ごあいさつ 信州大学 SVBL 長 小西 哉 信州大学 SVBL の 2014 年度の活動報告書が完成いたしました.信州大学 SVBL の 1 年間の活 動成果をご一覧いただけましたら,ありがたく存じます. 本 SVBL では運営委員会,専門部会,SVBL 専任助教,事務職員,技術補佐員,研究員が一体 となって,SVBL の事業を企画,運営しております.2014 年度は信州大学 SVBL 開設から 10 年 が経過し,創立 10 周年記念シンポジウムを開催いたしました.また,全国の VBL 関連組織の 担当者が参集して,VBL の組織・運営について意見交換する場である「全国 VBL フォーラム」 が信州大学繊維学部キャンパスで開催されました.さらに,2013 年度まで信州大学内の行事と して実施してまいりました「ベンチャーコンテスト」が,長野県や県内大学・高専などの協力 を得て「信州ベンチャーコンテスト」として,全県的なイベントに発展し,開催することがで きました.その中から具体的な起業例が生まれるなど,大きな成果を納めることができました. 本 SVBL は長野県上田市にある繊維学部キャンパスに設置されているため,従来は繊維学部 キャンパス中心のサービス提供でしたが,SVBL スタッフの充実に伴い,信州大学の他キャンパ スへも,サービス提供できるようになりました.松本キャンパスにおける全学 1 年次向け共通 教育の授業科目として,2013 年度前期から「ベンチャービジネス概論」を開講しております. 新入生のチャレンジ精神の鼓舞と,ベンチャー意識の啓蒙活動の全学展開を進めております. また,学生のベンチャー・マインド(チャレンジ精神)醸成を目的とした「プロジェクトマネ ジメントセミナー」などの取り組みを継続し,学生の意識を高める努力を続けております. 信州上田の地場産業であった養蚕業の資源樹木である桑の活用方法を研究開発する組織「桑 まるごと活用塾」,SVBL に設置された分析・加工機器の利用技術を学生が自主的に学習・習得 する機器エキスパート活動「P-DEX」 ,学生による新しいものづくり活動,信州の中山間地の活 性化を目指すプロジェクトなど,信州大学の構成員である学生や教職員と,地域企業や地域社 会との連携に基づくプロジェクトを展開しております. 柔軟な発想,創造性,チャレンジ精神に富む若者を育成し,新しい産業の芽となる独創的な 研究開発に取り組む意欲の高い若者たちの拠点となるべく,信州大学 SVBL は引き続き多様な 活動を展開して参ります.関係各位の一層のご支援を賜りたく,謹んでお願い申し上げます. 信州大学 サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー 活 動 報 告 書 平成 26 年度 目 次 ごあいさつ Ⅰ. ベンチャー教育活動 1. セミナー················································· 1 2. 展示会ツアー············································· 4 3. 機器エキスパート(P-DEX)養成事業 ························ 5 4. ものつくり隊支援········································· 12 5. 機器講習会··············································· 13 6. 研修支援················································· 14 7. 研究者の招聘············································· 23 8. 共通教育講義「ベンチャービジネス概論」 ··················· 24 Ⅱ. ベンチャー創出支援事業 1. ベンチャー起業支援······································· 27 2. ながの創業サポートオフィス分室 ··························· 34 Ⅲ. SVBL 事業 1. 全国 VBL フォーラム ······································ 35 2. 10 周年記念事業 ·········································· 37 3. 信州ベンチャーコンテスト ································ 39 Ⅳ. SVBL 研究 1. プロジェクト研究 ········································ 43 2. 萌芽研究 ················································ 54 Ⅴ. 資料 1. 事業歴··················································· 59 2. 展示会(広報)··········································· 65 3. 業績リスト··············································· 67 Ⅰ. ベンチャー教育活動 1.セミナー ビジネスの基本,マネジメント能力の開発などに関する講演会やセミナー,演習を開催した. 1)キャンドル作りワークショップ 昨年開催した学生の持ち込み企画「P's Candle のキャンドル作りワークショップ」を,今年度は定期 的に開催し,参加者がそれぞれの感性で自分の好きな香りをつけたアロマキャンドルや透明度の高いジ ェルキャンドルを作った.制作を通し,ものづくり講習会ビジネスを体験した. 日時: 2014 年 4 月 21 日(月)18:00~21:00 2014 年 5 月 20 日(火)16:30~21:00 2014 年 6 月 17 日(火)16:30~21:00 2014 年 10 月 30 日(木)16:30~21:00 2014 年 12 月 22 日(月)15:00~21:00 2015 年 2 月 23 日(月)14:30~21:00 場所: 上田キャンパス SVBL 棟 104 室 講師: 小野口貴士 氏(P's Candle) (理工学系研究科 化学・材料専攻 2 年) 対象: 信州大学学生・教職員,一般 参加費: 500 円~(サイズによる) 2) 編集・画像ソフト GIMP 初心者講座 無料グラフィック編集・画像ソフトウェア「GIMP」の基本操作説明から応用までの講座を全 4 回コ ースで開催した.研究発表用の資料やサークルメンバー募集のポスターなどに使える見栄えの良い画像 の作成方法,無料で高機能のソフトウェアの使い方を伝授して頂いた. 日時: 2014 年 6 月 17 日(火) ,24 日(火),7 月 1 日(火),8 日(火)各 16:30~18:30 場所: 上田キャンパス講義棟 28 番教室 講師: 児玉 対象: 信州大学学生・教職員 参加者: 6/17 28 名,6/24 13 名,7/1 11 名,7/8 7 名 裕 氏(勝和堂) 1 3) 信州ベンチャーコンテスト 2014 事前セミナー 例年開催しているプロジェクトマネジメントセミナーの拡張版として, 「信州ベンチャーコンテスト 2014」の応募に向けた事前セミナーを,県内 3 か所を会場にして開催した.実践的な演習を通じての事 業計画の作成手法やビジネスプランの立て方,アイデアのまとめ方などを学ぶ場とした. 【上田会場】 日時: 2014 年 8 月 10 日(日)10:00~18:00,22 日(金)18:00~21:00 2 日間 場所: HanaLab. コーディネーター: 井上拓磨 氏(HanaLab.) 講師: 堤孝志氏,飯野将人氏(ベンチャーキャピタリスト) 【長野会場】 日時: 2014 年 8 月 19 日(火)20 日(水)2 日間 場所: 長野工業高等専門学校 講師: 相馬豊恒 氏 各 10:00~17:00 第1セミナー室 ((株)価値創造研究所 代表取締役社長,(一社)21 世紀ニュービジネス協議会常務理事) 【松本会場】 日時: 2014 年 8 月 21 日(木)22 日(金) 2 日間 各 10:00~17:00 場所: 信州大学 理学部第 13 講義室 講師: 相馬豊恒 氏(同上) 対象: 信州大学学生・教職員,一般 共催: 長野県,HanaLab 後援: (一社)21 世紀ニュービジネス協議会 参加者:上田会場 8/10 10 名,8/22 8 名,長野会場 2 名,松本会場 7名 4) 短時間でつかむ!知的財産権セミナー 毎年実施している知的財産権セミナーを,今年は各キャンパスで開催した.学生(研究)だけでなく, 企業で商品企画開発などを行うときも役に立つような幅広い内容を,身近な具体例を用いて基礎事項か ら丁寧に,かつポイントを絞って説明頂いた. 日時・場所: 2014 年 11 月 27 日(木) 16:20~17:50 上田キャンパス SVBL406 室 2014 年 12 月 4 日(木) 16:20~17:50 松本キャンパス 理学部 5 番講義室 ※ 11 月 26 日(水)長野(工学)キャンパス,12 月 1 日(月)南箕輪キャンパス開催について は,参加者が集まらず中止となった. 対象:信州大学学生・教職員 講師:篠塚由紀 氏 (株式会社信州 TLO 技術移転グループ) 参加者: 11/27 3 名,12/4 8 名 2 5) LCMS,SEM 体験講座 SVBL では,学生が主体となって分析装置の技能勉強会の企画・運営を行い,原理・操作技術を学ぶ 機器分析エキスパート(P-DEX)の活動を支援している.昨年に続き,上田キャンパス以外の学生を対 象に,走査型電子顕微鏡(JSM-6010LA, 日本電子製)と,今年は液体クロマトグラフ質量分析装置 (LCMS-2010A,島津製作所製)の,2 つの機器の集中講座を開催した. 日時: 2014 年 12 月 13 日(土)10:30~16:00 場所: SVBL 棟 2 階 201 室 対象: 信州大学の学生(上田キャンパス以外) 講師: 森脇洋 参加者: LCMS 准教授,掛川恵子 技術補佐員 11 名 (教育学部 2 名,農学部 3 名,医学部 2 名,工学部 2 名,理工学系研究科 2 名) SEM 7名 (教育学部 2 名,理学部 1 名,農学部 1 名,農学研究科 2 名,教育学研究科 1 名) 3 2.展示会・学会見学ツアー SVBL が掲げる「アントレプレナーシップ向上プログラム」 (平成 26 年度戦略的経費)の一環で,展 示会参加を通じて自主的に学ぶプログラムを計画し,学生のアントレプレナーシップを向上させる目的 で,下記の展示会の見学ツアーを行った. 1) JASIS 2014 主催:日本分析機器工業会,日本化学機器協会 会場:幕張メッセ国際展示場 実施日:2014 年 9 月 4 日(木) 参加者:3 名(P-DEX) 2) SCAN TECH 2014 主催:日本顕微鏡学会 走査電子顕微鏡分科会 会場:東京都市大学世田谷キャンパス 実施日:2014 年 9 月 12 日(金) 参加者:4 名(P-DEX) 3) 諏訪圏工業メッセ 2014 主催:諏訪圏工業メッセ実行委員会 会場:諏訪湖畔 諏訪湖イベントホール 実施日:2014 年 10 月 17 日(金) 参加者:6 名(小西研究室) 4) ファンケル総合研究所見学会 日時:2014 年 12 月 5 日(金)8:00~20:00(見学 13:00~16:00) 場所:株式会社ファンケル総合研究所(横浜市戸塚区上品濃 12-13) 参加費:無料(食事は各自負担) 参加者:15 名 4 3. 機器エキスパート(P-DEX)養成事業 1) P-DEX 養成事業報告 分析機器エキスパート (P-DEX)は,SVBL が保有する分析・加工装置の中から学習したい機器を 学生自身が選択し,その機器について操作技能を習得するため学生自らが学習計画を立案し,技能を獲 得するという取り組みである.特徴としては,上位の技能レベルを有する学生が下位の学生を指導する という Peer 教育( “教えることで学ぶ”)を実践している点である.2006 年に組織を立ち上げてからこ れまで 120 名以上の学生が参画し,本取り組みで得られたデータにより学術論文が学術誌に掲載(2 報) されるなどの成果を上げている(2009 年度信州大学功労賞受賞).また,本年度,学内版 GP(特別枠) に採択された.現状での問題点としては,機器が上田キャンパスにあることから,他キャンパスの学生 が参画・利用しにくいという点が挙げられる.今年度は,これまでの取り組みをさらに進化させ,上記 の問題点を解決すべく新たな活動を行った. 【活動内容】 ①100 時間以上のグループ学習活動 ②学習計画(機器の動作原理と機器操作の勉強会)を立案・実行 ③定期ミーティングの開催 ④学習・ミーティング記録の提出 ⑤機器の活用 ⑥機器技能レベル実技審査の受験 ⑦成果報告会における学習成果の報告 ⑧最終報告書(測定データも含む)の提出 さらに他キャンパスに活動を展開するために以下の活動を追加した. ①走査型電子顕微鏡(SEM)および液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC/MS)の体験講座の実施(他 キャンパス向け) (Ⅰ-1 セミナー 参照) 【今年度参加人数】 11 名 【使用機器】 表面プラズモン共鳴測定装置(SPR,Biacore AB 製 Biacore X) 液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS,(株)島津製作所製 LCMS-2010A) 走査型電子顕微鏡(SEM,日本電子(株)製 JSM-6010LA) 【技能検定】 機器ごとに技能レベルを設定 (Ⅴ-1 別紙資料 1 参照) 初級: 分析装置の取扱が可能であり,測定原理を理解している. 中級: 高度な分析技能を持ち,初級者に対して基本技能の指導ができる. 上級: 分析経験が豊富で,学内教職員や学生に対しての技術指導ができる. 5 液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS) 12 月 11 日(木)14:30~(中級) SVBL201 室 審査員:中西弘充(SVBL 助教) ,掛川恵子(SVBL 技術補佐員) 表面プラズモン共鳴測定装置 (SPR) 12 月 17 日(水)14:30~(初級),12 月 19 日(金)14:30~(中級)SVBL 棟 201 室 審査員:中西弘充,掛川恵子,土屋摂子(繊維学部技術職員),大熊ひとみ(SVBL 研究員) 走査電子顕微鏡(SEM) 12 月 2 日(火)9:00~(初級,中級) SVBL 棟 201 室 審査員:中西弘充,掛川恵子,土屋摂子 【修了者一覧】 液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS) (中級)生物機能科学課程 3 年 八木瑞貴 生物資源・環境科学課程 3 年 増田礼子 表面プラズモン共鳴測定装置(SPR) (中級)生物機能科学課程 3 年 伊藤美穂,田村朋宏 生物資源・環境科学課程 3 年 増田礼子,田中佑磨 (初級)生物機能科学課程 2 年 足立晴彦 走査型電子顕微鏡(SEM) (中級)材料化学工学課程 3 年 黒岩愛里 (初級)バイオエンジニアリング課程 2 年 柴田 誠 応用化学課程 2 年 乾 滉平 【活動報告会】 日時:2015 年 1 月 22 日(木)16:30~17:30 場所:講義等 10 番講義室 発表団体:P-DEX(SPR,LCMS,SEM 各班) ,桑まるごと活用塾 【コンテスト応募】 2015 年 2 月 28 日(土) ,3 月 1 日(日)第 4 回サイエンス・インカレ SPR 班ポスター発表 発表番号 206「表面プラズモンを利用したハウスダストの簡易評価方法の開発」 活動報告会にて修了証授与 サイエンス・インカレにて 6 P-DEX の概要と活動報告 代表 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 田村朋宏 1. P-DEX とは P−DEX とは Project –Device Expert の略で,機器分析エキスパート集団のことである.自分たちで 研究テーマを考え,機器を用いて研究を進めて行く団体である.全て研究を自分たちで考えるのではな く,先生方がバックアップしてもらえるおかげで,無理なく進められるのが特徴である.研究結果は学 生成果報告会で外部に発信する機会がある.また,秋に技能検定という機器を使えるのかどうか審査さ れる機会もある.P-DEX は研究に興味がある人,何か大きなことに挑戦したい人が集まり,分析機器 について楽しく学んでいる. 2. 活動成果 P-DEX では,SVBL 棟に設置されているいくつかの分析機器を用いて班ごとに活動している.今年 度は昨年度に引き続き LC-MS,SPR,SEM に分かれて活動してきました.夏休み前までは,勉強会で 原理や使用方法ついて学んできた.次に上級生の下で実験が行われた.ここでは実際に分析機器に触れ, 操作の仕方や実験技術を学んだ. 1 月 22 日には桑まるごと活用塾と合同で成果報告会を開催した. 我々が今年度取り組んだ成果を伝えることができた.また,SPR 班からは文部科学省主催のサイエン ス・インカレに出場することが決まった. 3. 活動で得られたもの 活動することで,研究室配属前に様々な分析機器を扱え,専門分野以外の機器を扱い,実習を行うこ とができた. 学生主体の団体であるので自分の意見,考えが反映されやすいというのも特徴である. こ のため,実習を通じ発想力や行動力を向上させたり,専門分野以外の幅広い知識,技能を身につけるこ とができた.また,分析機器展など外部へ出向く機会や成果報告会でプレゼンする機会もあり大変勉強 になった.こうして,自分の興味を持ったことについて研究することができるだけでなく,発表する能 力も同時に養うことができた. 4. 所感 P-DEX で活動してきたことで研究の進め方,機器の扱い方など研究に必要なスキルを身につけるこ とができた.と同時に改めて科学というものに興味があることを再認識することができた. 私が代表という立場になり掲げてきたことが「外部への発信」だ.これは私が二年生の時に実際にサ イエンス・インカレに足を運んだのがきっかけだ.P-DEX からも出場が出来たらと思い活動してきた. 実際にその目標は周りの方々の協力のおかげもあり達成することができた.このような P-DEX での活 動を研究室,社会に出てからの活動に活かしていきたい. 7 液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS) 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 八木瑞貴 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 増田礼子 1. 研究目的 昨年度の実験結果から,1 種類のコーヒー豆を用いて様々な抽出条件でコーヒーを淹れ,味の決め手 となると考えられるクロロゲン酸の濃度がどのように変化するかを調べる. 2. 実験 市販のドリップ式のコーヒー豆を用いて抽出温度を 90,80,70 度,抽出時間を 1,2,3 分の全組み 合わせである合計 9 サンプル用意した.抽出したサンプルを 500 倍に希釈し,フィルトレーションして 大きな分子を取り除いた後に,LC/MS によってクロロゲン酸の濃度を測定した. 3. 結果 それぞれのクロロゲン酸の濃度は下の表 1 のようになった. 表 1.サンプル中に含まれるクロロゲン酸の濃度(ppm) 表 1 より,時間に注目してみると抽出時間の長さはクロロゲン酸の濃度に関与していないと考えられ た.温度に注目してみると,抽出時間が同じであるときは温度が低い方がクロロゲン酸の濃度が高くな ると考えられた. 以上のことから,抽出温度が低いとクロロゲン酸の濃度が高くなり酸味が強いコーヒーに,抽出温度 が高いとクロロゲン酸の濃度が低くなり苦味が強調されたコーヒーになると示唆できる. 4. 今後の課題 濃度を測定した回数が少ないため,同じ条件で実験を繰り返してデータを確実なものとした後に,抽 出条件を知らない人に実際にテイスティングをしてもらい,推測の正確性を確かめる. 5. 所感 後期からの研究室配属により,SVBL の活動のための時間がなかなか確保できず,年度内に実験の結果 を確かなものにすることができなかった. 8 表面プラズモン共鳴測定装置 (SPR) 中級 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 伊藤美穂,田村朋宏 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 増田礼子,田中佑磨 初級 繊維学部 生物機能科学課程 2 年 足立晴彦 1. 研究目的 近年,オゾン層破壊や大気汚染など地球規模の環境問題が人体へ影響を与えると懸念されている.し かし,室内環境も人体へ影響を与えるのではないかと考え,ハウスダストに目を向けた.ハウスダスト について調査したところ明確な評価基準がないことに気付いた.また,Surface Plasmon Resonance (SPR:表面プラズモン共鳴測定装置)について学習を進めており,両者を組み合わせた室内環境にお ける新しい評価基準を確立できないかと考えた.評価基準を設けることで室内環境の可視化,そして改 善につながるかもしれない.そこで SPR を用いてハウスダストと擬似生体膜との相互作用から人体への 影響を調査することにした. 2. 実験 三人の方の協力を得て,掃除機で吸った各家庭のハウスダストを収集した.まずハウスダストの物質, 形状を調べるため SEM で観察した.次にハウスダストを緩衝液に懸濁し,フィルターにかけ,SPR を 用いてハウスダストとリポソームとの相互作用の測定を行った.リポソームを呼吸器系の細胞表面体の 擬似生体膜と見なし,測定結果から各家庭のハウスダストの違いを調査した.さらに,ハウスダスト懸 濁液の濃度の違い,ハウスダスト懸濁液中の成分の違いがどのように結果に影響を及ぼしたのかを調べ るために,濃度の代わりとなる濁度の測定をした. 3. 結果および成果 SPR による測定によってセンサーグラムが得られた.ここからハウスダストの残存率を算出した. これにより呼吸器系の細胞表面にどれくらい残存性があるのか数値化することができた.これは人体へ の影響の指標となり,ハウスダストを評価する上で一つの基準となるのではないかと推察した.また, Sample A, B, C それぞれでセンサーグラムの形状に違いが見られた.この形状の違いを新たな指標にで きないかと考え,傾きに着目し考察した.センサーグラムにおいて結合相と解離相における曲線の傾き は各時間のハウスダストとリポソームの結合度合および解離度合に比例し,傾きが 0 となった時は両者 の反応が平衡状態であることを示している.そこで,本実験で得られたセンサーグラムの傾きを参考に 複数のモデルを作成した.これによりセンサーグラムの形状の違いから各家庭のハウスダストをタイプ 別に分類し,その特徴を可視化するという新たな指標を見いだした.(別紙サイエンスインカレポスタ ー参照) 4. 今後の課題 サンプル数の増加を試みることで有意差を見出す.また,多角的にハウスダストを評価する. 5. 所感 実際に本研究で外部(サイエンスインカレ)へ出場することができた.色々な方から評価してもらい, とても有意義な二日間となった.と同時にまだまだ本研究は検討すべき項目が多くあるので,来年度は そこを重点的に補っていきたい.また,来年も出場したいと考える. 9 <別紙> 10 走査型電子顕微鏡(SEM) 繊維学部 材料化学工学課程 3 年 黒岩愛里 繊維学部 応用化学課程 2 年 乾 滉平 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 2 年 柴田 誠 1. 研究目的 走査型電子顕微鏡(SEM)装置の測定原理の学習と様々な観察方法の習得を目指す. 2. 活動計画 1) SEM の原理と基本操作の学習 2) EDS(エネルギー分散型 X 線分光器)による元素分析 3) 液体窒素を用いた凍結乾燥 4) イオン液体を用いた観察 5) 画像編集ソフト(GIMP)の講習会(6/17,6/24,7/1,7/8)への参加と SEM 画像の着色 6) SCAN TECH への参加(9/12) 3. 結果および成果 今年度から加入した班員が各自で機器の立ち上げから観察までの操作方法を身に付けた. SCAN TECH(顕微鏡学会主催)に参加し,研究発表を聞いた.研究発表を聞くことにより最 新の観察方法や技術に触れ,今後の活動の方針に参考として取り入れることができた.その中 で紹介された新しい観察方法の一つであるイオン液体を用いた観察を自分たちでも行った. GIMP(画像編集のソフト)の講習会へ参加し,講習会の内容を応用し SEM 画像への着色を 行った. 4. 今後の課題 今年度は画像の着色や様々な観察方法に挑戦した.今年度は方法を学ぶことに重心を置いて活 動を行っていたが,今後はこれらを応用して学習した内容を発表できるような形として残した い. 例)SEM 画像に着色を行い冊子にする,外部に向けて情報を発信できるような活動をする. 個人の技術面の課題では観察したいものが鮮明に撮影できるよう,試料の種類により処理方法 を使い分ける判断ができるようになることである. イオン液体を用いた観察方法は新しい方法であり,まだ扱いが難しい.観察に使用するにはイ オン液体について学習を重ねる必要がある. 5. 所感 昨年度扱っていない画像の着色やイオン液体を用いた観察などに挑戦したことにより活動の幅が広 がったと感じる.しかし,できることが増え活動の選択肢が増えた分,成果として見える形にするため にどれを重点的に行うかを決めて活動をする必要があると感じた.また新しい観察方法などがあれば積 極的に取り扱い,技術と知識の向上を図ろうと思う. 11 4. ものつくり隊支援 SVBL では,ものづくりに興味のある本学学生に対し,繊維学部技術部の協力の下,小型工作機械や 工具が利用できる作業スペースの貸し出し,および材料費の支援を行った. 1)コマ合戦 繊維学部大会 SVBL に設置されている 3D プリンタを活用してコマを製作するコマ製作会を実施した.また,その コマを使用して,1 対 1 で戦うコマ合戦を開催した. コマ製作会 日時: 2014 年 8 月 6 日(水)13:00 ~ 17:00 場所: SVBL 棟 1 階 103 室 内容: ソリッドワークスを用いた 3D データの作成 3D プリンタを用いたコマの造形 講師: 学生団体 モック 参加者:2 名 コマ合戦 日時: 2014 年 8 月 28 日(木)10:00~ 場所: SVBL 棟 4 階リフレッシュスペース 参加者:10 名 2)作業スペース利用 小型工作機器を使って木工作品を製作したり,ミシンを使ってバッグ等を製作した(参加者各 1 名). また染色に興味のある学生のために,染色工房「アイズカンパニー」を訪問し(6 月 9 日) ,見学・体験 をさせていただいた(参加者 1 名) . 12 5. 機器講習会 教職員・学生の研修及び P-DEX の教育,SVBL 設置の測定機器の有効利用を図るため,下記機器に ついて講習会を実施した. 実施日 随時 実施場所 機器名・講習名 講師 分析走査電子顕微鏡(日本電子 JSM-6010 LA SVBL201 室 In Touch Scope)操作指導講習会 掛川 SVBL 技術補佐員 5 月 15 日(木) エネルギー分散型微小部蛍光X線分析装置 μEDX-1300 メーカー講習会 SVBL201 室 参加人数 63 名 11 名 島津製作所担当者 5 月 23 日(金) 液体クロマトグラフ質量分析装置 SVBL201 室 LCMS-2010A メーカー講習会 9名 島津製作所製担当者 5 月 23 日(金) 3D プリンタ講習会 SVBL103 室 20 名 原製作所 原氏 5 月 30 日(金) 空間電荷装置 メーカー講習会 ファイブラボ㈱担当者 4名 6 月 2 日(月) ガスクロマトグラフ分析装置 GC-2014 操作講習 SVBL201 室 5名 島津製作所製担当者 会 7 月 7 日(月) 透過型電子顕微鏡 JEM-2100 実技講習会 総研棟 1F TEM 室 ~9 日(水) 日本電子(株)村田 氏 7 月中旬~下 透過型電子顕微鏡 JEM-2100 実技講習会(初 総研棟 1F TEM 室 旬 心者,経験の浅い利用者向け) 技術部 篠塚 氏 12 月 10 日 (水) ラマン分光装置アップグレード 習会 メーカー講 Kaiser 社製 Hololab5000 ※掛川技術補佐員による学内教職員・学生に対する技術相談 SEM32 件,ラマン 14 件,μEDX 5 件,抵抗率計 3 件 3D プリンタ講習会の様子 13 SVBL201 室 ST ジャパン担当者 38 名 30 名 20 名 6. 研修支援 若手研究者が研究テーマを起業化へ結びつけることを目指して,実用化に向けた研究の展開や,起業 化の方策を探ることを目的とした,海外や国内の大学・研究所等の関連機関での研修を支援する. 1) 研修支援内容 本年度は下記 2 名の海外研修に対して,旅費・滞在費の支援を行った. 氏名 田島和弥 所属学年 研修先 修士課程 理工学系研究科 繊維・感性工学専攻 2 年 葛 鑫 研修期間 2014 年 5 月 1 日~ アメリカ ノースカロライナ州立大学 修士課程 理工学系研究科 (GE XIN) 機械・ロボット学専攻 2 年 2015 年 2 月 28 日 2014 年 10 月 9 日~ 韓国 2014 年 12 月 17 日 全北大学校 2)海外研修者報告(1) 氏名 重澤尚希(修士課程 理工学系研究科 繊維・感性工学専攻 研修期間 2014 年 2 月 9 日~ 研修先 香港理工大学(中華人民共和国香港特別行政区) 2 年) 6 月 30 日 受入担当者氏名 Professor John Xin 調査研修題目 水捕集繊維材料の開発 ◆ 研修目的 世界規模でおこる水不足の解消と砂漠化の阻止に繋がる研究. 解決手法として,霧から水源を確保する繊維シートの開発を行う. 上記を成し遂げるために海外研修によって以下のことを修得する. ・ 実験時の環境条件(温度,湿度など)の設定方法 ・ 試料の設置法,水捕集量の評価法 ・ 繊維の表面加工など,化学的な知識や技術 ◆ 研修概要 私は香港理工大学, Institute of textile and clothing において Prof. Xin の指導のもと,水捕集繊維材料の研究について,新たにプロジ ェクトを立ち上げ,実験を行った.香港理工大学では,研究者それ それが自立して研究を行うことが求められ,私も例外ではなく,留 学生というよりも1人の研究者として受け入れて頂いた.現地では, まず自分のやってきたことをプレゼンし,僕がどのようなことをや りたいかを問われた.そこから 2 人のドクターにも指導を受け,私 が日本で取り組んでいた研究と香港理工大学で行われてきた研究と 14 写真上 キャンパスの様子./下 研 究グループでハイキング. を組み合わせた新たなプロジェクトに取り組むこととなった.実験計画,実験装置の設計,測定方法の 考案,試料の作製,測定・評価という流れを5ヶ月の間に取り組んだ.ここでは,信州大学では行って いなかった,新しい実験装置を検討し,試料も Xin 研究室が得意とする表面加工の技術を使った化学的 なアプローチを試みた.毎週,ドクターとディスカッションを行い,月に1度は Professor の前でプレ ゼンテーションを行った.現地でのコミュニケーションはすべて英語で行われた.最も困難であったの は,ドクターとのディスカッションであった.私の英語力が低いことと私が強い自己主張ができない性 格であったため,私と指導してくれたドクターとの間に摩擦が生じることもあった.しかし,与えられ たのではなく,自分の立ち上げたプロジェクトであったため,自分の考えを納得しないで曲げることは できなかった.そこで,私は語学力を向上させなければならないと感じた.まずは相手の言っているこ とをしっかりと理解し,自分の主張を正確に表現しなければ有意義な話し合いができないからである. 私の場合は特にリスニング能力が必要と感じた.英語でコミュニケーションする際,相手の話す文章の 全てを聞き取れず,単語をつなげて理解していた.しかし研究のディスカッションの際には,会話の内 容を正確に理解していないことが,話の結論で食い違いを生じさせることがよくあった.香港の人は母 国語が広東語でありながら英語が堪能な人が多く,研究者レベルの人は北京語も話し,3 つの言語を使 えて当然という風潮である. そのような人々の中で生活し,私は日本にいるときには英語の勉強が苦 手であったが,言語の重要性を実感し,英語の学習に取り組んだ. さらに,言いたいことをはっきり と言うことの重要性を感じた.相手の感情を気にして,自己主張が弱かった私に対して,研究室のメン バーやルームメイトからも言いたいことを強く主張するようにアドバイスを受けた.中国本土から来て いたルームメイトが私に言った“Here is not Japan”という言葉は印象的であった. 次に困難に感じたのが,多くの研究者が閉塞的であった点である.これは中国のひとつの文化である ようにも思うが,研究のデータや技術に対するセキュリティが非常に高かったように感じた.したがっ て,自分のやりたいことや身につけたい技術であっても,半年で日本に帰ってしまう人間に簡単には教 えてくれないのが現実であった.向こうでは研究を盗まれるという危険性を常に考えていた.私も研究 室のメンバーやドクターから研究データの扱いなど注意を受けた.日本にいるときには考えていなかっ たことであったため違和感があったが,実際に起こり得ることなのだと実感した.ここで問題となった のが,研究に必要な知識や技術が入手できなかったことであった. しかし,半年間で大きな信頼を勝ち取るのは難しいというのが現 実であった.そこで,私は自分の持っている知識やデータなどを 交渉材料にして,必要な情報を得るという戦略に出た.できれば, 信頼しあってお互いに高め合うことができたほうが良かったと 思われるが,機密に対する信頼が薄くとも人間関係が悪化するよ うな空気ではなかったため,それも現地の文化に馴染むことだと 考えた. 以上のように困難なことに立ち向かいながら,短い期間で有益 な実験結果を得ることができた.研究の立ち上げから,結論を得 るまでを海外で行うことで言語力や交渉力を磨くことができた. コミュニケーション能力を海外で磨くことができたことは私に とって大きな財産であると思う.香港での研修は非常に有意義な 時間を過ごすことができた貴重な5ヶ月間であった. 15 写真 定期ミーティングの発表中. ◆ 活動経験談 a) 研修先における就労・教育システムの新たな知見 日本の大学と大きく違う点は,香港では大学院に行く人の多くは PhD に進み,研究者となる点である. したがって,マスターコースは1年で修了し知識を身につけ,その後 PhD として研究を行うことが一般 的であった.工業が盛んな日本では,大学院進学後,企業で技術者として働く人が多いため,修士の学 位が重宝されると思われるが,金融や不動産などが経済の中心である香港では,理系の多くの人が研究 者となるために修士課程と博士課程はセットで考えられている.また,国際都市である香港では授業も 英語で行われたり,留学生との交流も盛んに行われている. b) 研修先で印象に残った事柄(所属大学との比較など) まず感じたのが,大学の規模の違いであった.大学内には最新 の設備や立派な建物があり,私が滞在中にオープンした HKRITA の大きなビルは内装も外装も洗練されたデザインで存在感があっ た.中には,先端の研究設備と学生が気軽に使うことのできるオ ープンなミーティング設備などがあった.また,他の建物には, 4D シアターや服装をデジタルに着せ替える事できる鏡があるショ ールームなどもあり,開発されたプロダクトの展示はいたるとこ ろで行われていた.研究成果を実際の商品にして販売までおこな っていることも信州大学と違う点だと感じ,私の所属した研究室 でも香港理工大学のロゴが入った大きな装置やスポーツウエアな どが展示・販売されていた. 写真上 キャンパスの様子.奥の白 い建物が HKRITA./下 留学生の交 流イベントの小旅行. c) 後輩へのアドバイス (i) 研修先で活動を行うに際して注意する事柄 “ここは日本ではない”ということを色々な意味で理解しておくこと. (ii) 事前に必要な調査や準備について 私にとって留学は初めての経験で,さらに香港理工大学受け入れの第一号であったため,先方とのや りとりやビザ申請の手続きがスムーズに行えなかった.必要な書類や手続き上でわからないことは自分 で調べるよりも,素直に向こうの担当者や指導教官に聞いたほうがスムーズにいくと思う.また,概要 でも書いたように,海外の大学では学生と言うより研究者として受け入れられることがほとんどであり. 受け入れ先の研究室をしっかり調べてやりたいことを明確にすると良いと思う. (iii) 研修先での生活について 大学や寮ではレクリエーションの施設が充実していた.寮にもプールやジム,音楽室や学習室,食堂 やカフェなどがあった.物価は日本と同じか,少し安いぐらいに感じた.治安がとても良かったので夜 中でも外に出ることができた.香港の人々は私達がイメージする中国人とは違って,日本人に近い感覚 も持っているし,親日的な人が多い.英語がうまく喋れなくても,とても親切にしてもらった. (iv) その他 海外で研究活動することは,何をするにも初めての経験となり,与えられたことだけではなく,自分 が主体となって考え,行動していく必要がある.そのような経験は人間力が試され,将来どのような道 に進むとしても必ず役立つと思う.このような経験を学生のうちに積めたことには貴重でありがたく感 16 じている.起業を目指す際にも,グロール社会がますます進むこの時代において海外での経験が成功の ヒントとなるように思われる. 3)海外研修者報告(2) 所属・学年 修士課程 理工学系研究科 機械・ロボット学専攻 2 年 氏名 GE XIN 研修期間 2014 年 10 月 8 日〜12 月 18 日 研修先 全北大学校(韓国) 受入担当者氏名 Professor Kim Byoung-suhk 調査研修題目 スーパーキャパシタ用電極としての人毛活性炭/二酸化マンガン複合材料の作製及び 評価 ◆ 研修目的 有機廃棄物に由来する活性炭を用いた次世代のスーパーキャパシタの開発 ◆ 研修概要 はじめに 近年,環境汚染や地球温暖化等の環境問題解決のため,低炭素社会を目指したエネルギー革新が求め られている.今後は,太陽光および風力等の再生可能エネルギーを最大限有効活用する必要がある.再 生可能エネルギーの有効活用には,出力を安定させるための蓄電デバイスの性能向上が重要である.こ の中,電気化学キャパシタは,大容量でありながら急速充放電が可能である等の特徴を有しているため, ハイブリッド自動車等の補助電源や回生電力貯蔵装置,二次電池の代替デバイスや太陽光発電のエネル ギーバッファ等に用いられており,とくに注目されているデバイスである. 代表的な電気化学キャパシタである電気二重層キャパシタ(EDLC)は,電極および電解質界面におけ る,アニオン・カチオンの物理的な吸・脱着を利用している.そのため,静電容量の向上には,電極材 の比表面積の向上が重要となる.そのための EDLC の電極材として,活性炭(AC)が注目されている. AC は,高比表面積および軽量等の特徴を有する.この特徴から,EDLC の電極材として用いると,静 電容量の向上および小型・軽量化が期待できる. 近年,化石燃料の不足により,有機廃棄物由来の活性炭が注目を集めている.その 1 つに人間毛髪が 挙げられる.人間毛髪を用いて炭化処理及び賦活処理によって得られた活性炭(HHAC)は優れた導電性 および高比表面積を持った材料である. そこで本研究では,HHAC を用いた EDLC 用電極材料を作製する.また,HHAC の静電容量を更に 増加するために,高い理論静電容量を有する酸化マンガン(MnO2)を複合する.MnO2 は高い理論静電容 量を有する反面,導電性が低い.そのため,HHAC との複合により,高い静電容量および導電性を併せ 持った有機無機ナノコンポジット材料の作製が可能であると考えられる. 具体的には,人間の毛髪を原料として,二段階の炭化処理を行い,活性炭を得る.そして,この活性 炭に超音波処理及び過マンガン酸カリウムの水溶液を用いて高比表面積を有する活性炭及び MnO2 の 有機無機ナノコンポジットを作製し,MnO2/活性炭を複合させた電極材料の性能を評価した(Figure 1). 17 Figure 1. The flow diagram for the fabrication of HHAC and HHAC/ MnO2 nano composites. 実験方法 ・材料 人間毛髪は,信州大学の健康なボランティアから収集した.ナフィオン分散液(5wt%),イソプロパノ ール,過マンガン酸カリウムは Sigma-Aldrich 社製を用いた.水酸化ナトリウム,塩酸,硫酸,水酸化 カリウムは Wako 社製を用いた. ・人間毛髪を用いた活性炭の作製 人間毛髪は,イソプロパノールで十分に洗浄し,80℃で乾燥させた.洗浄された繊維を切断して(~5 mm)窒素雰囲気下において 300℃で 1.5 時間の予備炭化処理を行い,NaOH と混合し(重量比:NaOH: カーボン=2:1),窒素雰囲気下において 800℃で 2 時間の炭化処理を行った.炭化処理の昇温速度は 5℃/min である.得られた固体を1M HCl 溶液で洗浄し,粉末にして蒸溜水で洗浄した.そして濾過に より残留物を回収し,真空中において 80℃で乾燥させた. ・HHAC/MnO2 ナノコンポジットの作製 100 mg の HHAC を 10 mL の蒸溜水に投入して 30 分間の超音波処理で分散させた.分散させた HHAC 水溶液に一滴ずつ過マンガン酸カリウムの水溶液(10 mL)を滴下しながら強く撹拌した.混合後 12 時間以上撹拌した(回転速度:600rpm).以下の反応で HHAC の表面に MnO2 が生成した(4MnO4- + 3C+ H2O = 4MnO2 + CO32-+2HCO3-).9 種類の過マンガン酸カリウム水溶液[(HHAC の重量 / KMnO4 の重量) = 0.5, 1, 2, 4, 8, 10, 12, 14, 16]を用いた.本研究では,HHAC を A1,そして 9 種類の過マンガ ン酸カリウム水溶液の濃度に対応して,重量比 0.5 を A2,1 を A3,2 を A4,4 を A5,8 を A6,10 を A7,12 を A8,14 を A9,16 を A10 と表す. 評価 電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM, Hitachi)と透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL)を用いて,各試料 の形態を観察した.エネルギー分散型 X 線分析(EDS)を用いて,各試料の構成元素を測定した.窒素吸 着分析(BET,Micromeritics)を用いて各試料の比表面積及び細孔サイズを調べた.電気化学性能は Princeton 社(USA)の VersaSTAT 4 ワークステーションで行った.比較のため,一部の評価は A1,A2 および A8 だけで表示する. 結果および考察 毛髪繊維,A1 (HHAC),A2 (HHAC の重量/KMnO4 の重量=0.5),A8 (HHAC の重量/KMnO4 の重量 =12)の FE-SEM および TEM 写真を Figure 2 に示す.Figure 2 (a)および(b)から,人間の毛髪繊維は, 18 鱗状のラメラ構造を持っていることがわかった.このようなラメラ構造は,炭化処理および賦活処理後 も層状に保持された.また,焼成後に関しては多孔質構造が確認された.対して,MnO2 を複合したも のにおいては,Figure 2(c)では表面の凸凹が,Figure 2(d)ではスポンジ状構造が確認てきる.また,そ れぞれの TEM 画像より粒子状およびシート状の MnO2 が見られた.これは,KMnO4 濃度の違いによ る構造の変化であると考えられる. これにより,KMnO4 の濃度の変化で活性炭表面の MnO2 の形態を制御できることが確認された. エネルギー分散型 X 線分析(EDS)の結果を Figure 3 に示す.A2 から A10 までは,KMnO4 の割合 の減少に従って Mn と O の量が減少した一方,S はすべての試料において確認された.この,O および S はヘテロ原子として,静電容量に影響すると考えられる. Figure 4 に今回の各試料の窒素吸着等温線を示す.A1, A2 および A8 の比表面積はそれぞれ 1318.46, 106.83 および 1597.40 m2/g である.A8 が A1 より比表面積が高いのは,Figure 5 に示したメカニズ ムによるものと考えられる.超音波処理で活性炭の層状構造が破壊され,剥離して比表面積が向上した. さらに,MnO2 の存在が,剥離したシートを安定させた.この剥離過程で比表面積が向上したと考えら れる.この剥離した際の安定性は MnO2 の割合により異なるため,比表面積の変化につながったと考え られる. Figure 2. FE-SEM and TEM images of (a) human hair fiber, (b) human hair derived active carbon (HHAC, A1), (c)Weight HHAC: Weight KMnO4=1:2(A2), (d) Weight HHAC: Weight KMnO4=12:1(A8) Figure 3. A view of comparison of elements concentration changes for all samples. Figure 4. Nitrogen sorption isotherms of all samples from A1 to A10. 19 Figure 4 に今回の各試料の窒素吸着等温線を示す.A1, A2 および A8 の比表面積はそれぞれ 1318.46, 106.83 および 1597.40 m2/g である.A8 が A1 より比表面積が高いのは,Figure 5 に示したメカニズ ムによるものと考えられる.超音波処理で活性炭の層状構造が破壊され,剥離して比表面積が向上した. 更に,MnO2 の存在が,剥離したシートを安定させた.この剥離過程で比表面積が向上したと考えられ る.この剥離した際の安定性は MnO2 の割合により異なるため,比表面積の変化につながったと考えら れる. Figure 5 The mechanism of exfoliation after the ultrasonication progress and the adding of KMnO4 water solution. 各試料の静電容量は室温で 1M KOH,1M H2SO4 および 1M Na2SO4 三種類の電解質でサイクリック ボルタンメトリー(CV)測定によって評価した.Figure 6 は CV から得られた各試料の静電容量値である. A8 は 1M H2SO4 でもっとも高い静電容量を示した.更に,1 M KOH および 1M Na2SO4 においても比 較的高い静電容量を示した.これは,A8 が高い比表面積および適切な割合の Mn を有するためである と考えられる. 結論 HHAC/KMnO4 の混合比によって,活性炭表面の MnO2 の構造を制御し,活性炭及び MnO2 の有機無 機ナノコンポジットを作製した.A8 は,立体的なスポンジ構造を有し,A1 より高い比表面積を示した. A8 は,A1 と比較して約 1.5 倍の重量比容量を示した.この結果より,本研究で作製した HHAC/MnO2 複合材料は,キャパシタの電極材料として優れた性能を有するといえる. Figure 6 Cyclic voltammetry (CV) measurements in 1M KOH, 1M Na2SO4 and 1M H2SO4 aqueous solutions for all ten samples at room temperature over a potential range from -1.0 V to1.0 V respect to AgCl/KCl electrode by a scan rate of 5 mV/s. ◆ 活動経験談 留学先について 全北大学校(チョンブクだいがっこう)は全羅北道(ぜんらほくどう)の道庁所在地の全州市に本部 20 を置く大韓民国の国立大学である.韓国国立大学ランキングトップ10である.全州市は仁川国際空港 からバスで約3時間半のところにある.ビビンバで有名である.全北大学校は 1948 年に設置され,総 合大学で信州大学同様にたくさんのキャンパスがある.キャンパス面積は韓国において一番大きい. a) 研修先における就労・教育システムの新たな知見 研修先では毎日朝 9 時に登校し,夜 10 時後に帰宅することが求められた.研究室にいる時間が長い ので,効率を低下させずに,時間を有効に使うことが重要であった.今回の調査研修テーマだけではな くて,別の研究テームも並行して進んでいくので,時間を有効に使い密度の高い仕事ができているよう に感じた.韓国は日本と同じで,博士に進学する韓国人は少ない.一方,留学生が多い. 韓国の脳(Brain of Korea)というプログラムが存在している.昔の信大の COE と同じようなものであるが, 修士も含まれている.修士は月に 80 万ワン(約8万円)支給されるので,アルバイトをしないで,研 究に専念できる.就活は日本より遅くて就職率も低い.この点についてが,日本の方が学生に良いと思 う. b) 研修先で印象残った事柄(所属大学との比較など) 研究装置は日本より新しくて種類も多い.そして,1種類あたりに技術職員が一人専属で配置されて いる.日本の技術職員の役割と異なり,韓国の技術職員は装置のメインテナンスおよび測定全部を担う. 日本より測定速度が速くて精度も高い.問題も起こりにくい.しかし,学生の測定能力が低いままであ るというデメリットもある.新しい装置および専任技術職員で実験データで得やすいため,学部を卒業 するときに SCI に投稿する学生もたくさんいる. 修士課程は韓国語および英語の 2 種類の課程がある.英語課程を履修する韓国人学生が多い.また,英 語で修論を書くことも多い.信大より学生の英語力が重視される. c) 後輩へのアドバイス (i) 研修先で活動を行うに際して注意する事柄 研修中に研修先の方および研修先以外の企業の方と会うチャンスが多いため,自分の名刺を十分に用 意しておくと良い.また,研修先で装置を行う扱う時に,取り扱い方に十分気を付けた方が良い.私の 場合は,不注意で6M KOH 溶液で十万円ぐらいするパトリウム対電極を壊してしまった. (ii) 事前に必要な調査や準備について 滞在先の国でビザが必要かどうかをまず確認する必要がある.滞在期間や目的に合わせて申請する. また,現地の通貨は余裕を持って確保した方が良い.平均気温等を調べた上で,必要な服装を用意する. 英語圏以外の国に行く場合には,現地の日常会話を勉強しておいた方が良い.郷に入っては郷に従えの ポリシーが大切だと感じた. (iii) 研修先での生活について 研修中に自分で借りた一人部屋で生活した.洗濯室,シャワー室及びトイレはみんなで共用するので, 日本の寮生活と同じである. 学内にはコンビニも銀行も食堂もあり,とても便利だ. 三食とも,先生や研究室仲間と一緒に食堂で食べた.本部には食堂がいくつもあった.外食店およびデ 21 リバリーの種類も多い.安くてボリュームもあり,食堂に飽きたら,学外の中華料理,ピザ,焼き肉な どのレストランやファストフードを食べに行った.日本の居酒屋の代わりにフライドチキンやビールを 楽しめる店を利用した. 中国出身留学生がたくさんいたので,私は中国人留学生との距離を意識的に置いて,なるべく,韓国人 に話しかけたり,一緒に遊んだりした. (iv) その他 日本を離れて研修を行うことは大変であるが,貴重な経験が得られた.このチャンスを与えていただ いた SVBL に改めて感謝いたします. 22 7. 研究者の招聘 1)「温存の農村計画」座談会 SVBL のプロジェクト研究の一つである生物多様性保全を考える過程で,「撤退の農村計画」を提唱 するお二人の若手研究者をお招きし,すでに決断の時期を迎えた集落における先駆的な事例についてご 紹介いただきながら,将来の若者たちのために私たちが「いま」すべきことについて議論した. 日時: 12 月 3 日(水)16:00~19:00 場所: 松本キャンパス理学部 13 番講義室 対象: 信州大学学生・教職員,一般 講師: 林 直樹 氏(東京大学特任助教) 齋藤 晋 氏(特定非営利活動法人国土利用再編研究所副理事長) タイトル: 温存の農村計画:「少し引いて確実に守る」という選択肢 共催: 信州大学地域戦略センター 協力: 信州大学「地域戦略プロフェッショナル・ゼミ」 参加者: 22 名 2)「ヤドリギプロジェクト」座談会 ヤドリギプロジェクトを主宰する長野県松本市の NPO 法人「森林風致計画研究所」の副理事長であ る清水裕子氏をお招きして,都市景観の現状とともにヤドリギを核として異業種が繋がったビジネスネ ットワークが生まれるまでの経緯をうかがいながら,私たちの身近に潜む未利用の資源,見過ごされて いる価値の発掘と活用について考えた. 日時: 2015 年 2 月 6 日 (金) 16:00~18:00 場所: 松本キャンパス理学部 5 番講義室 対象: 信州大学教職員・学生,一般 講師: 清水裕子 氏 (NPO 法人森林風致計画研究所 森林美学・森林計画学研究者 信大農学部卒 副理事) 博士(農学) 共催: 信州大学地域戦略センター 参加者: 11 名 講師:清水裕子 氏 23 8.共通教育講義「ベンチャービジネス概論」 平成 26 年度共通教育科目の授業として「ベンチャービジネス概論」を松本キャンパスにて開講した. 授業科目名: 法・政治・経済の諸相 授業題目名: ベンチャー・ビジネス概論 対象学生: 全学 1 年生 英文授業名: Introduction to Venture Business 授業担当教員:中西弘充(SVBL) 副担当教員: 小西 哉,林 靖人(繊維学部,地域戦略センター) 期間: 前期 曜日・時限: 水曜日・5 時限 受講者数: 33 名 【授業の概要】 本授業では自らが会社をつくる(ベンチャーを起業する)ことに限定せず,研究室や就職後に企業の 組織に入って活躍する場面においても必要である,実践的なプロジェクト遂行に関する知識と能力を, グループワークで学ぶ.身近なところにある課題を見つけ,どのようにしたら解決できるかを考え,ど のように実行に移せるようになるかを計画する,課題解決型学習;PBL(Project Based Learning)を 実践した.主に下記の内容について取り組んだ. ・ベンチャーマインドの養成 ・社会で求められている力『社会人基礎力』 ・プロジェクトマネジメント 【授業内容】 (1)4/9「オリエンテーション」 (2)4/16「フロントランナー講演会(株式会社松本山雅 八木取締役) 」 (3)4/23「信州大学で活躍している学生団体の紹介・研究事例の紹介」 (4)4/30「大学における知的財産とは,~知的創造サイクルを考える~(信州 TLO 篠塚氏)」 (5)5/14「社会に必要な能力を知る~【社会人基礎力】とは~,外部アイデアコンテストの紹介」 (6)5/21「プロジェクトマネジメントとは,プロジェクトの設定,協力企業(わさびのマル井)の 紹介」 (7)5/28「グループの力で事業計画を作る:課題の発見【ブレインストーミング】他」 (8)6/4「グループの力で事業計画を作る:アイデアの整理【KJ 法】他」 (9)6/11「グループの力で事業計画を作る:戦略計画【SWOT 分析】他」 (10)6/18「グループの力で事業計画を作る:管理会計【損益分岐点】他」 (11)6/25「プレゼンテーション演習 1【プレゼンの構成】」 (12)7/2「プレゼンテーション演習 2【情報の可視化】」 (13)7/9「プレゼンテーション実習 前半グループ」 24 (14)7/16「プレゼンテーション実習 後半グループ」 (15)7/23「授業の総括」 1) ベンチャービジネス概論 特別講演会 NPO 法人アルウィンスポーツプロジェクト(ASP)の代表として 2010 年に設立する株式会社松本山 雅の土台を作り上げた八木氏より,立ち上げから J リーグで躍動するに至った松本山雅 FC の挑戦につ いてご講演いただいた. 日時: 2014 年 4 月 16 日(水)16:20~17:50 場所: 信州大学松本キャンパス 全学教育機構第 2 講義棟 2 階 61 番講義室 SUNS 会議室(工学部・農学部),繊維学部 32 番講義室 対象: 信州大学の学生・教職員,一般 講師: 株式会社松本山雅 八木 誠 取締役 演題: 未来への夢と感動へチャレンジ 参加者:43 名(授業履修者 30 名,授業履修者以外の本学学生・教職員 9 名,一般 4 名) 25 Ⅱ. ベンチャー創出支援事業 1. ベンチャー起業支援 SVBL は本学学生のベンチャー起業の支援事業として,ベンチャー起業を指向する下記学生団体に対 する助言,活動場所の提供などの支援を行った. 団体リスト 団体名 氏名 所属 モック 渡辺貴広 理工学系研究科 <活動内容> 学生版 EMS (Electronics Manufacturing Service) 田中直人 理工学系研究科 機械・ロボット学専攻 2 年 金田 繊維学部 機能機械学課程 4 年 望(代表) 機械・ロボット学専攻 2 年 北島一輝 繊維学部 機能機械学課程 4 年 青柳匡尚 繊維学部 機能機械学課程 4 年 渡邉智洋 繊維学部 機能機械学課程 2 年 清田龍太朗 繊維学部 機能機械学課程 2 年 岡村綱太 繊維学部 機能機械学課程 2 年 ArkOak 加納 総合工学系研究科 生命機能・ファイバー工学専攻 2 年 <活動内容> 大学向けソフトウェア 開発 杉山聖貴 理工学系研究科 繊維・感性工学専攻 2 年 大塚ゆりな 理工学系研究科 機械・ロボット学専攻 1 年 佐藤 翼 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 4 年 清澤周平 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 3 年 丸山翔平 繊維学部 生物機能科学課程 2 年 熊王彰吾 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 2 年 安藤 巧 繊維学部 先進繊維工学課程 3 年 赤石泰隆(代表) 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 猪股良平 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 4 年 大堀友輔 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 4 年 蔡 金芮 繊維学部 生物機能科学課程 4 年 渥美慶祐 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 増田 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 桑まるごと活用塾 <活動内容> 桑の有効活用 共創デザインラボ <活動内容> 絵本製作 徹(代表) 悠 丸山翔平 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 有馬大晴 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 3 年 安江くるみ 繊維学部 先進繊維工学課程 2 年 桜井里奈 理工学系研究科 清水甲斐 繊維学部 感性工学課程 4 年 満木風也 繊維学部 感性工学課程 3 年 内山絵理 繊維学部 感性工学課程 4 年 冨田貴予美 繊維学部 感性工学課程 4 年 須田菜摘 繊維学部 感性工学課程 4 年 西澤里咲 繊維学部 感性工学課程 4 年 安藤春来 繊維学部 感性工学課程 4 年 27 応用生物科学専攻 1 年 中居成美 繊維学部 機能高分子学課程 4 年 森谷芳葉子(代表) 繊維学部 感性工学課程 3 年 上野剛裕 繊維学部 感性工学課程 3 年 小山祐輝 繊維学部 感性工学課程 3 年 阪上 優 繊維学部 感性工学課程 3 年 湯澤恒要 繊維学部 感性工学課程 3 年 丸山 渉 繊維学部 感性工学課程 3 年 榎本彩乃 繊維学部 感性工学課程 2 年 小川真理 繊維学部 感性工学課程 2 年 小林 萌 繊維学部 感性工学課程 2 年 望月結花 繊維学部 感性工学課程 2 年 P's Candle <活動内容> キャンドルワークショ ップ 小野口貴士 理工学系研究科 朝 color. <活動内容> 朝活動 長島有一 繊維学部 先進繊維工学課程 3 年 松本雄太 繊維学部 材料化学工学課程 2 年 川原 和 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 渡邊寛士 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 佐藤 繊維学部 先進繊維工学課程 3 年 蘭 田名部藍 化学・材料専攻 2 年 繊維学部 応用生物科学系 2 年 28 モック 繊維学部 機能機械学課程 4 年 金田 望 1. 活動内容 電子技術開発を自前ではできない小規模企業の電子技術開発を受注することにより,当該企業の技術 開発・ビジネス展開・製品開発を支援する. 2. 活動報告 ① LED フラッシャキットの設計開発 松本広域ものづくりフェアー(2014 年 7 月 26 日,27 日)で, ボタンを押すと LED の色が変わる 「フルカラーを用いた LED フラッシャキット」の販売・作製補助を行った.今回はフルカラー LED を初めて採用したことで,子供たちの注目を集め用意した 200 セットを完売することがで きた. ② 信州衛星「ぎんれい」のノベルティーグッズの開発 信州衛星「ぎんれい」のノベルティーグッズとしてペンライト型のものを考案し,3DCAD で図面を描いた. ③ ISO 学生委員からのゴミ分別キャンペーンの依頼 信州大学全学部で行われる缶のゴミ分別キャンペーンを促進するために,ゴミをゴミ箱に分別 し捨てると反応し,動作する機構の開発を行っている. 3. 来期活動計画 ・マンネリ化してきた LED フラッシャーキットの構成の見直し ・ISO 学生委員への依頼品の納入 4. 今後の課題 ・今年度で卒業される修士 2 年の先輩方の技術に追いつけるように勉強を進める. ・モックの活動を管理しやすくする. 5. 所感 昨年の 9 月からモックの代表を引き継いだので, 先輩方のように上手に活動していこうと思っている. また,後輩にモックを引き継いだ際に活動がしやすいように体制を整えていこうと思う. 29 ArkOak 博士課程 総合工学系研究科 生命機能・ファイバー工学専攻 2 年 加納 徹 1. 活動内容 「ArkOak」は,大学や研究機関に向けて,教育・研究支援ソフトウェアの開発を行うベンチャ ー団体である.大学教育や研究で使うちょっとしたソフトウェアを望む声は多いのに対して,専門 性の高いソフトウェアは市場が狭く,市販されているものは非常に高価であることが多い. 「ArkOak」では大学と密接な立場である利点を活かしながら,専門的なソフトウェアを低価格で 開発することで,大学の悩みを解決していくことを事業理念としている. 2. 活動報告 1) ソフトウェア開発 昨年度から引き続き,竹林歯科 竹林先生より,以前開発を行った「X 線 CT シミュレータ」 のアップデートの依頼があり,10 万円で請け負った.また,信州大学工学部 榎本教授より論 文用イラスト作成の依頼があり,7 万円で請け負った. 2) ホームページ作成 長野県中小企業振興センター様より信州ベンチャーコンテスト HP 作成の依頼,繊維学部 藤 井教授より研究室 HP 作成の依頼があり,それぞれ 5 万円,3 万円で請け負った.HP の作成に は Wordpress を用いた. 3) 企業への技術指導 某企業より,ソフトウェア開発およびシミュレーションに関する技術相談があり,12 時間の 技術指導を行った.時給 5 千円換算で,6 万円の請求を行った. 4) 勉強会の実施 ソフトウェアを開発できる人材の育成のため,月に 1~2 回,プログラミングの勉強会を開催 した.講師は持ち回りで上回生が担当し,C 言語および Java を中心に学習を行なった. 3. 来期活動計画 今後もソフトウェア開発関連の案件を請け負っていくために,引き続きメンバ全体のスキルアッ プを図り,ソフトウェア開発が可能な人材を増やしていく.また,HP 作成関連の案件はソフトウ ェア開発とは少し異なるが,需要が高く,比較的短時間で納品可能であるため,ソフトウェア開発 の経験が少ないメンバへの練習を兼ねて,積極的に取り組んでいきたい. 4. 今後の課題 少しでもプログラミングやソフトウェア開発から離れると,すぐに能力が衰えてしまう.在学中 にソフトウェア開発が行えるようになるためには,休みの期間なども継続的にプログラミングに触 れる必要があり,そのためのモチベーションを維持する工夫を考えなければならない. 30 桑まるごと活用塾 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 赤石泰隆 1. 活動内容 上田地域はかつて養蚕業が盛んに行われ,蚕の餌となる桑が多く栽培されてきた.しかし,養蚕業が 衰退するとともに桑の利用は激減し,現在荒れた桑畑のみが点在している.そこで,桑まるごと活用塾 は蚕の餌以外の桑の新たな活用法を模索することで,一度は使われなくなった桑を再度利用し,地域活 性化を行っていくことを理念としている. 2. 活動報告 1)くわりんとうの販売 「くわりんとう」とは 2012 年に桑まるごと活用塾の活動によって商品化・販売開始された桑の葉を 練り込んだかりんとうである. 本年度は「くわりんとう」を 4 つのイベントで販売を行った. 「上田城 千本桜祭り」 (4/5,6,19,20) , 「大学は美味しい!!フェア」(5/28-6/3) , 「信州大学 SVBL10 周年記念 シンポジウム」 (9/20) , 「長野県産直・直売サミット」 (1/25) .これらのイベントへの参加によって, 「く わりんとう」の存在を多くの方に知ってもらうことができたと思う. 2)お菓子作り 桑を使ったお菓子作りを主に 3 つ行った.「桑の葉チュイル」 ,「桑の実入り生チョコ」, 「桑の葉アイ スボックスクッキー」 .それぞれ試作を何度も行い,最適な桑の葉粉末の割合を検討した. 図1. 桑の葉チュイル(左),桑の実入り生チョコ(中央) ,桑の葉アイスボックスクッキー(右) 3. 来期活動計画 本年度に引き続き「くわりんとう」の販路拡大とレシピの作成を行う. 4. 今後の課題 新規メンバーを勧誘する. 31 共創デザインラボ 繊維学部 感性工学課程 3 年 森谷芳葉子 1. 活動内容 上田周辺に住む方々を招き,ラボのスタッフとの対話によりオリジナルの絵本の制作を行っている. 「絵本を作りたいが絵が描けない」, 「孫にオリジナルの絵本を贈りたい」などの思いをスタッフとの対 話を重ねることで共有し,一緒になって制作する.作者の方とスタッフとのコミュニケーションを通し て一つのものを作り上げる達成感や満足感を大切にしながら活動している. 2. 活動報告 主な活動として絵本制作会を 2 回開催した.5 月 24,25,31 日,6 月 1 日の 4 日間に今年度 1 回目 (第 16 回絵本制作会)を行った.2 組の作者の方を招き 1 組は 10 月に完成し,もう 1 組は現在作成中 である.2 回目の制作会(第 17 回絵本制作会)は 10 月 25,26 日に行い,1 組の作者の方を招いた. 現在制作中である.また,東雲祭への出店,過去の作者の方への年賀状の作成を行った.東雲祭ではし おりと絵葉書づくりを開催した. (絵本の 1 部は上田情報ライブラリーへ寄贈している) 完成した絵本(第 16 回絵本制作会) 3. 来期活動計画 活動予定は,絵本制作会を 10 月に 1 回(できれば 5 月,10 月の 2 回)行うことである.また,P-DEX SEM 班の方々の小学生に向けた活動に絵本制作という形で参加させていただきたいと考えている. 4. 今後の課題 絵本の制作時間を短縮することが今後の課題である.制作時間はメンバーの人数や絵や文章の量に左 右されてしまい,制作目安の半年で完成させることが難しい場合が今年度多かったので,作業効率を良 くするためにはメンバーの負担を減らせる作業分担や編集に使用するフォトショップやインデザイン のソフトの使い方の情報共有が必要だといえる. 5. 所感 毎年,年2回の絵本製作を行っていますが,今年度は人数が少ないため例年よりも絵本の作成に時間 がかかっている.また,絵本の作成だけでなく以前行っていたポスターなどの依頼を受け作成する活動 に関心をもっているメンバーが多くいる.そのため,例年の活動を見直し,絵本だけではない活動にも 取り組むことができたらと考えている. 32 P's Candle 修士課程 理工学系研究科化学・材料専攻 2 年 小野口貴士 1.活動内容 各種イベントへのキャンドル作りの出展・販売,ワークショップ開催,空間演出 2.活動報告 ワークショップに関しては,月に一度,定期の活動として長野市オンホールにて開催した.また,SVBL でキャンドル作りワークショップを隔月で開催した.販売・出展としては,ヨコハマハンドメイドマル シェ 2014,デザインフェスタ,EarthGarden などのクラフト・アートフェスタ,長野市の灯明祭りで の出展を行った. 3. 来期活動計画 出店等の活動は,今年度と同様に土日,祝日をメインに行なっていく.また,来年度以降,人とまち, 人と人,人と物を繋ぐ場所作りを行う.アトリエとお店を併設した形式で,様々な人とのコミュニケー ションスペースとし,イベントや地域情報などの情報共有などができる場所を目指す.お店にはギャラ リーを作り,自分以外のあらゆるジャンルの作家の作品の展示・販売を予定している. 4. 今後の課題 ・キャンドル作りのワークショップにもっと幅広い年代・職種の人たちに参加してもらえるように する. ・県内外でワークショップの開催場所・委託販売先を探す. ・ワークショップや空間演出のイベント等を積極的に行っていく. 5. 所感 キャンドル作りのワークショップを通して参加者同士がコミュニケーションを取り,出会った人たち が交流を深め,繋がりを広げることができた.今後のワークショップも時間を長めに設定し,参加者同 士で話をする時間を増やしていきたい. 活動全体を通して,様々な職種・年代の人達と交流を深めることができ,いろいろな話や体験などを 聞くとができたので,今後の活動に活かしていきたい. Fig. 1 長野市灯明祭りにて 33 2. ながの創業サポートオフィス分室 【事業の紹介】 長野県が「日本一創業しやすい県づくり」を目指して開設した公益財団法人長野県中小企業振興セン ター総合相談窓口「ながの創業サポートオフィス」の分室(相談受付窓口)として,信州大学と連携し て 4 キャンパスの各機関に開設されている. 上田キャンパスでは SVBL に分室が設置されており,創業意欲のある学生からの相談受付を行い,な がの創業サポートオフィスのスタッフを招いて事業化に向けた相談・助言等の支援をしている. 【分室の設置機関】 松本)研究推進部産学官地域連携課 上田)SVBL 長野)イノベーション研究・支援センター 伊那)産学連携室 【受付相談内容】 ・創業に関する相談・助言 ・セミナー ・金融支援 ・税制 ・技術支援 【対象者】 信州大学の学生,大学院生.及び近隣の大学生,大学院生.地域の創業意欲ある若者など 【相談実績】 2014 年 6 月 13 日 1件(一般) 34 Ⅲ. SVBL 事業 1. 第 11 回全国 VBL フォーラム 全国の大学のVBLや産学官連携支援に携わる関係者が一堂に会し,大学のベンチャー創出・支援や ベンチャーマインド醸成等VBL活動についての状況や意見を交換し合い,今後のVBLの方向性の指 針を得る場とした. 1 日目はベンチャーマインド教育と地域貢献の観点で,産学官の関係者から長野県における取組み事 例を紹介した.2 日目はアントレプレナー教育を充実させる為の教科書作成ワーキンググループから進 捗状況の報告と,文部科学省が推進するグローバルアントレプレナー教育(EDGE)事業について,採 択された大阪大学と九州大学の事例と,文部科学省のイノベーション・エコシステム構築に向けた報告 があった.全体会議では大学におけるアントレプレナー教育の位置付けと課題として,「アントレプレ ナー教育を普及させるには」 「学生の積極的な参加を呼び込む為には」 「アントレプレナー教育の実施者 を育てるには」の 3 つの観点について各大学からの意見を出し合い,情報共有に結びつけた.施設長会 議では昼食を取りながら各大学が課題としている点を共有し,今後のアントレプレナー教育の普及に向 けた結束を固めた. 日時: 場所: 2014 年 9 月 19 日(金)~20 日(土) 信州大学上田キャンパス 総研棟7F ミーティングルーム1 テーマ: ベンチャーマインド教育と地域貢献 参加者: 1 日目 49 名(31 大学,講演者含む),2 日目 37 名(33 大学) プログラム: 9 月 19 日(金)第 1 日目 13:15 開催挨拶 13:30~14:30 講演会Ⅰ (一般公開) (信州大学学長 山沢清人) 児玉光史 氏 ( (株)地元カンパニー 代表取締役) 「地元」のビジネス化 ~県外から長野県を盛り上げる~ 14:30~15:10 休憩 15:10~16:50 ベンチャーマインド教育と地域貢献 大学等の取り組み事例紹介 笹本正治(信州大学地域戦略センター長) 信州大学と地域貢献 水野尚子 氏(松本大学人間健康学部健康栄養学科助手) 松本大学の地域連携教育貢献に関する取り組み事例 髙橋 進 氏(長野大学企業情報学部教授) 地域とともに歩む長野大学 ―長野大学の地域連携プロジェクト― 内田雅啓 氏(長野県産業労働部 産業立地・経営支援課長) 日本一創業しやすい環境を目指して ~ 長野県は創業を応援します ~ 哉(信州大学 SVBL 長) 小西 信州大学 SVBL の紹介~教育活動を中心に~ 17:00~ 交流会 (場所:生協 1 階) 学生の活動紹介(ArkOak、モック、桑まるごと活用塾) 35 9 月 20 日(土)第 2 日目 9:30~10:00 10:00~10:30 10:30~12:00 報告 アントレプレナーシップ教科書について 就実大学 三枝省三 先生 福井大学 竹本拓治 先生 アントレプレナー教育プログラムについて 大阪大学 兼松泰男 先生 九州大学 谷川 徹 先生 講演会Ⅱ 中澤恵太 氏 (文部科学省 科学技術政策局 産業連携・地域支援課 課長補佐) EDGE事業について~イノベーション・エコシステムの構築に向けて~ 全体会議 討論 大学におけるアントレプレナー教育の位置付けと課題 議論1 アントレプレナー教育を普及させるには 議論2 学生の積極的な参加を呼び込む為には 議論3 アントレプレナー教育の実施者を育てるには 12:00 閉会挨拶 12:15~13:15 施設長会議 (場所:講義棟大会議室) (信州大学理事 三浦義正) 山沢 学長 水野 氏 交流会 児玉 氏 高橋 氏 笹本 氏 内田 氏 全体会議 36 中澤 氏 施設長会議 2.信州大学 SVBL10 周年記念シンポジウム SVBL は,2004 年 4 月に設置され,本年で創立 10 年を迎えることになり,これを記念してシンポジ ウムを開催した.いま大きく成長している企業の創業者の方々に講演していただき,将来を担う若者た ちに向けて,「挑戦することの意義」「働くことの意味」「社会への貢献」などについてのメッセージ を発信していただいた.また,創業者の方々との対話を通して,より良い未来を展望できる内容のパネ ルディスカッションを行った.学生代表から質問に答える形での議論を行い,「儲けにこだわらない社 会への貢献などの創業理念の重要性」,「自分の考えが正しいと確認された後は諦めないこと」,「信 頼できるパートナーを得ること」などの重要性が浮き彫りにされ,聴講者の良い刺激となった. 日時: 2014 年 9 月 20 日(土)14:00~17:15(開場 12:30) 場所: 信州大学繊維学部講堂 テーマ: 元気な創業者たちの想いを聴いてみよう 参加者: 176 名(うち学生 68 名) ,関係者約 40 名(計 216 名) プログラム: 14:00~14:30 開催挨拶 14:30~15:45 講演 15:45~16:00 16:00~17:30 休憩 パネルディス カッション 17:45~ 懇親会 挨拶(信州大学 三浦義正 理事) SVBL の沿革(信州大学 SVBL 長 小西 哉) 青木擴憲 氏(AOKI ホールディングス 代表取締役会長) 「人間を磨き「格」を高める経営」 鳥羽博道 氏(株式会社ドトールコーヒー 名誉会長) 「成功する考え方」 池森賢二 氏 (株式会社ファンケル 代表取締役会長 グループ CEO) 「ファンケル創業の原点 ”不の解消” 」 パネリスト 青木擴憲 氏 鳥羽博道 氏 池森賢二 氏 白井汪芳 氏(信州大学名誉教授) 柿内優孝 氏(信州大学理工学系研究科,P-DEX 元代表) 櫻井里奈 氏(信州大学理工学系研究科,桑まるごと活用塾元代表) ファシリテーター 濱田州博 氏(信州大学繊維学部学部長) (場所:生協マルベリーホール) 主催: 共催: 信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー 信州大学繊維学部,信州大学地域戦略センター,長野県, (公財)長野県中小企業振興センタ ー, (一財)浅間リサーチエクステンションセンター 協賛: (株)アイフォーレ,ダイワボウノイ(株) 企画協力: SBC 信越放送 後援: NBS 長野放送,ABN 長野朝日放送,TSB テレビ信州,FM 長野 37 青木擴憲 氏 鳥羽博道 氏 池森賢二 氏 講堂の様子 パネルディスカッション 懇親会 38 3. 信州ベンチャーコンテスト 2014 SVBL がこれまで学内で実施してきたベンチャーコンテストを拡大発展させ,長野県,県内の大学等 と協同して「信州ベンチャーコンテスト 2014」を開催した. 「信州を元気にする」新規ビジネスアイディア・プランを,一般・大学生・高校生から募集し、計 76 件の応募の中から、各部門 5 件の発表を行い,各部門においてグランプリ,準グランプリ,奨励賞を決 定した.基調講演には長野市にも拠点を置くゲーム企画・開発などの株式会社アソビズムの大手智之代 表取締役に講演していただいた. オーディエンス賞および一般部門のグランプリ受賞者は,SVBL で(有)HighHope の 2 代目代表取 締役として活躍した山崎一也さんが,一度は都内の金融機関に就職したものの長野県内での起業を考え て再就職し,自身が手掛けたいビジネスプランについて発表をした. 日時: 2014 年 10 月 4 日(土)12:30~17:30(開場 12:00) 場所: 信州大学松本キャンパス経済学部講義棟第2講義室 主催: 信州大学(サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(SVBL)),長野県,長野大学, 諏訪東京理科大学、長野工業高等専門学校,(株)八十二銀行,トーマツベンチャーサポート (株) , (一社)21 世紀ニュービジネス協議会, (公財)長野県中小企業振興センター 共催: 信濃毎日新聞社、八十二キャピタル(株)、日本政策金融公庫 後援: 経済産業省関東経済産業局、長野県教育委員会、(一社)長野県経営者協会、長野県中小企業 団体中央会、 (一社)長野県商工会議所連合会、長野県商工会連合会、長野県信用保証協会、 信越放送、長野放送、テレビ信州、長野朝日放送、FM 長野 協力: 松本大学、 (一財)浅間リサーチエクステンションセンター、HanaLab.、Knower(s)、DEN 協賛: (株)デンセン, (株)羽生田鉄工所、日本ステンレス精工(株),(株)価値創造研究所,エ ムケー精工(株) ,丸善食品工業(株), (株)ミマキエンジニアリング, (株)ながのアド・ビ ューロ 審査員:森川 亮 氏(LINE(株)代表取締役社長)(審査委員長) 羽田靖子 氏(John Kelly Japan 代表) 羽生田豪太 氏( (株)羽生田鉄工所 代表取締役) 矢島充博 氏( (株)八十二銀行 法人部長) 内田雅啓 氏(長野県産業労働部 産業立地・経営支援課長) 参加者:一般 72 名,報道 7 名,関係者 73 名 サポーター12 社(OFFIC626、日本政策金融公庫、ランサーズ、サムライインキュベート、モ デリングスナップ、クラウドット、八十二銀行、八十二キャピタル、21 世紀ニュービジネス 協議会、価値創造研究所、トーマツベンチャーサポート、THE APP BASE) 39 プログラム: 信州大学 SVBL 長) 12:30 開会挨拶 (小西 哉 12:30~12:40 主催者挨拶 (石原秀樹 12:40~13:40 高校生部門(発表 5 分、質疑応答 7 分) 13:45~14:45 大学生部門(発表 5 分、質疑応答 7 分) 14:50~15:50 一般部門(発表 5 分、質疑応答 7 分) 長野県 産業労働部長) 16:30~17:00 基調講演 講演者:大手智之氏(株式会社アソビズム 代表取締役) テーマ:起業する人に知っておいて欲しい事 信州サマーインターン報告会(Hanalab.) 17:00~17:30 審査結果発表・表彰式 17:45~18:45 交流会(旭会館生協1階) 参加費無料 16:00~16:30 発表者,テーマ,審査結果: 部門名 氏 高校生 小宮山直希 倉谷夏実 塩尻志学館高校 塩尻志学館高校 上條真珠 塩尻志学館高校 竹村航大 加藤真美 塩尻志学館高校 塩尻志学館高校 大学生 名 柳澤陸旺 山本哲也 森田久美 中島明紀 猪股良平 一 般 大島千恵子 西沢克弥 山崎一也 竹内信太郎 長尾良子 所 属 発表テーマ 結果 高齢者都市 洋服移動販売車 奨励賞 おじいちゃん・おばあちゃんのための 準グランプリ 新商品 虫料理店 買い物同行サービス グランプリ 長野工業高等専門学 紙の自動折り目付け装置 グランプリ 校 信州大学大学院理工 信州の知(地)の理(利)を生かしたジビ 学研究科 エの販売 信州の自然で遊ぼう!!1クリック 信州大学繊維学部 アウトドアパッケージ 名古屋大学大学院工 訪日中国人に向けた観光産業のイン 奨励賞 学研究科 バウンドマーケティング施策 ヒト毛髪を用いた医用材料の開発と 信州大学繊維学部 準グランプリ 応用 片 づ け で シ ニア 世 代 をも っ と 元気 個人 に! ~いまをラクに心地よく、これ からに負担をかけない暮らし~ 高齢者と子供のためのスマート靴 ~ 個人 広大な長野県内で人々の居場所を見 守る~ WEB による工作機械利用サービス (一社)信州若者 ~製品デザインを自分で決める世の 1000 人会議 中が来る~ 地域で生産された農産物の、オフィス 公認会計士 向け宅配サービス 信州大学経営大学院 子供向けビジネススクール 40 奨励賞 グランプリ オーディエン ス賞 準グランプリ 表彰内容: <グランプリ> <準グランプリ> <奨励賞> 高校生部門 図書券3万円 図書券1万円 図書券5千円 大学生部門 図書券5万円 図書券2万円 図書券1万円 一般部門 図書券5万円 図書券2万円 図書券1万円 高校生部門発表の様子 一般部門発表の様子(山崎一也 氏) <オーディエンス賞> 図書券2万円 サポーターからの支援申込 基調講演の様子(大手智之 氏) 表彰式後の記念撮影 41 Ⅳ. SVBL 研究 1. プロジェクト研究 研究テーマ 研究者 中西弘充 葉緑体遺伝子情報を元にした桑品種の系統解析 SVBL 助教 小西 地域の生物多様性を脅かす国内外来魚の産地判別 繭 SVBL PD 研究員 松村哲也 林業作業用保護被服の開発 SVBL PD 研究員 水野淳史 アントレプレナーシップ教育の政策研究と実践 SVBL 研究員 大熊ひとみ 金属ガラスを用いた磁歪式トルクセンサの開発 SVBL 研究員 43 葉緑体遺伝子情報を元にした桑品種の系統解析 SVBL 助教 中西弘充 1. 研究目的 養蚕業に桑(Morus 属)は欠かせない重要な農作物であり,長野県各地で広く栽培されてきた.しかし, 養蚕業が衰退したことで桑畑の荒廃がすすみ,中山間地の有効活用が望まれている.養蚕以外にも桑は 食品や漢方薬の原料として広く利用され,養蚕業の研究拠点である繊維学部では約 400 品種の桑が維持 され,豊富な遺伝資源が管理されている.しかし,付属農場見本桑園内で栽培されている品種の内,177 品種が系統不明として位置付けられたままである.付属農場が保有する豊富な遺伝資源の中から栽培に 適した有用形質を持つ品種を探索するには,系統間の関係性が明確になることが不可欠である.そこで, 本研究では山桑系(M. bombycis Koidz.),白桑系(M. alba L.),魯桑系(M. latifolia Poir.)を中心に,葉緑体遺 伝子情報を元に桑品種の系統解析を試みた.昨年度は 16 品種間で差が見られる遺伝子情報を探索し, 品種間の比較を行った.今年度は調査する品種を増やすと共に,新たな多型の検出を行った. 2. 実験 昨年度に実施した 16 品種に加え,系統判明品種 29 品種,系統不明品種 46 品種,県内各地で採取し た桑を対象とした.各植物体の葉 2~3 枚を自然乾燥させ,粉砕した乾燥粉末から DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen)を用いてゲノム DNA を抽出した.表 1 に増幅用のプライマーの配列を示し,表 2 にシーケ ンス用のプライマーの配列を示す.桑の葉緑体ゲノム情報はインドグワ(M. indica cv. K2)の配列を参考に 表 1.増幅用に用いたプライマーの配列 Primer name Forward primer Reverse primer MindAmp-F1/R1 tcaattcatttggctctcac gggaaaaggaattgacatacc MindAmp-F2/R2 gcggatggccaataactcaag tcggcctaacgaattcgtca MindAmp-F3/R3-2 ccgcaaagattgtcttatagcga ctttactcacgtcagtagca MindAmp-F4/R4 tgtgtcaatcacttccattc taccagtagaagattcagca MindAmp-F5/R5 ccgaaaccaaagctcttattttctgttgag ggttatttccgaagacatggaaagagatg MindAmp-F6/R6 ggtaaacgatttacgtgggacaag cgacgattccgatccagagt 表 2.シーケンス用に用いたプライマー配列 Template Primer name Sequence primer Polymorphism position No. MindAmp-F1/R1 MindSeq-F1 cggtattaaacccgaaacttcc 13,966 bp 1 MindSeq-F2 cacgtaattttgtgaatccgtacca MindSeq-R2 tagggaaggggagatcgaac 14,830 bp 2 MindSeq-F3 gaattcgttaggccgaatgcttg 15,346 bp/15,351 bp 3/4 MindSeq-F4 accaacagtatctcgacccttaactacc MindSeq-R4 aatgaaaggctttctcacga 56,796 bp 5 MindAmp-F5/R5 MindSeq-F5 tgcaaataaacgaattttggttctac 72,108 bp 6 MindAmp-F6/R6 MindSeq-F6 catagtcggcgataccatca 124,753 bp 7 MindAmp-F2/R2 MindAmp-F3/R3-2 MindAmp-F4/R4 44 した[1] .増幅用の MindAmp プライマーセットで各領域を増幅し,PCR 産物をエタノール沈殿で精製 してシーケンス反応のテンプレートとした.シークエンス用の MindSeq プライマーと ABI Bigdye Terminator V3.1 cycle sequencing Kit (Applied Biosystems)を用いてシークエンス反応後,Genetic Analyzer 3130 (Applied Biosystems) を 用 い て 各 品種 の 葉緑体 DNA 配列 情 報を 得 た. 波形 情 報は FinchTV Version1.4.0 (Geospiza Inc.)で確認し,配列間のアライメントを GENETYX-SV/RC Ver.10.1.1 (GENETYX CORPORATION) で比較し多型の分類を行った. 3. 結果 MindAmp-F3/R3 の組み合わせではプライマーダイマーを形成することから,新たに R3-2 プライマー を設計し増幅を確認した.MindAmp-F2/R2 の増幅断片を MindSeq-F2 でシークエンスしたところ,T の 繰り返し配列により綺麗な波形データが得られなかったことから,繰り返し配列を読まない位置にプラ イマーMindSeq-R2 を再設計した.シークエンス解析の進行状況を図1に示す.対象とした全ての品種 において,粉砕と DNA 抽出を終えた.系統判明品種 29 品種について 7 箇所の多型についてシークエン ス解析を行った.昨年度の結果から多型の数が不十分であると考えられたため,一ノ瀬,赤目柳田,復 興桑,上田早生において,新たな多型を他の生物種で比較している領域で探索したが見つからなかった. 今後は系統判明品種においてクラスター解析を行い,系統不明品種がどのような分類になるかを調査す る.また,県内各地で採取した桑においては,種の分類と形態の関係性について調査を進める. 図1.シークエンス解析の進行状況 濃い灰色は解析が終わった情報を意味し,淡い灰色は進行途中の情報を意味する. 4. 主要文献 [1] V. Ravi et al., ‘The chloroplast genome of mulberry: complete nucleotide sequence, gene organization and comparative analysis’ Tree Genetics & Genomes, 3 49-59, (2006) 45 里地里山がもたらす地域ブランドの探索 地域の生物多様性を脅かす国内外来魚の産地判別 SVBL PD 研究員(理学部) 小西 繭 1. 研究目的 豊かな里地里山がもたらす地域ブランドの探索とその保護を目的とし,生物多様性に着目して以下の 研究を行った. ②国内外来種を判別するための DNA マーカーの開発 外来種とは国外から侵入した生物と捉えられがちだが,生物に国境はなく,たとえ国内地域間の移動 であっても本来生息しない場所に移入・侵入した生物であれば国内外来種となる.特に淡水域では種苗 放流への混入に伴って分散した国内外来種が増加しており,在来種との競合や在来同種個体との遺伝的 撹乱等の悪影響が生じている.本研究では,里地里山を代表するコイ科魚類であるウグイ Tribolodon hakonensis,オイカワ(ジンケン)Zacco platypus,およびモツゴ(クチボソ)Pseudorsbora parva を対象 とし,DNA マーカーを用いた産地判別解析を確立することを目的とした.長野県はウグイとモツゴの 自然分布域であり,オイカワは本来県内には分布しない種とされている.特にモツゴは,欧州,中央ア ジア,北アフリカにおいて分布を拡大する侵略的外来種として国際的に警戒される魚種であり,その侵 略性を解明する研究の一環として核ゲノムマーカーの開発を行った. ①生物多様性の主流化を視野に入れた里山保全に関する研究 一般市民の生活と生物多様性に関わりを持たせる「生物多様性の主流化」は,近年始まったばかりの 取り組みである(環境省 2010) .平野部の生き物の多くは,開発や汚染により生息場所を奪われ,里地 里山を最後の砦として生息する.一方,里地里山では農林業の後継者が育成されぬまま人口減少時代に 突入したため,管理放棄され荒れ地化が進行している.野生生物や里地里山の現状を正しく周知するこ と,すなわち主流化は,地域資源の利活用につながる考え方である.本年度は希少生物を含む生物多様 性の保全と地方の大部分を占める里地里山の利活用は両立すべく,その有用性を明らかにすることを目 的とし,これまでに実施したアンケート調査結果を論文として報告した. 2. 実験 ① 実験には,2014 年初夏に千曲川中流域において採集されたウグイおよびオイカワ,また,秋に松本 城内堀および諏訪湖周辺で採集されたモツゴを用いた.採集後,冷凍保存された標本の筋肉(5 ㎜四方) あるいはヒレ組織より DNA を抽出し,コイ科魚類の mtDNA Cyt b 領域の PCR 増幅に適したプライマーセ ット(小西,未発表)を用いて PCR 反応を施した.得られた PCR 産物よりプライマー除去ならびにシー ケンス反応を行った後,ABI PRISM 3130 ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems 社製)を用 いて塩基配列を決定した.得られた塩基配列はフリーソフト MEGA を用いて,アライメント,アセンブ ル,ならびに系統樹作成を行った.その際,DNA 塩基配列データベース(Genebank)に登録されている 対象魚種の塩基配列を含め解析を行った. モツゴについては核ゲノムマーカーであるマイクロサテライト DNA(short tandem repeat; STR)解 析の開発を行った.マイクロサテライトとは核ゲノム上に存在する反復配列で,とくに数塩基(例えば CA)の単位配列の繰り返しからなるものである.ゲノム中に広く散在しており,自然選択に中立的で共 優性を示すことから, 集団遺伝学や DNA 鑑定のための遺伝マーカーとして利用されている.本研究では, 次世代シーケンサを用いてモツゴのゲノム情報からマイクロサテライト領域のみを抽出し,大量データ 46 に基づくマイクロサテライト多型解析用プライマーを設計した.各フォワードプライマーに蛍光標識を 施し,ABI PRISM 3130 ジェネティックアナライザを用いて PCR 産物のサイジングおよびジェノタイピン グを行った. 3. 結果および成果 ① 長野県内より採集されたコイ科魚類 3 種の mtDNA cytb 領域およそ 1100bp の塩基配列を決定した. DNA 塩基配列データベース(GeneBank)より得られた既知の配列も含め N-J 法により系統樹を作成した (図) .その結果,ウグイでは少なくとも 4 つのサブクラスターが形成され,そのうち 3 つのサブクラ スターに千曲川産のウグイの有するハプロタイプが含まれた.また,オイカワでは明瞭なサブクラスタ ーは観察されなかったものの,千曲川産オイカワのハプロタイプはクラスター全体に分散した.県内 2 地点に由来するモツゴを解析した結果,中国,西日本,および関東東海の 3 系統が混在することが確認 された.三種とも地理情報と系統情報に大きな矛盾が認められ,国内外および複数の国内地域に由来す る個体が混在し,攪乱されている実態が浮き彫りとなった.今後は,個体数ならびに解析遺伝子座を増 やし,より信頼性の高い系統樹を作成する. モツゴでは,次世代シーケンサより得られたゲノム情報を元に 84 座の STR プライマーを設計し,そ のうち 40 座において PCR 増幅を確認した.21 座についてはマルチプレックス PCR 法を確立し,低コス トで大量のゲノム情報をスクリーニングできる条件を決定した.今後は本研究によって開発されたマイ クロサテライト座を用いて,3 系統の交雑プロセスの精査,さらに遺伝的撹乱と侵略を促す選択プロセ スの関係性について検証する. ② 希少生物に生息地を提供する里地里山の価値に及ぼす影響要因,ならびに,里山の「ため池」のも つ保全生物学的ならびに社会学的価値について報告した(阿部ら 2014;小西 2014;小西ら 2015).里 山農産物のブランド価値に関するアンケート調査結果を報告書の作成を行った(SVBL 2015). 4. 主要文献 阿部信一郎・桟敷孝浩・小西 繭・井口恵一朗(2014) 「身近な水辺の自然の価値を探る」特集にあたって.海洋と生物, 36(4):359-360. 小西 繭(2014)里山のため池の価値−「いま」と「これから」 .海洋と生物,36(4):374-378. 小西 繭・田崎伸一・高田啓介・井口恵一朗(2015)絶滅危惧種シナイモツゴの生息するため池群への地域住民の価値評 価とその影響要因.応用生態工学,17(2),印刷中. 図 ミトコンドリア DNA cytb 遺伝子領域の塩基配列に基くウグイ(左)およびオイカワ(右)の分子系統樹(NJ 法) 47 林業作業用保護被服の開発 SVBL PD 研究員(農学部)松村哲也 1.研究目的 急峻な地形を持つ日本の森林環境のなかで,大型機械を駆使しながら重量物である材木を取り扱い, またチェーンソーや鋸・鉈など切削器具を常用する林業は,例えば建設業等の業種に比較して,作業員 が死傷事故等の危険にさらされる頻度が高い.このことは死亡千人率をはじめとする各種の指標にも表 れており,作業者の安全を確保し,かつ労働環境を改善・向上させることは喫緊の課題である. こうした労働環境の改善・向上策として,様々な角度からのアプローチが進められている.ハーベス タやプロセッサなど高性能林業機械と称される大型機械を導入することで,生身の人間が材木に接近せ ずにすむ作業環境を構築し,材木との接触に起因する事故の抑止を狙ったり,遠隔操縦技術を導入して 危険性の高い作業から作業者を遠ざけようとする取組みがある.しかしながら,未だ林業の労働災害被 災状況が画期的な改善を見せたとは言えず,更なる方策・アイデアが求められている. 2.研究計画 筆者らは林野庁からの要請を受け,林業作業者が作業時に着用する被服類の改善によって作業安全性 を高めようという観点から,まず現在市販されている林業作業用被服類を収集し,それぞれの機能性・ 有効性の評価を行った.対象はヘルメット・ゴーグルに始まりシャツ・ジャケット・手袋・ズボン・ブ ーツに至る全身各部位を保護する被服・装備に至った.その結果を受け,従来製品の欠点を解消し,よ り安全性能が高く,快適な作業環境を提供する製品の開発に取り組んだ.本稿では,そのうち(1)チ ェーンソー安全ズボン,(2)林業用レインウェアの開発について報告する. 開発体制: 本事業は林野庁によるものである.林野庁の委託により八戸市森林組合(青森県)が主と りまとめ実施機関となり,船山株式会社(新潟県・調達および製造担当),オンヨネ株式会社(新潟県・ 調達および試作担当) ,服飾デザイナー中矢丸氏(大阪府・パターンデザイン担当) ,信大 SVBL 松村(色 彩デザインおよび機能性評価担当)の 4 者がそれぞれの分野を担当した.その他,東京農業大学林業工 学研究室,岐阜県立森林文化アカデミー川尻研究室等諸機関の協力を得た. 3.結果および成果 チェーンソー安全ズボンの開発: 作動中のチェーンソー刃が人体に触れると深刻な切創を及ぼす.こ の危険からの防護策として,接触時に瞬間的にチェーンソーを停止させる機能を持った「チェーンソー 安全ズボン」の普及が進んでいる.しかし,現在流通している製品の多くは欧州製で,着用環境が大き く異なるものがそのまま日本市場に持ち込まれている状況にあり,とりわけ気候(夏の暑さ),体型(脚 の長さ)の点で不満が見られる.一方,国産製品に目を転じると,日本市場の特徴を意識しているもの も一部で見られるが,全般的に機能性とりわけ素材機能とデザイン性の点で欧州製品に大きく水をあけ られている. 48 そこで,わが国における林業作業環境を再検討し,作業者からの「現場の意見」を大きく取り入れる とともに,先行する欧州製品に用いられている素材を分析し,着用官能試験を繰り返しながら「チェー ンソー安全ズボン・雷神」を開発した. 「雷神」の特徴は大きく 4 点である.(1)涼しく軽い, (2)日 本人の体型にマッチ, (3)地下足袋対応,(4)EN-381 規格を満たす防護強度.とりわけ,丈夫であり ながら涼しく軽い仕上がりは,暑く蒸れる夏でも急傾斜地を昇降する必要がある日本林業に適したもの である. 林業用レインウェアの開発: わが国の高温多湿な気候,とくに梅雨は,そのほとんどが屋外作業であ る林業にとって,非常に大きな障害である.従来,その安価で堅牢なことから非透湿性レインウェアの 使用が主に用いられ,アウトドアレジャー指向の進展から透湿性の登山用レインウェアを転用する者も 少数存在するといった状況であった.しかし,非透湿製品は,汗蒸れに対処できず,登山用品では堅牢 性に難があった. そこで,高い防水透湿性を備えた上で,引裂き強度に秀でた機能性素材をベースとしたレインウェア の開発を行った.まず実際の林業作業を動作解析し,作業中にとりうる姿勢を抽出して,立体縫製技術 を駆使したパターンデザインを作成した.次いで色彩安全の観点から,森林環境内で高い視認性を保つ ことができる色彩の組み合わせを選択し,パターンデザインに反映させた.これにより, (1)高い視認 性, (2)林業作業に特化した円滑な関節動作, (3)街着としても使えるファッション性 を備えた高機 能防水透湿レインウェアが完成した.将来的には今回導出したパターンデザインを登山用に反映・展開 することも企図している. 4.主要文献 1) 林業・木材製造業労働災害防止協会「災防規定」 http://www.rinsaibou.or.jp/cont02/02_frm_c.html?items02/0202_01_idx.html (閲覧 2015 年 3 月 1 日) 2)Health and Safety Executive (HSE-英国安全衛生庁)”Chainsaw at work” leaflet INDG317(Rev.2), published 01/2013 (PDF version; http://www.hse.gov.uk/pubns.indg317.pdf) (写真: 左:チェーンソー安全ズボン「雷神」 中:レインウェア上衣 右:レインウェアズボン) 49 アントレプレナーシップ教育の政策研究と実践 SVBL 研究員(繊維学部) 水野淳史 1. 研究目的 2014 年 6 月より,マネジメントを担当する SVBL の研究員として, 「第 11 回全国 VBL フォーラム」 や「SVBL10 周年記念シンポジウム」, 「信州ベンチャーコンテスト 2014」等の運営に従事してきた. SVBL は,2004 年 4 月に設立されて以来,今年度で 10 年の節目を迎えた.今後の 10 年に向け,こ れまでのアントレプレナーシップ教育やイノベーション人材育成をさらに戦略的かつ効果的に推進し ていくと同時に,SVBL を次のステージに成長させていく必要がある.そこで,まず,アントレプレナ ーシップ教育の政策研究をする.そして,それを踏まえて,自らもアントレプレナーシップを持ち,ア ントレプレナーシップ教育やイノベーション人材育成を実践する. 2. 活動計画 第 1 に,文部科学省が推進しているアントレプレナーシップ教育の政策について研究する. 第 2 に,その政策に基づいた各大学の取り組みについて研究する. 第 3 に, アントレプレナーシップ教育に関するセミナーやワークショップ, シンポジウムに参加して, 幅広く情報収集をし,より高度なスキルを身につける. 以上のような計画で政策研究を進め,アントレプレナーシップ教育やイノベーション人材育成を実践 する. 3. 結果および成果 第 1 について,文部科学省が推進しているアントレプレナーシップ教育の政策には,グローバルアン トレプレナー育成促進事業(EDGE プログラム)(以下,EDGE プログラムという.)がある.文部科 学 省 の ホ ー ム ペ ー ジ に よ る と , EDGE プ ロ グ ラ ム と は ,「 Enhancing Development of Global Entrepreneur Program の略」であり, 「我が国におけるイノベーション創出の活性化のため,大学等 の研究開発成果を基にしたベンチャーの創業や,既存企業による新事業の創出を促進する人材の育成と 関係者・関係機関によるイノベーション・エコシステムの形成を目的」としている.「具体的には,専 門性を持った大学院生や若手研究者を中心とした受講者が起業家マインド,事業化ノウハウ,課題発 見・解決能力及び広い視野等を身につけることを目指し,受講者の主体性を活かした(アクティブラー ニング)実践的な人材育成の取組みへの支援を行う」とある.「特に,短期的な人材育成プログラムへ の支援を行うのみではなく,ベンチャー関係機関,海外機関,民間企業との連携を行うことで関係者間 の人的・組織的ネットワークを構築する取組みを重点的に支援し,持続的なイノベーション・エコシス テムの形成を目指す」とある.EDGE プログラムは,今年度から 2016 年度までの 3 年間の事業であり, 東京大学や東京工業大学,早稲田大学や慶應義塾大学等の 13 機関が選定された. 第 2 について,EDGE プログラムのホームページによると,EDGE プログラムに基づいた各大学の 取り組みはさまざまであるが,ここでは,東京大学,東京工業大学,早稲田大学,慶應義塾大学の取り 組みを挙げる. 東京大学は,イノベーションの具現化に貢献できる人材を育成するために,「i.school EDGE」や 「EDGE ファシリテーター・プログラム」等により,「イノベーション教育」(=創造性教育:0 から 1 50 を生み出す教育)と, 「アントレプレナーシップ教育」(=起業家教育:1を 10 に育てる教育)のプロ グラムをシームレスに提供している. 東京工業大学は,専門や文化,ジェンダーの違い等の境界を乗り越え,多様な価値観を許容し,チー ムとして協力しながら活動することで,イノベーションを起こせる人材を育成するために,「デザイン 思考ワークショップ」等により,デザイン思考に基づく「もの・ことつくり」,リーダーシップ論等の アントレプレナー育成に焦点を当てた「MBA 関連科目」,ベンチャー起業家やベンチャーキャピタリス ト,メンターによる「アントレプレナーシップ論」の 3 つの柱からなるプログラムを提供している. 早稲田大学は,グローバル展開可能な新規事業を創出できる能力を持つ人材を育成するために,起業 や新規事業創出の基礎的知識や考え方,対話・プレセンテーションスキル等を教育する「アントレプレ ヌールシップ教育プログラム」,モノやサービス,社会システム創出のためのアイデア発想法やデザイ ン手法を教育する「価値共創デザインプログラム」,単なるビジネスプランの作成方法ではなく,プラ ンの実現方法を教育する「ビジネスモデル仮説検証プログラム」の 3 つのプログラムを提供している. 慶應義塾大学は,自分自身の長所と思考方法を学際的なアプローチ能力や新しい価値提案能力,新し いビジネスを統合する能力に変化させていくことができる人材を育成するために,「最先端のシステム 設計と管理手法のプログラム」 , 「イノベーター育成や環境に関する実績あるプログラム」, 「最先端の専 門知識や視点に関するプログラム」の 3 つのプログラムを提供している.各プログラムは,デザイン思 考やシステム思考,ビジネス統合思考の学習をするコースワークと,プロジェクトベースの学習(PBL) をするプロジェクトワークの 2 つのセグメントで構成されている. 第 3 について,2015 年 2 月 14 日と 15 日の 2 日間,東京大学のプログラムの 1 つとして,東京大学 i.school が企画・運営の「EDGE ファシリテーター・プログラム」に参加した.1 日目は,イノベーシ ョンやイノベーション・ワークショップの設計に関する方法論等を学んだ.東京大学 i.school エグゼク ティブ・ディレクターの堀井秀之氏によると,「イノベーションとは,新しく,インパクトのあるモノ やコトによって引き起こされる変革であり,技術中心イノベーションと人間中心イノベーションの 2 つ があるので,イノベーション・ワークショップの課題は,目的を果たす手段を生み出すこと」だった. 新しさを生み出すメカニズムの1つとして,「アナロジーを活用する」ことを挙げた. アナロジー思考の仕方について学ぶために,ワークショップを実施した.まず,既存のサービス内容 が書かれたカードを表層的類似性の観点からグルーピングし,ことわざ等によって,ラベルをつけた. 次に,同じカードを構造的類似性の観点からグルーピングし,ラベルをつけ,アナロジー思考で,新し いサービスを発想した.その後,同じカードを異なる構造的類似性の観点からグルーピングし,ラベル をつけ,新しいサービスを発想することを繰り返した. 2 日目は,1 日目に実施したワークショップを踏まえて,3 時間で実施できるワークショップを設計 し,発表をした.参加者は,1 番実施したいワークショップに投票した後,1 番に選ばれたワークショ ップを実施した.2 日間のワークショップを通して,イノベーション・ワークショップの設計方法や新 しさを生み出すメカニズム等を学び,イノベーション教育のノウハウを習得できた. 4. 主要文献 東京大学 i.school 編(2010) 『東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた』早川書房 前野隆司編(2014) 『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應 SDM「イノベーションのつくり方」』 日経 BP 社 51 金属ガラスを用いたトルクセンサの開発 SVBL 研究員(工・繊維学部) 大熊ひとみ 1. 研究目的 金属ガラスの皮膜を用いたトルクセンサの実用化により,家電,自動車など,幅広い製品の高効率化 を目指す. 金属ガラスとは,東北大で開発された次世代金属材料で ・高強度 ・高弾性 ・高耐食性 ・優れた磁気特性 ・高い塑性加工性 などの性質を持ち,幅広い応用が期待されている. 力 歪み 歪み 外部磁界 Hout = 0 Hout = H1 内部磁界 Hin = H2 (a)磁歪 Hin = H2' (b)磁歪の逆効果 図 1. 磁歪と磁歪の逆効果 本研究で用いる金属ガラスは,Fe 基軟磁性合金であり,磁歪特性を有している.磁歪とは,ある材料 に外部から磁界を印加したときに内部の磁化が変化し,それに伴って材料が微小変形(歪み)を起こす 現象を言う.また,材料に外力が加わり,歪みが起きたときに内部の磁化が変化する現象を磁歪の逆効 果と言う(図 1.参照) . トルクセンサでは磁歪の逆効果を利用する.回転軸上に金属ガラスの皮膜を形成し,その軸にトルク を印加すると,軸と皮膜が同時に歪む.その結果,磁歪の逆効果によって皮膜の内部磁化が変化するの で,それを軸の外側に設けたコイルで検出し,磁化の変化量→歪み量→応力(トルク)という換算を行 うことで,トルクを求める. 磁歪性を示す材料は,金属ガラスの他に純 Ni,Fe-Co 系合金などが知られている.センサに用いる磁 歪材料には ・磁化がゼロの時は歪みもほぼゼロとなり,なおかつ繰り返し磁界を印加しても歪みがゼロに戻る (ゼロ点再現性) ・歪み‐磁化の関係が直線で表される(線形性) という性質が求められる.他の磁歪材料と比べると,本研究の金属ガラスはこれらの点で優れており, センサに適した材料と言える. 52 図 2.トルクセンサ 試作例 2. 活動計画 (1)金属ガラスの基礎特性の測定 温度特性など基礎的な特性を調べ,設計や解析の指標となるデータを取る. (2)センサの開発・設計 (1)を踏まえ,電磁界解析などのシミュレーションを活用し,極力試作レスな開発と設計を行う. (3)センサ周辺装置の改良 企業の協力の下,アンプなどのセンサ周辺機器を改良する. 3. 結果および成果 現在,企業で評価テスト中のほか,特許 1 件を出願準備中. 4. 主要文献 1) 本江克次,中島浩二,石川智仁,杉山雅治,五十嵐貴教,脇若弘之,牧野彰宏,井上明久, 「磁歪膜, 磁歪素子,トルクセンサ,力センサ,圧力センサおよびその製造方法」,特願 2010-53706,トピー工業 株式会社,国立大学法人信州大学,国立大学法人東北大学 2) 内田寛文(信州大) ,吉澤隆明(信州大),正 脇若弘之(信州大),田代晋久(信州大),五十嵐貴教 (トピー工業) ,本江克次(トピー工業) ,村田晃徒(トピー工業),牧野彰宏(東北大),磁歪効果を用 いた力センサに有用な磁性材料の検討,第 25 回「電磁力関連のダイナミクス」シンポジウム講演論文 集,2013,15A2-2 53 2. 萌芽研究 専有スペース利用登録者 所属 利用責任者 研究テーマ 先進繊維工学課程 大越 高性能繊維製造技術の開発 機能高分子学課程 バイオエンジニア リング課程 豊 平井利博 誘導高分子を利用した駆動材料/電気工学材料/衝撃センサー 材料の開発 藤井敏弘 生物模倣プロジェクト 利用責任者 研究テーマ 機器利用登録者 所属 先進繊維工学課程 感性工学課程 森川英明 森島美佳 田中稔久 金 小西 翼水 衛生用マスクの開発 生分解性高分子の繊維・フィルム・ゲル・ナノファイバーの表面 構造観察 ナノファイバーの作製及び特性評価 哉 夏木俊明 機能機械学課程 バイオエンジニア リング課程 応用化学課程 倪 慶清 鮑 力民 機能高分子学課程 高比強度・多機能性を持つ最適な繊維構造体及び繊維強化複合体 の開発 姫野修廣 シャワークリーニングに寄る粉塵除去システムの研究 橋本 稔 PVC ゲルアクチュエーターの解析 秋山佳丈 バイオハイブリッドデバイス創成に関する研究 小林俊一 生物規範型水中推進機構の開発 沖野不二雄 ナノダイヤモンドの構造変化 鈴木大介 高分子粒子の開発 谷上哲也 フォトニッククリスタルの作製 服部義之 ナノカーボンのエネルギー貯蔵材料への応用 滝沢辰洋 材料化学工学課程 複合材料開発 福長 博 マイクロ波応用加熱による天然物から有効成分の抽出及び関連 技術の検討 燃料電池の電極構造の最適化 宇佐美久尚 多孔質ガラス導光型光化学反応器の開発 村上 絶縁高熱伝導材料の開発、電着技術の高度化 泰 嶋田五百合 木質バイオマスからの炭化水素燃料合成 荒木 潤 結晶性多糖類微結晶の機能性材料への応用 伊藤恵啓 化学分解性を有する機能性有機材料の開発 小駒喜郎 SPR を用いたバイオセンサーの研究 54 小山俊樹 アルカリ燃料電池用新規触媒の開発 太田和親 カーボンナノチューブの TEM,ラマン測定 寺本 天然高分子を用いた極細繊維の開発 英 彰 生物機能科学課程 謙二 ゲル化剤の開発と研究 志田敏夫 DNA 修復酵素や相同組換え酵素の機能構造解析 下坂 キチン資化細菌の遺伝子解析 誠 田口悟朗 野川優洋 植物有用成分の生合成機構の解析 Agrobacterium の改変,抗クラウンゴール Agrobacterium 菌の 開発 野村隆臣 遺伝子改変酵素及び翻訳伸長因子の大量調整と機能解析 新井亮一 多様なタンパク質の構造機能解析及びタンパク質工学研究 塩見邦博 チョウ目昆虫遺伝子の機能解析 玉田 シルク材料の利用技術開発研究 靖 生物資源・環境科学 林田信明 新規な形態の野菜の開発 課程 堀江智明 植物の耐塩性関連遺伝子の機能解析 森脇 環境浄化に関する研究 洋 山本博規 枯草菌のテイコ酸及びポテイコ酸修飾機構の解明 梶浦善太 新しい色合いの天蚕糸の生産 ヒト環境遺伝子実 松村英生 高等植物のゲノム情報の活用 験部門 表層ストレス応答と細菌アクチンホモログの解析 小笠原寛 水口 仁 その他 岩木邦男 繊維強化プラスチック材の 100%乾式法による完全分解と強化繊 維の回収・リサイクル 差別化医療素材開発 ダイワボウノイ(株) 繊維の構造解析 55 生物模倣プロジェクト -ケラチン単独から構成されるヒト毛髪ケラチンフィルムの作製と性質- 繊維学部 藤井敏弘,伊藤弓子 1. 研究目的 繊維タンパク質を豊富に含む毛髪は主成分のケラチンとケラチン結合タンパク質(KAPs)から構成 されている.この自己集合により形成されるケラチンフィルムは白色で不透明で,微細な粒子とフィラ メントから成る珊瑚と似たネットワークが観察される.しかし,フィルムや毛髪組織が形成する場合, ケラチンと KAPs の相互作用などの知見は少ない. 本研究では, KAPs の除去処理をした毛髪を調製し, これから可溶化されるタンパク質溶液を用いてフィルムの作製を行った.KAPs をほとんど含まない KAPs フリー型と従来の KAPs を含むケラチンフィルムの性質を検討した. 2. 実験 KAPs は尿素,ジチオスレイトール,エタノールを含む溶液を用いて,化学的な処理を施していない 毛髪断片から抽出した.この残渣毛髪と未処理毛髪から可溶化したタンパク質溶液から,ケラチンフィ ルムはプレキャスト法で作製した.染色は酸化染毛剤(パラフェニレンジアミンなどの染料を含む1剤 と過酸化水素を主剤とする 2 剤を1:1に混合した溶液)を用いて染色した.フィルムは蒸留水で洗浄し, 自然乾燥して使用した.着色とその変化は分光色差計,システイン酸は FT-IR で分析した. 3. 結果および成果 KAPs をほとんど含んでいないケラチンからのフィルム形成において,キャスティング溶液はより高 濃度酢酸の添加を必要とした.従来のケラチンフィルムが不透明であるのに対し,KAPs フリー型フィ ルムは半透明であり,フィルムの下に置かれた紙に書かれている文字が判読できるほど半透明であった (Fig. 1) .KAPs を含む溶液からのフィルムも酢酸濃度が高い条件では半透明であるため,従来型,通 常/高酢酸型,KAPs フリー型のケラチンフィルムを選抜した.はじめに,還元-酸化への応答性を調べ たところ,いずれのフィルムにおいてもその透過性はパーマ還元剤での処理により高まり,パーマ酸化剤で の処理により元の状態へ戻る傾向を示した.また,その微細構造も変化していた.次に,酸化染毛剤を用いて染 色したところ,3種のケラチンフィルムは染色され,その染着性は KAPs の存在よりもフィルムの微細構造により 変化する傾向を示した.フィルム由来のタンパク質粒子を FT-IR で測定したところ,システイン酸(ダメージ分子) に由来する 1041 cm-1 付近にピークが酸化染毛剤により新たに出現した.その高さは,従来型ケラチンフィルム ≈通常/高酢酸型ケラチンフィルム>KAPs フリー型ケラチン フィルムの順であった(Fig. 2). 56 誘電高分子ゲルの機能:エネルギーハーヴェストへの応用 繊維学部 田中佑耶,夏 紅,平井利博 1. 研究目的 誘電高分子を溶媒の含浸によってゲル化したり,可塑剤によって可塑化することで柔軟化することは 広く行われているが,電場応答機能を人工筋肉[1]や駆動素子に活用することは当研究室でも長く検討さ れている.本研究課題は,こうした柔軟誘電材料のコロッサル誘電特性をエネル ギー変換[2]に用いようとする試みである. 2. 実験 電気機械エネルギー変換を機械電気エネルギー変換に応用するものであるが, polling も施されていない透明なアモルファス材料である可塑化誘電高分子に落 球法で衝撃を加えることで発生する電気的な応答を検討した.装置の概要を図 1 に示した.組成の異なる試料について測定を行い,その機能発現の機序を考察し た. 図1.落球法による起電力測定 3. 結果および成果 ここでは可塑化ポリ塩化ビニルについての検討結果を示す.図 2 に示 すように,明瞭な衝撃応答を示した.応答起電力は 1-2V/cm2に達し,図 3 のような顕著な組成依存性 も示した.すべての試料が可視領域では透明で均質,電気的な異方性も持たない材料であることから, 図3.起電力の組成依存性 図2.衝撃による起電力 ゲルの構造への依存性が極めて大きいことが示唆される.可塑化した PVC ゲルについての X 線小角散 乱の結果は,均一に見えるゲルの内部構造が組成によって変化することを示しており,それらとの対比 によってさらに詳細な知見が得られている.また,誘電特性とアクチュエータ機能の検討結果と併せて 考察すると,ナノレベルの相構造に,今回の現象が由来することが明らかになった.(US-JAPAN Workshop in Maui 2014) これらの結果は,こうした汎用の誘電高分子材料がナノ構造制御によって センサー/エネルギーハーヴェスト機能材料として利用できることを示すものである.(特許申請中) 4. 主要文献 [1]平井利博,人工筋肉に求められる伸縮性・耐久性・運動性,Material Stage, 月刊マテリアルステー ジ,14 巻4号, 20-22 (2014). [2]平井利博,ゲルテクノロジーハンドブック,中野義夫監修,第 1 編ゲルの機能・デザイン第 2 章運動・ アクチュエータ,第 1 章誘電性高分子ゲルの電場応答機能,pp.23-29 (2014). 57 レーザー延伸による多孔性繊維の作製 繊維学部 鴨崎 剛,大越 豊 1. 研究目的 多孔性繊維は軽量性, 保温性などを付与できる. 現在の多孔性繊維の作製方法は溶融紡糸で特殊な ノズルを使用する方法や, 海島繊維の島成分を除去する方法であるが, 通常の溶融紡糸と比較すると 生産性が下がる. 先行研究において, 通常の溶融紡糸により得られたポリトリメチレンテレフタレー ト(Poly(trimethylene terephthalate)以下 PTT と略称する)の as-spun 繊維をレーザー延伸した際に, ボイドと呼ばれる空隙の形成を確認している. ボイドを形成することで繊維は多孔化することから, 延伸工程においても多孔性繊維の作製が可能であると考えた. 本研究ではレーザー延伸時のボイド形 成による多孔性繊維の作製を目的とする. 2. 実験 IV=1.02 dl/g の PTT について溶融紡糸を行い, 直径約 96 µm の as-spun 繊維を作製した. as-spun 繊維を延伸前に 50,75,100℃で 1 時間の熱処理を行った. 未熱処理試料および熱処理試料のレーザ ー延伸を行い, 得られた延伸繊維について, 延 伸時の外径測定および SEM による繊維断面観察 によりボイド形成を評価した. 3. 結果および成果 Fig.1 に各試料の最大延伸倍率における繊維断 面画像を示す. 未熱処理試料にボイドは観察され un-annealed DR5.2 50℃ DR5.2 75℃ DR5.0 100℃ DR4.5 なかったが, 熱処理試料の最大延伸倍率ではボイ ドを形成した. これは熱処理により未延伸繊維内 の構造ムラ発生や結晶化した状態から延伸したた めであると考える. このことから, 延伸前の熱 処理は延伸時のボイド形成に有効な手段であると 考える. また, ボイドは繊維表面部には確認さ れず, 繊維中心部にのみ観察され, ボイドのサ Fig. 1. The SEM images for cross section of イズは熱処理温度により異なった. これはボイド PTT drawn fibers. 形成機構が延伸前の構造により異なるためである と考える. Fig.2 に各試料の延伸倍率に対する ボイド分率を示す. 繊維断面観察でボイド形成を 確認した試料は, いずれもボイド分率 10 %程度 を有した. また, 最大ボイド分率は 50℃熱処理 試料を 5.2 倍で延伸した際の 16 %であった. 4. 主要文献 1)Pawlak, A; Galeski, A; Rozanski, A, PROGRESS IN POLYMER SCIENCE, 921-958, 2013 Fig. 2. Dependence of draw ratio on the void fraction. 58 Ⅴ. 資料 1. 事業歴 2014 年度 4月3日 新 2 年生ガイダンス 4 月 5,6,19,20 日 上田城千本桜まつり 桑まるごと活用塾 4 月 7,10 日 学生団体合同ガイダンス 4 月 15,17 日 SVBL 学生委員ガイダンス 実施 4 月 16 日 ベンチャービジネス概論 4 月 21 日 キャンドルワークショップ 開催 4 月 30 日 伊藤吹夕研究員 退職 5 月 1 日~2015 年 2 月 28 日 海外研修支援 事業説明 出展 実施 特別講演会((株)山雅 八木氏)開催 (アメリカ ノースカロライナ州立大学,田島和弥) 5 月 20 日 キャンドルワークショップ 開催 5 月 28 日~6 月 3 日 大学は美味しいフェア(高島屋新宿店)くわりんとう 6月1日 藤松仁特任教授,水野淳史研究員 6 月 17,24,7 月 1,8 日 GIMP 講座 開催 6 月 17 日 キャンドルワークショップ 開催 7 月 22~23 日 外部評価委員会 8 月 4~5 日 おもしろサイエンス in 創造館 8月6日 コマ製作会 開催 8 月 10,22 日 信州ベンチャーコンテスト事前セミナー(上田) 開催 8 月 19~20 日 信州ベンチャーコンテスト事前セミナー(長野) 開催 8 月 21~22 日 信州ベンチャーコンテスト事前セミナー(松本) 開催 8 月 28 日 コマ合戦 実施 8 月 31 日 坂口玲子事務補佐員 退職 9月4日 JASIS2014 見学ツアー 実施 9 月 12 日 SCANTECH2014 見学ツアー 実施 9 月 19~20 日 第 11 回全国 VBL フォーラム 9 月 20 日 SVBL10 周年記念シンポジウム 開催 10 月 4 日 信州ベンチャーコンテスト 2014 開催 10 月 9 日~12 月 17 日 海外研修支援 10 月 17 日 諏訪圏工業メッセ 見学ツアー 11 月 1 日 大熊ひとみ研究員 着任 11 月 14 日 地酒講演会 共催 11 月 27 日,12 月 4 日 知的財産権セミナー 開催 12 月 2,11,17,19 日 P-DEX 技能検定 12 月 3 日 温存の農村計画 座談会 出品 着任 実施 (韓国 出展 開催 全北大学校,葛鑫) 実施 (別紙資料 1) 実施 59 開催 12 月 5 日 ファンケル総合研究所 12 月 13 日 LCMS,SEM 体験講座 開催 12 月 22 日 キャンドルワークショップ 開催 1 月 22 日 P-DEX・桑まるごと活用塾活動報告会 開催 1 月 25 日 長野県産直・直売サミット くわりんとう出品 2月6日 ヤドリギプロジェクト 2 月 23 日 キャンドルワークショップ 開催 2 月 27 日 成果報告会 開催(別紙資料 2) 2 月 28 日,3 月 1 日 サイエンスインカレ P-DEX ポスター発表 3 月 3 日,4 日 信州大学見本市~知の森総合展 2015~ 3月7日 信州ベンチャーサミット 2015 共催 見学ツアー 実施 座談会 60 開催 展示参加 別紙資料(1) P-DEX 技能検定 ●液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS)技能レベル基準表 【初級】 □ LCMS の構造と原理を理解している. 【中級】 ・ 装置の構成について □ 初級講習者への指導を行うことができる. ・ 移動相について ・ 装置の原理・構造について ・ 固定相について ・ 上記初級者の操作項目について ・ 検出器について ・ 装置の操作上の注意について □ ・ イオン化方法について 装置のトラブル発生時の対応ができる. ・ 質量分析方法について □ 装置の起動・終了を行うことができる. □ 試料の前処理を行うことができる. 【上級】 □ 測定パラメータの設定ができる. □ 中級講習者への指導を行うことができる. □ 定性分析方法を理解している. □ 分析条件の選択をすることができる. □ 定量分析方法を理解している. □ 移動相の交換を行うことができる. □ 測定結果を理解することができる. □ カラムの交換を行うことができる. □ 装置の操作上の注意を知っている. □ プローブの交換を行うことができる. □ 質量分析計の分解洗浄をすることができる. ●表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)技能レベル基準表 【初級】 □ 機器の原理を理解している. □ 機器の構造を理解している. □ センサーチップ CM5*1)の原理を理解している. □ センサーチップ CM5 を使うことができる. □ アミンカップリング法によって測定することができる. □ 解析ソフトを使って実験結果を編集することができる. □ 解析ソフトによる非線形解析法(分割解析を除く)で反応速度定数を求めることができる. □ 機器の起動・終了を行うことができる. □ 機器の定期的なメンテナンス(Sanitize を除く)を行うことができる. □ 機器のトラブルシューティングを行うことができる. *1)アミノ基,チオール基,アルデヒド基を介して,リガンドを固定化 【中級】 □ 初級講習者への指導を行うことができる. ・機器の原理・構造の説明について ・センサーチップ CM5 の原理・利用法について ・アミンカップリング法の原理・利用法について ・解析ソフトの使い方について ・機器のメンテナンスについて □ Sanitize を行うことができる. □ システムチェックを行うことができる. □ センサーチップ SA*2),NTA*3),HPA*4)の原理を理解している. *2)ビオチン化した DNA,ペプチド,タンパク質を固定化 *3)His-Tag タンパク質を固定化 *4)リン脂質,糖脂質などを固定化 61 【上級】 □ 中級講習者への指導を行うことができる. □ キャプチャー法を行うことができる. □ 濃度測定を行うことができる. □ 未知結合物質のスクリーニングを行うことができる. □ センサーチップ SA,NTA,HPA を使うことができる. □ たんぱく質-たんぱく質相互作用の解析を行うことができる. □ たんぱく質-ペプチド相互作用の解析を行うことができる. □ DNA-たんぱく質相互作用の解析を行うことができる. □ 糖-たんぱく質相互作用の解析を行うことができる. □ 脂質-たんぱく質相互作用の解析を行うことができる. □ 精製・スクリーニングへ応用することができる. □ BIACORE と他の分析手法との組み合わせ・比較を行うことができる. ●操作型電子顕微鏡(SEM)技能レベル基準表 【初級】 □ 機器の起動・停止が行える。 □ 基本的な操作(試料のセット、観察,画像取込・保存)が行える。 □ 適正な試料作成ができる(Ptコーティング装置が使用できる)。 □ 観察条件の変更が行える(高真空→低真空モード)。 □ 簡単なトラブルシューティングについて説明できる。 ・ チャージアップ現象 ・コンタミネーション ・ビームダメージなど 【中級】 □ 初級者に基本操作を指導できる。 □ 機器の内部構造および測定原理について説明できる。 □ (電子ビームを試料に当てた時出てくる情報と特徴も説明できる) □ 加速電圧と像質の関係が説明できる。 □ 3D sight などの様々なソフトを使うことが出来る。 □ 生物系試料の作成ができ観察できる。 □ EDS分析操作ができる。 【上級】 □ 中級者への指導ができる。 □ 画像障害の現れ方と原因が説明できる。 ・像が動く ・試料構造が見えない ・像がゆがむ ・像がざらつく ・明るさが不安定 □ 軸調整ができる。 □ EDS分析のデータ解析とピーク重なりなど判別できる。 □ 様々な試料について,正しいサンプリング(試料作成方法)を行って観察を行うことが出来る。 62 別紙資料(2) 2014 年度 信州大学 SVBL 成果報告会 プログラム 日 時 : 2015 年 2 月 27 日 ( 金 ) 13:00~ 16:30( 受 付 12:30~ ) 場所:信州大学繊維学部総合研究棟ミーティングルーム 1 主 催 : 信 州 大 学 サ テ ラ イ ト ・ベ ン チ ャ ー ・ビ ジ ネ ス ・ラ ボ ラ ト リ ー ( 信 州 大 学 SVBL) (司会: SVBL 長 繊維学部 教授 小西 哉) Ⅰ 開会式 13:00~13:05 SVBL 長 繊維学部 教授 小西 哉 開会の挨拶 Ⅱ SVBL 事業 成果報告 13:05~13:15(発表 5 分) SVBL 助教 中西弘充 SVBL 技術補佐員 掛川恵子 イベント報告 機器利用報告 Ⅲ SVBL プロジェクト研究 成果報告 13:15~14:05(発表 7 分,質疑応答 3 分) SVBL 助教 中西弘充 「林業作業用保護被服の開発」 SVBL PD 研究員 松村哲也 「地域の生物多様性を脅かす国内外来魚の産地判別」 SVBL PD 研究員 小西 繭 SVBL 研究員 水野淳史 「葉緑体遺伝子情報を元にした桑品種の系統解析」 「アントレプレナーシップ教育の政策研究と実践」 SVBL 研究員 大熊ひとみ 「金属ガラスを用いた磁歪式トルクセンサの開発」 Ⅳ SVBL 萌芽研究(専有スペース利用者) 成果報告 14:05~14:20(発表 5 分,質疑応答 2 分) 「ケラチン単独から構成されるヒト毛髪ケラチンフィルムの作製と性質」 藤井研究室/研究支援推進員 「レーザー延伸による多孔性繊維の作製」 Ⅴ 伊藤弓子 大越研究室/先進繊維工学課程 4 年 鴨崎 剛 研修支援事業 成果報告 14:20~14:45 1) 概要説明(発表5分) 繊維学部 准教授 平田雄一 2) 海外研修報告(発表7分,質疑応答3分) 「香港海外研究を終えて」 「韓国 全北大学校での研修を終えて」 理工学系研究科 繊維・感性工学専攻 2 年 重澤尚希 理工学系研究科 機械・ロボット学専攻 2 年 葛 鑫 - 休 憩 (桑関係試食会,ものつくり展示)- 63 14:45~15:10 Ⅵ 学生起業支援 成果報告 15:10~15:50 1)セミナー・講習会 報告 (発表 5 分) SVBL 助教 中西弘充 2) 学生起業活動報告 (発表 5 分,質疑応答 2 分) 「モック活動報告」 「ArkOak 活動報告」 繊維学部 生物資源・環境科学課程 3 年 赤石泰隆 「P's Candle 活動報告」 理工学研究科 化学・材料専攻 2 年 小野口貴士 「共創デザインラボ活動報告」 繊維学部 感性工学課程 3 年 森谷芳葉子 分析機器エキスパート(P-DEX)養成事業 / P-DEX 活動報告 15:50~16:10 1) 概要説明(発表 5 分) SVBL 専門部会長 繊維学部 准教授 森脇 洋 繊維学部 バイオエンジニアリング課程 2 年 2) P-DEX 活動報告 柴田 誠 (発表 5 分,質疑応答 2 分) 走査電子顕微鏡(SEM) Ⅷ 金田 望 繊維学部 生物機能科学課程 3 年 丸山翔平 「桑まるごと活用塾活動報告」 Ⅶ 繊維学部 機能機械学課程 4 年 繊維学部 材料化学工学課程 3 年 黒岩愛里 閉会式 16:10~16:30 SVBL 運営委員 SVBL 専門部会長 繊維学部 准教授 森脇 洋 講評 閉会の辞 記念撮影 懇談会 17:00~ (繊維学部生協 1F,会費 1,000 円,学生無料) 64 2. 展示会参加(広報) 第 7 回「大学は美味しい!!」フェア 日時: 5 月 28 日(水)~6 月 3 日(火) 場所: 新宿高島屋 11 階 催会場 展示内容:くわりんとう出展 第 14 回ふしぎ・なるほど・おもしろサイエンス in 上田創造館 2014 日時: 8 月 4 日(月) ,5 日(火) 場所: 上田創造館 展示内容: 「目で見えない世界を体験しよう」 サーモグラフィ,SEM 写真クイズ 第 2 回信州大学見本市 日時: 2015 年 3 月 3 日(火) ,4 日(水) 発表場所:松本市浅間温泉文化センター 展示内容:信州大学 SVBL の概要 65 報道歴 月日 報道元 記事 4 月 18 日 市民タイムス 26 面 山雅の歩み「地域とともに」 信大で八木取締役が講演 6 月 17 日 信濃毎日新聞 8面 創業希望者ら対象 ビジネス新提案 県や信大が募集 10 月にコンテスト 6 月 26 日 日本農業新聞 13 面 考案「くわりんとう」ヒット 桑の葉粉末 菓子に活用 7月5日 朝日新聞 28 面 信州大 桜井里奈さん キャンパスライフ@信大 ベンチャーがテーマ「桑まるごと活用塾」 桑スイーツ第 2 弾に挑戦 9 月 13 日 信濃毎日新聞 バイオ資源活用 産学連携の発表 信大繊維学部で学会大会(日本生物高分子学会) 9 月 17 日 信濃毎日新聞 創業の原点 先輩たちの学ぼう 学生の起業など支援 SVBL10 周年記念 9 月 21 日 中日新聞 信州版 22 起業の心構え説く 創業者が信州大で講演 面 9 月 26 日 毎日新聞 22 面 創業者「大きい夢持って」 信大でシンポ 10 月 5 日 信濃毎日新聞 32 面 事業築く醍醐味披露 地域の課題解決・新産業創出へ 新ビジネスのアイデア競う コンテストに 15 人出場 県が信大などと初企画 10 月 22 日 信濃毎日新聞 20 面 未来へ紡ぐ 元気の鍵 若者たち 1 さんさんと上田東御小県 信大繊維学部の桑まるごと活用塾前代表 桑から新商品 10 月 24 日 信濃毎日新聞 27 面 桜井里奈さん 支えに感謝 さんさんと上田東御小県 ともに学ぶ,高め合う 学生のまち 上田で4 起業を支援する信大の SVBL 社会に触れて育む精神 10 月 25 日 信濃毎日新聞 6面 さんさんと上田東御小県 業種・分野の枠を超え 1 月 31 日 信濃毎日新聞 32 面 ものづくり 5 挑む上小の技 連携 新たな発想形に じょうほう交差点 ヤドリギ伐採・活用 NPO が活動紹介 来月 6 日信大理学部で開催 2 月 13 日 信濃毎日新聞 24 面 ヤドリギ伐採・販売 活動と課題を報告 松本の NPO,信大で 2 月 28 日 信濃毎日新聞 6面 学生の研究開発 成果報告会開く 信大に拠点の SVBL 66 3. 業績リスト ◆ 投稿論文 1) 小西 繭・田崎伸一・高田啓介・井口恵一朗(2015)絶滅危惧種シナイモツゴの生息するため池群 への地域住民の価値評価とその影響要因.応用生態工学,17(2),印刷中.(査読有) 2) 松村哲也,小西 繭,中西弘充,小西 2015, No.63, 報文 (印刷中) 哉,「クワ巨木探索プロジェクト」の試み,中部森林研究, 3) H. Xia, Y. Hashimoto, T. Morita, T. Hirai, Formation of Polyketone Particle Structure by Hexafluoroisopropanol Solvent Evaporation and Effects of Plasticizer Addition, J. Polym. Sci. Part B: Polym. Phys., 52, 887-892 (2014). 4) H. Xia, T. Hirai, New Shedding Motion, Based on Electroactuation Force, for Micro- and Nanoweaving, Advanced Engineering Materials (ADEM), 15, 962-965 (2013). 5) 平井利博,人工筋肉に求められる伸縮性・耐久性・運動性,Matarial Stage, 月刊マテリアルステ ージ,14 巻4号, 20-22 (2014). 6) 平井利博,ゲルテクノロジーハンドブック,中野義夫監修,第 1 編ゲルの機能・デザイン第 2 章運 動・アクチュエータ,第 1 章誘電性高分子ゲルの電場応答機能,pp.23-29 (2014). 7) Toshihiro Hirai, Soft Actuators, Eds. H.Okuzaki and K.Asaka, Chapter 10. Dielectric Gels, pp.169-182, Springer (2014). 8) Toshihiro Hirai, Soft Actuators, Eds. H.Okuzaki and K.Asaka, Chapter 19. Magnetic Fluid Composite Gels, pp.255-270, Springer (2014). 9) Fujii, T., Takayama, S., and Ito, Y.: A novel purification procedure for keratin-associated proteins and keratin from human hair. J. Biol. Macromol., 13(3), 92-106 (2013) 10) 藤井敏弘:ケラチンフィルムのヘアカラー製剤との染色性とその応用. Fragrance J., 42(3), 48-53 (2014) 11) 藤井敏弘:毛髪から作られるケラチンフィルム. コンパーテック, 10(499), 97-101 (2014) ◆依頼論文 1) 阿部信一郎・桟敷孝浩・小西 繭・井口恵一朗(2014)「身近な水辺の自然の価値を探る」特集に あたって.海洋と生物,36(4):359-360.(査読無) 2) 小西 繭(2014)里山のため池の価値−「いま」と「これから」.海洋と生物,36(4):374-378. (査読無) 67 ◆ 学会発表 1) 土屋良磨 1・國井雅代 1・向田萌香 1・久保田穏香 1・中西弘充 2・安河内祐二 3・瀬筒秀樹 3・高須陽 「カイコ蛹期の休眠ホルモン放出制御と 子 3・塩見邦博 1(1 信州大繊維・2 信州大 SVBL・3 生物研) GABA 受容体との関係」日本蚕糸学会 中部支部第 70 回・東海支部第 66 回研究発表会(岡谷)2014 年 9 月 25 日 2) 早川佳明 1,小西哉 1,田邊耕平 2,中西弘充 3(1 信大・繊維,2 信大院・理工学系,3 信大・SVBL) 「タンパク質を用いた燃料電池用触媒電極の開発」2014 年度 SICE(計測自動制御学会)中部支部シ ンポジウム(長野)2014 年 9 月 3) 中西弘充 1, 伊藤吹夕 1, 松村哲也 1, 小西繭 1, 松浦俊介 1, 田口悟朗 2, 小西哉 1,2(1 信州 大・SVBL,2 信州大・繊維) 「桑葉パウダーを練り込んだ「くわりんとう」の商品開発」産学連携 学会第 12 回大会(下諏訪)2014 年 6 月 口頭発表 4) 志水 誠・伊藤吹夕・小西 繭・森脇 洋・野村隆臣.長野県の里山ため池から発見された新たなアル ギン酸分解細菌の単離と同定.第 37 回日本分子生物学会,パシフィコ横浜,2014 年 11 月. 【ポス ター発表】 5) 松村哲也,古賀 聡,中西弘充,小西 哉, 上高地国有林内横尾地区における入林者の外観色彩 調査,第 125 回日本森林学会大会, P1-224, 2014.3.26-29. 第 125 回大会学術講演集 p.139 6) 松村哲也,小西 繭,中西弘充,小西 哉, 「クワ巨木探索プロジェクト」の試み,第 4 回中部 森林学会大会研究発表会, 2014.10.25-26. 第 4 回中部森林学会大会プログラム・講演要旨集 p.34 7) 松村哲也,上村 巧, 油浸による防護服生地の強度変化,第 21 回学術研究発表会・意見交換会, 2014.10.25-26. 第 21 回学術研究発表会講演要旨集 P.24 8) 藤井敏弘,伊藤弓子:毛髪ケラチン結合タンパク質(KAPs)の新しい分離方法と KAPs 高含量ケ ラチンフィルムの作製;第 63 回高分子学会年次大会予稿集 63(1), 5421-5422 (2014) 9) 藤井敏弘,比嘉善一,伊藤弓子:プレキャスト法によるケラチン結合タンパク質を欠いたヒト毛髪 ケラチンフィルムの作製とその性質;第 69 回繊維学会予稿集,69(1) 3H07 (2014) 10) 林香,伊藤弓子,児山祥平,藤井敏弘:ヘアカラー剤で染色したヒト毛髪ケラチンフィルムを利 用した退色試験 -水と金属イオンの影響-;第69回繊維学会予稿集,69(1) 2P158 (2014) 11) 比嘉善一,伊藤弓子,小関道彦,藤井敏弘,和田潤,川副智行:ヒト毛髪ケラチンフィルムを利用 したシャンプーとコンディショナーの摩擦と吸着の評価;第 69 回繊維学会予稿集,69(1) 2P263 (2014) 12) 猪股良平,伊藤弓子,藤井敏弘:毛髪ケラチンフィルムの作製と性質–各種還元剤による抽出-;日 本生物高分子学会 2014 年度大会 講演要旨集 14(2), 110 (2014) 13) 長橋由布子,林香,伊藤弓子,藤井敏弘:ヘアカラー剤で染色したケラチンフィルムの退色性;日 本生物高分子学会 2014 年度大会 講演要旨集 14(2), 110 (2014) 14) 林香,伊藤弓子,藤井敏弘:酸化染毛剤によるヒト毛髪ケラチンフィルムの染色とその性質;日本 生物高分子学会 2014 年度大会 講演要旨集 14(2), 121 (2014) 15) 八十島梨沙,伊香賀敏文,金慶孝,大越豊,田島武治,山口秀明,ポリエチレンテレフタレート/ シンジオタクチックポリスチレン複合繊維の作製と評価,成形加工シンポジア, 2014,361-362 16) 姫野達也,伊香賀敏文,金慶孝,大越豊,田島武治,山口秀明,レーザー延伸によるシンジオタク チックポリスチレン(sPS)繊維の構造と物性,成形加工シンポジア, 2014,357-358 68 17) 松野岳,姫野達也,伊香賀敏文,大越豊,田島武治,山口秀明,綿岡勲,シンジオタクチックポリ スチレン(sPS)のレーザー延伸時における 繊維構造形成,繊維学会年次大会予稿集, 2014,69,2P211 18) Hong Xia, Tsuneaki Yamabe, Toshihiro Hirai, Micro/nanofiber Weaving Technology Based on Electroactuation Force, International Symposium on Fiber Science and Technology (ISF 2014), Sept.29-Oct.1, Tokyo (2014). 19) H. Sato,T. Hirai,Electrical Function of Dielectric PVC Gel – Electro-optical function -,#355, International Symposium on Fiber Science and Technology (ISF 2014), Sept.29-Oct.1, Tokyo (2014). 20) M. Takasaki, M. Yoshizawa, N. Fukushi, S. Hoshi, Y. Yamaguchi, Y. Okoshi, T. Hirai, I. Omura , Preparation of Ultra-Fine Fiber of Drug-Loaded Polylactide by Laser-Electrospinning for Controlled Release of Drug, International Symposium on Fiber Science and Technology (ISF 2014), Sept.29-Oct., Tokyo (2014). 21) 田中佑耶,夏紅,佐藤洸,平井利博,高分子ゲルの衝撃センサー機能, 平成 26 年度繊維学会年 次大会, 2D-08, 繊維学会予稿集, 2014. 22) 佐藤洸,平井利博,電場で誘起される PVC ゲルの光弾性現象, 平成 26 年度繊維学会年次大会, 2P-118, 繊維学会予稿集, 2014. 23) Hong Xia, Yoshio Hashimoto, Toru Morita, Toshihiro Hirai, 溶媒 HFIP によるポリケト ンの積層粒子形成と可塑剤の添加効果, 平成 26 年度繊維学会年次大会, 2P-117, 繊維学会予稿 集, 2014. ◆国際学会 1) (基調講演)Toshihiro Hirai, Prospect of Future Fiver and Textile Industry –What is ultimate fiber technology?-, The 7th Textile Bioengineering and Informatics Symposium (TBIS & APCC 2014), Aug.6-8, HKPU, Hong Kong, China 2014. Plenary Lecture 2) (招待講演)Toshihiro Hirai, New Possibility of Textile Polymers for Electro-active Materials, Innovative Composites Summit (ICS JE 14),March 11-13, Paris, JEC 2014. Invited Lecture 3) (招待講演)Toshihiro Hirai, Possibility of Dielectric Polymer Gel Actuators: How can they be electrically active? US-Japan Workshop on Soft Matter based Active Materials and Tactile Sensing and Their Integrated Systems, Sheraton Maui, May 21-23 (2014). Invited Lecture 4) (基調講演)Toshihiro Hirai, The movement to the smart fiber & textile development in Japan –Novel functions of dielectric polymers used in fibers and textiles-, Textile International Forum and Exhibition 2014 (TIFE 2014), Oct.1-3, Taipei, Taiwan (2014). Plenary Lecture 5) (招待講演)Toshihiro Hirai, Dielectric polymer gels as an electrically active soft actuator, Conference on the Physics, Chemistry and Biology of Water (the Water Conference 2014), Oct.9-12, Bulgaria, Invited Lecture 69 ◆ 招待講演 1) 中西弘充,「信州大学 SVBL の取組みと桑バイオマスの有効活用について」,日本生物高分子学会 2014 年度大会(上田) ,2014 年 9 月 12 日,シンポジウム 2) 松村哲也,上高地国有林内横尾地区における入林者の外観色彩調査 大学学士山岳会平成 26 年度総会, 2014.11.1. 松本市 ~調査の経過と報告~,信州 ◆ 受賞歴 「多孔質タンパク質を用 1) <SICE 中部支部 ロボット賞>早川佳明,小西哉,田邊耕平,中西弘充, いた燃料電池用触媒電極の開発」計測自動制御学会中部支部シンポジウム 2014(長野)2014 年 9 月 19 日 ◆ 寄稿 1) 中西弘充「ご存知ですか?くわりんとう!」千曲会報 第 307 号,18,平成 26 年 7 月 1 日 2) 中西弘充,藤松仁「信州大学 SVBL で取り組まれた三大イベント」千曲会報 第 308 号,7,平成 27 年1月1日 3) 須之部友基・小西 繭・赤川泉・吉川朋子・小早川みどり(2014)日本魚類学会における男女会員 の入会状況,学生会員の進学・就職と今後の課題について: アンケート調査の結果.日本魚類学 雑誌,61(4):400-405. ◆ その他 1) 田代晋久,脇若弘之,○大熊ひとみ(信州大学),牧野彰浩(東北大学),軟磁性金属ガラス溶射に よる磁歪膜を用いたトルクセンサ,科学技術振興機構(JST)新技術説明会,2015 年 3 月(予定) 70 信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー 活動報告書 平成 26 年度 編集 信州大学 SVBL 活動報告書編集委員会 発行日 平成 27 年 4 月 1 日 発行 信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(信州大学 SVBL) 〒386-8567 長野県上田市常田 3-15-1 TEL 0268-21-5325 FAX 0268-21-5326 E-MAIL [email protected] URL http://www.svbl.jp/ 無断で複製・転載することを禁じます。 C 2015 信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー ○
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