検査のお話③ ~心電図検査~ 監修 柏市立柏病院 検査科 昨年7月から始まった『検査のお話』シリーズも、ついに第3弾となりました。今号では心電図 検査を特集します。健康診断などでも行われるため、病院で行う生理検査の中でも最も多く の方が経験のある検査ではないでしょうか。少ない負担で多くの情報を得られる心電図検査 の内容をわかりやすくご紹介します。 ★心臓の動く仕組みとは? 心臓は全身に血液を循環させるためのポンプの働き をしており、常に拡張と収縮を繰り返しています。 この動きを「拍動」といいます。心臓には一定の間 隔で拍動するよう指令を出し、電気刺激を伝達する 回路があります。最初に電気刺激を発生させている のが、洞結節と呼ばれる部分です。 洞結節で作られた電気刺激は、心臓内に張りめぐら された「刺激伝導系」と呼ばれる電気の通り道を伝 い、まず心房の筋肉を収縮させます。続いて電気刺 激は心臓中心部の房室結節に伝えられ、ヒス束、 右脚・左脚、プルキンエ線維を通って心室の筋肉を 収縮させます。 心電図とは、この心臓の電気信号の流れを記録したものです。 洞結節 房室結節 ヒス束 右脚・左脚 プルキンエ線維 刺激伝導系 ★心電図とは? 心臓の疾患を発見する手がかりとなる、もっとも簡便な検査です。 正常な心電図波形は 3 つの山で構成されています。 最初の山は心房の収縮を示す P 波です。P 波に続 く大きな山は QRS 波といい、心室が興奮して収 縮していることを表しています。 最後の小さな山は、心室が興奮から回復する過程 を示す T 波です。心電図を確認することにより、 心臓がどのように拍動しているのかを詳しく知る ことができるのです。 心電図検査では、不整脈をはじめ、心筋梗塞や心 筋炎などの心臓病の発見や診断、心臓に影響をお よぼす薬の効果・副作用などが分かります。 R P T Q 心電図波形 S 安静時心電図の検査の流れ ●ベッドに横になり、安静にした状態で検査を行います。両手と両足に各 1 個、胸部に 6 個の合計 10 個の電極をつけ、心臓からの電気の流れを記録します。 (※機械から電流を流すわけではありませんので、しびれるようなことはありません。) ●記録時間:30 秒~1 分程度 検査時の注意 緊張して体に力が入っていると、正確な心電図が記録できま せん。できるだけ力を抜き、リラックスした状態で、検査を 受けましょう。 ★不整脈が出るとどのように見えるの? ●正常波形 ●不整脈が出ると? 左図の正常波形では、同じ波形が一定のリズムで出ています。 右図の不整脈が出ると同じ波形が出ている中で、途中ひとつだけ違う波形が出ています。不整脈の ひとつ、期外収縮です。これが“脈が飛ぶ”“胸の違和感”といった症状の原因のひとつです。不 整脈には様々なタイプがあります。数種類の心電図検査を組み合わせて行うことで、治療が必要な 不整脈かどうかを判断する事ができます。 ★ホルター心電図とは? “携帯型の心電計”です。24 時間心電図を記録するもので、 「安静時心電図」の検査中には確認 できなかった不整脈などの異常を発見できます。 不整脈の中には終日続いているものもあれば、1日のうち数回だけ出るようなものもあります。そ うした一過性の不整脈を診断するには、ホルター心電図が最適です。また、狭心症の有無や1日に どの位の不整脈が起きているかなどの量的判断や薬を飲む前と後でどの位の不整脈が減少したかな どの薬効判断などにも用いられます。 ホルター心電図検査の流れ 検 ●胸の5ヶ所に電極をつけ、記録器を携帯します。 ●測定中は普段と変わらない生活をします。 ●検査開始後からの行動内容や自覚症状の有無(胸痛、 動悸、息切れ等)の記入をお願いしています。 ※日常生活のどのような場面で、不整脈が発生して いるかを把握するためです。 ホルター心電計は、ケース に入れて、携帯します。 検査時の注意 ●あまり激しい運動はできません。 ●入浴はできません。 ★負荷心電図とは? “運動の負荷による心電図の変化”を見ます。労作時狭心症などの心電図異常を発見できます。 一般的な狭心症では、安静時には症状が無く、運動中や仕事中、坂道を上がった時などに胸痛などの症 状が出ることがあります。これは心臓の血管(冠動脈)が何らかの原因で狭くなり、心臓の筋肉に酸素 が十分送られないために引き起こされる発作です。この状態を心筋虚血といいます。この心筋虚血の有 無を調べるために、運動などで心臓に負荷を与えて、心電図の変化や血圧の変化を観察します。また、 安静時の心電図に異常があったときや、不整脈などの症状があるときにも行われます。 冠動脈の狭窄 狭窄閉塞の原因 動脈硬化 冠動脈のれん縮※ 冠動脈塞栓症 ※れん縮:けいれん性の収縮 ★負荷心電図の種類は? 階段を昇降するマスター法、自転車をこぐエルゴメーター法、ランニングマシーン上を走る トレッドミル法があります。 当院では、主にトレッドミル法で検査を行っています。 負荷心電図検査の流れ ●胸に心電図をつけ、腕に血圧計を装着した状態で、回転するベ ルトの上を歩き続けます。検査中は医師が心電図変化と血圧や 脈拍等を監視して、検査を進めていきます。 ●一定時間ごとに速度と傾斜を上げて、運動量を増やしていき、 目標の心拍数に達したら終了となります。 検査時の注意 胸に圧迫感や痛みなどの症状が起き、検査困難と判断した場合 には、安全のため検査を止めることがあります。 検査前 ☜左図が心筋虚血状態の心電図変化です。矢印で示した部分が、運動 直後には、赤線よりも低下してきているのが分かります。前述でも記 載しましたが、これは運動負荷により、心臓の血管に十分な酸素が送 られず、虚血状態となった為、心電図変化が起きている状態です。 運動直後 最大変化 その他の心臓の検査としては、体表から超音波をあてて、弁の動きや 心臓の収縮・拡張の動きを見る心臓超音波検査や造影剤を使って心臓 の血管を撮影するCT検査などがあります。 心電図検査は、心臓に関する病気発見の手がかりとなります。 気になる症状がありましたら、一度循環器内科へご相談下さい。ご不明な点は検査科まで お問い合わせ下さい。
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