抗不整脈薬 1.心臓の各部位における活動電位 1 2.心筋細胞の活動電位とその背景の膜電流 洞結節細胞 心房筋細胞 心室筋細胞 2 3.心筋の活動電位形成に関与するイオン電流 名称 2+ Ca 電流 (Ica) + K 電流 pacem aker 電流 分布する心筋細胞 機能と役割 全ての心筋細胞、ただし、洞 ①活動電位の立ち上がり相(第0相)の形成(ただし、洞結 結節と房室結節には少ない 節、房室結節は少ない) + Na 電流(INa) ②興奮性、伝導速度、不応期を決定する ③3型QT延長症候群の病因(SCN5A遺伝子変異) 全ての心筋細胞 ①活動電位のプラトー相(第2相)の形成 2+ ②収縮に必要なCa の補給 2+ L型Ca 電流(Ica-L) ③自動能(洞結節、房室結節) ④活動電位の立ち上がり相(洞結節、房室結節) ⑤房室結節の伝導決定 洞結節、房室結節、Purkinje ①洞結節の自動能に一部関与 2+ 線維等の刺激伝導系に多 T型Ca 電流(Ica-T) い。他の心筋には少ない。 + ①再分極(特に第3相)の形成 遅延整流K 電流(IK) ②自動能に関与(洞結節、房室結節) 全ての心筋細胞 IKs:遅い成分 ③1型QT延長症候群(KCNQ1遺伝子変異)及び2型QT延長 IKr:速い成分 症候群(KCNH2遺伝子変異)の病因 全ての心筋細胞、特に ①活動電位第1相の形成 + 一過性外向きK 電流(Ito、IA) Purkinje線維と心房に多い。 ②活動電位持続時間の決定に寄与 洞結節、房室結節を除く他 ①静止膜電位の決定 + 内向き整流K 電流(IK1) の心筋細胞 ②緩やかに経過する再分極相の形成 洞結節、心房筋、房室結節 ①自動能の抑制 (心室内は極めてて少ない) ②心房活動電位の持続時間短縮、静止膜電位の過分極(興 + ACh感受性K 電流(IKACh) 奮性抑制) ③房室伝導抑制 + ①虚血時の活動電位持続時間の短縮 全ての心筋細胞 ATP感受性K 電流(IKATP) 洞結節、房室結節、Purkinje ①自動能の形成 過分極活性化内向き電流(If) 線維 3 4.不整脈 (1)定義 成人では60-100/分の洞調律以外の調律を総称して不整脈と呼ぶ。従って、不整脈は ①心臓の興奮の起源が洞結節以外にあるもの(異所性) ②興奮の起源が洞結節にあっても興奮頻度が上記の頻度を逸脱するもの。 ③興奮の伝導の異常 に大きく分けられる。 (2)分類および頻度 4 (3)不整脈の成因 A.異常自動能 B.Triggered activity C.リエントリー A.異常自動能 洞結節、房室結節以外ではⅠK1チャネルが常に開口しているため、膜電位をK+平衡電位 に維持している(-90mV)。何らかの原因でこのⅠK1チャネルが障害を受けたり、あるい は減少すると、深い膜電位が維持できなくなる。膜電位が浅くなると(例えば-40mV)、 Na+チャネルは不活性化されているが、Ca2+チャネルは活性化されやすい状態になる。 つまり、少しの電流でCa2+チャネルが開口し、活動電位を生じる。これが異常自動能の成 因である。 5 B. Triggered activity 早期後脱分極 early after depolarization (EAD)と遅延後脱分極 delayed after depolarization (DAD) EAD 活動電位持続時間の異常な延長が原因と なり、浅い膜電位が長い時間維持されたとこ ろに、内向き電流(Ca2+電流)が不活性化から 回復すると、わずかな電流変化で再び内向き 電流が起こり、新たな活動電位が発生する。 IK、INaなどの遺伝子異常(先天性QT延長症候 群)、徐脈、抗不整脈薬をはじめとする種々の 薬物(薬物誘発性QT延長症候群)により活動 電位が極端に延長したとき発生する。 DAD 細胞内Ca2+濃度の異常増加が原因である。 SRからのCa2+遊離の増加 → Na+/Ca2+交換 系による内向き電流(Na+電流) → 内向き電 流が膜電位を脱分極させる(DAD) → さらに Na+チャネルやCa2+チャネルの活性化を引き 起こせば、新たな活動電位が発生し、DADを 繰り返す悪循環が形成される。ジギタリス、カ テコラミン、虚血、など細胞内Ca2+増加により 発生する。 6 家族性QT延長症候群の遺伝子異常 (不整脈薬物治療に関するガイドライン、JCS2004より) LQT3 Na-channelの αサブユニット hinged lidの欠失 7 C.リエントリー 「一定の電気回路(興奮旋回路)を興奮が回り続ける」ことをいう。多くの 持続性不整脈の機序となる。 リエントリーが生じる条件: 1)リエントリー回路 2)不均一な興奮伝導特性によって生じる一方向性ブロックおよび緩徐伝導 心筋の不応期が短く、また伝導速度が遅いほど、リエントリー回路は安定する。 8 1)房室リエントリー性頻拍 2)房室結節リエントリー性頻拍 逆行性P波 9 5.抗不整脈薬 ・抗不整脈薬は、自動能や伝導を抑制したり、不応期を延長する。 ・抗不整脈薬(Ia、Ⅲ)は、催不整脈作用(proarrhythmic effect)があり、QT延長に伴い 心室頻拍(torsade de pointe)を生じることがある。 分類 1.Vaughan William分類 作 用 機 序 Ⅰa 活動電位延長 薬 剤 quinidine、procainamide、disopyramide、 ajimaline,cibenzoline、pirmenol Ⅰb Na+チャネル遮断 活動電位短縮 lidocaine、mexiletine、aprindine、phenytoin Ⅰc propafenone、flecainide、pilsicainide 活動電位不変 Ⅱ βアドレナリン受容体遮断 propranolol、nadolol Ⅲ K+チャネル遮断 amiodarone、sotalol、nifekalant Ⅳ Ca2+チャネル遮断 verapamil、diltiazem、bepridil 2.Sicilian Gambit 分類(次頁) 10 Sicilian Gambit分類 薬剤 cibenzoline disopyramide pirmenol procainamide quinidine aprindine lidocaine mexiletine flecainide pilsicainide propafenone nadolol propranolol amiodarone nifekalant sotalol bepridil diltiazem verapamil atropine adenosine digoxin チャネル Na Ca K 受容体 臨床効果 pump VW 洞調律 心外 I.f α β M2 A1 Na-K 左室 分類 ATP への 性の 機能 ase 影響 副作用 fast med slow Ia A ○ ▲ ○ ↓ → ○ Ia A ▲ ○ ↓ → ▲ Ia A ▲ ↓ ↑ ○ Ia A ▲ ↓ → ● Ia A ▲ ○ ○ → ↑ ▲ Ib I ○ ○ ○ → → ▲ Ib ○ → → ▲ Ib ○ → → ▲ Ic A ○ ↓ → ○ Ic A ↓→ →. ○ Ic A ▲ ↓ ↓ ○ II ● ↓ ↓ ○ II ○ ● ↓ ↓ ○ III ○ ○ ● ▲ ▲ → ↓ ● III ● → → ○ III ● ● ↓ ↓ ○ IV ○ ● ▲ ▲ ? ↓ ○ IV ▲ ↓ ↓ ○ IV ○ ● ↓ ↓ ○ ● → ↑ ▲ ※ ? ↓ ○ ※ ● ↑ ↓ ● 心電図 PQ QRS JT ↑ ↑↓ ↑ ↑ ↑↓ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ → ↑ ↑→ ↑ ↑ → ↓ ↓ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ If:過分極活性化内向き電流、 JT:Q-Q間隔、 M2:M2受容体、 A1:アデノシン受容体 阻害程度: ◯低 ▲中 ●高 ※作動薬 A:活性化チャネルブロッカー I:不活性化チャネルブロッカー Ia群:Naチャネル閉口とKチャネル閉口、 Ib群:Naチャネル閉口とKチャネル開口、 Ic群:Naチャネル閉口、 II群:β受容体遮断、 III群:Kチャネル閉口、 IV群:Caチャネル閉口 ↑ ↑ ↑ ↓ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↓ 11 (1) Na+チャネル遮断薬 薬理作用 Na+チャネルを遮断して、活動電位の立ち上がり(第0相)速度の減少により、異常自動能と triggered activityを抑制する。 伝導速度を低下させると同時に、Naチャネルの不活性化からの回復を遅延させ不応期を延長 する。 リエントリー性不整脈に対しては、伝導速度と不応期に与える効果のバランスにより、抑制する か増悪するかが決まる。 Na+チャネル遮断作用の特徴 薬物のNa+チャネル遮断作用の特徴は、 ①状態依存性チャネル遮断:薬物の効果が、親和性の高いNa+チャネルの状態(close、open、 inactivated、recovery)に依存すること。 ②使用頻度依存性チャネル遮断:薬物の効果が、チャネルに結合/解離する速度に依存する こと。 副作用 ・心収縮力抑制 Na+チャネル遮断薬の多くは、細胞内Na+濃度を低下させ、Na+-Ca2+交換機構を介した細胞内 Ca2+汲み出しを刺激して、心収縮力抑制を引き起す。 ・催不整脈作用 抗不整脈薬(Ia、Ⅲ)は、催不整脈作用(proarrhythmic effect)があり、QT延長に伴い心室頻拍 (torsade de pointe)を生じることがある。 12 Recovery (不整脈薬物治療に関するガイドライン、JCS2004より) 13 ①状態依存性チャネル遮断 心房筋、心室筋どちらにも 作用あり。 活動電位の短い心房筋には 効かない。 14 ②使用頻度依存性チャネル遮断 ・薬物効果はいずれも心拍数が高い場合に増強する。 ・fast drug (Ib): 心拍数が高い場合にその効果を発揮しやすく、低い心拍数では効果が減弱する。 また、連 結期の短い期外収縮のみ抑制し、連結期の長いものには効果がない。正常調律の場合は効 果がない。 ・slow drug(Ia, Ic): 低い心拍数でも効果が高く、高い心拍数では効果は著しく増強する。連結期にかかわらず期 外収縮を抑制する。 低い心拍数から使用頻度依存性チャネル遮断が起こるため、正常調律時の興奮伝導にも抑 制効果が現れ、心電図上、QRS延長や伝導障害を起こす可能性が高い。 15 代表薬物 Ia: procainamide SLE様症状(可逆性)が出ることがある。 quinidine, disopyramide, cibenzoline, pirmenol 抗コリン作用があり、心房細動に単独で使用すると房室伝導促進により頻拍を増悪する ことがある。digitalisの前投与により房室伝導を抑制しておく。尿閉を起こすことあり。 Ib: lidocain ・Naチャネルのopen state, inactivated stateともに親和性が高い。 ・チャネルからの解離が速い(fast drug)ために心房性不整脈には無効、心室性不整脈 の治療に用いられる。 ・効果の減衰が速いために、比較的連結期の短い心室性不整脈により有効性が高い。 ・心収縮力抑制作用は少ない。 ・大量投与により、神経症状(意識障害、痙攣)が起こることがある。 Ic: propafenone, flecainide, pilsicainide ・抗不整脈作用が強い。 ・心収縮力抑制作用、伝導障害を起こしやすい。 ・pilsicainideはpureなNaチャネル遮断薬。 16 (2) K+チャネル遮断薬 薬理作用 主としてIKrを遮断して、活動電位幅を延長し、不応期を延長することにより、リエ ントリー性不整脈を抑制する。 代表薬物 amiodarone ・K+ 、Na+、Ca2+チャネル、β受容体の遮断作用をもち、ほとんどの不整脈に有 効である。(急性効果) ・電気的リモデリングを引き起こす可能性が示唆されている。(慢性効果) ・副作用 甲状腺機能異常(ヨード誘発性甲状腺機能低下症)、破壊性甲状腺 炎、間質性肺炎・肺線維症 sotalol ・K+ チャネル、β受容体の遮断作用 nifekalant ・pureなK+ チャネル遮断薬。 17 心筋K+チャネルに対する各種抗不整脈の抑制作用 ・活動電位持続時間延長作用が強い。 心房筋に密度が高 ・催不整脈作用に注意が必要 いので、心房細動予 防効果が期待できる 膵β細胞のIKATPの抑制に よるインスリン分泌増強の 可能性あり。シベンゾリン、 キニジンで低血糖の報告 あり。 (不整脈薬物治療に関するガイドライン、JCS2004より) 18 (3) β遮断薬 薬理作用 アドレナリンβ受容体遮断に伴う心筋細胞内cAMP減少により、Ca2+電流が減少する結果、異 常自動能の抑制と房室結節の伝導速度低下と不応期延長が起こる。 代表薬物 propranolol, nadolol, metoprolol 交感神経緊張による上室性頻脈や心室性期外収縮に用いる。 (4) Ca2+チャネル遮断薬 薬理作用 ・ICa-Lを抑制して、洞結節と房室結節の興奮性、伝導速度を低下させ、不応期を延長する。 ・心筋細胞のCa2+過負荷を軽減し、DADに由来する不整脈を抑制する。 代表薬物 diltiazem, verapamil 心房粗細動、房室結節リエントリー性頻拍、心室性期外収縮、心室頻拍などに用いられる。 19 (参考1)心疾患に伴うイオンチャネルリモデリング(電気的リモデリング) と不整脈発生 20 (参考2)心疾患に伴う不整脈発生機所と 上流(upstream)および下流(downstream)からのアプローチ 21 抗高血圧薬 成人における血圧値の分類(mmHg) 分類 収縮期血圧 拡張期血圧 至適血圧 <120 かつ <80 正常血圧 <130 かつ <85 正常高値血圧 130-139 または 85-89 I度高血圧 140-159 または 90-99 II度高血圧 160-179 または 100-109 III度高血圧 ≧180 または ≧110 (孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)より 22 血圧制御に関わる因子 遮断薬 利尿薬 Ca拮抗薬(非DHP) 中枢作用薬(作動薬),1遮断薬,交感神経ニューロン 遮断薬,RAA系抑制薬,Ca拮抗薬,血管拡張薬 23 抗高血薬の作用による分類 24 a. 血管拡張薬 分 類 薬 物 ジヒドロピリジン系 ・nifedipine(第一 世代、T1/2=1-2hr) ・felodipine(第二 世代、T1/2=2-3hr) ・amlodipine(第三 世代、T1/2=30ー40hr) Ca拮抗薬 diltiazem verapamil 作 用 機 序など 副作用および禁忌 心臓および血管のL型Caチャネルを 阻害し、末梢抵抗を下げ降圧作用 を示す。降圧作用は強い。 徐放型nifedipineでは、T1/2= 3-4hrとなる。 末梢血管拡張により低血圧、頭痛、 目眩、動悸、 顔面紅潮、下肢の浮腫などが生じ る。 禁忌:妊娠、心原性ショック、 急性心筋梗塞 L型Caチャネルを阻害し、末梢抵抗 を下げ降圧作用を示す。 降圧および心抑制作用は、ジヒドロ ピリジン系薬とverapamilの中間であ る。 L型Caチャネルを阻害し、末梢抵抗 を下げ降圧作用を示す。心抑制作用 が強く、抗不整脈作用として用いら れる。 低血圧、目眩、顔面紅潮、徐脈 禁忌:妊娠、うっ血性心不全、 II度以上の房室ブロック 低血圧、心抑制、便秘、浮腫 禁忌:妊娠、うっ血性心不全、 II度以上の房室ブロック 過度の低血圧が生じる。投与を中 止したとき、血圧のリバウンド現象 が見られる。 ニトロ化合物 nitroprusside NOを放出し、直接血管平滑筋を弛 緩させる。持続静注で用いる。 動脈拡張薬 hydralazine 末梢細動脈平滑筋に直接作用し血 狭心症発作 管を拡張させる。cGMP産生を増加さ 発熱、関節痛などのSLE様症状 せる。重症の高血圧に用いる。 25 b. 交感神経遮断薬 分 類 薬 物 αアドレナリン遮断薬 prazosin アドレナリン 受容体遮断 薬 βアドレナリン遮断薬 非選択性 propranolol β1選択性 atenolol metoprolol bisoprolol 作 用 機 序など 副作用および禁忌 α1遮断による末梢血管抵抗の減少による 降圧作用。 血清コレステロール値やトリグリセリド値 副作用は少ないが、 の減少を引き起こす。 起立性低血圧を生じる(first dose 糖代謝には影響を与えない。 phenomenon:初回投与時に多い)。 早朝高血圧、前立腺肥大症合併例(尿道括 約筋(α1A)弛緩作用)に良い適応。 (β1遮断によるもの) うっ血性心 不全、洞性徐脈、AVブロック、起 β遮断薬は、末梢血管を収縮して血圧を上 立性低血圧 げると考えられるが、実際は、降圧に働く。 作用機序として、①心拍数の減少、心収縮 (β2遮断によるもの) 末梢動脈 力の低下をきたす(⇒心拍出量の減少)。② 血行不全、喘息発作誘発、低血糖 末梢交感神経のシナプス前受容体刺激によ 発作誘発 Norepinephrineの遊離抑制。③中枢での血 管運動中枢の抑制が考えられる。④レニン 突然投薬を中止すると、離脱症候 分泌抑制作用がある。 群(withdrawal syndrome)を起こす ことがあるので、徐々に減量する。 軽度の高血圧に用いる。第一次選択薬であ る。 禁忌:喘息、心ブロック、末梢循環 不全 α・βアドレナリン遮断薬 β遮断と選択的α1遮断により、心拍出量の うっ血性心不全、肝障害、目眩 labetalol 変化なしに血圧を降下させる。 carvesilol 26 reserpine カテコラミン小胞トランスポーターの選択 うつ状態、胃潰瘍、錐体外路症状 的阻害薬。中枢および末梢の生体アミ ンを枯渇させ、血圧を下げる。副作用の ため使用頻度は低くなっている。 交感神経末端 抑制薬 α-methyldopa 代謝物のα-methylnoradrenalineによる 嗜眠 中枢α2刺激と、末梢でのfalse Coombs試験陽性溶血性貧血、肝 transmitter 作用、および血漿レニン活 障害 性低下作用による。妊娠高血圧の第一 選択薬。 神経節遮断薬 trimethaphan 自律神経節を遮断し、降圧作用を示す。 呼吸停止、麻痺性イレウス clonidine α-methyldopa 脳幹部のα2アドレナリン受容体を刺激 し、交感神経活性を抑制するために、心 口渇や眠気がある。 拍出量と末梢血管抵抗を低下させる。 薬物中断により強い昇圧がみられ 少量で血圧を低下させる。重症の高血 る。 圧に用いる。 中枢性交感 神経遮断薬 27 c. 利尿薬 分 類 チアジド系 ループ利尿薬 薬 物 hydrochlorothiazide chlorthalidone (chlortalidone) indapamide furosemide アルドステロン拮 抗薬 spironolactone (Aldosterone eplerenone antagonists) 作 用 機 序など 高血圧症の第一選択薬である。 遠位尿細管のNa-Cl共輸送体を抑制 することにより、NaClの再吸収を 抑制し、尿量を増加させる。 indapamideはK+排泄量が少ない。 ヘンレ上行脚膨大部で、Na-K-2Cl共 輸送体を抑制することにより、NaClの 再吸収を抑制し、尿量を増加させる。 high-ceiling利尿薬とも呼ばれる。 副作用および禁忌 再生不良性貧血、糖尿病、痛風を 引き起こす。低K血症、低Na血症 禁忌:痛風、高尿酸血症 低K血症、低Na血症、耐糖能低下 aldosterone受容体を遮断し、Na+の再 高K血症、低Na血症、女性化乳房 吸収を抑制する。 eplerenoneは、aldosterone受容体へ eplerenoneは選択的アルドステロンブ の親和性が強いので、女性化乳房 ロッカー(SAB)である。 や月経異常などを引き起こさない。 28 d. ACE阻害薬およびAngiotensinⅡ受容体拮抗薬 分 類 ACE阻害薬 (ACE-I) Angiotensin II 受容体拮抗薬 (ARB) 直接的レニン 阻害薬 薬 物 captopril enalapril alacepril lisinopril 作 用 機 序など angiotensin IからangiotensinIIへの変換酵素を阻害 するために、angiotensinIIが減少し、降圧作用がで る。また、bradykininの分解酵素である kininase IIも 阻害するので、bradykinin が増加し、降圧作用がで る。さらに、血管拡張作用を持つprostacyclinesの 産生を増加させる。 副作用および禁忌 血管神経性浮腫 空咳(頻度5-10%, bradykininの増 加による)、 腎機能障害(Cr 2.0 ng/dl以上で慎 重投与) 汎血球減少 薬疹 糸球体内圧の低下、メサンギウム細胞増殖や基質 産生の抑制により、慢性腎不全の進行を抑制する。 angiotensin II は、血圧調節や血管壁の肥厚や心 禁忌:妊娠、高カリウム血症、 両側腎動脈狭窄 肥大などに関与している(リモデリングと言う)ので、 ACE阻害薬は、これらの反応を阻止し、臓器保護作 用がある。 losartan valsartan olmesartan candesartan telmisartan irbesartan アナフィラキシー様症状、血管浮 血管平滑筋のAT1受容体を抑制し、降圧作用を示 腫、肝炎 す。臓器保護作用がある。 ARBはinverse agonist活性を持ち、その強さが臓器 禁忌:妊娠、高カリウム血症、 保護作用などと関係しているようである。 両側腎動脈狭窄 aliskiren ACE阻害薬やARBよりも上流で、アンジオテンシン 頭痛、高尿酸血症、下痢など。 Ⅰの生成を抑制する。半減期は約35時間と長く、 重大な副作用として血管浮腫、 bioavailabilityは2-3%と低い。 高カリウム血症 29 2受容体作動薬 メチルノルアドレナリン クロニジン 30 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone: RAA)抑制薬 kininase II 31 (参考)血管内皮細胞からの弛緩因子の産生と、平滑筋弛緩の作用機作 32 ACE-I・ARBの腎保護作用 33 主要降圧薬の積極的適応 左室肥大 Ca拮抗薬 ARB/ACE阻害薬 ● ● ●*1 心不全 心房細動(予防) 頻脈 狭心症 利尿薬 β遮断薬 ● ●*1 ● ●*2 ● ● ●*3 心筋梗塞後 ● 蛋白尿 ● 腎不全 ● ●*4 ● ● 脳血管障害慢性期 ● 糖尿病/MetS*5 高齢者 ● ● ●*6 ● ● *1少量から開始し,注意深く漸増する *2非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 *3冠攣縮性狭心症には注意 *4ループ利尿薬 *5メタボリックシンドローム *6ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)より 34 主要降圧薬の禁忌もしくは慎重使用例 Ca拮抗薬 ARB ACE阻害薬 禁忌 徐脈(非DHP系) 妊娠 高K血症 慎重使用例 心不全 * 腎動脈狭窄症 妊娠 血管神経性浮腫 高K血症 腎動脈狭窄症 利尿薬 痛風 (サイアザイド系) 低K血症 β遮断薬 喘息 高度徐脈 * 妊娠 耐糖能異常 耐糖能異常 閉塞性肺疾患 末梢動脈疾患 *両側性腎動脈狭窄の場合は禁忌 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)より 35 2剤の併用 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)より 36
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