PowerPoint プレゼンテーション

溶接トラブル
1.
板切り溶加棒にて溶接したところ多数のブローホールが検出された
・事 例 母材に合致したティグ溶接材料が市販されて
いなかったので、母材と同じ材質の薄板をシャー
リングで2~3mm角に切断し溶接棒として使用
した。継手部を放射線透過試験したところ、微細
なブローホールが多数検出された。
・原 因 シャーリングで薄板を切断した際に、異物が
付着したことがブローホールの原因である。
・対 策
写真1 板切り溶接棒
溶接材料を板材から切り出して使用するこ
とはJIS Z3331でも認められている。この場合、板材か
らシャーリングなどで切断したあとは、カエリを取り
除き、酸洗→水洗→脱脂洗浄してから使用することに
より、ブローホールが低減できることから、確実な洗
浄を実施してから使用するようにすることが望ましい。
溶接トラブル
2.
チタンパイプの縦シームTIG溶接で溶接部が酸化
・事 例 チタンパイプの縦シームTIG溶接において、
トーチシールド、アフターシールドを実施してい
るにもかかわらず、シールド不良で酸化した。
・対 策
ビードの酸化を防止する温度域まで溶接
ビード上にシールガスを充満させる。そのために、
パイプの両側にブロックを配置してガス溜りを形
成し、シールドガスの滞留効果を上げる。
板厚 0.5mm
溶接電流 80A
溶接速度 200cm/min
アーク長 1mm
トーチシールド 20L/mm:Ar
アフターシールド 39L/min:Ar
バックシールド 15L/min:Ar
下向き用
アフターシー
ルドBOX
拘束
ジグ
パイプ
ガス溜り
拘束
ジグ
拘束
ジグ
下向き用
アフターシー
ルドBOX
パイプ
拘束
ジグ
ブロック
(a)ガス溜りが無い場合
(b)ガス溜りがある場合
図2 ガス溜りの効果模式図
図1 シールド不良溶接ビード外観
・原 因 パイプに曲率があり、シールドガスを供給し
てもパイプ外壁に沿ってシールドガスが散逸した。
図3 ガス溜りを設置した場合の溶接ビード外観
溶接トラブル
3.
配管材の不適正によりブロ一ホールが発生
・事 例 鉄製パイプで配管されたシールドガスを用いてTIG溶接
を行っていたら、ブロ一ホールと脆弱な溶接金属が得られた。
通常はステンレス材の溶接を行っており、特に問題は起き
ておりません。
・原 因 鉄パイプの配管は、パイプ内が
錆びることもあるので、そこを不活
姓ガス(Ar,He,)が通ると、ガス中に
酸棄、および水素が吸収され、その
影響で、ブローホールの発生や、脆
弱な金属間化合物(水素化物)ができ
る。ステンレス鋼の揚合は、このよ
うな因子には左右されずに良好な溶
接がなされる、
また、ゴムホースの配管でもゴム
の劣化で空気の混入が起きブロー
ホールの発生原因になる。
・対 策
写真1
シールドガスの固定配管は、
原則として鋼管による配管が好まし
い。鉄製配管は、経年変化により、
パイプの内面が錆びることもあるの
で、できたら使用しないほうがよい。
またゴムホースは劣化が早く、ひ
び割れなどが発生するので、透明の
ビニールホースの使用してください。
溶接トラブル
4.
チタン製熱交換器の管端溶接で溶接部が酸化した
・事 例 チタン製熱交換器の管
端溶接でアフターシールド
治具を使用して溶接を行っ
たら溶接部および管内表面
が酸化変色した。
・対 策 外径25mm以下の管の管端溶接にはアフターシールドガスおよびバッ
クシールドガスは使用しない。その代わりにトーチノズルはガスレン
ズ付きノズルを使用し、サイズもφ19mmなどの大き目のものを使用す
る。
また、管内面のシールドは参考図および写真のように、管内径から
0.5~1.0mm小さめのステンレス製丸棒を管内に挿入し、冷し金兼シー
ルド治具とする。(丸棒と管の隙間にトーチシールドガスが流入する
ようにする)
・原 因 アフターシールド治具
を取り付けて局所的な溶接
を行ったことにより、トー
チシールドガスが乱されて
溶接部表面が酸化した。ま
た、管内にバックシールド
ガスを流した場合でもトー
チシールドガスが乱される
原因になる。
図1
冷し金の参考図
写真1
使用例
溶接トラブル
5.
・事 例 チタン3種の25mm材
をTIG溶接で肉盛り溶接
を行った。初層溶接は
内外面とも、シールド
状況もよく健全なビー
ドが得られたので、2層
目以降もそのままの条
件で溶接を行ったらX線
検査でブローホロ-ホ一
ル欠陥が検出され検査
不合格となった。
多層盛り溶接でブローホールが発生
・対 策
初層溶接後、常温まで冷却されたところで、ワイヤブラシで溶接ビー
ド表面のテンパーカラーを研磨し、アセトンで表面の汚れ、開先内の塵埃
などを除去した後、溶接を行う。
溶接後のシールドガスのみでは冷却されないので、アフターシールド
ボックスを出たところで、母材部を水で冷却してやればテンパーカラーの
付着がなくなり防止されます。
チタンは変態点がないので急冷しても強度の劣化はありません。
なお、冷却に水を使用しますと次層以降に水が残ると水素化物という金
属問化合物ができ非常に脆くなるので、完全に水を拭き取って溶接部に混
入しないようにしてから溶接を行う。
・原 因 チタンは熱伝導度
が悪いので、溶接当初
は母材が加熱されてい
ないのでテンパーカラ
一は付着しないが、溶
接後半部以降になると
ビード表面にテンパー
カラーが付着する、そ
れが累積して酸化物と
してブローホールの発
生原因になったものと
思われます。
トーチ
テンパーカラー付着
溶接トラブル
6.
ジルコニウムとチタンの溶接部で異常酸化
・事 例 ジルコニウム(Zr702 1) )とチタン(2種)の異材
継ぎ手部の溶接金属で異常酸化が生じた。
(P.1/2)
・原 因 ジルコニウム(Zr702)とチタン(2種)の異
材溶接をジルコニウム(Zr702)の溶加棒にて溶
接を行った。
溶接まま(As Weld)では良好な溶接継手が得
られたが、550℃および625℃の大気中応力除去
熱処理を行ったところ、溶接部の表面が異常酸
化によって白色スケール化した。
ジルコニウムの溶加棒を使用すると溶接金属組
成がZr 70~90%程度となり、大気中500℃以上で
は異常酸化する。
表1 ジルコニウム溶加棒使用時の溶接金属組成
写真1
異常酸化の写真
注1) ASME SB-551 Grade R60702
試験板No.
Zr + Hf (%)
溶加棒
99.5
TZ-1
81.8
TZ-2
83
溶接トラブル
・対 策
6.
ジルコニウムとチタンの溶接部で異常酸化
溶加棒はチタン(YTB340)を用いて溶接を行う。
写真2
表2
表3
(P.2/2)
チタン溶材使用時の写真
チタン溶加棒使用時の溶接金属組成
試験板No.
Ti (%)
溶加棒
99.9
TT-1
82.1
TT-2
73.7
チタン-ジルコニウム系合金の酸化(参考文献より別途作成)
Ti-Zr合金
各温度(℃) x 30分間での酸化増量(mg/cm2)
400
500
600
700
800
900
Ti-Zr(10%)合金
--
0
0
--
0
1.1
Ti-Zr(30%)合金
--
--
0
1.9
2.9
12.3
Ti-Zr(50%)合金
--
0.4
0.5
52.1
128.1
144.2
Ti-Zr(70%)合金
0.8
--
118.4
--
126.1
--
Ti-Zr(80%)合金
--
--
64.2
--
240.8
--
Ti-Zr(90%)合金
--
2.7
7.4
22.1
--
410.0
Ti-Zr(95%)合金
--
0.2
10.9
13.7
121.4
119.0
Ti-Zr(98%)合金
--
--
0.8
--
35.4
--
・引用文献
エル・エフ・ヴォ トヴィッ
チ、エ・イ・ゴロフコ:
便覧 金属と合金の高温酸化
(1980)(訳)遠藤敬一 (有)日・
ソ通信社
溶接トラブル
・事 例
7.
チタン管突合せ溶接で酸化トラブル発生
チタン管の突合せ溶接をティグ溶接で行っ
た。
管の直径は約100mm、長さは約100mmで表側か
ら溶接し、アフターシールド治具を使用した。
表側はきれいに溶接できたが、裏側の溶接部
は酸化した。
・対 策
チタン管内部もバックシールド治具により、
アルゴンガスでシールドする。バックシールド治
具の構造は、溶接管の長さや形状により、個別に、
溶接技術者が独自に設計・製作する。
・原 因
チタンティグ溶接では、アフターシールド
と共に、バックシールドが必要である。
今回のトラブルの原因はバックシールドを行わ
なかったため、管内側の空気が溶接部裏側から溶
融金属を酸化したものである。その状態を図1に
示す。
参考のために、1例を図に示す。
図3 チタン管突合せ溶接における
バックシールド治具の例。
図1
バックシールド不良によるビードの
酸化状態の外観写真(カラー)。
((社)日本チタン協会・産総研共同研究より)
・引用文献
チタンの溶接技術 上瀧著 (社)日
本チタン協会監修 日刊工業新聞社 p。104
溶接トラブル
8.
チタン材ティグ溶接時の溶接始端と終端における
酸化発色トラブル
(P.1/2)
・事 例
チタン板のティグ溶接を行った。
アフターシールド治具、バックシールド治具を 使用し、ガスも自動で供給しビードオンプレートによる再現
実験を行った。 その結果、図1-1, 1-2, 1-3 に示すように、溶接ビード始端と終端が酸化発色した。
図1-2
シールド不良始端部
図1-3
シールド不良終端部
図1 150mm長さx50mm幅x1.5mm厚さチタン
板の溶接ビード
・原 因 チタンティグ溶接では、アーク発生前後にシールドが必要である。これをプリフローとアフターフローと
いう。
自動溶接ではガスのオンオフを自動設定している。チタン溶接の場合はステンレス鋼に比べてはるかに長い
プリフロー時間とアフターフロー時間を設定することが必要である。
本ケースでは、このプリフロー時間とアフターフロー時間の設定時間が短かすぎたことが原因である。
溶接トラブル
8.
チタン材ティグ溶接時の溶接始端と終端における
酸化発色トラブル
(P.2/2)
・対 策 溶接電源のコントロールパネルでプリフロー時間とアフターフロー時間をチタン溶接用に長く設定する。具
体的なプリフロー時間とアフターシールド時間の設定は溶接部の構造、板厚、入熱量、溶接速度などで決る。
プリフロー時間、アフターフロー時間をそれぞれ30秒とした結果を図2の1,2,3に示す。始端部、終端部
とも酸化発色がなく、良好な金属色の結果が得られた。
図2の1,2,3、に=プリフロー30秒、アフターフロー30秒でのチタンTIG溶接外観(ビードオンプレート)。
図2-1 プリフロー・アフターフロー各30秒の
チタンTIG溶接外観
・引用文献
チタンの溶接技術
上瀧著
図2-2 良好なプリフ
ロー始端部
(社)日本チタン協会監修
図2-3 良好なアフ
ターシールド終端部
日刊工業新聞社
p。91
溶接トラブル
9. チタンすみ肉溶接のブローホール
・事 例
ティグ溶接後にすみ
肉継手の表面を研削したら、
内部からブローホールが出
てきた。
開先は切削加工後に研磨
・脱脂をしている。アフー
シールド、バックシールド
は実施。溶加材は使用して
いない。
(P.1/2)
・原 因 溶接中に溶融池に入り込んだ不純ガスが、溶融金属の凝固前に外部
に逃げ出すことができずに閉じ込められたのがブローホールである。
従って、アーク雰囲気中に酸素・窒素・水素などの不純ガスを混入さ
せないことが重要となる。むやみにガス圧を上げると流速が速くなり、
乱流を起こしてシールドガス中に空気やほこりなどが混入する恐れがあ
るので、流速を落として流量を増すことが必要であるが、それでもブロー
ホールを防止できなければ、ガス経路に問題がある可能性が高い。
・対 策 1/2. トーチ先端、ガスホース、配管である場合は継手部などの部位で露点または水分量をチェックす
る。チタン溶接では水分量を数ppm程度にしないとブローホールを完全には防止できないとも言われている。表1
に露点と水分量との関係(1)を示す。
表1
露点と水分量との関係
単位:
volppm
℃
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
-8
-9
0
6032
5553
5110
4698
4318
3965
3639
3338
3059
2802
-10
2565
2346
2145
1959
1788
1631
1487
1354
1233
1121
-20
1019
925.3
839.6
761.3
689.7
624.4
564.8
510.5
461
416
-30
375
337.8
304
273.4
245.6
220.5
197.7
177.1
158.6
141.8
-40
126.7
113.1
100.8
89.82
79.93
71.06
63.11
55.99
49.62
43.92
-50
38.84
34.31
30.28
26.68
23.49
20.66
18.14
15.91
13.94
12.2
-60
10.67
9.31
8.117
7.067
6.145
5.336
4.628
4.008
3.466
2.993
-70
2.581
2.223
1.911
1.641
1.407
1.204
1.029
0.878.0
0.7479
0.6361
-80
0.5401
0.4578
0.3874
0.3272
0.2759
0.2323
0.1952
0.1637
0.137
0.1145
-90
0.0654
0.0794
0.0658
0.0547
0.0452
0.0373
0.0307
0.0253
0.0207
0.017
-100
0.0138
---
---
---
---
---
---
---
---
---
溶接トラブル
9. チタンすみ肉溶接のブローホール
(P.2/2)
・対 策 2/2.
使用するガスホースの適正化
ホース材質には色々あるが、鋼の溶接で多用されるゴムホース(一般的には赤色をして
いる)は水分、酸素などの透過性が非常に高く、チタンの溶接では用いるべきではない。チタンの溶接ではハイ
シールドホースを含むテフロン系を用いるのがよい。表2にガスホース材質と透過性との関係例(2)を示す。
表2 水分及び酸素の透過性比較
単位: 透過係数(cc・mm/sec・cm2・cmHg×1010)
ホース材質
水分
酸素
天然ゴム
30000
230
塩化ビニール
6300
6
ポリエチレン
2100
59
ナイロン
17000
0.38
PTFE
500
59
ハイシールドホース
0.03
0.024
注: 「ブローホール」「ピット」「ポロシティ」はそれぞれ下記のようにJIS
用語で定義されている。
ブローホール: 溶接金属中に生じる球状又はほぼ球状の空洞
ピット:
溶接金属の表面に開口した小さなくぼみ穴
ポロシティ:
溶融金属中に発生したガスによって、溶接金属部に生じたブローホール及び芋虫状に表
面まで穴のあいたピットなどの総称
従って、この項目で記載するトラブル事例では、「ポロシティ」と称するのが正式ではあるが、ここで
は広く普及している「ブロホール」を採用した。
・引用文献
(1)JIS Z 8806: 2001 氷の飽和蒸気圧表(付表 1.3)。 付表1.3から次の式で換算。
×10
ここに、P: 氷の飽和蒸気圧(Pa)
(2)(社)日本溶接協会 溶接棒部会 マグ・ミグ溶接の欠陥と防止対策
水分(volppm) = P/1.01325
溶接トラブル
10.
チタン重ねTIG溶接でビード形成不良
・事 例
チタン厚板にチタン薄板を重ねTIG溶接
する時、トーチ角度をつけて隅かど部を狙って
溶接したら、上板のチタン薄板のみ溶けた。
溶接電流 60A
溶接速度 40cm/min
アーク長 0.7mm
トーチシールド 20L/mm:Ar
アフターシールド 39L/min:Ar
バックシールド 7.5L/min:Ar
・対 策 上板と下板の密着性を確保し、トーチ角度を
つけないで真上から溶接する。
チタン薄板
チタン薄板
チタン厚板
(a)不適切な場合
チタン厚板
(b)適切な場合
図2 適正な重ね溶接方法
図1 ビード不良外観
・原 因
上板と下板との間に僅かでも隙間があると、
熱容量の小さい上板のみが溶融する。
図3 良好なビード外観
溶接トラブル
11.
チタン薄板のTIG溶接でビード形成不良
・事 例 0.2mmt程度のチタン薄板を突き合わせて
TIG溶接する時、適性溶接条件にもかかわらず、
一定の幅のビードが得られなかった。
板厚 0.2mm
溶接電流 80A
溶接速度 100cm/min
アーク長 2mm
トーチシールド 20L/mm:Ar
アフターシールド 39L/min:Ar
バックシールド 15L/min:Ar
平板バッキングプレート使用
・対 策
板厚に対して適切な幅の溝を有するバッキ
ングプレートを使用する。
チタン薄板
チタン薄板
バッキングプレート
バッキングプレート
板厚の約10倍程度
(a)不適切な溝幅の場合
(b)適切な溝幅の場合
図2 ビード形成に及ぼすバッキングプレート幅の影響
図1 ビード幅不良ビード外観
・原 因
バッキングプレートの溝の幅が狭すぎて、
不均一な熱のこもり方となり、これがビード形成
に反映された。
図3 良好なビード外観
溶接トラブル
・事 例
12.
チタン薄板のTIG溶接で溶融池形成不良
0.2mmt程度のチタン薄板を突き合わせ
てTIG溶接する時、適性溶接条件にもかかわら
ず、クレータ部付近で溶融池ができなかった。
板厚 0.2mm
溶接電流 75A
溶接速度 100cm/min
アーク長 2mm
トーチシールド 20L/mm:Ar
アフターシールド 39L/min:Ar
バックシールド 7.5L/min:Ar
・対 策
適切な幅の溝を有するバッキングプレー
トを使用するとともに、チタン薄板の拘束を強め
る。
拘束板
チタン薄板
チタン薄板
バッキングプレート
バッキングプレート
板厚の約10倍程度
(a)不適切な溝幅の場合
(b)適切な溝幅の場合
図2 ビード形成に及ぼすバッキングプレート幅の影響
図1 ビード形成不良外観
・原 因
バッキングプレートの溝の幅が広すぎて、
突き合わせたチタン板先端が下降し、実質的な
アーク長が拡大した。
図3 良好なビード形成外観
溶接トラブル
13.
チタンクラッド鋼板を板継ぎで割れ発生
・事 例 図1に示すようなチタンクラッド鋼板の板継
ぎ部でチタン当板の溶接を行ったところ、当板溶
接部に割れが生じた。
・原 因 溶接金属にクラッド母材の鉄が溶け込み、脆
弱なFe-Ti金属間化合物が生成されたため。
チタン当板
チタン材
チタン溶接部
鋼材
図 1
写真 1 チタンクラッドの
写真2
溶接部の断面写真 写真3
断面写真
・対 策
チタンクラッド
鋼板の板継ぎ溶接では、
図2のようにチタンと鋼が
直接融合しないようにそれ
ぞれ同種材同士が溶接でき
る開先形状にする。
図2
割れ部のミクロ
写真
・引用文献 チタンの加工技術 (社)日本チタン
協会編
当て板の種類
P.130
溶接トラブル 14 .チタンTIG溶接トーチシールドガス純度不良による曲げ割れ
(P.1/3)
・事 例 厚み3mmの純チタン板(JIS H 4600 TP340C)を純度99.95%のArをシールドガスとして、TIG溶接で突合せ溶
接を実施した。溶接ビードの外観は図1に示すように金色を呈しており、良好であった。しかし、溶接継手の
曲げ試験では、図2に示すようにビード止端部に割れが生じた。
図1 溶接ビード外観
(A)余盛除去
(B)溶接まま
図2 曲げ試験後の割れの発生状況
溶接トラブル 14 .チタンTIG溶接トーチシールドガス純度不良による曲げ割れ
(P.2/3)
・原 因 チタンは活性金属であるため、約400℃以上の温度にさらされると酸化が進行する。図3に示すように、
トーチシールドガスのAr純度が低下する(酸素濃度が増加する)と溶接金属の酸素量が上昇し、図4に示すよう
に硬さが上昇した。アフターシールドガスの溶接金属の酸素量、硬さへの影響は、トーチシールドガスに比べ、
変化が少なく、表層のみ酸化が発生していることが伺えられる。また、トーチシールドガスの純度の低下はタ
ングステン電極損傷を発生させ、図5に示すように溶接金属中にタングステン電極の巻込みがあることをX線
透過試験により確認した。従って、曲げ試験における割れの原因はトーチシールドガス純度不良による溶接金
属の硬さの上昇とタングステン電極の巻込みが考えられる。
アフターシールド
トーチシールド
0.18
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
溶接金属の硬さ(HV,P=2.97)
溶接金属の酸素量(mass%)
アフターシールド
0
500
1000
1500
2000
2500
シールドガス中の酸素濃度(ppm)
図3 溶接金属の酸素量に
及ぼすシールドガス中
の酸素濃度
トーチシールド
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
0
500
1000
1500
2000
2500
シールドガス中の酸素濃度(ppm)
図4 溶接金属の硬さに
及ぼすシールドガス
中の酸素濃度
タングステン電極の巻込み
図5
溶接金属におけるタングステン電極の巻込み
(X線透過試験結果・印画紙)
溶接トラブル 14. チタンTIG溶接トーチシールドガス純度不良による曲げ割れ
・対 策
(P.3/3)
トーチシールドガスにおいて、Arガスの純度は99.99%以上必要である。アフターシールドガスにおいても、
同様な純度のArガスを用いると、図6のような酸化色が無い溶接ビードが得られ、曲げ試験においても、図7に
示すように割れが無く、良好な結果が得られた。また、タングステン電極の巻込みも見られなかった。純度
99.99%以上のArガスは一般的に工業用Arボンベとして入手可能である。
図6 溶接ビード外観
(A)余盛除去
図7
(B)溶接まま
曲げ試験後のビード外観
溶接トラブル
15.
チタン硬化肉盛時の溶接割れ
・事 例
チタン製バルブ部品の硬化肉盛をしたが、肉盛不足があり、
再度その上から肉盛を行った所、硬化肉盛部に割れが発生した。
・原 因 硬化肉盛処理を行った
部分は、常温では、伸びは
ほとんどなくその上に肉盛
を行った為、溶接時の熱歪
で割れが入ったと考えられ
る。
写真1 溶接外観溶接割れ部
・対 策
硬化肉盛を行った部分は、常温では、伸びがほとんどない為、肉盛補修する前に、溶接物全体を加温し、
熱歪の緩和を図る。また、溶接後も急冷を避け、保温箱などに入れ、時間をかけて冷却する。
溶接トラブル
16.
TIG溶接(Ar-H2シールドガス)途中で溶接部に割れ発生
・事 例 ステンレス鋼と同じシールドガス(Ar-H2)を用いてTIG溶接
を行ったが、加工途上で溶接部に割れが生じてうまく加工がで
きない。
・原 因
チタン材に水素(H2)ガスを用
いて溶接すると、溶接部の表面変
色はなく、銀白色をしているので、
外観検査では良好と認められるが、
機械試験をすると、溶接金属部に
脆弱な水素化物が発生し、極端に
伸びが低下し、溶接金属部より割
れを生ずる。
・対 策 チタンをTIG溶接する場合は、
使用するガスはJIS K 1105アル
ゴンガスを用い、溶込形状を改
善するには、ヘリウムガスまた
はアルゴンガス+ヘリウムガスの
混合ガスを用いるとよい。
チタンの溶接には、間違って
も水素ガスを使用してはならな
い。
溶接トラブル
17.
化学工業機器のマンホールカバーから漏れ発生
・事 例
チタンクラッド製の化学工業機器で、マン
ホールカバーのガスケット座取り付け溶接部が腐
食し、カバー部より漏れが生じた。
(P.1/2)
・原 因
当該溶接部に通常の純チタン溶加棒棒を
使用したために、隙間腐食を生じて漏れが起きた。
液だまり部分チタンが自由表面になっている場
合は完全な耐食性を示すが、フランジのガスケッ
ト当り面などは内部液体の液溜まり等によって隙
間腐食が生じる。
液だまり部分
図1
隙間腐食箇所
溶接トラブル
17.
化学工業機器のマンホールカバーから漏れ発生
(P.2/2)
・対 策 溶接材料にチタンパラジウム合金の溶接材料を使用する。
チタンの耐隙間腐食性に及ぼす合金元素としてパラジウム(Pd)の添加が一般的である。JIS Z3331において
もYTB270Pdなどのチタンパラジウム合金の溶接材料は規格化されている。
図2
・引用文献
チタンパラジウム合金溶接材料使用箇所
チタンの加工技術 (社)日本チタン協会
6.2項
溶接トラブル
18.
チタンと鋼の異材溶接割れ
(P.1/2)
・事 例
自動車排気系部材は図
1に示す全チタン製の特徴(
意匠性、軽やかな排気音等)
を生かしつつ経済性とも両立
させるため一部にステンレス
鋼を併用して製作されること
が多く、チタンが異種金属と
溶接されることがある。
図2はJIS第2種純チタンと
SUS304ステンレス鋼をTIG溶
接した事例である。溶接ビー
ドの表面のステンレス鋼側の
溶融境界と溶接金属内に大き
な割れが生じその破面は平坦
で脆弱な破断を示唆しており、
またビード表面にも多数の割
れが認められる。
破面(ステンレス鋼側のSEM観察)
図1 全チタン製自動車排気系部材
[株式会社 クロススポーツレーシング殿ご提供]
(なお青色、金色の部分は溶接後の着色処理による)
20μm
SUS304
割れ
Titanium
1mm
破面(チタン側のSEM観察)
図2
溶接金属に生じた割れの例
20μm
溶接トラブル
18.
チタンと鋼の異材溶接割れ
(P.2/2)
・原 因 TiとFeが溶融混合された際に
形成される脆弱な金属間化合物に、
溶接の冷却過程での収縮応力が作
用して割れが生じたものと判断さ
れる。その理由を考える上で、図
3に示すTi-Fe系状態図が参考と
なる。状態図では、極めて脆弱な
ことが知られている金属間化合物
TiFe、TiFe2が広い温度範囲に存
在しており、チタンとステンレス
鋼とが溶融混合する溶接金属には
これらの金属間化合物が容易に生
じうる。ステンレス鋼の主要構成
元素であるNi,CrとTiすなわちTiNi系,Ti-Cr系についても同様のこ
とが言える。
チタンと混合溶融された図2の
溶接金属は、図4に示すように
ビッカース硬さ(HV)で550-8
30と極めて硬く脆弱となってお
り、この組織ができることが溶接
時の割れの主原因である。
図3 Ti-Fe系状態図
(金属間化合物
TiFe、TiFe2が存在)
Titanium
SUS304
HV554
HV191
HV172
HV830
400μm
図4
・対
溶接金属のミクロ組織とビッカース硬さ
策 割れ防止には金属間化合物を形成させないこと、すなわちチタンとステンレス鋼を溶融混合させない
ことが必要であり、たとえば、爆着、固相接合等によりチタン/ステンレス鋼が予め接合されたいわゆるト
ランジションジョイントを介して、チタン同志、鋼同志をアーク溶接する方法が有効である。
他の方法として、接合強度は低くなるが、ろう付け法の適用が有効な場合もある。
溶接トラブル
20.
チタン合金溶接部の高温塩化物による応力腐食割れ
・事 例 チタン合金(Ti-6Al-4V)と純チタン(3種)
・原 因 高温塩化物環境におけるチタン合金の応力腐
食割れが原因。
チタン合金(Ti-6Al-4V)+純チタン(3種)の
溶接拘束割れ試験片(溶加棒YTB480)を製作し、
溶接のまま及び応力除去熱処理(725℃ x 1時
間・真空焼鈍)をしたものについて、環境条件
と試験温度における割れ感受性を調査した。
との異材溶接継手を溶加棒YTB480にて溶接したと
ころ、チタン合金(Ti-6Al-4V)溶接熱影響部の
みに使用後数ヶ月で割れが発生した。なお、溶接
後熱処理は行っていない。
設計温度は250℃~430℃で、割れ近傍に付着し
ていたスケール中にCl-を検出した。
環境条件:Cl-付着 有り・無し
試験温度:420℃大気中
① 溶接のままでCl-付着無しでは、割れは発生
しない。
② 溶接のままでCl-付着有りでは、割れが発生
する。
③ 応力除去熱処理したものでは、Cl-が付着し
ても割れは発生しない。
④ 応力腐食割れは異材溶接が直接原因ではな
い。
・対 策
チタン合金(Ti-6Al-4V)と純チタン(3
種)との異材溶接継手を溶加棒YTB480にて溶接し、
溶接後熱処理を行う。熱処理は725℃ x 1時間・
真空焼鈍とする。
純チタン
(3種)
35o 2 35o
+0
-0.05
2
5 5
φ30
φ26±0.1
φ30
+0
-0.05
5
チタン合金
(Ti-6Al-4V)
40
2
ティグ2層盛り
(YTB480)
+0.05
φ30 -0
φ75±0.1
・引用文献
高村 昭:日本金属学会会報第8巻第10
号(1969)、P.698
図1
試験片の詳細
写真1 塩化物付着
420℃ x 24hr