先 生 こ ん に ち は

加登病院ミニ新聞
平成16年3月10日
第18号
先 生 こ ん に ち は
プロフィール
金沢大学医学部付属病院循環器内科1
名前:高
村雅之
昭和42年4月7日生まれ
趣味:休日に子供と遊ぶこと
Q1 虚血性心疾患とは?
A1 心臓は一日、約10万回収縮、弛緩を繰り返すポンプです。このため、脳と同じように、非常に多くの栄
養分や酸素を必要としています。この心臓を栄養する血液は3本の血管(冠動脈)により、絶え間なく供
給されています。この冠動脈に動脈硬化が生じ狭窄や収縮(
縮)が生じて、必要な血液が供給されなく
なり、心筋が酸欠状態(虚血状態)に陥る病気を総称して虚血性心疾患といいます。この中で徐々に冠動
脈が細くなり労作時など、心筋酸素消費量が増えたときに胸部症状が出現し、安静にて軽快消失する病
態を労作性狭心症と呼びます。また自律神経のバランスが変化したり、心的ストレスが加わったりした
ときに冠動脈が収縮(
縮)して胸部症状が出現する病態を冠
縮性狭心症と呼びます。また狭窄自体
は軽度ながら狭窄の原因である動脈硬化巣(プラーク)が非常にもろく、突然破綻し血の塊(血栓)が冠
動脈の血流を完全に遮断し、心筋が壊死に陥る状態を急性心筋梗塞と呼びます。臨床的にはこれらの呼
び方以外に、急性冠症候群、不安定狭心症、安静時狭心症といった言葉が用いられることがありますが、
病気を理解する上では、前述した呼び名が判りやすいでしょう。
Q2 狭心症と心筋梗塞の違いは?
A2 狭心症とは数分から30分程度の一過性、短時間の心筋の酸欠状態による可逆性の心筋虚血が病態です。
心筋梗塞とは冠動脈が血栓という血の塊で完全に閉塞し、長時間持続する貫通性の心筋虚血により心筋
に不可逆性の壊死が生じる病態です。
Q3 狭心症の症状は?
A3 階段を上ったり、長時間歩いたり、走ったり、急に寒いところに出たりしたときに胸が痛くなったり、
重くなったりといった胸部症状が、冷や汗を伴って出現し、数分から30分以内に治まる症状が多いので
すが、人によっては、左肩の痛みや重い感じ、または吐き気や腹痛といった消化器症状のみを感じるこ
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ともあります。また糖尿病患者さんや、高齢者の場合、内臓の異常に伴う痛みの感覚が鈍く、時には自
覚症状がないまま経過していることもありますので年に一回は心電図検査を受けてみることも大切です。
Q4 心筋梗塞の症状は?
A4 突然、胸が痛くなったり、重くなったりといった狭心症と同様の症状が出現し、安静にしていても、増
悪することはあっても軽快せず数時間持続することが狭心症との大きな違いです。
Q5 虚血性心疾患になりやすい人は?
A5 糖尿病、高脂血症、高血圧といった動脈硬化基礎疾患を有する人、さらに喫煙などの常習者、薬物常習
者(避妊薬、麻薬、覚せい剤など)
、虚血性心疾患の家族歴のある人、神経質な性格の人などで危険性が
高いといえます。
Q6 病院を受診したらどんな検査をするの?
A6 まず虚血性心疾患の場合、患者さんの話を聞く問診が非常に大切です。きちんと話を聞くと、循環器専
門医はほとんどのケースで患者さんに虚血性心疾患が隠れているかどうか判断できます。その後安静時
の心電図検査を行い、疑わしい場合には心臓超音波検査(心エコー)や運動負荷心電図(トレッドミル検
査、マスター負荷心電図検査など)24時間連続心電図記録検査(ホルター心電図)を行い、病気の重篤度
を評価し、必要な患者さんには、さらに詳しい検査を行います。たとえば心臓核医学検査、3D−CT検
査、心臓カテーテル検査などがありますがこれらは患者さんに入院していただいて行うほうが、侵襲度
からいっても、コスト的な点からも良いでしょう。
Q7 心臓カテーテル検査とはどんな検査ですか?
A7 実際に冠動脈を写して(造影)狭窄病変があるかどうか、またどの程度の病変かを肉眼的に確認する検査
です。左右どちらかの手首、肘、ソケイ部(足の付け根)のうちから患者さんの希望や、動脈の太さによ
って一箇所を選び、動脈の中に1.5mmほどの細くて柔らかい管(カテーテル)を挿入し、冠動脈にひっか
けてその管から造影剤という放射線不透過(エックス線で透視したときに白く写る)液を注入しながら、
映画の撮影のように写します。この結果によって治療法を最終的に決定することができます。
Q8 狭心症の治療はどのように行われますか?
A8 心臓カテーテル検査まで行えば最善の治療法を決定することができます。具体的には、内服療法(冠動
脈を拡張する薬、血液を固まりにくくする薬、心筋の酸素消費量を低下させる薬、冠動脈の
縮を予防
する薬など)
、冠動脈形成術(内科的な手術で、細長い特別な風船で狭窄病変を広げたり、ステントとい
うトンネルの内張りのような筒を狭窄部に挿入し血管を内側から押し広げる治療、さらには小さな筒状
のカッターで血管の内側の動脈硬化巣を削り取ったり、高速回転する小さなドリルのようなもので動脈
硬化巣を削り飛ばす治療など)
、さらには外科的に全身麻酔をかけて、胸を開きバイパスをつなぐ(機能
的に重要でない動脈血管や静脈血管を使って大動脈と狭窄病変より末梢の冠動脈をつなぎ冠血流を増や
す)治療が代表的です。これらの治療法は冠動脈の病変の程度や部位、病変数、さらには患者さんの全
身状態や年齢によって適応が変わってきますから専門医とよく相談する必要があると思います。
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Q8 急性心筋梗塞の場合の治療は?
A8 原則的には狭心症と同じですが、急性心筋梗塞の場合、心筋が壊死に陥るため発症後早期に治療が行わ
れる必要があります。十数年前には非常に死亡率が高かった心筋梗塞も現在では、心臓カテーテル検査
を行う総合病院が増えたことや内科的な手術の道具の進歩、さらには外科的な手術手技の改良により、
その死亡率は急激に低下しています。また前述したように、急性心筋梗塞の場合、冠動脈の血流が遮断
される原因は、硬い動脈硬化巣より血栓という血の塊であることがほとんどで、この血栓を強力に溶解
する薬もあります。これを末梢の静脈から点滴したり、緊急の心臓カテーテル検査の際に冠動脈に直接
注入することにより急性期に風船治療をせずに心筋壊死を最小限に抑えることも可能です。このほかに
も、風船で血栓を押しつぶすだけでなく、血の塊を、吸い取る治療を併用することで、さらに心筋の壊
死範囲や程度を軽快できるようになってきており、ここ10年の間の治療の進歩は目覚しいものがありま
す。さらに最近では、一度壊死に陥った心筋を再生させるための治療法が、基礎実験で試行錯誤されて
おり、近い将来さらに効率の良い治療法が確立できると期待されています。
以上のように、虚血性心疾患、すなわち心臓を栄養する冠動脈の動脈硬化性病変による疾患について簡単に
お答えしましたが、一番大切なことは、不安感を抱えたままでいるより担当医とよく話し合うことが一番大切
だと思います。
現在なんらかのアレルギー症状を持っている日本人は約30%と言われ、多くの日本人がアレルギー体質とい
われています。アレルギー体質は遺伝によることが多いのですが、近年の患者の急増は環境的な影響が多いよ
うです。中でもアレルギー反応をひきおこすきかっけとなるスギ花粉は戦後から高度成長期にかけ植えられた
スギの木が近年成木になったことや、大気汚染が原因で急増したといわれています。また気密性の高い都市型
の住環境により、ダニが増殖していることも大きな原因となっています。
代表的なアレルギーの症状
①花粉症(アレルギー性結膜炎 鼻炎)
スギやヒノキなどの花粉が眼や鼻の粘膜に触れることで眼の充血や鼻水などの症状をひきおこします。
②アトピー性皮膚炎
アレルギー体質をもとに発症するかゆみを伴う慢性の湿疹。皮膚の防御機能が弱くダニやほこりなどにも
敏感に反応します。
③気管支喘息
気道が過敏であり、ダニなどの異物やタバコの煙などの刺激に反応し、気道の筋肉が収縮します。そのた
め気道が狭くなり呼吸困難や咳などがおこります。
アレルギー体質を根本的に治すことは困難ですが、アレルゲンとの接触を減らしアレルゲンの除去に心がけ
ることが大切となります。
●アレルギー治療の基本●
1.アレルゲンの除去
2.薬による治療
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3.生活習慣の改善
《わたしたちの生活の中にはダニがいっぱい》
ダニは室温20℃、湿度40%以上で繁殖します。日本では春先から暖かくなるにつれてどんどん増えていきま
す。人間のフケや垢などをエサとして20〜30日で成虫となりますが体長は約0.3aほどと、布団の布目を出入
りできるほどのおおきさにしかなりません。人を刺したり咬んだりすることはありませんが、そのフンや死骸、
ぬけがらがアレルギーの原因となります。そのため暖かい時期だけでなく、秋口以降も影響をおよぼすことに
なります。一方でエアコンや加湿器などの普及により、一年中ダニが過ごしやすい環境になっています。ダニ
が好む場所として、じゅうたん、特に畳の上に敷くのは厳禁です。ホットカーペット、玄関マット、ソファー、
クッション、カーテンなどにも多く存在します。また、ペットの毛やフケもダニのエサになるほか、観葉植物
や水槽は室内の湿度を高めるためダニ好みの環境をつくります。ダニに対しては、掃除機をまめにかける、天
気のいい日は布団などを日光にあて、こまめに換気し家中の通気をよくすることをおすすめします。
〜重症急性呼吸器症候群(SARS)も交えて〜
平成14年11月から15年7月までに世界で8098人の可能性例と774人の死亡者が確認された、SARSコロナウ
イルスによる感染症はまだ記憶にあたらしいことと思います。昨年7月に終息宣言が行われ、現在流行地域は
ありませんが、今年に入り中国で患者発生のニュースが報道されました。
また、最近では鳥インフルエンザが国内でも発生しています。ベトナムやタイでは鳥から人への感染が報告
され、死亡者も出ています。人への感染は病鳥に接触したり、内臓や排泄物に触れることで起こるとされてい
ます。幸い、日本では人への感染は報告されていません。一方で通常のインフルエンザも気になるところだと
思います。そこで今回は、わたしたちが今すぐ実行できる予防策についておはなしします。
多くの感染症に共通する基本的な予防策
①手洗い・うがいの徹底(特に唾や尿、便などに触れた心配があるときは、
きちんと洗いましょう)
これは一番大事です。毎日の習慣となるよう、こころがけましょう。
②マスクの着用(感染者が唾などを飛び散らせるのを防いだり、飛沫が直
接口に入るのを防ぐ意味があります。必ずしも完全な感染予防にはなる
とは限りません。
)
③バランスの良い食事、十分な睡眠で体力を良好に保つ
④習慣的に手で鼻や顔などをさわる行動はやめるようにする
SARSウイルスはエタノール(アルコール)や漂白剤の消毒が効果的です。エタノールはその他の菌やウイ
ルスにおおむね有効な消毒薬です。
またSARSの死亡例では、慢性疾患を有する方や免疫力や体力のないお年寄りなどが多くみられた、などの
情報もありましたが、これは他の感染症でもいえることです。上記の予防をしっかり行い、健康な方はより健
康に、また基礎疾患を有する方も定期的に通院し体力を良好に保つよう、こころがけましょう。
当院でも院内感染委員会を通じ、患者様に安全な医療を提供するため感染症対策を日々学んでおります。わ
からないことなどがありましたら、お気軽におたずねください。
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今月は季節の変わり目によく起こる不眠・抑うつについてお届けいたします。
不眠や抑うつの発症について
現代社会ではストレスはもちろんのこと不眠や抑うつに悩まされていらっしゃる方が非常に多いと感じま
す。特に季節の変わり目は発症が多いと感じるのは私だけでしょうか?
先日、アメリカの大学の研究会に参加致しました。その中の講義では
10人に一人が抑うつの傾向を示しているとの事でした。わが国でも社会
問題になっております。本来人間は大自然の流れに同調して生きるべき
サイクルになっておりますが、電気をつけて、夜型の生活ばかり続けて
いると自然のリズムに逆らい、ずれが生じて、不眠や抑うつを招きます。
眠りというのは自律神経の支配をうけております。現代の社会環境では、
ストレスにより緊張が続き交感神経から副交感神経への切り替えがうま
くいかず不眠に陥ってしまいます。
不眠の予防に!
1日のリズムはサーカディアンリズムと呼ばれます。朝の太陽の光をしっかりと受けることによりずれを
調整しましょう(電気の光ではだめです)
入浴時は温度はぬるめ…交感神経から副交感神経へのシフトは温度刺激、嗅覚刺激、音刺激により可能だ
といわれています。アロマテラピーのラヴェンダーの精油やローマンカモミールの精油を芳香させたり入浴
に使用したり、また、リラックスできる音楽などで自分自身を守りましょう。
ご自身にあった精油を選びアロマテラピートリートメントを受けられた患者さんの感想として一番多かっ
たのが、良く眠れた!というお言葉です。
眠りの浅いかた……
適度な運動が必要です。日中、積極的に活動することも大切です。眠くなったからといって昼間ねてしま
っては、またリズムがずれてしまいます。
食生活にも気を配り、運動をし、鎮静作用のある精油でリラックスし、寝る前に入浴して眠りにはいる心
の準備をしてあげましょう。
リフレッシュとリラックスをうまく使い分け生活を一本調子になるのを防ぎましょう。食事では体のあた
たまるものをとるのもいいことですね!
抑うつ症状を呈する人
不眠が長く続いたり極度の緊張が続くと眠れないだけでなく、食欲不振、下痢、倦怠感などの抑うつ症状
がおこります。
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セントジョンズワートのサプリメントやハーブティーなどが軽度の抑うつには効果的といわれますが、心臓
病のお薬を飲んでいらっしゃる方などは、効き目が悪くなったりと…禁忌事項などもありますので、お飲みに
なられる場合はご相談ください。
アロマテラピーでは、ネロリやプチグレンが効果的です。
プチグレンは不整脈にも効果大です。だからといってどんなプチグレンでも良いわけではありませんので、
どんな事でもまた、ご相談ください。
次回は疲れすぎた体、傷ついた心にアロマテラピーで優しく癒す!というお題で香りが心に及ぼす不思議に
ついてお伝えする予定です。どうぞお楽しみに!
この連載では、皆様からのご質問などお受けいたします。連載の中でもご紹介出来ればと考えております。
ケアルーム
服部 香里
JR小松駅から徒歩3分
お車でお越しの方は、
一方通行にご注意ください。
P
北
国
銀
行
加登病院
★当院では、訪問看護、人間
ドッグ、栄養相談も行って
おります。お年寄りの方の
介護のお悩みや、健康に関
する相談など、お気軽にお
たずねください。
東京
ストア
小松大和
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外 来 診 療 案 内
午
第一診療室
前
第二診療室
午
第三診療室
第一診療室
後
第二診療室
月 内科全般(院長) 循環器(高村Dr.)
内科全般(院長) 循環器(高村Dr.)
火 内科全般(院長)
呼吸器(藤村Dr.) 内 科(川口Dr.)
検査・消化器
水 内科全般(院長)
(金子・山下Dr.)
内科全般(院長)
木 内科全般(院長)
内 科(清水Dr.) 呼吸器(織部Dr.)
金 内科全般(院長)
検査・消化器(渡辺Dr.)
甲状腺・糖尿病
(櫻井Dr.)
高血圧(古市Dr.)
第三診療室
検査・消化器
(加賀谷Dr.)
整形外科(加藤Dr.) 内科全般(院長)
第1・3,神経内科(岩佐Dr.)
循 環 器
土 内科全般(院長) 第2・4,皮膚科(佐藤Dr.) (高田・阪上・
内科全般(院長)
居軒Dr.)
3週間に1回眼科(高比良Dr.)
4月から、担当ドクターの異動がありますのでご了承ください。
◆内分泌(甲状腺・糖尿病)外来は、土曜日の診療となる場合もあります。また、他の診療に関しても若干変更となること
があります。詳しくは、看護師または、受付スタッフまで、お気軽にお尋ねください。
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