Title 子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望 Author(s) 本田, 真

Title
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
Author(s)
本田, 真大; 本田, 泰代
Citation
北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 17-27
Issue Date
2016-08
URL
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7999
Rights
Hokkaido University of Education
北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号
Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1
平 成 28 年 8 月
August, 2016
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
本田 真大・本田 泰代*
北海道教育大学函館校
*
函館大学
A Review on Help Seeking in Parents about Perceived Parenting Problems.
HONDA Masahiro and HONDA Yasuyo*
Department of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education
*
Hakodate University
ABSTRACT
The aim of this study is to review the studies of help seeking in parents with perceived
parenting problems. The results of review showed ⑴ the characteristics of perceived
parenting problems, ⑵ the merits and demerits in measuring among aspects of help seeking
(attitude, intention or willingness, behavior, and pathway), and ⑶ factors influencing help
seeking. The perspectives of help seeking studies in the area of childcare support were
discussed.
Key Words : help seeking, parent, childcare support
問題と目的
利用手続き方法の不明瞭さ(内閣府政策統括官(共
生社会政策担当),2012),さらには「子育てを否
子育て支援は虐待防止,里親の親子関係と並び
定されるのではないか」,「子どもの悪い噂が広が
我が国の親子関係をめぐる今日的課題の一つであ
るのではないか」などの理由から相談や援助を求
る(戸田,2009)
。様々な子育て支援サービスが
めることをためらう親の心理も指摘されている
充実し,専門的な治療を提供する機関が増えては
(本田・三鈷・八越・西澤・新井・濱口,2009)。
いるものの,地域の子育て支援サービスや子ども
相談をためらう心理への援助に資すると期待さ
の問題に対する親の専門的援助の利用は必ずしも
れるのが援助要請研究である。援助要請とは,
「個
多くはない(内閣府政策統括官(共生社会政策担
人が解決しなければならない問題やその必要があ
当)
,2012;奥山,2010)。その背景として子育て
り,他者により時間,努力その他の資源が与えら
支援サービスへの物理的なアクセスのしにくさや
れるならば解決が可能であるときに,他者に直接
17
本田 真大・本田 泰代
援助を求めること」(DePaulo, 1983),「情動的ま
子育て上の問題や悩みは確かに研究上このように
たは行動的問題を解決する目的でメンタルヘルス
分離できるが,実際の子育て支援の現場で相談を
サービスや他のフォーマルまたはインフォーマル
受ける際には子どもや親の問題として明確に分離
なサポート資源に援助を求めること」
(Srebnik,
されていなかったり子どもと親の関係性の問題と
Cause, & Baydar, 1996),と定義される。子ども・
して見られたりすることもあろう。
子育て支援新制度の中で「利用者支援」
(子育て
そこで本研究では子育ての問題を「親が子育て
家庭や妊産婦がニーズに合わせて必要な支援を選
において直面する困難な状況や出来事」として広
択し利用できるために,情報提供や相談・援助を
くとらえ,援助要請研究の中で子育ての問題がど
行うこと)がうたわれているように(内閣府・文
のようにとらえられているかを明らかにする。
部科学省・厚生労働省,2015)
,利用をためらう
親の心理,つまり援助要請の心理を考慮した子育
2.援助要請の各側面の関連要因の整理
て支援サービスやシステムの構築,及び直接的な
これまでに様々な援助要請の促進要因・抑制要
支援方法の開発は重要な課題であると言える。
因が研究され,いくつかの研究によって展望され
しかし,子育て支援に関する研究と実践の中で
ているが(水野・石隈,1999; Zwaanswijk et al.,
は援助要請に焦点を当てた研究はほとんど見られ
2003),それらの展望の課題として援助要請の各
な い。 援 助 要 請 研 究 に お い て も,Zwaanswijk,
側面が混在したまま議論されていることが指摘で
Verhaak, Bensing, Ende, & Verhulst(2003) で
きる。近年では援助要請に対する介入研究が行わ
は0~18歳の子どもの情緒的・行動的問題に対す
れており,今後の研究の中で介入する変数を明確
る親の専門家への援助要請を展望しているもの
に定めるためにも援助要請の側面ごとに先行研究
の,幅広い年齢層を一括して専門的なメンタルヘ
の知見を整理することが重要であろう。
ルスサービスの利用に関する知見を整理してお
援助要請の各側面とは,主に援助要請に対する
り,子どもの発達段階間の差異や特徴,さらには
肯定的・否定的な態度(attitude),意思決定の程
子育て支援の様々な現場との関連は検討されてい
度である援助要請意図(intention)もしくは援助
ない。よって,子育て上の問題に関する親の援助
要請意志(willingness),そして実際の援助要請
要請研究と子育て支援の研究・実践の結びつきは
行動(behavior)という3つのことである(Gulliver,
十分明確にされているとは言い難い。そこで本論
Griffiths, Christensen, & Brewer, 2012; 本田・新
文では子育て上の問題に関する親の援助要請研究
井・石隈,2011)。これらの関連として援助要請
を発達段階ごとに展望する。展望にあたり考慮す
の態度と意図・意志の関連(例えば,木村・水野,
べき点として以下の3つが挙げられる。
2008; Vogel, Wade, & Hackler, 2007),身近な人
に対する援助要請意図と3週間後に測定した実際
1.援助要請研究における子育ての問題のとらえ
方
の援助要請行動の関連(Wilson, Deane, Chiarrochi,
& Rickwood, 2005)などが明らかにされている。
佐藤・菅原・戸田・島・北村(1994)は育児ス
これらの援助要請の態度,意図・意志,行動間の
トレスを「子どもや育児に関する出来事や状況な
関連や促進要因・抑制要因との関連を含めた援助
どが,母親によって脅威であると知覚されること
要請の複雑な過程を解明する研究は援助要請経路
やその結果母親が経験する困難な状態」と定義し,
(help-seeking pathways)(例えば,Srebnik et
子ども関連育児ストレス(夜泣きがひどい,子ど
al., 1996)として主に質的研究がなされている。
もの体の調子が悪い,など)と母親関連育児スト
本論文では援助要請の各側面を,上述の援助要請
レス(どう接すればよいか分からない,この先ど
の態度,意図・意志,行動,そして援助要請経路
う育てるか分からない,など)に分類している。
に分類して展望する。
18
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
3.援助要請の促進要因・抑制要因の分類
ないもの,⑤レビュー論文,を除外した。
援助要請と関連する要因は数多く取り上げられ
ており,それらを整理する枠組みもいくつか提案
2.CiNiiを用いた文献検索
されている。自分自身の悩みや問題に対する援助
国内の文献を抽出するためにCiNiiを用いて文
要請の促進要因・抑制要因について,水野・石隈
献検索を2012年10月2日及び2016年3月21日に
(1999)はデモグラフィック要因(年齢,性別な
行った。検索条件はPsycINFOを用いた検索と同
ど)
,パーソナリティ変数(自尊感情,原因帰属
様に,①査読のある学術雑誌に掲載されているこ
など)
,
ネットワーク変数(ソーシャルサポート,
と,②タイトルに「援助要請」「被援助志向性」
事前の相談経験など)
,個人の問題の深刻さ・症
のいずれか1つと,「親」「母親」「父親」のいず
状,の4つに分類している。また,子どもの情緒
れか1つの語を含むこと,であった。検索条件に
的・行動的問題に対する親のメンタルヘルスサー
「被援助志向性」を加えた理由は,わが国では援
ビスの利用に関する研究を展望したZwaanswijk
助要請(seeking help, help-seeking)の代わりに
et al.(2003)では,子どもの要因(年齢など),
被援助志向性(help-seeking preference)の語を
親の要因(親の感じる心理的苦痛など)
,環境的
用いた研究が多く行われているためであった。そ
要因(ソーシャルサポートなど)
,の3つに大き
の結果,1件の論文が抽出された。抽出された論
く分類している。
文は主として子どもの問題に対する親の援助要請
これらの分類方法を基に本論文では子どもの問
に関する研究を行っていたため,この1件の論文
題に対する親の援助要請の関連要因を,子どもと
を研究対象に加えた。
親のそれぞれに対する水野・石隈(1999)の挙げ
る4つの要因に整理して展望する。
3.引用文献欄を基にした文献検索
上述の方法によって得られた論文の引用文献欄
4.本研究の目的
から,海外の学術雑誌についてはPsycINFOの検
以上より本論文では子育て上の問題に対する親
索条件を満たすもの,国内の学術雑誌については
の援助要請研究を展望し,今後の研究上の課題を
CiNiiの検索条件を満たすもの,を抽出した。
示すことを目的とする。
以上の手続きにより合計19件の論文が分析の対
象とされた。すべての文献が援助要請の概念定義
方 法
がなされたDePaulo(1983)
以降に発表されていた。
子どもの問題に対する親の援助要請研究を抽出
結果と考察
するために,
以下の方法による文献検索を行った。
援助要請の側面ごとに抽出された論文を,子ど
1.PsycINFOを用いた文献検索
もの発達段階別に分類した(Table 1~ Table 3)。
American Psychological Associationが 提 供 す
なお,論文中に記載された援助要請の名称(態度,
るPsycINFOを用いた検索を2012年10月2日及び
意図・意志,行動)と実際の測定方法が異なる場
2016年3月21日に行った。検索条件は,①Peer
合は,本田他(2011)の測定方法の分類を基にし
Reviewed Journalであること,②「Title」に「seek
た。
help」 と,
「parent」「mother」「father」 の い ず
れか1つの語を含むこと,であり,さらに,③主
として子どもの問題に対する親の援助要請に関す
る研究を行っていないもの,④英語で書かれてい
1.援助要請研究における子育ての問題のとらえ
方
乳幼児期,児童期,青年期のいずれの年代にも
19
20
2010
1996
2011
2010
1990
1 Skeat et al.
2 P avuluri et
al.
3 Forehand et
al.
4 本田・新井
5 Telleen
135
281
41
411
父:139
母:272
1911
対象者数
(N)
子育て上の
問題の設定
7歳以下
3~6歳
特定せず
援助要請行動
【P_P】親コンピテンス,子どもの
ファミリーサポートプログラム
問題の原因帰属
・援助要請者(ファミリーサポートプログラムに1カ月以上参加した対象者79
(子ども虐待の一次予防プログラ 【P_N】ソーシャルサポート
名)は統制群(56名)よりもソーシャルサポートのニーズが高く,子ども関
ム)への参加者を研究対象者とし 【P_S】親 ストレス,子どもへの対
連のストレス,親関連のストレスが高かった。
て設定
応の困難さ,抑うつ
・専門機関に対する援助要請行動は女児よりも男児が多かった。
・専業主婦の母親は有職の母親よりも夫への援助要請行動が多かった。
・悩みの多さは幼稚園教諭,悩みの深刻さは夫,実母,義母,友人,専門機関
への援助要請行動と正の関連を示し,子どもと援助要請相手との関係の良好
さはすべての相手への援助要請行動と正の関連を示した。
・援助要請行動を行った親は19.3%であった。
・援助要請者は非援助要請者よりも子どもの問題行動と多動性が高かった。
・援助要請者の中には親の離別者,低収入者などが少なかった。
・過去1年間のサービス利用者を援助要請者とした。
【P_D】親の年齢,親の就業形態
【P_P】育児不安
子どもの発達 援助要請行動
【P_N】同居家族,子どもと周囲の
上の悩み(健 過去6か月間に各相手(夫,実母,
他者の関係の認知
康,人間関係, 友人,幼稚園教諭,など)に援助 【P_S】子育ての悩みの深刻さ
言葉,など) を求めた程度を尋ねる
【C_D】
子どもの性別,年齢,きょ
うだい数,出生順位
【C_S】子育ての悩みの多さ
援助要請行動
過去1年間に援助を求めたかどう
歴,出生地,ニュージーラ
ンド滞在年数,住宅,家族
の収入,結婚歴
か,求めたとしたらどのくらい,
【P_N】夫婦関係
どの相手(身近な人,幼稚園のス
【C_D】きょうだい数,16歳以下の
タッフ,友人,など)に求めたか
子どもの数
を尋ねる
【C_S】問題行動,多動性,内在化
障害
【P_D】
親の年齢,親の職業,教育
関連した。
て援助や助言を求めたかどうか, 【C_D】子どもの性別,年齢
・子どもが3歳の時点において,親の行動・社会性への関心は援助要請行動と
求めた場合はどの相手(スピーチ 【C_S】子どものコミュニケーショ
正の関連を示した。
セラピスト,家族医,など)に求
ン能力
・4歳時点では,社会経済的地位が高いほど援助要請行動が行われていた。
めたかを尋ねる
・対象者は1歳時点で言語発達の遅れが見られる者であった。
・すべての年齢において子どもが男児であること,コミュニケーションの臨床
的問題が見られること,母親の発話・言語への関心の高さが援助要請行動と
主 な 結 果
・臨床域の子どもの母親に比べて正常域の子どもの母親は,効果的なしつけを
する傾向にあり,親の教育レベルが高く,第1子であること,夫婦間葛藤と
母親の抑うつ症状の報告が少ないこと,が明らかにされた。さらに,すべて
の変数を考慮した分析では親の教育レベルのみが有意であった。
正常域群
4.26,SD.94
臨床域群
4.58,SD.87
援助要請以外の主な変数1)
援助要請行動
1歳時点では過去12か月間,2, 【P_P】母親の子どもへの関心(発
3,4歳の各時点では過去1年間
話・言語,行動・社会性)
に子どもの発話や言語発達につい 【P_D】社会経済的地位
援助要請の測定
【P_D】親の教育レベル
援助要請行動
【P_P】親行動
地域の養育プログラムへの参加者
【P_S】母親の抑うつ,夫婦間葛藤
を研究対象者として設定
【C_D】子どもの出生順位
子どもの破壊
的行動
30~60カ月
や言語発達
子どもの行動
上の問題
4歳(縦断的
研究)
8か月,1歳,
2歳,3歳, 子どもの発話
年齢
(子)
表中の記号では以下のカテゴリーを示した。【P_D】
:親のデモグラフィック要因,【P_P】:親のパーソナリティ変数,【P_N】:親のネットワーク変数,
【P_S】親の問題の深刻さ・症状,
【C_D】
:子どものデモグラフィッ
ク要因,
【C_P】
:子どものパーソナリティ変数,
【C_N】:子どものネットワーク変数,【C_S】子どもの問題の深刻さ・症状
1)
出版年
著者
Table 1 乳幼児期の子どもの親を対象とした援助要請研究
本田 真大・本田 泰代
小学生
小学生
2009
120
2001 父:25.8%
母:74.2%
157
2009 父:28.2%
母:71.3%
27
2011 父:3
母:24
8 Raviv et al.
9 Lau &
Takeuchi
10 Lowinger
11 Schnitzer et
al.
422名
父:211
母:211
380
小学4~6年
主 な 結 果
・親 のヘルスケアサービスの利用に関する援助要請経路には,隠された経路
(the hidden pathways)
,学校発信の経路(the school-initiated pathways)
,
親と学校が影響し合う経路(the interfering pathways)の3つが明らかに
された。
子どもの特別
なニーズ(社
会的/情緒
的・行動的問
題)
援助要請経路
半構造化面接によって子どもの状況に関連した出来事を尋ねた後,親
が援助要請を選択したことの意味を尋ねる
・外在化問題の方が内在化問題よりも,スクールサイコロジスト,病院などへ
の援助要請意志が高かった。
援助要請意図
問題に対処するためにどの程度助
【P_P】子どもの問題に対する感情
言を求めると思うか,援助を求め
・問題の深刻さは援助要請意図と正の関連を示し,問題の深刻さと中国的な文
反応,中国文化的価値観
ることはどの程度緊急か,セラピ
化的価値観は感情反応と正の関連にあり,感情反応は援助要請意図と負の関
【C_D】子どもの性別
ストやカウンセラーにどの程度援
連にあった。
【C_S】問題の質(外在化,内在化)
助を求めると思うか,の3項目で
尋ねる
【P_D】親の性別
・個人的サービスギャップ(親の友人の子どもには援助要請を勧めるが自分の
援助要請意図
【P_P】子どもの問題に対する自力
子どもの場合は利用しない傾向)は,父親では自力対処の適切性と正の関連
Raviv, Raviv, Edelstein-Dolev, et
対処の適切性,親行動
があった。母親では自分の子どもの場合は心理士の利益の高さ,問題の深刻
al.(2003)を使用
【C_D】
子どもとの関係(自分の子
さと負の関連があり,友人の子どもの場合は心理士の利益と正の関連があっ
ども,友人の子ども)
た。
援助要請意図
Raviv, Raviv, Edelstein-Dolev, et
【P_P】援助要請の心配
・スクールサイコロジストへの援助要請意図に対して,自分の子ども,友人の
al.(2003)の質問紙を使用し,学
【C_D】
子どもとの関係(自分の子
子どものいずれの場合でも援助要請の心配の下位尺度である「子どもへの有
校内の心理士と個人契約による心
ども,友人の子ども)
害性」は負,
「親への脅威」は正の関連が見られた。
理士に相談しようと思う程度を尋
ねる
援助要請意志
9歳の中国系アメリカ人の男児を主
子どもの内在 人公としてRaviv, Raviv, Edelstein【P_N】援助資源の種類
化問題と外在 Dolev, et al.(2003)を使用し,各
【C_S】問題の質
化問題
相手(スクールサイコロジスト,個
人契約による心理士,など)に援
助を求めると思う程度を尋ねる
子どもの行動
上の問題
子どもの内在
化問題と外在
化問題
子どもの内在
小学3~5年生 化問題と外在
化問題
援助要請以外の主な変数2)
【P_P】子どもの問題に対する原因
援助要請意志
帰属,母親の感情,子ども
性別(男児,女児),問題領域と
・非専門家への援助要請意志は自分の子どもであるほうが親の友人の子どもの
子ども(自分の子ども,友人の子
の社会性を高める親の方略
場合よりも高く,問題解決的な社会化方略と正の関連があった。非判断的感
(罰,非難,理解を試みる
ども)による8種類の質問紙の1
情の影響は親の友人の子どもの場合の方が強かった。
種類について(性別は子どもの性
議論,など)
・専門家への援助要請意志は男児の方が強く,
非判断的感情が正の関連を示し,
別と同一のもの),家族や友人と 【C_D】
子どもとの関係(自分の子
親への原因帰属の影響は自分の子どもである場合の方が強かった。
ども,友人の子ども),子
心理士に助言を得ようと思う程度
どもの性別
を尋ねる
援助要請の測定
表中の記号では以下のカテゴリーを示した。【P_D】
:親のデモグラフィック要因,【P_P】:親のパーソナリティ変数,【P_N】:親のネットワーク変数,
【P_S】親の問題の深刻さ・症状,
【C_D】
:子どものデモグラフィッ
ク要因,
【C_P】
:子どものパーソナリティ変数,
【C_N】:子どものネットワーク変数,【C_S】子どもの問題の深刻さ・症状
2)
小学生
2003
子育て上の
問題の設定
子どもの内在
小学3~5年生 化問題と外在
化問題
7 Raviv, Raviv,
Propper, et
al.
321
2003
年齢
(子)
6 Raviv, Raviv,
EdelsteinDolev, et al.
対象者数
(N)
出版年
著者
Table 2 児童期の子どもの親を対象とした援助要請研究
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
21
22
2014
60
2008 父:8
母:52
2005
1990
2006
15 T homson et
al.
16 Shanly et al.
17 Edmunds
18 Feehan et al.
19 Kerkorian et
al.
118
976
40
8
483
子どもの困難
さ
子どもの行動
的・情緒的問
題
9,11,13,
15歳(コホー
ト)
記載なし
子どもの肥満
子どものメン
タルヘルスの
問題
子どもの神経
性食欲不振症
養育の問題
・援助要請には正常化(子どもの神経性食欲不振症の初期の兆候を過小評価す
ること),両価性(子どもを注意深く観察し親自身の両価性を解決するため
に調べ出すこと)
,
援助要請の決定時点
(両価性が低下し援助要請すること)
,
という3段階が見られた。
・最 初に親が援助を求めたときの子どもの年齢の平均は7.5歳(SD4.3,1.215.5)であった。
・親は平均2つの問題で援助を求めており,
最も多いのは攻撃性の問題であった。
・平均4.9の相手に1年間に援助を求めていた。
・提供された治療の66%は親が望んだものであった。
・多くの親が過去1年間に同時に2つ以上の相手に援助を求めていた。
援助要請経路
半構造化面接によって子どもの問題を認識した経験と専門家への援助
要請を決定した過程について尋ねる
援助要請経路
構造化面接によってメンタルヘルスサービスを利用するに至った親の
意思決定とそれに関連する経験を尋ねる(過去1年間に各相手(精神
科医,スクールサイコロジスト,警察,地域の人,など)に援助を求
めた程度,一番最初に相談した専門家(学校,児童福祉,精神科医な
ど)
,治療を受けた期間,同時に援助を求めた相手の数,など)
・親の治療の利用しやすさへの疑問に対して,子どもへの成果と提供された治
療を統制すると,親が尊重されたと感じないことはオッズ比で約6倍,治療
の利用しやすさへの疑問が高かった。
【P_D】社会経済的地位
・児童期の親の援助要請行動は女児よりも男児に多かったが,DSM-Ⅲに該当
【P_N】家族のソーシャルサポート
する診断のある子どもの中では性差は見られなかった。
【P_S】母 親のメンタルヘルス,抑 ・児 童 期・ 青 年 期 に お い て, 子 ど も にDSM-Ⅲ の 不 安 障 害, う つ 病 性,
うつ
ADHD,摂食障害行為障害に該当する診断のあること,親の低いメンタル
【C_S】子どもの診断
ヘルス,
低い社会経済的地位,
低い家族サポートは援助要請行動を予測した。
援助要請行動
過去に子どもの困難さについて援 【P_P】援助要請の障壁(バリア)
助要請した経験のある親を研究対 【P_N】過去の治療経験
象者として設定
援助要請行動
9歳時点では5歳から調査時点ま
で,11,13,15歳時点では前回調
査から各時点までの間に援助要請
の相手(医療,教師など)に援助
を求めたかどうかを尋ねる
・多くの親は援助要請の前に複雑な自助努力の過程を経ていた。
・多くの親は,健康の専門家は子どもの体重管理の問題の扱い方を知らないと
感じていた。
援助要請経路
・多くの親は親の援助ニーズ(子どもが太りすぎであり治療したいという思い
綿密な面接(in-depth interview)によって最初に健康問題の専門家
など)に対して健康問題の専門家が十分に応えてくれない(問題ないと判断
に相談した時の経験を含む社会的な相互作用について尋ねる
するなど)と感じていた。
・すべての親が子どもに永続的な体重の問題があると考えていた。
・多くの親は健康問題の専門家との相互作用に否定的な態度を有していた。
・統 計的検定は行われていないが,援助要請意図は収入の少ない親の方が低
かった。
援助要請意図
養育の問題で実際に援助や助言を
求める可能性,及び各相手(電話 【P_D】親の収入
相談,家族,友人など)に援助を
求める可能性を尋ねる
・父親は母親よりも教師とカウンセラーへの援助要請意図が高く,価値,性,
気分,自立の問題の援助要請意図が高かった。
・教育レベルの高い親は低い親よりも心理士への援助要請意図が高かった。
・援助資源ごとの信頼性と援助要請意図の間に正の関連があった。
・親の自信と,学業,価値,性,気分の問題の援助要請意図に負の関連があった。
主 な 結 果
・人種と民族の違いによって,本・雑誌・ビデオ,友人に対する援助要請意図
に差が見られた。
【P_D】親の性別,教育レベル
【P_P】親としての自信
【P_N】援助資源に対する信頼
【C_S】問題の質(外在化,内在化)
援助要請以外の主な変数3)
援助要請意図
家族,友人,ヘルスケア提供者な 【P_D】人種,民族
どに援助を求める程度を尋ねる
援助要請意図
問題の領域ごとに,各相手(友人,
教師,心理士など)に援助を求め
る程度を尋ねる
養育に関する
問題(コミュ
ニケーショ
ン,学業,
性,
薬物など)
養育に関する
問題
援助要請の測定
子育て上の
問題の設定
4~15歳
3~16歳
11~18歳
18歳以下
少なくとも1
人は18歳以下
16~17歳
年齢
(子)
表中の記号では以下のカテゴリーを示した。
【P_D】:親のデモグラフィック要因,
【P_P】:親のパーソナリティ変数,
【P_N】:親のネットワーク変数,
【P_S】親の問題の深刻さ・症状,
【C_D】
:子どものデモグラフィッ
ク要因,【C_P】:子どものパーソナリティ変数,【C_N】:子どものネットワーク変数,【C_S】子どもの問題の深刻さ・症状
3)
2000
14 Keller &
McDade
448
1997
13 Keller &
McDade
対象者数
(N)
12 Raviv et al.
出版年
187
1992 父:68
母:119
著者
Table 3 青年期の子どもの親を対象とした援助要請研究
本田 真大・本田 泰代
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
共通したものとして,子育て上の問題は子どもの
め,子どもの深刻な問題行動などの臨床的問題を
情緒的・行動的問題の点からとらえられていた。
親が直接経験していなくても,質問紙上で適宜設
発達段階ごとに見ると,乳幼児期には子どもの言
定して調査を行える利点がある。意図は行動の主
語発達や社会性などの発達上の問題をとらえる研
要 な 予 測 因 で あ る こ と を 踏 ま え れ ば(Ajzen,
究 が あ り( 本 田・ 新 井,2010; Skeat, Eadie,
1991),援助要請意図・意志の関連要因を検討す
Ukoumunne, & Reilly, 2010)
,児童期には情緒的・
ることで援助要請行動を促進するための示唆が多
行動的問題を内在化問題と外在化問題の点からと
く得られると思われる。しかし,現実には「相談
らえて研究しているものが多かった(例えば,
したいがしない・できない」という心理状態,つ
Raviv, Raviv, Edelstein-Dolev, & Silberstein,
まり援助要請の意図は高いが行動を実行しない親
2003)
。青年期の子どもの親を対象とした研究の
(保護者)が子育て支援サービスを利用できるよ
多くは18歳以下(Keller & McDade, 1997, 2000)
うになることが重要であり,援助要請意図・意志
などのように幅広くとらえて研究しているものが
を扱う研究のみから意図・意志を高めるような介
多かった。16~17歳の子どもの親のみを対象とし
入研究を行うのみでは不十分かもしれない。
た研究では子どもの学業や性,薬物などの青年期
援助要請行動を測定する場合には,実際の援助
に遭遇しやすい問題が取り上げられていた
を求めるための促進・抑制要因をより明確に検討
(Raviv, Maddy-Weitzman, & Raviv, 1992)。
できる利点がある。しかし援助要請行動の測定上,
以上のように展望した研究の中では,乳幼児期
既に援助を要請できている者が研究対象となりや
には発達上の問題,児童期には内在化問題と外在
すく,援助の必要性を感じながらも援助要請行動
化問題,青年期には青年期に特に直面しやすい養
ができない対象者を適切に含めることに難点が生
育上の問題,などが扱われていた。しかし研究数
じやすいと思われる。そのため,Pavuluri, Luk,
が少ないためにこれらの問題の違いが子どもの発
& McGee(1996)のように援助要請者と非援助
達段階に起因するものであると断定することは困
要請者の両方を研究対象者に含めた比較検討が望
難である。また未検討な課題として,共通した問
ましいであろう。
題を取り上げて発達横断的に子育ての問題と援助
援助要請態度を扱った研究は見られなかった
要請の関連を比較・検討する研究や,親自身の悩
が,援助要請態度は援助要請意図・意志を介して
み(夫婦関係,経済的問題,など)を併せて検討
援助要請行動に影響を与えると考えられており,
した援助要請研究は見られなかった。
援助を求めない者を対象とした研究も実施可能で
ある。さらに近年の介入研究でも介入する変数と
2.援助要請の各側面から見た先行研究の特徴
して多く選択されているが,これらの介入研究か
本論文で展望の対象となった論文で検討されて
らは援助要請の態度の変容に比べて行動は変容し
いた援助要請の側面は,援助要請意図・意志は8
にくいことが明らかになっている(Gulliver et
件(乳幼児期の親0件,児童期の親5件,青年期
al., 2012)。そのため研究上の利点は高いものの,
の親3件)
,援助要請行動は7件(乳幼児期の親
援助要請行動の促進という目標においては援助要
5件,児童期の親0件,青年期の親2件),援助
請態度のみを扱う研究では十分な知見は得られな
要請態度は0件,援助要請経路は4件(乳幼児期
いであろう。そこで援助要請の態度,意図・意志,
の親0件,児童期の親1件,青年期の親3件),
行動の関連を明らかにする研究が求められる。
であった。しがたって,援助要請意図・援助要請
援助要請経路からの検討は他の側面を扱った研
意志と援助要請行動を扱う研究が比較的多く見ら
究 と 異 な り 質 的 研 究 が 中 心 と な り(Edmunds,
れた。援助要請意図・援助要請意志を測定する場
2005; Schnitzer, Loots, Escudero, & Schechter,
合には特定の状況における意思決定を尋ねるた
2011; Shanly, Reid, & Evans, 2008; Thomson,
23
本田 真大・本田 泰代
Marriott, Telford, Law, McLaughlin, & Sayal,
Dolev, et al., 2003)。さらに,問題行動を呈する
2014)
,援助要請態度,意図・意志,行動の研究
子どもが自分の子どもの場合と友人の子どもであ
を補う知見を提供することが期待される。多くの
る場合にも援助要請意図・意志に差異が確認され
研究が意思決定過程を中心として検討しているた
ている。例えば自分の子どもである場合は心理士
め,特に援助要請意図・意志の研究知見との関連
への援助要請の利益の高さは援助要請意志と負の
が深いであろう。
関連にあるが,友人の子どもの場合には心理士へ
の援助要請の利益の高さは援助要請意志と正の関
3.子どもの発達段階別の援助要請の関連要因
連にあった(Raviv, Sharvit, Raviv, & Rosenblat-
各発達段階に共通して,援助要請の主な変数と
Stein, 2009)。Raviv et al.(2009)はこのような
して親の要因と子どもの要因の両方を扱っている
子どもと親の関係性(自分の子どもか,友人の子
研究が多かった。また,展望した論文の中では親
どもか)による援助要請の差異をパーソナルサー
のデモグラフィック要因,パーソナリティ変数,
ビスギャップ(personal service gap)と呼び,
ネットワーク変数,個人の問題の深刻さ・症状,
必ずしも十分に確認されているわけではないが
及び子どものデモグラフィック要因,個人の問題
(Raviv, Raviv, Edelstein-Dolev, et al., 2003;
の深刻さ・症状,の6つの要因は検討されていた
Raviv, Raviv, Propper, & Fink, 2003),親の援助
が,子どものパーソナリティ変数,ネットワーク
要請を議論する上での一つの検討点であると言え
変数を扱った研究は見られなかった。
る。
発達段階別にみると,乳幼児期の子どもの親を
子どもの問題の症状・深刻さについては,親は
対象とした5つの研究ではいずれも援助要請行動
子どもの内在化問題よりも外在化問題の方が病院
が 検 討 さ れ て い た。 援 助 要 請 行 動 と デ モ グ ラ
な ど へ の 援 助 要 請 意 志 が 高 か っ た(Lowinger,
フィック要因の関連について,子どもが男児であ
2009)。親自身のパーソナリティ変数では子ども
る方が親の援助要請行動が多いようであるが(本
の問題に対する親の感情反応や原因帰属様式が援
田・新井,2010; Pavuluri et al., 1996),きょうだ
助 要 請 意 図・ 意 志 と 関 連 し て お り(Lau &
い数には関連は見られず,また子どもの年齢に
Takeuchi, 2001; Raviv, Raviv, Edelstein-Dolev,
よって関連要因が変化するという知見もある
et al., 2003),親自身のネットワーク変数では専
(Skeat et al., 2010)。乳児期と幼児期を分けて分
門家への援助要請の心配(Raviv, Raviv, Propper,
析していくことも今後の研究では求められると言
et al., 2003)が関連していた。これらの親自身の
えよう。
要因は心理教育などを通して変容を促せる可能性
子どもの問題の深刻さ・症状の要因について
があり,子育て支援サービスの利用促進をめざす
は,子どものコミュニケーション能力の遅れと親
実践への貢献が期待される。
の援助要請行動が関連し(Skeat et al., 2010),援
青年期のみを対象とした研究では,デモグラ
助要請行動を行った母親の子どもは行わなかった
フィック要因について,父親は母親よりも教師と
母親の子どもよりも問題行動や多動性が多いよう
スクールカウンセラーに対する援助要請意図が高
に(Pavuluri et al., 1996),子どもの問題が多く
く(Raviv, et al., 1992),親の性別によって援助
深刻であるほど親の援助要請行動が多いことが明
要請の程度に差が見られている。また,教育レベ
らかにされている。
ルも援助要請意図との関連が確認されている
児童期の子どもの親の援助要請研究の多くは援
(Raviv et al., 1992)。親自身のパーソナリティ
助要請意図・意志を扱っていた。デモグラフィッ
変数として援助資源への信頼(Raviv et al., 1992)
ク要因について,男児の方が女児よりも親の援助
が援助要請意図・意志と関連していた。
要 請 意 志 が 高 か っ た(Raviv, Raviv, Edelstein-
その他の研究は青年期を含む広範な年齢層を対
24
子育ての問題に関する親の援助要請研究の展望
象とした研究であった。デモグラフィック要因に
た研究であったが,母親と父親による援助要請の
関して,乳幼児期と児童期には子どもの性別と援
関連要因の違いや親の性別が他の関連要因の調整
助要請に直接的な関連がみられていたものの,
変数となることが考えられる(例えば,Raviv et
DSM-Ⅲに基づく診断のある子ども(不安障害,
al., 2009)。さらに,援助要請の意図・意志と行動
うつ病など)の場合には性別と援助要請行動の関
間の関連が父母間で異なる可能性もある。
連が見られなくなるというように(Feehan, Stanton,
第3に,本論文で展望した研究の中には,子ど
McGee, & Silva, 1990),臨床的問題の種類が援助
ものパーソナリティ変数とネットワーク変数に関
要請と子どもの性別の関連を調整していた。この
する知見は得られなかった。これらの変数と援助
ように援助要請の主要な関連要因を調整変数とし
要請の関連を検討し子育て支援に活かせる知見を
て位置付けて検証することも今後の課題であろう。
明らかにすることも今後の課題である。
問題の深刻さ・症状の要因に関して,親が専門
第4に,援助要請研究の大部分は自分自身の問
的援助を求めた際に最も多かった子どもの問題は
題に対する援助要請を扱っている。言い換えれば,
攻撃性であり(Shanly et al., 2008),乳幼児期,
「問題や悩みを抱える主体が解決の困難さや必要
児童期とも共通して子どもの攻撃性などの外在化
に応じて自ら援助を求めること」を援助要請研究
問題が親の援助要請とより強く関連しているよう
では中心的に扱ってきた。しかし本論文で展望し
である。
た研究では子どもの問題に対する親の援助要請を
扱っており,問題を抱える主体と援助要請の主体
本論文のまとめと今後の課題
が異なっていることに特徴がある。このような主
体の違いが援助要請と諸変数の関連に何らかの違
本論文の目的は子育て上の問題に対する親の援
いを生み出すかどうかは明確には検討されておら
助要請研究を展望し,今後の研究上の課題を示す
ず,今後の研究において子育ての悩みのとらえ方
ことであった。その結果,子育ての問題のとらえ
をより明確にしていく必要があろう。
方,援助要請の側面ごとの特徴,子どもの発達段
階別の援助要請の関連要因,の3点から先行研究
2.本論文の限界と今後の課題
が展望された。
本論文では現代の子育て支援を考える上で有用
な知見が提供できると思われながらも子育て支援
1.子育ての問題に関する親の援助要請研究の課
題
の研究・実践の中で十分取り上げられていなかっ
た子どもの問題に対する親の援助要請研究を展望
展望した結果を踏まえて今後の援助要請研究の
し,今後の援助要請研究の課題を示した点に意義
課題を4つ挙げる。第1に,子育ての問題として
があると言える。本研究では援助要請研究の現状
主に子ども自身の発達的・情緒的・行動的問題が
を整理したが,今後は子育て支援の利用に焦点を
扱われており,親自身の問題に対する援助要請を
当てて援助要請研究の知見を整理・統合すること
扱った研究は見られなかった。母親自身の問題と
も有用であろう。
子どもの問題は相互に影響し合っていると考えら
本論文の課題として,本論文では「子育て上の
れる。援助要請研究では悩みや問題が生じた時点
問題について親が相談する,援助を求めること」
以降に援助要請するかどうかが議論されているた
を援助要請の概念からとらえたが,援助を求める
め(例えば,相川,1989)
,子育て上の悩みや問
ことや相談することはストレスコーピングなどの
題が生じる過程自体を含めた援助要請の過程全体
概念からも扱われている(Nadler, 1991)。した
を理解することも望まれる。
がって本研究はあくまで援助要請の点からとらえ
第2に,展望した研究の多くは母親を対象とし
た研究知見の展望であることに留意する必要があ
25
本田 真大・本田 泰代
る。とはいえ,援助要請の概念に基づいた研究知
Keller J., & McDade, K. (1997). Cultural diversity and
見は多く蓄積され介入研究も増加しており
help-seeking behavior: Sources of help and obstacles
(Gulliver et al., 2012),子育て支援の研究・実
践にもそれらの知見が生かされることが期待され
る。
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