平成25年度 北野病院ブレストセンター・乳腺外科年報 【診療活動の基本】 平成26年度より北野病院ブレストセンターを設立するべく、乳腺疾患の専門スタッフ を中心に、化学療法部、形成外科、放射線科、薬剤部、健診部、緩和ケア部門などと連携 しながら、乳がんを中心とした疾患の診断と治療を行っている。 画像診断では最新の3テスラーMRI の極めて精度の高い画像解析により、術前に乳癌の 切除範囲を以前よりかなり正確に診断できるようになった。マンモトーム生検は病理診断 上欠くことのできない診断方法となっているが、施行件数は年々増加し、昨年度の157 件に対し、今年度は171例に本法を施行し、術前に乳がんを4つのサブタイプに正確に 分類し、治療方針を決定している。さらに術後ホルモン療法を予定した症例でも Oncotype DX を用いた遺伝子プロファイル解析法により化学療法を施行すべき症例を選択している。 平成25年1月からは遺伝子乳がん卵巣がんの対応として本疾患の可能性の高い家族歴を 有する患者様に対して遺伝カウンセリングを51件行い、BRCA1/2 の遺伝子検査を18件 施行した。現在来年度のリスク低減乳房切除術およびリスク低減卵巣卵管切除術の実施に 向けて倫理委員会等での審査を受けるべく準備中である。。 治療に関しては本年度も術前化学療法を31例に取り入れ、42%の症例で乳がんが消 失し、全体で85%の症例で乳房温存療法が可能であった。またアイソトープ法と ICG 蛍 光法を併用したセンチネルリンパ節生検の採用で、129例で安全、かつ正確なセンチネ ルリンパ節の同定が可能であった。現在術前化学療法後でも確実に同定可能かどうか健闘 を進めている。さらに形成外科と共同で皮膚温存乳腺全摘後に組織拡張器の同時留置、シ リコンによる乳房再建術を7例に施行した。再発乳がんに対する治療は原則としても4つ のサブタイプ別に施行し、分子標的療法など、体に優しくかつ奏効率の高い治療法を選択 している。度重なる治療にもかかわらず回復が困難な再発患者に対しては緩和ケアチーム と連携し、疼痛制御、精神看護に当たっている。 【主な臨床試験】 ① 乳癌センチネルリンパ節検索における、RI 法と比較した ICG 蛍光法の臨床的有用性 の検討 ② HER2 陽性原発乳がんに対する 5-フルオロウラシル/エピルビシン/シクロホスファ ミド(FEC)+トラスツズマブ併用療法 Followed ドセタキセル(DTX)+トラスツズマ ブ併用療法による術前化学療法の抗腫瘍効果/安全性の検討 ③ HER2 陰性の転移・再発乳癌に対する 3 週毎投与アブラキサンの安全性および有効性 の検討 ④ エストロゲン受容体陽性 HER2 陰性乳癌に対する S-1 術後療法ランダム化比較第 Ⅲ相試験 ⑤ 閉経後乳癌患者を対象とした術前内分泌療法下におけるゾレドロン酸の投与の有 効性およびγδ型 T 細胞の関連を探索する多施設共同試験(臨床代 II 相試験) 【診療スタッフ】 山内清明 (部長):昭和 55 年神戸大学卒 京都大学医学博士 日本乳癌学会乳腺専門医、評議員 日本外科学会専門医、指導医 1 日本がん治療認定医機構暫定教育医 検診マンモグラフィー認定読影医 京都大学医学部臨床教授 高原祥子 (副部長) :平成 3 年京都大学卒、京都大学医学博士 日本乳癌学会乳腺専門医 日本外科学会専門医 検診マンモグラフィー認定読影医 ICD(Infection Control Doctor) 萩原里香 (医員):平成 17 年島根医科大学卒 日本外科学会専門医 検診マンモグラフィー認定読影医 吉本有希子 (医員):平成 19年香川大学卒 日本外科学会専門医 検診マンモグラフィー認定読影医 稲本 俊 (非常勤) :昭和 46 年京都大学卒 京都大学医学博士 日本乳癌学会乳腺専門医、評議員 日本外科学会専門医、指導医 京都大学医学部臨床教授 鳥井雅恵 (非常勤):平成 13 年滋賀医科大学卒 日本乳癌学会認定医 日本外科学会専門医 検診マンモグラフィー認定読影医 多久和晴子 (非常勤) :平成 17 年島根医科大学卒 日本外科学会専門医 検診マンモグラフィー認定読影医 (1) 平成 25 年度研究課題 1 乳癌センチネルリンパ節検索における、RI 法と比較した ICG 蛍光法の臨床的有用性 の検討 (萩原里香、多久和晴子、高原祥子、山内清明) 2 FEC75 とトラスツズマブの同時投与による乳癌術前化学療法の検討 (多久和晴子、萩原里香、高原祥子、山内清明) 3 術前内分泌療法の効果予測因子としてのプロゲステロンレセプターの可能性 (萩原里香、高原祥子、山内清明) 4 乳癌ホルモン療法効果予測におけるメニンの可能性 (山内清明、萩原里香、高原祥子、多久和晴子) 5 糖鎖解析より得た高感度乳癌新規腫瘍マーカーの開発 (高原祥子、山内清明、萩原里香) 6 エストロゲン受容体陽性 HER2 陰性乳癌に対する S—1術後療法第Ⅲ相試験 2 (萩原里香、山内清明、高原祥子) 7 乳癌微小環境形成に関わる分子生物学的機序の生体試料を用いた探索研究 (山内清明、萩原里香、高原祥子) 8 遺伝性乳がん卵巣がん症候群における遺伝子変異と病態との関連に関する検討 (大瀬戸久美子、山内清明、萩原里香、吉本有希子、高原祥子) (2) 平成 25 年度研究業績 <学会発表> The optimal LHRH agonist therapy for ER positive pre-menopausal early breast cancer patients. 多久和晴子、萩原里香、高原祥子、山内清明 Conference 2013 年 3 月 19 日〜21 日 9th European Breast Cancer グラスゴー Taxane 既治療乳癌に対する Bevacizumab 併用化学療法の使用経験 久和晴子、山内清明 第 113 回日本外科学会 潜在性乳癌における治療法の検討 第 21 回日本乳癌学会 2013 年 4 月 11 日〜13 日、2013 2013 年 6 月 27 日〜29 日 第 21 回日本乳癌学会 浜松 山内清明、萩原里香、多久和晴子、 2013 年 6 月 27 日〜29 日 短期間術前ホルモン療法におけるバイオマーカーの変化 山内清明 第 21 回日本乳癌学会 福岡 高原祥子、萩原里香、多久和晴子、山内清明 当院転移再発乳癌に対する化学療法経験からの提言 高原祥子 高原祥子、萩原里香、多 萩原里香、高原祥子、多久和晴子、 2013 年 6 月 27 日〜29 日 肉芽腫性乳腺炎に対する抗アレルギー療法についての検討 香、山内清明 第 21 回日本乳癌学会 浜松 浜松 多久和晴子、高原祥子、萩原里 2013 年 6 月 27 日〜29 日 浜松 A case-control study for possible cardiotoxicity risk modifier such as usage of ACEI, beta-blocker and G-CSF among breast cancer patients who received anthracycline and trastuzumab. 南村真紀、山内清明、他 International Symposium on Supportive Care in Cancer 2013 2013 年 6 月 27 日〜29 日 ベルリン 遺伝性乳がん卵巣がん症候群における実地臨床の中での取り組みからの検討 大瀬戸久美子、 萩原里香、高原祥子、山内清明 第 19 回日本家族性腫瘍学会 2013 年 7 月 26 日〜27 日 別府 家族性乳癌に対する至適治療法に向けての考察 多久和晴子、高原祥子、萩原里香、山内清明 第 11 回日本臨床腫瘍学会 2013 年 8 月 29 日〜31 日 3 福岡 Treatment and prognosis of familial/hereditary breast cancer patients 多久和晴子、 高原祥子、萩原里香、山内清明 17th ECCO-38th ESMO-32nd ESTRO 17th ECCO-38th ESMO-32nd ESTRO, 2013 アムステルダム 当院における乳腺全摘出後の一次二期的乳房再建症例-北野病院のチーム医療について 美奈子、山内清明、他 19 日〜20 日 第 1 回日本乳房オンコプラスティックサーシャリー学会 石川 2013 年 9 月 福岡 当院における遺伝性乳がん卵巣がん症候群への取り組み 51 回日本癌治療学会 2013 年 10 月 24 日〜26 日 山内清明、高原祥子、萩原里香 京都 乳癌に対する当院における Bevacizumab 併用化学療法の使用経験 内清明 第 51 回日本癌治療学会 第 2013 年 10 月 24 日〜26 日 高原祥子、萩原里香、山 京都 当院で施行した術前ホルモン療法 9 例の検討化学療法施行例における資料関連性新機能低下に ついての検討 日〜26 日 萩原里香、高原祥子、山内清明 第 51 回日本癌治療学会 京都 化学療法施行症例における治療関連心機能低下についての検討 祥子、山内清明 第 51 回日本癌治療学会 第 51 回日本癌治療学会 京都 大瀬戸久美子、萩原里香、高原祥子、 2013 年 10 月 24 日〜26 日 消化器癌との比較における肺癌化学療法の栄養評価 内清明 第 51 回日本癌治療学会 多久和晴子、萩原里香、高原 2013 年 10 月 24 日〜26 日 遺伝性腫瘍診療における遺伝カウンセリングの役割 山内清明 2013 年 10 月 24 京都 長谷川美里、萩原里香、高原祥子、山 2013 年 10 月 24 日〜26 日 京都 Bevacizumab 併用化学療法中に発症した気胸に対してシリコン性充填剤を用いて治療し得た1 例 高原祥子、萩原里香、山内清明 第 11 回日本乳癌学会近畿地方会 2013 年 11 月 30 日 大阪 <論文> Clinical usefulness of human epidermal growth factor receptor-2 extracellular domain as a biomarker for monitoring cancer status and predicting the therapeutic efficacy in breast cancer. Kontani K, Kuroda N, Hashimoto SI, Murazawa C, Norimura S, Tanaka H, Ohtani M, Fujiwara-Honjo N, Kushida Y, Date M, Haba R, Houchi H, Yamauchi A, Yokomise H. Cancer Biol Ther. 2013 Jan;14(1):20-8. Prevalence and risk factors of bone metastasis and skeletal related events in patients with primary breast cancer in Japan. Yamashiro H, Takada M, Nakatani E, Imai S, Yamauchi A, Tsuyuki S, Matsutani Y, 4 Sakata S, Wada Y, Okamura R, Harada T, Tanaka F, Moriguchi Y, Kato H, Higashide S, Kan N, Yoshibayashi H, Suwa H, Okino T, Nakayama I, Ichinose Y, Yamagami K, Hashimoto T, Inamoto T,Toi M. Int J Clin Oncol. 2013 Nov 29. [Epub ahead of print] 平成25年度 全麻 局麻 乳癌 乳癌 乳癌 FA 等良性 CV ポート SLNB Ax SSM 再建 NAC 後 NAE 後 DCIS US-MMT ST-MMT CNB 乳腺外科 手術件数 温存術 リンパ節生検 乳房切除術 腫瘍切除 腫瘍切除 5 件数 175 30 113 5 38 1 26 9 129 17 18 7 31 11 13 171 21 28 率 (%) 65 22 88 12 10 4 18 6 7
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