PICマイコンを用いた電子回路の制御

PICマイコンを用いた電子回路の制御
森研究室
S03S024
1.序論
マイコンとは、電子回路を制御するためのコンピュータの一種である。電灯のオン/
オフはスイッチ一つで切り換え可能な簡単な回路で操作できるが、ある一定時間でオン
/オフを繰り返したい時など、その回路は少し複雑化してしまう。ところが、ここにマ
イコンを組み込むと、その動作をプログラムが代わりに行ってくれるので回路の複雑化
を避けられ、回路の縮小化が可能になる。つまりマイコンとは、このようなちょっと複
雑な処理をプログラムで実現させるために特化されたコンピュータであると言える。マ
イコンの特徴は、パソコンと同様に中心にCPUを備え、そこへRAM,ROM,I/
Oが装備されていることである。ただパソコンとは違い、マイコンはメモリの容量が小
さいため、RAMでデータを読み込み実行することはしない。代わりに、CPUはRO
Mから逐次命令を読み出し実行する方法をとる。
PICマイコン(PIC)も同様に様々な周辺機器を制御するために用いられる。P
ICは、回路とプログラム、モーターやLCDなどの様々な電子部品や周辺機器をあわ
せることで、可能な動作がどんどん広がる。本研究の目的は、このPICを用いLED
点灯装置(LEDフラッシャー)を作ることで、PICの特性を知ることである。
2.製作方法
PICには数多くの種類が存在するが、今回はPIC16F84Aを選択した。これ
は、実験が何度も行えるように、プログラムが電気的に消去/書き換えが行えるフラッ
シュメモリの搭載を優先したためである。また、PICに接続する部品が少ないため、
ピン数が18でも十分に回路作製をできるからである。図1はPICマイコンの写真で
ある。実際の大きさは縦約 20 mm 横約 8 mm である。
図1.PICマイコン16F84A
PICでは、プログラム作製にアセンブリ言語という、単純で理解しやすい言語を用
いる。また、このアセンブリ言語で記された命令を処理するのがアセンブラと呼ばれる
もので、今回はMPASMというアセンブラを使用した。基本は、この言語を専用のツ
ールソフトで作製し、回路の動作が確認できるまで試行を繰り返す。ここで、作製した
プログラムは専用ライターを用いPICに書き込む。このとき、各機器は図2のように
専用のケーブルにてライターとPCを接続して、電源も入った状態である。
図2.ライターとPCの接続
製作の手順は以下のとおりである。
ライターソフト
ライターハード(ボード)
PICマイコン→
(デバイス)
(1) ライターハード(ボード)の作製
(2) ボードの動作チェック
(3) ライターコントロールソフトのインストール
(4) アセンブラソフト(MPASM)のインストール
(5) ドライバーソフトのインストール
(6) PCとボードの接続ポート確認
(7) 電子回路作製(LEDフラッシャーの作製)
(8) MPASMを用いプログラム作成
(9) ライターソフトの起動
(10)ボードに電源が入っているか確認
(11)ポートとボードの接続確認
(12)PIC16F84A(デバイス)をボードにセット
(13)デバイス設定を行う
(14)作製したプログラムファイルをロード
(15)プログラムの項目を押し、書き込み開始
(16)終了したら、デバイスをはずす
(17)デバイスを回路に組み込み動作確認
(18)反応が無ければ原因を探し、改善する
(19)動作確認ができるまで繰り返す
(20)確認できたら終了
電子回路
図3.製作の基本手順
2-1)ライターの準備(1)~(6)
まずは実験環境を整えることから始めた。実験には、PICマイコン,ライターハード,
ライターソフト,アセンブラソフト,ドライバーソフト,電子回路の作製に必要な機器・材料
と、その他接続用ケーブルが必要である。
図2の(1)~(2)より、最初はボード(ライターハード)の作製をした。これは、
秋月電子通商で購入したキットを組み立てた。ボード単体の動作チェックをし、問題の
無いことを確認した。正常に動作しているかどうかは、ボード右上に2つあるLEDラ
ンプの右側が点灯することで確認できる。
図4.ライターハードの完成図
図2の(3)~(6)より、PCに各ソフトをインストールし、起動するかどうかを
確認した。チェックが終了したら、今度はボード等の機器やケーブルをしっかりと接続
した。そして、2回以上は確認してから最後にボードの電源をオンにした。このとき、
ポート番号が合っていないと接続はうまくいかないので、あらかじめポート番号を確認
しておいた。ライターソフトがハードを認識したので、接続はうまくいったと考えられ
る。以上でライターが完成した。
2-2)LEDフラッシャーの作製
図2の(7)~(8)より、LEDフラッシャーの回路図を読み必要なものをそろえ
た。その後回路の実装にかかった。
図5.LEDフラッシャー装置
2-3)プログラミング
次にアセンブラソフトのMPASMを利用したプログラミングを行った。プログラム
は元になるデータがあったので、それを参考に新しいプログラムを作成した。手を加え
ることで、LEDランプの点滅の順番や、時間の間隔を変えられるようにした。
2-4)PICへの書き込み作業(9)~(16)
図2の(9)~(11)より、ライターの準備を整えた。ライターを起動し接続を確認で
きたらPICをボードにセットした。デバイスの種類を選択し、プログラムのソースファ
イルを開き、ソースから入手した情報をデバイスへ書き込んだ。書き込み終了を確認した
上、PICをボードから外した。
図6.ライターソフト起動時の画面
2-5)PICの回路への実装
図2の(17)~(20)より、PICを回路に組み込み電源を入れ、期待通りの動
作が観られるかを観察した。
3.結果と考察
LEDフラッシャーを動かしたところ、どの試行運転もほぼ失敗に終わり、期待した
プログラムどおりの動きを示さなかった。これは、プログラミング時に必要な命令を入
力していなかったり、回路図を読み違えていたりしたことが主な原因だった。しかし、
試行していくうちに、プログラムや回路の問題点を発見でき、一つずつ改善していくこ
とで、最後にはプログラミング通りの動作を確認できた。PICを使用して、LEDラ
ンプの点滅の順番や早さを変えることは可能となった。
また、PICの構成にX-PORTという部品を加えればネットワーク接続が可能に
なる。そこで、実際にX-PORTを用いた回路の製作を試みたが、回路及びプログラ
ムが複雑なため、作製に失敗した。しかし、この回路が完成すれば、液晶表示器や測定
器をセットしネットワーク上で回路を制御できると期待できる。
参考文献
[1] 高橋 隆雄 「やさしい PIC マイコン プログラミング&電子工作」