総評 この度は上田電鉄 2016 年版カレンダーフォト作品 募集に多くのご

●総評
この度は上田電鉄 2016 年版カレンダーフォト作品
募集に多くのご応募ありがとうございました。どの作品
も上田電鉄や塩田平の美しい風景が切り取られ、皆様の
被写体に対する想いや愛情がひしひしと伝わってくる
写真ばかりでした。
今回は写真の募集期間が短かったため春夏秋冬それぞ
れの作品が集まるか不安でしたが、そんな不安を一瞬で
払拭する四季折々の素敵な写真を拝見することができ、
改めて沿線の景色の素晴らしさを教えていただきました。
写真撮影で最も重要なのは粘り強く被写体と向き合うことだと思います。特に今回のよ
うな鉄道風景写真の場合は、刻一刻と変化する自然の光景と列車がやってくるタイミング
が重要になります。どんな美しい風景でも、鉄道を感じさせるものが画面になければ鉄道
写真とは言えないからです。これには日ごろから沿線を熟知するロケハン能力と、チャン
スを生かす撮影技術が伴わないと難しいことでしょう。今回の採用作品の多くが、そんな
チャンスを生かしたものであり、その裏にある数々の失敗や日ごろの努力までも想像しな
がら選考しました。
今回皆様からいただいた作品の多くが列車の走行シーンを捉えたものでした。しかし上
田電鉄の魅力は列車だけにとどまらないと思います。歴史ある駅舎や保存車両、列車を安
全に運行する頼もしいスタッフなど被写体は多くあふれています。今後、そんなシーンに
も目を向けていただき、さらに素晴らしい写真を撮影されることを期待しております。
●1 月
凛とした冬の朝の空気感までも伝わる作品です。
太陽と列車の位置や川の入れ方など、普段から撮り
慣れている安定した構図もポイントです。パンタグ
ラフが鉄橋と重ならない位置でシャッターを切られ
た冷静な判断力も見事です。シルエットで写ってい
る乗客が作品に温かみを与えてくれました。
●2 月
早朝でしょうか?雪が降り止んだ直後の静けさが
画面から伝わってきます。まずはこの時間帯にこの
撮影ポイントに立たれたことに作者の努力を感じます。
きっと雪が降ったらここで撮りたいと日ごろから狙っ
ていたのではないでしょうか?普段のロケハンが大切
ということを教えてくれた秀作です。
●3 月
ダイナミックな画面で非常に迫力があります。入念
なコンテを描いて現地に立たれたのではないでしょう
か?画面に斜めに配置された鉄橋が画面に動きを与え
てくれており、列車と太陽の反射の位置も最良です。
車体の六連銭がよいアクセントになり、新車さなだど
りーむ号の魅力をうまく表現しています。
●4 月
春の柔らかな夕日が桃のピンク色をより際立たせて
くれている美しい作品です。このようなシーンでは欲
張ってたくさんの花を入れ込もうと構図に悩む場面で
もあると思います。しかし一部を切り取ることでバラ
ンスを保ち、画面を引き締めています。なによりも丸
窓の存在感がこの作品の真骨頂でしょう。
●5 月
田んぼの水鏡は多くの鉄道ファンが好む画面ですが、
実は撮るのが意外に難しいシーンでもあります。風が
吹くと水鏡が消えてしまいますし、早苗が育ちすぎて
もダメなのです。この作品は実にいい日に撮られたと
思います。構図も安定しており、作者が感じている春
の空気感が画面から伝わります。
●6 月
梅雨入り前の貴重な晴れ間を撮影した秀作です。
手前は麦畑と思いますが、これ以上黄色くなってし
まうと「麦秋」という言葉があるとおり、秋のよう
な風景になってしまい、カレンダーの写真としては
使いづらかったかもしれません。空を大きく入れた
ことで、初夏の信州の爽やかな感じがよく出ています。
●7 月
この作品を一目見たときに、思わず感嘆の声を上げ
ていました。にわか雨の直後の晴れ間に現われた 2 重
の虹がとにかく見事です。そして虹のたもとには上田
電鉄の列車が走るという奇跡的な光景です。作者は虹
が消えないうちに列車が来てくれと祈ったに違いあり
ません。その執念が見事な作品になりました。
●8 月
この作品は望遠レンズで多くの釣り人を入れ込んだ
ことで成功しています。動く釣り人と列車をバランス
よく画面に捕らえるのは難しいことです。きっと作者
は日ごろから構図をしっかりと意識されて撮影されて
いると思いますが、こういうスナップ写真的なシーン
ではその経験が生かされると思います。
●9 月
沿線の駅周辺の花壇には、多くの方のご協力で四季
折々の花が咲き誇っています。花は季節を端的に表現
してくれるアイテムですが、写真にそれを取り込もう
とするとなかなか難しく、いつも悩む場面です。この
作品は思い切ってローアングルにカメラを構えたこと
で、花のボリューム感がうまく表現されています。
●10 月
千曲川の橋梁は沿線随一の撮影スポットです。今回
も多くの応募作品がここで撮られたものでしたが、こ
の作品は鉄橋脇の 2 本の木にスポットを当てたこと
で成功しました。少しだけ色づいた木と、バックに
広がる青空が秋の上田を余すところなく表現されて
います。鉄橋の赤色が非常に効いた一枚です。
●11 月
朝と夕方は太陽がドラマチックなシーンを演出し
てくれます。この作品は昇りたての朝日が車体に
ギラリと反射する瞬間をうまく捉えています。放射
冷却で冷え込んだのでしょう。霜がおりて非常に
寒いと想像できますが、わらぼっちのかわいらし
さも相まってどこか暖かい光景に心が和みました。
●12 月
この橋梁は鉄道橋としては他に関西にひとつある
だけという珍しい構造をしています。そんな鉄橋を
主体にまとめられた作品ですが、半逆光の光線で捉
えたことで立体感が増しています。快晴の空の下、
遠くに見える山々にうっすら雪が積もった風景が、
この時期の上田電鉄沿線の風景をうまく表現してい
ます。
久保田敦
1977 年長野県松本市生まれ。鉄道写真家。
有限会社レイルマンフォトオフィスを経て 2008 年フリーカメラマンに。車両をアップで切
り取るスタイルには定評があり、鉄道ジャーナル誌の表紙撮影を 5 年続けている。その他、
雑誌広告など多岐にわたり活躍中。