〔科目名〕 西洋の哲学 〔単位数〕 2単位 〔科目区分〕 教養科目 〔オフィス・アワー〕 〔担当者〕 時間: 井上 まや 場所: INOUE Maya 〔科目の概要〕 ヨーロッパの近代哲学は,高度には発展した現代のテクノロジー文明や社会のシステム,およびそれを支える西欧中 心主義的イデオロギーの形成に大きな役割を果たした。近代ヨーロッパが信奉してきた人間の理性が,科学技術を花 開かせ19世紀から20世紀を動かしてきた。「神の追放」を果たし、世界の舞台で活躍してきた人間中心主義=理性主 義は第一次世界大戦を経て、非ヨーロッパの非合理的なものとぶつかり合い相対化されていく。さらに大衆社会が経済 を変質させ,グローバル化していくことにより,境界を瓦解させわれわれを支えて来たすべてのものの起源や痕跡を消 し去っていった。20世紀初頭の西洋の思想的背景を分析し,さらに現代社会のおける知のテーマを取り上げ、その問 題性を、社会•政治•経済を含めて広い意味において「哲学」的に考察する。様々なテーマから西欧の思考対象 思考方法を徹底的に学んで欲しい。日本と西欧の思考の違いを学ぶことにより、それぞれのバックボーンとなっている 社会的•政治的•倫理的•諸問題の差異を認識することができる。中心となる哲学者はハイデガーである。ハイデガーは (1889〜1976)はギリシアから始まる約3000年の西洋哲学を解体し,再構築するために提示したテーマは様々な分 野に及んでいる。この講義でもいろいろな側面からのアプローチを試みる。特に1930年代のハイデガー哲学を中心 に講義していく。 〔「授業科目群」・他の科目との関連付け〕・〔なぜ、学ぶ必要があるか・学んだことが、何に結びつくか〕 近代は西欧の知の原理に貫かれて世界が動いてきた。現代はグローバルスタンダードと言われているが,アメリカンス タンダードで世界が動いていると考えられる。こうした状況の中で起こった1929年の世界恐慌を思わせる、金融危機 が発生した。20世紀末から社会のシステムが大きく変わりつつある。社会のシステムは市場経済の原理で動いていっ ているといっても過言ではない。市場経済が突きつけた問題点は現代社会が解決できなければ後世の人々に負の遺 産として渡さなければならない。特に最近日本で問題になっている格差問題、ワーキングプア、地球温暖化なども市場 経済のシステムが大きな要因になっている。こうした問題を解決するのも恐らく経済システムであろう。京都議定書の排 出量削減割当が今年度から動き出す。早くも CAP&TRADE ですでに排出量の取引がまるで株を取引するように行われ ている。日本経済・アジア経済・ヨーロッパアメリカ経済など、それぞれの国や社会によって経済構造が異なっているに もかかわらず、画一化されたグローバルスタンダードの概念を適応できるのだろうか。例えば、日本企業の雇用システ ムの急速な変化は、リストラ・失業者の増大・若年者の就職難など日本社会の構造転換という現象をもたらしている。そ れぞれの国家がもつ異質性や多様性を喪失させ、均質性を生み出すグローバル化は、本当に人類の幸福をもたらす であろうか。西洋哲学を学び、日本独自のアイデンティティを追求して欲しい。そこから再度グローバル化の本質につ いて見えてくものがあると思われる。専門科目や他の教養科目から学び取った知を、文化・政治・経済などあらゆる側 面から社会のシステムを考察し、新たな人類の生き方を考えて欲しい。 〔科目の到達目標(最終目標・中間目標)〕 <到達目標> ① 自分の興味のあることだけに関心を示すのではなく、人間の存在つまり自分の存在は世界という大きな システムと関わっていることを認識すること ② ハイデガーは1950年代後半に人間を危ぶめている現代テクノロジーの指標として、核兵器と遺伝子工 学をあげた。クローン人間、イラク戦争 北朝鮮核開発など、まさに今我々が直面している問題である。 人間中心主義が生み出した「人間疎外」から、人間存在について考察する。 ③ 自分の意見・考えを積極的に述べる。 <中間目標> 個別的な社会問題のテーマを関連づけ、経済や政治が哲学的諸問題と関わっていることを認識する。 学生の「授業評価」に基づくコメント・改善・工夫〕 授業に関するレジュメについて活用しやすいように工夫してみたいと思います 〔教科書〕 教科書は使用しない。参考プリントを配布します。 〔指定図書〕 〔参考書〕 高橋哲哉「デリダ」講談社 2001年 梅木達郎「脱構築と公共性」松籟社 2002年 山脇直司「公共哲学とは何か」ちくま新書 2004年 サミュエル・ハンチントン 鈴木主税訳 「文明の衝突と21世紀の日本」 集英社新書 2004年 ハイデガーの思想 木田元著 岩波新書 1993年 哲学の実存;ヤスパースとハイデガー リヒャルト・ヴィッサー著 林隆也訳 理想社 1997年 〔前提科目〕 な し 〔学修の課題、評価の方法〕(テスト、レポート等) 課題 20%(毎回 授業で与える) テスト又はレポート 60% 出席 20% 〔評価の基準及びスケール〕 課題、テスト又はレポート、出席の合計点 A:100~90 B : 89~80 C :79~70 D :69~60 F :不合格 〔教員としてこの授業に取り組む姿勢と学生への要望〕 各講義の内容はシラバスにそって行います。その都度問題となるテーマを授業の最初に明確にします。 積極的な態度で授業に出席してください。疑問に思ったこと分からないことはその都度解決するために 遠慮なく質問してください。レポートを書く際に、インターネットからの引用を参考文献としてあげる学生が いますが、参考として使うことは結構ですが、すべての資料がインターネッのサイトからの引用ではレポー トとしては認めません。 授業スケジュール 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 テーマ(何を学ぶか): 授業のアウトライン 内 容: 哲学の問題(哲学史的に) ギリシアから現代哲学のテーマ 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): 近代から現代① 内 容: 近代理性主義の破綻−西洋の没落— 第一次世界大戦とヨーロッパの悲劇 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): 近代から現代② ニーチェ哲学 内 容: 神なき時代の人間分析 ―黙示録的世界― ニーチェ哲学を中心として ヨーロッパの価値転換−ニヒリズムー 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): ハイデガー哲学のキーワード① 内 容: 現存在 世界内存在 ダス・マン(顔のない人間存在) 他 ハイデガー「存在と時間」における人間分析 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): ハイデガー哲学のキーワード② 内 容: 死にさしかけられた存在としての人間 現代文明とニヒリズム 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): 哲学と戦争① 内 容: ハイデガーとナチズム なぜナチズムが生まれたか 教科書・指定図書 定期試験 第7回 テーマ(何を学ぶか): アメリカ文明の影響 内 容: 技術主義と故郷喪失 第8回 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか)大衆社会: 第二次世界大戦 内容;世界が大衆によって動かされる危うさ 第9回 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): 究極の人間理性 アウシュヴィッツとヒロシマ 内 容: 人間の本来性 民族主義 第 10 回 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか):倫理的パラダイムの再構築 内 容: 現代における哲学 第 11 回 第 12 回 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか):哲学と「ゆたかな社会」 内 容:「資本主義的ゆたかさ」とはなにか 自由と多様性 教科書・指定図書 テーマ(何を学ぶか): 講義の結び 内 容: これからの展望 教科書・指定図書 定期試験
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