自転車通勤を許可する際に 注意したい二つのポイント

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2011
どの局も震災報道一色に埋め尽くされる中、その二日後には逸早く一部レギュラー番組の放映に
踏み切ったテレビ東京。その直後から始まった抗議は併せて6百件余に達する一方、激励の声も
90件程寄せられたそうです。この反射行動が、今日の世論の正確な縮図だとすると、多数派には
確かに「非常時」「痛みの共有」「国難」「挙国一致」‥という抗い難い正義があります。 が、しかし…「地獄への道は、善意で敷き詰められている」のではなかったか…本当の「救国」
は、少数派の声(13%の激励)が封殺されない−そのような民主国家に成長した−事にこそあるの
ではないか、と思われてならないのですが、皆様どのようにお考えでしょうか。
■自転車通勤を許可する際に
注意したい二つのポイント
■賃金支払いの5原則
全額払い・直接払い
■職場の人間関係−年代別温度差
から見える処方箋
■最も患者数が多い傷病とは?
三友企業サービスグループ
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労務管理情報
R
oumu news
自転車通勤 を許可する際に
注意したい 労災保険 と 任意保険
近年は健康志向の高まりもあり、自転車通勤がブームとなっています。自転車通勤は、地球環境
にもやさしく、企業イメージの向上にもつながるため、推進をしている企業もあるかと思いますが、
一方で公共交通機関や徒歩での通勤と比べ、事故が発生する危険性が高いことが懸念されます。そ
こで今回は、自転車通勤で問題となりやすい労働者災害補償保険(労災保険)と任意保険のポイン
トについて解説しましょう。
労災保険
労災保険は仕事中の災害のみならず、従業員が通勤中に負傷した場合にも保険給付が行われるこ
とになっています。ただし、すべての事故に対して保険給付が行われるわけではなく、その通勤が
合理的な経路および方法で行われたものでなければなりません。自転車通勤は、比較的自由にその
経路を選択できることから、運動のために少し遠回りをしてみたり、喉が渇いたからと帰宅途中で
アルコールを飲むといったことが発生しやすい状況にあります。しかしこのようなケースでは、合
理的な経路や方法とは認められず、労災の給付が受けられない可能性があります。したがって、企
業としては労災保険で定義される通勤がどのようなものであるかを自転車通勤者に周知しておくこ
とが求められます。
任意保険
通勤途中で従業員が事故を起こした場合、基本的には従業員自身がその責任を負うことになりま
すが、通勤という行為が仕事の前提として行われるものであることから、場合によっては企業が一
定の使用者責任を問われることがあります。このため、近年では自転車通勤についてもマイカー通
勤と同様に、許可制を導入するケースが増加しています。
具体的にこの許可を行う際、会社としては対人・対物賠償保険のある任意保険の加入を要件とし
て定めることを検討したいところです。自転車通勤を認める際の任意保険には様々なものが存在し
ますが、その一つとして、財団法人日本交通管理技術協会の「TSマーク付帯保険」があります。こ
の保険は自転車安全整備士がいる自転車店で整備を行った際に点検整備済として貼られるシールに
付帯される保険のことです。この保険に加入することを許可条件とすれば、自転車の整備不良を防
ぐことが可能です。ただし、賠償責任保険額の上限は2,000万円となっており、保険額が少ないと
判断をする場合には、自動車保険や火災保険、障害保険などの特約として付帯されている個人賠償
責任保険に加入する方法もあります。
自転車通勤を認める場合には、事故の際に労災保険が適用されないケースがあることを指導し、
任意保険への加入を徹底する必要があるでしょう。
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会話で学ぶ人事労務管理の勘どころ
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oumu news
賃金支払いの5原則 全額払い・直接払い
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを社労士とその顧問先の総務部長との
会話形式で、分かりやすくお伝えします。
当社には借り上げ社宅制度があり、毎月その社宅に住んでいる従業員の賃金から
利用料を徴収しています。先日、会社が勝手に利用料を徴収してはならないと耳
にしましたが、本当なのでしょうか?
社労士 はい、本当です。労働基準法には賃金支払いの5原則というものがあり、「①通
貨で、②直接労働者に、③その全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定め
て」支払わなければならないとされています。現在の社宅利用料徴収の取り扱い
はこのうち③の全額払の原則に違反することになります。
総務部長
全額を支払うという原則に従うと、一度賃金を全部従業員に支払って、その後利用
料を徴収するということになるのでしょうか?
原則はそうなります。ただし、例外が認められていて、所得税や社会保険料のよう
に法令に定めがある場合と、賃金から控除できるものを明らかにして労使協定を結
んだ場合には、賃金から控除することができます。今回のケースですと、社宅利用
料を賃金から控除する旨の労使協定を結ぶ必要がありますね。
なるほど、それでは労使協定を結ぶ上での注意点があれば教えてください。
賃金控除に関する労使協定では、いま説明した控除の対象となる具体的な項目とそ
の賃金支払日を記載することとなっています。なお、この労使協定については労働
基準監督署への届出は必要ありません。
労使協定を結んで会社に保管しておけば良いのですね。ところで労働者への直接払
いの原則とは、どのようなものですか?
文字通り、賃金は直接労働者に支払わなければならないというものです。現在では
当たり前と感じるかもしれませんが、昔は職業を仲介した者が労働者の賃金を代理
で受け取って中間搾取したり、年少者が働いた賃金を親が奪い取ったりするような
ことがあったため、労働者へ直接支払うように規定されているのです。
そうなのですか。現在では多くの企業が銀行振込で賃金を支払っていますので、実
際に問題となることは少ないですが、そのような原則があるのですね。
【ワンポイントアドバイス】
①賃金は原則としてその全額を支払わなければならないが、労使協定を締結した場合にはそ
の項目については控除して支払うことが可能。
②賃金の直接払いの原則は、例え労働者が自分の意思によって第三者に委任、代理したとし
ても直接労働者に支払わなければならない。
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経営情報
K eiei information
職場の 人間関係 を
最も重視するのはどの年代か
労働者にとって、仕事での最大のストレスは「職場の人間関係」であるという調査結果があるよ
うに、職場の人間関係は仕事をする上で重要な要素です。
ここでは、今年1月に発表された厚生労働省の調査結果(*)から、年代別の職場の人間関係を
最も重視する割合に関するデータを紹介します。
若い年代ほど職場の人間関係を重視
厚生労働省の「平成21年労使
コミュニケーション調査」によ
ると、職場の人間関係を重視す
る割合が最も高かったのは、20
歳未満でした。調査対象の
86.8%が職場の人間関係を重視
するとしています。
20代以降については、年代が
高くなるにつれて重視する割合
が低くなっていきますが、どの
年代もほぼ半数の人が職場の人
間関係を重視していることがわ
かります。
職場の人間関係を重視する割合(複数回答、単位:%)
100.0
90.0
80.0
複数のコミュニケーション事
項の中から、「職場の人間関
係」を重視すると回答した割
合です。
86.8
70.0
60.0
57.7
50.0
55.0
40.0
51.2
48.9
46.6
40~49歳
50~59歳
60歳以上
30.0
20.0
10.0
0.0
20歳未満
20~29歳
30~39歳
厚生労働省「平成21年労使コミュニケーション調査」より作成
重要な社内のコミュニケーション
職場の人間関係が好ましい状態であれば、コミュニケーションも円滑で社内に一体感が生まれ、
組織が活性化されるといったメリットが考えられます。
上記データから、若い年代ほど社内の人間関係を重視する傾向が強いため、新入社員を迎える企
業や若手社員の多い企業は、職場の人間関係をより良好なものにするよう努めたいところです。上
司や先輩社員は、自分の部下や後輩社員への声かけなど、積極的にコミュニケーションをとるよう
にしてみてはいかがでしょうか。指示を仰ぎたいことが多いと思われる新入社員にとっても心強い
でしょうし、早期の戦力化や定着率の向上にも寄与するものと思われます。
(*)厚生労働省「平成21年労使コミュニケーション調査」
主たる事業が日本標準産業分類の16大産業に属する常用労働者30人以上を雇用する民営事業所から一定の方法に
より抽出した約5,500の事業所、及びその事業所に雇用される常用労働者から一定の方法により抽出した約6,500
人の労働者を対象とした調査です。有効回答率は事業所調査65.3%、労働者調査61.7%です。詳細は以下の政府
統計の総合窓口のサイトで確認できます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001018360
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医業情報
I
gyo news
最も患者数が 多い傷病 をご存知ですか?
いわゆる三大疾病といえば、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患ですが、日本で最も患者
数の多い傷病は何か、ご存知ですか。
ここでは厚生労働省の調査(*)から、入院・外来を含めた総患者数が最も多い傷病のほか、総
患者数が100万人以上いる傷病をご紹介します。
最も多いのは高血圧
上記調査から、平成11年以降の調査年次に総患者数が100万人に達したことのある傷病をまとめ
ると、下表のようになります。
調査年次に総患者数が100万人に達したことのある傷病と総患者数の推移
(単位:千人、%)
平成11年 平成14年 平成17年 平成20年
高血圧性疾患
7,186
6,985
7,809
7,967
対17年比
2.0
糖尿病
2,115
2,284
2,469
2,371
-4.0
う蝕(虫歯)
1,559
1,480
1,814
1,656
-8.7
心疾患(高血圧性のものを除く)
1,845
1,667
1,658
1,542
-7.0
悪性新生物(がん)
1,270
1,280
1,423
1,518
6.7
高脂血症
1,140
1,391
1,530
1,433
-6.3
脳血管疾患(脳卒中)
-1.9
1,474
1,374
1,365
1,339
関節症
749
864
993
1,185
19.3
気分[感情]障害(躁うつ病を含む)
441
711
924
1,041
12.7
脳梗塞
1,120
1,064
1,052
964
-8.4
白内障
1,457
1,292
1,288
917
-28.8
1,096
1,069
1,092
888
-18.7
喘息
厚生労働省「平成20年患者調査(傷病分類編)」より作成
平成20年の結果から、最も総患者数が多いのは「高血圧性疾患」の約797万人となっています。
平成20年10月の日本の人口は約1億2800万人ですから、人口の6.25%に当たる人が高血圧で継続的
に医療を受けているということになります。
次に多いのは「糖尿病」の約237万人、「う蝕(虫歯)」の約166万人の順になりました。その次
は三大疾病の「心疾患(高血圧性のものを除く)」、「悪性新生物(がん)」が続きます。
表の中で目立つのが、「関節症」と「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」の増加です。どちら
も17年から20年にかけて、10%以上も増加しています。
その一方で、上記の傷病のうち半数以上が17年に比べて患者数が減少しています。なかでも白内
障は28.8%、喘息は18.7%減少しています。
医療技術の進歩はもちろん、各人が健康管理の意識を高め、なるべく病気とは縁のない生活を送
りたいものです。
(*)平成20年患者調査(傷病分類編)
一定の医療機関(病院と診療所)とその医療機関を利用する患者を対象に行われた調査です。調査各年の10
月の3日間(火曜日~木曜日)のうち医療施設ごとに指定した1日を調査日としています。ここでの総患者
数は、調査日現在において、継続的に医療を受けている者をいいます。詳細は以下の厚生労働省のサイトで
確認できます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
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