メディアと言説 - 青森公立大学

〔科目名〕
〔単位数〕
メディアと言説
〔担当者〕
松山圭子
〔科目区分〕
教養科目
4 単位
〔オフィス・アワー〕
時間：授業開始後に通知
場所： 605 研究室
〔科目の概要〕
メディアは私たちに必要なあるいは娯楽としての情報を提供しながら、私たちの生活態度を変えたり社会の政治や経
済や文化を形成したりするのに、寄与している。近代以前から不特定の人々に情報発信するメディアはあったものの、き
わめて多数の人にいっせいに情報を送る機器が登場してきたのは、19 世紀後半以降である。そうしたマスメディアの歴
史や機能を知ることで、それらを批判的に解読したり使いこなしたりする能力（メディア・リテラシー）を獲得する。前半で
は、メディアを知るための理論中心の講義を行う。後半では、まず 2011 年 3 月以降の放射能「安全」報道を検討をし、原
子力や原発に関する過去の報道、全国紙と地方紙などメディアによる差異、さらに最近のコミュニティメディアを含むさま
ざまな具体例をとりあげる。
〔「授業科目群」・他の科目との関連付け〕・〔なぜ、学ぶ必要があるか・学んだことが、何に結びつくか〕
メディアと無縁の生活をおくることのできないすべての人々にとって、メディア・リテラシーは不可欠のものである。
公立大での授業においても、あらゆる科目でインターネット情報を活用することがあるだろう。その際、単に情報を仕入
れてその受け売りを行うというのではない知的トレーニングが重要である。「メディアと言説」は、それを自覚的に行う素養
を獲得する科目である。他の科目で、ガセネタだらけのレポートを書かないためにも！
〔科目の到達目標（最終目標・中間目標）〕
最終目標：メディアの内容を批判的に分析し、メディアを使いこなせる能力を身につける。
中間目標：メディアを分析するための考え方や理論を知る。
〔学生の「授業評価」に基づくコメント・改善・工夫〕
過去の授業において、草創期の白黒テレビの番組などあまり見られないものも含め、具体例を豊富に紹介した授業が
歓迎されたので、今回もそれを踏襲する。
「メディアと言説」はあらゆる報道を扱うので、過去には、この授業をきっかけに、もともと関心の薄い領域に対する興味
を抱くようになった受講者もいたので、今年度もそのような学生を増やすよう工夫する。
〔教科書〕
１．山中速人『娘と話すメディアってなに？』現代企画室、2009 年。
２．影浦峡『3.11 後の放射能「安全」報道を読み解く』現代企画室、2011 年。
〔指定図書〕
五十音順。読.みやすさ重視で選んだ。
阿部潔『スポーツの魅惑とメディアの誘惑―身体/国家のカルチュラル・スタディーズ』世界思想社、2008 年
朝日新聞社「原発とメディア」取材班『原発とメディア 2 3・11 責任のありか』朝日新聞出版、2013 年。
朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠 1～９』、学研マーケティング 2012～2015 年。
井上ひさし『太鼓たたいて笛ふいて』新潮文庫、2005 年。
伊藤守編『テレビニュースの社会学』世界思想社、2006 年。
伊藤守『テレビは原発事故をどう伝えたのか』平凡社新書、2012 年。
上丸洋一『原発とメディア新聞ジャーナリズム 2 度目の敗北』朝日新聞出版、2012 年。
江刺＆小椋(編)『高校野球の社会学―甲子園を読む』世界思想社、1994 年。
NHK スペシャル「メルトダウン」取材班『メルトダウン連鎖の真相』講談社、2013 年。
佐藤健志『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』文藝春秋、1992 年。県立図書館にあり
高木徹『ドキュメント戦争広告代理店』講談社文庫、2005 年。
武田徹『「核」論 : 鉄腕アトムと原発事故のあいだ』勁草書房、2002 年。
武田徹『原発報道とメディア』(講談社現代新書、2011 年。
田中・四方・岡野・藤原・諸橋・岩崎・村松『ジェンダーからみた新聞のうら・おもて―新聞女性学入門』現代書館、
1996 年。
玉木明『ニュース報道の言語論』洋泉社、1996 年。
チョムスキー『メディア・コントロール―正義なき民主主義と国際社会』集英社新書、2003 年。
東京新聞編集局『原発報道-東京新聞はこう伝えた』東京新聞出版局、2012 年。
中村政雄『原子力と報道』中公新書ラクレ、2004 年。
林直哉＋松本美須々ヶ丘高校放送部『ニュースがまちがった日』太郎次郎社エディタス。2004 年。
原克『悪魔の発明と大衆操作 ―メディア全体主義の誕生』集英社新書、2003 年。
半藤一利, 保阪正康『そして、メディアは日本を戦争に導いた』東洋経済新報社 , 2013 年。
福島民報社編集局『福島と原発―誘致から大震災への 50 年』早稲田大学出版部、2013 年。
福島民報社編集局『福島と原発 2: 放射線との闘い+1000 日の記憶』早稲田大学出版部、 2014 年。
福島民報社編集局『福島と原発 3: 原発事故関連死』早稲田大学出版部、2015 年。
本間龍『原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢』亜紀書房、2014 年。
モラン『オルレアンのうわさ(第２新装版)』みすず書房、1997 年。
森田浩之『メディアスポーツ解体 <見えない権力>をあぶり出す』NHK ブックス、2009 年。
山田奨治編『文化としてのコマーシャル』世界思想社、2007 年。特に、柄本三代子、第４章、80-94 頁。
若桑みどり『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(ちくま新書、2003 年。
〔参考書〕
メディア論の名著を選んで、紹介・解説したもの。とても便利。山中(2009)に掲載の文献は、この 2 冊で全て網羅できる。
井上俊・伊藤公雄(編) 『メディア・情報・消費社会 (社会学ベーシックス 6)』世界思想社、2009 年。
鶴見俊輔編集・解説『大衆の時代（現代人の思想セレクション１）
』平凡社、2000 年。
〔前提科目〕
なし。
〔学修の課題、評価の方法〕（テスト、レポート等）
学修の課題
毎回、簡単な予習課題を課す。次の授業の最初の５～10 分間で、その成果を記載した「ゲキ的授業ビフォー・アフター
シート」(Before)、授業終了前の５～10 分間で記した授業へのコメントや質問(After)の提出を求める。
これらについては、原則として、出来不出来ににかかわらず加点も減点もしない。ただし、授業に対する貢献大と認めら
れた場合（よい質問をした、履修者を代表して典型的間違いをおかした等）には、授業中に指名し、ボーナス点を与える
ことがある（指名されたとき、答える必要あり）。
評価の方法
前半回が終了した時点で知識確認テスト（マークシート式＋記述式）。期末試験はマークシート式＋記述式。
なお、レポートを課すこともある。
注意：昨年度開講した「教養特殊講義Ⅱ」を履修した人は、重複する内容が含まれるので、注意すること。
履修する場合には、上掲の評価の方法に示したものではなく、別のレポートを課すことにする。
〔評価の基準及びスケール〕
知識確認テスト 50％、期末試験もしくは期末レポート 50％にて 100 点満点に換算し、次のように評価する。
Ａ：100-80 点Ｂ：79-70 点、Ｃ：69-60 点、Ｄ59-50 点、Ｆ：49-0 点。
〔教員としてこの授業に取り組む姿勢と学生への要望〕
日々、見聞きするメディアを教材あるいは検討材料にしよう。毎回の予習（といってもごく短時間でできる）と積極的な
授業参加を期待する。
第１回
第２回
第３回
授業スケジュール
テーマ（何を学ぶか）：メディアってどういう意味？あるドキュメンタリーTV 番組を読む
内容：新聞・雑誌・TV などに限らない意外なメディアを知ろう。ドキュメンタリーの実例からその批判的解
読を体験してみよう。
教科書・指定図書：配布資料による。
テーマ（何を学ぶか）：メディアの歴史（1930 年代以降）
内容：主に大恐慌～第 2 次世界大戦の時代、政治や戦争のプロパガンダに活用されたメディアを紹介
する。
教科書・指定図書：山中(2009)23-44 頁、原(2003)、井上(2005)。
テーマ（何を学ぶか）：メディアによる洗脳あるいは大衆操作
内容：大衆操作にメディアが効果的であるというのは、弾丸効果あるいは皮下注射モデルの考え方
である。これがあてはまる実例、あてはまらない実例があるかどうか考えよう。
教科書・指定図書：山中(2009)23-44 頁、
第４回
第５回
テーマ（何を学ぶか）：ビジネスとメディア（１）
内容：大衆操作にメディアを使うやり方は、第 2 次大戦後、選挙や商品の広告でより洗練されていく。
それらの研究を紹介。広告宣伝媒体であったことが如実にわかる昔の TV 番組を見てみよう。
教科書・指定図書：山中(2009)45-70 頁。
テーマ（何を学ぶか）：ビジネスとメディア（２）
内容：第４回で簡単に紹介した先有傾向理論、二段流れ理論(限定効果理論)をさらに検討しよう。
教科書・指定図書：山中(2009)45-70 頁。
第６回
テーマ（何を学ぶか）：テレビの登場とその強力効果─「メディア・イベント」を中心に─
内容：テレビの登場により、国民の大半がそれを視聴するような出来事や催しが重要なイベントとして
扱われるようになった。このようなメディア・イベント（特にスポーツ・イベント）について考察する。
教科書・指定図書：山中(2009)73-101 頁、江刺＆小椋編(1994)。
第７回
テーマ（何を学ぶか）：メディアの効果
内容：沈黙の螺旋理論、培養理論、議題設定機能などメディアの効果を説明する理論を紹介する。
教科書・指定図書：山中(2009)73-101 頁。
第８回
テーマ（何を学ぶか）：メディアのつくる「現実」（１）
内容：メディアの技術が発達するにつれて本物以上に本物らしいニセモノの体験ができるようになっ
た。こうした疑似イベントやバーチャルリアリティについて考える。
教科書・指定図書：山中(2009)103-1３5 頁。
テーマ（何を学ぶか）：メディアのつくる「現実」（２）─ボスニアの「民族浄化」─
内容：戦争でさえ広告代理店によってつくられたというボスニア紛争について考える。
教科書・指定図書：山中(2009)103-135 頁、高木(2005)。
第９回
第 10 回
第 11 回
第 12 回
第 13 回
第 14 回
テーマ（何を学ぶか）：マイノリティとメディア（１） ─ジェンダー・バイアス in メディア
内容：メディアの中のジェンダー・バイアスをとりあげ、なぜ「男らしい／女らしい」類型化をするのか考
えよう。
教科書・指定図書：山中(2009)138-170 頁、田中他(1996)、若桑(2003)。
テーマ（何を学ぶか）：マイノリティとメディア（２） ─エスニック・バイアス in メディア
内容： ○○人はこんなタイプという思い込みに陥らないよう、文化本質主義と文化構築主義について学
ぼう。（時間に余裕があれば、カルチュラル・スタディーズのホールに触れる。）
教科書・指定図書：山中(2009)138-170 頁、森田(200９)。
テーマ（何を学ぶか）：事件報道─治安悪化・冤罪
内容：事件報道は、そのショッキングな内容のために、治安悪化の印象を植え付けるとされる。冤罪報
道や犠牲者非難などの問題も生じやすい。松本サリン事件等をとりあげる。
教科書・指定図書：林他(2004)。
テーマ（何を学ぶか）：テレビニュースとテレビＣＭの作法
内容：劇場型政治やポピュリズムといった言葉で批判されたテレビニュースの事例、構造化された誤読
の期待が前提となっているテレビＣＭについて検討する。
教科書・指定図書：伊藤編 (2006) 、山田編(2007)。
テーマ（何を学ぶか）：新聞記事の作法
内容：客観的かつ中立的に報道しているとされる文章作法の意味を読み解く。
教科書・指定図書：玉木(2006)
第 15 回
テーマ（何を学ぶか）：うわさ、都市伝説、ネット掲示板
内容：デマが短時間で広まり、間違いが長年にわたって続くのはなぜか、考えよう。
教科書・指定図書：モラン(1997)
第 16 回
テーマ（何を学ぶか）：前半回レビュー＆知識確認
内容：前半回を振り返り、テストを行う。
教科書・指定図書：
第 17 回
テーマ（何を学ぶか）：ゲストスピーカーによる特別講義
内容：後半授業の最初に、現役のジャーナリストをゲストスピーカーとして迎える。（ゲストの都合により、
予定変更となることがある。）
教科書・指定図書：
第 18 回
第 19 回
第 20 回
第 21 回
第 22 回
第 23 回
第 24 回
第 25 回
第 26 回
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（１）それは科学の問題か、報道の問題か
内容：正しい科学を歪めずに報道すればよいと考えがちである。はたしてそれが科学報道の問題を解
決するのか。
教科書・指定図書：影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（２）安全と安心
内容：安全・安心をセットにして語り始めたのは原発をめぐる言説であった。福島第一原発でそれは
いかに語られたか。
教科書・指定図書: 影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（３）基本的知識の整理
内容：放射性核種や放射能、放射線の単位など基本的な知識を整理する。
教科書・指定図書：影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（４）数値と基準
内容：リスクの限界として、あるいは安全性を担保するものとして数値が語られた。この数値は客観的
か。いかにしてそれは基準とされるのか。
教科書・指定図書：影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（５）リスクとは何か、リスクをどう伝えるか
内容： 3.11 以後、さかんに言われたリスク・コミュニケーションを再考しよう。（かつての環境ホルモン、感
染症爆発や地球温暖化の報道にも通じるものである。）
教科書・指定図書：影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）： 3.11 後の放射能報道（６）「安全」報道は市民を安心させたか
内容：確率論で「安全」を語られて市民は安心できたか。語る側は確率論の「安全」を納得済みか。
教科書・指定図書: 影浦(2011)
テーマ（何を学ぶか）：原子力とメディア小史
内容：世界で唯一の被爆国の日本人に原子力を早くから受容させたメディアの役割を検証する。
このメディアには“鉄腕アトム”も入っている。
教科書・指定図書：佐藤(1992) 、武田(2002)、中村(2004)、上丸(2012)。
テーマ（何を学ぶか）：原発報道─テレビと新聞─
内容：原発事故直後から現在に至るまで、テレビ局や新聞社による報道を検証しよう。
教科書・指定図書：伊藤(2012)、武田(2011)、朝日新聞社「原発とメディア」取材班(2013)
NHK スペシャル「メルトダウン」取材班(2013) 他。
テーマ（何を学ぶか）：原発報道─東京・福島・青森のメディア─
内容：全国紙、地方紙の報道の実例を比較しよう。
教科書・指定図書：東京新聞編集局(2012)、福島民報社編集局(2013)、同（2014）、同（2015) 他。
第 27 回
テーマ（何を学ぶか）：原発報道─原発広告
内容：広告代理店とメディアの報道姿勢の関係を原発で見てみよう。
教科書・指定図書：本間(2014) 。
第 28 回
テーマ（何を学ぶか）：マンガで伝えられた放射能─“いちえふ”と“美味しんぼ”
内容：マンガやアニメのメッセージには強いものがある。また、ノンフィクション以上にフィクションが印象
深いこともある。国内外のマンガ、アニメ、小説などに対する批判的研究を参考に、話題になった“い
ちえふ”と“美味しんぼ”の問題点を検討してみよう。
教科書・指定図書：配布資料による。
テーマ（何を学ぶか）：予備日
内容：授業の進行が遅れたときのための予備日。遅れていないときは、テレビ番組の DVD などを題材に
授業を行う。
教科書・指定図書：
テーマ（何を学ぶか）：まとめ
内容：すべての回を振り返ると同時に、期末レポート課題もしくは記述式試験問題（予告問題）につい
て解説する。
教科書・指定図書：
期末試験もしくは期末レポート。
第 29 回
第 30 回
試験

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