犬の子宮蓄膿症 - ハート 動物病院

Heart Animal Hospital
犬の子宮蓄膿症
ハート動物病院
Heart Animal Hospital
子宮蓄膿症とは?
• 子宮内に細菌が侵入し繁殖、子宮内に膿が貯蓄
する病気です。
• 原因菌は主に大腸菌です。
• 子宮内への細菌の侵入と繁殖は、雌性ホルモン分
泌に左右されます。そのため生理後約2ヶ月の時
期や、高齢犬(6∼8歳齢)の方がリスクが高いとさ
れています。
• 経産よりも非経産である犬の方がリスクが高いとさ
れています。
Heart Animal Hospital
敗血症とは?
• 子宮蓄膿症で危険視されているのが、細菌感染か
ら伴う敗血症です。
• 敗血症とは血液内で細菌が繁殖し、全身感染を起
こした重篤な状態です。
• 侵入される菌の種類にもよりますが、発熱・血圧低
下・出血傾向・貧血等の症状を示します。
• またDICや細菌毒素によるエンドトキシンショックが
引き起こされる場合があります。
Heart Animal Hospital
正常な子宮との比較
• 左下が正常な子宮
です。子宮体部の太
さは正常です。
• 右上が異常な子宮
です。子宮体部が異
常な大きさに膨れて
いるのがはっきりわ
かります。
子宮蓄膿症 ↑
←正常な子宮
Heart Animal Hospital
2種の子宮蓄膿症
• 開放性子宮蓄膿症
子宮から外陰部への排
泄路が閉塞していない状
態。
上図が開放性の子宮症。
• 非開放性子宮蓄膿症
子宮分泌物が固着し、外
陰部への排泄路が閉塞
して起こります。
下図が非開放性の子宮
症。子宮が膨れあがり、
風船状になっております。
Heart Animal Hospital
主たる症状
•
•
•
•
•
•
•
•
元気消失・食欲不振または嘔吐・嗜眠傾向
便秘もしくは下痢がある
水を多く飲む (脱水症状)
粘膜の色、舌の色が青白い (貧血症状)
お腹が妙に張る
外陰部の分泌物で肛門周囲がひどく汚れる
外陰部の分泌物が赤い (外陰部から出血がある)
生理が終わってから約2ヶ月経っている
Heart Animal Hospital
子宮蓄膿症の診断と検査
・X-ray検査
外科 or内科
全てを総合的に判断
・血液検査
血球計算
血液生化学
凝固系検査
炎症反応検査
・Echo検査
Heart Animal Hospital
手術症例の紹介
• 症例1
開放性子宮蓄膿症
• 症例2 開放性子宮蓄膿症
腹膜や腸管との癒着が激しかった例
• 症例3
非開放性子宮蓄膿症
Heart Animal Hospital
症例1 開放性子宮蓄膿症
• 来院約一か月前に生理があった。来院前々日から
おりものが続き、来院前日になりおりもの血が混ざ
ることで来院
• 元気、食欲減退と、飲水量の低下がみられている。
• 血液検査上では白血球増多はなく、程度の貧血が
みられた。
• ただし血中炎症性蛋白質は高値を示した。
各種検査より手術適応となった。
Heart Animal Hospital
症例1 開放性子宮蓄膿症
1.開腹
子宮を認めた。
子宮体は膨れ
ており、異常な
形態を示して
いた
3.子宮全景
左右とも剥離
し、子宮体が
体の外へ出た
状態です。
2.超音波メス
子宮体を出血
させず、丁寧に
剥離してゆく。
4.子宮摘出
しっかり鉗圧し
てから縫合。
出血を最低限
に抑える
Heart Animal Hospital
症例1 開放性子宮蓄膿症
• 摘出した子宮です。
• 現在は術後管理中で
す。
徐々に炎症反応も薄
れ、経過は良好です。
Heart Animal Hospital
症例2 癒着が激しかった例
• 来院一週間前より、元気消失・食欲減退・下痢が
あり、これを主訴に来院。
• また外陰部より分泌物が認められた。
• 糞便検査では潜血反応が認められた。
• 血液検査上で白血球増多、高度貧血、電解質異
常が認められた。また炎症性蛋白質も高値を示し
ていた。
各種検査より手術適応となった。
Heart Animal Hospital
症例2 癒着が激しかった例
1.左側
図上が腹左側
腹膜との癒着
が認められた
2.右側
図右上が腹右
側、こちらも腹
膜との癒着が
認められた。
3.剥離
どちらも傷つ
けぬよう、剥
離をしてゆく。
4.右子宮体
頭側に腸管と
の癒着を認め
た。電気メスを
用いたより慎
重な作業となっ
た。
Heart Animal Hospital
症例2 癒着が激しかった例
5.右子宮頭
側と腸管を無
事剥離。
6.癒着面を
全て剥離し、
右子宮体が体
外に露出した。
7.左子宮体
頭足も癒着が
あり、これも同
様に剥離。
8.左子宮体
腹側にも癒着
があった。これ
を剥離し、よう
やく両子宮体
が体より遊離
した。
Heart Animal Hospital
症例2 癒着が激しかった例
• 摘出した子宮です。
子宮の形が歪になり、前例
よりもかなり膨れているこ
とがわかります。
• 現在は術後管理中です。
癒着の状況から長期間蓄
膿の状態にあったと予測
そのためか、一週間近く白
血球増多と貧血が続いて
いる。
Heart Animal Hospital
症例3 閉鎖性子宮蓄膿症
• 元気消失・食欲減退・腹
部膨満・下痢が主訴
• 生理より2か月経過
• 極度の腹部膨満と外陰
部の汚れも認められた。
• 血液検査上で、極度の
貧血と白血球増多が認
められた。また炎症性蛋
白も高値を示した。
↑ X-ray画像
腹腔の大部分を占める
白い影が子宮
Heart Animal Hospital
症例3 閉鎖性子宮蓄膿症
1.子宮体の
一部です。
まだまだ出
てきます。
2.子宮体の
全体像です。
片側20~30cm
ほどあります。
重さは約1kg
3.子宮体動
静脈もかなり
発達していま
す。まずは吸
収糸でしっか
り結紮します。
4.子宮摘出
鉗圧してから、
結紮、切除し
て摘出しまし
た。
Heart Animal Hospital
症例3 閉鎖性子宮蓄膿症
• 摘出した子宮です。
症例2よりさらに歪に膨れ
あがった子宮がみられます。
重さは約1kgです。
• 今は術後管理中です。
一般状態は落ち着いてい
るのですが、血液検査の値
は未だ不安定で、適切な管
理が求められています。
Heart Animal Hospital
血中炎症性タンパク質の推移
20
CRP (mg/dl)
15
症例1
症例2
症例3
10
5
0
0
1
2
3
4
術後日数 (0は当日)
5
6
7
血中炎症性蛋白は、症例1および3では術後4日目で正常値(≦1mg/dl)
となった。しかし症例2では7日目でも≧1mg/dlを示した。
これは癒着による炎症が激しかったためだと考えられる
Heart Animal Hospital
子宮蓄膿症の術後管理について
• 子宮摘出したとしても膿を含む分泌物は
しばらく出ることとなり、症状もすぐには改
善しない。
• 徹底した原因菌のコントロールと炎症管
理が重要となる。また二次感染も予防し
なければならない。
• これらを自宅管理では困難であり、しばら
くの入院は必須となります。
Heart Animal Hospital
最後に
• 雌性ホルモンバランスが崩れ、子宮内における細
菌感染が原因となります。
• 前項で並べた症状が続くようならすぐ病院にかか
られ、早期治療が望ましいです。
• 時間を置けば置くほど敗血症や貧血をかかえ、手
術のリスクが高まることとなります。
• また症例2の様に腹膜等の癒着が始まると、手術
時間が延びさらにリスクが高まると共に、グラフに
示される通り、術後の管理も難しくなると考えられ
ます。