並列式温度成層型蓄熱槽の連通口に関する研究 41601

日本建築学会大会学術講演梗概集
(東 海) 2003年 9 月
41601
並列式温度成層型蓄熱槽の連通口に関する研究
連通口抵抗の影響
正会員 ○岩田
連通口
A
並列 温度成層
1.はじめに
剛*1 正会員 北野博亮*2 正会員 相良和伸*3
B槽
三方弁
F 流量計
既報 1〜2) では、槽間の連通口を有する並列式温度成層
F
F
連通口
型蓄熱槽の基本的な性能を把握するために、その実験槽
D槽
C槽
を製作し、入力・取水条件が各槽においてばらついてい
る条件を主とした実験を行い、隔壁に設けた連通口が各
F
槽の蓄熱量に与える影響について検討した結果を報告し
A槽
F
A‘
た。
2,884
また、別報 3〜4) では、槽内混合モデルを検討し、実験
との比較を行い、シミュレーション結果とよく一致する
ことを示したが、実際の蓄熱槽では、地中梁に連通口を
設けるために、これまで行ってきた実験槽の連通口より
3,110
その3
1,000
962
1,012
1,090
図 1 実験槽の概要(タイプ 2)
低下するために周囲水温と同じ温度になった所で上昇が
停止し、その周囲と混合して水平方向に槽全体に広がる。
その後は、槽全体として流入量に応じた下向きの流れと
も奥行があり、その分抵抗が大きいと予想される。
本報では、実際の連通口を想定して、実験槽の隔壁に
長さ1mの塩ビ製連通口を設置して実験を行い、連通口
抵抗の影響について検討した結果を報告する。
拡散によって槽内の温度分布が形成されると考えられる。
このような槽内の温度分布形成過程を、槽上部の高温水
入力による完全混合域と連通口からの流入水がプリュー
ムを形成してある高さで周囲と混合するまでと、その後
2.実験概要
実験は、冷水槽2次側運転を想定して行った。実験に
用いた蓄熱槽の概要を図1に示す。それぞれの槽には、
円管の入力・取水口が2カ所づつ設けてあり、その口径
は10cmである。入力流量と取水流量は、配管途中に
設けたそれぞれの3方弁によってA・B槽への配分量を
任意に設定できる。また、A・B槽間に設置した隔壁中
央部に直径30cmの円形連通口を設けた。実験条件の
一覧を表1に示す。実験は、2 タイプの連通口で行い、
タイプ1は、これまでの 22 ケースの実験について報告し
てきたシミュレーションの結果とよく一致していた条件
で、単に断熱材で作られた7cm厚の隔壁に穴をあけた
だけのものである。タイプ2は、タイプ1の穴に1mの
塩ビ製パイプを両槽へ均等に突き出た状態で設置した場
合である。蓄熱量の差が、連通口によってどの程度解消
の槽全体の流れによる温度分布形成の三段階に分けて、
それぞれR値モデル、プリュームモデル 7)と一次元拡散
モデルの併用による槽内混合モデルを考えるものとする。
連通口内の流速分布は、換気計算に利用される次式の
流速モデルを適用した。
u (h ) = α
2
ρ
∆P( h ) = ∆Pm − ∫ {ρ A ( z ) − ρ B ( z )}g d z
h
0
できるとしているが、槽底部での基準圧力差ΔPm は未知
なので、連通口での正味流量が槽間流量と一致するよう
に収束計算して求めることとする。また、流量係数αは、
これまでの実験で用いてきたタイプ1の場合、連通口全
表1
実験
(データ名)
量の配分を 1:0、1:2、2:3 として実験を行った。
3.槽内混合モデルと計算条件
連通口流速分布の概念図を示したものである。槽内水位
の中間付近の連通口から槽内水温より高温の入力がある
場合に、その入力水は槽内に流入した直後に浮力の効果
により上昇流(プリューム)となると考えられ、上昇と
ともに周囲の水を巻き込んでプリュームの水温が徐々に
(1)
圧力差ΔP は、連通口両側の槽内垂直温度分布から計算
されるかを検討するために、A槽、B槽の入力・取水流
図 2 は、連通口位置から形成されるプリューム 5〜6) と
,
∆ P (h )
初期温度(゜C )
入力温度(゜C )
A槽入力流量(L/min
B槽入力流量(L/min
A槽取水流量(L/min
B槽取水流量(L/min
連通口の長さ
連通口の種類
実験条件の一覧
実験1
実験23
実験24
実験25
(H990317) (H030120) (H030121) (H030122)
8.5
14.9
51.5
51.5
7cm
タイプ1
6.6
6.2
6.3
11.7
12.6
12.9
55
14.7
16.7
28.1
25.7
54.9
14.5
17.3
28.9
25.6
100cm 100cm 100cm
タイプ2 タイプ2 タイプ2
Study on Parallel Type of Temperature-stratified Thermal Storage Tank with Connecting Hole through Tank Partition.
Part 3
Flow Resistance of Connecting Hole through Tank Partition
IWATA Takeshi, KITANO Hiroaki, and SAGARA Kazunobu.
̶1241̶
面に渡って一定値(α=0.7)と仮定し、シミュレーショ
プリューム
ン結果とよく一致した。
4.計算結果と考察
図 3 から 5 に実験とモデルによる槽内温度分布の比較
仮想点熱源
を示した。なお、図 3,4,5,中B槽の計算結果は、上部入
↓ 中性帯
連通口内
流速分布
力がまったくないため、連通口からの入力流量のみによ
るプリュームモデルの計算結果と考えられ、連通口に関
連したモデルを検討する上で都合がよい。図 3 は、比較
的連通口抵抗が小さい場合(タイプ1)の結果であるが、
プリューム
実験結果は、連通口での流れに影響する流量係数を 0.7
図2
でシミュレーションした結果と非常によく一致している。
プリューム流の概念図
次に、図 3 と同様な入力条件で、連通口をタイプ2とし
た場合の結果を図 4 に示したが、図中B槽の計算結果は
実験結果よりも蓄熱量が多めに計算された結果となった。
これは、連通口抵抗が大きくなったにもかかわらず、流
量係数を 0.7 として計算したためと考えられ、流量係数
を 0.5 として再計算した結果を図 5 に示す。図中B槽に
ついては、ほぼ一致したが、A槽の連通口付近の温度分
布に若干差異が生じた。そこで連通口が両槽に突き出た
状態になっているので、連通口自身の容積を考慮して再
度計算したが、ほとんど変化が見られず、この原因につ
連通口内流速
分布(計算)
いては、今後検討する必要があると考えている。
図3
5. おわりに
α=0.7
温度分布の推移(実験 1)18 分毎に図示
蓄熱量の評価などを目的に、連通口の影響が大きい並列
式温度成層型蓄熱槽の槽内温度分布を予測するための槽
内混合モデルを示し、実験結果によりモデルの妥当性の
検討を行った。その結果、実際の連通口を想定した比較
的連通口抵抗の大きい場合でも、モデルの流量係数を変
えるだけで対応できることがわかった。
[文献]
1) 侯 他:並列式温度成層型蓄熱槽の連通口特性に関する実験的
研究、日本建築学会学術講演梗概集、1999
2) 岩田 他:並列式温度成層型蓄熱槽の連通口特性に関する研究、
日本建築学会学術講演梗概集、2000
3) 侯 他:並列式温度成層型蓄熱槽の連通口に関する研究 その 1
〜3、日本建築学会東海支部研究報告集、2000、2003
4) 岩田他:並列式温度成層型蓄熱槽の連通口に関する研究 その
1〜3、空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集、’99〜’00
5) 玉井信行:密度流の水理(新大系土木工学22)、技報堂、1980.3
6) Chia-Shun Yih:Free Convection due to a Point Source of Heat、U. S.
National Congress of Applied Mechanics、pp.941〜947、1951
7) 相良他:浮力の影響が大きい連結型蓄熱槽の槽内混合モデルに
関する研究、日本建築学会計画系論文集、No.475,1995.9
[記号]
g: 重力加速度 [m/s2],h: 高さ [m],u: 連通口内部流
速 [m/s],z: 高さ [m],Δz:計算における垂直分割幅 [m],
α:連通口の流量係数,ρ:水の比重量 [kg/m3],ρA・ρ B:
連通口の両側の槽中央垂直温度分布に対応した水の比重量
[kg/m3],ΔP:連通口両側圧力差 [N/m2],ΔP m:連通口両
側基準圧力差 [N/m2]
*1
*2
*3
三重大学工学部建築学科 技官
三重大学工学部建築学科 助手・工修
大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻 教授・工博
連通口内流速
分布(計算)
図4
連通口内流速
分布(計算)
図5
α=0.5
温度分布の推移(実験 23)12 分毎に図示
Research Engineer, Dept. of Architecture, Faculty of Eng., Mie University
Research Assoc., Dept. of Architecture, Faculty of Eng., Mie University, M. Eng.
Prof., Dept. of Architectural Eng. ,Graduate School of Eng., Osaka University, Dr. Eng.
̶1242̶
α=0.7
温度分布の推移(実験 23)12 分毎に図示