モニタ心電図 不整脈編

モニタ心電図
不整脈編
第1回
心電図/不整脈とは?
はじめに
近年、医療事故の報道が相次いでいます。安全管理については、病院側も患者さん側もいちばん
気になるところ。いま日本では、医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”
(日本版100K
キャンペーン)
という、
「入院中の有害事象による死亡を低減させよう」というキャンペーンが実施され
るなど、安全に関する意識が高まっています
(詳しくはP.6のひとくちメモをご参照ください)
。
日本光電のモニタには単なる心拍数の上下限アラームだけではなく、危険な不整脈を検出して医療
スタッフに知らせる不整脈解析機能が内蔵されています。
患者さんの色々な病態に合わせて不整脈アラームを設定することで、不要なアラームを鳴らすこと
なく本当に必要な場合にアラームを鳴らすことができます。
今月より、モニタ心電図で最も重要な『不整脈』とは何かを解説します。
心電図とは?
まず「心臓」とは、筋肉でできた臓器で、その筋肉
にかすかな電気が流れて興奮し動く仕組みになっていま
す。その心臓が収縮するときに発生する非常に弱い電
流をグラフに記録したものが
「心電図」=
「ECG」です。
ECGとは、
「E」は「electro」
、
「C」は「cardio」
、
「G」
(※1)
は「gram」の略で、
「電気心臓図」
。これを短縮し
て「電心図」となります。しかしその後、当時太平洋戦
争前で連絡用に使われていた「電信」と「電心」が紛ら
わしいとの理由で、軍部から名称変更を求められ、
「電」
と「心」を入れ替えて「心電図」と呼ぶことになったの
です。測定の目的は、心拍数の異常・不整脈・心筋虚
血の早期発見のためです。
心電図は、今から約100年前に、オランダの医学者
アイントーベンによって考案されました(※2)。瞬く間に
世界中に広まり、今でも患者さんの心臓がポンプとして
の機能を効果的に果たしているかを把握するための重
要なパラメータの一つになっています。
※1・2 財団法人 日本心臓財団HPより
不整脈とは?
不整脈=「arrhythmia」
という経路を伝い、心房から心室に伝達されて心臓の
拍動を生じ、血液が全身に送り出されます。
しかし、この「刺激伝導系」に何らかの異常が生じ
ると心臓が規則正しく拍動しなくなり、脈が乱れます。
これが不整脈です。
図1
左心房
洞結節
右心房
房室結節
ヒス束
右脚
左脚
心室中隔
左心室
プルキン
工線維
洞結節→房室結節→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維
(健康・医療館HPより)
これぞ不整脈!!次の5つのうち、1つでもかけると不
整脈
(=異常)
です!
* P、
QRS、
Tのワンセットがあること
* RR間隔が60
(50)
~100回/分
(20~25mm)
であること
* QRS幅が0.06~0.10秒
(<=2.5mm)
であること
* PQ間隔が0.12~0.20秒
(<=5.0mm)
であること
* 変な波形がないこと
(リズムが一定でないなど)
簡単にいうと心臓の電気的興奮のリズムが異常に
なった状態を指します。ドキドキ動悸がしたり、異常に
堀川宗之 著『エッセンシャル解剖・生理学』秀潤社
遅かったり、逆に速すぎたり、不規則になったりしてい
る時のことをいいます。この電気的興奮は「洞結節」 「不整脈」は病名ではなく、病態の総称にすぎません。
という右心房の上のほうで作られます
(図1)
。ここで発
次回は、不整脈の種類について
生する微量の電気が心臓に備わっている「刺激伝導系」
説明します。
1
モニタ心電図
不整脈編
第2回
不整脈の種類
前月10月号では、不整脈とは病名ではなく病態の総称にすぎないとお伝えしました。
不整脈の種類によっては、命を落とすこともある危険な不整脈も存在します。
では、どんな種類の不整脈があるのか、危険な不整脈を3つほど挙げてみましょう。
危険な不整脈
*心室性頻拍 VT
(Ventricular tachycardia )
・頻脈により心拍出量は著しく低下し、そのままでは
死に至る場合がある。
・ただちに緊急処置を要する場合が多い。
処置→抗不整脈剤の静注
(静脈注射)
、または電気
的除細動を行う。
心室性頻拍波形
*心室細動 VF
(Ventricular fibrillation )
・心室各部の収縮が無秩序に行われ、心拍出量は
ゼロに近く、数分以内に死に至る。
・ただちに緊急処置を行う必要がある。
処置→ただちに電気的除細動と心肺蘇生術を行う。
心室細動波形
*心停止 ASYSTOLE
(Cardiac arrest )
・心拍出量はゼロに等しく、意識を消失する場合が
ある。
・数秒以上心停止が続くと心室細動をおこす場合が
ある。
処置→心停止3秒以上の場合には、薬物療法
(イソ
プロテレノール、
アトロピン)
、
またはペースメー
カ療法を行う。
これらの不整脈はかなりの緊急を要します。
医療ドラマ・映画などでもよく出てくるモニタ心電図
の不整脈ですので、知っているとドラマ・映画の見方も
変わってきますね。
●不整脈の観察のポイントをおさらい
1.頻脈か除脈か
2.QRS幅の確認…狭いか広いか?
3.R-R間隔の確認…短いか、長いか、リズムはどうか?
4.早期出現度の確認…予想された時間より早いか?
5.P波の確認…P波が見えるか、形はどうか?
6.P波に続くQRSの確認
…P波のあとにQRSが続いているか?
7.P-Q間隔の確認
…延長していないか、前の波形に比べてどうか?
電極装着部位
不整脈の中には、左記にご紹介したように緊急処置
を要する場合がありますので、心電図波形の変化を正
しくキャッチすることが必要です。
しかし、
ノイズばかりでは正確な波形は表示されません。
正確な波形を表示させるためには、電極装着部位も大
切です。
ノイズがのった波形
電極の装着部位
Ⅰ
Ⅲ
心停止波形
総務人事部 研修センタより提供
2
モニタ心電図
不整脈編
第3回
(最終回)
不整脈解析アルゴリズム
“ec1”
第1回、
第2回では不整脈の怖さ/種類について説明してきました。
最終回の今回は、モニタの心電図解析精度について説明します。
ec1とは?
当社のモニタ※には、
「ec1」という不整脈解析アルゴ
リズムが搭載されています。
ec1とは、誤アラームを発生させていた電極のはずれ
や劣化・体動などによる障害への耐性を強化した「不整
脈解析ソフト」です。従来のモニタに搭載されていた不
整脈解析ソフトに比べ、誤アラームの発生を約1/5まで
抑えました。
※Ver.03 搭載機種
BSM-5105・BSM-5132・BSM-5135・BSM-4101・BSM4103・BSM-4111・BSM-4113・BSM-2301・BSM-2303・
BSM-2353・BSM-2401・WEP-4202・WEP-4204・WEP4208
(製造番号10001以降)
・ORG-9200・ORG-9700・ORG9100・RU-960P
※新生児対応_Ver.04
(Ver.03精度を含む)
BSM-9101・BSM-6000シリーズ・WEP-5200シリーズ
②VPC RUN、VT、VFを含まない心電図をランダ
ムに収集し、不整脈アルゴリズムが不整脈でな
いものを不整脈という程度
(読み過ぎ率)
を評価
する目的のデータベース
③最終評価用として、ブラインド型のデータベース
※詳細は、パフォーマンスレポートをご覧ください。
の3つがあります。
上記データベースにより、誤アラームの発生傾向は、
テクニカルアラームの発生傾向とよく似ていることがわか
りました。
運用上のご注意
ec1の性能を最大限に活用し、モニタリングを行うため
には、雑音などのない品質の良い心電図信号を入力する
ことと、正常波形が見分けやすく解析が容易な誘導を
選択することが重要です。
電極の装着時・装着後の留意点
BSM-6501
▼
◀BSM-9101
・電極を装着する前にリード線と接続する
・皮膚が変形しにくい場所を選択して貼る
・電極ゲルの上は押さない
・リード線をたるませて体に固定
(ストレスループの作成)
WEP-5208▶
解析性能の評価について
“GOLD STANDARD”として知られるデータベース
のうち、AHAデータベース・MIT-BIHデータベースを使
用すると共に、当社独自のデータベースを構築し、不整
脈解析アルゴリズムの性能評価に利用しています。
日本光電のデータベースには、
①ペースメーカを含む多種多様な不整脈を集めた
データベース
・ケーブルを服へ固定、もしくはポシェットへ入れる
・電極は24時間を目安に交換する
(すべての電極を
同時に交換するとよい)
・一度はずれた電極や、剥がした電極は、粘着力
が残っていても再利用できません
現在、誤アラームは安全管理の面からも重要な課題
となっています。
日本光電は、不整脈を見逃さない、また鳴り過ぎない
アラームのアルゴリズムを開発し、
「医療現場に役立つ生
体情報モニタ」を目指し、今後も改善に取り組んでいき
ます!
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