庭野平和財団 平成 16 年度 研究助成 最終報告書 04-R-057 民営メディアをとおした宗教文化の市民社会成立へ果たす役割 ―西アフリカ・ベナンの事例研究から― 高千穂大学 教養部 助教授 田中正隆 <研究要約> 民主化をすすめる発展途上国の社会政策において、宗教文化はどのような寄与をはたすのだろうか。とくに放送媒 体(以下、メディア)のもたらす宗教的表象は、市民社会成立のためにどのように機能するのか。宗教は地域社会の医療 や教育、伝統芸能と結びついて特有の文化を形成する。だが政治システムの民主化に次いで、実質的な市民社会の実 現をめざす途上国では、土俗的な伝統宗教は社会の発展を阻害するものという捉え方がある。近代化をすすめるため には西欧由来のキリスト教によって倫理教育を行うべきだともいわれる。それゆえ人々の生活空間に流れるラジオ放 送では、定期的に聖書購読や聖職者の講話を放送している。 しかし、西アフリカ・ベナンでは、社会主義体制の崩壊以降、キリスト、イスラムなどとともに伝統宗教ブードゥを多元主 義的に把握し、諸宗教間の相互理解をすすめ、むしろその伝統性、文化性を再評価しようとする動きが高まっている。た とえばコトヌ在住の伝統医の中にはメディア機関に積極的に働きかけ、伝統的倫理観復権への民意を喚起させようと する者もいる。また NGO をたちあげ、道徳教育と識字化教育に介入し、これを促進しようとする機関もある。本研究で は、この具体例について人類学的調査を行い、とくに民営放送のもたらす影響という視点から市民社会と宗教文化との 相関をさぐった。ベナンの民営放送は音楽や映像を通してベナン全体の文化的アイデンティティを提示する一方、国内 の経済的矛盾や民族問題の紛糾などを広く世に問うている。調査で収集した事例のなかには、その問題提言性ゆえに 政府当局と対立し、活動休止を余儀なくされた事例が少なくなかった。これは 90 年以降の市民社会の模索の事例とし て注目に値する。本研究は現地調査をとおして、「報道される」宗教文化と市民による「下から」の民主化の展望を明ら かにする。 <研究の目的> 民主化をすすめる発展途上国の社会政策において、宗教文化はどのような寄与をはたすのだろうか。とくに放送媒 体(以下、メディア)のもたらす宗教的表象は、市民社会成立のためにどのように機能するだろうか。そこでは宗教は医 療や教育、伝統芸能と結びついて特有の文化を形成している。だが政治システムの民主化に次いで、より実質的な市 民社会の実現をめざす途上国では、土俗的な伝統宗教は社会の発展を阻害するものという捉え方がある。近代化をす すめるためには西欧由来のキリスト教によって倫理教育を行うべきだともいわれる。それゆえ人々の生活空間に流れ るラジオ放送では定期的に聖書購読や聖職者の講話を放送している。識字率の低い村落部では FM ラジオやテレビ などのメディアがもたらす文化表象は大きな影響力をもつ。 しかし、西アフリカ・ベナンでは、社会主義体制の崩壊以降、キリスト、イスラムなどとともに伝統宗教ブードゥを多元主 義的に把握し、諸宗教間の相互理解をすすめ、むしろその伝統性、文化性を再評価しようとする動きが高まっている。本 研究の目的は、この具体例について人類学的調査を行い、とくに民営放送のもたらす影響という視点から市民社会と宗 教文化との相関を明らかにすることである。ベナンの民営放送は伝統宗教の音楽や映像を通してベナン全体の文化 的アイデンティティを提示する一方、国内の経済的矛盾や民族問題の紛糾などを広く世に問うている。その方向性ゆえ に政府当局と対立し活動休止を余儀なくされることもある。これは 90 年以降の市民社会の模索の事例として解明に値 する。本研究は人類学的手法による現地調査をとおして、「報道される」宗教文化と市民による「下から」の民主化の展 望を明らかにする。 <研究の内容と方法> ベナン共和国においては、これまで外来宗教と伝統的民俗宗教ヴォドゥン(ブードゥー)が複雑に習合しあい、前者が 伝統民俗の手法をとりいれたり、その課題を引継ぐ形で波及している。また伝統的卜占の技法を有する卜占師がイスラ ムの聖典を権威づけの根拠としていたり、ブードゥーにねづよい妖術や邪術への対抗手段としてキリスト教の偶像を 積極的にとりいれている。これは教団側の布教の戦略であり、かつ特定のカルトを選ぶ信徒の日常にねざした生活意 識と考えることもできる。都市部における新興カルトの隆盛は民衆の生活意識に対応し、かつ経済活動体として自立し ている。村落部にいたるまでカルトの活動範囲が広がってきていることは、近代的資本主義という社会原理と村落部の 家内経済や地縁集団の経済活動が無縁ではないことを意味している。こうした中で、近年、カルト集団や独立教会、外来 宗教集団のあいだで、他宗派への相互理解や多元的理解をすすめようとする動向が盛んになってきた。 政府は伝統医への許可証の発行や地域組織の形成によって統合化をすすめる一方(ANAPRAMETRAB=ベナン 伝統医療師国家組合の形成)、宗教者側でも互助組織を形成することで、政府の地域政策に積極的に参画しようとする。 たしかにこのような折衝は、地域で活動する宗教集団同士の競合や葛藤を誘発することもある。中央政府は、南北の経 済格差、民族集団間の葛藤を解消するのではなく、むしろ潜在化させるために、ブードゥーを伝統文化として民族アイデ ンティティ化しようとしてきた。しかしこうした現在時点での伝統信仰の展開についての先行研究の蓄積はきわめて限 られたものであった。伝統信仰の変容をグローバル化の状況から考察した論考は、単純な近代化論の議論に終始する か、外来宗教による伝統宗教との協調や吸収を考察した研究にとどまり、それらを相互作用的に捉えようとする研究は ないのが現状である。具体的な調査および研究方法としては、以下の事柄を実施した。 ①調査準備段階として、現地関係機関との交信を行った。ベナン・アボメ・カラヴィ大学およびトーゴ・ロメ大学の人文学 科に研究協力をえることが出来た。 ②アボメ歴史民俗資料館、伝統工芸資料館など現地研究機関をとおして出版物、地域情報資料の収集・分析。観光・文 化省との接触をつうじて公文書資料、年次報告などの資料収集をおこなった。 ③ ベナン都市部において、ガルフ FM、ラジオ・ベナン、LC2、ORTB などの現地放送媒体諸機関と接触、調査、資料収 集をおこなう。また非政府系タブロイド紙機関と接触、資料収集。対面的インタヴューを実施する。この作業により、2001 年度大統領選挙、人事投与、文化政策の動向などの最新の情報を入手し、蓄積・整理をおこなった。 ④周辺村落部における補足調査の実施。伝統医協同組合、芸能集団との接触、対面的インタヴュー調査、質問表調査を 実施する。特に 2006 年度大統領選挙にむけての情勢などの情報収集のため、地域集会への参与観察を行った。 ⑤隣接地域トーゴ共和国村落部に拡大調査をすすめる。国立大学ロメ校および官公機関をとおして文書資料の収集を 行った。南部村落への参与調査、インタヴュー調査を実施する。 <研究の実施経過> 2004 年 12 月 アフリカ研究 65 号(日本アフリカ学会) に「神をつくる-ベナン南西部における伝統医の活動への一 考察」 論文採択、掲載 本研究の遂行にあたって、前半期は本研究の理論的前提となる、学会誌投稿論文を作成し、採択された。この内容は 次のようなものである。 多様な神々を物質にして祀る信仰(ブードゥ)は、伝統医たちによって他地域から金銭を介して購入されることで広が ってきた。彼らにとって医療の傍ら、こうした流通にたずさわることが信仰活動であり経済活動でもある。薬、呪物、霊で もある「もの」の売買を分析した結果、神々をめぐる取引はきわめて貨幣-商品経済的でありながら、利潤の最大化が唯 一の目的ではなく、社会関係の構築が重要であるという経済原理があることがわかった。このような調査結果と分析か ら、現代の経済状況と宗教文化が極めて密接に連関していることを論証した。 2004年12月 2005 年 1 月 2005 年 4 月 2005 年 5 月 日本国内にて文献研究、現地研究機関との交信、関連資料収集 情報収集、現地調査出発準備 ベナン共和国入国、現地調査 帰国、調査資料整理 日本アフリカ学会学術大会にて研究報告 2005 年 6 月 慶應義塾大学東アジア研究センターにて研究報告 2005 年 3 月 Vodun in democratization : A brief review of the entanglement of religion and politics in modern Benin, West Africa 國士舘教養論集(国士舘大学教養学会) 57 号 pp.39-49 2005 年 5 月 ベナン 90 年代の文化政策からみた政治変動について:A.Mbembe の所論を手がかりに 第 42 回日 本アフリカ学会学術大会、於 東京外国語大学 2005 年 6 月 神々をめぐる経済:西アフリカ・ベナン南西部の調査事例から 慶応義塾大学人類学研究会、於 慶応義 塾大学東アジア研究センター 春季調査(現地では乾季)にむけて準備をはじめた。調査に入る前に、アボメ・カラヴィ大学、ロメ大学人文科学部への 連絡と交信を行い、研究関連資料を入手し、研究施設の利用の許可を請願した。パリ国立図書館アーカイヴ蔵書館など において地域研究資料を検索し、複写を依頼した。ベナン共和国入国ののち、人文学部学部長経由で調査許可証をえ て、都市部調査を行った。近代化の著しい社会環境の変化を把握するため、統計局、観光局等からの統計データ、およ び研究機関の現地研究資料の収集につとめた。報道媒体の発展に注目し、新聞、ラジオ、テレビの実態把握を試みた。 政治変動と市民の反応を明らかにするために、とくに 2004 年度の国会議員選挙の結果と影響、および 2006 年度に予 定されている大統領選挙に向けての政党の動きに関して資料を収集した。方法は、各報道媒体への対面的インタヴュ ーと、設立の経緯に関しての複数筋からの聞き取り調査である。官報紙の保存、管理を行う国立文書資料館にて 90 年 代後半の官報紙および民間紙を中心に閲覧し、宗教、伝統文化関連の記事を収集した。 帰国後、調査資料の整理、分析をすすめる中で、日本アフリカ学会第 42 回学術大会において、「ベナン 90 年代の文 化政策からみた政治変動について:A.Mbembe の所論を手がかりに」という主題での口頭発表を行った。その概要は 以下のようなものである。 ベナンは、1991 年の国民会議開催をへて、政治システムが複数政党制へ順調に移行し、アフリカの民主化のモデル となってきた。こうした民主化移行を2人の大統領の動きから整理すると、マチュ・ケレク氏とニセフォ・ソグロ氏は、その 出身と経歴からしてきわめて対照的である。とりわけ「伝統信仰」への両者の対応を比較すれば、ケレクⅠ期における 「革命期」の政策は、宗教的勢力への弾圧を行うものであった。政府は中央集権化と近代化を志向して、地域社会にお いて政治的権威をもつ司祭に対して、厳しい統制を行った。それに対してソグロ政権では、国家的文化行事「ウイダ 92」 祭を典型とするような伝統文化振興色を強く打ち出し、モニュメント建設や祭祀開催をすすめた。政府は音楽、舞踏、演 劇、映画から美術、工芸品製作まで、アーティストを積極的に紹介、支援した。ウイダ 92 の目的は、伝統信仰をめぐる芸 術と文化に世界中に離散した黒人奴隷の歴史性を重ねることで、その文化性の普遍性や世界性を見出し、統合化をも くろむものであった。だが、この文化振興政策は、むしろ各地の信徒集団同士の政治権力をめぐる葛藤を表面化させ、 あるいは民族集団間の潜在的対立を意識化させる結果ももたらした。報告では、こうした事実が 5-60 年代の政治体制 に淵源をもちつつ、90 年後半以降の分権化と地域癒着や政治汚職といった現代の政治課題とも連なっていることを明 らかにした。 <研究の成果> 今回の現地調査によって、前回調査から大きく変貌をとげた現地の社会・経済状況をまず確認した。アメリカ、フラン ス、デンマーク、ドイツなどを始めとする西欧諸国からの投資事業の開始とも重なって、この国は 99 年度からの経済成 長率が目覚しい。90 年代後半から今日にいたる成長率では、CDEAO 西アフリカ経済圏でも最上位にあたる。その大 きな特色は、国際道路や幹線道路の整備と電力供給の安定化をあげることができる。経済首都コトヌから政治首都ポ ルトノヴォには四車線のオートルートが整備され、政治と経済の中枢の往来において大幅な時間短縮が可能となった。 この舗装道路はまた隣接諸国への商業通路としても利用される。市内をへだてるクフォ川には 3 本の橋がかけられ、 人や物品の移動、流通が大幅に改善された。コトヌ最大の常設市ダントパ Dantokpa には高架歩道橋がかけられ、舗 装された通路、道路標識の設置や区画整理が進められていた。 ベナン南部地域に根強い伝統宗教ブードゥも、このような社会・経済的な変化と無関係ではありえない。マルクス・レ ーニズムを棄却し、1990 年からの複数政党制に転換し、92-96 年の民主再生党(PRD)ニセフォ・ソグロ政権下では経 済再建が第一の課題となっていたが、南北の民族対立の融和のため、伝統文化・芸術を保護しブードゥを国教と認める 政策が打ち出された。ブードゥ芸術・文化祭(ウイダ 92、98)は、文化振興行事の体裁をとりつつ、南北の民族的対立を融 和させ、エスニック・アイデンティフィケーションを企図するものであった。 今回行った国立文書資料館での資料収集では、ウイダ祭実施にいたる経緯とその後の文化政策の推移を明らかに した。奴隷搬出の歴史的事実をもつウイダとダホメ王国の前身となる王朝が存在したアボメにはそれぞれブードゥの 伝統首長がおり、ブードゥ祭祀の伝統文化化をめぐって論争や対立があった。後者ゲデウンゲ Guedehounge 師はベ ナン・ブードゥ伝統文化国民委員会(CNCVB)を組織し、他方ウイダの Hounon 師はブードゥ・カルト高等委員会 (HCCV)を組織し、独自性を主張した。ウイダ 92 祭を前後に深まる両者の溝はやがて修復に向かい、無事ウイダ 98 祭 の実施にいたる。毎年 1 月 10 日をブードゥ祭として整備されてきたのは 97-98 年前後であった。この時期はケレク政 権の復活から 1 年が経過し、報道媒体の民営化がはじまった時期でもある。テレビでも国営放送とフランスのケーブル テレビに加えて、民営放送 LC2(La Chaine 2)の放送が開始されたのもこの時期である。当時の新聞にはブード祭祀 開催に関する記事とともに報道局、ジャーナリストの組合集会の記事が散見されるようになる。 本研究では、行政の変遷と地域社会の伝統的権威組織の動向を、報道媒体からの情報を通じて整理するとともに、 都市部で展開する宗教-文化複合の典型を、ある宗教職能者に焦点をすえて調査を行った。R、Assoungba 氏はアフリ カにおける応用文化人類学の推進を主張する。彼はロシアへの遊学中、芸術学を専攻し、ベナン大学で卜占術を主題 とした論文により学位(ph.D)を取得した経歴をもつ。伝統的神格アジザ Aziza を頂点としたブードゥ信仰の体系化、教 典化を推める。1996.8-97.7 月にかけてベナン国営放送にて、自らのアジザ信仰の連続ドラマを作成し放映される[王 女の宮殿 au Royaume de Princesse]。斬新なカット割り、モンタージュ、ストップ・モーションなどの映像技術を駆使した この作品は、視聴者に好評を博し、その後も再放送されている(1999 年)。自らが演じる主役のアジザは富をもたらす海 神マミワタの加護により巨万の富を得るが、人々からの嫉妬や策略、トラブルにより流転の人生を歩むというストーリ ーである。ロシア留学の経験が生かされたそのような芸術的表現に加えて、彼はキリスト、イスラムをはじめとした異な る宗教とも思想的な協調を説く。さらにそれは政治領域への参入という性格も有している。アフリカにおけるアフリカ共 和国の建設(Fondation Africain de la Republique d'Afrique)=FARAISME は植民地政策の遺制により 54 ヵ国に 分割されている現在のアフリカ諸国家を、共和国体制に変革しようとするものである。それは独裁政権やある特定の思 想的イデオロギーによって統合するのではなく、北部、中・西部そして南部の三地域圏による合衆国体制を築こうと説 いている。しかし、今回の調査によって、この彼の政治性が現政府の統制する国営放送局と葛藤を起こしている(1997 ~)ことがわかった。 Basile Adoko 氏はブードゥ伝統文化国民委員会の要職を務め、宗教者や信者をとりまとめつつ、自らの宗教団体の 活動も行う。彼はメディアへの出演や文化省の職員との交流も積極的に行っている。かれは伝統信仰にベナン人の精 神的支柱があることを人々の意識喚起させようとさまざま活動を行っている。たとえば彼の教団は政府も推奨する道 徳教育や識字化教育を支援し、促進するものとして、NGO 組織となっている。これには、 ①組織の正当性の獲得、アピール ②民衆の関心喚起 ②節税対策 などの理由があげられる。氏へのインタヴューによれば、特に村落部における従来の信徒たちは、聖なる森での修行 期間や信仰活動などで非識字者の割合が高く、児童、少年だけでなく、成人教育としても識字教育を呼びかけている。氏 は国営や民間のテレビ、そして地域社会においてはローカル・ラジオの番組に出演し、団体の活動と信者同士の連帯 を呼びかけている。 Assougba 氏や Adoko 氏は宗教思想を現代ベナンのメディア環境に適合させて、より効果的に流布させようと試み ている。しかもそれらは年長者への敬意であるとか、相互扶助の精神などの社会道徳を再認識させたり、識字化教育 の促進など、多くの人々に共感を得る内容であった。だが、とりわけ Assougba 氏に明らかなように、その影響力や政治 性ゆえに、「民主的」国家による暗黙の統制を受ける場合もあった。ともあれ、こうした活動を、比較的若手の宗教者が積 極的に行っている。地域においては複数の NGO 団体も展開し、これら宗教団体と技術移転の面で交流しつつある。 <今後の課題> 本研究で実施しえた調査、分析は予備的な資料収集にとどまり、今後長期間にわたる追跡調査と比較検討が必須と なると思われる。本研究は伝統的民俗信仰ブードゥを主軸に、宗教的多元主義、宗教-文化複合の実態を解明し、その可 能性を展望することを企図していた。だが同時に本研究は社会・経済的環境との相関関係とその実態把握が基礎であ った。Assoungba 氏や Adoko 氏の事例に見られるように、彼らの間で、ブードゥ信仰の再活性化には政治への介入、 社会貢献や発言の重要性を認識していることがわかる。報道資料の収集と分析から、これらの動きは伝統信仰のもつ 倫理的側面、生活道徳的側面を強調し、社会貢献や政治への参与を実践していることが明らかとなった。 こうした実践のあり方には報道機関の関与も大きな作用因として見落とすことは出来ない。それゆえ、先行研究が 未開拓な、現地報道機関の動向をより詳細に調査分析することが必要と考える。今後 5-10 年前後のスパンに渡ってベ ナンは、海外資本投資が集中し、インフラストラクチャー整備がますます進展してゆくと予想される。今回は時間的にも 移動範囲としても限定的な調査にとどまったが、ベナン北部からトーゴ、ナイジェリアなど言語や経済、政治体制の異な る隣接地域との相関分析や比較研究を実施することによって、本研究は宗教とメディア研究のみならず、政治学、社会 学などの隣接する社会科学領域にきわめて大きな貢献を果すと考える。 <謝辞> 本研究の調査にご協力いただいた現地スタッフ、研究機関、そしてインフォーマントの方々に感謝いたします。また、本 研究にたいして助成を頂いた庭野平和財団に衷心よりお礼申し上げます。
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