりましたが、その他臓器に異常なく家に帰られま
した。
通行止めのため迂回路を教えて下さ
6月8日
っている瀬戸内へき地診療所事務長
実習先:瀬戸内へき地診療所
の登島さん(下写真)
内容:巡回バスにて診療見学。
診療所から西古見まで長い距離をバスに揺られながら向かいました。アップダウンと急カーブが多く車酔いしそうでした。巡回診
療では、バス内を歩くのがおぼつかないような高齢の方が多かったのですが、その他は目立った病気などはなく元気な方が多かっ
たです。巡回診療では詳しい検査をすることができないので詳しい検査をする際には、診療所に行くそうです。
感想
一週間大島で実習させていただいたのですが、離島医療の現状を肌で感じることができ、
さらに鹿児島市内では感じることができない自然を堪能することができたので、非常に
有意義な実習となりました。
月曜、火曜は県立大島病院にて 2 日間外科で実習させていただきました。検査から手術、
化学療法、外来診療、健診など少ない人数で様々な仕事をこなしており、大学とは違っ
た医療をみることができました。また鹿児島大学出身の先生だけでなく、自治医科大学
やその他の大学出身の先生方もいらっしゃり、大学の実習では味わうことのできない刺
激を受けることができました。
水曜は大島郡医師会病院と介護老人保健施設虹の丘で実習させて頂きました。医師会病
院のリハビリ施設は霧島リハビリセンター並みの広さがありました。また筋トレしている方がいたり人工呼吸器をつけている方が
いたりと階によって様々な状態の患者さんがいらっしゃいました。虹の丘ではいろんな高齢の方がいらっしゃいました。老健施設
について法律的なことなど事務の方に教えていただいたのですが、現状として在宅介護では限界のある世帯も多く、やはりこうい
った施設は、これからさらに必要になってくるようになっていくのではないかと感じました。
木曜、金曜は瀬戸内へき地診療所で実習させて頂きました。自治医科大学の若い先生 2 人だけで診療されていました。ここでは外
科的なことはあまりできませんが、それ以外のことはほとんどされていて、先生方の知識量や経験に驚きました。木曜は患者さん
の数も多く、救急車が来たこともありとても忙しそうでした。
診療所から名瀬まで帰るとき、前夜からの雨でがけ崩れがあり国道が通行止めとなり迂回して帰りました。奄美ではがけ崩れ、落
石で通行止めとなることはよくあることだそうです。迂回路は車一台分しか通らないような道もあり非常に不便を感じました。し
かしながら地元の方々にとっては日常茶飯事のようで、あまり動じているようには見えませんでした。
最後にお忙しい中、離島実習として私達学生を受け入れてくださってありがとうございました。この経験をこれからに生かしてい
きたいと思います。
氏
名
徳重
宏二
● 6 月 4 日(月)
実習先:県立大島病院脳神経外科
内容:午前 8 時半より回診し、午前中は病棟業務。午後は外来・急患が入れば救急外来を見学させて頂いた。夜は救急外来にて当
直を経験。
156
【症例】 47 歳女性
【主訴】構音障害
【現病歴】午前中出勤後に言葉がうまく喋れないことを自覚。午前中はそのまま仕事をしたが、職場で血圧測定し sBP180 台であ
ったので不安になり近医を受診したところ、脳障害を疑われ当科紹介受診。
【神経学的所見】
意識清明、安静時振戦・不随意運動なし、上肢 Barre 徴候なし、指鼻試験(-)、手回内回外試験巧拙
< 上下肢感覚系 > 異常なし
< 上下肢運動系 > 上下肢 MMT5
< 脳神経 >
Ⅰ・Ⅱ: n.p.
Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ:眼球運動正常、
対光反射
直接(+)/(+)
間接(+)/(+)、輻輳・調節反射 (+)
Ⅴ:Ⅴ 1 ・Ⅴ 2 ・Ⅴ 3 領域感覚異常なし、咬筋正常
Ⅶ:前頭筋・眼輪筋正常、左口角下垂、左鼻唇溝減少~消失
Ⅷ: n.p.
Ⅸ・ X ・ X Ⅰ:カーテン徴候 (+)
右方に偏位
X Ⅱ:舌左方に偏位
< 反射 >Jaw(±),biceps(+)/(+),triceps(+)/(+), brachioradial(+)/(+),PT(+)/(+),AT(+)/(+)
病的反射: Babinski(-)/(-), Chaddock(-)/(-), Hoffmann(-)/(-)
【一般検査】
頭部CT:右被殻に出血を認めた(12mm大)
→上記より構音障害は右の被殻出血によるものと判断。即日入院にて保存的に加療した。
● 6 月 5 日(火)
実習先:県立大島病院脳神経外科
内容:前日同様午前 8 時半より回診し、午前中は病棟業務。午後は外来・急患が入れば救急外来を見学させて頂いた。夜は救急外
来にて当直を経験。
【症例 1 】 70 歳男性
【主訴】痙攣発作
【既往歴】大腸 Ca 手術(肺転移あり)
【現病歴】老人介護施設で痙攣発作を起こし、救急搬送。搬送時にも痙攣の持続あり。
【神経学的所見】
JCS-300
< 脳神経 >
Ⅲ:対光反射
(+)/(+)
Ⅶ:左の口角下垂、鼻唇溝消失
< 上下肢運動系 > 左上下肢 MMT 1
< 反射>Jaw(± ),biceps(+)/(2+),triceps(+)/(2+), brachioradial(+)/(+),PT(+)/(+),AT(+)/(+)
病的反射: Babinski(-)/(+), Chaddock(-)/(+), Hoffmann(-)/(+)
【一般検査】
血糖正常
X-p: lung field
肺野陰影あり
CPA:sharp CTR:<50%
心電図:NSR、 ST-T no change
頭部CT:異常所見なし
→痙攣発作に対して救急外来にてホリゾン(ジアゼパム)投与し、痙攣消失。心電図、血液検査、画像所見上、痙攣発作を起こす
ような疾患見つからずてんかんが考えられた。左半身の麻痺はTodd麻痺の可能性を強く疑った。その後保存的に加療され、バ
ルプロ酸投与にてコントロール(TDM)。
【症例 2 】 54 歳女性
【主訴】めまい
【現病歴】夜に横になるとめまいがする。それが不安で眠れないとのことで夜間救急外来受診。めまい回転性では数十秒ほどで消
える。今回が初めてではなく、何度か繰り返している。「最近、夫が脳梗塞で入院していて看護が続いているから疲れているのか
しら・・・」
【現症】
BP 111/87mmHg
意識清明
HR 75/min
SpO2 99%
横になると眼振 (+) → 10 秒程で消失、その他神経学的所見異常なし
→現病歴、現症より良性発作性頭位性めまい( BPPV )を強く疑った。外来にて、メイロン(炭酸水素ナトリウム)を点滴静注。
約 30 分後に改善にて帰宅とした。
157
● 6 月 6 日(水)
実習先:大島郡医師会病院・介護老人保健施設虹の丘
虹の丘病院、大島医師会病院の施設全体を見学した。午前中には、大島の風土・気候・特色や介護保険制度の授業を受け、その後
に実際に患者さんに会ってお話を聞き介護認定審査会への主治医意見書を書く練習をした。
< 記載内容 >
最終診察日、意見書作成回数、他科受診の有無、傷病に関する意見(診断名、症状としての安定性、生活機能低下の直接の原因と
なっている傷病名または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療方法)、特別な医療、心身の状態に関する意見(日常生活の自
立度等について、認知症の中核症状、認知症の周辺症状、その他の精神・神経症状)、身体の状態、生活機能とサービスに関する
意見(移動、栄養・食生活、現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針、サービスの利用による生活機能の維
持・改善の見通し、医学的管理の必要性、サービス提供時における医学的観点からの留意事項、感染症の有無)
● 6 月 7 日(木)
実習先:瀬戸内へき地診療所
巡回バスにて巡回診療。篠川地区周辺を 6 ヶ所程回った。
【症例】 80 歳女性
【現病歴】 Basedow 病に対して抗甲
状腺薬にてフォローされている。FT
4 、TSH正常
→触診にて腫大した甲状腺を確認させ
て頂いた。フォロー継続。
● 6 月 8 日(金)
実習先:瀬戸内へき地診療所
診療所にて外来診察を見学した。
【症例】 50 歳男性
【現病歴】ヤギに餌を与えようと家の外に出ると、ハブに遭遇。驚き飛び退いたところ板から出ていた釘を踏みつけ釘が左足を貫
通した。
→来院時釘は抜けた状態であった。X線上骨に異常はなく、釘が錆びていたことや周りの環境などより破傷風の発症を恐れ、破傷
風免疫ヒトグロブリン(TIG)を投与し、入院にて経過観察となった。
4 .遠隔医療実習記録
実習時間の都合上、遠隔医療実習は出来ませんでした。
5 .感想
離島医療実習では、島に医師が常駐しておらず定期外来という形でしか診察をできない診療科があることや、大動脈解離で手術適
応でも、移送でのリスクが高い場合は保存的に見るしか方法がないことなど、様々な事情により離島の病院で診られない疾患があ
ることを知りました。
またそういう医療資源、マンパワーの限られる中で離島の病院の間で役割分担をしながら島全体で診療にあたっているということ
を肌で感じることが出来ました。
瀬戸内診療所実習では、往診・訪問診療などがなければ医療が受けられない人達がいること、またドクター側としては生活習慣病
のコントロールの患者さんの中に紛れている重篤な疾患を持った人を如何に見逃さないか、また何でも他院に紹介すればいいので
はなく、絶対的に紹介が必要な病気と保存的に見ることが出来る病気の見極めが大切であることを学びました。
他にも先生方は walk in の common disease から CPA の患者さんまで幅広い患者を診ていらっしゃって、幅広い知識が必要にな
るということも思い知らされました。そういう先生方の後ろについて、自分の知識のなさを再確認するとともに、将来自分もそう
いう先生方に少しでも近づけるように頑張ろうと思いました。
離島での生活についても、魚を釣ったり、 BBQ をしたり、カヌーに乗せて頂いたり、行きつけの呑み屋に連れて行って頂いたり
とかなり充実した実習となりました。その中で島の人達の温かさ、優しさに触れて鹿児島に生まれた人間として何処かで必ず離島
医療に貢献しようとまた気持ちを固くしました。
今回お忙しい日常診療の中受け
入れて下さった先生方には感謝
の気持ちで一杯です。昼も夜も
お世話になった先生もそうでな
かった先生も丁寧に熱心にご指
導くださり、机では学べないこ
とをたくさん教えて頂き頗る勉
強になりました。本当にありが
とうございました。
【乗艇したカヌー】 4 艇
【釣った魚】カンパチ× 1
【呑んだ黒糖焼酎】高倉、気、長雲、まんこい、瀬戸の灘、加那、れんと、里の曙
158
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
田嶋
修三
6 月 26 日(火)
実習先:県立大島病院(午前、午後、夜間急患)内容:午前中は消化器内科で入院患者さんの見学と
CF を見学した。症例 1 : 70 代、男性、消化管出血などを疑い検査を進めていく。症例 2 : 60 代、
女性、同様に出血部位の検索、ルーチン検査をした。午後は研修医の先生について消化器内科の入院患
者さんの症状説明をしていただき主訴から今後の検査、治療方針について説明をしていただいた。夜間
救急では外傷からの蜂窩織炎疑いの患者が搬送されてきた。発熱があり意識障害もあり、輸液を施し検
査はレントゲン、採血をとった。敗血症との鑑別。
6 月 27 日(水)
実習先:介護老人施設
虹の丘、大島郡医師会病院(午前)内容:施設の説明。実習先:県立大島病院
(午後)、内容:入院患者さんの回診。内視鏡室で CF の見学。夕方、瀬戸内町、ヤドリ浜海水浴場に
て海水浴。ホノホシ海岸にて散策。黒潮の荒波に洗われた玉石に敷きつめられた海岸である。
6 月 28 日(木)
実習先:住用国民保健診療所(午前、午後)内容:午前は外来患者さんの診察。野崎先生に横について
もらいながら一応メインとなって患者の話をきく。毎回血圧測定、胸部聴診を行う。 20 人程。膝関節
の痛みを訴える方にはヒアルロン酸を注射。関節腔の感覚を実感。午後は往診。先生と看護師さんと 3
人で。 4 件。薬を指示通り飲んでいるのかチェック。血圧測定、胸部聴診。脱水症状があれば生理食塩
水 2A を静注。診療後:業務の見学。カルテ記入、レセプト。
夜は奄美のかたと交流会。( 1 次会;つぼ八、 2 次会;カラオケ(記憶なし))
6 月 29 日(金)
実習先:住用国民保健診療所(午前)内容:外来診察を 1 時間。その後往診へ。 5 件。薬を指示通り飲んでいるのかチェック。血
圧測定、胸部聴診。(午後)マングローブパークにてカヌー体験。その後ハイビスカスロードを通って宇検村へ。途中アランガチ
の滝、『元気の出る館』に寄る(夕食)。そしてサンセット目指してタエン浜海水浴場へ。絶景のビーチで夕焼け鑑賞。ハブ捕り
名人??(海の家オーナー)に遭遇。ハブの捕り方、注意事項の教えをいただいた。
6 月 30 日(土)
再び宇検村へ。県立大島病院の総務課秋山さんの紹介にて阿室釜の「るりかけす」というウェイクボードショップへ。船で加計呂
麻島へ渡り、エメラルドグリーンの海をシュノーケリング、ウェイクボードで満喫。
遠隔医療実習記録:利用なし
感想
離島実習を通して一番に感じたことはヒューマンパワーを医療スタッフだけでなく地域住民も必要として補っていることであった。
老人医療に関しては慢性的な基礎疾患をみている場合が多く、薬剤のアドヒアランスを向上させるのに問題があるように感じた。
本人に病識がない場合が多く、勝手に服薬中止を行っている場合も多かった。住用での実習では野崎先生が横について学生主体の
形をとった診療を体験させてもらいとても有意義な実習となった。ヒアルロン酸注射や生食の静注などの処置も体験でき緊張感あ
る実習だった。
先生のお話にもあったが住用は瀬戸内と奄美市の中継を担っているという意味で救急において重要な位置づけにもあるらしく途中
採血のデータをとるなどあるらしい。僕がいた 2 日間ではそういった場面に遭遇しなかったが幅広く活躍されている先生を想像す
ると大学にいる先生とはまた違ったかっこよさをうかがえた。
また、実習外ではあるが奄美大島では前半は雨であったが後半は天気にも恵まれ主に海を満喫することができた。地元の人の話で
あるが海という点では沖縄にひけをとらない綺麗さがあるが観光 PR という点で劣っているとのこと。
確かに人は少なく、エメラルドな海を独占して泳げる爽快感は計り知れなかった。最終日には県立病院
の総務課の秋山さんのおすすめで「るりかけす」というウェイクボードショップを紹介していただき加
計呂麻島へ渡り、シュノーケリング、ウェイクボードを堪能した。島の方たちはとても情があり、その
気持ちに感謝しています。
最後になりましたが、学生であるわたくしをご多忙ににもかかわらず受け入れてくださった県立大島病
院の方々、老人介護施設虹の丘の方々、大島郡医師会病院の方々、住用国民保健診療所の方々、ほんと
うにありがとうございました。大学で学んできた知識を実際の現場で見て感じたことはとても印象深く、
これからの勉学へのモチベーションがあがりました。医師になって鹿児島の医療を担う一員としてわた
くしも携われるよう精進していきます。
氏
名
只野
恭教
6 月 25 日 ( 月 )
実習先:県立大島病院
159
内容:小児科の 3 年目の先生に付いて 2 日間実習することになった。まず入院患者さんを紹介していただいた。先生は喘息の児、
低血糖の児、 3 か月で発熱の児の主治医となっており、診察の見学、先生に続いて自分が診察、採血の見学をし、先生がカルテを
打ち込みながら学生の私に質問しそれに私が答える、ということでだいたい午前中を過ごした。その後は外来の見学となった。外
来では、一次・二次の患者さんがともに来院し、軽症例から入院する症例まで豊富であった。発熱、嘔吐、下痢、腹痛、咳、咽頭
痛、熱傷などの症状で来院されていた。三次医療での治療後のフォローで来院されていた方もいた。午後は予防接種の見学であっ
た。ヒブ、肺炎球菌、 MR 、日本脳炎の予防接種を見学した。残った時間で、もう一人いた学生とルートを取る練習をした。
6 月 26 日 ( 火 )
実習先:県立大島病院
内容:朝、前日と同様に先生に付いて回診をした。その後は外来の見学をした。髄膜炎疑いの患者さんが来院して、腰椎穿刺を見
学した。項部硬直あり、左耳下腺腫脹あり。脳脊髄液からは特異的所見を得られず、ムンプスによる髄膜炎疑いとなって入院とな
った。午後はカンファレンスで成人の紫斑病の症例、汎下垂体機能低下症の症例がディスカッションされた。
6 月 27 日 ( 水 )
実習先:介護老人保健施設
虹の丘
/
大島郡医師会病院
内容:パッションフルーツをいただきやる気が出たところから実習がスタートした。虹の丘では入所している方の介護保険を申請
するための主治医意見書を模擬的に作る面接を行った。認知症がかなり進んでいて話がほとんど進まず、同じ話をひたすらリピー
トする結果になった。でも、そういうのもあまり嫌いじゃない。その後は、医師会病院を院長先生に連れられて見学した。
6 月 28 日 ( 木 )
実習先:瀬戸内町へき地診療所
内容:この日は加計呂麻島の巡回診療であった。船で島に渡り島に置いていた診療バスに乗った。巡回診療であるので急性期の患
者さんはいなく、定期的な薬の処方がほとんどであった。高血圧に加えて慢性疾患に対する薬であった。男はつらいよのリリィの
家のロケ地があって一番テンションが上がった。 6 か所くらいで巡回診療を行い、ときにはバスまで来られない患者さんの家まで
往診に行った。その時に島の方の暮らしぶりが少しうかがえた。蜂 ( 刺さない? ) だらけだった。先生の「最近、年が年だから亡
くなる人が多くて患者さんが減った」という言葉になんだか寂しい気分になった。 4 時頃に診療が終了した。
6 月 29 日 ( 金 )
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容:この日はへき地診療所で診療の見学となった。基本的には内科領域の患者さんは何でも来院されていた。包丁による切創の
縫合(後の抜糸)も先生はされていた。若い先生だったが診療の合間に胃カメラを手際よくされていて、自治医出身の先生はすご
いなぁと思いながら見学していた。肺炎で状態が悪い 97 歳の患者さんが来て、先生がすぐ家族に延命治療の希望があるかどうか
を聞いていたときにはインフォームドコンセントのタイミングの鋭さに少し圧倒され、先生の判断の速さにへき地診療所での診療
が第一線の診療であることを認識させられた。
感想
県立大島病院では、直前まで鹿屋医療センター小児科で実習していたこともあって小児科を選択した。大学のポリクリで去年お
世話になった先生がいらっしゃったので、その先生に付いてまた指導していただいた。小児科の診療自体は鹿屋医療センターで経
験したものと大体いっしょであった。指導医の先生が診療の合間に医学知識の質問をしてくださったので、ボケッとする暇がなく
緊張感を持って過ごした。島特有の事情に直面したことといえば、やはり大島以外の島に住んでいる患者さんが退院後のフォロー
をどうするかという先生たちのディスカッションを聞いた時であった。
大島病院は研修医の先生が多く、若い先生たちの雰囲気が良かった。和気あいあいとしながらも互いに切磋琢磨、助け合いの姿
勢をうかがうことができた。救急外来では、 1 年目・ 2 年目の先生たちがばんばん対応し処置をこなしていた。酒がらみの受診が
多く島の文化・人柄を垣間見た。
虹の丘/医師会病院では島も本土と同様に老健施設が必要とされていて、高齢化による介護職とリハビリテーションの需要の増
大を実感した。パッションフルーツがおいしかった。
瀬戸内へき地診療所では、一番離島医療というもの体感してきた。加計呂麻島の巡回診療にタイミングよく同行することができ、
診療バスで 5 , 6 か所診療の見学をした。バスが診療で停止する付近に行くとスピーカーで放送を開始し、受診する患者さんにお
知らせをする。患者さんが多いときにはバス内の待合がにぎやかになった。先生は、本土の病院では滅多に見ないほど丁寧に患者
さんに対応され、毎回ほぼ決まった処方薬ではあるが患者さんの訴えにちゃんと傾聴されて処方薬を変えていた。若い先生であん
な対応ができることに驚き、是非自分もそうなりたいと思った。蜂だらけの家に往診に行ったときは、あまりの野生感に少し笑っ
てしまった。島の雰囲気はよくいうが本当にのんびりしていて、自分としてはすごく好きである。浜辺のデイゴ並木の下を歩きな
がら往診に向かったときは、こういうのいいなぁと考えながら海を眺めた。
自分が鹿児島に残って大学に入局したら、きっと離島医療に関わるだろうが、自分としては今のところ離島に行くことに全然抵
抗感はない。むしろ、医者として一時期を島で過ごしたいとさえ思える。それは医療の面においても、私生活においてもである。
最後ではあるが、離島医療実習においてお世話いただいた県立大島病院、虹の丘、医師会病院、瀬戸内へき地診療所の先生方、
職員の方々、そして国際島嶼医療学講座の先生にお礼申し上げたい。学生としては用意された実習コースを回るだけであったが、
様々な方のご尽力・ご協力があって離島医療実習が成されていることをうかがい知ることができた。 6 年目でようやく鹿児島大学
医学部のカラーの一つ、<離島医療>を身をもって知ることができた。離島医療実習が是非これからの学生にもつながっていって
ほしいと願う。
160
氏
名
濱村
尚子
6 月 25 日(月)
実習先:県立大島病院
内容:総合内科の研修医の先生と一緒に入院患者さんの診察をした。高齢者の方がほとんどで、中には意思疎通の難しい患者さん
もいた。全身状態は安定しているが、患者さん自ら不調を訴えることは少ないので、毎日注意深く診察しているということだった。
また 10 時と 17 時の 2 回、 80 歳代女性の肛門周囲膿瘍を洗浄させていただいた。夕方のカンファに出席して、 17 時過ぎから
救急外来に参加した。救急外来では原因不明の背部痛からの呼吸苦や、大腿骨頸部骨折、硬膜外血腫、小児の高熱、交通外傷など
とても忙しかった。心電図をつけたり、伝言のメモをとったり、患者さんを CT 室に運んだりなどしか手伝えなかったが、私が今
まで見た中で一番忙しい救急で、いい経験になった。
6 月 26 日(火)
実習先:県立大島病院
内容:午前中は総合内科の先生について研修医の先生と回診を行った。寝たきりの患者さんを診察するにあたって、額と手の温度
の差でショックが無いか確認し、呼吸音と心音を聞き、腹部の触診、下腿を触り浮腫を診るという一連の診察方法を学んだ。短時
間で全身状態を把握でき、今後も様々な場面で役に立つ方法だった。あとは病棟実習が主で、入院患者さんの診察や胸腔穿刺の見
学をした。また 17 時からは救急外来に参加し、蜂窩織炎の患者さんの診察をした。何かに刺されたり怪我をした痕は無かったが、
右手の手背から指先にかけて赤く大きく腫れていた。最初はDIC疑いで搬送されてきたが、ショック状態ではなく先生方も安心し
た空気になっていた。
6 月 27 日(水)
実習先:医師会病院・虹の丘老健施設
内容: 8 時 30 分に虹の丘老健施設に着いて、事務長さんから奄美の観光名所と介護
保険についてのお話があった。また、パッションフルーツをご馳走になった。その後院長先生から施設案内があり、学生それぞれ
に患者さんが割り振られ、担当の患者さんについての主治医意見書を作成するという課題を与えられた。全員認知症の患者さんで
意思疎通はほとんどできなかった。私の担当した患者さんも認知症が進行していて、自分の名前も言えなかったので、生活で困っ
ていることを聞くことができなかった。また、奄美の方言が分からなかったこともあって意見書を作成することはとても難しく感
じた。その後、医師会病院に向かい、院長先生から施設案内があった。お昼は大阪の医科大学から実習に来ていた研修医の先生二
人と一緒にご飯を食べた。二人とも奄美を満喫していようで、また鹿児島に遊びに来たいと言っていた。その後薬品説明会に出席
して実習は終わり、そのまま瀬戸内まで向かい、へき地診療所の事務長さんに挨拶をした。
6 月 28 日(木)
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容:一日中外来を見学した。午前と午後合わせて一人で 30 人以上の患者さんを診察していた。内容は高血圧や糖尿病、高脂血
症といった生活習慣病が最も多く、その他はてんかんや、うつ病、ウイルス性肝炎、皮膚筋炎、甲状腺機能低下症、甲状腺癌疑い、
大腸がん手術後の経過など様々だった。肝臓、腎臓、甲状腺のエコー、上部消化管内視鏡、甲状腺穿刺を全て一人の先生が行って
いるのが驚きだった。看護師さんたちと上手く連携して、限られた時間と人手で様々な患者さんの要望に応えていて、総合病院と
は違った能力が求められていると感じた。
6 月 29 日(金)
実習先:瀬戸内へき地診療所
内容:朝 8 時 30 分に診療所を出発して古仁屋の港へ向かい、先生と看護師さん、事務の方たちと船で加計呂麻島へ渡った。加計
呂麻島の港近くに巡回診療車がとめてあり、荷物を積んで巡回診療が始まった。どこの海岸から見ても海の色が本当に綺麗だった。
巡回する道は山道がとても多く、人の気配が感じられない場所ばかりだった。所々に集落があり、その周辺に来ると診療車からア
ナウンスを流して患者さんが来るのをしばらく待った。診療車が停車する場所は予め決まっているが、アナウンスを聞いて飛び込
みで来る患者さんはほとんどおらず、定期的に受診している患者さんが外に出て診療車を待っているという状態だった。また、診
療車まで歩いて来られない患者さんの家に往診も行った。親戚の方々が家に集まっていて、とても賑やかな部屋だった。私たち全
員分の缶ジュースを用意してくれていて、みんなで少しおしゃべりをした。まるで絵に描いたようなへき地診療だと思った。ここ
で受診される患者さんの多くが高齢者で、生活習慣病が最も多く、その他も認知症や変形性膝関節症、骨粗鬆症などの疾患をよく
診た。また、何も疾患は無く症状も無いが高齢のため健康診断目的で受診している方もいた。
遠隔医療実習記録:今回の実習では利用する機会が無かった。
感想
奄美大島はずっと行ってみたいと思っていたので、実習先を決めるときに第一希望でだしていた。時期も一番夏に近い六月末で
梅雨がちょうどあけた頃を狙っていて、その狙い通り、一週間夏の奄美を満喫できた。用安海岸、加世間の海岸、大浜海岸、ヤド
リ浜、タエン崎、加計呂麻島など、私たちは奄美に着いた日から市内に帰る日までほぼ毎日海に行った。泳いだり、夕日を見たり、
シュノーケルでサンゴを見たり、ウェイクボードをしたり、どの海岸に行っても胸がいっぱいになるほどの景色で、あんなに綺麗
な色をした海を見たのは生まれて初めてだった。
また、一週間を通して島独特の空気や文化を感じることができた。名瀬は割と都会で、お店もだいたい揃っていて何も不自由な
く、鹿児島本土の市街地よりもよっぽど栄えていると思った。しかし名瀬を離れると携帯電話はすぐ圏外になるし、瀬戸内の古仁
屋にいたっては、民宿からタクシーを呼んでもらおうとすると、古仁屋にはタクシーが 4 台しかなく、到着するのに 2 時間はかか
161
ると言われた。結局民宿のおじさんが送ってくれて、帰りも電話すれば迎えに行くよと言われた。タクシーを呼んでも来ないこと、
民宿のおじさんが送迎してくれること、どちらも驚きだったし新鮮だった。また、私が海で貝殻を拾って洗い部屋の棚に並べてい
たら、それを民宿のおばさんが見たらしく、その日の夜、大きくて綺麗な貝殻を 5 個いただいた。売り物のような綺麗な貝殻で、
こんなものは海岸には落ちていないそうで、業者の方がたまたま見つけたものを分けてもらっていたものだった。民宿のおじさん
とおばさんはとても温かく、島の人を象徴したような方たちだった。
タエン崎では、みんなで夕日を見ていると上半身裸のおじさんに注意された。ハブのいる奄美で夜道を懐中電灯も持たずに歩く
のは自殺行為だと言われた。ハブが少なくなっているというのは学者の言うことで、夜になるとコンクリートの道路の上を歩くの
も危ないということだった。私たちが怖がっていると、そのおじさんは自分で作ったハブ取り機やハブ取り箱を持ってきてくれ、
ビニールロープをハブに見立ててハブ取りの実演をしてくれた。そして私たちが安全に車に乗り込むのを見届けてから、ハブを取
りに山へ消えていった。もしあのおじさんに出会わなければ、救急外来に運ばれていたかもと思うとぞっとした。
そして何より、本来の目的である病院、診療所での実習は本当に有意義なものだったと思う。県立大島病院では思っていたより
たくさんの研修医の先生がいて、どの先生も気さくで優しく研修医控室が一番居心地がよかった。救急外来でもスタッフの数が少
ない分私たちも診療に参加でき、とても記憶に残る実習だった。実習の指導以外でも車を貸していただいたり、カフェに連れて行
っていただいたり、奄美で生活する上で本当にお世話になった。研修医の先生だけでなく、上の先生方もとても優しく勉強不足の
私に丁寧に指導してくださり、何の不安も無く実習することができた。また、瀬戸内のへき地診療所の先生方は 2 人しかいらっし
ゃらないのに、私たち学生の相手をしてもらい申し訳ない気持ちになった。木曜日の夜はおいしいご飯までご馳走になってお世話
になりっぱなしだった。でも、飲みながら色々な話が聞けてとても楽しかった。へき地診療は忙しくて大変だとは思ったが、上村
先生の外来や巡回診療を見ていたら、いつか私が一人前の医師になった時、
こんな風に医療に携われたらいいなと思えた。研修医が終わってすぐとい
うのは難しくても、キャリアを積んで一人でやっていける知識と自信を持
てた頃、へき地でそこに住む人々に愛される医師になれたらきっと幸せだ
と思う。
最後に県立大島病院の先生方とスタッフのみなさん、へき地診療所の先
生方とスタッフの皆さん、本当にお世話になりました。来年の国家試験に
受かって、今回学んだことを生かし、立派な医師になれるように努力しま
す。そしていつか奄美大島の土地で一緒に仕事ができたらいいなと思いま
す。その時はぜひよろしくお願いします。一週間本当にありがとうござい
ました。
奄美最終日の土曜日(加計呂麻島のビーチにて→)
氏
名
原薗
晋太郎
6 月 25 日 ( 月 ) ・ 6 月 26 日(火)
実習先:県立奄美大島病院(内科)
午前・午後は内科病棟での処置。午後 5 時からは救急外来の見学。
症例 1 : 80 歳代
女性、誤嚥性肺炎と尿路感染・陰部潰瘍
誤嚥性肺炎で入院加療中に陰部潰瘍を認めるようになった。
陰部潰瘍に対しての処置(洗浄)を学生が手伝った。陰部潰瘍は当初は深かったが、感染の予防や朝・夕の洗浄を継続した結果、
深さが1cm以下になった。
今後は転院に向けて調整中とのこと。
症例 2 : 40 歳代
男性、 Wernicke 脳症・う歯
仕事のため来島した当日に意識障害が発生。
救急外来に搬送され、血液検査の結果、γ -GTP が 2,000 、 AST ・ ALT が 4,000 と非常に高値であった。既往歴に肝疾患なく、
生活歴からアルコール性肝障害と Wernicke 脳症であると診断された。入院加療の結果、急速に肝逸脱酵素は低下し正常値に戻っ
た。退院前にう歯が見つかり、入院が延びてしまった。アルコール性肝障害でこんなにも異常値を示すのかと記憶に残った。
症例 3 : 50 歳代
女性、ぜんそく・COPD
歩行中に呼吸困難を自覚。しばらく休んでも改善しないため救急外来を受診した。喫煙歴 20 × 20 年。両下肺野から wheeze が
聴取され、スパイロメトリーにて混合性障害を認めた。朝の呼吸苦などぜんそく様の症状をきたしているため対症療法とした。
50 歳代で初発するぜんそく様症状の鑑別を、研修医の先生と考えながら診察したためよく覚えている。
症例 4 : 30 代
女性
甲状腺機能低下症
大量のヤスデが部屋にいるとの幻覚を主訴として、奄美病院の精神科に入院していた。
消化器症状のため県立病院に転院した。顔面・下腿の浮腫や甲状腺の検査値に異常が見つかりホルモンを補充したところ、症状は
改善。精神疾患に典型的な所見が出ていても、必ず身体症状を注意深く観察したり身体の病気を否定してからでないといけないと
思った。
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症例 5 : 60 代
男性
頭部外傷
酒に酔って喧嘩をして、ビール瓶で頭を殴られた男性。暴れて大変だ
った。
県立大島病院は、島の救急医療の中核を担っており上記の他にも熱傷
や急性硬膜下血腫など多彩な疾患に対応しており、島の医療で自分た
ちが最後の砦なのだという気概がよく伝わってきた。
また、研修医の先生にとてもよくしていただき、病院での業務後にい
ろいろな所に連れて行ってもらえた。特にひさ倉の鶏飯や、居酒屋で
の油ソーメンはおいしかった。
6 月 27 日(水)
実習先:医師会病院・虹の丘
午前は虹の丘で大島の特別養護老人ホームの見学と、認知症の患者さんのカルテを書く。
医師会病院では施設見学で島の療養型病院について学んだ。
午後は移動に費やした。
症例: 70 代
男性
認知症にて虹の丘に入園中
初めて認知症の患者さんとまとまった時間触れ合った。 40 分でカルテを書くというもので、認知症の患者さんとの意思疎通の大
変さを思い知った。また、先生や介護士の方が工夫してうまく意思疎通を図っているのを見て大変勉強になった。
6 月 28 日(木)・ 6 月 29 日(金)
実習先:瀬戸内町へき地診療所
28 日:バスにて加計呂麻島で巡回診療。
29 日:外来見学。
症例:バスでの巡回診療はいつもの患者さんの様子を見る診察がメインだった。
島では急変時に対応しにくいため、予防医療という観点がどこよりも重要なのだなと改めて思った。また、そのためには医師が島
民の健康状態を把握し、顔なじみといった感覚で気軽に巡回診療を受けてもらえるような雰囲気作りをするのが大切なのだと感じ
た。
へき地診療所での外来見学は、いつものお薬をもらいに来る
人からハチに刺されたという子まで多種多様であった。まず
驚いたのは設備が整っていたことである。CTや内視鏡など
へき地の拠点となる場所にはしっかりとした体制が構築され
ていた。また、それ以上に驚いたのがまだ若い先生方が設備
を使いこなし、様々な症例に対応できていたことであった。
若手で、大学病院にいるとなかなかできないことが、へき地
では身につけねばならない必須のスキルであり、場所とニー
ズによって医師も適応していかねばならないと感じた。
また、診療後は加計呂麻島でバカンスを楽しんだ。
奄美生活の締めくくりは大自然を満喫して終わった。
【感想】
自分はクリクラと離島実習を合わせて、奄美大島で 1 カ月実習をしていたこととなる。
その中で感じたことは、島では島に必要とされる医療があり、医師や行政はそれに対応していく必要があるということであった。
たとえば、同じ島でも県立病院では島の中での最後の砦であり、あと一歩で死ぬかもしれない重症の患者さんにも対応できる能力
が必要である。一方でへき地の診療所では重症になる前の段階でスクリーニングしたり予防医療を提供することが必要となる。
それぞれ役割は違うが、どちらも非常に大切な分野であり、島という隔絶された環境であるからこそしっかりと互いの役割を果た
しているのだと思った。
最後に、お忙しいところ勉強させていただいた先生方、ありがとうございました。
忘れられない 6 月になりました。
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医療法人 朝戸医院
介護老人保健施設 寿恵苑
医療法人 英世会 大蔵医院
朝戸医院外観朝戸医院外観
日本一のガジュマル
寿恵苑外観
タラソおきのえらぶ
昇竜洞
大蔵医院外観
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平 成 24 年 3 月 5 日 ( 月 ) ~ 3 月 9 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
矢口
貴一郎
3月4日 ( 日 )
実習先:モード理・美容室 (2 階 )
内
容:宿泊所のご夫婦と夜光貝、ケーキ、ビールをご馳走になる。朝戸先生のお話を伺う、「患者の話をゆっくりとよく聞く、
ラジオ体操に出ている、天体にかかわっている、何時でものみに来る、奥さんが教育委員会をされている」。朝戸先生が、沖永良
部のご出身であり、ご主人と同学年であることが分かった。
3月5日 ( 月 )
実習先:朝戸医院 (午前、午後 )
内
容:午前中は、朝戸先生の外来を見学した。
症例 1 : 80 代、男性、胆管癌 ( 鹿大第一外科で
肝切除 ) のジェムザール+白金製剤のchemo中、
外傷による白内障の診察も行った。症例 2 :
80~90代、女性、骨粗しょう症+圧迫骨折の定期
診察、キシロカイン+ノイロトロピンの注射の処
置をした。症例 3 : 60 代、女性、左眼の目頭部
分の発赤と痛み、涙管洗浄の処置をした。症例 4 : 84 歳、男性、 HCV →LC(10 y)で、IFNを実施したが効果なく、強力ネオミ
ノファーゲン C の治療中、腹水・浮腫が認められたため、エコーを実施、肝辺縁の凹凸、肝内モザイクパターン、脾腫を認めたが、
経過観察。症例 5 : 70 代、女性、左膝の痛みにて受診、レントゲン検査を施行し、変形性膝関節症と診断、ヒアルロン酸を膝関
節腔内に注入した。 ( 患者さんと二人で同じ高さでレントゲンを見つめる朝戸先生の姿が印象的でした ) 。症例 6 : 80 代、男性、
2 月中に咳・痰で受診し、抗生剤を処方されていたが、いまいち体調が悪いということで受診、漢方薬+輸液の処置をした。症例
7 : 70 代、男性、定期処方のついでに、左上腕にしこり+指先の潰瘍で受診、腫瘤は軟らかく、可動性もあったので経過観察、
潰瘍は治癒傾向にあったので経過観察となった。症例 8 :70~80代、女性、左肩が上がらないため受診、左肩の関節可動域を調べ
たところ、左上肢は肩より高くはあがらなかったため、肩関節周囲炎の診断でキシロカインを肩甲骨下、二頭筋腱鞘に注射した。
( 最近、ジャガイモ堀をしていたとのこと、肩関節周囲炎は体の後ろで帯が結べないなどの症状が出る ) 。
午後も、朝戸先生の外来を見学した。症例 1 : 80 代、女性、右鼠径部のできもので受診、炎症性のできもので排膿処置、その他
にも、夜間頻尿、右肩のだるさ等を訴えていたが、根底には鬱が隠れていたようだった。症例 2 :20~30代のアテロームの診断、
排膿処置した。症例 3 : 4~5 歳くらいの女の子、先週木曜に 40 ℃の発熱で小児科のある徳洲会病院を受診、解熱薬で様子を見て
いたが、月曜になり耳垂れが出現したため受診、耳鼻科的な診察で中耳炎と診断、排膿・抗生剤の塗布をした。症例 3 :50~60歳、
男性 ( 大阪からの旅行者 ) 、尿路結石疑い ( 以前、二度既往あり ) 、エコーを実施したところ、尿管・腎・腎盂の拡張が見られた、
CVA tenderness 陽性、尿路結石の診断にて、ボルタレン座剤を処方し、水をたくさん取るよう指示し、診察終了。症例 4 :
40~50代、男性、土曜日の夜天文館にて酒に酔って転倒、意識を失い、天陽会中央病院へ救急搬送された、 CT では出血、骨折な
く、本人の希望もあって、日曜に沖永良部に移動、その後頭痛・ふらつきのために受診、左後頭部に 20 cm 大の皮下血腫があった
ため、 CT を実施したが異常所見なく、鎮痛薬を処方して、経過観察。
この他にも、 UC 、両
上肢切断、 RA 、偏頭
痛、筋緊張性頭痛等の
患者さんがいた。
3月6日 ( 火 )
実習先:大蔵医院
内
容:午前中は、症
例 1 :ドクターヘリ要
請の現場を実際に見学、
82 歳、男性、 2 月
28 日に 39 ℃の高熱にて往診したが、鼻水・咳があったため風邪と診断したが、 29 日に血液検査にて CRP 23 であったため、
肺炎と診断し、入院にて抗生物質の投与を開始、 3 月 1 日には CT にて右下肺野中心に空洞のある結節陰影が認められた (Tb の既
往なし ) 、その後症状は軽快方向に向かっていたが、 6 日 AM2:00 より喀血が持続的に始まり、気管支動脈よりの出血と考えた場
合、 PEEP 、気管支鏡、 angio 等の処置が必要であるが、設備的に沖永良部では対処しきれないと判断し、急変時に備えて親族の
いる沖縄浦添病院に搬送する」ることとなった。 ( ドクターヘリの要請手順:①沖縄浦添病院ホームページにて呼吸器内科部長を
確認し、電話で連絡を取り、急患受け入れの要請をする。②ホットラインに連絡 (AM9:00) 。③紹介状を Dr. ヘリに FAX 、情報
提供書を消防署へ FAX ・ TEL 、④ AM10:00 に沖縄浦添病院より Dr. ヘリが到着、⑤患者の搬入をし、 11:04 に沖縄浦添病院
に到着したとの連絡があった )( 搬送は、滞りなくスムーズに進む。一件沖縄に搬送するたびに鹿児島県が 50 万円支払う。予算は
徳之島 / 沖永良部 / 与論で 3,000 万円あるらしいが、これでは足りないようだ。また、県を跨いだ場合の医師の同乗など難しい問
題がたくさんあるようだ ) 。症例 2 :男性、拡張型心筋症の定期診断、EF 20 %程度であったが、 ECG 、エコーにて前回から著
変なしということで経過観察 ( 走らない、階段登らない、水分取りすぎないと指導 ) 。症例 3 : 50~70 代、女性、高血圧 (180 /
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90) で目がチカチカするため受診、 2 月 3 日に左黒内障+右半身麻痺の脳梗塞の既往があり、頭がくらくらするため、脳梗塞の前
兆であると考え、入院してヘパリンを静注することとなり、落ち着いたところで親族のいる藤元早鈴病院へ紹介予定。症例 4 : 5
歳くらいの女の子、小児ぜんそくの定期診察、状態は安定していたため経過観察となった。午後は、 pacemaker の交換、多機能
老人施設の見学、往診 (87 歳、女性、寝たきりはないが、動けなかったこと、旦那さんが先月亡くなったので、様子を見に行っ
た ) を見学した。夜は、大蔵副院長と業者の方と夕食、医療機器の値段等について非常に勉強になった。また、夜の沖永良部実習
もさせていただいた。
3月7日 ( 水 )
実習先:大蔵医院
内
容:午前中は、大蔵副院長先生の外来を見学した。症例 1 :50~60代、女性、急な高血圧
がたびたび出現するために受診、問診すると長男が統合失調症で暴れる時に、不安が大きくな
り血圧が上がるようであった、統合失調症の治療は徳之島の精神科専門医の診察を受けており
スムーズな連携ができていなさそうな感じで難しそうな印象であった。最近は、長男の状態は
安定しているので、経過観察となった。症例 2 : 80 代、男性、定期診断、 2 月に呼吸困難に
て救急搬送された病歴があったが、マンゴーアレルギーが原因であったと伺い、とても驚いた。
さらに、 CF 、 GF 、胃の透視を一例ずつ見学した。非常に短時間で患者の嗚咽が聞こえるこ
ともなく、かなり上手であった。午後は、院長先生の外来を見学した。症例 1 :60~70代、女性、眩暈、頭を動かすと眩暈が起こ
るということなので、良性発作性頭位眩暈症の診断で、メリスロンを処方した ( メイロン(NaHCO3)が効果がある ) 。ちなみに、
椎骨動脈・脳底動脈循環不全も鑑別が必要である (cf : dizziness :浮遊性眩暈、 vertigo :回転性眩暈 ) 。そのほかにも、院長
のご経験に基づく、様々な分野のお話を伺った。夜は、院長、副院長と実習生の 4 人で食事をした。歴史、研究、国際的な話題等
非常に勉強になった。
3月8日 ( 木 )
実習先:午前 ( 福山医院、寿恵苑 ) 、午後 ( タラソ沖永良部 ) 内
容:午前中は、福山先生の
レクチャーと寿恵苑の施設見学。 100 歳になるお年寄りもいらっしゃり、福山先生のお考えが
行き届いている施設であることを実感した。また、福山先生の「僕の専門は結核 ( 呼吸器内科
とかではなく ) 」というお言葉に、時代を感じた。午後は、タラソ沖永良部の施設見学。海水
を適温に温めており、 walking コース、ジェット噴射を利用した肩、腰のマッサージと脂肪燃
焼、アロマサウナ等充実した施設であった。個人的には、少しまわりより温度の高くなったプ
ールにあった、肩まで浸かれる足の延ばせる椅子が気に入った。ちなみに、見学させていただ
く予定であった脂肪燃焼のための運動教室は、福山先生と楽しく昼食を取らせていただき遅刻
したので、見学できなかった。まとめると、夜遅くまで施設が開いており、また種々の運動教
室が企画されているので、この施設をうまく使うことで、健康維持に一役買ってくれると思っ
た。ただ、値段は高かった。夜は、民宿のご主人、奥様とお話をさせていただいた。「もっと
島に検査機器を入れないと、日本中平等にならない」「厚生連の 10 月に実施する集団健診は、
待ち時間が長く、やりたくない」「健診を充実させてほしい。島の MRI の使い方に疑問を覚
える ( 他の施設では、毎回するはずの造影をしない等 ) 」などのお話を伺った。私的には、高
価な検査機器を健診で使うことはなく、機器の使用は鑑別が挙がってからのように思われる。
そのため、検査機器を増やすというよりは、胃や大腸といった専門ごとのベテラン医師による健診の内容・回数の改善をしてゆく
べきではないかと感じた。また、 2 年前のトカラ列島実習では各島に CT もなく ECG だけで医療を行っている現状を見て設備不
足を感じたが、沖永良部では複数の CT 、 MRI 等の設備があり、これらの有効な活用法を検討すべきではないかと感じた ( 医療
従事者の機器ごとの勉強を含めて ) 。また、現在の医療は各県ごとに一次、二次、三次医療と分けており、高度な医療ほど人口の
集中している都市で行われていることを考えると、何を持って日本中で平等な医療を実施していると言えるのだろうかと思った。
限られた医療資源、医療費、医療技術のレベルの維持などを考慮した医療の集中化はある程度避けられるものではない。離島の場
合は、移動費・滞在費の助成等を検討した方がいいのではないだろうか?とも、考えたが、実際にはどうしたらいいのかは、答え
が出なかった。
3月9日 ( 金 )
実習先:朝戸医院
内
容:午前中、朝戸医院の通所デイサービスを見学した。朝サービスの利用者の家へ迎えに行くところから見学をスタートした。
皆さん、玄関や家の前で車を待っており、楽しみにされているんだと感じた。そして、医院に帰って来てからは、まず血圧、脈拍、
167
体温測定をし、ラジオ体操、頭の運動等結構大変な運動を行っていた。利用者からは、「しっかりと目標を持って実施することで、
体が動くようになった。以前より散歩ができるようになった。」という話が多かった。畑仕事ができなくなって、動けなくなって、
家に引きこもってしまいがちな方々のケアの重要性が垣間見えた。孤独死の予防にもなる。また、三味線を弾いてくれる見舞いの
方、歌を歌ってくれる方がいらっしゃり、入院されている方も通所サービスの方も毎日楽しく過ごすことができるように、私たち
が協力をさせていただかなくてはいけないんだなと思った。
遠隔医療実習記録
紹介状:胸部単純写真読影のお願い(CD症例1)
平素より、大変お世話になっております。
検診目的にて 59 歳の男性が当院を受診されたところ、胸部 X 線写真にて、右下肺野に一つの結節陰影、右中肺野にも一つ小さな
結節陰影らしき影を認めております。
当院では、肺癌もしくは非活動性の結核を疑っております。
男性は、現在、高血圧,糖尿病で当院通院中であり、自覚症状および他覚的所見は特にありません。
貴科的御高診よろしくお願
い致します。
返書:ご紹介ありがとうございました。
ご指摘のように右肺野の 2 個の結節が認められます。
は見逃しやすい部位です。
加えて、心陰影の中、
右横隔膜より下方にも結節がみられます。
診断は多発結節影から、転移性肺腫瘍を疑います。
ここ
(この患者は直腸癌肺転移の症例でした。)
有効点:生で撮影した画像をそのまま遠隔地で見ることができる点。
改善点:操作に慣れていないと、情報の送信までに時間がかかること。緊急症例では、紹介状的なものを書いている暇がないので
は?確実なオンラインで常に問い合わせができるのだろうか? ( どうしても、タイムラグができてしまいそうな気がする ) 。また、
個人情報の管理は、徹底されているのだろうか?その辺が、気になった。
感想
離島実習では、多くのことを感じた。制度や見学した内容についての感想は、実習記録に記載したので、ここでは、沖永良部でお
世話になった先生方の強い信念を感じるお言葉を多く伺ったので、その感想を述べたい ( 先生方のお言葉は、ニュアンスで記載さ
せていただいたため、実際とはズレがあるかもしれません ) 。
朝戸先生:沖永良部の Dr. ヘリの状況、15~20例 / 年、半分が周産期関連 ( 高齢出産、胎児仮死 ) 、鹿児島大病院、琉球大学病
院、市立病院、医師会病院、浦添病院が多い。朝戸先生は、以前は夜自衛隊のヘリに同乗して沖縄に行かれていたようです。しか
し、沖縄から帰ってくるとほぼ一日経過していることが多かった ( 夜ヘリに同乗し、翌夕方に帰宅 ) 。そこで、自腹の 10 万 /
回で沖縄で飛行機をチャーターして、午前中に帰ってきて、外来の診察をされていたようです。朝戸先生は「休診にするくらいな
ら、チャーターして帰ってきた方がまし」と、おっしゃられていました。ただでさえ、深夜飛行機で移動され、疲れているはずな
のに、自腹で飛行機で早く帰って来て、診察をされる朝戸先生の医療に対する姿勢に感動しました。また、血液検査は朝採血→昼
鹿児島市内に空輸→夜メールで初めて結果が分かること、厚生連病院から毎年 10 月に胃癌検診に来ること等、何をするにも時間
がかかり、さらに限られた医師ですべての診療科の診察をしなくてはいけないため、本当の総合医の実力が必要であると感じまし
た。また、「 20 年仕事をして、和泊の人間関係が分かるようになった」とも言われており、医療への熱い情熱を感じました。さ
らに、 3 月はジャガイモ収穫の時期、 1 月に桜が咲くなど、南国の季節に驚きました。
大蔵院長、大蔵副院長:ゆっくりとした雰囲気のある外来で、診察室に入ってくる患者さんが皆さん笑顔であったことが印象的で
した。大蔵院長「医学は、やればやるほど面白くなる」と言われ、幅広く深く多くの医学的考察をされていたこと、最新の論文の
知見をしっかりと把握されていらっしゃり、興味深いお話をたくさん伺いました。また、開業された時の話では「 33 歳の時に、
2 億円借金をして開業したが、町としては何も支援がなかったこと、むしろ町民には反対されることもあった」ようで、医者のい
ない地元に開業することは望まれていると思っていた私としては、あまりにも驚愕で、社会の難しさを痛感しました。また、朝戸
先生と同じように「最近になって、町の人の関係が分かるようになり、医学以外にも、畑で何を育てていいかとか、結婚をどうし
ようとか、夫婦げんかがとかを相談をされるようになり、離島医療の醍醐味を感じるようになった」と言われており、奥深さを感
じました。また、「徳洲会沖永良部病院ができて、急患の対応が楽になった」とお話しされており、マンパワーの重要性を再確認
した。
大蔵副院長は、外来診察をしながら「この方は、…でね」と、バックグランドを楽しくお話ししながら、私たちと一緒に診察をし
ていただいた。本当に和やかで、畑の話をされていた。大蔵医院は、ゆっくりとした、笑いのある診療が印象的で、離島の魅了を
感じさせていただきました。また、「 20 年以内にまた沖永良部に遊びに来なさい」と言っていただき、うれしかった。
福山先生: 86 歳の先生が、朝ソテツの手入れをされ、夕方は畑仕事をされていることに驚きました。大蔵先生と同じように、福
山先生が沖永良部に帰ってきた当時にこれからの介護の重要性を思い「 6 億の借金」をして、現在のような施設を造られたとのこ
と、医療に対する思いと行動力に感動しました。また、学位を取られた時のことを伺
い、さらに現在 Windows 7 、 iPad を使われており、お年を取られても多くのこと
に興味をもたれ、積極的に日々を過ごされている姿は自分にも必要だと感じました。
以上、離島医療を実施には、内科だけではなく外科、整形外科、眼科、耳鼻科、産婦
人科、精神科等幅広い知識が必要とされること、その土地の人間関係に詳しくなるこ
とが必須であるが、なによりも医療に対する熱い、熱い情熱を持って、何とかしない
といけないという思いが大事なんだと改めて感じた実習であった。そして、離島実習
の楽しみがとても伝わってくる実習であった。
168
氏
名
藍
嵐(ランラン)
3 月 5 日(月)実習先:朝戸病院
内容:午前と午後はともに外来患者さんを見学していた。
症例 1 : 60 歳代、女性、主訴は運動過多による膝痛。レントゲン所見は軟骨が磨り減り、骨硬化が認められた。これらより変形
性関節症と診断し、ヒアルロン酸注入をした。
症例 2 : 50 歳代、男性。主訴は側腹部痛。 CVA 背中を叩いて痛みを訴えた。尿潜血が陽性で、エコーでは腎盂拡張を認めた。
尿管結石と診断し、石が小さいことから、排石を促す薬が処方された。
症例 3 : 40 歳代、男性。主訴はふらつき。酒酔で転倒し、頭部を強打した。後頭部にうっ血を伴う隆起を認める。 CT では異常
を認めなかった。
症例 4 : 60 歳代、女性。肩関節周囲炎(五十肩)の診断で、肩甲下、二頭筋腱の二箇所に注射処置した。
3 月 6 日(火)実習先:大蔵病院
症例: 82 歳、男性。 2 月 28 日、 39 ℃の発熱。往診にて、かぜではないかと風邪薬を処方された。翌日、発熱が続く。
CRP23 . CT :右下肺野に肺炎様所見。 2 年前に肺炎の既往あり。昨晩、喀血。緊急搬送する必要があると判断した。患者さん
の長男が沖縄在住のため、沖縄への搬送を決めた。副院長先生はまず沖縄の病院(呼吸器内科)に電話をし、搬送の許可を得た。
次に、ホットラインを通じ自衛隊にヘリの要請をした。その後、紹介先の病院に FAX で紹介状を送ったり、消防に連絡したりし
ていた。一時間弱後にヘリ到着の連絡があり、患者さんを救急車に乗せて向かう。患者さんが無事にヘリに乗せられ沖縄へ飛んだ。
午後は副院長について往診に参加した。高齢者の女性のお宅を訪問し、ビタミン注射をし、しばらくお話を伺っていた。
院長と一緒に老人福祉施設フローラルホーム花の家を見学した。
3 月 7 日(水)実習先:大蔵病院
症例 1 : 60 歳代、男性。女性化乳房。肝障害で加療中。女性化乳房の患者は大酒飲みの人が多いと院長先生がおしゃった。
症例 2 : 80 歳代、女性。ペースメーカーの電池交換。業者立会いの元、副院長が皮膚切開をし、電池の交換を行った。
症例 3 :患者さんのほくろ。院長先生が皮膚がんの見分け方を教えてくれた。 A : Asymmetry
Border of irregularities
形が左右非対称である B :
辺縁がギザギザして不整である。色のにじみ出しがある。 C : Color variegation
色むらがある。 D : Diameter greater than 6 ㎜
色調が均一でない。
長径が 6 ㎜以上である E :Enlargement or evolution of color change, shape ,
or symptoms 大きさの拡大、色や形、症状の変化
3 月 8 日(木)実習先:(午前)寿恵苑、(午後)タラソおきのえらぶ
午前中は寿恵苑にて、 2 時間ほど福山先生のお話を聞き、その後、寿恵苑と病院を先生に案内していただいた。
午後はタラソおきのえらぶにて、プールでの実習を楽しんだ。
3 月 9 日(金)実習先:朝戸病院
実習は午前中のみで、通所リハビリテーションを見学させていただいた。介護スタッフと一緒に車で通所リハビリテーションの利
用者を迎えにいってきた。病院に戻ったあと、利用者の血圧測定、体温測定をさせていただいた。その後、一緒に体操など軽めの
運動をしたり、三味線に合わせて歌を歌っていた。
遠隔医療実習記録:
遠隔システムを用いた相談内容:
鹿児島大学病院 総合診療科 : 蓝 岚 (医学生 )
紹介・相談( 2012 年 03 月 05 日)
件名:胸部単純写真読影のお願い
この度は大変お世話になります。
労作時の胸部圧迫感を主訴に、外来受診に来られた 19 歳,男性の患者さんです。
2 年前に左胸に軽い違和感を覚え、自然軽快した既往があります。
1 週間前から胸部違和感を感じており、昨日から歩行など労作時の胸部の圧迫感が強くなったため
来院となりました。
来院時のバイタルは、体温37.3℃, BP104/60 ,HR88
検査結果は WBC 8,200,RBC 420 万 Hb 14.0g/dl
当院にてレントゲン撮影を実施した結果、左肺の肺野に肺血管陰影が見られず、 X 線の透過性が亢
進した所見を認められます。左側の横隔膜が低下していることと、左は肺門部に虚脱した肺を認め
たため、緊張性気胸を疑っております。
貴科的御高診よろしくお願い致します。
相談に対する紹介医からの回答:
鹿児島大学病院
神経内科 : 村永
紹介・相談への返信
文学 (医師 )
( 2012 年 03 月 06 日)
ご紹介ありがとうございました。
ご指摘のとおり、緊張性気胸と思われます。
気胸の既往を思わせる経過と、胸写では左気胸、左肺の完全虚脱、横隔膜の平低化、縦隔の右方偏移が見られ、緊張性気胸の所見
です。
169
このまま放置するとショックになることが予想され、緊急の対応が求められます。
救急搬送されるまえに、トロッカーカテーテルを挿入し、脱気させることを忘れないで下さい。
ご紹介ありがとうございました。
使った感想:使いやすかったと思います。
感想:
出発の日は雨で空がどんよりしていました。離島に行くのがはじめてでどんなところなんだろうなと少し不安の気持ちでした。船
は雑魚寝の部屋でした。一応女性専用の部屋でしたが、左側の方は寝相が悪くて、自分は一晩中
蹴られていてシートの半分が取られていました。右側の方は半端ないいびきしていました。 4 時
前に目が覚め、食堂に行ってそこのソファーでちょっと寝ていました。大変でしたが、もう二度
とこんな船には乗らないだろうと考えたら、かえって今はとても貴重な経験をしていると思いま
した。船酔いに翻弄され 20 時間が経ち、やっと沖永良部に着きました。タクシーで泊まるとこ
ろに移動し、そこのオーナーさんが暖かく迎えてくれました。
泊まる部屋からの眺め
鹿児島新港
日曜日の夕食の刺身
カジュマル
フ-チャ
実習の一日目と五日目は朝戸先生に
朝戸医院
お世話になりました。一日目は一日中
外来を見学していました。とにかく患
者の多さに驚きました。診療科と関係
なく消化器系から脳・神経系の病気ま
夜光貝
で様々でした。朝戸先生が次から次へ
実習1日目夕食 ( 海幸 )
やってくる患者さんの診察を颯爽とこ
なしていました。関節痛や可動域制限を主訴とした整形外科関係の疾患が多かったという印象を受けました。五日目は通所リハビ
リテーションを見学しました。車でお年寄りたちを迎えに行きました。雨で頭痛がするから病院に来るのをやめたお年寄りがいま
した。家の前に急な坂があって、その坂を車椅子で上がらなければならないというお宅もありました。雨風が激しかったので、坂
がいつも以上に危なかったそうです。お年寄りたちはとても暖かく受け入れてくれて、いろいろお話をしてくださいました。体が
弱まり農作業ができなくなったお年寄りたちは引きこもりがちになり、引きこもったせいでさらに身体能力が落ちるという悪循環
を断ち切るために、こういった通所リハビリテーションが必要不可欠であると思いました。
実習終了後は朝戸先生に島の名所を紹介していただき観光も楽しみました。
世之主の墓
海亀ビューポイント
ソテツ
ワンジョビーチ
実習の二日目と三日目大蔵先生のところでお世話になりました。二日目に、
病院に着いたとたん今日はドクターヘリによる緊急搬送があると知らされた。
頭の中で勝手にドラマのシーンを想像し始めた。搬送される方は 80 代のお
年寄りで、一見元気そうでいつご飯が食べられるかを家族に聞いていました。
奥さんと娘たちが見送りに来ていました。救急車に乗り込んだ患者さんを心
配そうに見つめている奥さんをみて、少し感動しました。人生の果てまでこ
んなに愛してくれる人がいることがすばらしいことだなと思いました。外来はやはり患者が多くて忙しかったです。大学病院の外
来と違って、 common disease が中心でとても勉強になりました。ペースメーカーの電池交換も見られてよかったです。往診では、
病気そのものだけでなく、患者の話をよく聞き心のケアも大事であることがわかりました。朝と昼は病院で食べさせていただいて、
夜もご馳走してくださり大変ありがたかったです。
四日目の実習は福山先生にお世話になりました。福山先生の生い立ちや博士号をとったことなどいろいろお話を聞かせていただ
きました。将来は大学院に進みたい私には興味深い話でした。何より一番びっくりしたのは、福山先生が Windows7 のパソコンと
iPad を使いこなしていることです。自分が 80 代になったときに、福山先生のように日々意欲的に仕事や生活そのものに取り込
170
むことができるだろうかと考えさせられました。
大蔵医院
夕食のメニュー
病院食
寿恵苑
屋子母ビーチ
今回の実習では、島の医者は島では有名人であることが、実感できました。しかし、ここまで来られるのはきっと苦労もいっぱ
いなさっていて、今のすべては苦労の賜物でしょう。コミュニティが閉鎖的で、外から来た外人はなかなか受け入れてくれないの
は、島の特徴でしょう(独断の偏見)。島出身の先生でもそこで苦労したと聞きました。病気だけではなく、患者の家族構成、性
格、家庭事情まで知っていないとやっていけない印象を受けました。ここまでできる自信がある人は、島に向いているかもしれな
いと思いました。どこの病院でも同じですが、従業員との関係、病院の評判などに気をつけながらやらなければならない。病院の
経営はとても難しい学問でもあると思いました。
今回の実習は初めてのことだらけで、とても新鮮味を感じて、とても勉強になりました。先生たち
は本当に親切していただいてたくさんのことを教えていただいて、大変感謝しております。
朝戸先生、医院の看護士さん、ありがとうございました。大蔵先生、医院のスタッフさん、ありが
とうございました。福山先生、ありがとうございました。
モード理容室:
部屋が広々で、きれいでとても快適でした。あえて難を言うとネットが繋げていないところか
な。。。常に戸閉まりしていないところが少しびっくりしました。
オーナーのご夫婦はとても親切していただいて本当に感謝しております。
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
中村
陽
4 月 2 日(月)
実習先:朝戸医院、内容:外来患者さんを見学。症例 1 : 19 歳、女性、主訴腹痛。本日 2 回目の受診。虫垂炎と診断された患者
さんで、腹部の触診をさせていただいたところ、McBurney点で圧痛があり、 Blumberg 徴候もみられた。保存的治療により軽快
していた。症例 2 :中年、女性。主訴、犬に右手をかまれた。かまれた部分は結合組織までで、比較的浅く、噛み切られてはいな
かったので、生理食塩水で洗い流した後、圧迫して、ガーゼで固定して、翌日再診してもらうこととした。
症例 3 :高齢、女性、主訴左足の痛み。坐骨神経に沿った痛みで坐骨神経痛と診断し、キシロカインを注射しました。症例 4 : 8
歳、男性、主訴右目の奥の痛み。以前サッカーボールが右目にあたって follow していた患者さん。痛みは消えていたが、最近目を
こすったりすると痛むということだった。眼底を見せてもらったが問題なく、また、眼球運動にも異常はみられなかった。念のた
めに次回眼科の先生がいらした際診てもらうこととした。この患者さんは学生で問診をとらせていただいた患者さんだったので、
大変興味深かった。
4 月 3 日(火)
実習先:大蔵医院、内容:回診後、外来患者さんを見学。症例 1 :中年、男性、主訴腹部の違和感。胃のポリープで follow されて
いる患者さんで、本人の希望もあり、内視鏡を実施した。内視鏡でみても特に大きさに変化はなく、他に病変も見当たらなかった
ので、経過観察とした。症例 2 :中年、男性、主訴体がだるい。熱もあり、咽頭も赤かったので、インフルエンザの検査をしたと
ころ、インフルエンザの A 型が陽性だった。オセルタミビルリン酸塩(一般名:タミフル)を処方した。症例 3 :高齢、男性、主
訴歩けなくなった。日頃から介護を受けている患者さんで、今朝から急に歩かなくなったとのこと。同居して介護していた奥さん
は発熱して少し前から大蔵医院に入院していた。インフルエンザの検査をしたところ A 型が陽性だった。ぼんやりしているようで、
薬を飲めない状態だったのでラピアクタ(一般名:ペラミビル水和物)を一人分注文した。
4 月 4 日(水)
実習先:大蔵医院、内容:外来患者さんを見学。症例 1 :高齢、女性、主訴特になし。胆石症の患者さんで、外来で follow してい
た。薬を処方していたが、本日、エコーで見るとなくなっていた。学生にもエコーをさせていただいた。今後経過観察とした。症
例 2 :高齢、女性、主訴膝の痛み。変形性膝関節症で follow している患者さん。じゃがいも掘りをしたら、痛くなったとのこと。
ヒアルロン酸を関節内に注射した。
4 月 5 日(木)実習先:福山医院(午前)、タラソおきのえらぶ(午後)、内容:朝のラジオ体操後、福山先生の講義(午前)、
タラソテラピー体験(午後)。福山医院では先生の体験談や寿恵苑の歴史、また、寿恵苑に入所している患者さんの、介護を受け
る原因となった主疾患についてのお話をうかがった。脳出血の原因だった高血圧を、塩分や動物性脂肪を減らした食生活にしたこ
とで、予防することができて、それが脳出血の患者さんを減らすことにつながったというお話は大変興味深かった。また昔は、結
核を勉強すれば内科を勉強したことになるというくらい結核患者さんが多かったが、ペニシリンの出現によってそれが大きく変わ
ったという話を、実体験をまじえてお話してくださったので、とても楽しくお話をきくことができた。
171
4 月 6 日(金)
実習先:朝戸医院(午前)、内容:デイサービス見学・参加。朝は患者さんを迎えに行く車に同乗して、迎えに行った。車椅子の
人や杖でしっかり歩く人など様々なレベルの患者さんがいらっしゃった。病院についてからは、まず血圧・体温・脈拍などを測っ
た。各々自分のバイタルサインを毎日チェックされていて意識の高さがうかがえた。その後、ラジオ体操をして、棒をもった体操
や、歌を歌いながらの体操、脳トレのようなものをご一緒させていただいた。意外と難しくて驚いた。その後、リハビリ室に移動
してリハビリを見学した。マシーンが 4 、 5 台あって順番に使っていた。それぞれのレベルに合わせて、理学療法士さんが時間や
強度を設定していて、それに従って使用していた。他にも足に重しをつけてゆっくり足を挙げる訓練をしている人や、立ち上がり
の訓練をしている人など様々な方がいらっしゃった。患者さんにお話をうかがうと、最初はお風呂もトイレも娘さん二人がかりで
やっとかっとしていていたのが、今では一人でできるようになったとおっしゃっていたり、ここに来ると友達がいっぱいいるから
楽しいという声もきこえてきて、楽しんでリハビリをしている感じが伝わってきた。
遠隔医療実習記録
時間がなくてできなかった。先生のお話を少しうかがうことができた。まだまだ情報を送るのには手間がかかり、電話をした方が
早いというのが実情だということだった。将来同じカルテを共有できて、同じ画像を見ながら電話で直接話ができればいいという
ようなことをおっしゃっていた。
感想
船の長旅(波に揺られた 18 時間)を終え、たどり着いた沖永良部は本当にきれいな島でした。実習が始まる前日に着いたので、
初日はたくさん観光することができました。幸い天気にも恵まれ、気持ちよく観光することができました。沖永良部は暑いかもと
思っていたのですが、意外にも少し肌寒いくらいでした。(後日島の人に聞くと、今年は例年より寒いとおっしゃっていまし
た。)沖永良部は思っていた通り緑豊かで、また右を見ても左を見ても海が見えることに感動しました。日本一の巨大ガジュマル
や、フーチャ海岸、昇竜洞など、ここでしか見られないような自然に触れることができて本当によかったです。
日本一のガジュマルは小学校の敷地内にありました。
小学生が元気よく挨拶してくれました!
フーチャ海岸です!
近くでみるとかなりの迫力でした!!
昇竜洞はとても神秘的でした!
大自然の営みを肌で感じられた気がします。
病院実習では、外来見学をさせていただきましたが、大学病院と違って、患者さんとお医者さんの距
離が近いように感じました。先生にうかがうと、誰と誰がどういう関係で誰の子供は何をしていてな
ど、何もしなくてもわかってくるとのことでした。患者さんの性格や患者さんを取り巻く環境などを
把握しているからこその医療を提供されていて、とても感動しました。私たちが実習に行った時期は
じゃがいもが旬で、みんなじゃがいもを掘っているそうで、じゃがいも掘りで腰や膝を痛めた患者さ
んが多く、島(沖永良部?)ならではの患者さんだなと思いました。今回、往診をする機会に恵まれ
なかったのが残念でした。また、先生いわく、沖永良部の医療をみたから離島の医療をみたというこ
とにはならないということでした。島にはそれぞれ特徴があり、今回の実習はあくまで沖永良部の医療実習であるということでし
た。もし、また機会があれば、他の島の医療も見てみたいなと思いました。
今回の実習でタラソテラピーを体験しました。一般の人と一緒に、リズム体操なるものをしたのですが、思った以上にきついで
した。確かに浮力は強くて、足に負担はかからないのですが、水の抵抗のおかげで、手を横に伸ばしたりする動作ひとつひとつが
きつかったです。これなら、膝や腰に負担をかけずに筋力がつくなと思いました。タラソテラピーを体験した後は体が疲れきって
いました。
今回、沖永良部を訪れて思ったのは、島の人々はとても人懐っこくて、優しくて、元気だということです。ウジジ浜という場所
で写真をとっていたら、軽トラックに乗ったおじさんが、クジラが見えるよと教えてくださり、タラソテラピーでは、おばさんた
ちがどこから来たのと声をかけてくださり、この後観光スポットにつれていってあげると言ってくださりました(実習中だったの
でお断りしましたが)。また、患者さんの中にも、コーヒー農家をしているから飲みにおいでと言ってくださったり、本当に人懐
っこくて、優しくて、心が癒されました。また外来でみた患者さんは高齢の方が本当に多くて、 80 歳、 90 歳はざらでした。し
かもみなさんお元気で、中には筋肉がしっかりついていて、 60 歳代にもみえる 80 歳代のおじいさんがいました。沖永良部の人
は農家をしている人が多いから元気なのかな?などと勝手に思っていました。
今回の実習では多くの方にお世話になりました。朝戸医院、大蔵医院、福山医院、タラソおきのえらぶの先生方やご家族の方、
スタッフの方々、そして宿泊させていただいた民宿の源様には大変親切に接していただき、本当に有難うございました。一週間と
いう短い期間でしたが、大変楽しく、有意義な時間を過ごすことができました。また沖永良部に実習もしくは遊びに行きたいです。
まずは卒試・国試にむけて勉強を頑張りたいと思います。一週間本当にお世話になりました。有難うございました。
172
(朝戸先生と奥様と)
氏
名
松永
(大蔵英世先生と)
(福山先生と)
(宿泊先の源様ご家族と)
愛香
4 月 2 日(月)
実習先:朝戸医院
内容:午前、午後ともに外来患者さんの診察を見学した。症例 1 :中年、女性、主訴は咬傷。勤め先で飼っている犬に左手掌を
かまれたとのこと。皮膚はめくれて皮弁状になっており、創部を洗った後、上から圧迫止血した。出血がほとんどなくな
ったのを確認し、清潔なガーゼで創部を圧迫し、翌日フォローとした。症例 2 : 92 歳、女性、主訴は発熱。島内でイン
フルエンザ A 型の患者が発生していたこともあり、簡易キットにて検査したところ陽性となった。年齢も高齢であったこ
とから、入院して経過をみることとなった。インフルエンザについては、島では本土より少し遅れて流行するそうである。
4 月 3 日(火)
実習先:大蔵医院
内容:午前、午後ともに院長先生の外来診察を見学した。症例: 2~3 歳、男児、右肘関節が抜けたとのこと。患児は右肘関節を
かばうように左手で抑えていた。先生が整復すると痛みで泣いてしまったが、指示にしたがってばんざいをすることがで
きるようになった。
4 月 4 日(水)
実習先:大蔵医院
内容:午前、午後ともに副院長先生の外来診察を見学した。途中、隣家の往診に同行した。症例 1 :高齢、女性、拡張型心筋症
のフォローのため来院。
心エコーでは心室の高度拡張と心筋収縮の非同期がみられた。ペースメーカーの埋め込み手術の可能性も検討しているが、
高齢であること、状態が安定していることから経過観察しているとのこと。症例 2 :高齢、男性、三尖弁閉鎖不全のフォ
ローのため来院。心エコーでは高度な三尖弁逆流がみられ、右房負荷のため右房が拡張していた。症例 3 :高齢、男性、
インフルエンザ A 型に罹患。自宅に伺ったところ、椅子に座っていて、体調はだいぶ復調してきているようであった。基
礎疾患としてパーキンソン病があるため、ベッドへの移動の際にすくみ足と小刻み歩行がみられた。熱も下がっていたが、
大事をとって本日まで点滴を行うこととした。
4 月 5 日(木)
実習先:寿恵苑(午前)、タラソ沖永良部(午後)
内容:午前は介護老人保健施設
寿恵苑で実習し、午後はタラソ沖永良部でタラソテラピーを体験した。
寿恵苑では、朝礼、ラジオ体操のあと、入所者の主な疾患について講義を受け、施設を見学した。先生が医師になるまで
のお話もとても興味深く、どのような思いで沖永良部の医師となり、老人介護施設を開設されたのかを知ることができた。
また、高齢者の疾患の特徴なども学んだ。入所理由となる様々な疾患のなかで、一番多いのはアルツハイマー型認知症で
あるそうだ。
また、高齢者では、疾患の特徴的な症状が出現しない場合も多いので、特に注意しなければならないということを学んだ。
タラソ沖永良部では水中でのリズム体操を体験した。浮力により膝に負担はかからないが、水の抵抗も強くなるので、腕
などへの抵抗は考えていたよりも強かった。終わった後は、心地よい疲労感があり、とてもいい運動になった。
4 月 6 日(金)
実習先:朝戸医院(午前)
内容:デイサービスの見学をした。まず、利用者を自宅まで迎えにいった。どの方も準備を整えて、玄関で車の到着を待ってお
り、デイサービスのへ行くのを心待ちにしていることがよくわかった。医院に着いたらバイタルをチェックし、利用者自
身に自分ノートに記録してもらった。こうして自分のバイタルを知ってもらうことも大事なことだそうだ。その後、ラジ
オ体操、棒を使った体操、歌に合わせた体操を行った。歌に合わせた体操の際に一緒に歌いながら体操をすると、心臓へ
の負担を減らす効果があるそうだ。体操の後、筋力トレーニングへ移り、何回もやって慣れている利用者は各自でトレー
ニングマシンを用いて楽しそうにトレーニングを行っていた。トレーニング等の合間に何人かの利用者の方とお話をする
ことができ、とても楽しかった。トレーニングの後は昼食の時間となり、配膳のお手伝いをして、実習を終えた。
遠隔医療実習記録
時間の都合でできなかった。先生に遠隔医療についてたずねたところ、文書にして送るよりも電話で話したほうが簡単だし、確
実だと思うとおっしゃっていた。確かに、患者の情報を文書として、的確に相手に伝えることは難しいことかもしれない。しかし、
173
画像等については、また別だと思う。先生も、お互い、同じ画像を同時に見ながら話すことができる点で便利だとおっしゃってい
た。また、ある患者についてのカルテがどの病院でも同じようにみることができるようになれば、また違ってくるのではともおっ
しゃっていた。
<島料理をごちそうになりました!>
感想
離島医療実習では、本当にいろんな
経験をさせていただき、とても充実し
た楽しい時間を過ごすことができまし
た。船は、行きも帰りもとても揺れて
大変でしたが、空いている時間に沖永
良部を観光することができ、息をのむような景色がたくさん見られました。今回の離島医療実習で一番感じたことは、離島の方々
のあたたかさでした。私たちが実習で来ていると知ると、笑顔でいいお医者さんになってねとおっしゃってくださる方もたくさん
いらっしゃいました。道で会っても、「どこから来たの?」と気さくに話しかけてくださり、なかには、時間があったら○○へお
いでと誘ってくださる方もいらっしゃいました。そんなあたたかい空気のなかで、腹部診察や胸部エコーなど様々な実習をさせて
いただき、とても充実した 1 週間でした。
先生のお話の中で特に心に残ったのは、救急時の対応についてでした。この患者はヘリで送るべきかどうか。私は、念のために、
迷ったら大きな病院へ搬送したほうがいいのではと思っていました。しかし、離島ではそう簡単にはいかないと学びました。大き
な病院へ搬送するとなると、ヘリを飛ばさなくてはならず、それには莫大なお金がかかります。「念のためといって、安易にヘリ
をよぶことで患者に負担になるのでは。しかし、命になにかあってからでは遅い。」こういった葛藤のなかで、的確な判断をしな
ければならない。今の自分には到底考えられないことを、先生方はしてこられたのだと改めて思い知りました。また、先生方の医
師としての守備範囲の広さには、とても驚きました。離島やへき地の先生方は専門にとらわれず、幅広い患者さんを診なければな
らないことは、当然知っていました。しかし、現実は私の想像を超えていたように思います。外傷の患者さんを診つつ、血圧の指
導をし、小児の診察もこなす。「専門家」として働く大病院先生方ももちろん憧れますが、離島の先生方の働く姿も、本当にかっ
こよかったです。
先生のお話を聞いて初めて知ったことですが、島から出て働きに行く先が、鹿児島市内だけでなく、関西方面に多いということ
にとても驚きました。デイサービスの利用者さんに伺っても、お子さんが大阪や神戸にいらっしゃることがとても多かったです。
関西方面に沖永良部出身者のコミュニティーがあり、そのつてを頼りに働きに出ることも多いそうです。そういった理由で、手
術等が必要になった際、娘さんや息子さんのいらっしゃる関西の病院へ紹介してほしいという患者さんも多いということでした。
実際に外来患者さんにも関西の病院での手術歴がある方も多くいらっしゃいました。こういった、島ならではの話もお聞きする
ことができ、とてもよかったです。
最後になりましたが、今回の実習でお世話になった先生方、施設の方、そしてお会いした沖永良部の方、皆様にお礼を申し上げ
たいと思います。おかげさまで、とても充実した時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。
氏
名
吉本
民樹
4 月 2 日、朝戸医院にて 8 時~ 15 時まで外来見学。犬に手の拇指球の部分を噛まれて来院した女性の患者さんに対しては、創
部を生食で洗浄して、ガーゼで圧迫止血した。数日経過観察をして、創部の皮膚組織の壊死の程度を見て、縫合する方針となった。
一週間前に右目にサッカーボールを当てて、眼球結膜に出血を認めていた小学生の男児が、目のことだから心配と訴える母親に連
れそられて受診されてきた。診察の結果特に異常所見なく、経過観察となった。外来見学の後、受診されていたある患者さんの珈
琲農園にお邪魔させていただいて、珈琲をご馳走になった。
4 月 3 日、大蔵医院にて 8 時~ 17 時まで外来見学。進行胆管癌に対する手術を大学病院で受けられて、島に戻って来られた女
性の患者さんの腹部エコー ( 肝臓に多数の転移所見あり ) をさせていただいたのがとても印象的だった。この日は大蔵先生のご自
宅にお招きいただき、珈琲やケーキなどをご馳走になった。
4 月 4 日、大蔵医院にて 8 時~ 17 時まで外来実習。咳嗽と悪寒を訴える若い女性の患者さんが受診され、熱は 37 度台だった
が、インフルエンザが流行していたこともあり、念のため検査したところインフルエンザ陽性であった。微熱であるからといって
インフルエンザが否定できるわけではないのが印象的だった。この日は熱帯植物園に連れて行ってくださり、自然の中を散歩した。
その後、ご飯までご馳走になった。
4 月 5 日、午前中は介護老人保健施設寿恵苑、福山医院にお邪魔し、福山先生の今までの人生のお話や施設にどのような病気の
方々がいらっしゃるかなどのお話を伺った。午後はタラソおきのえらぶにお邪魔し、タラソテラピーを体験させていただいた。こ
の日の夜は朝戸先生のご自宅にご招待いただき、珈琲などをご馳走になった。
4 月 6 日、午前中は朝戸医院にてデイサービスの送迎や運動などに参加させていただいた。午後は和泊港まで朝戸医院の理学療
法士の方に送迎していただき、フェリーに乗った。
遠隔医療実習記録:使いませんでした。
感想:今回の沖永良部での離島実習では、大学にいるだけでは学べないような地域医療の現状を学ぶことができ、離島で医師とし
て生きることがどういうことなのかを少しでも見ることができた。先生方や多くの島民の方々と触れ合うことができ、様々なお話
を聞くことができたのは、とても貴重な経験になった。
沖永良部での生活は朝戸先生が車を貸してくださったこともあり、不自由を感じなかった。昼ご飯は診療所の食事を用意してく
174
ださり、夜は外のお店でおいしい島料理をいただくことが多かった。車を貸していただいていたので、空き時間で様々な観光スポ
ットに行き、沖永良部の素晴らしい自然(特にフーチャが最高だった)の風景を楽しむことができた。今回宿泊させていただいた
モード理・美容室とカーササカイもとても綺麗で設備も整っていて、とても快適に宿泊することができた。
実習では外来見学が中心であったが、子供からご高齢の方まで、分野も内科疾患から外科疾患など本当に様々な患者さんが受診
されていた。血圧の測定や腹部エコー、果てには問診まで実際にさせていただき、とても勉強になった。その際にも島民の方々は
快く協力してくださり、とてもありがたかった。沖永良部ではジャガイモの収穫の時期であったのだが、予防接種を受けられた患
者さんに、「この後は激しい運動やジャガイモほりはしないように」と説明されていたのがとても印象的であった。患者さんの生
活の環境を十分に理解された上での説明であった。
先生方と様々なお話しをさせていただいて、印象的だったのは朝戸先生も大蔵先生も島での生活をとても楽しんでいらっしゃる
ということだった。医師の数が少ない分、一人で診ないといけない責任がつきまとってしまう離島医療ではあるが、先生方は多く
の趣味を持たれ、自然を好まれ、楽しんで生活と仕事を両立していらっしゃった。そのような光景を見て、離島で医師として生き
るのも、大変ではあるだろうが、やりがいがあり、楽しそうであると感じた。
ここには書ききれないほど島で色々なことを感じることができ、なによりとても充実していて楽しい実習でした。朝戸先生、大
蔵英世先生、大蔵聡先生、福山先生、タラソおきのえらぶのスタッフの方々にはとてもとてもお世話になり、素晴らしい沖永良部
での離島実習にすることができました。また沖永良部に行きたいと思います。心より、本当にありがとうございました。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
布田
和歌子
4 月 23 日(月)実習先:朝戸医院
8:00~朝食を病院で頂くことができた。久しぶりの味噌汁が特に美味しかった。
8:30~朝礼;看護師さんが全入院患者さんの状況を細かく申し送り。
8:40~9:10;病棟回診
脳梗塞で半身麻痺の患者さんから肺癌の患者さんまで幅広かったが、院長先生との会話や患者さんの態度を見ていると、先生が
一人一人のことを熟知している感じを受けた。その中で印象的だったことは、 100 歳を超える患者さんや脳性麻痺の患者さんを家
族が遠出をする時に入院、というよりも「預かる」と話されていたことだ。市内にここまで融通が利く病院はまず無いだろう。ま
た、二人暮らしの高齢夫婦の場合、どちらかが病気になるとお互いを介護できなくなり、入院せざるを得なくなるというパターン
が島では多いそうだ。島から出て行って戻ってこない子供が増えているからだろう。
9:10~ 12:30 ;外来診療
〈症例 1 〉C型肝炎から慢性肝硬変の患者さん;腹水を初めて見て、こんなに溜まるものかと思った。外来では胆管癌の患者さ
んも多いらしい。
〈症例 2 〉帯状疱疹の発症後の患者さん;肋間神経に沿って正中まで広範囲に褐色の皮疹がみられ、非常に特徴的な所見で勉強
になった。
14:00 ~ 16:00 ;外来診療
〈症例 3 〉スキルス胃癌で大動脈周囲リンパ節まで転移していた患者さん; TS-1 とCDDPの併用で著明な回復が得られたそう
だが、最適の治療法を提供するために、離島であっても積極的に最新の情報を得ようと頑張っていらっしゃったのが印象的だった。
4 月 24 日(火)
実習先:大蔵医院
8:00~8:30;院長先生とオリエンテーション
〈印象的だった言葉〉
「昔と違って島だから医師不足というわけでなく、患者さんも病院を選ぶようになってきた。鹿児島市内の病院ではなく、関東
や関西の病院と比較される。こちらでは初発症状で診断を付けなければならず、他病院と診断が食い違えば信用を失ってしま
うので、慎重に検査なり行っている。」
「高齢化に伴い介護施設が増えていて島内には送迎車が駆け巡っている。いかに他と差をつけて利用者を確保するか、これから
はサービス面の充実が重要となるだろう。」
8:30~ 12:00 ;外来診療(院長)
〈症例 1 〉偽痛風;高齢者に多く、痛風の治療と全然違うので診断が重要。
〈症例 2 〉腰部脊柱管狭窄症;リウマチとの鑑別が難しいが、CTや血液検査で診断。
昼食は病院食と同じものを頂いたが、病院食とは思えないくらい味付けもボリュームも大満足で本当に美味しかった。
14:00 ~ 15:00 ;外来診療
沖永良部独特かもしれないが、昆布の摂りすぎで甲状腺機能低下症になる患者さんがいるらしく、全身症状が多彩で診断が難し
いらしい。
15:00 ~;小規模多機能型居住介護施設「花の家」見学
設立して一年らしく、非常にきれいで広々としていた。キッチンは対面式で常に様子を見ることができ、庭には南国の花がたく
さん植えられていて、とても家庭的だった。ちょうど皆さんがカラオケをしている時で温かい雰囲気だった。今回、小規模多機能
型というものを初めて見たが、利用者の介護度に応じて様々な利用法があり、同居人にとっても非常に助かりそうだ。一泊 500 円
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で宿泊できるらしく、経済的にも負担が少ないだろう。これからは、このタイプの介護施設が主になるだろうと思った。
4 月 25 日(水)
実習先:大蔵医院
8:30~ 12:00 外来診療(副院長)
〈ペースメーカー点検; 7 名〉業者の方が機械で電池のチェックをした後、診察室では、先生が心電図や血圧、またエコーで現
状の確認、という流れで一人一人入念に診ていた。私もエコーを何件かやらせてもらったが、うまく映すので精一杯だった。その
中でも特に、下大静脈径で心不全の診断にもつながるということを学ぶことができた。また、患者さんの中にはきちんと薬を飲ま
ない方がいて、あまり心不全というものに危機感が無いようだったので、先生が身内のように忠告されていたのが印象的だった。
14:00 ~ 17:00 外来診察
〈症例 1 〉定期健診;胃カメラ検査を初めて見たが、先生が透視を見ながら患者さんに的確に指示し、機械も器用に操作されて
いてプロだと思った。
〈症例 2 〉気管支喘息;吸入ステロイド+β 2 刺激薬の「アドエア」という薬で劇的に改善するらしい。
全体的にインフルエンザの子供が多く、学校医でもある先生が学級閉鎖の決定を下してらっしゃった。島の医者には色々な仕事
があると実感した。
夜は「花の家」のスタッフの皆さんと先生の御家族と一緒に、美味しい島料理をご馳走になって、本当に楽しい夜だった。
4 月 26 日(木)
実習先:福山医院・寿恵苑
8:15~9:00;職員全員で庭の掃除
院長先生がガジュマルの苗木を切っていたので、少し手伝ったら清々しかった。
9:00~ 11:30 ;院長先生のオリエンテーション
まず、結核の歴史から抗菌薬の適応までを教えていただき、自分の知識の無さを痛感した。次に、先生自作のスライドで寿恵
苑の現状を細かく教えてもらった。その中でも特に、人には「精神の自立」と「身体の自立」というものがあり、どちらか出来な
くなった人が患者さんとなる、とおっしゃっていたのが印象的だった。また、医者を続けていくと「医者が病気を治しているわけ
ではなく、患者さんの治癒力・生きるようとする力が無ければどうすることも出来ない。人はいつか死ぬものである。」という考
えを持つようになるという言葉が、非常に説得力があり、心に響いた。
11:30 ~ 12:00 ;施設・病棟見学
比較的介護度の低い方々はテレビの前で昼食を摂られていた。重度の患者さん達は、車いすで集まってチューブで流動食を摂っ
ていたが、まるで眠っているようで、「認知症の成れの果ては意識障害である。」という院長の言葉を実感し、なんとも言えない
気持ちになった。
昼食は病院の隣の喫茶店に連れて行ってもらい、院長先生と色んな話が出来た。先生が戦時中は医学生で、そこから沖永良部で
開業するまでの話しはとても面白かった。
②実習施設:タラソ沖永良部
13:30 ~海水の流れに沿ってウォーキング
14:00 ~アクアビクスで常連さん達とダンシング
14:30 ~アロマサウナでリラクシング
15:00 ~露天プールで常連さんとトーキング
久々に運動して、地元の方とも交流できて、とても良い体験だった。
ジムも充実していたので若者も利用していた。
4 月 27 日(金)
実習先:朝戸医院(リハビリ施設)
8:30~オリエンテーション;介護士さんにとっての理想のリハビリ施設について
9:00~ 10:00 お迎え
利用者の方々の家へ実際に赴くと、既に玄関で車椅子に座り待っていらっしゃった。施設に行くのが楽しみであるかのように見
えた。バスの中では、皆よく話をしており、職員の方々とも本当に仲が良かった。病院に戻る途中、わざわざビーチを通って頂き、
地元の話を聞かせてもらうことができた。病院に戻るとまず、黒糖を食べながらお茶を頂いた。黒糖がおいしかった!自己紹介の
後、一緒にラジオ体操を行い、椅子に座ったままでも行えるリハビリをしたのだが、皆さんの熱心にリハビリを行う姿が印象的で、
本当に治したいという気持ちを感じた。
二階では、マシンを使ったトレーニングをしたのだが、介護士さん曰く、負荷をかけて筋力を増やす事よりも、 15 分ほどの時
間をかけ、継続して行うことで、忍耐力を養うことが目的だそうだ。
最後に、女性の利用者の方々と一緒に歌謡曲を 30 分ほど歌い上げた。気持ちよか
った!
昼食は職員食堂で沖永良部ジャガイモコロッケをご馳走になった。
帰りは、職員の方にフェリー乗り場まで送っていただき、本当に至れり尽くせりだ
った。
感想
沖永良部に来て本当に良かった。先生たちは本当に優しい。優しいだけじゃない。
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~大蔵先生と&のんちゃん~
患者さんとの接し方が好きだ。長年付き合ってきた患者さんとだからこそ出来るの
かもしれないが、私もいつかこうなりたいと思える初めての医師だった。
また、島の医療というものの見方が変わった。「医師不足」「内科医が浅く広く
診る」ではない。カルテには書かれていないが、地元の方々の事を本当によく熟知
しているので、とても効率がいいのではないかと思った。こう思わせる先生方の苦
労は計り知れない。開業するまで経験を積み、慣れない土地で一から始める。患者
さんはどんどん押し寄せ、限られた器具で診断をつけ、どうにか帰さないといけな
い。患者さんは何でも治せると思って来るので、少しでもミスを起こしたり態度が
悪いと評判は下がってしまう。このような事を乗り越えられてきた先生方だが、自
信に満ち溢れている感じはなく、謙虚で、本当に仏のようであった。病院スタッフとの関係がいいのも、先生方とスタッフがお互
いに「感謝」しているからである。
3 つの病院ともそろそろ世代交代を迎えているようだが、共通してリハビリ介護施設の導入などによる高齢社会への適応がみら
れた。これからまだまだ忙しいと思われるが、医療スタッフ全員の、地元を大切にする強い心を感じることができた。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
西藤
5 月 28 日 ( 月 )
智照
実習先:朝戸医院
内容:外来診察の見学。症例 1 : 16 歳、男性。主訴
嘔吐・下痢。本日初診。今朝突然の嘔吐・下痢が出現し、腹部全体に痛
みがあった。熱は37.5℃。兄弟は弟が 2 人で、同様の症状は見られない。その他の家族にも症状は見られない。昨日高校のバレー
部の新入生歓迎会で外食をしたとのことだった。最近部活の試合前で、ストレスがある。初診ということで、予診をとらせていた
だいた。家族、友人に同様の症状はなく発熱も軽度のため、食中毒の可能性は低いと考えた。先生の診察でも同様の質問をされ、
整腸剤で様子を見ることになった。症例 2 : 58 歳、女性。主訴
膝の痛み。膝関節に水がたまっており、触診をさせて頂いた。
膝蓋骨のバロットメントをみる方法や、両手を使って膝関節内の水を動かし触診する方法を教えて頂いた。水を抜き、ヒアルロン
酸の注射をして診察を終了した。症例 3 : 40 歳、女性。主訴
乳がん検診で異常を指摘されて精査目的に来院。朝戸先生がマン
モグラフィーの読影の認定医であることから、同様の患者さんが 10 人ほどいらっしゃった。マンモグラフィーの撮影や読影など
に立ち会わせていただき、説明を受けた。本日は悪性の所見の方はいらっしゃらなかった。症例 4 : 76 歳、男性。主訴
白内障
の手術後の診察。私たちが実習させていただく数日前に、鹿児島大学から眼科の先生がいらっしゃって、白内障の手術を 10 人ほ
どされたとのことだった。ハンディの細隙灯顕微鏡を使って、順番に診察を行った。何人かの人は学生にも所見を見せて頂いた。
5 月 29 日 ( 火 )
実習先:大蔵医院
内容:外来診察 ( 副院長 ) の見学。症例 1 : 88 歳、男性。主訴:心臓ペースメーカーを使用されていて、その管理目的に来院。
奥様が看護師さんで、食事、生活がしっかり管理されており、 88 歳とは思えないほど元気な方だった。症例 2 : 5 歳、男性。母
親に連れられて来院。主訴
発熱と咳嗽。 1 週間前に 1 度来院しており、抗菌薬を処方され、 1 度は落ち着いたものの、再び症状
が発現し再診。他の薬剤を処方し、 3 日後に来院するように言って、診察終了。症例 3 : 78 歳、女性。主訴
定期の診察。閉塞
性肥大型心筋症の患者さんで、血圧測定、聴診、体重測定などをした。聴診をしたところ、収縮期駆出性雑音がはっきりと聴取で
きた。一見元気そうにされていたが、心臓の EF が20%台とかなり重症な心機能低下がある方だった。症例 4 : 60 歳、女性。主
訴
皮膚の痛み。視診をさせて頂いたところ、肋間神経に沿って皮疹があり帯状疱疹ではないかと考えた。先生の診断も同様に帯
状疱疹で、症状や治療の説明をしていただいた。
5 月 30 日 ( 水 )
実習先:大蔵医院
内容:外来診察 ( 院長 ) の見学。症例 1 : 70 歳、女性。心機能の定期診察。心機能低下で、定期的に診察を受けている患者さ
んだった。エコーを見せて頂き、学生にもエコーをさせて頂いた。大動脈弁の狭窄が疑われる所見だった。症例 2 : 65 歳、女性。
乳癌の術後で、定期検査を希望する方だった。最初に胸部 X 線写真をみて、右の肺野の透過性が亢進していると考えたが、乳癌で
ハルステッドの定型手術を受けており、脂肪が少ないのだということが分かった。画像を見るときには様々な情報をもとに読影し
ていかなければならないと感じた。症例 3 : 50 歳、女性。てんかんの既往があり、発作時に熱湯をかぶり、体中に火傷をした方。
娘さんがいるところで治療をしたいということで、名古屋の病院に転院することになった。
5 月 31 日 ( 木 )
午前
実習先:福山医院
内容:朝の朝礼に出席後、福山先生が学生だった頃のお話、寿恵苑を創設した時のお話、大学院に入学した経緯や大学院でのお
話などを聞かせて頂いた。その後、寿恵苑に入所している方々の疾患の説明をしていただいた。アルツハイマー型認知症や脳血管
障害の後遺症で入所する方が多いとのことだった。その後、通所の方々、入院されている方々と一緒に集団リハビリを体験させて
いただいた。
5 月 31 日 ( 木 )
午後
実習先:タラソおきのえらぶ
内容:水に浸かっていることをあまり感じないという 35 ℃前後の水の中で、リズム運動、ドイツ式サウナ、コースを歩くエク
ササイズなどを体験させていただいた。膝をけがしている自分にも無理なく行えるエクササイズであったので、関節の悪い人にも
とても有効なトレーニングであると感じた。また、プールに来ている人たちが次々に話しかけて下さり、沖永良部の人々の温かさ
に触れることができた。
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6月1日 ( 金 )
実習先:朝戸医院
内容:通所リハビリの見学。朝は 3 手に分かれて患者さんをご自宅まで迎えに行った。お一人で住んでおられる方も多く、家か
ら車への移動が思いのほか大変だった。車いすや昇降機を使い、およそ 1 時間半かけて 7 人のかたを病院までお連れした。病院に
帰ると、他の 2 つのグループはすでに到着しており、全員揃ったところでまず血圧、心拍数、体温、体重などを測定し、その後リ
ハビリを行った。ラジオ体操や棒を使った運動、机やいすを補助に使いながらの筋力トレーニングなどを行った後、リハビリ室で
個別のリハビリを行った。膝を低周波刺激でマッサージしていたり、立ち上がりの訓練をしていたり、本格的な機械を使ってトレ
ーニングをしていたりと、自分が考えていた離島医療のイメージをはるかに超えるメニューが行われていた。
遠隔医療実習記録
実習の時間に追われていて実施することができなかった。先生にお聞きしたところ、電話の方
が早いとのことだった。更なるシステムの向上と意識の浸透があれば、もっと遠隔医療を活用し
ていけるのではないかと思う。
感想
私の沖永良部へのイメージは、本当に何もなく、生活するのにも不便が多いところなのでは
ないかというものでしたが、今回沖永良部で実習させていただいて、その考え方は完全に変わり
ました。生活に必要なものは何でもあり、 24 時間のコンビニまでありました。テレビ、インタ
ーネットも本土と同様の条件でした。地理的に交通は多少の不便を感じますが、飛行機
を使えば 2 時間ほどで鹿児島市内にも行くことができ、思っていたほどの不便さではな
いと感じました。
医療に関しては、各病院に CT があり、マンモグラフィまである病院もありました。
他の大学の先生を呼んで講演会や勉強会も行われていて、インターネットを駆使して情
報も入ってくるので、離島医療が遅れているという感じはありませんでした。ただ、今
までの実習と違うと思ったのは、先生方の守備範囲の広さでした。大学や関連病院で見
学させていただいた時は、専門性が高く、他の科に紹介するという光景をよく見ました
が、沖永良部では、循環器・呼吸器・消化器・小児科・整形外科・眼科など、ありとあ
らゆる分野の疾患を診察されているという印象でした。医者が少ない離島では、専門性
の高い医療より、幅広くさまざまな科をみることができる医者が求められているのだな
と感じました。また、患者さんの生活環境や家族背景なども的確に把握されており、さ
まざまな状況を見て治療を考えていくということが、より重要だと思いました。
今回の実習中は本当にたくさんの人にお世話になりました。朝戸医院、大蔵医院、福
山医院、タラソおきのえらぶの先生、看護師、スタッフの方々にはとても優しく指導し
ていただき、大変充実した実習をすることができました。朝戸医院でであった東さんと
いう方には、沖永良部のコーヒーをごちそうになり、とても楽しい時間を過ごさせてい
ただきました。本当にありがとうございました。
沖永良部にはまた行きたいと本当に願っています。今回かなわなかった沖永良部の
海で泳ぐという目標を、次こそは実現したいと思います。
氏
名
榊
智佳
5 月 28 日(月)実習先:朝戸医院(午前・午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 60 歳台、男性、
主訴は関節痛。身体所見:左膝関節の腫脹 (+) 、疼痛 (+) 、発赤 ( - ) 。検査所見:関節液を穿刺したところ、透明で粘性の淡黄
色の液であり、非炎症性と診断。関節の疼痛部に対して鎮痛剤局注の処置をした。症例 2 : 50 歳台、女性、主訴は乳がん検診で
の異常指摘による精査。身体所見:触診で、左右乳房ともに硬いしこり様のものは認めず、異常所見なし。検査所見:マンモグラ
フィーで右の乳頭右上部において嚢胞様のものを認めた。エコーでも同様所見あり。乳腺腺腫と診断し、処置等は行わなかった。
午後も診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 70 歳台、男性、主訴は呼吸困難。介護施設に入所中であり、施設内管理で SpO2
が70%台に低下したため来院。もともと喘息の既往あり。喘息の中等度発作が出現と診断し、介護施設にて対応していたマスク換
気の継続、その後β刺激薬吸入と吸入ステロイドの処置を行った。
5 月 29 日(火)実習先:大蔵医院(午前・午後)
内容:午前中は診療所で英世院長先生の外来患者さんを見学。症例 1 :
70 歳台、男性、主訴は腰痛。以前に脊椎管狭窄症と診断されている。身体所見:かがむと楽になり、間歇跛行がみられる。脊椎
管狭窄によるものと診断し、 L4-L5 周辺の腰背部に鎮痛薬を筋注する処置を行った。症例 2 : 50 歳台、女性、主訴は口内炎。身
体所見:下口唇の口腔内粘膜に 2mm 大のアフタ性口内炎あり。身長 163cm 、体重 46kg 。 BMI 17.3 と痩せがあり、家族関係
によるストレスからの精神的な躁鬱も見られ、栄養不足やストレスからくる口内炎と診断された。ビタミンをよくとること、スト
レスをあまりためないこと、などの生活指導がなされた。午後も同じく外来患者さんを見学。症例 1 : 60 歳台、男性、主訴は粉
瘤からの感染創の疼痛。身体所見:左前胸部に褐色の膿汁を伴った、悪臭の強い深い潰瘍が見られる。創部痛 (+) 。現病歴には
DM があり、創部の治癒を遅らせる原因となっていた。糖の入った軟膏 ( 抗生剤 ) を塗布する処置を行った。
5 月 30 日(水)実習先:大蔵医院(午前・午後)
内容:午前中は診療所で聡副院長先生の外来患者さんを見学。症例 1 : 1
歳、男児 2 人、双生児。主訴は発熱。身体所見: 1 人は 38 ℃台、 1 人は 37 ℃台の発熱があり、どちらも鼻汁少量。検査所見:
38 ℃台の男児はインフルエンザ ( - ) であり、 2 人とも風邪症候群と診断され、非ステロイド抗炎症剤を処方された。症例 2 :
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午後も同じく外来患者さんを見学。症例 1 : 30 歳台、女性、主訴は鼻水、咽頭痛。身体所見:咽頭発赤 (+) 。風邪と診断され、
抗生剤で対処した。症例 2 : 40 歳台、男性、主訴は腰痛。下に落ちたものをとろうとしたところ、急に腰痛が出現。身体所見:
正中~やや左側にかけて局所の腰部痛 ( + ) 。急性腰痛症 ( ぎっくり腰 ) と診断され、疼痛部に局所鎮痛薬を筋注し、非ステロイ
ド抗炎症剤 ( ロキソニン ) の処方をした。
5 月 31 日(木)実習先:寿恵苑・福山医院(午前)、タラソおきのえらぶ ( 午後 )
午前内容:介護老人保健施設で福山先生
のこれまでのご経歴に関するお話と、鹿児島大学医歯学部大学院での研究に関するお話を聞かせていただき、寿恵苑の現況につい
ての講義もしていただいた。その後、施設に入所している慢性難治性関節リウマチの患者さんとファール病の患者さん ( 患者さん
の CT も ) の診察を見学させていただいた。 11 時半頃から、患者さんたちと一緒に足や手を使ってリズムをとったリハビリを行
ったり、言葉の発声を行ったりした。
午後内容:タラソおきのえらぶで、リズム体操やアウフグースを体験させていただいた。リズム体操では、インストラクターの
指導の下、音楽のリズムに合わせて水中で腕や足を中心に、曲げ伸ばし運動等の軽い運動を行った。アウフグースではサウナでミ
ントの香りをかぎながら、身体をリフレッシュさせていただいた。
6 月 1 日(金)実習先:朝戸医院(午前)
内容:通所リハビリテーションの見学。介護士の方と一緒に、通所している患者さ
んを自宅まで迎えに行き、朝戸医院へ着いて要介護度別に大部屋に分かれ、
健康チェック
( 体温・血圧・脈拍測定 ) を行った。その後、要介護者の方と一緒に全身体操を行って、各
自の個別リハの様子を見学させていただきながら、お話を聞かせていただいた。リハビリ症
例 1 : 70 歳台、女性、主訴は両側大腿頸部痛。両腕と両足を同時に使って自転車漕ぎのよ
うな器具で約 20 分間リハビリを行っていた。リハビリ症例 2 : 70 歳台、男性、主訴は両
側下肢の軽度脱力感、ふらつき。両側の大腿部・下腿部を電気で温めることにより、歩行の
調子が良くなるということで、約 20 分間電気療法を行っていた。
遠隔医療実習記録 : スケジュールの都合上できませんでした。
感想
私は離島で生活するのも、ましてや離島医療実習を体験することも初めてだったので、離島がどのようなところかをまず知りた
いと思い、初日から島のあらゆる地域をたくさん回らせていただきました。 1 週間といった短い期間ではありましたが、島の名所
や特産物といった島の方たちが大切にしているものを見て、沖永良部の自然や沖永良部に住む島の方たちの生き様が少し垣間見え
た気がします。実際に、島の方のコーヒー農園に足を運んで、一緒にコーヒー焙煎を行う機会もあり、島の人とゆっくりお話でき
たことは大変貴重な時間でした。
沖永良部の医療実習を通して、私が離島医療に対して抱いていた印象と最も大きく違った点は、整形外科の診療所があったり産
婦人科の診療所があったり、また外科的処置をある程度行える徳洲会病院があったりと、意外にも救急疾患に対してすぐに対処で
きる医療が進んでいたことでした。また、時代の変移もあり、インターネットが盛んであるため、データのやり取りも容易に行え
るようになったことは離島医療にとって大きいことであると感じたものです。
朝戸先生の診療所では、鹿児島大学病院から眼科の先生を招き入れて、白内障手術や黄斑変性症手術など眼科的疾患に対する手
術を行う日を設けており、医療分野の中で離島に足りないところは先生の思考で補っていくといった工夫を凝らした診療を見るこ
とができました。また、診療所にはマンモグラフィーも備わっており、外科医である朝戸先生の、別の専門分野に対しても向上心
あふれる姿にはとても感動しました。実習以外にも、先生の自家用車を貸していただき、学生 3 人で沖永良部の至るところまで回
る機会を与えていただいたので、大いに沖永良部を満喫することができました。大蔵先生の診療では、毎回欠かさず身長・体重を
測定しており、医学的技術を使わずに患者の身体的な変化にまず気づくといった考えは、性能優れた医療機器に囲まれた大学で実
習をしてきた私にとっては、薄れてきていたことに思え、大切なことを忘れずにいさせてもらったように思います。 30 年も、同
じ地域かつ離島で、患者さんたちと一緒に年を重ねて診療される大蔵英世先生の診察を見て、全人的な医療の一面を感じました。
また、大蔵聡先生は身体障害児童の教育場所を作る先駆者になられており、「離島では身体障害児童の人数は少ないけれど、たと
えその生徒が 2 人しかいなくとも、普通教育ではなく特別学級がその子達には必要な場所なのですよ」ということをお話しくださ
った先生に、自分はここまで患者さんのことを考えられる医師になれるかどうか、いろいろと考えさせられ、先生の患者さんに向
ける思いやり診療を感じました。医療以外の分野でも「この子のために」といった地域の方々に対する、離島だからこその根強い
サポート力を実感させていただきました。また聡先生は町の組長をされており、医師として診療する時間以外の時間の方が実際に
は多いそうで、ソーシャルワーカーなどの医師と患者の仲介に入る分野の職業が備わっていないために医師に向けられる仕事が増
えることも、島の特徴であるように思い、それは医師の負担が増える短所である一方で、地域の方々により近いまさに地域包括的
な医療が行える長所でもあると感じました。福山先生からは 78 歳で疥癬の確定診断を得るために鹿児島大学医学部の大学院に勉
強し、学位をいただくという貴重なお話をしていただき、大変刺激を受けました。寿恵苑に入所している患者さん、そして従業員
にもヒゼンダニによる疥癬が蔓延してしまい、先生ご自身大きなショックを受けたことから大学院での研究を決意した、という先
生のまっすぐな医学に対する追究力が、ものすごく胸に響きました。また、私たち学生が知る
こともない、戦後間もないころの先生の医学生時代のお話は、今となっては想像もつかないよ
うなお話で、大変衝撃的ありました。そのような時代をともに生きてきた、施設にいる今の高
齢患者さんたちにとっては、先生が行う診療が身体的のみならず精神的にも理解しあえるかけ
がえのない空間であるとも感じ得ました。
最後にはなりましたが、学生を快く笑顔で受け入れてくださり、丁寧にご指導いただきまし
た、朝戸末男先生、大蔵英世先生、大蔵聡先生、福山茂雄先生に心から感謝申し上げます。
179
氏
名
園田
佳奈子
■ 5 月 28 日(月)実習先:朝戸医院
内容: 8:30~ 朝礼 8:45~ 白内障手術後の回診。 9:00~12:30 /14:00~15:30 外来見学。
1 日を通して乳癌検診後の再検査の方が多い印象でした。マンモグラフィー、エコー検査ののち乳癌と診断された方はいらっしゃ
いませんでした。また高血圧、糖尿病のコントロール中の方で薬をもらいに来ている方が多かったです。
外来症例 1 : 16 歳男性
主訴:腹痛、嘔吐
問診と腹部視診・聴診・打診・触診の結果、感染性腸炎や虫垂炎は否定的であり整腸剤処方で経過観察とな
りました。本人の話よりバレーボール部所属で大会前ということもあり練習のときには大量の冷水を飲んでいたことや、大会への
緊張なども影響したのではないかと考えました。
症例 2 :女性(年齢不明)
主訴:左眼のごろごろがよくならない。睫毛が角膜に刺さっていたため抜いて終了。
症例 3 :男性(年齢不明)
主訴:喘息発作
発作に対して吸入ステロイド吸入。
■ 5 月 29 日(火)実習先:大蔵医院
内容: 8:00~ オリエンテーション
8:30~12:30/14:00~15:00外来見学 15:00~17:00 グループホーム、神社で合格祈願、大蔵先生
のご自宅訪問
症例 1 :男性 ( 年齢不明 )
主訴:肥大型心筋症フォロー。聴診、レントゲン、エコーにて評価し今後もフォロー継続。
症例 2 :女性 ( 年齢不明 )
主訴:虚血性腸炎?
入院中の方を徳洲会病院へコンサルト。栄養管理目的に徳州会病院へ転院。
症例 3 :男性 ( 年齢不明 )
主訴:胸部と腹部の皮膚潰瘍(糖尿病患者)
一部を切除し抗生剤を塗布。褥瘡に似たものを感じたのでデブリードマンと洗浄を
してみてはどうだろうと思いました。
外来見学の後は大蔵先生にグループホームまで案内していただきました。介護を受ける身になると不安も大きくなると思いますが、
このようなきれいな施設で暮らせれば気持ちも明るくなるだろうなと思いました。スタッフと入居者の皆さんの笑顔が印象的でし
た。
■ 5 月 30 日(水)実習先:大蔵医院
内容:8:00~12:15/14:00~15:30外来見学
症例1:女性 ( 年齢不明 )
主訴:くも膜下出血後、喘息のフォロー。
爪の色素沈着から Addison 病も考えコルチゾール測定した
が正常範囲内。
症例2:女性 ( 年齢不明 )
主訴:足痛(大腿骨頸部骨折の術後)
エコーと聴診から大動脈弁狭窄と僧帽弁閉鎖不全があると診断
し、フォローの方針に。
症例3:男性(年齢不明)
主訴:足のむくみ
低栄養、低 LDH より本人、妻へ栄養指導。
■ 5 月 31 日(木)実習先:介護老人保健施設寿恵苑、福山医院(午前)タラソおきのえらぶ(午後)
内容: 8:30~ 朝礼
8:45~10:30 オリエンテーション
14:00 ~14:30リズム運動
14:40~14:50 サウナ
10:30~12:00 施設見学
14:50~16:00 タラソテラピー(ウォーキング、水泳)
入所の原因となった疾患で一番多かったのはアルツハイマー病だと伺い
ました。印象に残った疾患は分娩後子癇や正常圧水頭症でした。また福
山先生の生い立ちから現在に至るまでのお話を聞くことができました。
先生が開業された頃は自分で発電してレントゲンを撮っていたと伺って
驚きました。現役として現在も診療を行っていることに感動し自分の祖
父たちにも伝えて励ましにしてもらいたいと思いました。
タラソおきのえらぶでは海水中での運動を初めて経験しました。ただ
泳ぐのも気持ち良かったのですが流れのある場所やジェットが出ている場所、水温の高い場所など色々な設備があり、心地よい時
間を過ごすことができました。サウナではアロマとサウナを組み合わせており、素敵な試みだと感じました。
■ 6 月 1 日(金)
実習先:朝戸医院
内容: 8:30~ デイケアの送迎
9:30~10:00 体温、血圧、体重測定10:00~11:00 ラジオ体操、棒体操などの運動
11:00~12:00 機
械を使ったトレーニングやリハビリ
各々送迎車に乗り分けてデイケアの方をお迎えに行きました。朝戸医院のデイケアは大きく「介護」と「介護予防」に分かれてお
り、いかに「介護」に移らせないようにするかが大事だと伺いました。
介護予防のほうではバイタル確認の後、一緒に運動をしたり、リハビリ
の手伝いやお話を聞いて過ごしました。介護のほうでは入浴後の手伝い
やお話を聞いて過ごしました。患者さん同士も仲が良く、明るい雰囲気
で素敵だと思いました。デイケアのもつ意味はこういった他の人との触
れ合いという意味でも大事だと感じました。
180
皆さん大変きさくな方たちで沢山お話をしていただけて嬉しかったです。
遠隔医療実習記録
時間をみつけることができませんでした。申し訳ありません。
しかし 1 回大学で練習することができたので、こういった医療の形もあるのだと知ることができて良かったです。離島によっては
こういうシステムの医療が必要不可欠だと思います。
感想
初めての離島で楽しみな半面、どういった場所なのだろうと多少の不安も抱きながら出発しました。大変失礼ではあるのですが
医療に関しても勝手なイメージが先行しており、実際は私の予想をこえた医療が展開されていました。また町には必要な物は何で
も揃っており、生活しやすそうな印象を受けました。
朝戸医院ではマンモグラフィーによる乳癌の検査が行われており、驚きました。私は乳腺外科志望なので島の皆さんも遠くまで
赴くことなく、検査を受けることができるのだと知って嬉しくなりまし
た。また先生に沖永良部で珈琲を栽培している方をご紹介していただき、
焙煎という大変貴重な体験をさせていただきました。もともと珈琲が大
好きな私ですが自分で焙煎までしたことはなかったのでとても嬉しかっ
たです。自分で焙煎し、ミルで挽いて淹れる珈琲は格別な味がしました。
もともとは闘病中のご趣味で始められたそうですが、やはりそういう生
きがいがあるということは人が前を向いて生きていくために必要なこと
なのだなと思いました。活き活きとされていて素敵でした。
朝戸先生のご自宅にもお招きいただきました。朝戸先生、スタッフの皆さま大変お世話になりました。ありがとうございました。
大蔵医院では英世先生、聡先生それぞれの外来につかせていただきました。朝戸先生のところでも感じたことですがやはり患者
さんとの信頼関係、つながりが深いなぁと感じました。また外来でのやり取りを聞いていて、「ああこういうコミュニケーション
が自分も将来できたらいいなぁ」と何度も思いました。近くの徳洲会まで紹介のために直接赴くこともあり、地域で連携して医療
が行われていることを感じました。先生方との夜のお食事のときには医療関係以外のお話も沢山できて楽しかったです。先生から
島バナナを房でいただいたので市内に帰った後、皆で山分けしていただきました。私にとって沖永良部の思い出の味といえば島バ
ナナとモズクです。
大蔵英世先生、聡先生、スタッフの皆さ
ま大変ありがとうございました。
寿恵苑、福山医院では半日という短い時
間ではありましたが前々からお話にはうか
がっていた福山先生のお話を実際に聞くこ
とができて嬉しかったです。興味があるこ
とに挑戦し続けることの大事さを先生から
学びました。また自分で限界を決めてはい
けないなと思いました。 6 年生のこれからは大変なことや悩むことも多いと思いますが先生のお話を思い出して頑張ろうと思いま
す。
福山先生、スタッフの皆さま大変ありがとうございました。
民宿の源さんご家族にも大変お世話になりました。ありがとうございました。
沖永良部は自然が美しく、食事とお酒が美味しい島でした。
そして、人と人との距離が近く、素敵な温かいコミュニティでした。よそ者の私たちにも初対面であっ
ても、島の皆さんが優しくしてくださったので本当に感謝しています。皆さんに「頑張れ」と励ましてい
ただき、これからも頑張ろうとやる気がでました。沢山の素敵な出会いをありがとうございました。また
いつか必ず沖永良部に足を運びたいと思います。
最後にはなりましたがこのきっかけを作ってくださった離島医療講座の先生方に感謝いたします。あり
がとうございました。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
久保
賢太郎
6 月 4 日(月)
実習先:朝戸医院
内容:外来患者さんへの診察見学
症例 1 :女性、年齢不明、主訴は転倒後の手首の痛み、高齢者の転倒後の骨折を疑いレントゲン撮影を行った。レントゲンから骨
に異常はなく、手首の靱帯の損傷と判断し、痛み止めと湿布の処方を行った。
考察:高齢者の骨折の好発部位として、腰椎圧迫骨折と大腿骨頸部骨折とコーレス骨折とスミス骨折が挙げられ、今回の症例では、
転倒後の手首の痛みから、コーレス骨折とスミス骨折の鑑別となった。問診において、転倒時の手首のつきかたなどを聞き、そこ
で掌をついたということからコーレス骨折が疑われたが、レントゲンで骨に異常がないことが確認されたので、靱帯損傷という診
181
断となった。
6 月 5 日(火)
実習先:大蔵医院
内容:外来患者さんへの診察見学
症例 2 :中年男性、主訴は足の親指の付け根の痛み、痛風の既往のある患者さんだったので、コルヒチンの注射を行った。
考察:痛風の患者さんは初めて見ることができた。問診において昨晩の飲酒について先生が聞かれたところ、そんなに飲んでいな
いということだったが、歩けないほど痛みが進行したので来院されたということだった。この症例は典型的な痛風の症例で、大学
では見ることのできなかった症例だったので、ここに記した。
6 月 6 日(水)
実習先:大蔵医院
内容:外来患者さんへの診察見学
症例 3 :中高年男性、既往歴に糖尿病、主訴は胸に粉瘤を形成し、化膿し、内側に破裂してしまうまで放置されていたが、病院職
員さんが様子を見に行ったところで危険と判断し、病院に連れてこられた。デブリードマンを試行し、通院を堅く約束されていた。
考察:今回の症例では、アテロームの怖さを知るとともに、通院することの難しさを知る機会となった。この患者さんはお一人で
暮らしており、家族が近くにいないとお聞きした。また元々性格的にも、通院が難しそうなお方だということだった。今回の場合
は沖永良部島ということで、病院の職員さんが、近所に住んでいたこともあって様子を定期的に見に行っていらっしゃるので処置
する事ができたと思う。病気を学ぶことと共に、人間関係の構築が臨床の場ではとても大事なことなんだなと再認識させられた。
6 月 7 日(木)
実習先:寿恵苑(午前)、タラソおきのえらぶ(午後)
内容(寿恵苑):これまでの福山先生が経験してきた特徴的な症例、沖永良部島での結核や寄生虫の治療と研究、寿恵苑の入所者
の原因疾患のランキング、などを先生が丁寧にわかりやすく説明してくださった。
内容(タラソおきのえらぶ):タラソおきのえらぶで、約 2 時間タラソテラピー(海洋療法)を実際に体験した。現場で実際にタ
ラソおきのえらぶに通ってらっしゃる方に話を聞き、タラソテラピーをおこなうようになってからどのような変化があったのかな
どを聞くことができた。
6 月 8 日(金)
実習先:朝戸医院(午前)
内容:デイケアの見学をおこなった。朝からデイケアに通っておられる方のご自宅に迎えに行くところから同伴させてもらった。
朝戸医院に着いてからは、ストレッチ、準備体操などを一緒におこない、最後にマシンを使った運動を見学させてもらった。実際
に僕たちもマシンを体験させて頂いた。患者さんに話を聞いていると、デイケアにくることで体を動かす機会ができることはもち
ろん、友達に会うことが一番嬉しいとおっしゃっていたことが、とても印象的だった。
遠隔医療実習記録
今回遠隔医療の実習ツールとして紹介された、 ITKarte は日頃の実習において合間の時間を見つけることができなかったので使用
することができなかった。また機会があれば使って、その有効性や利便性を確認してみたいと思う。
感想
大蔵医院での 2 日間の実習はでもっとも印象的だったことは、先生の人間的
大蔵先生との親睦会
な優しさが患者さんにとって本当に大きな支えになっていると感じたところに
あります。 90 歳を超えるおばあちゃんが、「先生から「大丈夫」といわれる
為に病院に来ました」とおっしゃっておられ、実際に先生とお話しされている
姿は本当に楽しそうでした。離島だからこその一面を垣間見た瞬間でもありま
した。さらに大蔵先生とは、医学的なお話はもちろんの事、経済、歴史、先生
の医師としての経験談など、本当に多くのことを教えて頂きました。さらに、
夜にはわざわざ親睦会も開いてもらい、美味しいお酒と料理に囲まれて楽しい
時間を過ごすことができました。大蔵先生と看護師さん、さらにお昼ご飯を作ってくださったスタッフの皆さん、 2 日間本当にあ
りがとうございました。また絶対に来たいと思います。
朝戸先生には実習を受け入れてくださった事の他に、実習にあたり、車を無料で貸し出してくださった事や、宿泊先を先生の知り
合いの方に頼んでくださった事、沖永良部島の観光スポットや美味しいお店を
教えてくださった事、さらに最後にはお土産までいただいたりと本当に至れり
尽くせりの事をしてくださり、感謝の言葉でいっぱいです。離島実習の間で入
院施設の見学は朝戸病院でしかすることができなかったので、本当に貴重な体
験となりました。さらにデイケアの見学もポリクリやクリクラでは味わえない
体験となり、このような施設があることは頭で理解していても、身をもって感
じる機会はなかったので短い間でした有意義な時間を過ごすことができました。
朝戸先生をはじめ朝戸医院のスタッフの皆さん本当にありがとうございました。
朝戸先生との 1 枚
国家試験合格の知らせと共にまた沖永良部に行きたいと思っています。 1 週間
お世話になりました。
182
氏
名
針持
想
6月4日 ( 月 )
実習先:朝戸医院(8: 00 ~ 15 : 00)
内容:朝食・回診・朝礼をした後、外来診察を見学した。症例 1 :女性、主訴は手首の痛み。前腕~手掌部 X 線で骨折線を認め
なかったこと、手関節部の痛みの部位などから、捻挫と診断し鎮痛剤を処方した。転倒した際に手で支えるとColles骨折になりや
すいことを学んだ。症例 2 :女性、主訴は乳癌の健診。触診・マンモグラフィ検査・胸部エコーなどから異常なしと診断された。
マンモグラフィ検査を実際に見るのは初めてだったので、貴重な経験となった。症例 3 :男性、主訴は膝の痛み。膝関節腔に水が
溜まっていることを確認し、関節腔穿刺で水を抜いた後、ヒアルロン酸を注入した。簡便な検査の仕方を知ることができた。
6月5日 ( 火 )
実習先:大蔵医院(8: 00 ~ 15 : 00)
内容:医院の特色を説明していただいた後、副院長の外来診察を見学した。症例 1 :男性、主訴は健診。バリウム造影で胃の検
査をした。スキルス胃癌・GERDはバリウム造影が分かりやすいということを学んだ。症例 2 :男性、主訴は心臓の定期検査。心
エコー検査で特に問題は認めなかった。実際にエコーを当てさせてもらい、エコーの当て方と診るべきポイントを学んだ。症例
3 :女性、主訴は腰の痛み。鎮痛剤を腰部 2 か所に皮下注した。先生の指導の下注射させ
ていただき、刺し方や血管に入ってないか確かめる手技などを学んだ。
6月6日 ( 水 )
実習先:大蔵医院(8: 00 ~ 15 : 00)
内容:院長の外来診察を見学した。症例 1 :男性、主訴は胸部腫潰瘍。左胸部
に長径5cm、短径2cmほどの潰瘍があり、デブリドマンを行ってから縫合した。
もともとは粉瘤があったらしく、それを取ったら今回のようになってしまったらしい。実
際のデブリドマンを初めて見て勉強になった。症例 2 :主訴は脳梗塞のフォロー。頸動脈
エコーを行うと狭窄が認められた。他院を紹介しようとしたが、このままでいいと言われ
たため、抗凝固薬を処方した。頭部 CT の見方など参考になった。※大蔵親子と夜の実習→
6月7日 ( 木 )
実習先:介護老人保健施設寿恵苑・福山医院(8: 15 ~ 12 : 30) タラソおきのえらぶ (13 : 30 ~ 16 : 00)
内容:草むしりを行ったあと、福山先生と対談。自己紹介を済ませてから、福山先生の経歴や、ご自身の体験に基づいた寄生
虫・結核などの話を聞かせていただいた。
その後部屋を移動し、介護老人保健施設寿恵苑・福山医院の現状などを教えてもらった。
午後からはタラソおきのえらぶに行き、タラソテラピー ( 海洋療法 ) を体験した。海水を
用いた温水プールになっていて、サウナや水風呂・薬草風呂まで設置してあった。老若男女
問わず多くの方が利用しており、いろいろ声をかけていただいた。
←※タラソおきのえらぶで仲良くなった方
6月8日 ( 金 )
実習先:朝戸医院(8: 00 ~ 12 : 00)
内容:デイケアの見学をさせていただいた。それぞれ車に乗り込み担当の方を迎えに行き、
医院に戻ってきてかバイタル ( 血圧、体温 ) を測る手伝いをした。全員そろってからは、ラ
ジオ体操・ストレッチメニューを行った。その後リハビリ室へ移動し、様々な器具を使った
トレーニングを実際に体験したり、見学させてもらったりした。最後に介護度が重い方々と
10 分ほどお話をして帰ることとなった。お別れの際には皆さんが泣き出してしまい、別れ
が惜しまれる形になった。
※朝戸先生との別れの写真↑
※沖永良部のノムさん
感想
鹿児島の離島は種子島に数回行った程度で、しかも医療の様子を知るのは初めてなのでと
ても楽しみにして実習に臨みました。土曜日に船に乗って出発しましたが、船旅も初めてと
いうことでワクワクしていました。 2 等室の一人分の狭さを思い知らされ、食堂が夜 7 時に
は閉まることに嘆き、甲板に出て波の揺れや風の強さに酔いが回りといった感じで過ごして
いました。男 7 人で向かったので、みんなで酒盛りをしながら楽しく過ごせたのもいい思い
出です。そうして約 18 時間の船旅を経て、目的地の沖永良部にたどり着きました。宿泊先
に荷物を下ろし朝戸先生にあいさつに行くと、車を貸していただけることになり、早速沖永
良部観光へ。まずは海でしょということで、みんなで水着に着替えて入るも冷たすぎて 5 分
で陸へ上がる事態に。他にも展望台 ( 場所が分かりにくかった ) 、田皆岬 ( あまりの風の強さに飛んで行ける気がした ) 、ウミガ
メビューポイント ( ウミガメの多さに感動 ) など回り、初日を満喫しました。そしていよいよ実習開始。まず驚いたのは、それぞ
れの病院の充実した設備です。普通のレントゲンはもちろん CT やオペ室も完備されており、素晴らしい施設だと思いました。ま
た、自分の専門外の患者さんでも受け入れていることに感動しました。島の方々が、ここに来ればどんな症状でもどうにかしても
らえると頼っていることが、会話の中から感じられました。ここまでの信頼を得るために大変な努力をされてきたのだと思い、と
ても素晴らしいことだと思いました。
183
朝戸先生・大蔵先生・福山先生それぞれ違った魅力があり、上記のように毎日が充実した実習となりました。実習外でも朝戸先
生からお酒をいただいたり、大蔵先生からはゴルフに連れて行ってもらったり ( ゴルフは
初体験だったので、緊張した ) 、福山先生にランチに連れて行ってもらった時に、先生の
食べっぷりに驚嘆したりと大変お世話になり、楽しませてもらいました。宿泊先の方とも
仲良くなり、一緒にバレーを応援しながらお酒を酌み交わし、奥さんのおいしい手料理に
舌鼓を打ちながら様々な話を聞かせていただきました。 1 週間の実習を通して沖永良部の
方々の温かさに触れることができ、また来たいと心から思いました。実習でお世話になっ
た方々本当にありがとうございました。
※初ゴルフ
氏
名
山根
治野
6 月 4 日(月)
実習先:朝戸医院
内容:外来患者の見学
症例 1 ) 10 代男性、主訴は 5 日前にガラスを踏んで足裏が痛むとのこと。視診では足裏に発赤、小さな血腫を認める。処置とし
ては局所麻酔を行ない、病巣を切開した。ガラス片は見つからなかったので後日痛みがあれば再診となった。
症例 2 ) 50 代男性、主訴は右膝痛。視診では右膝が腫脹しており、触診では関節水腫が見られる。治療としては、関節腔から貯
留している液体を排液し、ヒアルロン酸と少量ステロイドを注入した。
6 月 5 日(火)
実習先:大蔵医院
内容:外来患者の見学、大蔵院長が運営されている介護施設の見学
症例 1 ) 70 歳男性、主訴は胸部潰瘍。既往歴に糖尿病がある。視診では乳頭部下に 10cm ×4cm大の胸部潰瘍を認めた。この患
者さんは過去に粉瘤腫の治療歴が何度かあり、今回は粉瘤腫の破裂後の潰瘍形成と診断された。治療としては消毒、局所麻酔の後、
粉瘤腫の上皮を形成している部分を切除し、創面を縫合した
6 月 6 日(水)
実習先:大蔵医院
内容:外来患者の見学、山岳実習
6 月 7 日(木)
実習先:寿恵苑(午前)、タラソ沖永良部(午後)
内容:寿恵苑では、草むしりをした後に福山理事長による施設の説明、及び講義。タラソ沖永良部では施設の説明を受けた後に、
実際にタラソテラピーを体験。
6 月 8 日(金)
実習先:朝戸医院
内容:朝戸医院のデイケアサービスを見学。朝礼後、デイケアサービスを受ける方たちを迎えに行き、介護度によりグループに分
かれる。要支援 1 のグループのデイケアサービスを見学した。ラジオ体操を行い、棒を使った簡単なストレッチ、歩行訓練、トレ
ーニングマシンを使った運動に参加。その後、要介護度 1 以上のグループのデイケアに参加。
【感想】
今回の沖永良部での実習は、離島の医療とはどのようなものかを体験できた点、沖永良部という島の魅力を体験できた点で、と
ても有意義なものであった。
まずは朝戸医院での実習だが、ここでは朝戸先生の守備範囲の広さに驚いた。朝戸先生はもともと外科医なのだが、内科の範囲
はもちろんのこと、膝痛や肩痛が訴えの患者さんに対して整形外科的なアプローチで対処したり、耳痛を訴える患者さんに対して
耳鼻科的診察を行ったりしておられた。朝戸先生曰く、地域医療をするにあたっては広い範囲を知っておくことは不可欠であって、
特に整形外科の範囲は患者さんが多いのでいろいろ知っておかないといけないらしい。また、朝戸医院では外来診療だけではなく、
入院やデイケアサービスも行っている。ここにその地域の医療を一手に引き受けるという、朝戸先生の意気込みが感じられた。宿
泊先の方が朝戸先生と飲みに行くことがあるそうなのだが、朝戸先生は飲みに行っても次の日や呼び出しに備えて、絶対コップ 1
杯しかお酒を飲まないと聞いた。そのエピソードを聞いて本当にプロ意識が高い先生だと感じた。患者さんとお話をする機会があ
ったが、そこでも朝戸先生の一言で本当に勇気づけられるし、朝戸先生と話をするだけで安心すると言っておられ、朝戸先生がど
れだけこの地域(和泊)に貢献されているのかが実感できた。
大蔵医院の実習では、大蔵院長の守備範囲が広いことはもちろん、大蔵院長が地域の方々に根付いた医療を行っていたことが非
常に印象に残っている。院長の外来を見ていると雑談も多いが、患者さんがみんなニコニコした笑顔で帰っていく。待合で患者さ
んとお話する機会があったが、「大蔵先生が大丈夫といえば安心」とおっしゃっていて、それが大蔵院長のこの地域(知名町)で
どのような存在なのかを示す印象的な一言だった。大蔵院長も、「僕は身体のことについても相談されるけど、息子の進学の相談
や、結婚の話とか、いろいろ相談されるんですよ。だからこの地域の諸事情はだいたい頭に入ってるんですよ」とおっしゃってい
た。確かに外来を見学していてもそういった患者さんの背景をよくわかっていないとできないようなアドバイスをされていると感
じることが多々あった。また、大蔵院長も朝戸先生と同様に外来診療だけでなく入院も、介護施設も運営されているが、そこに見
学に行った際には、入所されている方・スタッフの方が大蔵院長に感謝していることを実感した。水曜日の医院での実習後には副
院長との山岳実習があり、夜には食事をしながら院長と副院長のためになるお話や恋愛観、ここでは書けないようなお話など、
184
様々な話を聞くことができ、先生方の考え方や生き方など、医療以外の面でも非常に勉強になった。
寿恵苑での実習では、福山先生とお話をさせていただくことができた。福山先生の経歴や、日本の医学・医療の歩みや施設の説
明をしていただいたのだが、最も印象に残っているのが福山先生の溢れんばかりのバイタリティーである。福山先生は 79 歳で鹿
児島大学の大学院で研究を始められたのだが、実際にお会いしてそれがなぜ可能なのかがよく分かった。福山先生は探究心が旺盛
で私たち学生のこともよく知ろうとして下さるし、また、パソコンのワードやパワーポイントも使いこなしておられて、今年 86
歳になるとは思えないくらいのパワーや若さを感じた。昼食ではカルボナーラのパスタとかなり大きめのアイスクリームをぺろり
と完食され、年を重ねてもこのようなバイタリティーを持っていれば福山先生のように何でもできるんだなあと感じた。
一方、実習期間を通して、沖永良部の方々の優しさにたくさん触れることができた。朝戸先生の紹介で行った東政次さんの家で
は東さんが栽培されているコーヒー豆から作ったコーヒーを何杯もご馳走していただいた。実習先では「鹿児島大学の学生で医者
の卵です」と先生から紹介されると、皆さんが「がんばれよ」「来てくれてありがとう」など声をかけていただいたし、タラソ沖
永良部では地元の方に「鹿大の実習生?」と声をかけてもらい、沖永良部のことを教えていただいた。最終日の朝戸医院でのデイ
ケアでは、お別れをするときに半分くらいの方が泣いて別れを惜しんで下さった。そして皆さん共通して「また沖永良部に来て
ね」と言ってくださった。本当に歓迎されているのだなあと感じたし、本当にいいところだと実感し、ぜひまた行きたいと思った。
島の観光に関しても今回は、朝戸先生に車を貸していただいたため交通の便に不自由することなく沖永良部の魅力を堪能するこ
とができた。また、食事に関しても朝戸先生にはおいしい朝・昼食+お土産も用意していただき、大蔵先生には昼食と食べきれな
いほどのディナー、福山先生にもおいしい昼食を食べさせて頂いた。そして宿泊先の方には夜に島の料理とお酒をご馳走してもら
い、一週間の実習で体重が 3kg 増えた。
各医院の先生やスタッフの皆さん、沖永良部の方々のご協力のもと、地域医療の醍醐味や、沖永良部の魅力、島の方々の優し
さに触れるなど、普段ではできないような経験ができ本当に濃厚で充実した一週間が送れた。ここで学んだことを忘れずに勉強し
ていきたい。本当にどうもありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
河野
悠
6 月 24 日(日)
沖永良部に上陸。ワンジョビーチで泳いだ後、西郷さんの記念碑を見学した。
6 月 25 日(月)
実習先:朝戸医院(午前、午後)
内
容:午前、午後ともに医院にて外来患者さんを見学。整形外科的な疾患が多いという印象を持った。
また高齢の患者さんが多く、生活習慣病も多かった。
症例1:高齢の男性、主訴は右肩の痛み。痛みの場所は特定でき、単純レントゲン撮影にて、異所性の石灰
化を認め石灰性腱炎と診断された。ひとまず保存療法で様子をみることとなり、ロキソニンを処方。
症例2:高齢の女性( 80 歳)、主訴は目の痛み。以前にも同じ症状があり、睫毛内反症として手術を受け
た既往があった。逆まつげであり、下のまつげの除去を行った。
実習後、患者さんの一人でコーヒー農園を経営されている東さん宅でコーヒーをご馳走になった。コーヒ
ーは非常においしく、また貴重な昔のお話を聞くことができた。
さらに自殺の名所として名高いフーチャ(潮吹き洞窟)も訪れ、沖永良部の観光を満喫した。海亀もみる
ことができた。
6 月 26 日(火)
実習先:大蔵医院(午前、午後)、徳州会病院(夜)
内容:午前、午後ともに医院にて外来患者さんを見学。夜は徳洲会病院にてCT画像の読影会。沖縄中部
国際病院から急性腹症の専門家が来られていた。
症例1:高齢の男性、主訴は腹痛。エコーでは特に異常は認められなかったが、CTにて肝臓に腫瘍を認め、肝細胞癌を疑いとなっ
た。 AFP 、 PIVKA- Ⅱなど腫瘍マーカーの測定をオーダー。また鹿児島市内の病院への紹介を行った。
症例2:中年女性( 40 歳)、主訴は体重減少、易疲労感。甲状腺にびまん性でやわらかい腫脹を認め、またFT4上昇 TSH 低下で
あり、無痛性甲状腺炎かバセドー病かを鑑別するために TSH 受容体抗体の測定をオーダーした。
6 月 27 日(水)
実習先:大蔵医院(午前、午後)
内
容:午前、午後ともに医院にて外来患者さんを見学。
症例1:高齢の男性( 90 歳)、主訴は歩行困難。間欠性跛行をみとめ、休息時にしゃがむこと、
およびXp像で腰部脊柱管狭窄を認め、脊柱管狭窄症と診断された。高齢のため手術の適応は
乏しく、保存的治療を行うことになった。
症例2:高齢男性( 90 歳)、主訴は幻覚(幻視)。パーキンソン病として治療を行っており、
長期 L-dopa 投与の副作用と考え、 L-dopa の減量を指示した。
6 月 28 日(木)
実習先:寿恵苑(午前)、タラソおきのえらぶ(午後)
185
内
容:午前は寿恵苑にて職員の健康診断(胃の二重造影)を見学。健常者の胃の解剖について、および疥癬について先生が研究
をされたお話を聞かせて頂いた。午後は「タラソおきのえらぶ」にてタラソテラピーを体験した。タラソテラピーでは、決められ
たコースでマッサージや運動を行い、さらにインストラクターに従って海水中で体操をして、心地よい疲労を得ることができた。
実習後は、昇竜洞(巨大な鍾乳洞)を見学した。 1000 円必要だったが、非常に良かった。
6 月 29 日(金)
実習先:朝戸医院(午前)
内容:午前は通所リハを見学。家の方向や人数を調節し、 3 台ほどのバンに分かれて患者さんを迎えに行った。医院では、比較的
自立度の高い人達といっしょに、まずバイタル(血圧、脈拍、体温を)をチェック、記載し、それから自己紹介や会話を楽しんだ
後、筋力や関節の可動性のための体操を一緒にした。次に各自の状態に合わせ、マシントレーニングや低周波、温熱療法などを一
緒に行った。
(遠隔医療実習記録は特に用いなかった。)
感想
まずは、今回の離島実習を支えてくださった多くの先生方、職員の
方々、患者さん達にお礼が言いたい。離島が多いという鹿児島県の特殊
な事情もあるが、自然豊かな南の島でプライマリ・ケアを学ぶことがで
きて、非常によかった。特に沖永良部は宿泊施設も非常にきれいで、他
の実習先よりも恵まれていたと思う。
離島で開業されている先生方からは、離島の実情だけでなく、これか
朝戸先生に
ら医師として生きていく上でどうするべきか、また研究についての考
(大蔵先生にご馳走になった。
え方など、様々な貴重なお話を聞くことができた。
箱の中には朝食用のお持ち帰り。) 頂いた焼酎
この離島実習を少しでも糧とし、これから医師として、ちゃんと社
会に貢献できるよう頑張りたい。
氏
名
寺島
常郎
◎ 6 月 25 日 ( 月 ) :朝戸医院
< 内容 > 午前、病棟の回診を見学した後、午前午後ともに外来診察を見学。
症例 1 : 50-60 歳代、男性。
2.3 日前にノコギリで第二中手関節を切り、動かしにくくなったと来院した。
視診、触診では損傷部位に腫脹、熱感があるが、指の伸展は可能であり、傷口も浅かった。
以上より、損傷部位に炎症は見られるが、伸筋腱断裂には至っていない判断して抗生剤と鎮痛剤を処方した。
症例 2 : 60 歳代、男性
今朝、右肩痛で目覚め、右腕全体に痺れがあり、右肩部の痛みがひかないため来院した。
前日は普段通り生活し、飲酒した後就寝した。特に思い当たる事もない。
右腕に外見上の異常なく、右肩に局所性の強い圧痛を認めた。疼痛部位の X 線写真にて圧痛部位に一致する石灰化を認めた。経
過と画像所見から石灰性腱炎と判断し、局所ステロイド注入と消炎鎮痛剤の処方とした。
症例 3 : 80 歳代、女性
最近になって背中が腫れて痛みが強くなってきたため来院。
上背部皮下に熱感、圧痛を伴う、のう胞状の腫脹が見られた。
視診所見からアテロームと判断し、切開排膿した。
[ この日の感想 ] 朝戸医院での実習が終わった後に、朝戸先生の外来に来られた患者さんの行っている、沖永良部珈琲研究所を
訪ね、患者さん自身の病気のお話や、珈琲のお話、島のお話をさせていただきとても楽しい時間を過ごす事ができました。
◎ 6 月 26 日 ( 火 ) :大蔵医院
< 内容 > 午前:外来診察、大腸内視鏡、注腸造影、胃カメラを見学。
午後:外来見学、院長先生とお話、徳洲会病院の CT 読影勉強会に参加。
症例 1 : 70-80 歳代、男性
運動、階段昇降時の胸痛を自覚したため来院。
バイタル異常なく、安静時労作時ともに心電図で異常無し。
今回は何事も無く外来終了。今後似た様な状態が続くなら経過を見ていく。
症例 2 : 87 歳、男性。
血圧が高いことを主訴に来院。
血圧 190/85 で高血圧であったため、降圧を図るため降圧剤処方。
徳洲会勉強会:急性腹症を中心に、約 50 症例の CT を読影。
◎ 6 月 27 日 ( 水 ) :大蔵医院
外来診察、胃カメラ、大腸内視鏡を見学後、院長先生とゴルフに。
症例 1 : 90 歳代、男性
お腹が張り裂けるような痛みがあり来院。
186
CT では特に異常を認められず、上部消化管内視鏡を施行したところ、食道は少々荒れていて、十二指腸に潰瘍を形成していた。
アスピリン系薬剤などの服用も無く、内視鏡の所見から癌も疑い 3 箇所ほど生検し、即日入院。
症例 2 : 50-60 歳代、男性。
腹痛が出現したが、晩酌を止めたところ腹痛が軽減した。
右下腹部に腹痛を認め、 CT では下行結腸に糞石を認めたため次回診察時に検便を指示。
症例 3 : 70 歳代、男性。
胸がドキドキすると来院。
上部消化管内視鏡施行したが、特に異常が無かったため循環器疾患を疑ったが不整脈が少しある程度だった。
症例 3 : 70 歳代、男性。
以前より HbA1c が 8-10 であったため、インスリン療法を拒否していたが、半年前より開始した。
現在軽快中なので経過観察。
症例 4 : 60 代、男性。
体がだるく、薬が飲めないため来院。
BP110/60 と通常と比較すると低血圧気味で、頻脈、不整脈を認めたため、心電図を施行したところ、特に異常無し。脱水と判
断し、点滴処方。
症例 5 : 76 歳、女性。
他院整形外科より下痢を主訴に紹介。
採血では、 CA19-9 が高度上昇。
下部消化管内視鏡では便が多量に貯留し、所見は多く得られなかったが CT で膵頭部に異常を認めたため膵頭部腫瘍、下痢は慢
性膵炎からの吸収不良による脂肪便と判断した。
◎ 6 月 28 日 ( 木 ) :寿恵苑 ( 午前 ) 、タラソおきのえらぶ ( 午後 )
寿恵苑
< 内容 > 職員の健康診断のための胃透視、外来、入院患者の回診見学
寿恵苑では先生御自身が 80 歳以上と高齢にもかかわらず、いまだ現役で働いていらっしゃる事に驚きました。昼食は先生とご
一緒させていただき、とても楽しかったです。
タラソ
< 内容 > 海水プールでの運動、リズム運動、温風浴?に参加した。
水中なので、足腰が弱い高齢者でも負担が少なく全身運動が可能で、 20m 弱の水槽やジムもあるので高齢者以外にも楽しめる
施設だと思いました。
リズム体操では 30 分間休むことなく体を動かし続けることでとても体力的に鍛えられました。僕たちは体力的にとても厳しか
ったのですが、普段から参加している地元の方々は平然と運動をこなしていてとても驚きました。
6 月 29 日 ( 金 ) :朝戸医院
< 内容 > リハビリ参加
朝の送迎、健康チェック、個別リハに参加。
朝の送迎は近辺の患者さんだけではなく、島の反対側までお迎えに行くところから始まりました。職員さんはリハビリをするだ
けでなく、迎えにも行く事に初めは驚きましたが、朝お迎えに行き顔を見た時に家での状況や、その日の大まかな体調などをい
ち早く知ることができるので、お迎えに行く事も患者さん個人個人のリハに役立つと感じました。島には道の細いところや、交
通の便も悪いところが多くあり、遠くまででもお迎えに行く事で自分では病院まで来られない方にも送迎はとても便利なサービ
スだと思いました。また、患者さんの中には車いすで乗車する方もいるので、道の整備が悪いところを通る時などは車のスピー
ドを落として通行するなど、細かい配慮を感じました。実際僕自身も車いすでの車移動を体験したのですが思った以上に揺れる
ので、そういった細かい配慮はとても重要であると思いました。
【感想】
僕にとって今回のこの実習が 6 年間で初めての離島医療を間近で見学する機会で、今回の実習を経験するまで、離島ではどんな
医療が行われているのか全く想像がつかず、離島の医療が見学できる事がとても楽しみでした。実習初日は朝戸先生の外来見学
の前に院内を案内していただき、まず驚いたことは、それほど大きくない病院の中にエコーはもちろんの事、内視鏡や耳鏡など
様々な診察道具が揃っている事でした。実際診察が始まると、色々な患者さんを診察していくなかで、エコーや内視鏡などフル
活用して、先生の専門分野とは全く違う疾患でも診断し、処置できてしまうことが大きな驚きでした。また、患者さんとの距離
も近く、本当にその患者さんの全身を診ているのだと感じました。
大蔵医院での実習初日の院長先生の外来では、少ない時間で患者さんを次々と診察していく手際の良さに驚きました。また、診
察の合間には小話やミニレクチャーをしていただきとても勉強になりました。二日目は副院長先生の外来を見学で、院長先生同
様てきぱきと診察をこなしていく様子を見て、話し方、手技などとても勉強になりました。また、この日の患者さんで大腸内視
鏡を行い、人手が必要な時に僕らもお手伝いをしてなんとか患者さんを診察台の乗り降りができたのですが、普段は本来のスタ
ッフさんだけでこれを行っていると思うと、スタッフも大勢いる場所とは違い、離島ではやはりどうしてもマンパワー不足は少
なからずあるのだと感じました。外来の後は、院長先生にゴルフ連れてっていただき、指導もしていただいてとても楽しくいい
運動ができました。この日で大蔵医院での実習が終わりだったので先生に食事に連れて行ってもらい、院長先生のとても勉強に
なるお話 (something great) も聞くことができ、学生時代サッカー部だった副院長先生とは先生の学生時代の部活の話や、佐賀
187
大と鹿大で対戦した話、そして僕の卒後の進路の相談までしていただき、とても楽しい勉強になる時間でした。一週間生活しま
したが、この日が一番充実して楽しい一日でした。離島実習で一番感じたのは、どの先生も医者としての能力は素晴らしいとい
う事です。自分の専門分野はもちろん持ってはいますが、どんな患者さんが来ても患者さんとも身近な距離感でてきぱきと診察
し、処置、治療までこなす姿をみて、僕の目標である「目の前の人を助ける事のできる医師」にとても近い存在だと思いました。
僕自身、今後何かしら専門に進むと思いますが、少しでも先生方に近づける様頑張ろうと思いました。
また、他のスタッフさんの連携や患者さんへの気遣いもとても素晴らしく、僕たちにも優しくしていただき、感謝しています。
この一週間本当に勉強になることが多かったので、また機会があればぜひ勉強に、そして遊びに行きたいと思います。本当にあ
りがとうございました。
氏
名
徳永
拓也
6 月 25 日(月)
実習:朝戸医院(午前、午前)
内容:午前中は医院で外来患者さんを見学。症例 1 ; 66 歳、男性、
主訴は発熱。患者さんは ATL のくすぶり型で皮膚潰瘍ができている。
潰瘍に対してはステロイド軟膏がぬってある。土日に発熱があり家族
が心配して入院の必要性があるかを確認しに来た。病院に来た時点で
発熱はなく、 ATL の急性転化の可能性は低いと考えそのまま帰宅と
した。症例 2 ;男性、主訴は手の痛み。 6 月 23 日にノコギリで作業中に左手示指の関節を傷つけた。
来院時、左手は腫脹していて手指の屈曲制限があった。さらに、右手に比べ左手のほうに熱感があっ
た。受傷後時間がたっており創部の汚れも目立たなかったので洗浄は行わなかった。創部のアイシン
グと抗菌薬の投与を行うことにした。
午後:午前と同じく外来患者さんの見学。症例 1 ;男性、主訴は肩と膝の痛み。変形性膝関節症があ
る患者さんで、いつも病院にきて痛み止めの注射をお願いしていた。今回から、注射の回数を減らす
目的でブプレノルフィンというテープを処方した。副作用として嘔気があるので、制吐薬を処方した。
嘔気が強いようであればテープは中止し、注射に戻すということであった。症例 2 ;女性、主訴は夜
間の咳。夜間の咳が続く患者さんで、家族が心配して来院した。痰はでていなくて空咳がでる。食欲
は保たれていて熱は出ていない。聴診で呼吸音は清であった。特に異常はないと考えられ、咳止めの
みの処方となった。
6 月 26 日(火)
実習先:大蔵医院(午前、午後)
内容:午前中は外来患者さんを見学。症例 1 ;女性、主訴は動悸がする。患者さんは動悸がして手に
汗をかきやすいということであった。甲状腺機能亢進の可能性が高く、原因を検索するため抗マイ
クロゾーム抗体を検査項目に加えた。患者さんの訴えに肩の痛みがあった。甲状腺機能亢進と肩痛
の関係としては、機能亢進により交感神経が興奮し、血管収縮がおきやすくなる。これにより筋肉
への血流量がへり酸素供給がへり嫌気性代謝が進む。乳酸が蓄積しやすくなり、筋肉が強張りやす
くなるということであった。
午後:外来患者さんの見学。徳洲会病院で CT 講習。症例;女性、胸痛がある。胸痛を訴える患者
さんで、狭心症や心筋梗塞を心配して来院した。診察をすると、どうやら虚血性の心疾患ではなさ
そうであった。しかし、その可能性が低いことを伝えても患者さんの不安は拭いにくい。先生は、
患者さんに階段を移動してもらい、その後心電図をとって可能性が低いことを伝えていた。ほっと
した様子で帰宅された。自分のいいたいことをよりわかりやすく伝えることはとても大事なんだな
と感じた。外来の後、先生のお話を聞くことができた。とても面白いお話を伺うことができた。医
師になれるようにしっかりと勉強したい。徳洲会病院で CT の講習を受けさせてもらった。今まで
の復習と新しい観点を教えてもらえてとても面白かった。
6 月 27 日(水)
実習先:大蔵医院(午前、午後)
内容:午前中は外来患者さんの見学。症例; 90 歳、男性、主訴は腹痛、夫婦で来院された。昨日
はおかゆを残した。便は出ていない。腹部の診察で、上腹部の痛みを訴えた。 CT 撮影後、胃カメ
ラを施行した。所見として、十二指腸部に潰瘍が認められた。アスピリンなどの潰瘍のリスクが無いため、腫瘍の可能性も考え、
入院として再検査を行うことにした。
午後:午後も外来を見学した。症例;男性、主訴はふらふらする。日中に作業を行っていて、眩暈がでた。直射日光下での作業で
脱水が考えられた。血圧は低く、脈拍が上昇していた。心電図でも不整脈が出ていた。点滴を施行し、その後、再診察とした。
2 日間、大蔵医院での見学をさせてもらった。すごく勉強になる 2 日間でした。実習だけでなく課外学習もとても充実していまし
た。院長、副院長ありがとうございました。また、昼食を準備してもらっていて、それがとてもおいしいでした。みなさん本当に
ありがとうございました。
6 月 28 日(木)
188
実習先:福山医院(午前)
内容:胃透視と外来患者さんの見学。朝は職員さんたちの健康診断で、胃透視の見学をさせていただ
いた。ひとつひとつ丁寧に説明してもらえたので、とてもわかりやすかったです。透視を 3 件した後
は、外来でした。外来を見学しながら、先生が研究をした疥癬のことや、抗菌薬の進歩などとても興
味深いお話を伺いました。その後、入院患者さんとお話できる機会がありました。病院の存在が地域
にとって重要であるということを実感できました。
実習先:タラソおきのえらぶ(午後)
内容:体験実習。プールのような施設だったので、とにかく動きました。体操が始まるまでにほとん
どの体力を使ってしまいました。 30 分の体操だったのですが、想像以上のきつさでした。水中で行
っているので体に対する負担は感じないのですが、終わった後の地上での行動にかなりの疲労を感じ
ました。とてもよい経験ができました。
6 月 29 日(金)
実習先:朝戸医院
内容:デイサービスの見学。朝、デイサービスの利用者の皆さんを迎
えに行くところから、実習が始まりました。 4 人の利用者さんとご一
緒したのですが、会話がほとんど聞き取れませんでした。でも、なん
だか楽しそうだったので、気がつけば一緒に笑っていました。デイサ
ービスの内容は予防と
に分かれていて、主に予防の見学をさせてい
ただきました。病院についてから、バイタルのチェックとその日の調
子を確認して、お茶や砂糖を食べながらしばらく談笑していました。
そこから、ラジオ体操や棒を使った体操、器具を使った運動を行いました。いろいろな話を聞くこ
とができてとても楽しい時間でした。
遠隔医療実習記録
適当な症例がなかったため今回は行いませんでした。
感想
今回、離島実習をさせていただき、ありがとうございました。
土曜の夕方に出発し、日曜の昼ごろに沖永良部に到着しました。晴れた空と青い海に囲まれてとて
もいい気分になりました。源さんに教えていただいたワンジョビーチに行ってきました。すごく楽
しかったです。
朝戸医院での実習は月曜と金曜でした。外来実習は先生と住民の皆さんとの信頼関係がよく見えた
と思います。診療やデイサービスを通して患者さん一人というよりは和泊という地域全体を診てい
るのだなと感じました。また、 CT やレントゲン、内視鏡など設備は整っていて、初期診療を行う
上で中心部との差はそこまで感じませんでした。お邪魔してしまいましたが、実習をさせていただ
きありがとうございました。途中、朝戸先生にお借りしていた車が故障し、先生が使われている車
を変わりに使わせてもらいました。本当に助かりました、ありがとうございました。また、朝食・
昼食を準備していただいて、万全の状態で実習に臨めました。ありがとうございました。
火曜日と木曜日は大蔵医院で実習をさせていただきました。主に外来の見学で、 2 日間を通して多
くの患者さんと接する機会がありました。患者さんが『新しいお弟子さんがきたんですね、いいお
医者さんになってください』とおっしゃることもあり、なんだかあったかい気持ちになりました。
医院の皆さんに暖かく迎えてもらっている雰囲気があって、とても過ごしやすかったです。ごはん
もとてもおいしかったです。ありがとうございました。火曜日は大蔵先生のお宅にお邪魔させても
らい、開業当初からのお話を伺いました。たくさんの苦労があって今があるというお話で、何事も
踏ん張る時期はあるのだなと改めて感じました。水曜日には実習後に初めてのゴルフを体験させて
もらいました。想像以上に面白かったです。ゴルフの後は、院長と副院長に夕食につれていっても
らいました。大満足な 1 日でした。 2 日間、本当に、ありがとうございました。
木曜の午前中は、福山医院で実習しました。福山先生の真摯な姿勢に大変感銘を受けました。
日々是探求を目指してがんばろうと思います。何歳になっても学んでいくことが大事で、努力次第
でできないことはないと思いました。福山医院のよこには寿恵苑があり、利用者も多くいらっしゃ
いました。その存在の大切さを感じました。午前中の実習が終わった後は、福山先生に昼食に連れ
て行ってもらいました。コーヒーにデザートまで食べさせてもらい、すごく幸せになりました。福
山先生、ありがとうございました。
189
午後は、タラソで一心不乱に運動をしました。少しだけやせた気がします。また行
きたいです。利用している皆さんの中には、ほぼ毎日通っていてすごく体調がいいと
いう方もいらっしゃいました。運動しやすい環境と毎日の適度な運動が大事だと実感
しました。大事です。ありがとうございました、楽しい時間が過ごせました。
1 週間の実習を通して、多くのことを学ぶことができました。島という特有の環境
の中で、医師がどのような役割を担っていて、どのような存在なのかを少しだけ見る
ことができたと思います。患者を、地域を、島をみる医師が必要なんだなと感じまし
た。今回の実習で先生方に出会うことができて本当によかったと思います。将来、地
域の医療に従事したいと考えているので、すごく刺激になりました。ありがとうご
ざいます。
一番長く宿泊させていただいた、源さん、ありがとうございました。毎日どたど
た歩いたり、好き勝手したりして迷惑をかけてしまいましたが、快く宿泊を受け入
れてもらいました。すごく快適でした、そして、島を満喫することができました。
ありがとうございました。
今回、初めて沖永良部島にきてさまざまなことを体験できました。出会う人出会
う人、みんなが本当に温かくて、また気候も暖かくて、すごく気持ちのいい島でし
た。勉強も島も満喫できたと思います。でもまだ足りないので、またいつか行きたいです。
実習できてよかったです、ありがとうございました。
190
与論パナウル診療所
パナウル診療所外観
サザンクロスセンター
与論のおへそ
与論港
パナウル王国
191
平 成 23 年 4 月 4 日 ( 月 ) ~ 4 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
鮒田
貴也
実習感想
今回私を含め 3 名、 4/4 〜 4/8 の期間与論島のパナウル診療所で離島実習をさせていただいた。初めての与論島であった。与論
島や島の人々の印象については後に示す。パナウル診療所での診療は、主に外来と往診であった。診察していらっしゃるのは古川
先生。島にいて、島民の健康を守っている優しく、頼りがいのある先生だろうなぁと想像していたが、まさしく想像通りだった。
物腰柔らかく、患者さんたちも毎回診察後安心して帰られる。ああ、島に来たんだなーと思う瞬間だった。
外来では、先生の後ろについて実際の診察を見学するわけだが、なかなかの患者さんの数であった。もっと島らしくのんびり診
察するのかなぁ、なんて思っていたら、その想像は全く違っていたことになる。テキパキとどんどん患者さんを診察していく。こ
れじゃぁまるで普通の街とかわらない。島の方の話を聞きながらの緩い実習を期待していたのだが、やはりそこは医療の現場だっ
た。待合室にはたくさんの患者さん、決して乱雑な診察ではないが短時間でしっかり問診、診察をして次々と患者さんを診察室へ
招きいれる古川先生、まさに医療現場の最前線だった。合間合間で先生がいろいろな話をしてくださって、気にかけて頂くのが申
し訳ないくらいの患者数だったので、これを毎日やってるのかと思うと、島の悠々自適な医者生活を想像していた自分の考えの甘
さに、さらに申し訳なくなる。
初日は外来を見学した。やはり高齢者が多く、高血圧やコレステロールの薬、と呼ばれる薬を処方していたのだが、ここで一つ
問題が起こる。東北地震の影響で、薬の供給が日ごろの十分の量に足りていなかったのだ。高血圧や脂質異常症の薬はもちろん、
特に甲状腺の薬が不足していた。古川先生に理由を聞いたところ、何でも甲状腺の薬を作っている工場の場所が福島にあるらしく、
直接に打撃を受けたという。これはまずい。毎回 3 ~ 4 週間分の薬をもらっているらしい患者さん達にどう説明するのか、正直こ
こは古川先生の出方をしっかり見ていた。一人目の患者さんにこのことを説明し、みんなにまわせるよう 1 週間分しか出せない、
との旨を伝えると、「いいですよー、みんな困ってるときはねぇ助け合わないと」である。次々来る患者さんも同じような反応だ。
まさにこれは古川先生の人徳のなせる業だろう。日ごろからきちんとした診察、親切な対応を続けていらっしゃるからこのような
事態のときにすんなり皆受け入れてくれるのだと思う。実は、 4 日目だっただろうか、外来の患者さんの一人が某病院には行きた
くないと言っていた。与論島にあるちょっと大きな某病院、そこはあまり対応がよくなかった、だからオレは古川先生のとこにし
かこない、とおっしゃっている。このことで、もう説明する必要はないだろう。医者と患者の信頼、これホントに大事やなぁ、と
ひしひしと感じていた。初日の午後からは往診に向かう。往診は人生で初である。どんな患者さんのところに行くのだろうか、と
期待や不安にかられながらも出発。この日見た患者さんは、なんと、ワレンベルグ症候群、ハンセン氏病、骨折で寝たきり、の 3
人だった。なんと、ワレンベルグだなんて、がっつり国試、神経で出題される疾患である。もちろん実際の患者さんは見たことが
ない。離島のお医者さんって、こんな疾患まで診ないといけないのかと驚いた。骨折で寝たきりの患者さんのお宅を訪れたとき、
患者さんから「とうとうがなし、とうとうがなし」と言われた。与論の言葉で、ありがとうという意味らしい。心がほっこりした。
さて、考えさせられたハンセン氏病の患者さんである。私は熊本出身で、熊本の菊池というところにハンセン氏病の患者さんが隔
離されていた施設が身近にあった。なので小中学校で他の学校よりも勉強してきた自負がある。そこと全く同じ状況であった。家
庭内でも隔離された離れに住んでらっしゃる。人ともあまり会わないから、この往診の日を楽しみにしてらっしゃるという。お菓
子やジュースまで用意してくださっていた。ここで、島のネットワークのマイナス面を考えさせられた。島民よりも牛が多いこの
島では、みんなが助け合って暮らしていらっしゃる。後述するバイク屋さんもスーパーの店員さんも皆親切で、パナウル診療所の
待合室も寄り合い場と化していたところもあった。横の絆が本当に強い。すばらしいところだが、一方でこのネットワークがあま
りよくない方向に働くこともある。いわゆる悪い噂と言うものだ。前述した某病院の噂も様々聞かれて、行ったことないのに悪い
印象を持っていらっしゃる方もいた。ハンセン氏病も、これだけ優しい親切な方々ばかりなら外に出ても親切にしてくれるだろう
と思うのだが、ときに強いネットワークは非常に排他的な面を見せる。自分の医療に関連付けてみると、こちらは一日に何人もの
患者さんを診るかもしれないが、患者さんにとっては数ヶ月に一回しか会わないたった一人の医者だ。そのことを軽んじ、雑な診
察や対応をしていると、その患者さんだけでなくネットワークを通じて他の患者さんにもこの事実が伝わる可能性がある。そのこ
とを肝に銘じておかないと、信頼を構築するどころか、まず自分のところにきてくれなくなる。ゾッとする感覚を覚えながら、こ
れは忘れないようにしようと誓った。往診が終わってから多少時間があったので、そのまま外来に戻った。二日目は午前中外来を
見学し、先生のご厚意で昼からは与論島見学に行くことができた。三日目は老人ホーム訪問である。今まで何度か老人ホームは特
老を含め訪れたことがあった。そこで受けた印象は、おもったよりも与論島出身者が少なかったことだ。いろんなお話をして、実
習させてもらっているのだがこちらが楽しませてもらった感覚だった。お昼からは戻って外来である。そこで面白い光景があった。
もう日暮れも近くなったころ、お母さんとお父さんが保育園くらいのお子さんを連れて診察にやってきた。お子さんが風邪様症状
だったのだが、お母さんも調子が悪いと言う。なので、子供、お母さん、お父さんと 3 人まとめて古川先生は診察した。ああ、こ
れだ、これがまさにかかりつけのお医者さんだ、と思った光景だった。四日目は往診に行った。今回の往診では、まず 102 歳の女
性のお宅へ伺った。元気であった。往診を楽しみにしていたらしく、お話もされて上機嫌だった。やはりイメージどおり長寿が多
いんだな、と思う。次に小脳梗塞の患者さん、そして認知症の女性、老老介護のお宅だった。印象的だったのは認知症の患者さん
の家に伺ったときに患者さんのご家族の方は非常に介護に疲れた様子で、長生きすれば嬉しいというものではない、たまに介護に
疲れることがあるという様なことをおっしゃている時だった。当然愛情がないわけではないが、長い期間介護を行うことは家族の
方にとっては大変な労力であろうし、離島という土地柄、都市部のように介護施設も整っているわけでもない。そういった意味で
も、古川先生が行っている往診は非常に重要なんだな、と感じた。五日目最後は船の時間まで外来を見学させていただいた。今回
通して感じたのは、古川先生はスーパーマンだ、ということだ。内科はもちろん、神経疾患、整形外科疾患、中耳炎の耳鼻科疾患、
192
そして皮膚科のような小外科も行っていた。ナートのような手技を実際見せてもらったが、なんと綺麗にされるのだろうか。古川
先生から、総合診療医についてのレクチャーを受けた。最近は多くなってきているようで、先生の息子さんも総合診療医を目指し
てらっしゃるという。しかしながら知識の量が半端ではない。まずなんの疾患なのかを判断し、トリアージを行って自分で対応で
きるのか、専門医に相談したらいいのかを判断する。最初のイメージでは、離島のお医者さんは悠々自適、ステキな生活だなぁと
思っていたが、なんのことはない、まさに医療の最前線である。全く自分にはできる気はしない。しかし、いずれもっと勉強して、
こんな信頼されるスーパーマンになりたい、と心から思った。
与論島感想
21 時間である。まずそこが衝撃的だった。 21 時間船で与論島におりたった。船ではもっぱら寝ているだけだったのだが、着
いたときの海の綺麗さといったらなかった。目の前には沖縄本島が見える。高橋さんが迎えに来てくださって、ちょっと与論島を
案内してもらう。ここは海が綺麗だから、沖縄からも多くの人が訪れるという。活性化センターについて説明を受ける。昼過ぎだ
ったので、とりあえず海に行ってみようということになり、自転車で海へ。見たことのない青だった。 4 月だったが暖かく、海で
泳ぐこともできた。食料をもとめ中心街へ行くと、いい雰囲気のサンシン?の音が流れている。とりあえず今日は外で食べようと
いうことになり、高橋さんからもらった与論島のパンフレットをもとに食事できるところを探して、そこに入ってみた。なかなか
おいしく、有泉という与論島の焼酎もおいしく頂いた。二日目のお昼は、古川先生の奥様のカレーを頂いた。なんとおいしいこと
か、完全にお店の味であった。与論島滞在中、パエリヤやハンバーグも頂いたのだが、どれもこれもおいしく、そして量も多かっ
たので鹿児島に帰ると 2kg 太っていた。三日目の午後、与論島での年に一度の浜くだり、というイベントがあるということで、バ
イクを借りて与論島を一周してみた。綺麗な場所がたくさんあり、景色を眺めながら少し肌寒い風を感じながらバイクを走らせる。
ふと浜辺を見ると、与論島の人であろう、その方々が何かをしていらっしゃった。浜くだりについてもお聞きしたかったので、話
しかけてみた。するとおじちゃんが腹減ってるか?といって浜くだりのときに食べるという刺身を野菜と一緒にしたサラダのよう
なものをくださり、おばちゃんからは蒸しパンもいただいた。食べながら話を聞かせてもらったのだが、浜くだりというのは海に
感謝をする日だと言う。島であるので、ほとんどの方は漁師である。その日一日は漁を休んで、海に感謝しながら浜でご飯を食べ
るのだという。昔はもっと多くの家族が浜くだりをしていたそうだが、最近はだいぶ少なくなったそうだ。どこの誰かともわから
ない僕らに話を聞かせてくださり、食べ物までくださるとは、与論島を選んでよかったなぁと思いながら、写真を一緒にとってお
礼をいい、バイクを走らせた。四日目の夜は料理を作ったのだが、一つ心残りがある。スーパーで豚の心臓がまるまる一個売って
いた。これを解剖してそのあと食べようと提案したのだが、二人に全力で断られた。残念だ。五日目は往診の途中、与論島の絶景
ポイントに古川先生が連れて行ってくださった。綺麗な海、綺麗な浜、なんともいえないいい陽気、こんなところで生活をしてみ
たいね、と三人で帰りの車で語り合った。その日の夜は、先生夫妻がご飯を食べに連れて行ってくださった。なんと先生二人は関
西にすんでいらっしゃったらしく、出身が徳島でぼくの友達と同じだったので、その友達を紹介し電話をしていた。よくわからな
い状況だったが、気さくでなんて楽しい飲み会なんだろうと思っていた。そこで先生が話してくださったのが、人生にはなんにで
も意味がある、という言葉だ。そこまで生きてきたわけではないが、ぼくのこの短い人生の中でも人の出会いや言葉、別れや行動
など今考えるとあれがきっかけだったな、あれで変わったなぁ、ということがふと浮かんでくる。与論島でさまざまな患者さんを
診ていらっしゃる先生だからこそ言える言葉なんだろうなと思った。活性化センターに帰って、三人でこの言葉をふりかえり、有
泉を酌み交わした。最終日はひどく飲みあかしてしまった。三人ともひどく酔っ払ったが、またここに戻って来たいね、とよくわ
からないまま熱く語り合った。鹿児島に帰る日、先生の奥様と写真を撮っていただき、高橋さんの車で船に向かった。初日、活性
化センターのお湯が出ず、あわてて高橋さんに電話したが、がっつり飲み会中で酔っ払っていて何を言っているかわからなかった
高橋さん、実は与論島出身ではないという事実を聞いたときは何か裏切られたような気がした。最後まで手を振ってくださり、あ
りがたかった。
最後に
実習期間 5 日、滞在期間 5 日半と短い期間だったが、与論島、島の医療の実際を目の当たりに出来た。最初に想像していたのと
は全く違っていた。甘く見ていた自分が恥ずかしい。おそらく鹿児島大学で研修するだろうから、もう一度ここにもどってきたい
と思う。与論島はあたたかく迎え入れてくれると思う。もっと知識をつけて、古川先生の質問にもしっかり答えられるようにして、
戻ってこよう。いい経験をさせていただいて、ありがとうございました、お世話になりました。
平 成 24 年 3 月 5 日 ( 月 ) ~ 3 月 9 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
大徳
晋久
3 月 5 日(月)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夕診)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例:中年女性、主訴は前日に浴室で転倒した際に手をついてから橈骨遠位部の痛
み、腫脹がある。検査所見は単純 Xp で橈骨遠位に骨折線を認めたため、橈骨遠位端骨折と診断し、ギブスによる固定を行った。
午後は症例 1 :インフルエンザで罹患されている高齢のご夫婦のお宅に往診した。旦那さんが消化管出血による貧血でありそれに
対して鉄剤を処方した。症例 2 : 92 歳、女性のお宅に往診。農作業中に高いところから転落した際に大腿骨頸部を骨折し、保存
的治療により経過良好であった。臥床中に筋力の低下等もあり歩行は困難であるが車椅子による移動は介助ありで行うことができ
た。症例 3 :原因の詳細は不明であるが寝たきりの高齢男性のお宅に往診。ご夫婦二人だけの生活を行っていたが、旦那さんの体
調が悪化して寝たきりになってしまった。高齢女性一人だけでは介護も困難であり入所施設に入っていただくことを決めた。往診
後は再び診療所にて夕診。症例 1 、 2 : 15 歳、女性。 HPV ワクチン接種( 3 回目)。症例 2 : 6 人家族のうち 4 名が感冒。 1
193
名が生後 2 ヵ月で脂漏性皮膚炎。父親から発症し、家族にうつしてしまい、家族総出で診療所に来られた。
3 月 6 日(火)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夕診)
内容:午前中は診療所で外来見学。症例 1 :中年男性。肝・腎・膀胱のエコー検査。頻尿を主訴に来られていたが目立った所見は
なく、経過観察。症例 2 : 55 歳、女性。動脈硬化の検査を行った。特に目立つ所見はなく、経過観察。症例 3 :中年男性。人工
弁置換術後でワーファリン内服で経過観察していたが、最近は歯を磨いているときに出血することが減少したためワーファリンの
効果が悪いのではないかという主訴で来られた。 PT -INRを中心とした血液検査を行った。血液検査は同日中に福岡に送られ、
翌日にはインターネットで知ることができるシステムとなっているため、翌日にもう一度来ていただくこととなった。症例 4 :高
齢男性。電動カンナを用いて作業中に右手の第 3 指のDIP関節付近を損傷した方で、生理食塩水で洗浄しソフラチュールを使用し、
湿潤を保つようにガーゼを巻いた。感染を起こさないように毎日診察しに来てもらうこととしていた。手指のえぐれた外傷であり
縫合するよりも保存的治療を行い肉芽組織による修復を待つ方がよいという判断であった。症例 5 :高齢女性。主訴は持続する腰
痛。痛みの発生の仕方、持続期間、既往歴など腰痛の Red Flag Sign を考慮すると悪性腫瘍、化膿性脊椎炎、圧迫骨折などの可能
性は低いと判断され、経過観察とされた。症例 6 :高齢男性。バイクで転倒し、右足第 1 趾中足骨付近の裂傷。洗浄し、皮膚縫合
を行った。午後は往診の見学。症例 1 : PICA の閉塞による Wallenberg 症候群の 60 代男性のお宅に往診。嚥下困難がみられた。
体力の低下もあり外出をすることがなく臥床している時間が長いとのことで、どうにか外出する機会を増やすことで廃用を防ごう
と外出を促していらっしゃった。症例 2 :ハンセン病の高齢女性のお宅に往診。末梢神経障害、知覚鈍磨、皮膚病変が見られた。
末梢神経障害のため転倒することがたびたびあるとのこと。往診後は再び診療所で夕診。症例 1 :中年女性、喘息発作後の診察。
前日の夜間に喘息発作を起こしながら自分で車を運転して来院された。前日はβ刺激、吸入ステロイド、アドレナリンによって発
作がおさまった。何度も喘息発作を繰り返している方でしたので、今後十分に経過観察を行う必要があると思われる。
3 月 7 日(水)
実習先:福祉センター(午前)、診療所(夕診)
午前中は福祉センターに見学させていただきにいき、お話させていただいたり一緒に体操にさせていただいた。夕方からは診療所
で夕診。症例 1 : 56 歳女性。主訴は熱、むくみ、頻尿。骨髄線維症と診断されている方で下腿の浮腫みがとても高度であり、膝
関節に高度の関節液の貯留が認められ関節穿刺を行った。黄色の粘性の強い関節液が90cc採取され、感染症も考慮して細胞診断を
行うこととした。症例 2 :高齢女性。進行性核上性麻痺によって経過観察されている方で繰り返し転倒されて右肩関節を亜脱臼し
ていた。経過観察とした。症例 3 : 28 歳女性。感冒後。基礎疾患に重症筋無力症のある方で、感冒後の経過観察に来られた。特
に目立った所見はなく経過観察となった。
3 月 8 日(木)
実習先:診療所(午前、夕診)
内容:一日診療所で外来見学をさせていただいた。症例: 82 歳男性。両足下腿の浮腫を主訴に来院。腹水と思われる腹部の膨隆
も認め、心臓・腎臓の病変を疑い、胸部・腹部エコーを施行した。エコー上は目立った所見を認めなかった。血液検査を行い、翌
日に再度来院とした。
3 月 9 日(金)
実習先:診療所(午前)
内容:診療所で外来見学をさせていただいた。症例 1 : 82 歳男性。昨日の原因不明の浮腫の方。血液検査では特に目立った所見
はなく、白癬に対して処方している抗真菌薬による副作用が一番疑われたため、抗真菌薬の内服をやめて経過観察とした。症例
2 :中年男性。先日、急激な貧血で来院され上部消化管からの大量出血が疑われ Dr. ヘリで緊急搬送された方で、その後の経過観
察。多数の胃潰瘍を認め、そこからの出血であったとのこと。
遠隔医療実習記録
鹿児島大学病院総合診療科 : 大徳
晋久 (医学生 )
紹介・相談
胸部単純 Xp 読影のお願い
この度は大変お世話になっております。 59 歳男性、高血圧、糖尿病にて当院通院中で
す。検診目的で胸部 Xp を撮影しました。特に自覚症状、他覚所見はありません。胸部
Xp では右下肺野に 1 ×1cm、 2 ×2cmの結節影、右横隔膜下に 3 ×3cmの結節影、左
下肺野に第 6 肋間、第 7 肋間付近に 1 ×1cmの結節影が 3 個、心臓の裏に 2 ×2cmの結
節影を認めます。多発する結節影から、転移性肺癌を疑っております。
貴科的御高診をよろしくお願い致します。
2012 年 03 月 08 日 ( 木 )
鹿児島大学病院総合診療科X線撮影
胸部
鹿児島大学病院神経内科 : 村永 文学 (医師 )
紹介・相談への返信
ご紹介ありがとうございました。
ご指摘のように右肺野の 2 個の結節、心陰影の中、右横隔膜より下方にも結節がみられ
ます。診断は多発結節影から、転移性肺腫瘍を疑います。
(この患者は直腸癌肺転移の症例でした。)
194
2012 年 03 月 08 日 ( 木 )
鹿児島大学病院総合診療科紹介・相談
感想
私は今回与論での離島実習の前に与論マラソンに参加させていただき、そのままの流れで実習をさせていただきました。マラソ
ンを走る前から与論マラソンはリピーターの方がとても多いというお話を聞いておりました。なぜなのかと考えておりましたが、
いざ与論に行ってみるとその理由がよく分かりました。与論に到着したらまず最初にお帰りなさいと声をかけていただきました。
そして、マラソンの前日には歓迎パーティーでは与論町全体で盛り上げていました。マラソンを走っている最中ではきついときに
も頑張れと声をかけていただけました。おかげでどうにか完走することができました。レース後は完走パーティーが開催され、歓
迎パーティー以上に町全体で盛り上がっていました。私も初対面の方々と入り乱れてとても楽しませていただきました。みんなが
楽しそうにしていて、与論の人のもてなしの心を感じてぜひとも来年も参加したいと思いました。
さて、その翌日からパナウル診療所での実習でしたが、まず最初に感じたことは古川先
生も看護師さんも患者さん方も全員とても親切で実習がやりやすかったということです。
次に感じたことは先生と患者さん、看護師さんたちのやりとりが今までに大学病院や私立
病院などの病院とは雰囲気が全然異なると感じました。先生と患者さんたちは普通に世間
話もよくされていましたし、家族総出で体調不良で診察に来られている方々いらしたり、
先生は地域の方々の健康を把握されていてまさに地域密着型の医療であると感じました。
そして、特に印象的であったことは重症筋無力症の若い女性の患者さんで以前はいくら検
査をしても診断することができずに長い間精神的なものと考えられて抗精神病薬を処方さ
れていたけれど、患者さんのことをよく知っていらっしゃった先生は精神的なものではな
いと見抜き重症筋無力症と診断して回復に向かった方がいらっしゃいました。日々の忙し
い生活に追われると一人一人の患者さんのことを考えることは難しいかもしれませんが、
今回の経験からその人がどのような人であるのかを知ることがいかに重要であるかという
ことを学ぶことができました。
最後に、忙しい日々にも関わらず私たち学生を受け入れてくださり良い経験をさせてく
ださって古川先生ありがとうございました。今回の経験を今後の学習に活かしていきたい
と思います。
氏
名
島
さほ
■ 3 月 5 日(月)
実習先:診療所 ( 午前 ) 、往診(2時から ) 、診療所 ( 午後 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学しました。印象に残った症例は、頚部と胸部に広がる発疹を主訴に受診された女性で
す。発疹は紅斑、痒みを伴い、母親に同じ症状が見られました。所見と症状から、皮膚の常在菌である癜風菌 ( マラセチア・ファ
ーファー ) によるものと診断され、外用薬を処方しました。
午後は往診でした。
症例 1 :三世代で住んでいる老夫婦。インフルエンザに夫婦で感染した。この日の診察ではもう治りかけとのことで、特に新たな
処方はなかった。ご主人は消化管出血で貧血を呈しており、現在鉄剤を内服中。
症例 2 : 96 歳、女性。自宅の裏の山で転倒し、大腿骨頚部骨折。現在、車イスにて移動可能。上肢の筋力は低下なく、意識、認
知も問題なし。この患者は、受傷直後は痛みで悩まされ、痛みが治まったら、今度は今までずっとやってきた庭や畑のことを出来
なくなったことから、「早く死にたい」と精神的な苦痛に悩まされている。頭頂部にはまだ新しい5cm×1cmの傷がある。これは、
与論島に昔から伝わる治療法で、患部からしゃっ血することで悪いものを外に出す意図があるのだという。この患者は「一日中ベ
ッドの上にいるから、頭もだめになってしまったんです」と、自身でその傷を作っているそうだ。私たちが往診に行った際、一緒
に庭まで出て見ると、表情は少しだが明るくなった。
症例 3 : 90 代のご夫婦。旦那さんのケアハウス入居手続きを行った。もとは二人暮らしだったが、ある時他の者が家を訪ねてみ
ると、旦那さんは排泄が自立しておらず、部屋中に垂れ流しになっていたことがわかり、介護士が介入することになった。奥さん
も軽度認知症ということで、二人ともケアハウス入居予定。
往診の後、夕診の見学をしました。与論島でも風邪やインフルエンザが流行り出し、小学校の先生が今季の特徴を聞きにパナウル
診療所までいらっしゃっていて、診療所が島の保険衛生情報源ともなっていることがわかりました。
■ 3 月 6 日(火)
実習先:診療所 ( 午前 ) 、往診(2時から ) 、診療所 ( 午後 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学しました。
症例 1 : 54 歳の男性。腎動脈性高血圧で通院中。この日は血圧 150/110mmHg であった。左腎動脈経皮的腎動脈ステント留置を
行っており、現在自宅で認知症の母親の介護もしている。お酒はなかなかやめられない。
症例 2 : 79 歳の女性。主訴は、夜間の両側下腿 ( 特に左足 ) のむずむず感。
症例 3 :男性。バイクを運転中に転倒し、左足背に外傷。 10 針〜 15 針縫う程の大きさだった。
午後の往診は、三件でした。中でも印象的だった症例は以下の二件です。
症例 1 :女性。ハンセン病。逆行性感染による結膜炎に対し、点眼薬を投与されていた。皮膚に重度の病変が生じるため、昔は差
195
別の対象となっていた疾患だが、実際に患者さんとお会いしたのは初めてだった。
症例 2 :男性。ワーレンベルグ。脳卒中を 2 回繰り返された方で、左の嚥下機能低下、右側軽度麻痺、発語障害あり。訪問直後は
声が小さかったが、古川先生と話すうちに声は大きくなり、冗談も言うようになる。最近の楽しみはラジオを聞くことだというが、
こうやって人と対話することも必要だと感じた。
■ 3 月 7 日(水)
実習先:福祉センター ( 午前 ) 、診療所 ( 午後 )
内容:午前中は福祉センターで、デイケアの方達と一緒に過ごしました。この日は雨だったので福祉センターまで歩いて行ったの
ですが、途中道に迷い、何人もの町民の方に道案内してもらいながら何とかたどり着きました。初めのうちは全く言葉がわからず、
以前与論以外の土地へ営業に行っていたという標準語の達者な方に通訳してもらいながらお話しするという、なんとも不思議な感
じでしたが、一緒に体操やゲーム、お手玉などをやるうちに、何となく言葉がわかるようになりました。帰りがけに、福祉センタ
ーに来ていらっしゃる方がビニール紐で作られたかわいらしいバックとクマを頂きました。
午後は診療所で夕診の見学をしました。
症例 1 : 28 歳、女性。重症筋無力症で現在ステロイド減量中。最近、風邪をひき、その後の経過を見るために受診。現病歴は、
H16の時点では寝たきりの状態だった。熊大、鹿児島大学も含め、色々な病院を受診するも筋電図ではっきりした所見が得られず、
原因がわからぬまま登校拒否と思われ、精神剤を投与されていた。しかし古川先生が話を聞くと、中学時、卓球の素振りが遅くな
ったと友達から指摘されたことがあり、登校拒否をする様な精神状態でもなかったため、重症筋無力症と診断し、治療を開始した。
すると治療後すぐに歩行も自立するまでに回復した。
症例 2 : 52 歳、女性。膝関節に黄色液が貯留し、運動制限、疼痛があった。病変は両足に認めるが、右優位。膝関節に溜まった
液体を穿刺し採取した黄色液を検査することとした。既往歴として、骨髄繊維症で毎週輸血されている。
夜は、地域福祉センターで開かれた講演会に参加してきました。テーマはファシリテーションで、まず 3 人一組でロールプレイを
し、その後、 6 人グループで共通の夢を作るというものでした。ここで偶然同じグループになったのが、ガジュマルの会の方々で
した。その熱い思いと行動力に私達も何時の間にか魅せられていました。
その後、古川先生と夕食を頂きました。研修医の河野先生も交えて熱い夜になりました。
■ 3 月 8 日(木)
実習先:診療所 ( 午前 ) 、災害時の対応についての会議、診療所 ( 午後 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学しました。
症例 1 : 82 歳、男性。主訴は両則下腿浮腫。圧痕残らない。夜間、自分のゴーゴーいう寝息がうるさくて起きることがある。腹
部周囲も急性に大きくなり、ズボンを買い替えたほどだと言う。急性発症の浮腫ということから、心不全、腎不全を考え、採血と
エコー、胸部レントゲンを施行した。腹部エコーにて腹水貯留も認めず。心外膜にも液なし。レントゲンにてCPR拡大。血液検
査の結果待ちにはなるが、この段階では、水虫の治療にイトリゾールを 1 月中旬と 2 月末に内服しており、その副作用を疑う。
症例 2 : 3 月 6 日にかんなで右手の中指遠位関節をけずってしまった男性。受傷後、毎日診療所に通ってもらい、傷の様子を見て
いたが、湿潤で創傷治癒させようとしたところ、与論島の湿度もあり、周りの皮膚がふやけしまう。与論島ではちょっと乾燥がち
ょうどいいらしい。今日からガーゼのみとした。
症例 3 : 75 歳、男性。閉塞性動脈硬化症の治療中に突然血便が出て、潰瘍性大腸炎の急性増悪と診断された。 40 〜 45 分毎に
トイレに行く状態だった。プレドニゾロンで薬物療法後、レミケード投与で、沖縄から帰省。
お昼からは、沖永良部、徳之島の方達と災害時対応についての会議に参加してきました。地震による直接的被害を想定しての話し
合いでした。
夕方は診療所で見学でした。
症例 1 : 29 歳、女性。昨夜より嘔吐、下痢。息子も似たような症状を呈す。ラックビー、ツムラ漢方投与。急性胃腸炎の診断。
症例 2 : 63 歳、男性。主訴はめまい。頭部の位置変化で増悪する。右眼振あり、指鼻指試験は右で若干陽性、 DPR は左下肢で
若干亢進、舌を前に出すとわずかに右に偏る。動向左右差、痙性麻痺なし。以上より小脳出血を疑い、さらに詳細な検査のため他
病院へ紹介となった。
■ 3 月 9 日(金)
実習先:診療所 ( 午前 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学しました。
症例 1 : 86 歳、女性。高血圧と糖尿病で治療中。今日は動脈硬化の検査のためにパナウルを受診された。ABIで高値を認めたが、
頚部エコーでは血管壁の明らかな石灰化、壁肥厚を認めなかった。頚部血管エコーの結果と、脳血管の硬化は相関すると言われて
いるため、ABIの結果と食い違うが、エコーの結果を優先する。
症例 2 :昨日、下腿浮腫で受診された、 82 歳の男性。血液検査の結果、肝逸脱酵素、クレアチニン値は正常値であった。昨日施
行した心エコーでも明らかな心不全、心嚢液貯留は認めなかったので、薬剤性を疑う。カルテを見てみると、イトリゾール内服開
始してから 1 月後の 2 月 27 日にも、下肢のむくみを訴えていた。既往歴として、膀胱腫瘍が挙げられる。
症例 3 : 63 歳、男性。先月、ラーメンを食べたあとの急な血圧低下で、パナウルを受診。古川先生が血圧測定と直腸診を行い、
直腸からの出血を認めなかったため、そのままドクターヘリを要請した。ドクターヘリが修理中だったので搬送には少し時間はか
かったが、浦添総合病院へ搬送された。搬送中、ヘリの中で、暗赤色の嘔吐を認めた。浦添総合病院にて、上部消化管内視鏡検査
を施行し、食道に裂孔、胃に多発する潰瘍を認め、それらからの出血と診断された。今日は、術後与論島に帰ってきてから初めて
の受診だったそうで、貧血改善の指導を受けて帰られた。先生の迅速かつ正確な診断と搬送判断があったから助かった命だと思う。
196
遠隔医療実習記録
適当な症例がなかったので、事前に頂いていた症例からピックアップさせていただきました。
< 症例 >59 歳男性、高血圧、糖尿病にて当院通院中。検診目的で撮影した胸部 Xp にて右
下肺野に1cm×1cm、2cm×2cmの結節影、右横隔膜下に3cm×3cmの結節影、
左下肺野第 6 肋間、第 7 肋間付近に1cm×1cmの結節影が 3 個、心臓の裏に
2cm×2cmの結節影を認めた。
多発する結節影から転移性肺がんを疑い、高診を求めて紹介しました。
< 返答 > 「ご指摘のように、右肺野の 2 個の結節、心陰影の中、右横隔膜より下方にも結節が
見られます。診断は多発結節影から、転移性肺腫瘍を疑います。
(この患者は直腸がん肺転移の症例でした。)
実際に使用してみて、離島や僻地においてはそれほど時間差もなく相談できること、また使い
方によっては一人だけではなく複数の医師にコンサルトできるのが良い点だと思いました。た
だし、この一週間ではわからなかったのですが、鹿児島大学病院においてこのシステムがどれ
だけ活用されているのか、各科の返答体制がどれほど整っているのかが問題点ではないかと感
じました。
感想
私の与論での思い出は貝殻パフェに始まり、有泉、山羊汁、古川先生の奥さんのハンバーグと
パエリア、ティダラ、カレー、ヨロンジンジャー、そしてもずくそばに終わるまさに美味しい
もの尽くしの一週間でした。
私は離島実習前に日曜日に開催されるヨロンマラソンへの出場を決めていたので、出発はポリ
クリ終了日の夕方でした。この時期の与論行きの飛行機は毎年満席、フェリーもいつもの倍以
上の人が乗り込みます。私達の船にもランナーがたくさん乗っていました。フェリーの中は想
像以上に快適で、あっという間に与論に到着しました。到着日は翌日のマラソンの受付を済ま
せ、ヨロンマラソン前夜祭に参加しました。
前夜祭は軽食とビールがついてきて、初めのうちは内輪でわいわいといった感じだったのです
が、途中から何やらあやしげな盛り上がりが・・・と思ったらもう時すでに遅し。一緒に参加
したメンバー全員、与論献奉の餌食になってしまいました。
翌日はマラソン本番です。この日は快晴と言っていい程天気が良く、体感温度は 30 度近かっ
たのではないかと思います。熱中症にならないよう水分補給しつつ、何とか走りきることがで
きました。島を一周してみて気づいたことですが、この島は皆が知合いで、何より島の人がこ
のイベントを楽しんでいるのがよくわかりました。 15 キロ地点くらいで、山羊汁を振舞って
下さったのですが、臭みもなくほのかに甘いコラーゲンたっぷりで大変美味しかったです。ゴ
ール後にはウニスープ、サメの漬物を使ったお茶漬け、と海の幸をたっぷり堪能していよいよ
打ち上げが始まります。ここで私達は、同じくマラソンに出場されていた古川先生にご挨拶する
ことができました。
後夜祭はまたしても異様な盛り上がりを見せました。与論はおもてなしの島だと島の人は言いま
すが、このマラソン大会に参加してそれがよくわかりました。一度、島に来た人は必ずまた帰っ
て来たくなるだろうと思います。
月曜日からは気分を入れ替えて、実習スタートです。筋肉痛の足に診療所までのアップダウンは
かなり辛いものがありましたが、民謡を流しながら走るパトカーに励まされつつ、なんとかパナ
ウル診療所までたどり着きました。実習では患者さんの血圧測定を学生に任せて頂いたのですが、
高血圧の多いこと多いこと。食生活もあるのでしょうが、あの与論献奉が関係しているのは明ら
かだと思います。島の人は仕事が終わって大体 7 時ごろから飲み出しますが、与論献奉が始まれ
ば 2 、 3 時間で決着がつきます。みんな要領がいいのか、そろそろ危ないと思ったら静かに退室、
もしくは頃合いを見計らって奥さんが迎えに来ます。それでもたまに飲みすぎてしまった人は、
家にたどり着く前に他所のベッドで眠ってしまうか、道路脇でごろりと横になって朝を迎えます。
与論では家の鍵は必要ありませんが、夜だけは鍵をかけること、夜間の運転ではスピードを出さ
ないことが大切です。実際に私たちも古川先生に宿舎まで送っていただいている最中に、道脇で
横になっている町民に遭遇しました。与論で驚くことはこれだけではありません。まず、町民は
家だけでなく自転車にも車にも鍵をかけません。路駐は自由ですが、車の移動も自由です。そし
て、与論の言葉は標準語とは全く異なります。若い方はもうほとんど与論の言葉を話さないそう
ですが、往診先のご高齢の方は話が白熱してくると、自然と与論の言葉が出てくるので、そうな
るともう言葉よりも目で会話するより他なくなってきます。私たちも古川先生に与論の言葉についての本をお借りして、診療の合
間に学ぼうとしたのですが、与論は敬語がしっかりあって、聞くことはできても話すのはとても難しいことがわかりました。それ
でも一週間の間に町民の方がよく使う「とうとがなし」や「わい!」は簡単ですぐ覚えられ、私たちも事あるごとに常用していま
した。ちなみに、私のあだ名は与論島では「塩」という意味でした。最後に、この島の海の青さには本当に驚きました。この青さ
197
を守るため、町民の方々の努力はいかほどのものなのでしょう。私たちが実習を行った一週間は、
そこまで天気が良いというわけではありませんでしたが、それでも海は常に青く澄んでいました。
町民の方は泳ぎを覚える前に素潜りを覚えるらしいですが、この海から魚を採り、塩を作ってい
ることから、町民の生活は常に海と共にあるのだと感じました。最近では漁に行っても採れる量
は減ったそうですが、この美しい海がいつまでも続くことを祈ってやみません。
さて、高血圧の原因で少し食事について触れましたが、私たちの実習中の食事は基本的に自炊で
した。幸せなことに、同じ実習メンバーがみな料理上手だったため、初日と最終日以外は朝ご飯
からがっつり食べ、万全の状態で実習に取り組むことができました。もちろん、夜は与論の皆さ
んを見習って、マラソンの景品でいただいた有泉とパパイヤの漬物(私の奄美大島土産)を囲ん
で、 3 人で将来について熱く語り合いました。
水曜日の午前中は福祉センターへお邪魔したのですが、この日はあいにくの雨でした。しかし雨
が降ると島の緑はより艶やかになり、アフリカマイマイや目新しい何かを見つけては立ち止まるという遠足気分を楽しみながら実
習先へ移動しました。福祉センターではデイケアの方たちと体操やゲームをさせていただいたのですが、与論の高齢者の元気なこ
とに大変驚きました。皆さんからパワーを頂いて、さらには右の写真のようにお土産まで頂いて帰ってきました。福祉センターの
みなさん、みっしーくとうとがなし!
水曜日の夜には福祉センターでファシリテーションについての講演会があったため、古川先生と研修医の河野先生と一緒に参加さ
せていただきました。講演の後に簡単なグループセッションがあったのですが、ここで知り合った町民の方がガジュマルの会の役
員の方で、とても面白いセッションができました。最終日は彼の旅館がやっている食堂で、もずくそばを頂いてきました。空港か
ら歩いて 2 分と大変便利なところにある食堂なので、与論へ行かれる際はぜひお立ち寄りください。
他にも色々な方と知り合い、様々なお話を聞くことができました。離島実習では診察の見学も大変勉強になりましたが、島の方た
ちとの関わり方や、各々に与えられた島での役割(ポジション)をどう担っていくかが離島や僻地における医療者の大きな課題に
なってくるのだと思いました。そしてそれは教科書やネット上に答えはなく、町民と一緒に生活していく中で少しずつ構築されて
いくものなのだと感じました。
最後になりましたが、古川先生をはじめ、与論島の皆さんには大変お世話になりました。皆さんの生き生きとした姿に、たくさん
のパワーを頂きました。もしかしたら知らず知らずに、この一週間でスピリチュアル・ケアを施されたのかもしれません。また来
年、ヨロンマラソンの時期に帰ってきたいと思っていますので、その時はどうぞよろしくお願いいたします!
氏
名
中村
葉子
3 月 5 日(月)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夕方以降)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 :?歳(高齢)男性。主訴は電動カンナによる右手中指の切創( 2 ×
1.5cm )。切創周囲に軽度の腫脹がみられ、抗菌薬の点滴と消毒の交換をした。症例 2 :?歳(中年)女性。主訴は風呂場で転倒
し、左手首を打撲。手の X-p によりColles(橈骨遠位端)骨折と判明、偏位はごく軽度のため、そのままギプス固定の処置をした。
午後は車で往診に同行。症例 3 :大腿骨頸部骨折の高齢女性の患者さんのお宅を訪問。ベットから車椅子に移乗させて庭を散歩し
た。車椅子は東京都新宿区の寄付によるもの。草むしりもできない身をなげかれていたが、我々の訪問は大変感謝されていた。症
例 4 :主人が寝たきりとなり、妻も認知症がある為、夫婦で特老入居を検討した方がいいと親族や介護職員との話合い中に訪問。
先生の一言で奥様が納得され、すんなり話が進んだ。先生への信頼が感じられた。
3 月 6 日(火)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)、診療所(夕方以降)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 87 歳、男性。主訴はバイク転倒による左足の切創( V 字)、切断面が綺
麗なため皮膚縫合、ソフラチュール使用。
午後は車で往診に同行。症例 2 : Wallenberg 症候群の高齢の男性患者さん宅へ訪問。元気がでないとの訴え、暫く皆で談笑して
いると少し元気になった。週に 1 回等決めて外出をするように勧める。症例 3 : Hansen 病の高齢女性のお宅を訪問。兎眼、手指
の変形あり。 Hansen 病自体はもう落ち着いているので、車椅子を利用し活動範囲をひろげるよう勧める。
夕方は診療所で外来患者さんを見学(夕診)。症例 4 : 13 歳、女の子。主訴は、インフルエンザ疑い。妹に先に同様の症状が出
現しており、検査の結果、妹 A 型( + )、徐々にこの島でも流行の兆し。
3 月 7 日(水)
実習先:福祉センター(午前中)、診療所(夕方以降)、セミナー(19−21)
内容:午前中は福祉センターでデイケアにいらしている方々との触れ合い。会話、体操、ゲーム、お手玉をした。与論語について
も教えて頂く。認知症の方もいるが、明るく、元気な方が多いように感じられた。行きは大雨だったので、自転車を使わず徒歩で
向かったが、道に迷い、通りすがりの方々に道を教えてもらいようやく到着。
午後は、自由時間。雨だったので、ランチにのみ出かけた。
夕方は診療所で外来患者さんを見学(夕診)。症例 1 : 29 歳、重症筋無力症の女性。感冒後の経過観察。不登校だったので、精
神疾患を疑われ、あちこちの病院を点々としたが、良くならなかった。寝たきりだったので往診したところ、器質的疾患( MG )
を疑い、投薬により著明な回復をみせた。現在はすごく元気そうで、先生への信頼が感じられた。症例 2 : 55 歳、女性。主訴は、
右下肢膝関節以下の腫脹による歩行困難、頻尿、浮腫、発熱。反応性関節炎を疑い、関節液穿刺。黄色の液採取し、検査へ。この
198
方は、基礎疾患に骨髄線維症が疑われるが、生検ではっきりせず、再生不良性貧血で申請中。特定疾患の申請の難しさを感じた。
症例 3 : 67 歳、女性。主訴は右肩関節亜脱臼、背中の腫瘤。進行性核上性麻痺があり、転倒により脱臼を繰り返している。背中
の腫瘤は粉瘤。どちらも経過観察。症例 4 : 24 歳、女性(白人)。主訴は 3 〜 4 ヶ月前から続く右季肋部痛、ヨロンマラソン
( 3 月 4 日)後からの口唇・鼻腔・オトガイリンパ節の腫脹。マラソン後の疲労や日光による火傷の可能性が高いが、身体所見で
ははっきりせず、土曜日に腹部エコー予定。
3 月 8 日(木)
実習先:診療所(午前)、会議(午後)、診療所(夕方以降)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 82 歳、男性、主訴は両下肢の著明な浮腫。心臓、腎に問題ないかエコー
を実施。腹水なし、心外膜にも液貯留なし。採血。薬剤性(イトラコナゾール:爪白癬に使用)を疑い、服用中止にて様子をみる。
症例 2 : 17 歳、男性。主訴は発熱と咽頭痛。扁桃周囲膿瘍がみられた。悪化するようなら抗生物質の点滴や入院も検討する。症
例 3 : 84 歳、男性。胸部 X 線写真撮影。健康診断を受けていない人の定期的検査(血液、検尿、胸部 X 線写真)として行う。
午後は、沖永良部・与論地区健康危機管理対策連絡会に参加。沖永良部島とテレビ会議を行っていた。テーマは健康危機管理、災
害時の対応について。それぞれの島の事情があり話し合いは難航していた。
夕方は診療所で外来患者さんを見学(夕診)。症例 4 : 75 歳、女性。主訴は肩の痛み。肩鎖関節炎と診断し、安静にするよう指
示。症例 5 :?歳(中年)、男性。主訴はふらふらする。右眼振あり、舌右偏位、 DTR 両下肢亢進(左>右)、指鼻指試験わず
かに右で拙劣。軽い小脳梗塞を疑い、精査を勧める。本人の都合にあわせて沖縄の病院を紹介予定。
3 月 9 日(金)
実習先:診療所(午前)
内容:診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 84 歳、女性。頚動脈エコー。 DM があり、
暫く別の病院にかかっていて、現在手持ちの数が半端な薬も飲みたいと希望。それらが服用できるよう今後の処方の調整をする。
症例 2 : 64 歳、男性。以前に急性貧血で来院、出血性潰瘍を疑い、沖縄にドクターヘリで搬送され無事回復。今回はその後の経
過観察。先生曰く「出血性潰瘍に痛みなし」。症例 3 : 60 歳、男性。採血の結果が高K血症。 ECG では異常なく、採血の仕方
か処理の仕方に問題があったと考えられ溶血と判断。症例 4 : 83 歳、男性。主訴は、疲労時に生じるけいれん。芍薬甘草湯を処
方。副甲状腺機能低下がないなら、弱くなった筋の疲労と考えられる(スポーツ後に生じるものと同じ)。
遠隔医療実習記録
<紹介状>
この度は大変お世話になっております。
59 歳男性、高血圧,糖尿病にて当院通院中です。検診目的で胸部X線写真を撮影しました。特に自覚症状、他覚的所見はありま
せん。
胸部X線写真では
右下肺野に 1 ×1cm、 2 ×2cmの結節影、右横隔膜下に 3 ×3cmの結節影、
左下肺野に第 6 肋間、第 7 肋間付近に 1 ×1cmの結節影が 3 個、
心臓の裏に 2 ×2cmの結節影を認めます。
多発する結節影から、転移性肺癌を疑っております。
貴科的御高診をよろしくお願い致します。
<返信>
ご指摘のように、右肺野の 2 個の結節、心陰影の中、右横隔膜より下方にも結節が見られます。
診断は多発結節影から、転移性肺腫瘍を疑います。
<使ってみて有効だった点>
実際にすぐ専門医から返信がもらえるなら心強いと思う。
<新たに追加もしくは改善してほしい点>
windows だけでなくmacにも対応させてほしい。
感想
3 月 4 日(日)のヨロンマラソンのハーフへの参加からはじまった与論島での実習だった。ポリ
クリ最終日に大学からそのままフェリーに乗り込み、 1 日半ゆられ、沖永良部島に停まる様子など
もみながら、無事与論島に到着した。ヨロンマラソン直前とあって、普段にはない乗船数で皆ラン
ナーとおぼしき人ばかりだった。町もマラソンの準備でにぎわっていた。
ヨロンマラソンは前夜祭(土夜)と完走パーティー(日夜)がある。前夜祭で「与論捧奉」の洗
礼を受けた。与論島には与論捧奉なるものがあり、「親」が焼酎を杯に注ぎ、ほぼその場の全員へ
勧めに回ってくる。杯を受けたら飲み干し、その証に頭の上で杯を返すのである。マラソン前日の
夜なのに、飲むのをためらう人はなく、最後は皆で踊っていた。マラソン当日は、谷川真理さんが
ゲスト走者として毎年参加されており、一緒に準備体操をしてからスタート。
ヨロンのコースは起伏が激しく、記録は期待できないので、楽しみましょうと前夜祭からいわれ
ていた為か、ピリピリした感じは全くないまスタート。街道で、金物を鳴らしながら、地元の方々
が子供からお年寄りまで応援してくれていた。気温も 3 月とは思えないほど高く、晴れていて、景色は最高だったが、走るには暑
かった。完走後の完走パーティーがゴール近くの浜辺で行われるのだが、ヨロンパナウル国王の挨拶に始まり、フラダンスやバン
199
ド演奏、じゃんけん大会、そして与論捧奉、最後はまた皆で踊りまくって閉会となった。ヨロンマ
ラソンは、島民約 6000 人に対し、参加者 1500 人程度(島民含む)であり、走者の島民も多く、
規模的にも皆が一体となって盛り上がりやすいと思った。この楽しい雰囲気が忘れられず、リピー
ターが続出するのもよく分かる気がした。これからお世話になるパナウル診療所の古川先生もハー
フを走られており、救護所も担当されていて、完走後、ご挨拶しに行った。丁度東京の病院からパ
ナウル診療所へ 1 ヶ月間の予定で、研修医の先生もいらしていた。
マラソンは島あげての一大イベントであり、参加したことで、その後の診療所の実習でも、会う
人毎におつかれさまとねぎらって頂き、同じ行事を共有した連帯感のようなものが感じられ、マラ
ソンから参加して良かったと強く感じた。島に到着してすぐ立ち寄った、喫茶店の娘さんが、その
後もマラソンの前後で会う度に気づいて挨拶してくれたのが印象的だった。マラソンの時は、民宿
に泊まったので、民宿の方と話ができたのも良かった。実習期間中に滞在する活性化センターの学
生担当の方についても皆さんご存知で、そのようなところは島のような小さな社会らしさだと感じ
た。
月曜からパナウル診療所での実習がはじまった。高血圧などの慢性疾患で定期的にいらっしゃる
高齢の方だけでなく、作業中や運転中の事故による外傷や、子供のインフルエンザや予防接種、搬
送が必要となる緊急疾患や、外の大病院で診断がつかなかった症例など、幅広い年齢層の様々な疾
患の方がこの短い実習期間の間にもこられ、それぞれに適切に対応されていく先生の姿に、プライ
マリケア、かかりつけ医とはこういう先生のことをいうのだと強く思った。与論の人は、皆さんい
つでも元気で、怪我や病気でも自分で車やバイクで来る方が多いのにも驚いた。見た目では年齢が
よめない方が多く、カルテ記載の年齢をみて驚くこともしばしばだった。先生はなるべくしなくて
いい検査はせず、振り返れば、大学で毎日のようにきいていた MRI 、 CT といった単語を殆どき
くことがなかった。逆にエコーは必要があれば行われており、侵襲性の少ないエコー技術を身につ
けることの大切さを感じた。
また慢性疾患の方々にも一方的な物言いをすることはなく、患者さんの家族構成、生活背景も踏
まえた上で、今その患者さんに必要なこと、できることを考えて、言葉にされていると思った。往
診でも先生が行くと雰囲気がほわっと和むことが多々あり、具体的な投薬といった治療だけが、医
療ではないことを感じた。そういった先生のさりげない優しさ、温かさに沢山ふれることができた
のが良かった。診療後に地域のイベントにも積極的に顔を出されていて、そういった姿勢も島民の
信頼を得る要素になっているのではないかと思った。与論では、患者さんやその家族に、診療所以
外の色々なところで会い、単に患者としてではなく、生活している一個人としての姿があることを、
改めて感じさせられるよい機会だった。逆にまた、このことはこちら側(医療者)も同じように生活者としてみられているという
ことだと思った。先生は、ギターなどの趣味や、タラソテラピーの導入など、診療所の机に座っている以外の姿が沢山あり、また
そのいくつかは島民にもよく知られていて、そういったことも大事なことだと思った。
往診の途中で、眺めのよい場所に案内して頂いたり、診察が一段落ついた時などに、色々与論についてきかせて頂けたことも、
与論を知る上で大きく楽しい時間だった。与論では、自転車も車も家も鍵をかけないのが普通であり、駐車場が混雑していたら、
適当に駐車しておけば、誰かが移動する時に、うまく移動しておいてくれるそうである。逆に自転車など鍵をかけると外から来た
と思われるらしい。家に鍵をかけるのは、酔っぱらいが適当に家に入ってきて寝てしまうのを防ぐ為で、泥棒対策ではないとのこ
とだった。与論捧奉もあり、皆夕方から飲むが、ペースが早くて、 19 時過ぎにはできあがったしまうこともあるらしい。マラソ
ンの祭りでも感じたのだが、飲んでも、皆引き際があっさりとしていて、 1 〜 2 時間大いに盛り上がって解散、というか、泥酔と
なりお開きになってしまう。人によっては奥さんが頃合いを見計らって迎えにくるらしい。道路で寝てしまう人もいるらしく、実
際、実習中のある日の夜、先生からきいていた通り、道路に飲み過ぎて寝ている人がいて、先生に優しく声をかけられていた。
また与論は、ヨロン語が思った以上に使われていて印象に残った。「あなた」とか何かに驚いたときの言葉などちょこちょこ普
段でも使われていた。福祉センターでは高齢者の方々が話しているのがさっぱりわからず、途中でこちらに分かるよう標準語にし
てもらい突然何を言っているのか分かるという不思議な感じを経験した。診療所に与論語についての本もあり、合間に眺めていた
のだが、与論語は目上、目下で変わる表現が多く、長くいても聞き取れても話せるようになるのは難しいそうである。沖縄の人と
は通じるらしく、距離からしても鹿児島県ではあるが、限りなく琉球よりだと感じた。診療所でも、鹿児島市内に紹介することも
勿論あるが、沖縄の病院へ紹介することも多そうだった。
与論では、自宅で死を迎えられるよう、施設など他の場所にいたら、亡くなる直前に家族が連れて帰ることがよくあるそうである。
亡くなると魂はその場にとどまると考えられていて、魂は肉体と一緒なら移動できる。ばらばらだと(自宅以外の場所で亡くなる
と)神主さんに移動してもらわないと駄目でお金も時間もかかるらしい。
与論は一島一町というある意味、特殊な島ではあるが、それゆえのまとまりの良さをマラソン等を通して感じた。また、鹿児島、
本州から遠く離れた離島であり、独自の文化が色濃く根付いていると思った。古川先生のような頼りになる先生がいるのは一口に
離島といっても医療面では大きく異なると思った。今回、改めて、場所や地域によって必要とされる医師像も変わってくるもので
あり、先生はそういったこともふまえて、与論に必要な医師として存在されてきたのだと思った。
実習としては 5 日間、マラソン参加の為に早めに与論入りしたことを加えても 8 日間という短い期間ではあったが、先生を初め、
200
看護師や事務の方、活性化センターの方、島の皆さん、研修医の先生のおかげで、楽しく充実した日々を過ごすことができたと思
う(先生の奥様の美味しい昼食を頂く機会が 1 度しかなかったのが唯一の心残りである)。
ミッシーク、トートガナシ!!!(本当に有難うございました)
平 成 24 年 3 月 12 日 ( 月 ) ~ 3 月 16 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
吉留
正次
3 月 12 日(月)
実習先:診療所で診察(午前中)、往診・その後診療所で診察(午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 : 16 歳男性、吐き気・咽頭痛・咳を主訴に来院。インフルエンザを疑い迅速キットで検
査するも陰性。急性上気道炎と判断し咳止めと抗生物質を処方した。
症例 2 :高齢男性、きび刈り中に指を切って、現在傷口を治療中。傷口の経過は良好で、洗浄と
軟膏塗布、ガーゼを巻き直した。
3 月 13 日(火)
実習先:診療所で診察(午前中)、往診・その後診療所で診察(午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 : 85 歳男性、高血圧の検査。牛のお産だから早めにしてくれと、 1 番目に診療した。問
診をしていつも通りの薬を処方。
症例 2 : 10 歳男児、近所の犬にかまれたとのこと。傷口を見るとそれほど深くなく、傷口の洗
浄と軟膏塗布、ガーゼを当てた。傷口がそれほど深くなかったため、破傷風のワクチンなどは使
用せず。
3 月 14 日(水)
実習先:診療所で診察(午前中)、産業医として福祉センター・その後診療所で診察(午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 :大腸癌術後の男性、術後の定期フォローのため来院。エコーや血液検査では再発や転移
巣などを見かけないが、エコーでアルコール性脂肪肝の疑い。本人も昔はかなり飲んでいたとの
こと。生活指導をした。
症例 2 : Fahr 病の女性、定期フォローのため来院。喋りにくい、右半身と小脳の失調、物忘れ
がある。CTで特徴的な石灰化を認める。特に進行しておらず、経過観察。
3 月 15 日(木)
診療所で診察(午前中)、体操教室・その後診療所で診察(午後)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 :母親と 3 人の子供が全員腹痛と下痢を主訴に来院。前日にバレーの大会で大勢の集まる
ところに行ったとのこと。感染性胃腸炎の診断。
症例 2 : 0 歳男児、
予防接種に来た。これまでも特に問題なく経過し、今回が初めての予防接種。注射でやはり泣い
たが、特に問題もなく帰宅。
遠隔医療実習記録
19 歳男性、労作時の胸部圧迫感を主訴に、外来受診。 2 年前に左胸に軽い違和感を覚え、自然
軽快した既往あり。 1 週間前から胸部違和感を感じており、昨日から歩行など労作時の胸の圧迫
感が強くなったため来院。来院時のバイタルは、体温37.3℃, BP104/60 , HR88 。検査結果は
WBC 8200,RBC 420 万 Hb 14.0g/dl
年齢と 2 年前にも同部に軽い違和感を感じており、レントゲンでは左胸の血管影の消失などから気胸の疑いで紹介。胸写の読影
を依頼した。
使ってみて、実際の診療での紹介の雰囲気などがわかってよかった。しかし与論島の活性化センターに無線 LAN があることを
知らずパソコンを持っていっていなかったため、診療所のパソコンをお借りしたのだが、昼休みなどの短い時間しかなくバタバタ
だった。
感想
今回の離島実習をする前は離島医療に関するイメージは漠然としたものしかありませんでしたが、今回の実習で離島医療のイメ
ージは大きく変わりました。今までは離島は高齢の患者さんばかりで、血圧のコントロールや関節痛の治療に来る人が大半で、 1
日の患者さんも少数だと思っていましたが、現実は子供の予防接種から大腸癌の術後フォロー、高血圧患者さんの血圧コントロー
ルから外傷の処置まで本当に多岐に渡っていて、また 1 日の外来患者さんの数もとても多く、忙しい診療をされていました。
さらに驚いたことは、先生の知識がとても豊富で、また最新の知識を積極的に取り入れているためにとても新しいことでした。
毎日のように送られてくる学会の資料などには診療後で疲れているはずなのに必ず目を通し、学会や講演会に参加するためにスケ
ジュールの調整や飛行機の予約もしっかり行っていて、離島といえどもこのようにすれば情報や医療が遅れることはないんだと見
201
本を見せていただき、とても感心しました。
先生は医学の知識だけでなく人柄や人間性も素晴らしく、患者さんをただ診療するだけでなく、挨拶や世間話をしながら温かく
患者さんに接していて、患者さんも「あんな素晴らしい先生はいない、学生さんも頑張ってあんな先生になってくれ」と言うほど
信頼されていました。そんな診療の合間に学生である私や研修医の先生を指導してくださり、さらに往診に行った後の空き時間に
与論島の海を見せに行ってくださり、勉強だけでなく与論島の魅力も学ばせてくださいました。
今回の実習で与論島に初めて行ったのですが、与論島は海がとてもきれいで感動しました。浜辺から見た海もきれいでしたが、
実習が終了したあと与論島と沖縄でダイビングをしたら、与論島の海の方がきれいでやはり自然が豊かですばらしいところだと実
感しました。島の人達もいい人達ばかりで、一度私が血圧測定で戸惑っていたときなど、「学生さん、もう一回やろう」と患者さ
んの方から声をかけてくださり、とてもありがたかったです。しかしなんと
いっても与論島のすばらしいところはご飯がおいしいところで、特に先生の
奥様のご飯はとてもおいしくては、毎日昼食が楽しみでした。先生方に連れ
て行っていただいた居酒屋の料理もおいしく、もう一度行きたいと今でも思
います。
今回の実習ではいままで学んだことを使って、いままで学んだことのない
診療の様子を学ぶことができて、とても勉強になりました。最後になりまし
たが、僕を温かく迎え入れて指導してくださった古川先生、おいしいご飯と
楽しい会話をしてくださった奥様、近い立場から指導してくださった研修医
の河野先生、血圧測定や薬剤のことなどを指導してくださったスタッフの皆
さん、生活のことなどをサポートしてくださった高橋さん、与論島でお世話
になった全ての方々に感謝したいと思います。
ありがとうございました。
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
谷澤
美咲
4 月 2 日(月)
実習先:診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学。午後は 2 時から往診の後 4 時から夕診。
午前中の外来ではアルコール依存症で、不眠を訴える中年の男性患者を診察した。与論では与論献奉と呼ばれる風習もあり、飲酒
の機会も多いため、アルコール依存症の患者さんがたくさんいるとのこと。医師として教育も大切だが、その土地の文化や習慣に
根付くものとなると難しいのだなと感じた。
往診では、消化管出血疑いの患者さんを診察した。発熱があり、黒色便が認められたとのことだった。診察時にはちょうど入眠さ
れているときだったが、処置を行った。他には、ワルンベルグ症候群の患者さんのお宅にも訪問した。気圧が低くなると体調が悪
くなるので、自分の体調で翌日の天気が予想できるとおっしゃっていたことが印象的だった。
4 月 3 日(火)
実習先:診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学。午後は 2 時から往診の後 4 時から夕診。
腹部エコー、頸動脈エコーを行った。給食センターの職場検診もあり、身長、体重、胸囲測定、胸部 X 線撮影、尿検査を行った。
胸部 X 線写真で右胸心を指摘されていた患者さんがいらっしゃった。他にも、外耳道炎、中耳炎、変形性膝関節症の患者さんを診
察した。また、小児のウイルス性胃腸炎が流行しており、発熱と下痢を主訴として来院した小児の患者さんが何人かいらっしゃっ
た。
往診では、昨日に引き続き消化管出血疑いの患者さんのところへ訪問した。次に、肺炎で入院後の患者さんのところへ向かった。
この患者さんは、以前の経験からなのか、薬に対する不信感が強く、 1 ヶ月前から前医で処方されていた薬を全く服用していない
様子だった。全身の皮膚に乾燥によるものと思われる皮疹がみられたが、これも薬疹によるものだと思い込んでおり、体の一部だ
け診察をして全体を見なかったためにこうなったんだ、こんな患者の診かたはいけない、と私たち実習生にも一生懸命訴えかけら
れていた。先生は患者さんの訴えをじっくり傾聴され、ご家族にも患者さんの様子を伺っていらっしゃった。患者さんが高齢とい
うこともあり、一度医療に対する不信感を持ってしまうと、それを回復するのはなかなか難しいことだと思う。先生のようにしっ
かり患者さんのお話を聞き、具体的にどういった点に不満を持っているのかを時間をかけて理解して少しずつ信頼を得ていかなけ
ればいけないのだと感じた。
4 月 4 日(水)
実習先:地域福祉センター(午前)、診療所(午後)
内容:午前中は地域福祉センターでデイケアの実習。午後は 2 時から往診の後 4 時から夕診。
地域福祉センターでは、まずデイケアにいらした皆様とお茶と黒糖を頂きながら談笑した。みなさん私達実習生をとてもあたたか
く迎えてくださり、与論のいいところや自分たちの地元がどんなところか、といったいろいろな話をした。そのあと、レクリエー
ションを行った。簡単なゲームにみんなで参加したのだが、私たちもかなり白熱してしまい、本当に楽しい時間を過ごさせていた
だいた。与論島に限ったことではないが、年を重ねるとどうしても体の不調もあったりして家に引きこもってしまい、社会的なつ
202
ながりが薄れてしまいがちだと思う。こうしてみんなで集まって賑やかに笑って過ごす場というのは、大切なものだと感じた。
午後からは往診に出かけた。寝たきりで認知症もあり、最初は年齢を聞いても「 20 歳」と答えたりあまりはっきりしていなか
ったが、先生が昔患者さんが大牟田にいらっしゃったことを聞いて、炭鉱節を口ずさんだとたん、患者さんが急に活き活きとして
昔のお話をしてくださった。先生のお話のうまさ、患者さんの元気を引き出す力に感動した出来事だった。その後に訪問した患者
さんも同じく寝たきりの生活を送っている方だったが、介護をしている娘さんにメンタル面に問題があるそうで、部屋にあがって
もとても介護に適した環境とはいえない状態だった。患者さん本人のためには自宅で娘さんに施設に入った方がよい環境と言える
だろうが、医師としての立場だけでは環境を改善させるのは難しいとのことだった。患者さんご本人や家族の意志や金銭的な問題
もあるだろうが、行政と連携するなどしてどうにか介護の助けをさしのべる道はないのだろうかと考えさせられる症例だった。
午後の夕診では、 ATL の患者さんがいらっしゃった。鹿児島にも ATL の患者さんは多くいらっしゃるので、大学病院でも経
験したことがあったが、この方は与論でフォローされているということだった。診療所といってもいわゆる common disease だけ
でなく、幅広い疾患を診察することを学んだ。
4 月 5 日(木)
実習先:診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学。午後は 2 時から往診の後 4 時から夕診。
74 歳の変形膝関節症の男性を診察した。整形外科関連の患者さんは多くいらっしゃったが、ほとんどは肩関節、腰、膝関節の痛
みを訴えたものだった。与論町には高齢者が多いためにこういった疾患の患者さんが多くいらっしゃるということだった。他には
加齢による難聴で困っている患者さんも多くいらっしゃった。補聴器もうまく自分に合うものを作るのは難しく、難聴のために人
とコミュニケーションがとりにくくなって、家にこもりきりになりあまり動かなくなるので、結果的に整形外科的疾患も多くなる、
難聴を克服することができる補聴器や薬を発明できればたくさんの人の QOL を劇的に良くすることができるとおっしゃっていた
のが印象的だった。
午後からの往診では、 104 歳の女性のところへ伺った。私たちが部屋へあがるとわざわざ布団から起き上がってしっかり応対し
てくださった。与論での往診では長寿の方も多くいらっしゃったが、これほどの方は他にいらっしゃらなかったので少し驚いた。
診察の際に若いときに改名した際のエピソードも話してくださり、とても興味深かった。
夕診では、背部の粉瘤腫の切除手術を見学した。こういった外科手術でも診療所で行ってしまうことに最初は驚いた。皮膚科の
疾患は比較的患者数も多いので、僻地の診療所で診療が求められることがよくわかった。
4 月 6 日(金)
実習先:診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学。
最終日でフェリーの関係もあり午前中のみだったが腹部エコー、頸動脈エコー、上部消化管内視鏡検査、ABIの測定を見学した。
他には 40 ℃の発熱を主訴に 1 歳の男児が来院し、インフルエンザ簡易検査キットで A 型陽性を示していた。 4 月になってずいぶ
ん暖かくなっていたのにインフルエンザの患者さんをみたのは少し驚いた。
遠隔医療実習記録:今回は行いませんでした。
感想
今回の実習では本当にいろいろなことを学ぶことができた。まず初日からたくさんの患者さんの診察にあたり、忙しさに少し圧
倒された。僻地の診療所であるので、扱う疾患も幅広く、内科的な疾患はもちろん、皮膚科や耳鼻科などの外科的な疾患も多く診
察した。 X 線撮影やエコーや内視鏡などの検査もたくさん経験させていただいた。今回の実習中にはなかったが、診察室にあった
4 月の予定表には学校の健診の予定がぎっしり詰め込まれていた。その中には内科健診だけでなく、耳鼻科健診の予定もあり、僻
地で医療をするには本当に幅広くのことが必要とされるのだなと感じた。新しく赴任された学校の先生方がみなさんで診療所に挨
拶にいらっしゃったのも先生が地元の方々に信頼されている証なのだと思った。私たちが実習が終わった後に与論のお店でご飯を
食べていると、地元の方に話しかけられて、診療所で実習していることを話すと、「古川先生にはみんな本当にお世話になってい
るからね。すばらしい先生なので、しっかり勉強してください。」と激励の言葉を頂くこともあった。まさに先生が何年も与論の
町で地域医療に人力してきたたまものだと思う。
往診でも、与論の町をどこでも回っていった。高齢者の多いこの町では、診療所へ通院するにもままならず、往診できる医師が
不可欠だと痛感した。往診は実際に患者さんの家に訪問するので、普段の生活がどのようなものかを観察するのにも適していると
感じた。数日往診に通っていた患者さんでは、最初はあまり表情がさえなくても毎日往診に行くうちに日に日に表情が豊かになっ
ていくのがわかった。こうして地道に患者さんと接していくうちにわかることがあるということも改めて気づかされた。
また実習をしているうちに先生は医療だけでなくまちづくりという点においても地域に貢献されていることを知ることができた。
与論という町を心から愛して、今現在どういう問題を抱えていて、どうすればもっとよくなるか、ということを常に考えてらっし
ゃるということがわかり、精力的に活動されている姿に感銘を受けた。外からやって来た身としては、のどかで海がきれいで自然
が豊かで人もみんな親切で、いいところしか見えなかったが、やはり長年そこで生活していくと問題点はおのずと見えてくる。た
だでさえ忙しい診療をしながらよりよい与論を作るために努力することは並大抵のことではないと思う。
今回の実習では先生はもちろん、不慣れな血圧測定で手こずっているときに優しく声をかけてくださったり、往診へ向かう途中
で与論のいろいろなお話を聞かせてくださった看護師さん、古川先生と一緒にいろいろなことを指導してくださったり、研修医と
してのお話をたくさんしてくださった前田先生、お昼休みのたびに本当においしいご飯をごちそうしてくださり、気さくに明るく
お話ししてくださった先生の奥様にも本当に良くしていただいた。活性化センターの高橋さんにも港から宿舎への送迎をしていた
だいたり、お土産屋さんの紹介をしてくださったりととてもお世話になった。地元の方も皆様本当に親切にしてくださって与論に
203
はいい思い出しかないと言っても全く過言ではない。きれいな海の色も相まって、また絶対に
与論に行こうと堅く心に誓った。
最後に、今回の実習で関わった方々に心を込めて、本当にお世話になりました。ありがとう
ございました。
古川先生と研修医の前田先生と私たち実習生→
氏
名
中原
舞
4 月 2 日(月)
診療所(午前)、往診(午後 2 時- 3 時)、診療所(午後 3 時- 7 時)
与論島には、 3 年生での離島医療実習と、今年度のヨロンマラソンに続いて 3 回目の訪問でした。 3 年時の実習は見学が主でした
が、今回は血圧測定や健康診断の補助などを行い、前回より患者さんの背景なども余裕をもって見られるようになり、充実した実
習を行うことができました。
午前中は朝 8 時 20 分から診療が始まりました。大腿骨頚部骨折をされた 100 歳の女性が来られました。レントゲン撮影で移乗や
体位変換を行うとき、看護師さんが方言で声をかけられていたのが印象的でした。正面像と側面像を撮影し、折れた大腿骨近位端
がちょうど骨頭の中心に食い込んでいる像が見え、この偶然により痛みが少なくなっていると考えられました。また、一家の 4 兄
弟とお父さんが嘔吐下痢で受診されました。一家まるごと診察を受けている光景は見たことがありませんでした。子どもたちは自
分の番が終わると待合室や診察室を行ったり来たり楽しそうでした。診療所が木で出来ており、仕切りのドアもほとんどないため
圧迫感がなく、これなら来るのも嫌がらなさそうと感じました。
午後は往診に出て、与論の風景を眺めながら、消化管出血の後に鉄剤を注射している方、 Wallenberg 症候群の方のお宅に伺い
ました。 Wallenberg 症候群の方は気圧の変化が敏感に感じ取れるそうで、具合が悪いとのことでした。その通りに翌日は雨にな
りました。
4 月 3 日(火)
診療所(午前)、往診(午後 2 時- 3 時)、診療所(午後 4 時- 6 時)
この日は朝から嵐となり、台風のような音が聞こえる中でエコー検査が行われました。頚部エコーを行った患者さんに総頸動脈
の分岐部にプラークが見つかりました。その後先生より、血圧管理の他に頸部のプラークを発見することでより効果的な脳梗塞予
防が行えることを講義して頂きました。この日は給食センター職員の方の健康診断があり、血圧測定のほか、体重、身長、胸囲の
測定、視力検査などもやらせて頂きました。自分が視力検査を実施するのは初めてで、実際やってみると手間取ってしまい印の真
上を指して見えなくなってしまうこともありました。
午後は往診の後、夕診では交代で調剤実習を行いました。与論島には調剤薬局はないとのことで、薬は診療所で出されています
が、薬を切らさないようにして適正在庫を保つ管理が難しいと感じました。その後 10 ヶ月健診の子が来られ、研修医の先生が健
診されるのを見学しました。体重・身長は成長曲線の中心を経過していました。視線が合い、伝い歩きができ、離乳食も進んでお
り、喃語が出ていて、特に発達に問題はなく元気に成長していました。
5 時 15 分になると、診療所に子どもに向けた島内放送が聞こえました。子どもは車に気をつけて家に帰りましょう、帰ったら学
習に励みましょう、大人の方は子どもを見かけたら声をかけてあげてください。という内容でした。島の方が子どもを優しく見守
っている様子が伝わってくるようでした。
4 月 4 日(水)
福祉センター(午前)、往診(午後 2 時- 3 時)、診療所(午後 4 時- 6 時)
午前中は地域福祉センターを訪問し、デイケアの利用者さんたちとレクリエーションを行いました。童謡を歌ったり、脳トレの
ようなゲームをしたり、新聞紙を使った体操など楽しく参加しました。 3 年生での実習の時にお会いした方もお元気で嬉しく思い
ました。以前伺った時も同じように思いましたが、皆さんが昔からお知り合いなので会話が多く、和気あいあいとした明るい雰囲
気で、今まで行った地域のデイケアとかなり違った印象でした。
午後は 4 件の往診に伺いました。途中で与論島に来ていたにしきのあきらさんのロケ隊とすれ違いました。その後島内放送で夕
方に無料歌謡コンサートが行われることが放送されていました。 3 件目の往診で、認知症の女性のお宅に伺ったとき、昔住まれて
いた場所の歌を先生が歌われると、詳細な思い出を話し始められて驚きました。やっぱり与論が一番、という結論になりました。
その次に往診の最後に伺ったお宅では、介護環境が良いとは言えず、福祉サービスを介入させたく働きかけているが、同居家族が
いてなかなか利用が難しいとのことでした。与論はお年寄りを大事にする文化と聞き、事実そのようなお年寄りばかり目にしてい
たので、どんな場所でもいろいろな環境の方がいるのだとわかり複雑な気持ちになりました。
夕診では 67 歳の女性の方が不眠を訴えてこられました。お子さんが全員島の外に出られていて、そちらへ呼ばれているので、
先祖のことや先行きのことを考えていると眠れないというお話でした。やっぱり与論が一番いいとみんな思うのに、出なければい
けない現実があるのだと知りました。抗不安薬を処方され、少量から服薬して様子をみることになりました。
宿泊所の活性化センターに帰るとき、茶花海岸の前を通ると、にしきのあきらさんの歌謡コンサートを観に多くの人が集まって
いました。
4 月 5 日(木)
診療所(午前)、往診(午後 2 時- 3 時)、診療所(午後 3 時- 6 時)
この日の診療では、 55 歳の女性で骨髄線維症の方が、月に一回の輸血のために来られました。血液製剤は飛行機で運ばれ、届
いてからクロスマッチにかけて輸血されると教えて頂きました。その後先生からスピリチュアル・ケアの講義を受けました。与論
204
では死の感覚が少し異なることは前回の実習でも教えて頂きましたが、今回はより詳しく、与論の人にとって死は過程であって、
先祖のところへ行くことなのだと知りました。
往診では 104 歳の女性の所へ伺い、お名前に関する思い出を話して頂きました。大腿骨骨折後のため、布団からはあまり動けな
い様子でしたが、座れるようになって痛みもあまりないようでした。この方の手が届く場所には身の回りの品がきれいに整頓され
て置かれていました。昨日のことも思い出し、介護環境の違いが高齢者の QOL をどれだけ左右するか身に染みました。その後の
往診では、前回の実習でお会いした方を再訪することができました。前回伺った時には、与論の言葉で「うわーち
たばーり(よ
うこそいらっしゃいました)」と出迎えてくださったため、まったくわからず驚いた思い出がありました。今回も与論の言葉で看
護師さんといろいろ話していらっしゃいました。やっぱり半分くらいしかわかりませんでした。大きくは変わらずお元気そうで、
嬉しく思いました。
診療所に帰ると、午後 3 時から 67 歳の女性の背部粉瘤腫切除がありました。局所麻酔を注射したあと、メスで切開して中身を
取り出し、 30 分程度で手術は終了しました。
夕診では、 73 歳の男性で、上行大動脈瘤の方が来られました。破裂の危険性が高く、最初に先生が手術を勧めたものの、拒否さ
れたので、経過をみられている方でした。大動脈瘤は自覚症状がないこともあり、手術を拒否される方は少なくないそうです。
4 月 6 日(金)
実習先:診療所(午前 8 時- 10 時)
昼の便で与論を立つため、 10 時までの実習でした。 84 歳の女性で高血圧のある方にABI測定と頸部エコーを行いましたが、
動脈硬化の度合いはそれほどひどくなく、プラークも見つかりませんでした。 1 歳の男の子が一日前から 40 度の発熱、咳、鼻水
で受診され、念のためインフルエンザ検査を行うと A 型陽性でした。与論では寒い春が続いており、体調を崩す方が多くなってい
るようでした。
遠隔医療実習記録:実施しませんでした。
感想
・人と環境との関わりについて
与論島に来ると、人間は暮らしている環境と影響し合って成り立っているものなのだと強く感じます。先生は人間は環境によって
病気になると言われました。環境には暮らしている所の食べ物、飲み水、温度、湿度、日射や強風などの気候、家の様式、人との
関わり方、交通の便・不便、外の世界の定義や交流など様々なことがあります。
先生は与論島に来てからガーデニングコンテストやスポーツクラブの設立など、まちづくり委員会の活動に関与されているそう
です。また防風林の造成や、淡水化プラント設置などの事業への提言もされているそうです。先生が島に来られた当時、浄化槽を
設置している家はほとんどなく、地下の鍾乳洞からその多くを賄われる水道水の水質に懸念があったため、検査値を調べたり町に
提言したりして、今は大分浄化槽の設置が進んだそうです。
大きな都市であれば、病院に来た患者さんがどういった環境で暮らしていて、その何が病気に関連していて、何を直せばいいの
か、直せるのか知るのは難しく、実際に環境に手を加えることも難しいと思います。病院で患者さんに対して処置や処方をするこ
とはできますが、患者さんはその背景にある環境と密接に関わっています。島で医師が暮らして患者さんたちの暮らしを知り、考
えるようにすれば、環境に対する対策に医師自身が関与することができます。それは医師の治療の一環になります。そういった視
点で医療を考えた事は今までなく、それが地域医療の魅力の一つなのかなと思いました。
・地域医療を行う医師について
今回の実習では、地域医療を行う医師の責任の重さを感じる機会が多くありました。実際に地域に一人になって、数多くの業務を
行いながら、裁量の大きな診療ができるようになるには相当のトレーニングと覚悟が必要だと感じました。
・パパラギについて
先生が診察室にあるパパラギという本を勧めてくださり、みんなで読みました。パパラギとはサモアの言葉で「空の穴から来た
人」という意味で、最初に島に来たヨーロッパ人の宣教師が乗っていた船の帆が、サモアの人には空に開いた穴のように見えたこ
とから、ヨーロッパ人など先進国の人を指す言葉になったそうです。本は第一次世界大戦の頃にヨーロッパへ旅行したサモアの人
が、旅行先の出来事をサモアの人々に語った内容でした。サモアでは「私のもの」と「あなたのもの」は同じような意味ですが、
パパラギには所有の概念があって、それらはまったく異なること、貨幣経済で硬い紙をありがたがっていることなどが書かれてい
ました。
先生が好きなのは「職業」の事だそうです。サモアの人々は畑を耕して、漁をして、家を作って、なんでもやるが、パパラギは一
つの仕事を嫌になるまでやり続け、それを職業と呼ぶ。という内容です。先生によると与論島の人はサモアの人のように、公務員
の方であっても家に帰れば牛の世話をして、といろいろなことができるのでパパラギではないのだそうです。医師はどうしてもパ
パラギの職業で、一つのことしかできません。
私の実家は農家なので、家族は様々な技術を持っています。果物や鶏が育てられ、農業機械の修理ができ、温室も作れ、ショベル
カーで穴も掘れます。そういった環境で育ったため、与論に来ると懐かしい気持ちがするのだろうと思いました。でも私ができる
技術はほとんどありません。与論の人が先生を必要とし信頼しているように、パパラギの職業は現代の社会ではパパラギでない人
にも必要とされるものだと思います。私も職業上よい医師となれるよう努力を続けようと思いますが、一通り職業のレベルに達せ
られれば、パパラギからの脱却を図るのもいいかなと思いました。
最後に、実習でお世話になった先生、奥様、診療所のスタッフの方々、また与論島の方々にお礼を申し上げます。ありがとうござ
いました。
205
氏
名
吉田
崇志
4 月 1 日(日)
フェリーに揺られること 20 時間、ようやく与論島に到着した。フェリーはとても綺麗で設備も充実しており、幸い船酔いもしな
かったので、疲れも感じず快適な船旅だった。すぐにパナウル診療所に伺い、古川先生と奥様にご挨拶してこの日は終了した。
4 月 2 日(月)
実習先:診療所(8:00~ 12:00 )、往診( 14:00 ~ 15:00 )、診療所( 16:00 ~ 19:00 )
内容:初日の午前中は診療所で外来診察を見学した。午前中は 20 人ほどが受診し、年齢は小児から 90 代まで、症例も感染症、
心疾患、内分泌疾患、膠原病など多様だった。見学だけでなく、血圧測定や尿検査、問診、視力検査など、様々なことを経験させ
ていただいた。
午後は往診が 2 件入っていたので、同行させていただいた。どちらも高齢の寝たきりの患者さんだったが、室内はとても清潔に保
たれていて、家族の方々が懸命に介護している様子が見て取れた。どの家も玄関の鍵はおろか、縁側の窓まで全部開いており、誰
でも簡単に入れそうな雰囲気で、島らしさを感じた。往診の途中で有名な百合ヶ浜に寄っていただいた。まだ砂浜は現れていなか
ったが、海の色が想像以上に綺麗で感動し、思わず飛び込みたくなった。
往診の後は与論の言葉やプライマリ・ケアについて、 1 時間ほど先生に講義していただいた。与論の言葉(ユンヌフトゥバ)は、
現在の日本の標準語とも鹿児島弁ともまったく異なっており驚いた。また日本古語の名残が多く残っており、数百キロ離れている
宮古島と共通点が多いなど、興味深い点が幾つもあり、もっと詳しく勉強したいと思った。 16 時からは再び診療所で外来を見学
した。
症例 1 : 40 代女性、甲状腺機能亢進症。食生活(海藻・魚介類などの摂取量が多い)の影響か、島には甲状腺機能亢進症の患者
さんはとても多いらしい。症例 2 : 70 代男性、発作性心房細動のフォロー。心音を聴かせていただいた。症例 3 : 90 代女性、
大腿骨頚部骨折。車椅子から X 線撮影台への移動が、なかなかうまくいかなかった。症例 4 : 70 代男性、大動脈弁狭窄症。
2RSB にて収縮期駆出性雑音を聴取。
4 月 3 日(火)
実習先:診療所(8:00~ 12:00 )、往診( 14:00 ~ 15:20 )、診療所( 16:00 ~ 18:20 )
内容:午前中は初日と同様に診療所で外来を見学し、血圧測定、問診、尿検査、視力検査、心エコー(学生同士)など、たくさん
経験させていただいた。この日は子供の受診が多く、嘔吐下痢症、水痘が流行っているようだった。午後は往診に同行し、 3 件の
お宅を訪問した。いずれも高齢の患者さんで、感染症による発熱・下血、脳梗塞による Wallenberg 症候群など様々だった。往診
の後は診療所で外来見学、調剤などを行った。
4 月 4 日(水)
実習先:地域福祉センター(9:30~ 12:00 )、往診( 14:00 ~ 15:30 )、診療所( 16:00 ~ 18:00 )
内容:午前中は地域福祉センターでレクリエーションに参加した。福祉センターは見晴らしの良い高台に位置しており、四方に海
が見えて抜群のロケーションだった。この日は 83 歳~ 96 歳の高齢者の方々が 20 名ほど来所されており、一緒にゲームをした
り歌を歌ったりして楽しく過ごした。センターにいらっしゃった方々は、皆 80 ~ 90 歳代とは思えないほど若々しく、話し方も
しっかりされており、元気だった。じゃんけんをして勝ったら相手の手を叩く、負けたら自分の手を引いて避ける、というゲーム
を一緒にやったのだが、皆とても動きが俊敏で、真剣にやったのに連戦連敗だった。ゲームの後は童謡「故郷」を一緒に歌った。
2 時間ぐらいしか一緒に過ごせなかったが、とても楽しく思い出に残る経験だった。
午後は往診に同行し、 3 件のお宅を訪問した。家の中を見ると(他人の家を観察するのはあまり良いことではないが・・)、患者
さんの置かれている背景や、介護がどの程度うまくいっているか、等がある程度推察できて、外来の診察とはまた違った視点で患
者さんを捉えることができた。往診の後は再び診療所で外来を見学した。診察の合間に、先生は与論の様々な環境問題についてお
話して下さった。先生が島の医療のみならず、環境保全活動にも大きく寄与されているということを知り、深く感銘を受けた。
症例 1 : 29 歳女性、主訴は不眠、首の前の部分の腫れ。就寝時に動悸・息苦しさを感じるが、発汗亢進はない。甲状腺機能亢進
症を疑い、血液検査を施行。症例 2 : 84 歳男性、日中、畑仕事をしていて気分が悪くなる。嘔吐下痢症疑い。症例 3 : 67 歳女
性、血圧が高くて気になる、眠れない、心配事がある、などの理由で来院。先生は「本態性高血圧というものは存在しない。必ず
原因があるはずで、その原因に対する治療が大事」ということを強調されていた。
4 月 5 日(木)
実習先:診療所(8:00~ 12:00 )、往診( 14:00 ~ 15:00 )、診療所( 16:00 ~ 18:30 )
内容:午前中は診療所で外来を見学した。この日も血圧測定、問診、心電図装着など経験させていただいた。診療の合間に、診療
所のマネジメントやスピリチュアル・ケアについて、先生に講義していただいた。午後は往診に同行し、 3 件のお宅を訪問した。
最初に訪問したのは、 104 歳の女性の患者さんだった。私達が訪ねると、布団から起き上がって、しっかりと丁寧な口調で挨拶を
して下さった。見た目も若々しく、昔の思い出なども詳細に語ってくださるので、年齢を聞いた時には驚いた。診察中、先生に対
する感謝の言葉を何度もおっしゃっていて、先生のことを本当に信頼している様子が窺えた。私達学生にもとても親切に接してく
ださり、最後にはお茶とミカンまで頂いてしまった。往診の後、 15 時からは背部腫瘤に対する切除術が行われた。消毒・麻酔、
切除、縫合まで手際よく進み 40 分ほどで終了した。 16 時から再び外来診察を見学した。
症例 1 : 87 歳男性、血尿を主訴に来院。膀胱腫瘍。症例 2 : 77 歳女性、心機能の評価目的に来院。心エコー、 ECG 、胸部 X
線、採血施行。除脈、不整脈認められたが心機能に大きな問題なく、フォローとなる。症例 3 : 55 歳女性、骨髄線維症。夜間に
38 度台の発熱、右膝痛あり。白血球、血小板が著明に低下していたため、輸血を行った。症例 4 : 71 歳男性、主訴は多発する
関節の痛み。手指に炎症あり。 RF 陰性、血清尿酸値も正常。症例 5 : 7 歳女子、右眼の充血、痒み。最近、飼い猫が布団に入っ
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てきて一緒に寝るようになった。猫と一緒に寝ないように言われ、残念そうだった。症例 6 : 97 歳男性、大動脈弁狭窄症、心不
全。 2RSB にて収縮期駆出性雑音を聴取。症例 7 : 64 歳女性、進行性核上性麻痺。症例 8 : 73 歳男性、解離性大動脈瘤による
大動脈弁閉鎖不全症。拡張期逆流性雑音を聴取。
4 月 6 日(金)
実習先:診療所(8:00~ 10:00 )
内容:本日最終日。午前中に診療所で外来を見学した。この日も頚部エコー、腹部エコー、胃内視鏡など多くの検査が施行され、
血圧測定、問診などを行った。 12 時 10 分のフェリーに乗らなければならないので、午前の診療の途中で、挨拶もそこそこに抜
け出さなければならなかった。あっという間の 5 日間だった。
症例 1 : 84 歳女性、ABI、 PWV 測定、頚部エコー施行。 PWV 上昇しているがプラーク、狭窄等は認めないためフォローとな
る。症例 2 : 1 歳 8 ヶ月男子、 40 度台の発熱、嘔吐、咳、鼻汁。幻覚を見るような行動が認められる。インフルエンザ検査にて
A 型陽性と判明。症例 3 : 2 歳 5 ヶ月男子、顔面、手に湿疹。虫刺傷疑い。症例 4 : 85 歳男性、腹部エコー、胃内視鏡検査施行。
遠隔医療実習記録
今回の実習では使用しなかった。
感想
与論島は今回の実習で初めて訪れましたが、毎日新鮮な経験ばかりで、とても実りの多い 1 週間を過ごすことができました。島の
第一印象は、とにかく海が綺麗、ということに尽きます。透明な海が視界の彼方まで延々と続く風景は、想像をはるかに上回る美
しさでした。建物も白を基調としたものが多く、ヨーロッパの地中海沿岸のような美しい景観が広がっていました。
パナウル診療所は見晴らしの良い高台に位置し、木造で中は広く、待合室には図書館のように本がたくさん置いてあって、とても
暖かくリラックスできる雰囲気でした。診療所は電子カルテが導入されており、エコー、内視鏡、レントゲンなど、設備も本土と
比べて何ら不足はないように感じました。一方でやはり人材不足は否めず、薬剤師がいないため調剤薬局もなく、調剤はすべて看
護師さんが行っていました。医薬品なども注文して届くまで 2 ~ 3 日はかかり、輸血など緊急を要する場合はヘリで搬送する場合
もある等、物資の調達も大変そうでした。そのような中で老若男女あらゆる患者さんの診療を一手に担っていらっしゃる古川先生
は、やはりすごいと感じました。離島医療に関わるためには、プライマリ・ケアに対する深い知識・技術・経験・専門性が求めら
れ、多くの努力と時間が必要で、情熱だけでは到底通用するものではないということもよく分かりました。先生は島の医療はもち
ろんのこと、環境問題にも深くかかわっており、島の水質調査を自ら実施し、緑化活動なども行われていて、本当に島の人々の生
活のことを案じていらっしゃるご様子を窺い知ることができました。
診療所や往診でお会いした患者さんは、高齢の方が多かったのですが、皆とてもお元気で、 80 歳を越えても畑仕事などを毎日こ
なしている方がたくさんいらっしゃいました。私達学生が外来見学や血圧測定、問診などをやろうとしても、嫌な顔一つせず、
「頑張ってね」「しっかり勉強してね」などの温かい言葉までかけてくださり、
住民の皆様の親切さを存分に感じることができました。 1 週間という短い期間で
はありましたが、与論の人々の温かい人柄、親切さに触れることができたのは何
事にも代え難い経験で、将来は自分も離島医療に貢献できるようになりたいと感
じるようになりました。
最後になりましたが、お忙しい中実習を受け入れていただき、私達学生に多くの
時間を割いて離島医療を教えてくださった古川先生、毎日美味しいお料理をご馳
走してくださり、楽しいお話を聞かせてくださった奥様、検査や調剤の仕方など
ご親切に教えてくださったスタッフの皆様、本当にありがとうございました。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
苅屋
朋
4 月 21 日(土)夕方 17 時
与論島へ向けて乗船
「海大荒れのため船が大揺れするので気を付けて 」 との館内放送。錦江湾をでると案の定大揺れ。船に慣れていそうな“しまんち
ゅ”たちも酔い止めを服用。とりあえず寝る。ひたすら寝る。
4 月 22 日(日)
船内同室にて与論の女性に出会う。島の話を聞く。与論の人の死生観、時代とともに変化している葬式のかたち、自衛隊の航空機
に乗って沖縄で緊急出産、島の若者の仕事のことなど聞く。島のどこかでお会いしましょうと挨拶を交わし別れる。
1 時 30 分遅れで与論到着。高橋さんのお迎え。畑や町の中を車で通りパナウル診療所に到着。丘の上にある診療所。波の音は聞
こえない。色鮮やかな様々な花と先生ご夫婦のお迎え。夜は島のお酒「有泉」を片手に島ラッキョウやピキの揚げ物などを頂く。
その後地元のかりゆしバンドの演奏を聴く。島にはたくさんの島歌がある。島の言葉が判らず歌詞が理解できないが、曲調は明る
く時に悲しい。六調を踊って夜は更けた。
4 月 23 日(月)
6 時起床、海へ散歩。砂を一輪車で運ぶ男性に遭遇。与論の赤土と砂浜の砂を 1 対 1 で混ぜるとよい土になるそうだ。与論は本土
と異なる土。農業やるにも工夫が必要。砂浜には誰もいない。朝日が昇る。少し強い波と少し大きな音。錦江湾にはない外海らし
い景色が広がる。海はもちろんエメラルドグリーン。
8 時 10 分パナウル診療所外来。問診をとり血圧を測る。言葉少なし。お互い緊張。徐々に慣れてきたところで患者さんの日常が
垣間見える。お酒が好きな人、漁業関係の人、ゲートボールが好きな人 ・ ・ ・ 。病院に来る理由は高血圧の治療薬処方が多い。そ
207
のほかは橈骨遠位端骨折、自己免疫疾患など。
診察の合間に、与論町の街づくりについて聞いた。いい医療はいい環境が作る。そのためには街づくりが必要であり、それを実践
されていることに感銘をうけた。運動を通した地域づくり、環境と生存する地域づくり、観光産業の再構築、教育、企業誘致など
与論島ならではの街づくりを風の人(先生)と土の人(住民)とともに築き上げ、時代とともに変化している姿は興味深かった。
14 時より茶花小学校の検診、小学校 1 年生~ 3 年生の胸部診察。元気いっぱい。診療所の先生や看護師さんが幼い頃から知って
いる子どもたち、家族を知っている子どもたち。ただの検診だが背景を知っているからこそ些細なことまで目を向けられることも
ある。その後往診。畑仕事が大好きで働き者のだった 90 歳代女性。大腿部骨折にてベッド上にて安静状態。ストレスが相当たま
っている。瀉血といって剃刀や鋏をねだる。対応に困った家族と今後について話す。死にたいとまで話す患者。生きることが生き
がいではないと感じる。 2 件目は活動が低下してきた 80 歳の男性。Wallegnbergで食事が上手く取れないとのこと。家族が調理
を工夫し頑張って介護。笑顔も見られる。 3 件目は笑顔で迎えてくれた寝たきりの男性。貧血気味で輸血を行う。ここの家族も笑
顔。今日は調子がいいとのこと。家は平屋が多く、風通しの良い家が多い。それぞれの家には神棚や亡くなった家族の写真があり、
庭がきれい。困ったことは与論の言葉が全くわからないこと。地元の看護師さんの存在が大きい。夕方診療、保育園児の蟯虫検査
のため顕微鏡をのぞく。
4 月 24 日(火)
午前中外来。早速覚えた与論語を披露。全く通じず撃沈。「後で呼ぶので待っていてください」と与論語で再チャレンジ。血圧を
測って早速使ってみる。が、間違えていた。患者さんから訂正が入り覚えなおし。しかしそれ以降使うタイミングを逸する。血圧
を測りつつ、顕微鏡をのぞきつつ、先生とお話をしつつ午前中は時間が過ぎる。与論は旧暦を好む。月の満ち欠けによって世界は
動いているようだ。自然と生きている町の人々が素敵に見えた。先生と家族について話す。家の在り方、親子の繋がり。日本の行
く末が心配になる。
午後は茶花小学校の検診。 5,6 年生。williams症候群の児童が一人。同じクラスの友達が心配そうに診察中に手伝いをする。障害
があっても仲間とともに助け合って過ごせる環境がそこにはある。その後往診。一件目はハンセン病の患者さん。大島の病院から
家族の後押しもあり地元与論に帰ってきた。目や足、手が不自由。ラジオで国会の中継など聞いて過ごす。先生が往診に来てくれ
るから心強いとのこと。 2 件目は籠網みの得意な 90 代男性。足が不自由で耳が遠い。昔話を聞く。ワイルドすぎる青年時代。今
でも体ががっちりしていることがよくわかる。 16 時夕方診療。夜、船で出会った女性に再会。昔の与論の話を聞く。
4 月 25 日(水)
午前中は薬局実習。看護師が主に担当する業務。煩雑で大変だがとても重要。似た形状や似た名前でとにかくややこしい。複数個
あると飲み方がばらばらになることもある。事務の人とも協力し確認作業。患者さんにわかりやすいように工夫も加え薬の配布を
行う。医師の処方次第でこの作業は格段に変わる。経営を考えつつも飲む人のことを考えて処方することの重要性を感じる。
午後は与論高校耳鼻科検診。今まで大島にしかなかった養護学校の生徒も地元の通うことが出来るようになったとのこと。地域で
育てることができることは、生徒も親も安心できることだろうと感じる。その後往診。親子 2 人暮らしの家庭。母親が寝たきり。
清拭をしようとするとさわるなと再三大声を出す。どこが痛いのかと粘り強く聞くと腰が痛いらしい。その後なんとか清拭、着衣。
嫌がっていたものの、終わるとありがとうとの一言。気持ちがいいことはやっぱり嬉しいのだろう。地域との関わりが上手く取れ
ていないとのこと。それでも孤立しないようにと手が届く往診の存在意義の大きさを感じる。帰院途中時期限定しか稼動しないさ
とうきび工場を眺める。先生の話しを聞く。地域の産業としてどうあるべきか、それがどれだけ人々の生活に影響を及ぼすのかを
考える。夕方の診療。 30 代腰痛の男性。問診をとり急性腰痛症と診断。レントゲンはとらない。鑑別診断、必要な検査治療。知
識があれば患者の負担も少なくて済む。適切なプライマリケアをなせることの重要性を感じる。
4 月 26 日(木)
午前中は外来にて 40 代女性不正性器出血。血液検査実施。細かい検査は福岡の業者に送るため明日結果が出るとのこと。簡易血
液検査で貧血ぎみと診断。鉄剤を処方。エコーでは卵巣のあたりにふくらみがあり。翌日結果がでて卵巣嚢腫疑いで沖縄の病院を
紹介。
午後は与論高校耳鼻科検診。耳鼻科は月 1 回の専門外来があり通っている生徒がいる。その後の往診 1 件目。息子と 2 人暮らしの
100 歳の女性。笑顔が素敵。食べることが仕事と云う。長生きの秘訣は毎日に感謝すること。看護師さんをべた褒め。仲が良い。
2 件目は月曜日に行った寝たきりの男性の血液注射。相変わらず笑顔だったが注射を痛がる。ずっと寝たきりのようであるが静脈
血栓はないとのこと。病院に帰る道は久しぶりの晴れの日で途中窓に映る海がきれい。夕方診療。高校生男子が部活中に膝にすり
むき傷。治りが悪く早く治したいとの希望で来院。処置と抗生物質投与。ゲートボールの試合に島外にでるために事前に血圧の薬
をもらいに来た 80 代男性。仕事で夜に釣りに行くので眠りが悪いと訴える男性。
4 月 27 日(金)
午前中外来。 100 歳の患者と家族。患者は認知症。息子のことさえ忘れてしまっているが家族は彼女への尊敬の念を忘れない。飲
酒による心窩部痛を訴える 50 代男性。飲酒制限と肝庇護剤注射。お酒はどこにいっても付き物。しばらくの間控えるのも苦労し
そうだ。昼は浜辺でお弁当。午後は与論小学校内科検診。元気いっぱい。校長先生と感染症の話。与論では最近インフルエンザが
流行らない。感染経路、予防について他の地域の話を交えつつ話す。その後往診。 1 件目、おちゃめな認知症の女性。昨日体調が
悪かったと病院に連絡が来ており詳しく話を聞くが与論語が達者すぎて私にはわからず。往診時には見せないが家族の前では困っ
た一面もあるそう。患者の話、家族の話ともに聞く。 2 件目は 90 代の女性。死ぬことは怖いことだ。でもみんなが死なないと町
が人で混雑して困るねと笑顔で話す。日常に生きること、死ぬことを感じる。帰院時に島の昔ながらの塀を見る。島の人にとって
は古臭くダサいと思われている。ブロック塀にしたいとの思いがあったが先生がそれを止めたのだという。土地に住んでいてはそ
の土地のよさが当たり前すぎて見逃されている。押し並べて一つのものをよしとする考え方ではなくその土地のものを生かしよい
208
ものを生み出していくことは地域医療にも通じることだと感じる。夕方の外来。 60 代男性の足白癬。 4 ヶ月乳児の咳嗽。 40 代
女性の感冒。
実習後、町を自転車でぷらぷら。アテモヤのお店に行く。明日 1 周年記念イベントがあり 1 等商品は「やぎ」。一瞬耳を疑う。船
には乗せて帰れない。
感想
~離島医療実習や離島での体験を経験して学んだこと、感じたこと、考えたこと~
沖縄県が目の前に見える人口 5,000 人の鹿児島県の離島、かつては観光業で東京都与論島と呼ばれた。人々は農業や漁業そして観
光で生活の糧を得、独特の死生観を持ち先祖を大切にする心を持っている。そんな「与論」という地域における医療について学ぶ
ことができた。
まず医師としての役割。一人の患者を診るために、まず患者はどのようなことで困っているのかと医師は話を聞く。必要があれば
検査を行い、さらに精密検査が必要であれば島外の大きな病院へ紹介し検査・治療を行う。医師は幅広い知識を総動員し、診察や
病院内にある簡易な検査器具を武器に診断治療を行う。循環器、呼吸器、整形外科、皮膚科、内分泌、産婦人科 ・ ・ ・ とにかく症
例はたくさんあった。身近に専門医がいないので、一人で診断を行い可能なら治療・処置までできなければならない。狭い地域で
は噂はすぐ回る。正しい診断治療は患者への貢献もさることながら自身の信頼をも得る。疾患の数と同様に患者の背景は様々であ
り、患者が普段どういった環境で生活を送り仕事に従事しているかを知っていることでより疾患を適切に診断することができる。
だから疾患のことだけでなく日常のことも聞くこともとても大事だと感じた。また薬物投与だけではなく生活を見直し根本的な治
療指導、継続の大事さも実感した。また病院ではなく家で死を迎える人が多い与論島では往診業務は欠かせないものであり、ただ
話をしに行っているように感じるが患者や家族を支える重要な役割があるものと感じた。
診療所においては優秀なスタッフの存在も見逃すことができない。少ない人数で幅広い業務を行う。特に看護師の働きは細かな患
者への気配りから薬剤の指導まで多岐に渡っていた。ひとりひとりが患者のために働き、その地域にあるものや最新のネットワー
クを駆使しよいシステム構築がなされるのだと感じた。また地元の看護師の存在はより患者の言葉や文化や生活様式などの背景を
理解し核心に近づくにはなくてはならないものだと感じた。
在宅訪問や外来において家族の存在を感じることもできた。自宅で診るには人手が必要である。患者を支える家族の存在があって
こその医療であり、生活である。家族だからこそ不平不満もあるかと思うが、家族を大事にする気持ちが伝わってきた。素敵な文
化であり、私も学ばなければならないことと思った。また、家族を支えるものとして、与論島における福祉施設の充実もあげられ
る。いつでも受け入れ可能な施設が島内にあり、何かあったときに頼れる存在になっているものと感じた。また日常のデイケアや
入浴サービスなどが充実し、みんなで支えあっている様子が伺えた。ただ、離島という隔離された島であり、噂は気になるもの。
一つの行動がどう反映するか気にしてしまいその行動が裏目にでてしまうことさえある。地域ならではの考え方にどうアプローチ
していくべきか考える必要があると感じた。また、家族がいるということは、そこに仕事があり食べていくことが出来ることが必
須の条件である。島の産業は重要なものであり、未来の地域のあり方までを左右する力も持っている。地域で医療をすることは広
い目で地域の人々とともに未来に携わっていく必要があるのだと強く感じた。実際与論の地域づくりに携わっている古川先生のお
話はとても興味深かった。先生は風の人であり、土の人たちとは異なる視点も持ち合わせ、地域の良さを再発見し、よりよい島を
作っていく加勢にもなっていた。時代とともに変わってくる価値観の中で今後与論がどう変化していくのか今後も目が離せないな
と感じた。
そのほか、在宅死が多い与論では独特の文化があり、それによって死に場所を選択し家族や地域も受け入れがすんなりと行えてい
た。どこで亡くなるかは個人の問題だけではなく家族や地域の支えがあってこそだと思う。みんながどのような死生観をもち、選
択を行うことができるかは、他の地域ではまた違った方法でアプローチする必要があると思った。なにが幸せであるのか、どう最
期を迎えるべきなのか、自分自身でも考え、患者や家族と対話していく必要があると感じた。そして各々の答えを受け入れること
のできる社会のあり方を今後作っていく必要があると感じた。
そのほか、保健所や病院が中心となって学校の検診や乳幼児検診など町のなかで早期発見、早期予防といった取り組みがなされて
いる。時代とともに環境が変わり生活の質も上がって、疾患の質も変化している。日頃からチェックしていくことで地域全体を疫
学的視点で捉え何が必要か考えていくことの大事さも感じた。
最後に、この実習で一番楽しかったのは患者さんやご家族とお話することだった。人生の先輩から聞く話は教科書で学ぶことより
もずっと新鮮で興味深かった。生きることや死ぬこと、大事にしなければならないこと ・ ・ ・ 私よりずっと多くのことを知ってい
た。多くの人から学び育ててもらっているのだと実感し、私も地域のひとりとして地域に貢献できればと思った。与論という地域
で学んだことは、様々な地域にも根本的なところは繋がる。国内外問わず生かしていければと思う。多くの方々のお陰で私は医師
になることができるという気持ちを忘れず、今後も学んでいきたい。ありがとうございました。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
最勝寺
佑介
5 月 28 日 ( 月 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 ) 、診療所 ( 夕方 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 84 歳、女性、午前 3 時から続く胸部圧
迫感を主訴に来院。冷汗と心窩部から右側腹、背部にかけての疼痛を訴えており、心電図でⅡ・
Ⅲ・ AVF で ST の上昇と S2 - S6 で ST の低下を認めた。これらより急性心筋梗塞と診断し、
与論病院に救急搬送。症例 2 :頭部に痛みを伴う潰瘍を認め来院。悪寒も訴える。中心に潰瘍の
ある非隆起性の皮疹を認める。天疱瘡を疑い抗デスモグレイン抗体 (IgG) を検査発注。再受診予
209
定とした。
午後は訪問診療に同行。二回の脳梗塞の既往がある患者さんのご自宅に伺いました。気圧 ( 天気 ) によって調子が大きく変化し、
また、朝服用する薬が多く、飲み込みにくいのが一番の問題でした。栄養剤 ( エンシュア ) にコーヒー味がついているとおいしく
飲めるとのこと。また、ヨーグルトを口に含んだ上で熱い飲み物を混ぜ、口の中で冷やして飲み込むという独自の方法をとってい
ました。
夕方からは診療所で外来患者さんを見学。症例 1:8 歳女児。足底にやけど様の皮膚症状を認め受
診。プールの授業後に発症。学校の先生とも話し合ったが原因がはっきりしないが、母親はプール
の水などを原因として考えていた。場所が母指球に限局しているということからコンクリートによ
るやけどと診断。医師からの助言として学校の先生に対策を考えていただくよう指示した。
5 月 29 日 ( 火 )
( 訪問診療の 1 コマ )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 ) 、診療所 ( 夕方 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 : 80 歳女性。主訴は喉の違和感。甲状腺エコー、上部消化管カメラ施行。甲状腺エコーでは数個の小さな嚢胞を認めるも
異常所見なし。上部消化管カメラでは胃小弯に潰瘍病変を認め、 2 箇所生検施行。胃潰瘍と診断し、NSAIDs中止。甲状腺疾患に
関する TV 番組を観て心配になり受診したとのことだった。症例 2 : 69 歳男性。 2 週間前から後頚部と前顔部に湿疹を認め来院。
薬品を扱う仕事上の湿疹と考え、ステロイド処方。猫も飼っているためカビの可能性も考えたが抗真菌薬を用いると原因が隠され
てしまうのでステロイドから開始とした。
午後は訪問診療に同行。ハンセン病の既往があり、奄美の病院で療養されていた 80 歳女性のご自宅に伺いました。
夕方からは診療所で外来患者さんを見学。症例 1: 67 歳女性。下腿の浮腫を訴え受診。アレルギー性皮膚炎の既往があり、ステロ
イドと抗アレルギー薬の合剤 ( エンペラシン ) を服用されていた。ステロイドの副作用による下腿浮腫と診断し、利尿薬 ( アルダ
クトン ) で経過観察とした。
5 月 30 日 ( 水 )
実習先:与論地域福祉センター ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 ) 、診療所 ( 夕方 )
内容:午前中は与論地域福祉センターで研修。デイサービスの一部分を一緒に行った。読み書きの
練習やレクレーション ( ボール遊び・じゃんけん大会 ) といった活動を共にし、与論の方々がどの
ような福祉サービスを受けているのか見学することができました。
午後は訪問診療に同行。大腿骨骨折の既往のある 91 歳女性のご自宅に伺った。乳房に4cm×5cm
の腫瘤を認めるも精密検査を望まず訪問診療を希望されていた。娘さんの介護が十分でないという
ことであったが、本日も一人でいらっしゃってご飯がベッド上に散らかりっぱなしのままであった。オムツの交換もされていなか
ったが何より、その下に塵取りが敷かれていたのには大きな違和感があった。その方はとてもキスがお好きな方で医療スッタフの
手をとってはキスをして感謝していた。とても心温まる瞬間だった。清拭を行い帰院した。
夕方からは診療所で外来患者さんを見学。症例 1: 59 歳男性。草刈をしていた際に右眼に違和感を認め受診。上眼瞼に異物を認め
ピンセットにて除去。抗菌薬 ( オプール ) ・ NSAIDs( アズラビン)を処方。
5 月 31 日 ( 木 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、訪問診療 ( 午後 ) 、診療所 ( 夕方 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例 1 : 54 歳男性。右下腹部か右下背部にかけての痛みを主訴に受診。 T シャツとの摩擦でも疼痛を認める。神経の分布領域に
一致する発疹と疼痛を認めるため帯状疱疹と診断。リリカカプセル ( 末梢性神経障害性疼痛の緩和 ) を処方。
症例 2 : 25 歳、女性。発熱と下腹部痛を訴え受診。以前より尿路結石にて数回受診してい
たが、今回は妊娠中の発症。尿管結石に伴う尿路感染と診断し、抗菌薬にて経過観察してい
たが軽快しなかったが、本人・家族も島内での治療を希望したため、抗菌薬の追加を行った。
それでも軽快しないため、沖縄の市立病院を紹介した。
午後は訪問診療に同行した。大腿骨頚部骨折の既往がある 104 歳女性。
(訪問診療の 1 コマ )
夕方からは診療所で外来患者さんを見学。症例 1: 5 歳男児。くしゃみ、鼻水を主訴に来院。
39 ℃の熱を認めるも解熱しないため再受診。口蓋扁桃に発赤を認め、猩紅熱と診断し、抗
菌薬 ( パセトシン ) 処方。
6月1日 ( 金 )
実習先:診療所 ( 午前 )
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。
症例: 79 歳、男性。右鼡径部の腫瘤を認め受診。尿失禁も認めていた。
触診上、 silk sign を認めず、エコー上でも腸管のヘルニアを認めなかったため、精
管炎と診断し抗菌薬 ( クラリスロマイシン ) 処方。
遠隔医療実習記録:
実施できませんでした。
感想
210
今回、パナウル診療所での離島医療実習や離島での生活を通して非常に多くのことを学び、感じることができ本当に有意義な一週
間となりました。
まず、与論島に着いて思ったことは、何と言っても与論の海は本当に青いということ。透き通るような海水の美しさにただただ見
とれました。
「離島医療」に関しては医療資源、スタッフの不足・十分な知識と経験が必要・行政、保健上の問題にも対応しなければならな
い・交通の便が悪い…など問題も多くありますが、患者 - 医師間の距離が近いこと、医師が患者背景を十分に知っていること、医
師が何度も診ることができる…など、多くの素晴らしいところも実感しました。確かに交通の便は悪く、学会や研究会への出席は
難しいですが、十分な知識を得るためにネットでの情報収集や著名なドクターによる講演・講義の視聴を行い、常に知識をアップ
デートしている姿には感銘を受けました。島というコミュニティーの中で生活することは人によっては大変なことかも知れません
が診療や日々の生活を通じて、自分が人々の思い出の一つに入っていくことで、より一層魅力あるものになっていくのではないか
と感じました。
また、プライマリーを専門に学ぶには単に総合診療医になるための研修だけでは不十分で実際に離島でプライマリーケアの指導医
とマンツーマンで学ぶことが重要であり、必要な技量としてはやはり外科手技が重要で、なるべく多くの手技を行い身につけるこ
とが大切であることを学びました。また、離島診療所からの紹介を受け入れる際にも離島医療の教育を受けていない医師が多いと
理解を得ることも難しく、特に鹿児島のような離島を多く抱える地域ではより一層必要な教育であると感じました。心筋梗塞で来
院された患者さんのトリアージを体験し、医療施設において救急疾患に対する認識の統一の必要性も実感することができました。
また同時に今回の症例のように高度な治療を必要とする患者については沖縄に搬送することが多いとのことでしたが、患者情報が
先方にはなく、また県外であるため先方の医療情勢がまったくわからない状況で、実際に該当する診療科がなくなっていた…とい
うケースもありました。
訪問診療も見学させていただきました。最近は老健施設や病院の増加から訪問診療を行う患者数は少なくなってきているとのこと
でしたが、訪問診療を通じて医師が患者に与えている安心感にはとてもおおきなものがあることを感じました。与論島で生活され
ている方は 60 歳を過ぎても元気に働いていらっしゃる人が多く、実年齢- 20( 歳 ) という印象を受けましたが、これに関して安
心してかかることのできる診療所の存在が長寿の 1 要因になっているのではないかと思いました。それほど患者-医師間の距離が
近く、医師・看護師への信頼を感じました。
以上のように今回の実習では本当に多くのことを学び、見て、感じることができました。島での患者さんとのふれあいはとても
印象的なものになりました。
最後になりましたが、古川先生をはじめ看護師・事務の皆様、お忙しい中時間を割いてご指導していただき誠にありがとうござい
ました。手際も悪く、多々ご迷惑をおかけしたと思いますが一つ一つが本当に自分
の身になったと思います。 1 週間という短い間でしたが本当に充実した 1 週間とな
りました。この場を借りて御礼申し上げます。
尊加那志 ( トートゥガナシ )
最勝寺
佑介
( 注 ) 小外科について
離島医療を行う上で初めて小外科 ( 注 ) という分野も重要であることを学びました。
「小さな外傷や粉瘤、陥入爪などの小外科的疾患はどの科にも属さず、逆に言えば
外科系のどの科でも処置ができ、局所麻酔下に日帰りで行えるものが多く、またほ
とんどが日常比較的よく遭遇する疾患でもあり、軽視されがちだが、一方でこれら
の疾患別に病態をしっかり把握しておく必要があり、幅広い知識と技術が要求され
るのも特徴である。」
氏
名
園田
智洋
5 月 28 日 ( 月 )
実習内容:午前
症例 1 :男性
診療所にて外来見学
主訴
午後
訪問診療+外来見学
胸痛
昨日の明け方から胸部から肩にかけて締め付けられるような痛み、冷汗が起こったため受診。 4 , 5 日前に胸やけがあった。心電
図に異常は認めなかったが、持続する胸痛と冷汗の症状から、急性心筋梗塞を疑い、徳洲会病院へ緊急搬送となった。
症例 2 :女性 (20 代 )
主訴
下腹部痛
発熱と下腹部痛を主訴に受診。現在妊娠中である。触診にて下腹部全体に圧痛あり。腹部エコーを施行したが、特異的な所見を認
められない。抗菌薬を投与して経過観察を行い、改善が見られないようなら沖縄の病院に搬送することも検討する。
症例 3 :男性
主訴
側頭部湿疹
昨日夜に側頭部の有通性の湿疹に気づいたため受診。側頭部から後頭部にかけて 3 ~ 4 個の湿疹を認める。本人は、昨日ずっと畑
仕事をしていて、虫に噛まれたのではないかと言っている。ステロイド軟膏を処方して経過観察。
その他:糖尿病や心血管障害で、症状は特にないが、薬だけを処方してもらいにきた患者さんが多数で、中には先生と話すと元気
になるといった方もいらっしゃって診療所ならではの外来見学を初日からすることができたと思いました。学生は診察の前に患者
さんの血圧を計らせてもらいました。初めて見る顔と、自分の手際の不慣れさに患者さんが緊張したのか、「いつもより血圧が高
い」とか中には、「こんなはずじゃあないんだけど」と不機嫌になる患者さんも何人かいらっしゃって、申し訳なく思い、血圧一
つにしてもなかなか上手くいかないと感じました。
211
5 月 29 日 ( 火 )
実習内容:午前
症例 1 :男性
外来見学
主訴
午後
訪問診療+外来見学
足背の潰瘍
詳細不明。足背の潰瘍に対して 3 日間ぐらい放置していたが、治りが遅いために受診。消毒+ガーゼ交換の処置を行い、経過観察。
症例 2 :男性
主訴
左鼠径部腫脹
2 日程前から左鼠径部の腫脹に気づき受診。触ると痛みがある。腹部エコーを施行したが、特異的な所見は認められない。抗菌薬
を処方し、経過観察。
症例 3 :男性 (10 代 )
主訴
健康診断
ボート免許取得のため、健康診断目的で受診。
その他:高血圧、大動脈弁狭窄症、甲状腺機能低下症など。
1 日目、 2 日目を通して感じたことは、診療所には心電図、 X 線、エコーぐらいしか検査の機械がなく、病名が決められない患者
さんにも対応していかなければならないということでした。 1 日目に受診された妊婦の女性の方も再診でいらっしゃって、診療所
の奥にあるベッドで経過をみていましたし、この日に来た鼠径部腫脹の男性もエコーでは診断がつきませんでした。こういった状
況の中で、すぐに治療しないと危険な状況なのか、緊急性を判別できる能力が最も必要だと感じました。
この日から血圧を図る際、緊張している方や、いつもより高いとおっしゃる患者さんには、「深呼吸してもう一度計ってみましょ
うか。」と言うように工夫してみました。二回目に少しは下がる患者さんもいらっしゃって、血圧が上限値ぐらいの患者さんにと
っては、少しでも低い血圧がでることは精神的にも重要なことではないかと思いました。
5 月 30 日 ( 水 )
実習内容:午前
症例 1 :男性
地域福祉センター訪問
主訴
午後
地域福祉センター訪問外来見学
眼の異物感
畑で草刈中に眼球に異物が入り疼痛と充血があったため受診。ピンセットで異物の除去を試みるも全ては除去できず、痛みの改善
は見られなかった。経過観察。
症例 2 :男性 (10 代 )
主訴
左足第 1 趾の腫脹
詳細不明。学校の部活動でサッカーをしている。 X 線にて骨に骨折などの異常はない。経過観察。
その他:午前中は与論町地域福祉センターを訪問し、福祉センターを利用している方々との会話や、レクリエーションを行いまし
た。その場にいらっしゃったほとんどが 80 歳以上の方でしたが (90 歳以上の方も少なくありませんでした ) 、受け答えもしっか
りしていて、言葉を並び替えるゲームや、その他の頭や身体を使ったゲームをとても一生懸命楽しんでいて、与論の方は長生きで
あるのと共に、健康的であるという印象を受けました。一人の方に、「どうして与論の皆さんはこんなに健康で長生きするのでし
ょうか。」と質問したところ、「与論の人は皆貧乏だから、飯を食うためには歳をとっても働かないといけない。だから身体を動
かすことと食べることが直接つながっているからだ。」と言われ、労働と食のバランスがいかに大切かということを学びました。
5 月 31 日 ( 木 )
実習内容:午前
症例 1 :女性
外来見学
主訴
午後
+外来見学
不正性器出血
詳細不明。腹部エコーを試行したところ、膀胱に mass を認める。膀胱癌の疑いで鹿児島大学病院に紹介。
症例 2 :女性
主訴
夜間頻尿
数週間前から夜間頻尿が気になっていたため夫の処方されている頻尿の薬 ( 詳細不明 ) を飲んでいた。薬がなくなったために受診。
症例 3 :男性
主訴
咽頭痛
発熱、咽頭痛を主訴に受診。咽頭発赤を認める。溶レン菌感染を疑い、抗菌薬を処方。
その他:感冒、細菌性腸炎、橈骨遠位端骨折など
6月1日 ( 金 )
実習内容:午前
症例 1 :男性
外来見学
主訴
腹痛
昨夜から腹痛と嘔吐の出現があったために受診。周囲に同様の症状の者はいない。感染性腸炎疑い。
症例 2 :男児
主訴
発熱
感想
まず、平成 24 年 5 月 28 日から 6 月 1 日まで与論島パナウル診療所で実習させていただいて、古川先生をはじめ診療所のスタ
ッフの皆様や島民の皆様、ほんとうにありがとうございました。レポートでも少し触れているように、血圧一つ計るだけでも、患
者さんを緊張させてしまったり、手際の悪さに迷惑をかけたことと思います。しかし、 5 日間を通して少しずつ診療所に慣れてい
ったり、福祉センターで知り合った方とまた診療所でお会いして話せたりと、短い期間ではありましたが徐々に学習していけたり、
うちとけていけたりして充実した実習期間を過ごせたと思います。
全体として印象に残ったのは、やはり島民の皆さんが、高齢であるにもかかわらず元気そうな方が多いということでした。確か
に実際には高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱えている方が多く、全くの健康体の方は少ないのかもしれません。それでも、与
論島の平和な環境と島民の皆さんの明るいキャラクターを見ていると、病院が多く交通手段も発達している都会に住んでいる人達
よりも幸福に人生を過ごしているように思えました。与論の人たちの明るさや長寿の秘訣はもっと取り上げられて、自分たちの人
生にも取り入れられるのではないかと感じました。
パナウル診療所の唯一のドクターである古川先生はとても温厚な方で、私たち学生にもとても優しく接してくださり、訪問診療
に同行させてもらった時も、「古川先生がいてくれて本当に助かります。」「先生まだまだがんばってください。」など患者さん
212
から声をかけられていて、また 100 歳を超える方は、古川先生が与論に初めて来た時から今に至るまでの歴史を私たちに語ってく
ださって、本当に先生が島全体から愛されていることを知りました。診療時間以外では書籍やインターネットなどで常に最新の医
学の知識を取り入れようとなさっていることや、趣味であるギターについても熱く語るところ、与論の活性化にも熱心であるとこ
ろなど、私たちに求められている理想の医師像をまさに体現されている方だと思いました。
一見とても平和そうに見える与論島でしたが、中にはやはり心筋梗塞疑いの方や、腹痛の治まらない妊婦の方、診断のつかない
鼠径部腫脹の方、不正性器出血で受診して、膀胱癌が見つかる方など、緊急性を要したり、よくわからない疾患の方もいました。
こういった見逃せない疾患を判断することが地域医療の最も大事な部分だと改めて実感できました。そのために、地域医療を行う
ドクターは、何よりも診断の技術と多くの知識を持ったドクターでなければならないと思い、古川先生たちの責任の大きさも感じ
取れることができました。
私は、大学一年生の時、課外実習で奄美大島の加計呂麻島で 3 日間実習をさせてもらったことがあります。その時に一人の患者
さんに、「交通便もわるく病院も遠くて大変に感じませんか。」と質問したところ、その方は「私はここで生まれ育って何も大変
に思ったことはありません。ここで生まれて死んでいけることを幸せに思っています。」と言いました。そのことと同調するよう
に、与論の方たちも病気に負けずとても幸せそうな方々がたくさんいらっしゃいました。しかし、それを地域に根付いて支えてい
るのは古川先生のような地域医療者であり、これからも地域医療というものが鹿児島でより認識されていかなければいけないとい
うことが深く理解できた実習期間であったと思います。
氏
名
藤井
勇輝
5 月 28 日 ( 月 )
実習先:パナウル診療所 ( 午前中 ) 、往診 ( 午後 ) 、パナウル診療所 ( 夕診 )
内容:
症例 1 :中年、女性。主訴は胸部から肩甲骨にかけて締め付けられるような痛み。 4 、 5 日前に胸焼けを主訴に来院し、心電図検
査を行っていたが、その際には異常はなかった。胸部の痛みは 5 月 27 日の昼過ぎから出現。心電図検査を行ったところ、Ⅱ、Ⅲ、
aVf に異常Q波、 V3-6 に ST 低下が見られ、心筋梗塞と診断された。酸素投与を行い、与論徳洲会病院へ救急車で搬送。この際、
救急車に同乗させていただき、非常に貴重な体験になった。徳洲会病院ではバイアスピリン、ニトログリセリンで救急処置が行わ
れ、治療のため、飛行機かドクターヘリで沖縄の病院へ搬送される予定。
症例 2 :糖尿病患者の定期フォロー。食事の際には、炭水化物はあとで食べるようにと食事の指導が行われた。また、血液検査の
HbA1c について説明する際、古川先生は HbA1c の値に 30 を足して、体温と比較すると今の血糖のコントロール状況が分かり
やすいですよと患者さんに説明されていた。つまり、 HbA1c が 8.0 の患者さんだと、 30 足すと38.0になり、平熱の36.5℃と比
べるといかにコントロール不良かが分かりやすい。このような説明の仕方は初めて聞いたので、なるほどと思った。
5 月 29 日 ( 火 )
実習先:パナウル診療所 ( 午前中 ) 、往診 ( 午後 ) 、パナウル診療所 ( 夕診 )
症例 1 :若い男性。ボート免許取得のための健診のため来院。看護師さんと視力検査の手伝いをさせてもらった。海が綺麗な与論
ではダイビングの免許を取りに来る人も多く、また、漁業を職業にしている人も多いので、免許取得の際の健診は、離島ならでは
の仕事だなと思った。
症例 2 :大動脈弁狭窄症の患者さんで、人工弁置換術を受け、フォロー中。駆出性収縮期雑音が聴診所見で得られた。
症例 3 :午後からハンセン病の既往の患者さん宅に往診に行った。現在は治療を受け、ハンセン病は治癒しているので自宅で生活
をしているが、長い間、療養所で生活を送っていたとのことだった。右眼は顔面神経麻痺による兎眼、手指関節の変形が後遺症と
して残っていた。ハンセン病既往の患者さんとお会いしたのは初めてだったので、今回の実習で印象に残っている。
5 月 30 日 ( 水 )
実習先:地域福祉センター ( 午前中 ) 、往診 ( 午後 ) 、パナウル診療所 ( 夕診 )
内容:
午前中は、診療所近くの地域福祉センターで、地域の方々と交流をした。デイケアのような施設で、 80 ~ 90 歳くらいの方々が
多かったが、みなさんとても元気で、与論の話や昔の思い出話をしていただいたり、方言の与論語を教えていただいたり、短い時
間でしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。帰り際には、勉強頑張ってねと応援の言葉をかけてくださり、嬉しか
ったです。
症例 1 :午後からは認知症で寝たきりの生活を送っている患者さん宅に行った。左乳房外側には肉眼でも分かるほどの腫瘤が見ら
れたが、高齢であるため、経過観察中。家に着いた時には、介護している娘さん (?) は不在で、食事はベッド横に置いてあったが、
食べた形跡はなく、布団のシーツも汚れたままだった。先生に聞いてみると、娘さんは精神的に少し問題があるとのことで、高齢
化社会が進んだことによって増えてきた、高齢者が高齢者を介護しなければならないという困難な現状を目の当たりにした。
症例 2 :中年の男性。草刈りをしていた際に、眼内に異物が入ったと訴えて来院した。結膜は充血していた。学生がペンライトで
照らし、先生がピンセットで眼内の異物を取り除く処置を行った。
5 月 31 日 ( 木 )
実習先:パナウル診療所 ( 午前中 ) 、往診 ( 午後 ) 、与論町学校保健委員会、
パナウル診療所 ( 夕診 )
内容:
症例 1 :小学生男児。主訴は腹痛と嘔吐。細菌性腸炎と診断され、抗生剤を処方された。今回の実習を通して、腹痛を訴えて来院
213
する患者さん、特に子供が多かった。
症例 2 :中年女性。以前、不正性器出血を訴え、超音波検査を受けた際、子宮の所見の他に、膀胱癌が見つかった患者さん。先生
が、超音波検査は侵襲が少ない検査だから、患者さんが訴えている原因と考えられる臓器以外の臓器まで、範囲を広く検査するよ
うに心がけなさいと仰ったのが印象に残っている。
6月1日 ( 金 )
実習先:パナウル診療所(8~ 10 時 )
内容:
症例 1 :中年男性。口腔粘膜腫瘍術後の患者さん。開口障害が見られた。口腔粘膜腫瘍を診る機会は多くはないと思うが、実際に
患者さんが外来に来た時に、専門医に紹介する診断能力も大事だなと思った。
遠隔医療実習記録
中年の男性で、右鼡径部から精巣にかけての腫脹、発赤、痛みを訴えて来院した患者さんがいて、鼡径ヘルニアと細菌感染による
精索の炎症との鑑別のために、専門医に遠隔システムを用いて実際に相談したかったが、エコーの画像のスキャナがうまくできず
に断念しました。
この患者さんは、抗生剤によって、 2 日後には患部の腫脹と発赤は改善傾向にあったため、細菌感染による精索の炎症と診断され
ました。
また、事前に大学から配布されていた模擬患者の症例を用いて、遠隔システムを体験しようとしましたが、パソコンの調子が悪く
CD を読み込めず、使用できませんでした。 ITKarte の説明の際に遠隔システムの使い方は理解できました。
感想
5 月 28 日から 6 月 1 日の予定で与論島パナウル診療所にて離島・地域医療実習を行いました。大学 1 年時に奄美大島にて 2 日
間離島実習に参加したことはありましたが、その時は医療の知識はほぼゼロで、ただ病院、診療所を見学して、地域の方々と触れ
合ってという実習でした。しかし、今回の実習はある程度は知識、診察の技術も身についている中での実習ということで、診療所
での外来、往診、地域の方々と触れ合うことで、離島の医療の現状を体験し、少しでも理解できればと思い実習に臨みました。ま
た、鹿児島県の最南端、与論島での実習ということでとても楽しみでした。
フェリーでの 20 時間の船旅を終えて、与論島に着いた日曜日、自転車で島を探索した印象は、今までに見たことのないくらい綺
麗な海に囲まれて、時間の流れがゆっくりと感じられる島だなと思いました。
月曜日、いよいよ診療所での実習が始まると、まず患者さんの多さにとてもびっくりしました。待合室では市内のクリニックと同
じくらい患者さんが診察を待っていました。
その中で、学生 3 人で交代で診察の前の血圧測定を担当させて頂きました。血圧測定はポリクリでも数回しか行ってなくて、久し
ぶりだったので最初は戸惑いましたが、 1 週間でかなり上達したのではないかと思います。
外来が始まると、風邪症状、細菌性腸炎、高血圧などの common disease の患者さんから、心筋梗塞で徳洲会病院に救急搬送にな
った患者さんまで幅広い疾患を見ることができました。古川先生は、高血圧、糖尿病などで薬だけもらいに来る患者さんに対して
も診察室では最近の体調、生活の状況、世間話、時には愚痴まで優しく受け答えされていて、本来あるべき患者さんと医師との信
頼関係を間近で見ることができました。
また、今回の実習で一番体験したかった往診では、高齢者が多く、自分の家で最期を迎えたいという文化、慣習が残っている与論
島の診療所まで診察に行けない患者さんにとっては古川先生の存在は不可欠だなと実感しました。
外来や往診、古川先生のお話を通して、プライマリーケアの大切さ、離島医療の現状などとても多くのことを学ぶことができまし
た。今回の実習で学んだこと、体験したことをこれから始まる医師としての人生で役立てればいいなと思います。
1 週間という短い時間でしたが、古川先生をはじめ、診療所の看護師さん、スタッフの皆さん、地域活性化センターの高橋さん、
与論島の皆さん、 1 週間お世話になりました、ありがとうございました。
実 習 期 間
氏
名
島
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
晃大
6 月 4 日(月)
実習先:(午前)診療所(午後)往診・診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学し、午後から往診と外来見学。
症例:Nさん、男性。実はこの方は前日に知り合い、一緒に飲んでいた方。飲みの最中に転ん
でテーブルにぶつかり、目じりを切ってしまったため自分たちが応急処置としてセロハンテー
プで傷口を合わせた患者さんでした。医療道具のない状況でも、身の回りにあるものでとりあ
えずの処置ができたこと、そして傷口をうまく合わせていたことが嬉しかったです。貴重な経
験をさせていただいた上に、お礼としてケーキをいただきました。
6 月 5 日(火)
実習先:(午前)台風のため休み(午後)往診・診療所
内容:午前中は台風の影響で休みとなり、午後から往診と外来見学。
この日は台風の影響もあって外来に来られる方は少なかったです。
6 月 6 日(水)
214
実習先:(午前)福祉センター(午後)往診・診療所
内容:午前中は福祉センターを見学し、午後から往診と外来見学。
福祉センターでは島の方とのふれあいがありました。島の方々とお話をさせていただいたのです
が、与論語は英語よりも難しく、 98 %近く理解不能でした…。その後ゲーム等に参加させてい
ただきました。島の方はとても明るく、よく笑うのが印象的でした。みなさん口々に「年だから
だめだ」とおっしゃっていたのですが、年齢よりもずいぶんと若く感じられました。このような
日々の生活が健康で長生きする秘訣だと改めて思いました。
6 月 7 日(木)
実習先:(午前)診療所(午後)往診・診療所
内容:午前中は診療所で外来を見学し、午後から往診と外来見学。
往診では与論島で最年長 104 歳の女性とお会いしました。 104 歳とは思えないほどにしっかりな
さっており、ある程度の身の回りのことならば自分でできるそうです。前日にも感じた事ですが、
与論島のお年寄りは非常に明るく元気な方が多いように思います。やはり日常生活では活発に動
き、そしていつも笑っている事も健康維持の重要な要素であると感じました。
与論の海
6 月 8 日(金)
実習先:(午前)診療所
内容:午前中の診療所での外来見学。
昼に船が出港するという事で、 10 時までの外来見学となりました。
この日はこの 1 週間で初めての心エコーと、GIF:Gastrointestinal
fiberscopy ( EGD : esophago gastroduodenscopy )検査が行われ
ました。
感想
今回の離島実習を通して医療の基本的な考え方や、これからのあるべ
き姿を少し考えることができたように思います。離島医療と聞くと、いわゆるプライマリ・ケアという
ものを想像します。プライマリ・ケアを行うにはある程度の分野に対応できるようにならなければいけないと考えていました。確
かにそれは必要な事ではあるけれど、古川先生の資料を引用させていただくと、「プライマリ・ケアとは、患者の抱える問題の大
部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家庭及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって
提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである」ということでした。「本当の意味でのプライマ
リ・ケア医とは、何も幅広い科に対応出来るだけのことではなく、専門は人、つまりは患者さん一人ひとりを診る医師である」と
古川先生がおっしゃっていたことが印象的でした。また、「現在自分たちは西洋医学を主に学び役立てているけれども、中には病
名をつけるための診療になってしまっていることもある。本当に大事なのは病名をつけることではなく、患者さんの訴える症状を
治す事が大事だ」とおっしゃられていたことにも考えさせられました。
離島という特殊な「枠組み」で診療を行うにあたって、現段階では市内とは大きく違うと感じた部分もありました。例えばスピリ
チュアル・ケアというものがそのひとつでした。大学病院等でもこれから導入していこうとしている段階ですが、離島医療を行う
上ではすでに必要不可欠なものであることを知りました。
また離島にはそれぞれ独特の文化があり、それぞれに信仰があります。例えば与論島では、死者の魂は亡くなったその場に留まる
という考え方があり、自分の家で息を引き取ることを希望されます。与論島では約 8 割の方が自分の家で息を引き取るそうです。
この島では、患者さん一人ひとりの考え方を尊重し、それに合わせて医療を行なっていくことが当たり前に行われていました。都
会の人と離島の人とでは生活スタイルや家族関係も違い、一概には同じように議論できない部分もあるとは思います。都会でも在
宅死を希望される人はいると思うし、反対に病院で最後を迎えることを望む人も多くいらっしゃると思います。離島よりも人口が
多く、様々な状況を想定しながら、それに医療を合わせていくことが今後のオーダーメイド医療の一つのポイントになるのかなと
思いました。
先生の活動なさっていたことで、「与論町 10 カ年計画」への参加というものが興味深かったです。いくらいい医療をしようと
思っても、行政側の問題でうまく運営ができない、そんな状況を少しでも変えるべく先生は活動なさっていました。都市で行政か
ら変えていくことは時間もかかり難しいですが、離島だからこそできることもあり、非常にやりがいのあることだと感じました。
いくら最先端の医療を持ち運んでも、例えばバスが走っていなければ病院に来ることさえできない人もいます。ぞういう状況を変
えていくことも離島ならではの医師の役目だと思いました。
離島だけでなく、医師として医療を行うに当たって大切なスキルの一つである、とにかく「聞く」ということの重要性再認でき
ました。話を聞き、その時は明確な答えが出せないかもしれない
けれど、ひたすら話を聞くということの重要性を先生もおっしゃ
られていました。そうすることで患者さんとの関係は良好になっ
ていくと思います。また、離島では島の文化に溶け込むこともま
た信頼関係を結ぶ上で重要なことでした。島の外から来るとあま
り信頼されないのだろうなと思っていました。しかしそうではな
く、島の文化を理解しようとせず医療を行ったり、またいつまで
215
も馴染もうとしない、そんな態度が信頼されない原因なのではないかと感じました。少なくとも与論の方々は外から来た人を心か
ら歓迎してくださいました。「郷に入っては郷に従え」、これが大切な心得だと思いました。
最後になりましたが、 1 週間非常に貴重な体験をすることができました。診療でお忙しい中でも丁寧に指導してくださった古川
先生をはじめ看護師さん、本当にありがとうございました。台風 3 号なんていうものもなかなか体験できないことで面白かったで
す。また島の方々もみなやさしくて、色々声をかけてくださったので本当に楽しかったです。
ただ与論献奉はなかなかきつかったです…。
氏
名
武
裕士郎
6 月 3 日日曜日早朝、一ヶ月間の県立大島病院での実習を終え与論島へ向かった。午後二時
頃与論に到着し、まず感動した。海、砂浜の綺麗さたるや、筆舌に尽くし難し。
今回お世話になるパナウル診療所への挨拶もそこそこに、与論島の目玉、百合ヶ浜が出現
する大金久ビーチを目指した。宿舎から大金久ビーチへ向かう道のりは、ハイビスカスがい
たるところに咲き誇り、家屋の周囲は石垣で囲まれ、入り口にはシーサーが飾られて、南国
気分と心地よい浜風を感じながら進んで行った。大金久ビーチに到着し、貝殻やサメの歯を
自らの手で加工した装飾品を売っているおばあちゃん達に、厚い歓迎と商品のゴリ押しを受
け、ビーチに到着した。あいにく、台風 3 号の影響で風が強く波が高かったため長い時間泳
ぐことはできなかったが、透き通った海水と白い砂浜をしばし堪能した。
ビーチの入り口にある食堂で、与論名物「もずくそば」に舌鼓を打ち、次の目的地与論城跡を目指した。与論城跡は少し高台にあ
り、城壁は石垣で構成され、神社が併設されていた。与論城跡の最も高い位置からの眺望もすばらしかった。与論の海はもちろん
のこと、与論島全体を見渡すことができ、海の向こうには沖縄が肉眼で確認でき、文化や言語が沖縄に類似していることも納得で
きた。島をほぼ一周し、宿舎に帰宅した。帰宅後、宿舎から五分ほどのところにある、地元住民オススメの居酒屋「ひょうきん」
にて、学生 3 人で決起集会と与論島初上陸を兼ねて乾杯した。地元料理のもずくや島らっきょう、ソーキ煮、魚のから揚げ、刺身
などはどれも黒糖焼酎との相性が抜群であった。しっかり五号瓶でキープをいれ、ほろ酔い気分で翌日の実習に備え帰宅した。与
論名物、「与論献奉」に一週間のうち一度は挑戦しようと決意し、寝床につこうとした。そのとき、同じ建物内で宴会していた地
元民が、一緒に飲もうと誘いに来てくださり、急遽与論献奉に挑戦することになった。不安と期待とアルコールが交じった体で席
に着いた。 10 人超の地元民は、喜んで受け入れてくださり、とても楽しい時間をすごした。肝心の与論献奉がエンドレスに続く
合間に、地元住民に与論文化のこと、宗教のこと、言語のこと、医療面で困っていること、たくさん話していただき、とても勉強
になった。時刻は深夜 2 時頃、一緒に与論献奉をしていた住民が転倒し、一時騒然となった。頭はうたなかったということだった
が、右眼外側部に傷を負っていた。注意深く観察すると、横径2cm、深さ 2mm 程度の裂創であった。圧迫止血を行い、絆創膏な
どがなかったため、止血を確認し、ティッシュペーパーを折りたたみ、その上からセロハンテープで創を寄せるようにテンション
をかけながら被覆した。翌日にパナウル診療所を受診してもらうことを約束し、宴は終了した。与論に来て 12 時間足らずで、与
論島を満喫し、とても濃い時間を過ごさせていただいた。
6 月 4 日月曜日、午前 8 時にパナウル診療所に伺い、 8 時 20 分から外来が始まった。見学型の実習で、主に血圧測定と外来見学
をさせていただいた。患者さんは学生に慣れていて、気さくに話しかけてくださり、会話を楽しみながら実習ができた。午後 12
時過ぎに午前の外来が終了し、昼食は院長婦人にカレーをご馳走になった。カレーもとても美味であったが、食後のインドコーヒ
ーもとても美味しかった。午後 2 時から院長の車で、往診に同行させていただいた。往診を経験するのは初めてで、とても興味を
いだきながら同行させてもらった。往診の内容は、患者さんとご家族にここ 1 週間で変化がないか、不調なところはないか、心配
ごとはないかなどの問診と視診、バイタルチェック、聴診、処方された薬の残量チェックであった。大体 1 時間半くらいかけて 2
~ 3 軒往診するようだった。移動する車の中では、所長から与論の歴史や景色が綺麗な場所などを教えていただいた。診療所に戻
り、しばし休憩したあと午後 4 時から夕診が始まり、前日応急手当を行った方も診察に来た。幸い綺麗に創が閉じており、出血も
無かったため縫合する必要もなかった。夕診は午後 6 時過ぎに終了した。患者さんの内訳としては、高齢者が多く適切に血圧管理
をされており、処方薬が切れたため受診している患者さんが多かった。ほかにも予防接種や、妊婦、小児、皮膚科、耳鼻科領域の
疾患などバリエーションにとんだ疾患に対応していた。幅広い知識と、方言を理解する語学力が必要不可欠であると感じた。
6 月 5 日火曜日、午前中は台風の影響で午後からの実習となった。前日同様午後 2 時から往診を行い、午後 4 時から夕診を見学し
た。台風の影響か、前日と比較すると患者さんの数が少なく、合間に与論文化と地域医療の概論とスピリチュアルケア講義をして
いただいた。午後 6 時半ころに終了し、いきつけの居酒屋へ向かった。居酒屋の大将も、学生慣れしており、気さくに話しかけて
くださり一緒に野球やサッカーを観戦し、大盛り上がりし、郷土料理とお酒を存分に楽しんだ。私の高校時代の恩師が 2 年前まで
与論高校で体育を教えていたことを大将に伝えると、たまたま当時の教え子が 10 人程度で同じ居酒屋で宴会を行っていることが
わかり、与論島上陸 3 日目にして早くも 2 回目の与論献奉参戦となった。今回のメンバーは前回と比較し、年齢層が若く、酒量も
多かった。午前 0 時に居酒屋を後にすると 2 次会にも誘っていただき、午前 2 時過ぎまでカラオケと与論献奉を楽しんだ。
6 月 6 日水曜日、午前中は福祉センターに伺い、レクレーションと即席の方言講義を開いていただいた。レクレーションの一環で
似顔絵をいただき、とてもうれしく、記念になった。午後からの往診の途中で、院長オススメの絶景スポットに連れて行っていた
だいた。台風が過ぎ去り、澄み切った青空と海の美しさは初日とは比べ物にならなかった。沖のリーフのおかげで、遠浅の透き通
った淡いブルーの海が沖合まで広がっており、白い砂浜との相性は抜群であった。
6 月 7 日木曜日、午前中はいつもの診療に加えて調剤体験もさせていただいた。午後からは往診と夕診を見学し、夕診の合間に診
療所の業務について講義をしていただいた。診察以外にも経営能力やパラメディカルとの連携能力、患者との信頼関係が必要であ
216
ると理解した。午後 7 時に終了し、夜はお馴染みの居酒屋にお邪魔し、与論島最後の夜であることをスタッフのみなさんご存知で、
寂しがってくれた。料理も豪華なサービスをいただき、たった 1 週間しか滞在していないが、長年滞在している「旅んちゅ」のよ
うに別れを惜しんでいただき、感激した。今度は実習ではなく、プライベートで与論島に滞在することを約束して居酒屋を後にし
た。いわゆる「与論病」に罹患した。宿舎に帰る途中に寄り道した居酒屋でも、酒と会話を楽しみ帰宅し、就寝した。
6 月 8 日金曜日、最終日いつもの時間に集合し、午前 10 時まで外来を見学し院長と看護師さんにお礼の挨拶をし、診療所をあと
にした。午後 12 時 10 分発のフェリーに乗船し、今回の離島実習は終了した。与論島沖で、イルカの群れに遭遇し、最後の最後
まで自分を魅了してやまない与論島であった。
今回の離島実習で感じたことは、診療所は単なる日常診療に留まらず、地域住民の予防や健康診断、教育、信頼関係の構築にも力
を注いでおり、地域住民と深く関わっていると感じた。そのため、疾患に対してもオーダーメードかつ全人的医療を提供していた。
また、与論島ではほぼ全員が在宅死を遂げるというデータにも驚いた。日本人の大多数が医療機関で死を迎えるこの時代に、在宅
死を遂げることができるのは時代の最先端であると感じた。医療資源や交通手段などは限られているが、それを補うために診療所
も住民も様々な努力を行い、良い結果を得られており目から鱗であった。余談ではあるが、実習内容としては 6 年生ではなく、出
来るだけ早期のうち、できれば 1 年生や 2 年生で行うことが出来れば更なる感動や地域医療に従事したいという気持ちが高まるの
ではないかと感じた。
最後に古川先生、古川婦人はじめ、パナウル診療所のみなさん、お世話になった与論島のみなさんに感謝の気持ちを示したい。
氏
名
福嶋
晴太
6 月 4 日(月)
実習先:(午前)診療所、(午後)往診・診療所
内容:午前は 8 時より診療所で外来診察を見学し、血圧測定を行った。台風が来る前だったのでたくさんの患者さんが来ていた。
お昼になって、先生の奥さんが私たちを家に招待してくれ、昼食をごちそうになった。おかわり自由のカレーにサラダ、デザート
にはスイカとベトナムコーヒーというごちそうだった。とてもおいしかった。
午後は 14 時から先生の車で往診に出発した。小さい島なので車だとあっという間に一周してしまうが、その間に 2 軒のお宅を訪
問し、診察を行い薬を処方した。その際血圧測定を行った。往診から帰ると、 16 時から午後の診察を見学し 18 時半に実習を終
了した。
症例. 30 代男性、主訴は、酔っぱらって目尻を机にぶつけて切ったとのことだった。幸いにも傷はごく浅く、消毒をしてテープ
でとめて処置を終えた。実は前日にこの男性を含む島の商工会の青年部の方々に誘われて、与論献奉をしていたのである。島の
方々は本当にお酒が好きなようである。帰りにこの方がされているお菓子屋さんに寄ると、チーズケーキを人数分くださった。と
てもおいしかった。
6 月 5 日(火)
実習先:(午前)宿舎にて待機、(午後)往診・診療所
内容:この日は台風 3 号が接近しており、雨風ともに強く、先生に相談の上、待機とさせていただいた。与論の住宅はトタン屋根
のところもあり、前回の暴風の際に屋根を吹き飛ばされたお宅がけっこうあったと先生がおっしゃっており、今回の台風がそこま
で強くなくて幸運だったと思った。
午後からは雨が止んだので往診に同行した。昨日とは違う地区を回り、 3 軒のお宅を訪問した。往診に同行して 2 日目にして気付
いたことがある。それは、島のお宅は鍵をかけているところが一軒もないということだった。先生もごめんください、と言いなが
ら家の人が出てくる前にもう玄関に上がっていた。お宅によってはベッドで寝ている患者さんしか家におらず、患者さんを起こし
てから診察を始めるということもあった。島には泥棒はいないよ、と私たちのお世話をしてくださっている高橋さんに初日に言わ
れたが、まさにその通りなんだなと感じた。往診から帰ると前日と同様に午後の診察を見学した。
症例. 50 代男性、主訴
なし。大動脈弁置換術の既往あり。先生の聴診器は優れものであり、録音機能が付いていて、ワイヤレ
スでパソコンに飛ばせるというものだった。パソコンでその音を聴かせてもらうと、通常より高調なⅡ音が聴こえ、弁置換術の既
往があることがよく分かった。
6 月 6 日(水)
実習先:(午前)福祉センター、(午後)往診・診療所
内容:この日は朝から島の真ん中あたりにある福祉センターにお邪魔し、デイサービスに来られている方々のお話を聞いたり、一
緒にレクリエーションを行ったりした。体を動かし、頭を使いながら楽しそうにみなさん活動されていた。レクリエーションをし
ながら、壁に貼ってあるみなさんの誕生日を見ていたが、ほとんどの方が昭和初期や大正生まれで、見た目にはもっと若く見えて
いたのでその若々しさに驚いた。最後に記念ということで似顔絵を描いていただき、福祉センターを後にした。
午後からはいつもと同じように往診に同行した。今日もまた前日、前々日とは異なる地区のお宅を訪問し診察を行った。今日は天
気がよかったので、先生のご厚意により海沿いを走りながら景色の良いところで車を止めていただいた。どこも素晴らしい景色で
感動し、写真を撮りまくった。南部の方からは沖縄本島を望むことができた。途中、小さな火葬場があり、先生が島にはひとつし
かないんだよと教えてくださった。というのも与論では元々火葬という文化はなく、土葬をして後から遺骨を掘りおこすそうだ。
というわけで墓地の敷地内に、木造の小さな社みたいなものがいくつかあったが、その下には土葬されたご遺体が眠っているとの
ことだった。またひとつ与論島独自の文化を学ぶことができた。往診から戻ると午後の診察を見学し、本日の日程を終了した。
6 月 7 日(木)
実習先:(午前)診療所、(午後)往診・診療所
217
内容:この日もいつもと同じように朝から外来診察の見学をした。途中、一人ずつ交代で薬局のお手伝いにいった。薬局といって
も診療所内に併設してあるので、そんなに大きなものではないが、外用薬、内服薬、漢方薬などいろいろな薬が用意してあった。
先生が処方した薬を準備する手伝いをしたが、だいたいの患者さんが 2 週間から 4 週間分の薬を処方されており、毎食後 1 錠ずつ
飲む薬だと 86 錠出さないといけないので数えるのがなかなか大変だった。後から先生に伺ったお話だが、パナウル診療所で扱っ
ている薬はジェネリックが多いとのことだった。これはやはり、島の方々のことを考えた先生の配慮だった。
午後からはいつものように往診に出かけた。この日お伺いしたお宅の患者さんはなんと 104 歳で、与論島で最高齢だとおっしゃっ
ていた。お宅を訪ねると布団の上にきちんと正座をして、しっかりとした口調で先生とお話をされていた。自分があと 80 年後に
あんなに元気にしていられるかを考えると、尊敬の念を抱かずにはいられなかった。その後は診療所に戻り、午後の診察を行った。
症例. 40 代女性、主訴
ムカデにかまれた。右の母指のあたりをかまれたということだったが、その周囲に発赤と腫脹がみられ
た。先生がどんな薬を出したかは分からなかったが、虫咬症の患者さんはしばしば来るということだった。ただ、与論島はサンゴ
礁が隆起してできた島なのでハブがいないということも教えてくださった。
6 月 8 日(金)
実習先:診療所
内容:実習最終日で、船が 12 時出港だったので午前の診察を途中まで見学し、一週間の実習を終えた。先生、看護師さんにあい
さつをしてから宿舎に戻り、荷物をまとめ島を後にした。
遠隔医療実習記録
行う時間がとれなかった。事前に学校で使い方の説明を受けた際に、とても便利で、ネットワークがしっかりしていれば、離島・
へき地での診療においてかなり大きな助けになると感じた。
感想
与論島
今回離島医療実習ということで、与論島パナウル診療所にお世話になりました。私が実習前に抱いていた離島医療のイメージと実
際の現場では、違っていた部分、イメージ通りだった部分それぞれありました。違っていたのは、まず、想像していたよりも外来
に来られる患者さんの数が多いということでした。朝 8 時からお昼 12 時半までひっきりなしに患者さんが来られ、先生もテキパ
キと診察をこなしていらっしゃいました。イメージではもっとのんびりと診療しているのかと思っていましたが、なかなか忙しそ
うでした。でも実際に頭が痛い、お腹が痛いという症状を訴える患者さんは多くはなく、半数以上が薬が切れたのでもらいに来ま
した、もしくは予防接種に来ました、といった感じでした。
イメージ通りだったのは午後からの往診でした。私の中で『往診』といえばドラマの Dr. コトーで見たようなものを想像していま
した。実際には先生は車で往診に行かれていましたが、それ以外はドラマのまんまでした。患者さんのお宅を訪問し、血圧測定や
聴診など一通り診察を済ませ、あとは患者さんとおしゃべりをして必要であれば薬を処方するといった感じでした。また、往診の
途中に、きれいな海岸や岬など島の案内もしていただきました。往診の途中に先生が、一番大事なのは診察をして薬を出すことで
はなく、患者さんとたくさんお話をしてお互いに信頼関係を築くことだ、とおっしゃっていました。これは離島だけではなく、医
師として当然やるべきことですが、離島においてはなおさら大事な意味を持つということが分かりました。また先生は、信頼関係
を築くことができれば生食を打つだけでも痛みがとれる、とおっしゃっていて、信頼が最上の良薬だということを思い知らされま
した。
そして、コンビニもファーストフードもない離島で一週間生活し、島の方々とふれあうことで、離島で暮らすことの良さと不便さ
両方を感じることができました。居酒屋では島の方々が、よそ者の私たちに一緒に飲もうと声をかけてくださり、与論献奉という
ものに参加させていただきました。島の方々はみんなお酒に強く、そしてみんな仲がとても良かったです。誰と誰が結婚したとか
どこに就職したとか、みんなが把握していて、まるで島全体が一つの家族のようでした。
ただ不便なことも少なからずありました。私たちが島に到着する頃、台風が接近していてその後数日間船が止まっていました。そ
のせいでスーパーから乳製品が消えていました。その間は郵便も止まるし島に缶詰めになったようでした。他にも物価がやや高か
ったり、交通機関がなかったりするなど島の方々には負担になることがありましたが、みなさん慣れているのか特に不便だとは感
じていないようでした。
今回の実習を通して、離島で暮らす人々の生活や価値観を知ることができ、そしてそれに基づいた医療がどういうものなのかとい
うことを肌で感じることができました。先生が、与論に来た多くの人が『与論病』にかかるとおっしゃっていましたが、私もかか
ってしまったようなので、今度もう一度与論島を訪れたいと思いました。
また最後になりましたが、一週間私たちを受け入れてくださり、離島医療とはどうあるべきか、信頼関係を築くことはどんなに大
事か、また与論島がどんなにいいところなのかを教えてくださった古川先生には本当に感謝しています。ありがとうございました。
そして、休日にも関わらず港や空港まで送り迎えをしていただいた高橋さん、診療所や往診の時にいろいろ教えてくださった看護
師の方々、昼食を作ってくださった先生の奥様にはとてもお世話になりました。ありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
有水
耕平
6 月 25 日(月)
実習先:診療所(午前・午後)、往診( 2 時〜 4 時)
診療所での診察
218
診察待ちの患者さんの血圧を計らせてもらった。
症例1.
84 歳男性
アルコール性肝障害
CTやMRIのない診療所だが、先生はエコーを使って腹部、胸部を入念に診察されていた。エコーからは多くの情報が得られ、
先生は大腸癌をたまに見つけるらしい。
症例2.
76 歳女性
全身掻痒感
原因不明の痒みに対して、グリチルリチン酸を投与した。副作用として、偽性アルドステロン症に注意しなければならない。
症例3.
86 歳男性
帯状疱疹( Ramsay-Hunt 症候群)
数日前から体調不良、それに伴い右肋骨に沿って、皮疹が出現した。また難聴が認められ、経過、視診からVZVの再賦活化によ
る帯状疱疹が考えられた。アシクロビルが処方された。
症例4.
小児数名
インフルエンザ
与論小学校で流行っているらしく、鼻汁、咽頭痛、咳、発熱で来院する子が多かった。迅速診断キットを実際に使わせてもらいま
した。
症例5.
69 歳女性
FAHR病(家族性特発性基底核石灰化症)
進行性に頭痛、筋肉痛、しびれが出現する。日本に 100 例程度の非常に珍しい疾患をみることができた。 CT にて、大脳基底核に
石灰化が認められた。
症例6.
小児数名
肺炎球菌ワクチン
先生は注射針を極力、小児に見せないように隠しつつ、素早く刺していたのが印象的だった。
往診
Wallenberg 症候群
6 月 26 日(火)
実習先:診療所(午前・午後)、往診( 2 時〜 4 時)
診療所での診察
症例1.
85 歳女性
右手首の腫脹、発赤
病歴から原因は不明瞭で、アクリノール ® が処方された。
症例2.
67 歳女性
進行性核上性麻痺
動作緩慢 (Parkinsonism) 、構音障害がみられた。
症例3.
86 歳男性
手指の運動障害、構音障害 ( 救急車にて搬送 )
6 月 25 日、定期健診のために診療所へと向かうバスの中で、けいれんを起したため救急車にて診療所に搬送された。意識清明。
血圧 80mmHg 。脈拍 110 回 / 分。構音障害があったが、なんとか会話はできる状態であった。どことなく落ち着きがない様子で
あった。運動障害に関して、下肢の運動障害はなく、指示にも従えたが、上肢 ( 特に手指 ) の運動がぎこちなく、指示に従えなか
った ( 右手にタオルを握りしめたまま離すことができず、指示の理解はできていたが、上肢が言うこと聞かないという状態であっ
た。 ) 。問診から、数日前から発熱があったことと、デパケン ®( バルプロ酸 ) を飲み忘れたことからけいれん発作が起こったも
のと考えられたため、デパケン ® を投与すると一旦は症状が軽快した。しかし、 30 分後、再び症状が出現した。原因や病態が不
明なため、翌日の与論病院での CT 検査を予約して、看護師や学生が交代で一晩様子をみることになった。その晩、トイレを流す
レバーを引くことができずに、立ち往生していたり、寝室で排尿したりといった行動が認められた。 6 月 26 日、 CT 検査の結果
では明らかな出血は見られず、先生は、小さな梗塞かもしれないとおっしゃっていた。症状は軽快の方向に向かっていたため、夕
方、親戚の方に迎えに来てもらって、一旦帰宅となった。 6 月 27 日、午後の往診では、会話理解は明らかに改善していたし、歩
行もスムーズになっていたようにみられたが、やはり上肢の運動がぎこちなく、頭痛の訴えもあったので、本人の希望もあり、与
論病院へ転院となった。
6 月 27 日(水)
実習先:福祉センター ( 午前 ) 、往診( 2 時〜 4 時)、診療所(午後)
福祉センター
おじいちゃん、おばあちゃん達と交流させてもらった。ほとんどの方が大正生まれだったが、とてもシャキッとしていて、一緒に
作った折り紙も学生より上手で驚いた。実年齢は、見た目年齢 +20 歳であった。
往診
往診1.
97 歳男性
高血圧、大動脈弁閉鎖不全症
聴診にて胸骨左縁第 3 、 4 肋間で拡張期雑音が聴取された。月下美人という花を与論島に持ち込んだ方らしい。
往診2.
94 歳女性
大動脈弁狭窄症、大腿骨折により寝たきりとなった患者さん
褥創の処置を行った。聴診にて胸骨右縁第 2 肋間で収縮期雑音が聴取された。
診療所での診察
症例1.
84 歳男性
尋常性乾癬
グリチルリチン投与により、他の皮膚科で全く治らなかったものが劇的に良くなっていた。これで短パンを履いて、堂々と海へ行
けると喜ばれていた。
症例2.
32 歳男性
インフルエンザ疑い
25 日に受診されインフルエンザと診断された小児の父親であった。
6 月 28 日(木)
219
実習先:診療所(午前)
診療所での診察
症例1.
女性
下腹部痛
エコーを行ったが、卵巣嚢胞以外に異常は認められなかった。
症例2.
男性
上部消化管内視鏡検査を行われた。通常、ガスコンドロップ、ブスコバン ( 抗コリン薬 ) を投与して行うが、この患者さんは、前
立腺肥大症を合併していたため抗コリン薬は使わなかった。
23 歳男性
症例3.
発熱、咽頭痛
与論島に来て 4 日、初めて 20 代の方を見た気がする。東京から帰省中だそうだ。
薬剤の処方
カルテに従って、 1 日の錠剤数、それを何回に分けて服用するかを確認しながら、薬剤を袋に詰めていった。授業で聞いてはいた
が、実際にやらせてもらうのは初めてで、体で覚えることができた。
6 月 29 日(金)
実習先:診療所(午前)
診療所での診察
症例1.
女性
糖尿病
先生が HbA1c について説明する際、体温に例えていたのが印象的だった。
感想
私が今回の離島実習で学んだことは、大きく 2 つあった。
まず、 1 つ目は、与論の人々の長寿の秘密だ。信じられないくらい蒸し暑いし、大酒飲みは多いのに、なぜ皆健康で明るいのか。
言うまでもなく、古川先生のプライマリケアは大きな役割を果たしていた。例えば、患者や家族のストーリーまでも深く把握して
いたり、往診中の車に向かって、小学生からお年寄りまで全ての人が、挨拶をしていたことなどに象徴されるように、本当に与論
の人々の生活を知り、島に根付いた医療を続けてこられたのだなと感じた。さらに、しっかり利益を上げ、プライマリケアを継続
させるため、診療所のマネジメントも重要視されていた。また、長寿の他の要因として、ストレスをため込まない生涯現役社会が
あった。与論島には、定年はなく、皆何かしら毎日農業や漁業などを続けていて、例えば、ある患者さんの 95 歳の夫は、毎日何
も釣れないにも関わらず、毎日海へ出るそうだ。外来で印象的だったのは、新たに病気が発見された患者さんに対して、先生が
「また 1 つ神様からプレゼントを貰いましたね。」と言って、 2 人で笑いあっていたことだ。私も 1 週間のスローライフを通して、
大自然と島民の距離の近さを感じ、このストレスレスな心のあり方こそ、長生きの秘訣なのかもしれないと実感した。
そして、 2 つ目は、古川誠二先生の医療と人生に対する姿勢だ。幼少時ご家族を病気で亡くされた体験が、医療格差をなくしたい、
プライマリケアを極めたいという気持ちの根底にあり、『家族の幸せ』が先生の医療テーマであるそうだ。そのような気持ちで学
生時代から離島を訪れ、医者となってからもジェネラリストとしての力を積み、パナウル診療所を開き、さらに、将来的には、ア
フリカ・ケニアに移住、診療することを目標としているそうだ。まだ都会と離島で情報のスピードに差があった 2 、 30 年前から、
常に次のステージを意識しながら、高いモチベーションで、今もなお日々学び続け
ているという姿勢、その積み重ねに感銘を受けた。私自身も長期的、短期的な目標
を持てとよく言われ、なかなかそれを持続できずにいたが、先生のエネルギッシュ
な生活、与論島の大自然に癒され、これから先の人生へのやる気が沸々と湧いてき
た。
このように、今回の実習では、プライマリケアを実際に見学できただけでなく、
自分自身の将来像や日頃の生活姿勢を見直すことができ、とても有意義な 1 週間と
なった。
最後に、古川先生、パナウル診療所や健康保健センターの皆様、 1 週間お世話にな
りました。ありがとうございました。
氏
名
木村
豪志
6 月 25 日(月)
実習先:診療所(午前・午後)、往診( 2 時〜 4 時)、夕診( 4 時〜 7 時)夜間(診療所当直・翌朝 8 時まで)
内容:午前中および午後は診療所で見学。見学中に何人かの患者さんには血圧測定を行った。午後 2 時から 4 時の間に、自宅で寝
たきりになっている 3 人の患者さんの往診に小川先生と看護師さんに同行し出かけた。夜間は、身寄りのいない男性の診療所、一
泊待機に伴い、診療所で一晩当直をした。症例 1 : 7 歳男子、主訴は発熱。昨日より体調不良、食欲不振。今朝、熱を測り、37.2
度を測定。学校の周囲でインフルエンザが流行っている。検査所見として、インフルエンザ抗体簡易キットで調べた結果、インフ
ルエンザB型陽性。これらよりインフルエンザB型とし、自宅で待機とした。症例 2 : 69 歳女性、主訴は右肩痛。週末にバイク
で転倒、その際右肩を強打した。本日から右上肢挙上時に鈍痛を認める。検査所見は右肩関節の外転の Range of Motion の制限、
および同周囲部の圧痛を認める。これらより、右肩関節周囲の打撲と診断。電気治療を行い。モーラステープを処方した。症例
3 : 86 歳男性、 主訴は右脇腹の皮疹が出現。週末から右脇腹および右背側部に帯状で皮疹を 6 , 7 個自覚。本人の解釈モデル
としては「ハンセン病が出た」との事。数日前から食欲不振、体調不良もあり、皮疹の帯状形態より、帯状疱疹とし、アシクロビ
ルを処方。家での安静も励行した。(与論島の言葉で帯状疱疹は『パージガサ』と言う。)夜間当直症例 1 : 86 歳男性、主訴は
220
意識の混濁。いつもは往診にて定期受診をしているが、具合が改善し独歩にて診療所受診していた。今朝 1 人でバスに乗り、パウ
ナル診療所を定期受診しようとした際、バスで奇行(運転手の合図に応対しない、座席に座らない)が見られ、運転手の判断によ
り救急車に連絡。与論病院への頑なな受診拒否もあり、当診療所受診となる。身体所見として、上肢・手の振戦が見られ、意識は
混濁。感覚性言語理解はできるものの不随運動が見られ、意図せず手を握ってしまうなどの行動がみられた。服用しているバルプ
ロ酸ナトリウムを今朝は飲まなかったということで、診療所の病床でバルプロ酸ナトリウムを服用。その後手の不随運動は落ち着
き、応対もスムーズになる。これらの症状から脳出血を疑い、近位にて CT 検査を受けるために搬送。検査結果からは、出血の有
無は確認されなかった。本人の希望もあり、診療所にて実習生 3 人交代で一晩様子をみることになる。夜間中は扇風機の角度にこ
だわりをもち、ベッドメーキングの所作を 1 時間行うなどの常同運動がみられた。その後、就寝するも 2 時間に 1 度起床。 1 度は
部屋の中で排尿行為を行い、自覚症状が乏しくなる場面もみられる。明朝、親戚が来院し、その監視の下自宅療養となる。
6 月 26 日(火)
実習先:診療所(午前・午後)、往診( 2 時半〜 4 時)、夕診( 4 時〜 7 時)
内容:午前中および午後は診療所で見学。週初めの月曜と違い、昨日よりやや来院人数は少なかった。今日も何人かの患者さんに
血圧測定を行った。午後 2 時半から 4 時の間に、自宅で寝たきりになっている 2 人の患者さんの往診に小川先生と看護師さんに同
行し出かけた。
症例 1 : 83 歳男性、主訴は足の指の痒み。先週、湿気の多い日が続いて後、右足の痒みを自覚。本日受診となる。既往歴や先週
の台風の日などを考えると真菌感染の可能性が高い。イトコナゾールを処方し、経過観察とした。症例 2 : 43 歳女性、主訴は下
腹部痛。 8 日前から下腹部に鈍痛および便秘を自覚。 2 日前にも同症状を認め、本日受診となる。腹部触診し、同部は膨満を呈す
る。次回来院日を木曜に、腹部エコーの予定とする。
6 月 27 日(水)
実習先:福祉センター見学(午前)、往診( 2 時〜 4 時)、夕診( 4 時〜 7 時)
福祉センターでは地域の高齢者が来所。看護師によって血圧、脈拍など定期管理を受け、介護師数名によって、交代で入浴をする。
その間、談笑したり軽食を食べコミュニケーションを取っていた。レクリエーションも行い、本日は七夕用の飾りを全員で作り、
その作業に参加する。往診での症例 1 : 97 歳男性、定期管理。 AR の患者さんで血圧、脈拍を測定後先週の生活について問診。
特に変わったことはないものの、梅雨が明け暑い日が続くので、庭の手入れの際(与論島に月下美人を持ってきた方)は注意をす
る様促す。往診での症例 2 : 94 歳女性、定期管理。既往歴として AS を持ち、数年前に大腿骨頭骨折。その後自宅にて寝たきり。
身体所見に異常はなく、意識レベルはやや低下しているが、自分の希望を口にしたり、手を合わせて実習生に「ありがとう」の所
作を行う。寝たきりなので褥瘡の管理を行い、身体の清拭を行う。背中に軟膏を塗り褥瘡予防した後、衣服を着替えさせた。往診
の症例 3 : 86 歳男性、主訴は定期管理と入院の手続き。月曜日に救急で来院、その後火曜日に退院した男性の定期受診を行う。
不随運動や意識の混濁はないものの、 1 人で身の回りを管理することは困難であるため、病院の入院を示唆。前回は強く拒否して
いたものの本人も承諾し、病院役員が自宅まで迎えにくることで入院の運びとなる。
6 月 28 日(木)
実習先:午前(診療所)午後(与論島各地での自然展望)
症例 1 : 73 歳女性、主訴は肺癌疑い。自治区での肺定期検診にて左中葉部に結節性陰影を認める。精査必要となり来院となる。
レントゲン検査にて正面、および側方レントゲンを照射。疑い部位に異常はみられなかった。本人によると検査当日およびその数
日前から咳嗽を自覚。その影響もあったのではと推測。
6 月 29 日(金)
実習先:午前(診療所)
症例 1 : 84 歳男性、主訴は左肩痛。先日、漁で網を手繰り寄せている途中に、鋭い痛みを左肩に認める。左肩外旋の ROM にて
90 度より上方に関節運動の制限を認める。肩関節周囲炎として、電気治療法と経皮的消炎鎮痛湿布を処方となる。肩関節の痛み
としては Impingement 症候群や上腕二頭筋長頭腱炎などがあげられる。今回の症例では他の 2 つも考えられるが、まずは消炎鎮
痛と安静により症状の安静をみた。
離島実習の感想
今回、鹿児島大学のカリキュラムの特徴でもある離島実習に 1 週間ほど参加をして、パナウル診療所の古川先生による「離島医
療とプライマリ・ケア」の内情とその実践を体感する事ができた。その中で私自身がとみに感じたのは、離島医療というのはメデ
ィカル・スタッフや医師自身の「ありのままの力」が試される事だった。
その一端として古川先生のプライマリ・ケアの実践や診療所経営がある。古川先生自身は、学生時代からプライマリ・ケアにつ
いて興味があったとおっしゃっていたが、現在のパナウル診療所を作って、軌道に乗せるまで、様々な弊害があっただろうと推測
する。理想だけを掲げるなら、「無医村に飛び込み、最も医療を必要としている人達のために生きる」とも言えるが、現実はそう
はいかない。現に古川先生が来る前は、診療所はあったものの、赤字経営になっていたと聞く。
その中で、ではどのように先生が医業の道を拓いてきたか。『診療所の業務管理』という古川先生の資料にその一面があり、そ
こにはレジデントの研修カリキュラムにも相通じるトレーニングとして紹介されていた。そこには、『診療所の業務管理とは、診
療を行ううえで、患者への医療提供におけるさまざまな要素を効果的に導入し、さらに継続的に改善していくために必要な「知
識」「心構え」「技能」が合わさったものと定義される。外部の規制当局や認可要件を遵守することも含まれる。さらにここでい
う診療所業務の要素には、組織、管理、連携、マーケティング、患者のケアが含まれる。』と載っている。
現実的に、プライマリ・ケアや離島医療、地域医療を行っていく上で、医学生には少しピンとこないこのような経営学、経営手
段こそ、まずはファンダメンタルとして必要であり、レジデントとしてもその礎としてこのような考え方が大事であることを学ん
221
だ。
診療所には多くの医学書が存在して、また書籍や絵本、哲学書までさまざまな種類が存在した。あった。実習を始めた日にも、
耳の遠い方のための新しい補聴器が届いていたし、専門の科の患者さんだけではなく、予防接種を受けにきた小児から 97 歳の往
診まで実に多種多様の医療提供を行っていた。古川先生自身は常に新しいデバイスを招集し、知識も貪欲に蓄積されていた。医療
格差が言われる昨今にあって、都市部と同じような医療を受けられ、提供しなくてはな
らないというモットーが動機となっている旨を聞いた。医師には生涯を通じて勉強する
姿勢が必要不可欠であり、鹿児島大学の入学要項にもそのような旨は記載されているが
今回、上記のような古川先生のありのままの力を間近でみさせていただいて、私自身の
現時点での「ありのまま」では、とても未熟であることを痛感した。そして、近い未来
に、社会は私に同じような能力を求めるだろう、と考えられただけでも非常に有意義な
滞在であった。
古川先生をはじめ、看護師の方や事務の方、また与論活性化センターの高橋さんには
とてもお世話になった。 6 年前に旅行できた与論とは全く違う側面を感じることができ
て、これらの経験を確実に自分の糧にし、「力」をつけられるよう努力したいと思う。
氏
名
小森
千世佳
6 月 25 日(月)
実習先:診療所(午前)、往診( 14 : 00 ~ 16 : 00 )、診療所( 16 : 00 ~ 19 : 00 )、診療所当直( 21 : 00 ~翌
朝)
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例 1 : 7 歳女児。主訴は発熱と鼻づまり。連れてきた父親にも同様の症状あり、
また同じ小学校に通う生徒間ではインフルエンザが流行っている。インフルエンザを疑い、インフルエンザ抗体迅速キットの検査
を行った。約 10 分後、インフルエンザ B 型のラインが陽性となり、インフルエンザの診断となる。カロナールの投与と数日間の
学校登校禁止となった。症例 2 : 78 歳男性。主訴は背中と両腕の痒み。ビールを飲むと悪化する(?)ため現在は飲酒していな
い。別なところで処方された薬が効かなかった。以前にも同様の症状がありパナウル診療所にて処方された薬が奏功したため今回
もその薬を希望した。痒みのある部位は角化している部分と発赤を認める部位がみられた。診断はアレルギー性皮膚炎で、グリチ
ルリチン酸の処方がなされた。
午後は往診へ 3 件のお宅を訪問した。症例 3 : 99 歳女性。現在は自宅にて横になっていることが多い状態。既往としては心室頻
拍発作。心拡張障害もあったとのこと。家族から最近の血圧が低いとの話があり、私が計ったところ 74/48 であった。また食事の
際にはコップ 1 杯の水分を取るがそれ以外はとらないとのことであった。脱水症状ありとし、ラシックスが中止となった。
16 : 00 からは外来見学、一旦帰って夜間帯に突入した。症例 4 : 86 歳男性。本日定期受診日でこちらに向かうバスに乗って
いる際に様子がおかしいと午前 9 時半ごろ救急搬送となった。到着時は不随意運動と軽度の言語障害(理解はできていると思える
が上手く話せない)を認めた。デパケンを普段は内服していたが、発熱があったため昨夜から飲んでいないとのことで、デパケン
を内服させ経過観察となった。昼前に少し言葉は出やすくなったようだが、振戦は持続。またトイレやシャワーを浴びる際にもお
かしな行動が目撃された。入院しての経過観察が必要と思われたが、与論病院への入院を頑なに拒否した。そこで学生 3 人が今夜
泊まりながら交替で様子を見ることに(写真は患者さんの夕食を買いにスーパーに立ち寄
った古川先生)。先生が帰宅された後も、枕をたたいているなどの奇妙な行動、またこだ
わりの強さも感じられた。 0 時頃には就寝した。 1 時過ぎに寒いという声が聞こえたため
毛布をもっていったがしきりに違うものを要求してきた。 1 時半頃、物音が聞こえたので
行ってみると病室内で排尿していた。急いでトイレにつれていったが部屋が汚くなったた
め、モップがけとアルコール消毒した。その後もなかなか寝付かずずっと毛布をシーツに
のばす運動を繰りかえしていた。 5 時ごろ、再度病室に排尿していた。(このときは私自
身は寝ていたため詳細は不明)そのまま朝を迎えた。
6 月 26 日(火)
実習先:診療所(午前)、往診( 14 : 30 ~ 16 : 00 )、診療所( 16 : 00 ~ 18 : 30 )
内容:午前は昨日同様外来見学。昨夜の睡眠不足がたたり、全員少し寝坊してしまった。症例 1 : 84 歳男性。 1 年ほど前に貧血
で初診。大腸癌疑いであったが、手術を拒否している状態が続いている。以前検診を受けると言っていたそうだが本日聞くと結局
受けなかったとのこと。腹部触診では L1 レベルの高さ、正中部に腫瘤を触れる。以前から触れる部位に変化なし(もし便秘とか
なら場所に変動があり、かつ外側に触れるとのこと)。本日は採血実施、 RBC 246 万 /mm と低値を認めた。鉄製剤注射を処方
し、7/10に腹部エコー実施とした。
午後は往診へ(写真は往診の様子)。夕診では昨日来た男児が再診した。症例 3 : 7 歳男児。昨日インフルエンザ B 型の診断がつ
いていた。その後咳もひどくなり、熱も 40 ℃に上昇したため再度来院した。昨日はアストミ
ンシロップ(鎮咳薬)とカロナール(解熱鎮痛薬)の処方があった。本日はご家族の希望もあ
り、タミフルドライシロップ(抗ウイルス薬)が処方された。
6 月 27 日(水)
実習先:福祉センター(午前)、往診( 14 : 00 ~ 16 : 00 )、診療所( 16 : 00 ~
18 : 30 )
222
内容:午前は福祉センターを訪問。本土でいうところのデイケアサービスのような施設であった。
お茶を飲みながらお話したり、七夕で飾るための紙の花作りを一緒にさせていただいた。とても元
気な方ばかりで、本土の雰囲気と同じように初めは考えていたが、年齢が 90 歳以上である人がか
なりいることにとても驚いた。耳が遠くなっているとか、疲れやすいとかの何かしらの不調はある
ものの、多くの人が ADL がほぼ自立しているだろうと思えるレベルの人々ばかりだったことは大
変興味深いことであった。一般的には高齢者とは 70 歳以上のことを指すが与論では 85 歳以上の
ことを通常指すという、古川先生の言葉の意味を改めて考えさせられた(写真はお話をたくさんし
てくれたおばあちゃん…とても 90 歳代には見えない!!!)
午後は往診へ。この日は初日の夜間に学生が担当した患者さんのお宅にも訪問した。昨日より理解力も動きも少しよくなっている
ようであり、ご本人の与論病院への入院意思があったため、本日紹介入院となった。診療所に帰ってからは外来を見学した。症例
1 : 92 歳女性(本日福祉センターでお話した中のお一人だった)。長期間かかっているため現在の主訴について記載することに
するが、主訴は左肩の痛み。本日は調子がよく、前回受診時より軽減した。何かをしないと退屈だがやり過ぎないように注意して
いるよう心がけているとのことだった。薬はかなり多種類出ていたが、とても元気な様子が伺われた。症例 2 : 84 歳男性。 7 年
間もの間、尋常性乾癬が治らずあちこち受診し苦労された方で、古川先生にかかって 4 ヶ月でよくなった方であった。診察では乾
癬の跡は見受けられたが、本人の自覚症状は全くなく、皮膚の状態も良好であった。先生がおっしゃるには、このように専門医か
ら総合診療医への逆紹介パターンは最近わりと増えているという。広く見る総合診療の面白さを感じた一面であった。
6 月 28 日(木)
実習先:診療所( 8 : 00 ~ 13 : 00 )、与論の各地の自然(午後)
内容:本日も午前は診療所の外来を見学した。本日検査としては胃腸ファイバーがあった。症例 1 : 62 歳男性。胃のつっかえ感
を主訴に受診した。本日胃腸ファイバー施行。胃腸は多少の炎症所見はあるものの胃癌、胃潰瘍等の所見を認めなかった。食道は
少し荒れており、粘膜は白っぽく、一部肥厚しているように見えた。悪性所見(-)より、食物に注意することになった。胃腸フ
ァイバーの前に看護師さんに術前処置を教えていただいたが、使用するものとしてガスコンシロップ(胃内有泡性粘液剤)で胃の
泡を少なくし、キシロカインを口に含んで局麻をするとのことだった。また、通常はブス
コパン(抗コリン薬)を使うが、この患者さんは前立腺肥大症を持っていたので今回は使
わなかったそうだ。ポリクリでも胃カメラとかは見たが、術前処置まで見たことなかった
のでとても興味深かった。症例 2 : 43 歳女性。腹部の腫瘤、便秘を主訴に 2 日前来院し
た。時々締め付ける感じが続いている。大腸癌疑いにて本日腹部エコー実施。左卵巣に嚢
胞のような低エコー領域を認めた。そのため卵巣嚢胞疑いより婦人科受診、大腸癌疑いよ
り便検査後に大腸ファイバー実施となった。午後は従来のプログラムを変更し、与論の自
然について実習させてもらいました。
6 月 29 日(金)
実習先:診療所(午前)
内容:最終日の本日も外来見学であった。見学の前には運動負荷心電図を計測させてもらった。症例 1 : 68 歳女性。糖尿病で定
期観察中。今は蛋白制限とか行われていないことからまだ第一期と考えられたが、 HbA1c が 9% 台が続いていた。現在経口糖尿
病薬であるジャヌビアとアマリールの処方がなされている。先生が「食事に気をつけ
て少しは運動しないとねー。」と生活改善を促しても笑ってごまかす感じであった。
分かっちゃいるけどお酒がやめられないらしい。そして運動もあまりしておらず自覚
に乏しかった。先生によるとお酒を本気でやめようと思うには人身事故を起こすレベ
ルでないとやめないらしい。症状が進行する前にこの患者さんにも先生の声がもっと
響いてほしいなと感じた症例であった。症例 2 : 85 歳 ( ? ) 男性。主訴は左肩の痛
み。 1 日前に漁に出かけ、竿を引いた際に肩が痛くなったという。右手の補助がない
と左腕は挙上できない。肩関節の伸展は可能だった。診察の結果、腱の断裂等はなさ
そうであったため、湿布の処方と電気療法を行った。本日は最終日であり 10 時に診
療所を後にした。
感想
今回与論のパナウル診療所で 1 週間実習させていただきました。私が与論を希望した理由は 3 つ。①離島完結の医療を診てみた
かった②終末期医療に興味があった③せっかくなら遠いところへ行ってみたかったです。
①について。実際離島医療に触れて、自分の中での離島医療に対する考え方がだいぶ変化しました。 1 点目は毎日の外来患者さん
の多さでした。失礼な話、人口も限られているため外来数も限られているだろうというのが私の初めの考えでした。しかし、実際
行ってみると全く正反対で、来るわ来るわとても午前は 12 時には終わらないのが常でした。夕方からの外来もまあ 6 時半に終わ
れは早いほうという来院数で、とにかく古川先生のご多忙さに驚きでした。また、患者数に加えて興味深いと思ったことは、この
一週間しかいなかったのに「あれ、この患者さん数日前も見た」とか、「この前来たときとは別の主訴で来院していたような」と
いう症例がとても多かったことです。患者さんは体の不調を先生に何でも相談しているような雰囲気であり、先生と患者さんの信
頼関係が非常に強いものであることを感じるとともに、 1 人があらゆる疾患を診る総合診療の面白さを感じました。
2 点目にこの診療所が患者さん個人だけではなく地域全体の健康づくりに大変貢献しているということです。体操教室などの開催
はもちろんですが、( 1 点目とかぶりますが)専門分野に囚われない広く診る医療で個人レベルではなく全体をも健康水準を保っ
223
ていると感じました。大学病院のように専門性の高い病院ももちろん必要であり、他科の疾患ならコンサルトで対応するのでしょ
うが、総合的に診るとなるとやはり患者さんの生活から、環境、地域という背景を知ることが絶対欠かせないと思います。なかな
か患者全体の健康を医者一人が診るというのは難しいことですが、それを実践されている古川先生は与論全体の健康づくりに貢献
されているのだと感じました。
3 点目に公私の壁が薄いということです。例えば往診のときにガソリンスタンドに寄ったら、さっきまで外来にいたおばちゃん
が店から出てきて給油しながら世間話していたり、自転車を漕いでいた小学生が昨日インフルエンザ疑いで外来に来ていたり、な
ど、「外来でみた!」という人々がかなりたくさんいました。また、先生とすれ違うと(先生が車に乗っている状態でも)多くの
人々が挨拶をし、先生もそれに答えているような毎日でした。さらに先生は音楽関係でも地元の方々と深く交流しており、地元に
根付いた医療とはこういうことを指すのかと何だか悟った(?)ような気がしました。公私関係なく人として患者さんに接すると
いうことは鹿児島市ではおそらくない(むしろ変に深く接してはいけない?)と思われるのでとても新鮮な光景でした。
②について。実はこれが最大の理由でした。私は昨年今年と立て続けに両親が亡くなり、それ以来終末期のありかたをずっと模索
していました。何が正しい最期のあり方なのか、何をすればよかったのかを自分に問い続けていました。与論では在宅死が 80 %
もいらっしゃるという、大変特徴的な島であり、終末期のあり方を考える機会があるかもしれないと思いました。古川先生に「な
ぜ終末期医療に興味があるのか」と聞かれ若干戸惑いましたが、「興味があるということの背景には必ず何か理由があるはず」と
いう言葉が返ってきて、自分の心がまるで読み取られているような気がしました。往診では実際見取りの現場には居合わせません
でしたが、終末期を考える機会には数回遭遇しました。ボーっとしているが往診にきた私たちに手を合わせる患者さん、声は全く
出なかったが表情が豊かな患者さん、息子に先立たれたが孫が立派な会社に就職が決まったと泣いて喜んでいた患者さん。家族の
側では血圧測定や薬剤管理をしスタッフに報告している姿、ちょっと最近無理しすぎてるんですよーと苦笑いしながら介護してい
る父親のことをスタッフに様子を伝える姿。患者さん・ご家族どちらも大変な中でも笑顔が垣間見えることがあり、笑顔でいられ
る在宅介護が存在することの感動を経験しました。もう少し終末期医療の現場を見てみたかったですがさすがに 1 週間という制約
では厳しいものがありました。笑顔で最期を迎えられる医療があると知れたことだけでも私自身にとっては来た意味があったと思
います。
③について。与論は鹿児島県といえどもほぼ文化、自然は沖縄であり、文化と自然の違いを知るよい機会となりました。文化では
料理が既に沖縄料理であったり、流れている曲が琉球音楽であったり、島の行事もスピリチュアル的なものが多かったです。未だ
に埋葬の文化が残っていることには驚きました。自然についてはトロピカルな果物が多く美味しいものばかり(島バナナ最高!)、
また珊瑚が綺麗なエメラルドグリーンの海を体験しました(はしゃぎすぎて全員最終日はフ
ェリーで爆睡)。鹿児島とかなり違う文化は新鮮で、遠くにきた甲斐がありました!
最後になりましたが、 1 週間実習を受け入れてくださった古川先生を初めパナウル診療所の
スタッフの皆さん、活性化センターの高橋さんには大変お世話になりました。与論の医療の
現状を知ることができただけでなく古川先生の離島医療に対する考え方を知ることができた
こと(離島医療をやるのも面白そうだなぁと思えました)、与論の島の文化・自然に触れる
ことができたこと、いずれも大変貴重な経験であったことは間違いありません。与論に実習
に来て本当によかったです。本当にありがとうございました。
224
姶良町立 北山診療所
医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック
たのかん
北山診療所外観
三重の滝
田の神さあ
ナカノ在宅医療クリニック外観
225
平 成 24 年 4 月 2 日 ( 月 ) ~ 4 月 6 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
崔
賢姫
4 月 2 日(月)
実習先:北山診療所
内容:午前
外来見学、
午後
姶良市役所
午前中は、従来看護師の方々が診察前にバイタルチェック、事前の問診をしていらっしゃるのだが、代わりにその業務をさせてい
ただいた。 1 ヶ月の春休み後、久しぶりの血圧測定は不慣れなものだったが、毛利先生や看護師の方々に丁寧に指導していただき、
自分が間違って行っていた点を認識できた。
【症例 1 】 80 代、女性
主訴:昨日からののどの痛みと咳が少々。
理学所見:発熱なし、眼瞼結膜
貧血なし、頚部リンパ節腫脹なし、皮膚所見なし、咽頭発赤極軽度、鼻汁なし、心音・呼吸音正
常、腹部症状なし。以上より、主訴からは上気道炎と考えられるが、咽頭発赤や咳は極軽度であるため、薬の処方は不必要と判断
された。
【症例 2 】 80 代、女性
主訴:腰痛
既往歴:変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症
(以前から腰痛のため動けなくなったことが度々ある。)
理学所見:重度円背、運動麻痺はなし、左大腿近位外側~臀部にしびれあり、足背動脈触知良好、下腿浮腫なし、心音・呼吸音正
常、腹部症状なし。以上より、数年来苦しまれている腰痛症状の再発が最も考えられ、まずは局所麻酔薬の注射で症状緩和を図り、
内服薬(NSAIDs)も処方された。
午後は、姶良市役所へ行った。保険年金課の職員の方々に国民年金の概要と、姶良市の実情、姶良市統合過程での公的診療所の扱
い、現在の北山診療所の役割についてお話していただいた。また、行政の立場から、将来医師になる私達へ医療費のことを考えて
働いてもらいたいとのお話もいただいた。
4 月 3 日(火)
実習先:北山診療所
実習内容:午前
外来見学、午後
北山地区見学・往診
【症例 1 】 80 代、女性
往診、息子さんと 2 人暮らし、脳梗塞後片麻痺、移動は車椅子レベル。
伺った際には車椅子上に座っておられ、洋服も着ておられた。車椅子駆動の際、畳ではすべるので、自宅内でも運動靴を着用され
ていた。お顔の表情も良く、活気がみられた。
トイレは自立されているが、入浴はデイサービスで行っているとのことであった。
高血圧のコントロール中である。
【症例 2 】 80 代?、女性
往診、独居、脊柱管狭窄症(術後?)
北山地区でもとくに交通の便が悪い所にお一人で住んでいらっしゃる。バスも通らないため、以前は痛い足をひきずって診療所ま
で歩いて来られていた( 1 時間弱?)。
昔ながらの木造日本家屋で、今も牛舎や精米機、鋤などが残っていた。玄関の上がりかまちは史上最高と思われる程高く、 60 c
m位はあると思った。また、土間に釜戸も残っていた。お風呂は今も薪で火をおこして焚いてらっしゃるということであった。昔
ながらの住環境に圧倒されて、病歴や身体所見などをあまり記憶していない。
4 月 4 日(水)
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
実習内容:在宅診療見学(松尾先生)
【症例 1 】 80 代、女性、心不全
長男夫婦と 3 人暮らし、健康に対する信念を持っておられ医療拒否。
訪問時、ふとんに仰臥位、「苦しい」と繰り返し訴えあり、頻呼吸、橈骨動脈触知不可、血圧測定不可、SpO2 測定不可。
以上より心不全増悪と診断された。息子さんから、以前より処方されている利尿剤は、トイレが頻回になり介助が大変だからやめ
ていたとのこと。本人からも再度医療拒否の発言あるものの、利尿剤を飲んで排尿しなければ、今の苦しさを取れないこと説明す
ると、本人は納得され服薬した。また、酸素も勧めたが、息子さんは「本人が取ってしまう」と言い、本人は「めんどくさい」と
の発言あり。(次の日再度訪問すると症状改善し、トイレにも行けているとのこと。効果を実感されたのか服薬は続けているそう
だ。)
【症例 2 】 60 代、女性、関節リウマチ
長男と 2 人暮らし、家中に新聞紙を敷きつめており、物も若干散乱していた。
お話ぶりは穏やかだが、家の状態をみると、精神的な問題はあるのか疑問に思った。
尺側偏位・スワンネック変形がみられた。
4 月 5 日(木)
226
実習先:ナカノ訪問看護ステーション
実習内容:在宅看護見学
【症例 1 】 65 歳、男性、 ALS
(人工呼吸器装着)
妻、次女(看護師)との 3 人暮らし
微かに眼球運動がみられる事はあるが、コミュニケーションはほぼ困難。
光トポグラフィを用いて脳血流を測定し Yes, No を判断する「心語り」使用することあり。
訪問入浴を初めて見学させていただいた。訪問入浴業者の方が 3 人組でいらっしゃり、手際良く浴槽を組み、お湯を張り、バスク
リンの香りは毎回変え、気切部位に水がかからないよううまく洗髪・洗体していた。患者さんの意思表示はみられないが、適宜声
かけしながら優しく作業する様子を見て、正直感動した。 3 人のうち 1 人は看護師だが、 2 人は助手でいわゆる医療職や介護職で
はないそうだ。いわゆる資格を取得していなくても、十分患者さんに貢献されていると思った。患者さんも時折目を閉じ、気持ち
よさそうにされていた。入浴は週に 1 回だが、とても大切な仕事だと改めて実感した。
私が同行させていただいた看護師さんは、入浴時は呼吸器の管理と痰の吸引やバイタルチェック等を担っていた。入浴後は全身
の診察や体位の調整をされた。終了後は看護以外のことも奥様とお話される等、ご家族とのコミュニケーションを図っておられた。
【症例 2 】 60 代、女性、進行性核上性麻痺
(外部刺激により笑顔みられるが、意思表示困難)
夫、長男夫婦との 4 人暮らし。だが、介護はもっぱら夫のみ。
今回は浣腸目的で訪問した。御主人は勉強家で、介護についても長年の経験と方法論を持っておられ、ときに専門家とは違う方法
を行うことがあるようだ。しかし看護師さんは御主人をむげにせず、御主人のペースを基本にしながらも大事な所は指導されてい
た。また、看護方法だけでなく、その他のプライベートな話しも弾み、御主人の考えや行動を知るきっかけになっていた。
4 月 6 日(金)
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
実習内容:訪問診療見学(中野先生)
【症例 1 】 70 代、女性、膵臓癌(骨転移)
夫と 2 人暮らし、抗癌剤内服中、副作用と思われる足部潰瘍による痛み強い、腰痛もあり。
自宅内 ADL 自立。
今回はお二人が前医でどの程度まで病状説明を受けているかをまず聞き出し、それによっては病状説明、病名告知から行う必要が
あった。お二人とも膵臓癌であることは認識されていたが、当の奥様は骨転移については御存じなかった。また、最近腫瘍マーカ
ーが上昇していることから、抗癌剤の効果がなくなってきている半面、足部潰瘍という副作用が目立っているため、抗癌剤を終了
することを提案し、納得された。さらに、今後はどこで最後を向かえるかという点で、在宅でも十分対応できると情報提供された。
奥様はもう最後というときは、御主人が面倒をみるのは大変だろうからホスピスを希望された。御主人も同意されたが、お二人が
まだ在宅医療や看護の様子を体験していないことから、これからそういった選択肢も踏まえ徐々に決めていきましょうということ
になった。
遠隔医療システム:実施できなかった。
感想
<北山診療所でお世話になって>
今回 2 日間お世話になって、①限界集落という存在を肌で実感したこと、②その地域に住む方々の文化や考え方があること、③
医療機関が一つであるため地域住民の継続的な健康管理も担っていること、④医師の考え方次第でどこまで診るかは違ってくるこ
とが特に印象的でした。
①北山地区と 3 つの出張所を案内していただく過程で、昔は農業や林業等の産業があり、開拓も推進されたことで、多くの住民
が住んでいたことを知りました。それが、産業が傾く中で若い人は都市部に出ていって人口が減少し、学校も閉鎖し、益々人口流
出していきました。その名残で、集落から離れてポツンと 1 , 2 軒家屋があり、そこに高齢者が独居するに至っていました。
はじめ私は、他の家がない山奥に 1 人で暮らしていて怖くないのか、どうして敢えてここに家を建てたのか疑問を持っていました。
しかし集落の変遷をお聞きすることで理解することができました。また、日本中に北山地区のような限界集落が点在していること
を初めて肌で実感することができ、関心を持てるようになりました。
②今回、問診や身体診察を 6 名させていただきました。毛利先生が医学生だと説明すると、皆さん全く嫌な顔をせずに協力的で
した。入院はしません、家にいたいという方が多かったのも印象的でした。都市部で生まれ育った私は、本やネットで情報を集め、
セカンドオピニオンも求める風潮にも慣れてきて、北山の人々のように言う方は少なくなってきたと感じていました。なので、学
生として診察させていただいた患者さんの雰囲気の違いを感じました。もちろん年齢もありますが、考え方や文化の違いもあると
感じました。うまく表現できませんが、人々がガツガツしていなくて全体的に柔らかいと感じました。
③④今回の実習で一番印象的であったのは、患者さんをどこまで診るかを決めるのは医師次第ということでした。北山診療所に
は新たな症状を訴えてくる患者さんだけではなく、定期受診の方もいらっしゃいました。地域の特性上、長年医療機関にかからな
いことで、誰にも知れずに「孤独死」に至る可能性があります。また、北山診療所しか通えない方も多いため、高齢者の場合、症
状を訴えなくても悪性腫瘍や動脈硬化性疾患が進展する可能性は高いです。従って、先生はどこに誰が住んでいるか把握され、看
護師と連携してその方達にコンタクトするようにされていました。また、定期的に受診される方でも、一定期間内に健康診断や癌
検診に匹敵する検査が行われているかチェックされていました。そうすることで、地域住民の健康管理をできるだけ漏れなく行っ
ておられました。また過剰診療にも気を使っておられ、検査や薬の処方に無駄がないよう配慮されていました。
227
私はとても感銘を受けました。と同時に、医師の考え方次第で実施される医療が大きく変わって来る現実も感じました。将来、
自分も医師になったら、どのような理念を持って医療を行いたいか、考えながら働く必要があると痛感しました。
お忙しい中、たくさんのお話を丁寧にしていただいた毛利先生に改めて感謝申し上げます。プライマリケアのモデルケースを与
えていただいたような実習でした。地域の特性、文化を理解しながら、医療者としてどのような理念を持って実行するかのお手本
を見せていただいたと感じました。(また、その理念に共感しました。)
看護師・事務の先生方にも配慮していただき、楽しく実習することができました。
2 日間、どうもありがとうございました。
<ナカノ在宅クリニックでお世話になって>
今回 3 日間お世話になって印象的だったのは、①中野先生が、「常識」と言われていることを鵜呑みにせず自分の頭で考えること
が大切であると強調されていたこと、②先生の在宅医療に対する考え方、③初めて死を前提としたムンテラを見学したこと、④訪
問看護・訪問入浴を見学できたこと、⑤カンファレンスに参加して在宅医療の流れに触れたことです。
④病院では、病院内の患者さんにしか焦点をあてないが、実際には治療が終わってからの人生の方が長いです。そのような意味で
兼ねてから在宅医療に興味がありました。今回実際に訪問看護・入浴を見学させていただき、このようなサポートがあれば自分も
実際、患者・家族の立場になった時に、何とか在宅医療でやってみようと思えると感じました。
⑤中野先生も強調されていた通り、在宅医療はケア中心の医療であるため、必然的に看護師の役割が大きいです。そこで看護師同
士、看護師-医師間、事務も含めた情報共有と、それぞれの立場からの提言が必要で、カンファレンスではそれが活発になされて
いました。
また、将来医師になる者として、看護師や事務の方々の提言を聞くことで医師に求められる役割も考える機会になりました。
また、システムとして在宅医療がどう実施されているのか、流れを大まかに把握することができました。
①②③中野先生は在宅医療はキュアからケアへのパラダイムシフトであるという信念を持って、日々の医療に取り組まれていまし
た。医療だけではなく、政治問題にも言及され、今正しいとされている事が本当はどうなのか考えることと、考え得るだけの情報
収集が大切だと教えていただきました。
医療に関して言えば、今まではキュア主体の医療でありました。しかし、高齢化社会が進む中で過剰な延命治療が問題視されてい
ます。どこからが過剰かをどう判断するのか、誰が判断するのかという生命倫理が問われる一方で、実際の患者さん、引いては今
健康である私達の大多数が、助かる見込みが無い状態での呼吸器装着や胃瘻造設を望まないという尊厳死の問題も問われています。
中野先生は尊厳死や人間の寿命に対する確固たる信念をお持ちでありました。患者さんや御家族に対するムンテラも率直にされて
いました。中には戸惑う方もいらっしゃるようですが、徐々に在宅医療のサポート力を体験していく中で、在宅での看取りを選択
される方が多いようです。先生はもちろん在宅以外の選択肢としてホスピスの紹介もされていました。
私は中野先生のお話やムンテラを見学させていただくことで、まず医師としてどのような考えを持って医療に臨むのか、自分の
考えを持つことが大切であると感じました。その考えによって、方針も説明の仕方も変わって来ると思ったからです。これから医
師として研修し多くの技術を学びながらも、常にどのような医療を行っていきたいか、考えながら働きたいと思いました。
お忙しい中、学生実習を受け入れてくださり、どうもありがとうございました。
中野先生には色々刺激的なお話を聞くことができ、少しずつでも勉強の幅を広げていきたいと思いました。また、その勉強の方法
も指南していただきましたので、真似してみたいと思います。松尾先生はじめ看護師・事務スタッフの先生方にもたいへんお世話
になりました。とくに看護師の野口さん、有村さんには在宅看護見学でお話をさせていただいて、とても勉強になりました。 3 日
間、貴重な体験をさせていただき、どうもありがとうございました。
氏
名
森
威慈
4 月 2 日(月)
実習先:診療所
内容:午前中は診療所で外来見学。午後は先生の案内で出張診療所を巡り、地域の実情を教えていただいた。診療所に戻り外来見
学。その後、姶良市役所にて職員による姶良市の国保の現状説明。
4 月 3 日(火)
実習先:診療所(午前)、往診(午後)
内容:午前中は診療所で外来見学。午後は往診で患者さんのお宅に伺い診察の見学と診察をさせていただいた。
【症例 1 】中年女性
1 週間前に家族がインフルエンザ B 型に罹患しており、本人は発熱や関節痛はなかったが、咳や頭痛があった。ワクチンを接種し
ていたため発熱などがなかったと思われる。その晩に熱が出て、翌日検査を行ったところ B 型陽性であった。
【症例 2 】老年女性
定期の訪問診療で、周りに人家が無い一軒家に一人で暮らしをされており、脊柱管狭窄症、心筋梗塞、過活動膀胱を患われている
方のところへ伺った。古い建物であるせいか家屋内に段差があり、薪で風呂を沸かすような家で、子供たちが訪ねてきているよう
だが、買い物や火事を起こさないかなどが大変気になった。
【遠隔医療実習記録】
使用していません。
【感想】
カーナビに人家もまばらな山中に誘導され、「本当にこの道で正しいのか?」と思いつつ車を走らせると看板が見え一安心した。
228
へき地の診療所ということで検査ができても心電図やエコーくらいだろうと思っていたが、レントゲンもあり意外であった。医師
1 人、看護師 3 人、事務 2 人で運営されており、街中にある普通の診療所と変わらない感じがした。周りには他に医療機関や薬局
がないため毛利先生はあらゆる疾患に対応され、看護師さんも本来の業務以外の業務もこなされていた。患者さんに方言を交え、
明るく接しておられ、ほのぼのとした雰囲気が感じられた。大学病院に引けを取らないどころか、むしろ 1 人 1 人に時間をかけて
診察・説明をされる点はへき地だからこそできるのかなと感じた。
「へき地であるから何でもしなければならないと」勝手に思い込んでいたが、「できること、できないことを理解し、無理をしな
い」という割り切りが重要であることを学んだ。
2 日目に診療所の前にある“北山茶屋”で蕎麦をごちそうしていただき、とても美味しく、また風雨が強く寒い日であったので体
も温まった。
最後に毛利先生や看護師の皆様に感謝いたします。
ナカノ在宅医療クリニック
4 月 4 日(水)
実習先:訪問診療
内容:松尾先生の訪問診療に同行。
4 月 5 日(木)
実習先:訪問診療
内容:中野先生の訪問診療に同行。
4 月 6 日(金)
実習先:訪問看護
内容:上村看護師の訪問看護に同行。
【症例】
前立腺がん、心不全、肺がん、認知症などの訪問診療に同行。バイタル測定、保清、リハビリなどの訪問看護に同行。
【遠隔医療実習記録】:使用していません。
【感想】
訪問診療と訪問看護を実習させていただき、ITの重要性を感じた。ITを用いることで、情報を共有でき、効率よく仕事ができ
ることが分かった。先生や職員の方々は、白衣でなく、ユニフォーム ( ポロシャツ)で訪問し、病院とは異なり、威圧感がなく親
密さが感じられた。
中野先生の話では、キュアとケアの違いが印象的で、これまで自分のなかで当たり前と思っていたことが訪問診療では異なること
を教わり、音を立てて崩れていく気がした。
朝のミーティングでは、発言しやすい環境で活発な意見交換が行われていたのが印象的であった。
訪問診療や訪問看護では、患者だけでなくその背景 ( 家族 ) に気を配らなければならず、信頼が必要であることを理解した。初日
にはスタッフとの花見にも参加させていただき、人見知りな性格なので緊張していたが、距離が縮まったように思う。
最後に指導していただいた中野先生、松尾先生をはじめ職員の方々に感謝いたします。
平 成 24 年 4 月 23 日 ( 月 ) ~ 4 月 27 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
迫野
能士
4 月 23 日(月)
実習先:北山診療所(午前)、姶良市役所(午後)、内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学。症例: 20 歳代、女性、主
訴:胸痛、検査所見:心電図正常、聴診所見正常、レントゲン写真異常なし。これらより胸の筋肉や筋膜が炎症をおこしているの
ではないかということとなり、経過観察となった。午後は姶良市役所で姶良市の保険のシステムの話や高齢者の虐待について、そ
して後見人制度などについて話を聞いた。
4 月 24 日(火)
実習先:北山診療所(午前)、往診(午後)、内容:午前中は診療所で外来見学。午後は患者さんのお宅に往診し実際に診察を行
った。
4 月 25 日(水)
実習先:中野在宅医療クリニック、内容:病院で加療中の患者さんが退院後、在宅での医療に切り替えるために現在入院中の病院
のスタッフ、患者さんとその家族、在宅医療のスタッフとで必要な器具、患者さんにあった器具、患者さんの家族の方達が正確に
扱える器具を揃える手筈を整えたりするなど、できるだけ患者さんやその家族の希望通りとなるように退院前に会議を行った。
4 月 26 日(木)
内容:訪問看護を体験した。患者さんはALSの患者さんでわずかにまぶたを動かすことができる患者さんであった。その患者さ
んを在宅での入浴を行った。入浴後、口腔内のケアを行った。その後、しばらく血圧の変動や、吸入酸素の量などの変化がないか
様子を見た。
4 月 27 日(金)
内容:訪問診療を行った。次から次へと様々な患者さんのところへと訪問した。患者さんがしっかりと足りなくなった薬や自分に
合った薬などをしっかりと先生に申告したりすることができることなど先生方と患者さんの間にはかなりの信頼関係があるのだな
229
と感じました。先生と看護師さんとのコンビネーションの良さと手際の良さに驚きました。
遠隔医療実習記録
症例の年齢、性別、主訴、症状と所見、遠隔システムを用いた相談内容、それに対する紹介医からの回答。使ってみて有効であっ
た点。新たに追加もしくは改善して欲しい点。
感想
初日、二日目は北山診療所で実習を行った。北山診療所では午前中は外来の見学や問診、予診をとらせていただいた。なかなか、
あそこまでしっかりと予診をとらせてもらったことがなかったので初めのうちはかなり緊張して血圧もなかなかうまく計ることが
できず、何度も計りなおしたりしていたが患者さんたちはみな良い人たちばかりで逆に「落ち着いてどうぞ」と声をかけていただ
いたりなどしてとてもありがたかった。また看護師さんたちもとても優しく問診をとるのに苦心しているときなどはさりげなくサ
ポートをしていただきました。また先生も私が恐る恐る診察していたら「自信を持って診察していいんだよ」と声をかけていただ
きとても心が楽になり自分の思った所見をしっかりととれたと思います。また C 型肝炎から肝硬変に至った患者さんの診察をおこ
なった際に、様々な問診や診察を行い最後に「気になることはありませんか」と問いかけると、「夜に息苦しくなることがある」
と言われた、その後「その息苦しさは起き上がると良くなったりしますか」と問いかけると「起き上がるとよくなるね」と言われ
たこれは起座呼吸で教科書に書いたあったとおりだと思い学んだことが実際に活かせてよかったなと感じました。また、往診に向
かう途中は、道路の道幅が本当に狭くて道も曲がりくねっていて驚きました。道端でアナグマなどの動物などを見ることができて
とてもよかったです。また、金魚やコイを飼っている患者さんのお宅にお邪魔した際に金魚の飼い方などの話もとても興味深かっ
たです。また、私は枕崎の出身なのですが北山診療所の患者さんの話す方言が枕崎の方言に似ていてびっくりしました。 2 日間で
とても貴重な体験ができたと思います本当にありがとうございました。
3 、 4 、 5 日目は、中野在宅医療クリニックで実習を行いました。中野在宅医療クリニックでの初日は退院をしてその後在宅医療
に切り替えようとしている患者さんとどのような在宅医療にしたいか、在宅医療に必要な医療機器の準備や、予算についての話し
合いなどスムーズに入院から在宅医療に切り替えることができるように入念に医師、看護師、ソーシャルワーカー、患者さんとそ
のご家族とで話し合いを行った。在宅医療を体験したいということでこの実習を選んだのですが、病院から在宅への切り替えのこ
となどは全く考えてなかったので目からうろこが落ちたというか、このようにして入院から在宅へのスムーズな切り替えが行われ
ているのかととても感心すると同時に、とても勉強になりました。
2 日目は訪問看護を見学しました、ALSの患者さんだったのですがご自宅に様々な医療機器があり、訪問で入浴も診療もすべて
のことが行えてすごいなと思いました。 ALS の患者さんは全く動くことができず感情を表現することもできなかったが入浴後は
どことなく気持ちよさそうでした。また、入浴の際は自宅の水道水を使うのではなく、わざわざタンクに温泉水を持ってきて訪問
入浴を行っているという話を聞いてとても驚きました。
3 日目は朝から訪問診療の見学を行いました。訪問診療では膀胱カテーテルの交換や胃瘻の交換などを見学することができてとて
も有意義でした。 1 日に 15 件近くの患者さんのご自宅を訪問した。自宅ということで病院での外来見学とは違い患者さんたちは
みんなリラックスしていて自分の要望をしっかりと先生たちに伝えていたのが非常に印象的でした。実習を通して、私は見学して
いるだけでしたが移動などでくたくたに疲れたのですが先生や看護師の方達は全く疲れたように見えずとてもすごいなと感じまし
た。また、先生たちは一人ひとりの患者さんたちの病態などを移動中の車の中でチェックしたりまでしていてすごいな感じました、
そしてそんなに忙しい車の中や診察中などにも気さくに話しかけてきてくださってとても実習しやすい雰囲気で楽しかったです。
3 日間を通じてすべてのスタッフの方達がみんな気さくな方達でとても実習がしやすく伸び伸びと実習ができてとても有意義でし
た。短い期間でしたが、本当にありがとうございました。
氏
名
松崎 かおり
4 月 23 日(月)
北山診療所
1 日目
午前:診察見学・実習(北山診療所)
症例 1 .高血圧のある男性。血液検査の結果説明のため来院。眼瞼結膜貧血(-)、リンパ節腫脹(-)、甲状腺;結節・腫瘤を
認めない、心音;整、呼吸音;清、腹部蠕動音(+)、腹部触診;異常所見を認めない。先生の診察を受けるために 20 分近くか
けて診療所受診。お話をさせて頂く中で「傷を見つけて記録するのは誰でもできる。患者の心を読み取ってその心に応じて対処で
きることが大切だよね」「体調が悪く診療所に来た時でも、先生と話しているうちに疲れがなくなって、帰るときには元気になる
んだよ」と仰ったことが印象的だった。薬物治療など治療法は様々あるけれど、話をすることで安心感を与えられ、その結果、快
方へと導けるような信頼関係が構築できることこそ、究極の診療なのかもしれない。
症例 2 .神経因性膀胱の女性。初来院時は下腹部痛・尿閉があり、導尿で 1,500ml 程度の排尿があった。当時は水腎症まで起こし、
eGFR1 桁台の腎機能低下を認めたが、現在腎機能低下は改善( eGFR >60 ml/min/1.73㎡)。 2 週間に 1 度、膀胱留置カテーテ
ル交換及び膀胱洗浄を行っている。知的障害があるため、透析導入は難しいと考えられた。弟さんが献身的に介護してくれること
もあり、現在の処置法が姉弟にとって最善策となっている。マニュアル通りの治療ではなく、個々人の置かれた状況を把握した上
で最善策を判断できることも医師の技量として求められることを知った。
症例 3 .もともと糖尿病があった女性。歩行時の胸痛があったため、精密検査を行ったところ冠動脈 2 枝閉塞が見つかり、冠動脈
バイパス手術となる。現在は術後リハビリ中。高血圧や糖尿病といった危険因子があると動脈硬化性疾患のリスクは上昇するとい
うことを常に念頭に置いた上で、早期発見・早期治療につなげるために、定期的な診察を大切にし、変化にすぐさま気づく観察力
も養いたいと感じた。
午後:北山地区の案内、介護カンファ(診療所)、姶良市役所
230
遠い山奥に住む方を訪問。診療所に来るまでの道ですら幅が狭いことに不安を感じ、ここが僻地か…と思っていたのだが、到着す
るまでの道程の凄さには驚愕した。診療所近くの道幅の半分程度しかない道を車で上っていき、もはや「山」の中を上がったとこ
ろにまるで桃源郷のような素敵なお宅があった。簡易水道も通らないため湧き水を使い、隣家も近くにはないような所で、これぞ
本物の「僻地」であることを知った。鹿や猿も普通に同じ山の中で暮らしているらしい。そのお宅から少し離れた所に住んでいて
午前中診療所を訪れていた女性に途中で出会った。診察終了後歩いて帰っていたらしく、歩いてきた距離とその足の頑丈さには驚
いたが、ここに住む人にとっては私が驚くような暮らしが日常なのであり、今の私の暮らしって何なのだろうと思わずにはいられ
なかった。
( 15:00 ~ 17:00 )姶良市役所にて国民健康保険や地域包括支援センターに関するレクチャーを受けた。北山診療所は国民健康保
険の予算内で運営が行われる診療所であること、国民健康保険において医療費は団塊世代の退職に伴い年単位で増加傾向にあるこ
と、特定健康診査受診率65%達成がなされなければ平成 25 年度以降の後期高齢者支援金の負担が増加し国民健康保険の財政にも
悪影響が及ぶこと、地域包括支援センターでは介護や成年後見制度、高齢者虐待などあらゆる面で高齢者支援を行っていることな
ど、様々なことを学んだ。
4 月 24 日(火)
北山診療所
2 日目
午前:外来にて問診、診察の見学
症例 1 .右足背部の痛みを訴える男性。 3 日前の夜より足首周囲に痛みあり。痛みは次第に増強し、現在では歩けない程度の激痛
で、昨夜は痛みのため眠れていない。食欲・気分は良好。足以外に気になる症状は認めない。糖尿病あり。所見:右足背全体の発
赤・腫脹・熱感あり、疼痛は特に足首周辺。外傷は認めない。左第 1 中足趾関節周辺にも発赤を認めるが疼痛なし。症状と所見よ
り炎症性疾患が考えられるが、外傷がないため感染が原因となる可能性は低い。過去にも痛風発作を起こしたことがあり、前回の
血液尿酸値も高めで、左足には第 1 中足趾関節周辺部の発赤という特徴的所見もあることから、非外傷性の炎症では痛風が考えら
れた。治療としてコルヒチンとNSAIDsを服用し、血液検査で尿酸値測定を行うことになった。過去にも痛風発作を起こしている
ことから、食事指導も必要と考えられる。
症例 2 .両膝関節痛、労作時息切れを有する高齢女性。症状はいずれもここ数日は変化を認めない。両膝関節痛は労作時だけでな
く安静時にも認める。以前 X 線撮影を行った際に関節裂隙の狭小化を指摘され、変形性膝関節症に対する骨切り術を進められたが
手術は拒否された。労作時息切れ時には動悸もあるが、診察時には異常を認めないとのこと。両膝関節痛については痛み軽減のた
め両膝内側よりヒアルロン酸の関節内注入を行った。一方、労作時息切れについては狭心症の可能性も考えられるため、冠動脈精
査を行ってみてはどうかと先生よりアドバイスを受けた。診察前まで明るくお話しされていたが、「手術」と聞いてさっと表情を
暗くされたのが印象的だった。手術は年齢を重ねるほど負担の大きいものであり、すべての症例において最善の治療とはならない。
より良い治療法を選択するにはご本人との話し合いも必要となってくると思う。
午後:訪問診療
症例:診察させていただいたのは肝硬変を患う男性。 10 年以上前、健康診断時の血液検査で C 型肝炎を指摘され通院していたが、
昨年、エコー・ CT で肝硬変と診断された。ご本人の話では、 C 型肝炎の原因は注射ではないかとのこと。身長 161cm 、体重
48kg 、 BMI =18.5。症状:眼が引きつり、暴れ、意識消失を認める(妻談)。物忘れも多く、これらの症状は特に蛋白を多め
に摂取した後に認められ、最近頻度も増えてきている。時々夜間時の呼吸困難(起坐呼吸)も認める。また、 5~6 年前より皮膚の
かゆみあり。家族歴なし、既往歴なし、喘息・アレルギーなし。喫煙 20 本 / 日× 50 年、飲酒なし、食欲は波があり、好きなも
のを食べるようにしているとのこと。排尿は 1 時間に 1 回、排便も 10 回近くあるため、睡眠はあまり取れていない。身体所見:
眼瞼結膜貧血(-)、眼球結膜黄疸(-)、リンパ節腫脹なし、脈拍 60 回 / 分
整
左右差なし、心音;収縮期雑音(+)、呼
吸音;清、肝腫大(-)、腹水(+)、軽度の腹壁静脈怒張を認める。手掌紅斑(+)、くも状血管腫(-)、女性化乳房(-)、
足背動脈左右差なし、浮腫(-)。羽ばたき振戦(-)。
現在の問題点;①肝性脳症とその治療。診察時、意識障害はなく会話も流暢だったが、肝性脳症の症状が出現した際には家族は対
応しきれないとのこと。治療のためには NH3 産生低下のために蛋白摂取制限が必要となるが、摂取制限となると肉・魚をはじめ
あらゆるものが食べられなくなり、「食の楽しみ」が全く得られないことはご本人にとってもつらいようである。治療に関しては、
症状悪化にならない程度の食事(蛋白摂取量)指導など具体的検討が必要と考えられる。②腹壁静脈怒張がやや認められ、門脈圧
亢進症が起こりつつあると考えられる。門脈圧亢進症では、腹壁静脈怒張に加えて痔や肝脾腫、食道静脈瘤も認めるようになるが、
特に食道静脈瘤は死の原因にもなりうるため、上部消化管内視鏡検査で有無や程度の確認を行うことが望ましいと考える。
実際に診察させていただいた後に先生と症例検討する中で、 1 症例から学ぶべき量の多さを改めて実感した。今回の診察を通じて
学ばせて頂いたことは自分の中で理解を深め、今後に生かせる知識や技術としていきたい。診察後に実際にカルテ記載を行ってみ
ると「公文書」である緊張感もあり、客観的に記載する上で医学用語を正しく使いこなせる必要性も感じた。また、自分なりの診
察パターンや所見から病態を把握する思考過程など、まだまだ養うべき技術もたくさんあることにも気付かされた実習だった。
4 月 23 日(水)
( 8:30~9:00
ナカノ在宅医療クリニック
1 日目
カンファレンス)
午前:講義
昨年の大学の講義でも学んだ「キュア」と「ケア」の違い、在宅医療で行われる具体的「ケア」など、在宅医療に関することから
現代日本のことまで幅広く講義していただいた。現代日本の変革に関わっている先生の活力あふれる講義からはここ数年分くらい
の新鮮な刺激を受け、様々な話を聞くことで自分自身の生き方や物事のとらえ方を振り返るきっかけにもなった。そして、これま
で悲観しがちだったこの時代に一筋の光を見出せたことも大きな収穫だったように思う。
午後:退院前カンファ(大勝病院、天陽会中央病院)、ポストカンファレンス(クリニック)
231
ご家族をはじめ、ケアマネージャー、ホームヘルパー、訪問看護師、病院看護師、ソーシャルワーカー、医療機器メーカーの方な
ど多職種 20 人近くが集まって退院前のカンファレンスが行われた。退院後の日程確認に加え、問題点や家族の要望など情報の共
有、使用する医療機器の調整等も行われた。“多職種連携”の現場を実際に目の当たりにして、各分野からの視点があることで、
一方向に偏らず各分野の専門性が生かされたサービス提供が可能となっていることを学んだ。多職種の方々と連携する上では、自
分の専門性を磨くだけでなく各職種で行われる内容を知ることも重要であり、内容の不十分な理解では相手方に依頼すらできない
ということを感じた。
4 月 26 日(木)ナカノ在宅医療クリニック
( 8:30~9:00
9:00~17:00
2 日目
カンファレンス)
訪問診療、ポストカンファレンス(クリニック)
症例 1 .パーキンソン病とアルツハイマー病を有する女性。 SpO2 98% ,脈拍 64/分。夫も認知症あり。 2 日前に居間で転倒、左
手首には疼痛・発赤・紫斑があり、手関節の可動域制限も認めた。骨折の疑いがあることから、近医整形外科へ紹介となった。家
で寝たきり状態のままでは廃用が進みかねないためデイケアの利用が本人さんにとって望ましいが、本人のデイケア利用について
夫が難色を示している(以前、ご本人がデイケア終了後自宅にて疲れたと発言、その言葉を鵜呑みにした夫はデイケア利用の必要
性を感じず、自宅でヘルパーさんに身の回りを行ってもらえばよいとの考えに達したようである。しかし、訪問看護を行う看護師
さんの話では、ご本人はデイケア先では帰りたくないと発し、一方で夫の前では疲れたなどと異なったことを言っている模様)。
先生からデイケア利用の提案を受けた夫は了承していたものの、実際のところは理解に達しておらず、再度拒否するのでは?と思
われる。高齢者夫婦世帯でともに認知症という状況。ヘルパーさんや訪問看護師さんが自宅で身支度のサポートをされているもの
の、夫の性格や認知症といった面で苦労されているようだった。超高齢社会に核家族化で増加傾向にある高齢者夫婦世帯に対する
訪問看護・訪問診療についても充実化を図る必要性があると感じた。
症例 2 . 90 代男性。心臓疾患で一時期は余命一週間を宣告されていた。血圧 72 (収縮期).数日前より食欲が低下したことを
娘さんが特に心配しており、何とか食べさせようと必死になっていた模様。この症例で実感したことは、ご本人の思いと家族の思
いは必ずしも一致しないということだった。先生が仰っていたように寿命による食欲低下なら、生きるために少しでも食べて欲し
いという家族の願いは本人にとって負担となりかねない。希望が増えればそれだけ多くを求めてしまいがちだが、全てに完璧を求
めることは、時には自然の摂理に背くことにもなりうるのかなとも思う。希望と現実との間に差が生じてしまうことで、見守る家
族にもどかしさを抱かせてしまうのだろう。在宅で看取るという選択は寿命や病態の自然経過を尊重するという選択でもあり、そ
の本人の選択に応じて家族側もキュア(=何とかしてあげたいという気持ちや行動をとること)から、ケア(=ご本人の意思の尊
重、寿命を受け入れること)へと考え方・とらえ方を転換することができれば、もどかしさも緩和され、本人に寄り添い共に同じ
方向を向いて日々を歩めるようになるのだと思う。在宅医療を行っていく過程で医療従事者が行えることは、ご本人の体の状態改
善や維持よりもむしろ本人の意思・要望を尊重することであり、その本人を支えていく家族の心の持ちようや気持ちの変化をサポ
ートしていくことでもあるということを強く認識した現場だった。
4 月 27 日(金)
( 8:30~9:00
9:00~17:00
ナカノ在宅医療クリニック
3 日目
カンファレンス)
訪問看護
症例 1 .パーキンソン病( Yahr 分類
Ⅴ)を有する高齢男性。 10 年以上前に診断され、その 5 , 6 年後に歩行障害・意識障害
を認め胃瘻造設・気管切開を行っている。気管切開部については吸引チューブで痰の吸引を行い、二重管になっている気管切開チ
ューブの内筒を交換した。次に自律神経障害による便秘に対して浣腸を行った。その後、清拭・着替えを行い、胃瘻固定液の量と
瘻孔周囲皮膚の感染・発赤の有無を確認した。固定液量 7ml では胃瘻固定が不安定だったため 1ml 増量した。この方はステロイド
服用による尋常性類天疱瘡が陰嚢に起こりやすいため、清拭時に心がけて観察しているとのこと。実際に助手として一連の看護に
携わる中で看護師さんの技術の素晴らしさを目の当たりにし、看護の体力面での大変さやその看護を日々行っている奥さんの凄さ
を実感した。変化に気付く鋭敏な観察力を養うことも大切だと感じた。
症例 2 .麻疹罹患後に亜急性硬化性全脳炎となった中年男性。介護保険は該当せず、医療保険を利用した訪問看護が行われている。
バイタルの確認と全身マッサージを行った。 37 度台の発熱を認め会話は不能、全身は硬直し、両肘関節の屈曲や足関節の変形を
認めた。特にマッサージを行っている時に下顎の不随意運動も認めた。看護するお母さんは合間でしか睡眠がとれないようで、表
情からも疲労がうかがえた。ご本人に対する看護はもちろん、その看護をずっと行う周囲の人々(この場合はお母さん)のサポー
トも長期看護では大切な点であり、お話を伺って悩みや心配事に対応することの重要性を実感した。
症例 3 . 80 代男性。娘さんが主に介護を行っている。糖尿病に加え、加齢による関節可動域制限も認められるようになり、 1 か
月前までは 1 度でできた車いす移乗も現在は 3 回程度の小刻み移動が必要となってきている。今回は大好きな散歩に同行した。会
って間もない時は無口に見えたが、外に出ると昔話に弾み、本人の中に眠っていた思いがけない昔話も飛び出すハプニングもあっ
た。硬かった表情も散歩後は豊かになり、積極的に話をして下さった。好きなことをするということがこんなにも良い変化を与え
るものなのかと驚いた。数か月前に娘さん(介護する娘さんの妹)を癌で亡くしたとのこと。妹さんが亡くなった直後は介護する
娘さんも精神的にまいっていたようだが、ショートステイなどを利用して休息をとることで心の落ち着きを取り戻しつつある。本
人さんと大部分の時間を共に過ごす家族(介護する側)にとって心の安定は不可欠な要素であり、ショートステイなどレスパイト
サービスを利用して心のリフレッシュができるよう計らうことも大切だと感じた。
症例 4 .脳卒中片麻痺残存、膀胱結石もあり血尿も認める高齢男性。バイタルの確認と全身マッサージを行った。訪問看護だけで
なく他の曜日には理学療法も行われており、奥さんの上手い声掛けによって手足の運動も工夫できているようである。大の野球フ
ァンで、前日の公式戦に行った看護師さんからのお土産を自分の手に取ってみては満足そうに笑みを浮かべていた。もともと冗談
232
好きで、奥さんが冗談を言った時に見せる素敵な笑顔が印象的である。看護師さんによると、左膝を曲げ左手を頭の後ろに回すと
いう動作が本人さんの示す「痛みのサイン」だそうだ。言葉で十分表現できない場合に本人の示すサインに自分から気付き、意図
することを汲み取ろうとする姿勢もまた大切な要素だと感じた。
感想
鹿児島市から車で 1 時間近くのところに想像を絶する僻地・限界集落が存在することに驚くとともに、そのような地域の生活に密
接に関わった診療が行われていること、「診療所」は単なる診察の場だけでなく、北山地区のサポート拠点としても大きな役割を
果たしていることを実感した。診療所を拠点として地域に携わる僻地医療では、緊急時の対処法や判断力を身につけておくことも
勿論必要だが、異変に気付き適切な対処を行うためには日頃からの診察や記録の丁寧な積み重ねが大切であり、日常診療の中で信
頼関係を構築し本人の様々な面を知っておくことによって後々それらの情報が役立ってくるということを学んだ。離島・僻地医療
に関しては、大学入学前は数年間ごとの交代勤務でも良いのではないかと思っていたが、診療所と地域とのかかわりの深さや、地
域を知ることの重要性を感じた今、「地域」を知るということが単独かつ短期間で行えるものではなくて地元の方々との活発な交
流や情報の共有が不可欠であることを考慮すると、短期間での交代勤務は望ましいものではないのかなとも感じた。初日の申し送
りの時に出てきた(体に十数匹付着している)ダニの話のように、鹿児島市内ではあまり耳にしないような地域特有の病態もある
わけで、その地域に住む人々の暮らしや自然環境も知らなければ、全人的医療は行えない。本人の暮らす家庭環境や地域そのもの
について理解を深めるためには、単なる医学的知識や技術だけでなく幅広い教養を身につけることも大切だと感じた。
数年前に短期間の離島実習に参加した際は、診療所を訪れている地元の方々とお話しするだけで精一杯で、専門分野の知識も今以
上に不足する自分が医学生という立場でどう携わっていったらよいのだろうかと不安もあった。しかし数年経った今、いまだに緊
張もありまだまだ努力を要する部分も多いけれども、知識や経験を積み重ねてきた分、地元の方々と接したり診察させていただく
ことに関して自分自身が少しずつ進歩できていると感じられる部分もあり、今回の実習を通じて自分の成長に気付き、自信を持て
たことはよかったと思う。また、以前よりも社会全体の仕組みも見渡せるようになり、地域住民の方々を主役とした医療や行政機
関の機能についても踏み込んで考えることができた。医師資格を持つことで可能となる診療行為は幅広く、一方で守らなければな
らない規則もあり、資格の重みを感じた実習でもあった。 1 年後に求められるレベルに達するためにこの 1 年間で私がやるべき課
題も明確に見えたので、今回の実習で得たことと共に数年後の地域医療で実際の診療に生かせるよう、更に精進していきたい。
「在宅医療」でなされる医療とは?ということに関心があり、実習を行った後半 3 日間。実際の訪問診療で行われていたのは病院
で行われるような治療ではなく、“見守り”。「在宅医療」ならではの特別な治療が行われているわけではなく、生活拠点として
自宅を選択したご本人やその家族のサポートが中心だった。初日に先生の講義を受け、実際の現場を見学する中で「在宅医療」と
いう概念が自分の中で変化していった。在宅医療を選択し生活拠点を病院から自宅へ移すことで、それまで行われていた病気・病
態に対する具体的治療からご本人の意思や病態の経過(寿命)を尊重したサポートへと変化するわけだが、その過程では命には限
りがあること、すなわち「寿命」を認識することが一つの鍵となる気がした。期限があるという認識を持てることが 1 日 1 日の重
みの認識につながり、物事のとらえ方や生き方を変えていくのだと思う。「キュア」から「ケア」への方向転換の過程でご本人や
家族に対して新たな視点を提供できることもまた医師の技量の 1 つだと感じた。超高齢社会が進行するこの時代、在宅医療はます
ます必要性の高まる医療であり、訪問看護や介護など多職種による連携も必要不可欠となる。多職種連携においては、各職種の業
務内容について知っておくことが、依頼するという点でも大切だと感じた。実習を通じて最先端医療の活動拠点が身近に存在した
ことに改めて感動し、実際の現場ではバイタリティーあふれる先生や看護師さんに圧倒されつつも、これまでにない大きな刺激を
得ることができ、在宅医療についても理解を深めることができた。
2 日間、 3 日間という短い期間でしたが、毛利先生や北山診療所・姶良市役所の職員の方々、そして中野先生始めクリニックの皆
さん、事細やかに指導していただき本当にお世話になりました。ありがとうございました。
平 成 24 年 5 月 28 日 ( 月 ) ~ 6 月 1 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
緒方
裕樹
今回実習させていただいた際に経験したことを一例ずつご報告したいと思います。
5 月 28 日(月)北山診療所
数件の外来見学、診察等をさせていただきました。また、二日目にカルテを作成させていただく患者さんのご自宅に赴き、紹介し
ていただきました。
その後は、市役所で事務部門の方から保険の仕組みや後見人制度について詳しくお話を聞くことができました。
5 月 29 日(火)北山診療所
前日同様の内容に加え、出張診療所や北山地区の案内をしていただきました。また、前日にご紹介いただいた患者さんのお宅で問
診、診察をさせていただきましてカルテ作成を行いました。
患者さんは高齢男性でC型肝炎、肝硬変を患う方でした。
5 月 30 日(水)ナカノ在宅医療クリニック
朝のカンファレンスに参加させていただいた後、午前中は中野先生にレクチャーをしていただきました。午後からは数件のお宅の
訪問診療に同行させていただきました。この日は、筋萎縮性側索硬化症を患う中年男性宅で訪問入浴の様子を見学させていただく
ことができました。また、ある患者さんのお宅では多職種の医療従事者とご家族を交えてのカンファレンスに参加させていただき
ました。
5 月 31 日(木)ナカノ在宅医療クリニック
233
看護師の方に同行させていただき訪問看護を見学させていただきました。その中でも印象に残ったのは進行性核上性麻痺を患う女
性とその夫の方でした。その男性の言葉やお話しされる様子が未だにはっきり思い出されます。
6月
1 日(金)ナカノ在宅医療クリニック
中野先生に同行させていただき訪問診療を見学させていただきました。この日にもっとも印象に残ったのはこちらも ALS の患者
さんなのですが、今回、同行させていただいた中ではもっとも若い方で、嚥下機能がぎりぎり保たれているという状態にありまし
た。気管切開の実施の是非について議論されていました。
遠隔医療実習記録
患者さんは高齢男性で、主訴は右足第一指の疼痛でした。症状、所見ですが爪周囲の疼痛、発赤、腫脹がみられました。また、爪
の異形成もみられました。本症例に関して、病変部の処置について相談させていただき、ご返信いただくことができました。
実際に使用してみた感想としては、使い慣れないこともあり、なかなか戸惑いましたが日常的に使いこなせるようになれば、本当
に専門医の診療を受けることが困難な地域においては絶大な効果を発揮するであろうことが容易に想像できました。
本システムに対する要望ですが、まだまだ理解していないところが多いので何とも申し上げづらいのですが、強いてあげるならば
理解し習得しやすいシステムになればと思います。特に電子カルテ think との互換性、共通点があれば少なくとも鹿児島大学病院
で働いたことのある医師や、実習した学生は習得が早いであろうとは思います。
当初、想像していた以上に有用性を感じた結果になりました。
感想
まず、今回の離島・地域医療実習でコースを選択するにあたり何故、北山診療所・ナカノ在宅医療クリニックを選択したのか、に
ついて述べさせていただきたいと思います。やはり、鹿児島大学のこの特色ある実習プログラムにおいては離島でのコースが一般
的です。その中で私がこのコースを選択した理由のひとつは、離島(奄美大島)には以前住んでいたから、というのもあります。
しかし、それ以上に船で何時間もかかる遠い島ももちろんですが、車でほんの数十分の「陸続きのへき地」に興味があったからで
す。もちろん遠い島のことも、鹿児島大学の医学生として当然、関心を持つべき身近に感じるべきテーマだとは思うのですが、普
段の自分の行動範囲から少し足を延ばしただけでこういう現状がある、というのを感じてみたかったのです。
そういう意味で北山診療所での体験は本当に期待以上の理想的な経験になりました。限られた診療設備の中での外来診察の見学
もさることながら、診療所・医師と地域とのつながりを感じることができました。実際に訪問させていただいた方々の生活様式、
環境、住宅、立地、居住状況などなどまさしく驚きの連続でした。さらに、毛利先生が車で周囲(といってもかなりの範囲だった
と思うのですが)を案内して下さり、その間、そこに住む方々のことや日常生活、日々の苦労、抱えている問題点や先生がここに
いらっしゃるまでのこと、それから今までのことなどを話して下さいました。本当に地域に寄り添った医療を実践されていらっし
ゃる方だと感じました。感じたこと全てを詳しく書き尽くしたいのですが、際限がなくなってしまうので以上にしますが、あの医
療の形、現場を見られたこと、先生にお会いできたことが何事にも代え難い経験になりました。
もうひとつ、私がこのコースを選択した理由が、市街地での訪問診療を見たかった、というものです。さらに言うと中野先生に
お会いしたかったからです。前者についてですが、母が訪問看護に携わっているからというのもあります。加えて、北山診療所に
行きたかったのと少し被るのですが、さらに身近な自分の行動範囲内で日常的に行われている、普段の実習では体験しえない医療
を実際に見てみたかったのです。このナカノ在宅医療クリニックでの実習はもともと期待が大きかったので、期待通りの実習とな
りました。と言いますのも、以前受けた中野先生の講義が非常に印象に残っており是非とも先生の仕事を見、先生とお話してみた
かったからです。
その時の講義は、本当に衝撃的でした。その当時、医学部に入りあと何年かで医師になるという中で進路についても考えながら
医者の仕事って何なんだろうと思う中でふと「医療の役目」とは結局「いい死に方」を提供することなんじゃないか、と感じてい
ました。そんなときにお聞きした先生の講義はまさに私の考えにストレートに入ってきました。在宅で死の数日前に撮られたとい
うまだ若い男性の写真、その笑顔のスライドがあまりに鮮明に記憶に残っています。
そして、今回の実習です。初日の午前中にはとても濃密な先生の講義を聞き、感じたことを質問しては、医療の話題に限らず非
常に有意義な時間でした。そして、そのあとは 3 日間、普段自分も車で走りまわっている街の中で行われている医療、それも「看
取り」が自然にその先にある医療を十二分にみさせていただきました。
その中でも、ある一人の患者さんとその旦那さんのお話だけは述べさせていただきたいと思います。その患者さんは進行性の中
枢神経疾患を患う方でした。もう何年もしゃべることもできず見た目には眠り続けています。そしてその女性の傍らについている
のはその旦那さんです。多趣味な方でとても見事な絵を描いていらっしゃいました。敢えてなのか広くない部屋にいつもお二人。
そしてまさにその時描かれていた絵には上品な立ち姿の若い女性。若いころの奥様だそうです。他にもお二人で旅行した際の絵が
壁に掛けられていました。看護師さんとなれた手つきで奥様の介護をされていましたが、始めは苦労しながらも今ではほぼ全てご
自身でされるそうです。本当に奥様のことを考えての独特の方法もあって、時にはプロである看護師さんも訂正しづらいほどだそ
う。そんな時旦那さんがぽつりと「なーんにもしゃべりはしないけど、でもね・・・」とおっしゃったことが、ある意味で今回の
実習通して、最も大切なことを教えて下さったように思います。
「いい死にかたを提供する」それが医療の役目だと思いましたが、それもやはり少し違っていたようで、それができるのは家族で
あったり周りの人たちや患者さん自身であったりするのかな、と今は思います。そして医者はやっぱりお手伝いなのかなと。
今回のこの 5 日間の離島・地域医療実習は、いよいよ 1 年足らずで医師になろうという自分に本当にかけがえのないことを教えて
くれました。地域の医療を学ぶ、現状を知る、ということでしたがそれはつまり、医者、医療の原点、医師患者関係の原点を知る
ということに他ならなかったのかもしれません。それどころか、医学生としてだけでなく、人として学ぶこともとても多い 5 日間
でした。
234
これから離島・地域医療実習に行く後輩のみなさん、自分もやはり王道の離島での実習に行く方がよかったかな、と行くまではど
こかで少し感じていましたが、実際に行ってみるとそんな不安は消え去りました。そもそも北山診療所・ナカノ在宅医療クリニッ
クという組み合わせ、コースがあまりに自分の希望に合致し過ぎていたというのもありますが、このコースを選択してよかったと
心から思います。とてもお勧めです。
最後になりますが、お忙しい中、私たちの実習に携わって下さった毛利先生はじめ北山診療所のみなさん、中野先生はじめナカノ
在宅医療クリニックのみなさん、そして嶽﨑先生、新村先生はじめ実習に関わってくださっている先生方に心よりの御礼を申し上
げたいと思います。本当にありがとうございました。
この実習がこれから先も実施され続けることを願って止みません。
氏
名
野口
千彰
5 月 28 日(月)実習先:北山診療所
内容:午前中は診療所で外来患者さんを見学、問診や身体所見とり。なかには、医療ではなく近所の方が叫んで怖い(統合失調
症?)という相談をされに来た方もいて、医療に限らず地域の相談係のような役割もすることを知った。午後に往診に行き、保険
では週 3 日しか認められていないが毎日行っていると伺った。どの仕事にも言える事ではあろうが、利益だけを考えるのではなく
何が求められているかを考え、たまにはそのように行動することが顧客(患者さん)のより高い満足度につながるのだろうなあと
思った。特にここでは安否確認も兼ねているためそれが大事であるのだろう。
5 月 29 日(火)実習先:北山診療所
内容:朝は患者さんのバイタルをとったり身体所見をとったりし、昼過ぎからある患者さんのお宅に伺い病歴を伺ったり世間話を
したりした。ターミナルの患者さんで普段は結構気難しく話さない患者さんと伺っていたが、 2 時間ほどおしゃべりがはずんだ。
午後は往診に行き、ものすごい山の中で独居の高齢者のお家に行った。家族がたびたび訪ねてくるため、完全に孤立しているとい
う状況ではないにしろ、場所が場所であるため、なにかあったときにすぐ気付ける人のいないこの環境は毎日の安否確認が必要で
あるなあと思った。
5 月 30 日(水)実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容:午前は 3 時間ほど講義で午後から往診に行った。往診の内容は在宅医療ときき予想していたかんじのことで、北山から来て
みると、医療アクセスの良さを感じた。会議がさっと人が集まってさっとやりさっと人が散って行くのがすごいと思った。やはり
ここでも、週に 3 回しか認められていない往診を週に 4 回以上行っており、月曜日に北山でと同じ事をまた感じた。
6 月 1 日(木)実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容:中野先生と訪問診療に一日中行った。素早く一日で 8 から 10 件ほど行った。膵癌でターミナルの患者さんのお家に行った
が、中野先生のおっしゃった通り、モルヒネのうまい使いようでまったく私からはターミナルであと 1 ヶ月の余命と言われている
人とは思えなかった。 Cure からcareへという中野先生のモットーを往診現場でも見る事が出来た。
6 月 2 日(金)実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容:看護士さん達と訪問看護へ計 3 件行った。訪問入浴の呼吸器管理のために他の事業所と合わせて行く事があるとは初めて知
った。全体的に思っていたよりも 1 つの家庭に多数の事業者が介入していていた。今日一番印象に残ったのは訪問入浴の手際の良
さと器具の便利さであった。また、午後に行った家庭では主に安否確認をかねた訪問看護であったが、ヘルパーさんの活躍ぶりは
すごいと思った。 100 歳近い高齢の認知症の男性宅であったがもしヘルパーさんがいなければ確実に家も荒れているだろうに、清
潔にこぎれいにしてあった。
遠隔医療実習記録
木曜日の往診で見た玄関で転倒した女性の右前頭部の打撲に関して相談した。システム自体は初めて使ってみて特に不便は感じな
かった。むしろよく出来ていると思った。確かにこのシステムが活用されれば他医への紹介がずっと簡単に迅速に行われるように
なる。便利なものである。ただ、インターネットさえあれば自宅からでもできるので、セキュリティの問題がきっとあってなかな
か活用されないのかと思った。(ポリクリの現場で見た事がないので)ただ、 4 月のクリクラで行った Miami の Jackson
Memorial Hospital では、電子カルテもインターネットさえあればどこからでもアクセスできるようになっていて、自宅でも仕事
ができるような仕組みになっていたため、国民性や多数の医師を巻き込むことの難しさが壁なのかと思った。
感想
北山診療所:
限界集落という言葉を聞いた事はあっても見た事はなかったため、これが初めての機会であった。おそらく 20 年後にはこの集落
に住んでいる人たちの果たして何人が存命なのかと思いながら往診の車に乗っていた。 80 、 90 歳で四輪駆動でないと行けない
ような道を上った先に 1 人で住んでいるような方もいて、住み慣れた所への執着はあっても、もしこれが自分の母親なら引っ越さ
せるだろうなあと思った。何かあった時や強盗が入ったとしたら、容易に助けが行けそうな場ではないからだ。それぞれのお宅で
お家にそれぞれの家族の歴史が見えて、かまどのあるお家もあったため、改修しているとはしても何年間この家はここにあるのだ
ろうと考えたりしてそこも興味深かった。
また、 2 日目に患者さん宅に行き病歴等聴取する時間があった。ターミナルの患者さんで普段は結構気難しく話さない患者さんと
伺っていたが、 2 時間ほどおしゃべりがはずんだ。そこで、毛利先生が毎日来るので先生の顔が薬みたいなもんで見ると元気にな
ると聞き、これが地域医療の醍醐味であるなぁと感じた。
出張診療所を見に行く機会もあったのだが、いろりのある公民館を借りて使っていた。いろりを博物館や旅館以外で見た事もなか
ったため、これもとても興味深かった。やはり、このような地域は昔のものがたくさん残っているのがなんだか嬉しかった。
235
過疎地で行われている医療がどのような物かという以外にも、こんな所に人がこの歳で 1 人で暮らしているのかということを知る
事が出来たのも大きな収穫となった。テレビのニュースでしか知らず実感が今までなかったことをじかに見たという感じだった。
北山診療所の毛利先生、看護士さん達、事務員さん、 2 日間でしたがありがとうございました。お世話になりました。
ナカノ在宅医療クリニック:
ポリクリで大学病院や市中病院に行っている限りは見る事のない在宅医療の現場であり、慢性期の患者さんは、これからは医療
費削減のためにも在宅で見ようという流れがより大きくなるであろうという現在であるため、とても興味深く見ていた。多数の患
者さんが、話しだしたら止まらないという感じでその話を聞きつつも次の診療に行かなければならない訳なので、そこをどううま
く切るかも 1 つの必要な技術だなあと思った。大事な事なので病や身の回りの不安は聞きつつも世間話はいい所で打ち切って行か
なければならないため難しい。
103 歳のお年寄りの訪問診療にも行ったのだが、老衰を娘さん達が認めきれないらしく、そこでもcureからcareへの現場が見ら
れた。人間は無限に生きられるものではなく、確かに自分の母親が 100 歳まで生きたとしても、もっともっと生きてほしいと思う
のは娘としては当たり前と言えば当たり前の願いであると私は思う。だが、 100 歳も超えるとなるとさすがにそれは人間の生き物
として与えられた天寿だろう、というのは第三者の立場としては冷静に判断できる。もし、そう思えればここまでよく頑張ったね
と、careの心境になれるし、残された日々をどうやってより充実させた物にするかという方向により意識がむくだろう。そこの娘
さん達 2 人は、まだなんとかもっと生きられないものだろうかと考えているのが話している事でも分かった。娘さん達と中野先生
の会話を聞きつつ、第三者としては、あとはもうなるようになると考えていいんじゃないかと内心思えたが、しかし、自分が娘さ
ん達の立場に自分の身をおくと果たしてそう素直に思えるだろうかとやはり疑問だった。難しい問題である。
そこでふと思ったのだが、医者とは怖い職業である。もし患者さんとその家族に、病気の病態生理、最善の治療法、その結果ど
うなったのか、今後の見通し、を誠心誠意で詳細に頻回にムンテラしておかないと、もしあとでトラブルが起きた時、特に患者さ
んが亡くなった時に、家族から恨まれる可能性がある。でも、よくあるのが医者は言って本人と家族もはいと言ったのに、後から
聞いていないと言われるらしい。そうなると悲しいけど押し問答になる。医者はすぐれた医学的知識や技術だけじゃ勤まらないん
だなあと思う。
今後国からも医療経済的にも重視されるであろう在宅医療の現場を見られたのは初めてであり興味深かった。中野先生と他の先
生方、看護士さん達、事務員さん達、 3 日間お世話になりました。ありがとうございました。
平 成 24 年 6 月 4 日 ( 月 ) ~ 6 月 8 日 ( 金 )
実 習 期 間
氏
名
大保
崇彦
【実習先】北山診療所【実習期間】平成 24 年 6 月 4 日~ 6 月 5 日
【実習記録】
6月4日
午前中は診療所で外来診療を見学。
症例:高齢男性、主訴は右側腹部痛。期外収縮の既往がある。本人「胃に問題があるのではないか
心配」。黒色便はないとのことであったが、金曜日に胃の内視鏡検査を行う方針となった。
午後は姶良市市役所にて、国民健康保険および地域包括支援についての案内。
6月5日
午前中は往診に同行した後、外来見学。外来見学の際に 1 名の患者さんをクリクラ生 2 名で診察。
症例:高齢女性、主訴は頸部から肩にかけての筋肉の痛み。既往歴は甲状腺中毒症(メルカゾール内服加療中)。眼球結膜の黄染
なし、眼瞼結膜の貧血なし、頭頸部リンパ節腫脹なし、上肢下肢ともに左右差なく脈を触れる、腹部は軟で腫瘤は触知しない、下
腿浮腫なし。線維性筋痛症やリウマチ性多発筋痛症を鑑別に挙げたが、全身状態は良好で痛みの部位も限局的であったため、経過
観察の方針となった。午後は往診に同行。
診療所の周りではグミの木など多くの植物がみられた。 ( 写真は桑の木 )
【実習先】ナカノ在宅クリニック【実習期間】平成 24 年 6 月 6 日~ 6 月 8 日
【実習記録】
6月6日
午前中はカンファレンス参加後に訪問診療に同行。
症例 1 : 88 才、女性、主訴は左肘の痛み。血圧 132/66 、脈拍 78 、体温 36.9 ℃、
SpO2 97。黄染、貧血なし。整形外科を受診して左肘の痛みの精査を行う方針となった。
症例 2 : 50 代、女性、関節リウマチの診断でステロイド治療を行われている。血圧
162/96 、脈拍 93 、体温 36.5 ℃、SpO2 98。血糖 164 。本人「手指はあまり痛くない。食欲がとてもある。ラーメンが好き」。
血圧が高いので、塩分の取りすぎに注意するように指導し、ノルバスク(アムロジピン) 2.5 ㎎が処方された。
症例 3 : 90 才、男性。血圧 160/60 、脈拍 74 、体温 36.4 ℃、SpO2 98。黄染、貧血なし。本人「昨夜発熱があった。咳も出
た。」咽頭が軽度発赤していたが全身状態良好なため、経過観察となった。
午後は筋萎縮性側索硬化症の患者さんの退院後方針の検討会に参加。
症例: 59 才、女性。平成 23 年 8 月に歩きにくさを自覚し、同年 9 月には息苦しさを自覚するようになった。医師会病院を受診
し、多巣性ニューロパチーを疑われ、γ―グロブリン療法を 3 クールとステロイドパルス療法を行われたが効果なく、 4 月に筋萎
236
縮性側索硬化症と診断された。 5 月からは BiPAP を使用するようになった。気管切開及び胃瘻の増設について検討し、今後は在
宅ケアをしていくのか、療養施設に入所するのかということについても話し合いが行われた。
6月7日
カンファレンス参加後に訪問看護に同行。
症例:筋萎縮性側索硬化症の患者さんの訪問入浴介護。血圧 110/78 、脈拍 84 、体温 36.8 ℃、SpO2 98。人工呼吸器の空気漏
れが指摘されていたが、訪問時には空気漏れは認められなかった。
6月8日
訪問診療に同行。
症例:卵巣癌にて在宅医療を受けている高齢女性。ステロイドの副作用で満月様顔貌、バッファローハンプがみられた。全身状態
は良好。経過観察の方針。
【感想】
1 週間の地域医療実習期間の内、月曜日と火曜日の 2 日間は姶良市の北山診療所で実習をさせていただきました。
姶良市は人口のほとんどが海岸線沿いに集中しており、北山地区は海岸線からわずか 13 kmほどしか離れていませんが人口は
500 人程度の集落です。住民の高齢化も進み、人口の50%以上が 65 歳以上の限界集落となっています。
今まで概説講義や実習等の中で、「単に病気を診るのではなく、病気になっている人間を診るという視点が重要」だということを
たびたび聞かされてきましたが、今回の実習では正にその視点に立った医療の現場を見ることができました。毛利先生は病気のこ
とを訊くだけではなくて、患者さんの最近の生活の変化や家の事情、また患者さんが現在感じていることにまで耳を傾けていらっ
しゃいました。特に印象に残っているのは、次回の診察日を決める時に田植えの日を訊いていたことです。当たり前のことですが、
生活の中に病気があるのだということを感じました。そうやって患者さんをトータルで診ることで患者さんとの信頼関係が築ける
ばかりでなく、未然に病気を防いだり、病気の早期発見・早期治療にも繋がるのだと思います。「長年糖尿病の加療を行ってきた
が、ある日肺の進行癌が見つかった、というのではいけない」ということを毛利先生はおっしゃっていて、例えば胃の内視鏡検査
をしばらく受けていないという患者さんには、機会を見て内視鏡検査を実施するということも大切なのだと教えていただきました。
専門的な治療を受ける患者さんの裏には遥かに多くの軽症の患者さんとその予備軍がいて、それらの一次予防、二次予防を行うの
がプライマリーケアの重要な役割なのだと感じました。
水曜日から金曜日までの 3 日間はナカノ在宅クリニックで実習をさせていただきました。
今まで大学で見てきた医療はほとんどがキュアの面でしたが、ナカノ在宅クリニックではケアの面も大いに見ることができました。
ナカノ在宅クリニックでの実習 1 日目の午後に筋萎縮性側索硬化症の患者さんの検討会に参加させていただきましたが、キュアの
できない病気に対してどう対応していくかというのは本当に難しいことで、患者さん本人だけでなく、家族も、主治医も辛いのだ
ということを感じました。しかし中野先生は「気管切開をしなければ死ぬ、のではなく、気管切開をして生きる権利がある」のだ
とおっしゃいました。見方の違いですが、私は大きな違いだと感じました。私たちはどうしても「気管切開をしなければ死ぬ」と
捉えてしまいがちですが、そうではなく、気管切開をして生きるかどうかの決定権は患者さん本人にあり、もし気管切開をしない
選択をしたとしてもそれでいいのだということと、医療側は今後も精一杯のケアを行っていくということを患者さん自身に伝える
ことの大切さを学びました。
1 週間の地域医療実習を通して、大学での実習ではなかなか見られない、一次・二次・三次予防の現場をみることができました。
また医療関係者に限らず、市役所の職員など色んな職種の方が互いに連携して日本の医療を支えているのだと知ることができまし
た。北山診療所とナカノ在宅クリニックの方々、貴重な経験をありがとうございました。
氏
名
金
宗訓
6月4日 ( 月 )
実習先:診療所による診察 ( 午前 ) 、道案内のち市役所にて国保および地域包括支援センターの説明(午後)
内容:
7 時半に北山診療所に到着。診療所長の毛利先生より臨床実習のオリエンテーションを受けた後、
全体ミーティングに参加。その後、午前の診療を見学しました。先生の本診を前に学生による予
診ということで頭頚部から下肢までの触診および聴診を行いました。
昼食後は、往診ルートを診療車に乗って散策した。途中、木場診療出張所に寄りましたが、囲炉
裏があるただの古い畳の民家の中に簡易なベッドが用意されていました。帰り道に道脇の桑の実
やグミの実を先生がもいでくれました。県民の森に寄って一休みした後診療所に戻り、姶良市役
所へ向かいました。
姶良市役所:
[ 国民保険と特定健診、姶良市の取り組み:市民生活部保険年金課国保医療係 ]
資料を参考にして、国民健康保険制度の歴史やその変遷、現在の姶良市における現状を知り
ました。国保の仕組みにおきましては、その給付内容についての確認がされました。財政状
況については、制度改正に伴い 20 年度から後期高齢者支援金が創設されましたが、支援金
額も後期高齢者の医療費の増加に合わせて増加傾向である一方で、 65 歳以上の前期高齢者
の医療費については、前期高齢者交付金として他医療保険者との調整が図られており、 23
年度も十分な交付金が見込まれて国保財政には好結果をもたらしているとのことです。
237
特定検診審査 ・ 特定保健事業についても話されました。平成 20 年 4 月から、国保や政管健保などの医療保険者に義務付けされて
いますが、平成 24 年度の受診率が 65 %以上を目標とされ、現在各医療保険者が取り組んでいるとのことでした。姶良市におい
ては、平成 22 年度の受診率見込みが約 36 %であるので、今後更なる受診率向上を目指さなければならないそうです。リラック
ス教室やゆっくり水中教室など健康教室の開催や、重病 ・ 頻回訪問指導の実施など、受診を促すための施策や医療費適正化対策と
して、保健事業を充実強化し、医療費の節減に努めているとのこと。平成 24 年度の特定健診の目標値として同市は 65 %を掲げ
ていますがなかなか達成しないので頭を悩ませているようでした。
[ 地域包括支援センター ]
姶良市における地域包括支援センターの概要について教えてもらいました。本センターでは、主任ケアマネジャー、保健師、社会
福祉士などが中心となって高齢者の方々の支援を行っているそうです。 3 人はそれぞれ専門分野を持っている一方で、専門分野の
仕事だけを行うのではなく、互いに連携をとりながら「チーム」として総合的に支えています。具体的には、自立して生活できる
ように支援する介護予防ケアマネジメント業務、高齢者の権利を守る権利擁護業務、生活の中で、困っていることや心配事を相談
する総合相談支援業務ほか包括的 ・ 継続的ケアマネジメント支援業務が挙げられるとのことです。
6月5日 ( 火 )
実習先:診療所 ( 午前 ) 、往診(午後)
内容:朝到着後すぐに 1 件往診。その後午前中は診療所で外来患者さんを見学、患者を 1 人受け持って予診を取る。
症例; 78 歳、女性。主訴は全身の筋肉の痛み。特に両耳裏より三角筋にかけて痛み(特に右が痛い)。体温:35.8℃
140/80
既往歴:高血圧、高脂血症、白内障手術 ( 若いころ ) 、脊椎すべり症(先天性)
血圧:
20 年前に甲状腺異常を指摘されて
メルカゾールを以後服用中。睡眠は眠れないときはデパス。ご主人は 2 ヶ月前から入院、長年やっていた豆腐製造業をやめて看病
している。運動不足気味。 152cm ( BMI : 30.88 )運動不足。
午後は往診 2 件。その後診療所に戻り、午前の患者の問題点検討と総括および感想。
症例: 72 歳男性。主訴はうつ。平成 23 年春より。散歩中に道路端に右脚を挟み長時間その場所にいたとのこと。大腿骨骨折後
に入院をされていたが、復帰後は足が痛いがためにリビングのベッドか部屋にこもるようになる。精神科に紹介。以降、下肢の塞
栓が肺につまり、肺塞栓症に。風呂に入らず。散歩に出かけていた犬も車に轢かれる。昨日庭などを散歩したらしいので薬を処方
しつつ経過を引き続き観察するとのことです。
診療終了後は 2 日間の実習の総括をしてきた山診療所の実習は終了しました。
6月6日 ( 水 )
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容: ( 午前 ) 朝 8 時半より訪問看護ステーションにて全体ミーティングに参加。その後、中野先生と一緒に近隣の在宅医療宅を
訪問しました。
症例: 92 歳、女性。アルツハイマー型認知症、大腿骨頚部骨折。座り胼胝あり、スピール軟膏にて対応。義歯が合わず、口唇を
かんでいるので対処必要。セレスタミンを処方しているが、処方後は就寝がちなのでいったん中止するとのこと。
( 午後 )ALS 患者への在宅医療クリニックに入所するか否かの説明のために、医師会病院へ向かう。
症例: 59 歳、女性。昨年 8 月に歩きにくさを自覚。翌月 9 月には息苦しさを自覚。その後医師会病院に入院し精査。多巣性ニュ
ーロパチーを疑ってガンマグロブリン療法 3 クールおよびステロイドパルス療法を施行するも改善せず。今年 4 月に ALS の診断
にいたり、 5 月よりbiPAP装着する必要にいたる。今回は気管切開および胃瘻造設について話し合う。今後在宅医療を行うか入院
を続けるかも話し合った。キーパーソンとしては一人娘と父親。娘のほうは既往歴としてうつ病があり、やっていけるのか不安と
言っている。患者の要望としては家族三人で一緒に歩いて帰りたい。
今回は患者家族と医師会病院スタッフ、ナカノ在宅医療ク
リニックの先生と看護師、ケアマネジャーを交えた話し合いとなった。
クリニックに戻った後に、中野先生より在宅医療についての概要を説明いただいて終了しました。
6月7日 ( 木 )
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容: ( 午前 ) 朝 8 時半より訪問看護ステーションにて全体ミーティングに参加。その後、中野律子先生と石坂看護師と一緒に午
前 ・ 午後ともに吉野地域の在宅医療宅を訪問しました。
症例: 90 歳、男性。規律制定血圧、脊柱管狭窄症、シャイ・ドレーガー症候群あり。平成 16 年より規律制定血圧を訴え、転倒
するので平成 19 年 7 月より在宅治療を開始している。その後シャイ・ドレーガー症候群と診断される。体調は良好であり、薬の
処方のみで終了。
6月8日 ( 木 )
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
午前 8 時半より全体ミーティングに参加した後、訪問看護師と共に鴨池地域の 2 件訪問する。
昼食後は、午前同様に訪問看護師と共に伊敷地域を 1 件訪問して、訪問看護ステーションに戻って終了しました。
症例: 73 歳、男性。職業は元タクシードライバー。 60 歳後半に下肢違和感あり、厚地脳外科を受診。 2008 年 7 月けいれん発
作あり、とく集会病院を受診。 2009 年 1 月には右脳梗塞を発症し、四肢麻痺となる。 2009 年 3 月より胃瘻を造設。翌年 6 月
(約 1 年間の入院後)退院。退院後 1 週間後に意識低下、血圧低下。心房細動あり。 7 月に気管切開する。 10 月より在宅を再開。
酸素1ℓ継続しながらデイサービス利用も行っている。
遠隔医療実習記録
(今回の実習では実施されませんでした。)
238
感想
このたびは 5 日間という短い期間でありましたが、とても充実した時間を過ごすことができました。
今回は離島実習ではなく僻地医療実習となりましたが、 2 箇所の診療所で実習させていただきました。総じて思ったことは、地域
医療や在宅医療においては、医師だけでなく行政を巻き込んだ連携が非常に大切であるということでした。現行の制度のシステム
においてはなかなかうまく機能しない面もありますが、それも地域なりの工夫が見られましたし、在宅医療においては先生が積極
的に発言し、提言していくことで制度自体を変えていこうと言う積極性を感じることができました。
1 週間と言う短い期間でありましたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。お世話になりました診療所先生方やスタ
ッフのみさまには感謝いたします。ありがとうございました。
実 習 期 間
氏
名
金
平 成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) ~ 6 月 29 日 ( 金 )
正浩
<姶良市立北山診療所>
北山診療所の場所は事前に地図で確認していましたが、実際は意外と山奥に位置していて驚きました。実習期間中はちょうど梅雨
の時期で、所々斜面が崩れていて移動に少し不安でしたが無事に着くことができました。
6 月 25 日(月):診療所(午前)、診療所(午後)、内容:診療所には所長の毛利先生と看護師さん 3 名がいらっしゃいました。
オリエンテーション後、朝礼に参加して午前中から診察を見学させていただきました。検診や予防接種、高血圧、めまいを訴える
患者さんたちが来られました。患者さんは地域の住民だけではなく、毛利先生が北山診療所の以前にいらっしゃったところの患者
さんも来られていました。
午後からは北山周辺の観光スポット(県民の森など)を見せていただきました。
北山診療所の実習のあとは、姶良市役所に移動して担当者から医療・介護保険の全般、姶良市の医療の実情などの説明を受けまし
た。
6 月 26 日(火):診療所(午前)、訪問診療(午後)、内容:二日目は午前中は外来の診察の見学を見せていただきながら、一
人の患者さんを担当して診察を行い、カルテを書く機会もいただきました。患者さんはとても我々の診察に協力してくださったの
で大変ありがたかったです。お昼は診療所からすぐのところにある手打ちそばのお店で食べました。近くで作業をしていた男性た
ちもお店に来ていました。
昼食の後 2 か所の訪問診療に同行させていただきました。一か所目は一人暮らしをしている 80 歳代の女性のお宅でした。お家ま
での道は、小型の車一台がぎりぎり通れるくらいの狭いみちでくねくねの高低差もあり、高齢女性が歩いて出かけるにはとても無
理のように思いました。実際出かけるときの手段で困っていてバス停までの移動手段もなく(タクシーは金銭的負担が大きい)民
生委員の協力も責任の所在の問題で得られにくいと先生がおっしゃいました。たとえば病院に行きたくても行く手段が確保されて
いないようでした。地域医療は医学的サポートのほか、こういう環境的面の整備を整うことが重要であることを、今回目で見てわ
かりました。
二か所目の訪問診療は、四年前に検査入院のとき検査中の合併症と思われる脳梗塞を起こし自立歩行ができなくなった 70 代の女
性でした。脳梗塞を起こすまでは不自由なく生活していたようで、検査中の医療ミスではないかと医療側に対する強い不信感を抱
いていました。詳しい事情はわからなかったですが、ある程度のリスクを必ず持っている医療行為を患者さんに行う際は十分のイ
ンフォームドコンセントを行うことと、万が一そのリスクが現実になった場合も誠実な説明で対応しなければならないと思いまし
た。とても悔しがっていたそのおばあさんの表情は印象に残っています。訪問診療が終わって診療所に戻ってから先生とまとめを
して解散となりました。
<ナカノ在宅医療クリニック>
6 月 27 日(水):診療所(午前)、訪問診療(午後)、内容:午前中は、看護師や先生たちによる患者さんの報告の後、中野先
生によるクリニックの説明を受けました。クリニックが行っている在宅医療・訪問診察・訪問看護やクリニックの業務の仕組み、
現在国が在宅医療を押し進めている実情、そして政治に対するマスメディアの偏っている報道、孔子の教えなど、クリニックに関
係することだけではなく先生の興味を持っている事柄に対しても幅広く説明をしていただきました。先生の知識の豊富さにはとて
も驚きました。
先生と昼食を取った後は、先生とともに訪問診療に同行させていただきました。運転は先生がして看護師一人と自分を含めた学生
二人の計四人で移動しました。
一か所目は寝たきりの女性で、朝から目が開けられなくて反応も鈍くなったことでしたが、実際見てみると元気はなかったが、手
は十分動かすことができたので、とりあえず様子をみることになりました。二か所目は新患のところで、最初の診察や患者さんへ
説明の流れを見ることができました。
6 月 28 日(木):訪問診療(午前)、訪問診療(午後)、内容:二日目は午前中から訪問診療の同行見学でした。松尾先生と看
護師の石坂さん、運転手の方と自分の計 4 人で移動しました。先生と看護師さんは移動中もパソコンで患者さんの情報を入力した
りして常に忙しい様子でした。訪問診療は午後二時くらいに終了しましたが、十数か所のお宅に訪問して、しかも決まった時間に
お宅に訪問しないといけなく先生たちの動きはとても素早かったでした。特に看護師さんの方はとても元気でテキパキしていて自
分も刺激を受けました。車は専属の運転手さんがいらして、先生たちは仕事に集中できる環境になっていました。
239
訪問先は主に癌患者さんのところでしたが、患者さんたちは自宅で過ごしていることに満足している様子でした。患者さんみんな
表情もよく、明るく我々を迎えてくれました。訪問する所々の患者さんはそれぞれの生活を送ってい
て、もし入院生活になったと思うと絶対自宅で過ごされる方が満足できるだろうなと思いました。診
察のときは、検温や血圧の測定などもさせていただきましたが、測る度に緊張でした。
昼食は訪問診療のスタッフのみなさんと美味しい和食のお店にいきました。松尾先生はその週でナカ
ノクリニックを辞められるらしく、最後に素敵なランチをみんなでとりました。松尾先生のお話は楽
しかったです。特に以前蚊について研究をされた話はとても面白かったです。訪問診療が終わってか
らはポストカンファレンスに参加しました。
6 月 29 日(金):訪問看護(午前)、訪問看護(午後)、内容:三日目は訪問看護の同行見学でし
た。午前中は野口看護師さん、午後は石坂看護師さんと同行させていただきました。午前中に訪れた
お宅は脳梗塞で寝たきりになった方のところで、奥さんと娘さんに大事に介護されていました。看護
師さんがこのお宅で業務を行うのは初めてらしく、すでに家族が続けてきた介護の仕方を家族から教
えてもらっていました。家族が続けてきた介護の仕方は必ずしも適切とは限らなく、ただしそれぞれの家庭に慣れているやり方は
尊重しつつ介護の指導を行うことが大事だと看護師さんから教えていただきました。昼食は事務所で看護師さんのみなさんと一緒
に食べました。いろんな楽しい話で盛り上がりながら美味しいコーヒーもいただきました。
午後からは石坂看護師さんとともに訪問看護を周らせていただきました。石坂さんはとても元気でハキハキしている方で、患者さ
んからも信頼されていました。看護師さんになってずっと在宅医療に関わってきて、在宅医療に関するいろんなお話を聞くことが
できました。訪問診療や訪問看護は、オーダーメイドまでではなくても各家庭に適したやり方で行うことが「在宅医療・看護」の
基本である印象でした。各家庭に上がらせてもらって患者さんを診ることは、病棟で診ることより医療者側にしては肉体的にも精
神的にも負担であると思います。訪問診療が終わってからはポストカンファレンスに参加しました。
感想
五日間貴重な体験をさせていただきました。短かったですが、地域医療と在宅医療の両方が見られてとてもよかったです。北山診
療所では毛利先生の存在は大きく感じました。地域住民に信頼されていて、毛利先生ご自身が地域医療に対して熱い思いを持たれ
ていました。患者さんにもじっくり話を聞きながら丁寧な対応や説明で診察をされていました。診察のない時間に我々を連れて周
辺の観光をしてくださったのですが、深くていい自然が印象的でした。我々にも地域医療やプライマリーケアについていろんな話
をしてくださってとても勉強になりました。
ナカノクリニックでは、 IT を使ってみなさんが組織的に働いているのが印象的でした。訪問診療中も常にパソコン入力しながら
情報を共有をしていましたが、ただ車でパソコン操作をして車酔いをしないのかなとすこし気になっていました。
訪問診療・看護を実際見たことは初めてでした。患者さんやご家族たちはみなさん明るく過ごされていて満足されているように感
じました。自分はまだ重い病気にかかったことがなくて訪問先の患者さんのお気持ちを十分理解することは難しいと思いますが、
病院にいるよりできることなら自宅で周りに気にせず過ごすのが絶対いいと感じました。
在宅医療では患者さんとの信頼できる関係を築くことが何より大事であると感じました。医療者側としては、訪問診療・看護は
各々の患者さんやご家族の要望に答えないといけないことはやはり負担になると思います。現在国も慢性期疾患は在宅医療が担う
よう促しているなかで、医療者側の負担に対する配慮も必要であると思いました。
短い時間でしたが、温かくご指導してくださった先生、看護師さんの方々に感謝のお礼をしたいと思います。忙しい業務の中でき
っと我々学生は少しでも支障になったと思いますが、最後まで丁寧に教えてくださいました。今回の経験を今後の自分にぜひ生か
したいと思います。
氏
名
樋口
理絵
6 月 25 日(月)
実習先:北山診療所
内容:外来患者の見学(午前)、市役所での実習(午後)
症例 1 ) 80 代女性、主訴は左膝の痛み。右膝の皮下水腫に対してこれまで 3 度に渡り皮下の貯留している液体を排液したが痛み
が少しある。右膝をかばって歩いていたため左膝の痛みが出現し来院。湿布で炎症をとり、かつ運動療法により大腿四頭筋の筋力
をつけるように指導した。
症例 2 ) 50 代男性、健康診断(メタボ検診)。
症例 3 ) 90 代女性、主訴は右側腹部の痛み。基礎疾患に慢性心不全がある。問診と診察をさせてもらい、聴診で to and fro
murmurを聴取しました。 AR が長年続き慢性心不全に至ったと考えられる。
症例 4 ) 90 代女性、主訴は関節痛。膠原病に対してステロイドを内服。ステロイドを止めると症状が悪化する。ステロイドの離
脱が目標。
症例 5 ) 60 代女性、高血圧。 Ca ブロッカーと ARB でコントロール良好。減塩等の食事指導やストレスを貯めないことを指導。
症例 6 ) 50 代女性、健康診断。腰痛が継続してみられ、椎間板ヘルニアの影響が示唆された。運動不足のため運動療法の指導を
した。
症例 7 ) 80 代女性、 AMI 後のうっ血性心不全。利尿薬の服用のため口渇。便秘も続くため便秘薬の処方をした。
症例 8 ) 50 代女性、メタボ検診。高血圧に対し ARB 、脂質異常症に対しスタチン系を服用している。徐々に脂質が低下してい
た。スタチン系の副作用を注意深く診察した。
240
午後からは毛利先生と一緒に北山診療所の管轄している地域を周り、更に出張診療所に案内していただいた。その後、姶良市役所
に行き、国民健康保険のしくみや介護保険や地域包括支援センターについて説明を受けた。
6 月 26 日(火)
実習先:北山診療所
内容:外来患者の見学(午前)
症例 1 ) 80 代女性、 2 型糖尿病。血糖コントロール良好。実際に問診・理学所見をとり、バイタルを測りカルテに記載した。
症例 2 ) 60 代男性、健康診断(メタボ検診)。心電図の貼り方を学んだ。
症例 3 ) 60 代女性、高血圧、慢性副鼻炎、過活動膀胱。血圧コントロール良好。
症例 4 ) 70 代女性、主訴はめまい、不安症。めまいに対しメリスロン、不安に対してリーゼ内服。左肩の可動域の制限あり、運
動療法を指導した。
症例 5 ) 50 代女性、主訴は不眠。閉所恐怖症と気分障害に対し治療中。最近近所のトラブルがストレスとなり、不眠が続いてい
る。デパスを処方した。
内容:在宅診療(午後)
症例 1 ) 80 代女性、高血圧、 CKD 、腰痛。血圧コントロール良好。往診時、普段より高血圧であり白衣高血圧だと考えられる。
僻地に独居であり自給自足の生活で移動手段がなく先生に相談された。
症例 2 ) 80 代女性、医原性脳梗塞により右半身麻痺。装具をつけて立ち上がる練習をした。足の変形に伴う痛みに対して応急処
置をしたが後日整形外科を受診予定となった。
内容:急患(午後)
症例 1 ) 70 代男性、主訴は無尿。朝 8 時から 14 時まで尿が出ず腹痛と冷汗が出現している。直腸癌の術後人工肛門で管理され
ているが前立腺肥大もあり排尿障害と膀胱炎を繰り返している。問診を聴取した後、泌尿器科受診が必要と判断し直ちに泌尿器科
を紹介受診された。尿閉と診断され導尿となった。導尿の際に膿が貯留してカテーテルが閉塞したが無事に排尿でき帰宅となった。
最後に、毛利先生から総括があり二日間を通じての僻地医療の在り方について教えていただきま
した。
また、帰りに野菜の置き販売を見つけたので買って帰りました。生産者の似顔絵が野菜ごとに貼
ってありました。地域の人々の栽培した野菜を地域の人々が消費するといった地産地消の特性に
も触れることができ良い経験ができました。
6 月 27 日(水)
実習先:ナカノ在宅医療クリニック
内容:朝カンファ・中野先生のレクチャー(午前)、在宅診療(午後)
症例 1 ) 90 代女性、朝から眼を開けないために往診した。バイタルは安定しており手足は動くため経過観察となった。
症例 2 ) 80 代男性、心筋梗塞後の心不全、高血圧。バイタルチェック、採血。
症例 3 ) 80 代女性、パーキンソン病、高血圧。バイタルチェック、採血。
症例 4 ) 70 代男性、末期胃癌。全身に転移があり疼痛コントロールを含む在宅ケアのためのカンファに出席。医療センターでの
入院から在宅への切り替えを説明した。
6 月 28 日(木)
内容:訪問看護
症例 1 ) 80 代男性、 ALS 、人工呼吸器で管理。要介護 5 。胃瘻より経管栄養。バイタルチェック後、入浴。口腔ケア、吸引、
全身のマッサージ、運動療法。
症例 2 ) 70 代女性、進行性核上性麻痺、認知症。要介護 5 。胃瘻より経管栄養。バイタルチェック後、浣腸で排便後、清拭。
6 月 29 日(金)
内容:在宅診療
症例 1 ) 80 代男性、アルツハイマー型認知症。バイタルチェック後、処方。
症例 2 ) 80 代女性、頸椎損傷。胃瘻の交換。
症例 3 ) 80 代女性、アルツハイマー型認知症。バイタルチェック後、処方。
症例 4 ) 80 代男性、肺がん末期。疼痛コントロールを目的とした薬剤の説明。
症例 5 ) 80 代女性、パーキンソン病。バイタルチェック後、処方。
症例 7 ) 80 代女性、卵巣癌末期。疼痛コントロールを目的とした薬剤の説明。
症例 8 ) 80 代男性、 ALS 、人工呼吸器で管理。胃瘻より経管栄養。胃瘻の交換。
症例 9 ) 80 代女性、腰部脊椎間狭窄症。バイタルチェック後、処方。
症例 10 ) 50 代女性、 ALS 。嚥下障害が出現してきたため胃瘻をつくることとなった。
【感想】北山診療所
実習中は梅雨時期と重なり鹿児島市では大雨・洪水警報が発令されていて土砂崩れもあり往診に
行けるのか心配でしたが無事に行くことが出来ました。北山の周辺は山に囲まれているため土砂
崩れにより家から出られなくなり外来をキャンセルされる患者さんもいました。この地域の人々
は毎年の梅雨時期の対応に大変慣れておられる印象を受けました。独居の老人が多く大雨や土砂
241
崩れが起こると地域の人々がみんなで心配し合うといった地域ならではの特性も感じられました。また、毛利先生は自然を愛され
ておられ、植物に詳しく北山に咲いている植物について色々と教えていただきました。森林の森やつり橋など北山の案内もしてい
ただきました。普段は触れることの少ない自然に囲まれると時間がゆっくりと流れていくように感じました。お昼には県の「そば
の里」づくりの認定を受けた地域ブランド「北山そば」を御馳走になりました。地域活性化の取組みとして行われており、とても
柔らかくて美味しいお蕎麦でした。外来では、実際に患者さんに問診をして理学所見をとってカルテに記載するといった一連の流
れを体験しました。先生の診察を見学するのとは違い、実際に自分で診察することの難しさを身を持って知ることができました。
一つ一つの診察には全て意味があり、何のためにやっているかを考えながら診察し疾患を鑑別し、診断・治療へと導いていくプロ
セスを教えていただき大変勉強になりました。
往診では、患者さんの心身の状態、生活の様子(食事、片づけ、着替えなど)、同居者との関わり、服薬できているか、などを十
分に確認し診察をされていました。その上で各々の患者さんに適した治療や家でもできる運動療法を指導されていました。病院の
診察室での面接とはまた違い、患者さんの生活の全体をより直接
知ることができ、患者さんも自宅での方がずっとくつろいで話せ
るように感じました。僻地医療の崩壊が叫ばれていますが、北山
地区では自治体と医療機関と患者さんが三位一体となって、「地
域の医療を良くしたい」という熱い思いを感じることができまし
た。また、病気を未然に防ぐためにも健康的生活習慣を、その地
域の文化や特性を理解した上で地域の人々と共に構築していくこ
とが肝要であると改めて思いました。僻地医療を実際に体験して
初めてわかる、地域住民との心の関わりや、喜び、すばらしさに
気づくことができ大変有意義な実習となりました。
【感想】ナカノ在宅診療クリニック
在宅医療で 3 日間という大変短い期間でしたが、先生の患者さんに対する接し方や考えを学び、これまでの私の抱いていた医療に
対する考え方が変わりました。在宅での患者さんは癌の末期であったり、 ALS で気管切開されていたり、胃瘻からの経管栄養を
行われている患者さんが多く、主に疼痛コントロールや在宅での家族との時間を第一に考えて治療が行われてきました。患者さん
が自分らしく生きることを尊重されており、先生の死生観に触れ改めて生と死について考えさせられました。訪問看護では、訪問
入浴を始めて見学させていただきました。一からお風呂を組み立ててお湯をくみ上げて患者さんをお風呂に入れるのは大変そうで
したが患者さんはとても気持ち良さそうでした。また、筋肉が障害されており、浣腸をして排便コントロールをされている患者さ
んの訪問看護の様子も見学させていただきした。往診と訪問看護は、その性格が違いますが、一人の患者さんにより多くの時間を
割くことができた訪問看護は特に印象的でした。
将来、在宅実習での貴重な経験を生かして身体だけでなく心にも目を向けられる医師となり、患者さんの満足のいく医療に貢献し
ていきたいと切に思いました。特に、僻地での医療はプライマリーケアであり、より幅広い知識と総合的に判断できることが必要
だと実感しました。このような貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
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【編集】 国際島嶼医療学講座
嶽﨑 俊郎
新村 英士
幾留 直子
【発行】 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター
- Fortune comes in by a merry gate -
離島・地域医療実習 報告書 2012