島田塾とは 千葉商科大学学長の島田晴雄氏(元慶応義塾大学教授)が

島田塾とは
千葉商科大学学長の島田晴雄氏(元慶応義塾大学教授)が主宰し、経済の最前線で活動す
る経営者を対象に、
「国と時代を担うにふさわしい力と知力を磨き、互いに交流を深め、学
び合い切磋琢磨するための場を提供することを目的」に(以上、島田塾公式HPより)、年
10 回程度の勉強会などを行っています。
東日本大震災の前日となる3月 10 日、ホテルニューオータニ(東京・紀尾井町)で開催
された第 78 回勉強会で、当社の阿部淳社長が『夢への挑戦』と題して講演を行いました。
同勉強会の議事録より一部を抜粋してご紹介致します。
<島田塾第 78 回勉強会 議事録より原文のまま一部抜粋>
メンバーズトーク『夢への挑戦』
(1)会長挨拶
今日のメンバーズトークは株式会社北日本海事ホールディングス代表取締役の阿部淳様
にお願いしている。阿部様は、ジャパンライン株式会社、現商船三井に入社され、西條海
運株式会社、株式会社カイリク、ヤマニシを経て、1980 年に北日本海事株式会社を設立さ
れ昨年 30 周年を迎えられた。石巻を中心にご活躍されているが、歴史上の奥州藤原氏を想
像させる文化の高い会社をお持ちである。今日はどうぞよろしくお願いしたい。
(2)ご講演(講師:阿部淳様)
最初に私の生い立ちと起業の背景を申し上げたい。
小学生の頃に父親から一冊のペンマンシップというノートブックを買ってもらい、ラジ
オで英語を勉強した。英語を勉強するにつれアメリカの生活様式を知ることになり、将来
はアメリカに行ってみたいと思う少年時代であった。
その後通信士の道を歩み、商船に乗る機会を得た。そこでいろいろな国に行くことにな
ったが、1968 年上海で盲腸手術の為に入院生活を余儀なくされ、文革と毛沢東思想教育に
触れる機会があり、恐い思いをした記憶がある。他方アメリカと中国、旧ソ連と日本を比
較して、政治や経済の体制の違いをビジネスでうまく生かすことが重要だと感じた。
32 歳の時に 92 万円の退職金をもとに独立し、最初は資本がないので仲介業から始めるこ
とにした。日本の船舶を海外に輸出することや、漁業権のあっせんも行った。その時邱永
漢の本を読んでいて記憶に残っていることを申し上げたい。1 つは、「お金はある時に借り
よ」ということだった。自分にとってはいらない時にお金を借りるから返すことができる。
このことを繰り返すと本当にお金が必要なときでも、銀行はお金を貸してくれる。このよ
うな形で信用が蓄積されるのだと思った。もう 1 つは、
「不動産投資はアメリカが一番」と
いうことだった。それは世界中で戦争が起きてもアメリカ国内では戦火は発生しないとい
うものだった。
またある人から、
「資本主義」について教えていただいた。不動産や資本を運用すること
が資本主義であり、体だけを使うのは社会主義だと教えていただいた。資本に稼がせると
いうことを学び、私はアパートを毎年 1 棟ずつ建てて運用することにした。
国際的に海洋法が制定され、他国で日本の漁船が操業することが禁止された。この大き
な変化をチャンスにしようと思い、アメリカで会社を創ろうと思った。金融機関の応援を
頂きながら、シアトルに会社を創立した。石巻でのノウハウを活用し、漁船の稼働率向上
や製品加工を工夫して、経営を軌道に乗せることができた。その後高いブランドイメージ
を確立することができたが、2008 年に 3 隻の漁船と共に企業を売却した。それがリーマン
ショックの 10 日前であり、リーマンショック後まで時間がかかっていたら、売却できなか
った筈であり運の良さを痛感した。
現在の業務は福祉、不動産賃貸、建設業、観光、葬祭事業、ビジネスホテル等を中心に
行っている。不動産にはロケーションが重要である。私の経験上、人口が増加している国
と安定して経済成長する国の不動産が良いと思う。これからはアメリカとアジアに注目し
たい。私の最大の関心事は、これから日本の国債発行高がますます増える中で不動産価格
はどうなるかということだ。過去の歴史を振り返るとイギリスの国債発行が急増した時、
ハイパーインフレが起こったと言われているので、日本でもこれから国債発行がますます
増えた時に、インフレが起こるのかというところは気になる。但しインフレが日本で起こ
ったとしても、地価や不動産価格についてはどうだろうか。これから日本の人口は減少す
るので、インフレの効果と人口減少の効果が相殺され、物品価格は上がっても不動産価格
は上がらないかもしれない。その際不動産を買い支えするのが、中国系ファンドになるか
もしれないが、そこについては是非が問われるだろう。
次にアメリカで仕事をしてみて感じたことについてお話ししたい。
まず狩猟民族と農耕民族ということだ。アメリカは狩猟民族で積極的に攻めるという感
じである。それに対して農耕民族である日本人は、ともすると守勢に回りがちでそれに関
する言葉がたくさんある。
「出る杭は打たれる」「きじも鳴かずば撃たれまい」
「寄らば大樹
の陰」「長いものには巻かれろ」「果報は寝て待て」「沈黙は金なり」「以心伝心」などがあ
り、
「物言えば唇寂し」等は最たるものだ。今の若者の覇気がないことは気になるところだ。
アメリカは自国優先の国家戦略をとっていて、且つ世界の警察を自任しているが、基軸
通貨のドルをしっかり守ってほしいと思う。ベンチャー企業についても開業率が日本に比
べてとても高い。日本は 4%にすぎないが、アメリカは 12%にのぼる。ベンチャーマインド
の高い若者がどんどん起業し、投資家や金融がそれをサポートする。しかもすごいのが、
必ずしもそこでリターンを求めないということだ。若者の夢をかなえてあげたいという富
裕層が多いということだ。
また相続の考えが日米で異なっている。アメリカでは子どもに相続させる時に、まず子
どもに事業をやる気があるかないかを聞く。そしてやる気がない場合は第三者に売却しお
金で相続する。また、やる気がある場合は 10 から 20 年くらいのローンで子どもに売ると
いうことをする。そうすると事業を買った子どもはローンを返そうと一生懸命に頑張る。
日本ではこのようなことは考えられない。農家がいい例で、農業をしようと思わないのに
単に墓守りをしていく子供に相続する為、結局田畑を売るようなケースが起きることだ。