〔科目名〕 心理と人間 〔単位数〕 2単位 〔科目区分〕 教養科目 〔担当者

〔科目名〕
心理と人間
〔単位数〕
2単位
〔科目区分〕
教養科目
〔担当者〕
〔オフィス・アワー〕
入江良平
時間:
Ryohei Irie
場所:
〔科目の概要〕
人間の「心」を研究対象とする心理学は、19世紀末の誕生以来、近代科学の一分野として認められることを願い、近
代科学の方法と規準に従って自らを規定しようと努力してきた。だが、近代科学の基礎をなす世界観(唯物論、機械
論)は、心という現象を全体として捉えるために必ずしも適切とは言えず、かえって心理学的な認識を狭すぎる枠の中
に限定する結果となっている。
この授業では、近代的な世界観を超えた心の現象への接近の一つの試みという観点から、ユングの創始した分析心
理学の概要を学び、「心」という問題に対する新たな視点の獲得をめざす。
〔
「授業科目群」
・他の科目との関連付け〕
・
〔なぜ、学ぶ必要があるか・学んだことが、何に結びつくか〕
「心」は人間の個別性の焦点であり、普遍的認識を目指す近代科学の対象にはなりにくいが、同時にまた人間が人
間である原点だとも言える。この「心」についての考えを深化することは、認識一般にとって有用な視点を提供し
うる。とりわけ集合的無意識は、近代の人間観の盲点を補完するという意義がある。
〔科目の到達目標(最終目標・中間目標)
〕
・ 集合的無意識の概念を理解し、それによって近代の原子論的な人間観を脱却する視点を獲得すること。
・ 無意識の現れを理解し、無意識と「付き合う」能力を身に付けること。
〔学生の「授業評価」に基づくコメント・改善・工夫〕
「難しかった」というコメントに応えて、
「分かりやすさ」を心がけるようにする。緻密な論理的問題に拘泥せ
ず、できるかぎり直観的な理解を得られるように工夫する。
〔教科書〕
適宜資料を配付する。
〔指定図書〕
とくに指定しない。
〔参考書〕
必要なときに提示
〔前提科目〕
なし
〔学修の課題、評価の方法〕
(テスト、レポート等)
・期末のレポートによる。
〔評価の基準及びスケール〕
・分析心理学的な「物の見方」がどれくらい自分自身のものになっているかをレポートから読み取り、それにもとづいて評
価する。
〔教員としてこの授業に取り組む姿勢と学生への要望〕
心に対する分析心理学の接近方法と概念構成は、通常の近代的な知とはかなり異質であるので、とりつきに
くいと思われる。そのため毎回の授業では、多くの知識を提示し、それを記憶するというより、核心となる
少数の観念を同化してもらえるように努力する。学生諸君は、知識の暗記よりも、むしろ考え方を理解する
ように努めてほしい。なによりも先入観にとらわれず、事象そのものに対する開かれた姿勢をもって、授業
に臨むことが大切である。
授業スケジュール
第1回
テーマ(何を学ぶか) 心理学の成立と展開
内容:近代的世界観にもとづく現代の一般的な心理学がどのように発展してきたかを概観する
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
第2回
テーマ(何を学ぶか) 近代的世界観にもとづく心理学は心をどのように捉えているか
内容:近代の原子論的な人間理解、
「サイエンス」と「物語論」への心理学的認識の二極分解を論じる
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
第3 回
テーマ(何を学ぶか) 「第三の道」としての分析心理学
内容:
「ハードサイエンス」でも「物語論」でもない分析心理学の見取り図。とくに空想的イメージの
中に示される「心的実在」あるいは「客観的な心」について論じる。その他、同じく近代的認識
問題にアプローチする現象学とその限界にも触れる
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか) 分析心理学の成立
内容:そのような心理学的探求がどのように生成したかを跡付ける。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
第4 回
第5 回
第6 回
テーマ(何を学ぶか) 箱庭療法事例の紹介(1)
内容:箱庭の事例を通じて、空想的イメージの中に示される「心的実在」あるいは「客観的な心」の経
験的な背景についてのある程度の観念を形成する
教科書・指定図書 なし
テーマ(何を学ぶか) 箱庭療法事例の紹介(2)
内容:前回に紹介した箱庭の事例におけるシンボリズムを吟味し、集合的無意識と元型とはどういうこ
となのかについてのある程度の観念を形成する
教科書・指定図書 なし
定期試験
第7 回
第8 回
第9 回
第10回
第11回
第12回
定期試験
テーマ(何を学ぶか) 集合的無意識と元型
内容:前回でその生成を見た集合的無意識の概念と空想イメージの中の神話的モチーフについて、より
一般的な形で論じる。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか) 集合的無意識概念と心的実在性の立場
内容:これまでの議論から導かれる近代的世界観への修正を総括する。とくにユングの「心的実在性の
立場」と呼ばれる見方を中心とする。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか) 分析心理学と意識的経験(その一)
内容:日常的に経験される心的現象と分析心理学的な見方とを結びつける概念としてのユングのエネル
ギー論を紹介する。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか) 分析心理学と意識的経験(その二)
内容:分析心理学の意識現象理解を特徴づけるユングの類型論、および意識の一面性と無意識の補償と
いう見方を紹介する。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか)
:分析心理学の展開
内容:2単位の講義では扱えないが、しかしユングの仕事を理解する上ではきわめて重要な精神史的研
究による無意識の探求と共時性をごく簡単に紹介する。
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
テーマ(何を学ぶか)
:まとめ
内 容:これまで学んだことを、全体として振り返る
教科書・指定図書 教員作成のレジュメ・資料による
(レポート課題)