「汝(なんじ)、何のためにそこにありや」 茅ケ崎西浜高等学校 校長 神戸 秀巳 平成 22 年1月初旬、私は岩手県陸中海岸での進路指導研究会(いわて進学支援ネットワ ーク事業「県北・沿岸地域5校共催事業」)で初めてこの言葉を耳にしました。講師は高校 生たちに対して使ったのですが、私は大変な衝撃を受ける一方、大きな感動に浸っていま した。 研究会から戻り、すぐに調べてみました。文部省(当時)からいくつかの職歴を経て、 秋田高校に招聘(しょうへい=礼をつくして人を招くこと)された第 28 代の鈴木健次郎校 長(昭和 38 年~42 年在職)が儀式の際にたびたび生徒たちに問いかけた言葉だと分かり ました。さらに調べると、卒業生・後輩教師の間で語り継がれ、今では秋田高校だけでは なく、日本中で、そして様々な分野・職種で使われていました。 この言葉は「あなたは何のためにそこにいるのですか」という意味の、生き方に対する 問いかけです。鈴木健次郎校長は、 「いついかなる時にも、誰に問われても、すぐにはっき り断言のできる毎日の生活であって欲しい」との想いから、繰り返し生徒たちに問いかけ ました。校長のこの言葉を楽しみにしていた、との卒業生たちの記述が散見されました。 「あなたの存在意義は?」という言い方を私はしますが、同じような想いを持っていま す。生徒には自分の将来を主体的に考え、はっきりとした目的と意識を持って自分の人生 に立ち向かって欲しいと思っています。学校が何かをしてくれるのを期待する受け身の姿 勢ではなく、何をすべきかを自らの頭で考え、心で感じ、自らの責任で判断し、自分の言 葉で表現し、積極果敢に挑戦し、人生を切り拓いていくことを強く望んでいます。と同時 に、 「誠意」 「正義感」 「使命感」を身に付け、他者との関わりの中で、他者への慈しみ(い つくしみ=思いやり)を育てて欲しいと真剣に思っています。 「そのために私たち教職員がすべきことは何だろうか?」 「それを実践するには、どのよ うにしたら効果的だろうか?」これまで試行錯誤(しこうさくご=種々の方法を繰り返し 試みて失敗を重ねながら解決方法を追求すること)してきました。未来に向かう人材を育 てるための情報と情熱を共有し、教職員の持てる力を向上させるため、今年の8月に全国 の仲間たちに呼びかけ、 「第1回進路指導研究会 in 小田原箱根」を実施したところ、全国 各地の参加者たちから多くの知恵と勇気をもらいました。来年の夏には第2回を同じ小田 原・箱根で開催します。また、研究をさらに進めるため、神奈川県内及び県外の教職員を 対象に「進路指導に係る有志勉強会」を定期的に開催していくこととし、第1回を 12 月 10 日(土)に茅ケ崎西浜高校を会場に実施します。 先日県立湘南高校の創立 90 周年記念式典に出席しました。OBで昨年ノーベル化学賞 を受賞された根岸英一さんの講演の中に、ヒントと思える言葉がありました。今後の実践 にぜひ役立てたいと思います。 「逆境を乗り越えるには、とにかく勉強すること。へこたれても、へこたれても、へこ たれない。」 「『やればできる』と自分に自信を持つことが大事。」 「失敗ではなく、知見を得 るための探索と考えるべきだ。」「good competition(競争、競争相手)は必要である。」 平成 23 年 11 月
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