大学は様々な問題に直面しています。

◆大学トップに聞く
学生の減少、学力低下など、大学は様々な問題に直面しています。その中で、生き残りをかけて試行・工
夫を重ねている大学があります。本シリーズでは、特色ある大学のトップの方に、大局的な視点から大学
の運営方針、指導方針,授業の改善等についてインタビューさせていただいた内容をご紹介してまいりま
す。
第3回目は、法政大学の清成忠男総長にお話を伺いました。
◆シンクタンク研究員はこう考える
高橋さんは、2001年8月に「日本の大学はここまで変わる―大予測10年後の大学」を大学未来問題研究
会より出版されています。常に古くて新しい「日本の英語問題」。今回は、憂える立場から寄稿していた
だきました。
◆各大学エクステンションセンター紹介
このコーナーでは、エクステンションセンター等でTOEFL関係または英語講座を開いている機関を紹介い
たします。ぜひご参考にして下さい。興味のある方は、各エクステンションセンターへ!今回は、大学の
エクステンションセンターを特集しています。
◆テストセンターツアー
このコーナーでは、アール・プロメトリック株式会社のご協力により、全国のテストセンターを順次紹介
してまいりました。(南麻布会場は、テンプル大学のご協力により紹介いたしました。)
シリーズ第6回目は、東京に3つあるテストセンターの2つ目、「茅場町テストセンター」でした。
∼第3回:法政大学総長 清成忠男 氏∼
学生の減少、学生の学力低下など、大学はさまざまな問題に直
面しています。その中で生き残りをかけて試行・工夫を重ねて
いる大学があります。本シリーズでは特色ある大学のトップの
方に、大局的な視点から大学の運営方針、指導方針、授業の改
善等についてインタビューさせていただいた内容をご紹介して
まいります。
第3回は法政大学(東京都千代田区)の清成忠男(きよなり・
ただお)総長にお話を伺いました。法政大学は着実に改革を進められており、総長の断
固たる姿勢と自信を感じました。私立のみならずこのような大学が増えていくことを
願っています。 (2002年1月17日 インタビュー)
(この記事は、2002年2月15日に配信されました。)
清成忠男(きよなり・ただお) 氏 プロフィール
1933年2月
1956年3月
1968年4月
1972年4月
1972年4月∼10月
1973年4月∼
東京生まれ
東京大学経済学部卒業
法政大学経済学部兼任講師
法政大学経営学部助教授
東京大学経済学部兼任講師
法政大学経営学部教授
1986年4月∼1988年3 法政大学経営学部長
月
1992年4月∼1996年3 北陸先端科学技術大学院大学兼任
講師
月
1994年10月∼1995年3 京都大学大学院(経済専攻)兼任
講師
月
法政大学総長・理事長
1996年6月∼
この間に中央酒類審議会会長、中小企業分野等調整審議会会長、
経済審議会国土審議会、産業構造審議会などの委員を歴任。
現在、大学設置・学校法人審議会特別委員、中央教育審議会専
門委員(大学分科会)、沖縄振興開発審議会会長、中小企業政
策審議会基本政策部会会長、(社)日本私立大学連盟副会長、
(財)大学基準協会理事、日本ベンチャー学会会長。
研究分野は、地域経済論・企業家論。
主要著書・訳書に、『ベンチャーキャピタル』(新時代社)、『地域主義の時代』
(東洋経済新報社)、『経済活力の源泉』(東洋経済新報社)、『地域産業政策』
(東京大学出版)、『グローバル時代の地域づくり』(ぎょうせい)、『中小企業
ルネッサンス』(有斐閣)、『ベンチャー・中小企業優位の時代』(東洋経済新報
社)、『日本型産業集積の未来像』(共編著、日本経済新聞社)、『企業家とは何
か』(J.A.シュンペーター著、編訳、東洋経済新報社)、『21世紀の私立大学像』
(法政大学出版社)、『地域における大学の役割』(共編著、日本経済評論社)、
『地域における大学の役割』(共編著、日本経済評論社)がある。
高田:本日の趣旨は、まずこれからの大学のあり方とは何か、特に私学の観点からお話しい
ただければ幸いに存じます。2番目に、貴校における今後の経営方針、特にグローバルな視野
で特記すべき事をお教えください。最後は卒業生に期待することは何かという所で締めく
くっていただきたく思います。
これからの大学のあり方について
高田:大学は現在転機を迎えています。私学は特にどう生き残って行くかが問題だと思いま
すが、これからの大学はこうあったほうが良いという信条をお聞かせ下さい。
清成:すでに私学の場合格差が非常に拡大しています。いわゆる定員割れを起こしていると
ころが4年制でも3割超という状況になっておりますし、その動きはどんどん加速されると思
います。しかも、国の政策がこの半年くらいの間急速に転換しつつある。
第一は、競争原理の導入です。ですから、国立大学法人間
の競争と、学校法人と国立大学法人との競争が出てきま
す。そして実はこのことが、今まで私学は一律補助がある
一定のルールで行われてきた訳です。そういう、一律補助
から競争的資金を助成することで、競争原理に入ってく
る。
第二は、経済財政諮問会議から発したのですが、私学の公
的支援の機関助成から個人助成への動きです。だから大学
を助成すると言っても、学生の奨学金などの形になってく
る。もう一つは国の財政の悪化を考えると、財政資金の補助から税による研究の促進という
形になります。税が一番市場経済に馴染みやすい。やる気があり頑張る大学には、例えば寄
付に対して減税、免税を行う。法人、個人でも、損金算入の限度額を拡大してもらう。実は
アメリカではもうそうなっています。そう意味で私学助成は根本的に変わってくる。自立、
自己責任が要求される時代です。従って私学経営者はそれだけの覚悟を持っているかどうか
が非常に大きな鍵ですね。
さらに国立との関わりでUS News and World Report 2002年版における研究型大学トップ
30を見ると、私立大学が25校で州立がたった5校に過ぎません。これは州立(連邦ですから
国立と同じ)の時代ではないことを意味します。日本も富国強兵で外国に追い着く時には帝
国大学・旧制高校を作ったり外国人教員を雇ったりしました。教育研究のインフラを整備す
る点で「国立」の意味があった。しかし今は違います。これからは私学の時代ですし、成熟
した経済大国日本ではもっと私学に自由に任せることが大学教育に必要です。
国立大学が最初は「独立行政法人」と考えていたのが、第三者評価を考えたら独立行政法人
というのは馴染まない。「国立大学法人」という別な法人を作ることにほぼ決まりました。
そこで文部科学省が一生懸命持参金を付けようとしている。今年度も来年度も予算として国
立に多額のお金をつけている。そこで私立とのハンディをつけて「トップ30」をやられたら
大変です。既にハンディがあることを考えるとむしろトップ30は全部私学から選んでも良い
くらいです。今まで国立に集中的にお金が導入されてきましたが、既に時代錯誤で、「トッ
プ30」で国立に更にお金をつけるとなれば問題外です。
法政の大学改革
高田:国立と私立の競争はあります。しかし私学間でも良い大学は改革を進めて生き残り、
そうでない大学は潰れるか、統合されるかもしれません。この流れはやはり2∼3年の内に
もっと進むでしょうか。
清成:加速されるでしょう。18才人口、志願者のピークは92年です。2001年までで、18才
人口、志願者ともほぼ4分の1減っています。どこの大学も平均して減っていいはずですが、
実際には定員割れの大学・学部が随分あるわけです。代表的な大学に限定して、92年と2001
年を比較してみると、志願者が横這いに推移しているのは立命館・東京理科大・法政の3校だ
けです。あとは、大幅減です。早慶は30%以上、日大、青学は40%台、中央、明治あたりが
だいたい平均値並の減少です。これだけ志願者推移をみても悪化してます。法政や立命の場
合は改革効果ですね。法政は99年度、2000年度の2年間に4学部を作りました。現代のニー
ズにあった学部ばかりです。
情報科学部、国際文化学部の二新学部の競争倍率は2001年一般入試で27倍です。情報や国際
という名のつく学部は既に全国で定員割れしている中で、当学は単に新しい学部というだけ
でなく、他にやってないことをやる日本第一号だからです。他大学がほとんどコンピュー
ター・エンジニアリングですが、情報科学部の場合コンピューター・サイエンスの基礎やデ
ジタルメディア等をやります。国際文化学部でも、SA(Study Abroad) という形で一学期間
(one semester)、全員強制留学の形をとります。これも英語圏だけではなく、ドイツ、フ
ランス、スペインや中国、ロシア、韓国に留学します。
人間環境学部と現代福祉学部は入試時の偏差値で見ると、
この分野では日本のトップです。現代福祉や福祉は学部も
学科も多い中で、法政の現代福祉学部が偏差値トップで
す。福祉の中身が先発と全然違い、21世紀型の福祉を考え
る。後発のメリットですね。
この4学部を作ったことで、既存6学部に4学部が加わって
10学部になった。反面既存6学部で今改革が必要になって
います。部分的に既存学部と新しい学部がバッティングす
るからです。例えば、国際文化学部と文学部。部分的に英
文科。現代福祉学部と社会学部。情報科学部と工学部。そうすると既存学部が学科の再編新
設等で、独自性を更に出そうとする。他の大学は改革が進まなくて困っているようですが、
改革には費用がかさむので法政では逆にどうやって抑えようかと思っています。
昨年、経済学部に国際経済学部科がスタートし、今年は社会学にメディア社会学科がスター
トする。来年は、経営学部が今までの一学科から三学科になる。文学部が新学科を作ること
が決まっていますし、大学院の充実という方向に行っています。ですから大変目まぐるしい
改革が急速に進んでしまっているというのが状況です。
高田:他大学でも新しい学部、学科設立の流れがありますね。その中で、「国際」という
キーワードは20年ほど言われて来ましたが、常に新しい面も持ち合わせています。その時代
の人にとっては新しい「国際」の切り口があると思います。法政大学で、今回特に国際文化
学部など幾つかの学部で、実際の切り口はどのようなことを考えられていますか。
清成:かつては国際的な経済の関わりでいうと貿易が中心でした。それが今は直接投資に切
り替わってきている。直接投資の場合は人が動きます。それで、グローバリゼーションが進
むと言うことになります。だから今は国際化というよりグローバル化と言ったほうが的確だ
と思います。しかし、9・11のワールド・トレード・センターのテロでグローバリゼーショ
ンにブレーキがかかったと見る動きが一部にはありますが、先々の流れとして見れば進むと
思います。これはグローバリゼーションのメリットがデメリットより大きいからです。ただ
テロで明確になった「非対称」----宗教、所得(富者と貧者)、国-対-国際的テロ組織(国民
国家-対-国民国家ではない)----が鍵です。今後順調に進むかどうかは、この非対称的要素が
どれだけ自ら生じる問題を解決するかが問題です。
そのためには文化理解が重要になります。従って国際文化学部(外国語学部や単純な国際学
部ではない)を作りました。国際文化と名付けたのは、非対称的な文化の違いを越え、文化
理解に重点を置いて国際教養人・国際社会人を作ろうというコンセプトです。かつての国際
化よりむしろグローバル化に視点を置いている点が違うところです。その延長上でアメリカ
研究所という大学をサンフランシスコ空港のすぐ南に作りました。連邦政府の教育法人、学
校法人の認可をされています。そこで、アメリカの大学と組んで、大学院教育を今年スター
トさせる予定です。法政では国際文化学部でSA(Study Abroad)をやりますが、去年から
スタートした経済学部の国際経済学科もSAをやります。人を連れて行くということがやはり
重要です。文化理解は、やっぱり海外で一定期間滞在して勉強することが非常に重要です。
インターンシップもやってもらう。アメリカでやるのは修士課程一年生MBAコースで、一年
でのマスター取得を推進しています。
高田:一応、その後期課程、博士課程は日本帰国後ですか。
清成:ええ。または海外のどこの大学でも入学できます。そうするとTOEFLの問題も当然出
てきます。法政はCSU(カリフォルニア州立大学)と提携しますが、教員から出る質問が
「なぜスタンフォードと提携しないのか?」「なぜカリフォルニア大学各校でないのか?」
です。常識的に考えると、東大、一橋、慶應等の学部学生でもスタンフォードのマスターに
一回で受かることはないですよ。優秀な人たちが一旦社会人となって挑戦というのが圧倒的
です。それならトップより多少ランクを下げたビジネス・スクールと提携してそこに大勢
送ったほうがいいわけです。その先は自分で選んでもらえばいいし現実的です。この大学院
も法政出身者に限定しませんので各大学から来ると思います。
語学について
高田:アメリカの大学とTOEFLの話題が出ましたので関連したことを申し上げます。常に問
題になるのが「語学や言語とは何か」「文化理解のために英語だけできればいいのか」とい
う点です。日本人はあまり英語ができないという厳然たる事実がありますが、ある水準を超
えれば「手段」と割り切って使えます。一定水準まで到達しないうちに「できない」と騒い
でいないで、海外強制留学のような試みが広がって、最低レベルは皆超えているという時代
が来ることを私は願っています。語学に対してやはり最低限はやっておいて欲しいという要
望はおありでしょうか。
清成:まったくおっしゃる通りですね。先日フランスから
リヨンやグルノーブルから来た学長達とフランス大使館で
一緒に会食しながら、大学院のドクターコースの教育を日
本とフランスがジョイントでやろうかという話をしてたん
です。ある国立大学の学長は「そんなことはできません
よ」「日本人の学生でフランス語ができるのなんていない
し、フランスの大学生で日本語ができるのもいないで
しょ」と言う。私は「法政ならできますよ」と申し上げま
した。例えば国際文化学部では、第四セメスターに行くわ
けです。最初の一年半はフランス語特訓。授業を聞いてわからなかったらどうしようもない
からね。帰ってくれば一応授業がわかるくらいのフランス語をマスターしているわけです。
その連中が大学院に進めばまたフランスに留学したいだろうし、法政ならフランス政府と
ジョイントもできます。フランス大使から「さすがフランス人のボアソナードが作った大学
だ」とお褒めいただきました。これは当然、上智でも早慶でもできると思いますよ。
だからうちの場合CSU(カリフォルニア州立大学)と組むとしても、学部を出てすぐ通用す
るかどうかです。ところが、幸か不幸か日本は3月卒業で、一学期(one semester)時間が
あります。そこで、プレMBAコースをうちでやろうとしています。英語のできない者は英語
の特訓を、ビジネスの勉強をしてない者はビジネスの特訓をやればいいんです。それを半年
間やる。海外から半分くらいバーチャルでレクチャーでやる。そういう仕組みを使わないと
かさあげができない。やはり最低線のところまで引き上げていかないといけないと思いま
す。
卒業生に対するメッセージ
高田:法政を既に卒業して社会で活躍している人も、まだ学校に残っている人もいます。改
革のメリットを現在そして今後享受できる人がいます。法政の卒業生に対しどのようなこと
を期待されますか。
清成:日本的雇用慣行が急速に崩れており自立型人材でな
くては駄目です。その対極にあるのは会社人間です。すべ
て会社依存で、会社の研修計画に従って能力形成がされ
る。そうではなく、自立してキャリア・プランを持って
キャリア形成して、何らかの専門能力を持たないとやって
いけません。そういう自立型人材を卒業しても目指して欲
しい。
もうひとつは、知識社会・知識経済の移行で、知的創造活
動が非常に重要になる。それから、経営資源の高度化。学
生時代に学ばなかったこと、今勉強しなくてはいけないことは山のように出てきています。
キャリア転換を考えたら、例えば工学部出身の人でも文系の勉強をしなくてはいけないこと
が起こってきます。そうすると、やはり生涯学習とか高度学習ですね。もう一度大学に戻っ
てきてほしいし一生大学と縁が切れない時代が来ているかもしれません。従来のように大学4
年間、一定の時期だけ勉強すればそれでいいという時代ではなくなってきている。しかし
今、高等教育のプロバイダーは大学だけではありません。その中で大学の役割はやはり基礎
的部分と先端的部分です。だから、勉強したい人は、もう一回大学に戻ってきてくれれば卒
業生の満足度も高められます。それからアメリカの大学の財政状況をみてみると、基本財産
がしっかりしています。これは、卒業生の寄付が多く蓄積されてくるということを意味しま
す。従って、日本でも寄付の仕組みを作って、私学の財政基盤の強化を図る。財政基盤が強
化されるといろんな基礎研究ができ、国の助成金が投入されてきます。そんな循環過程が働
いて、基礎研究が非常に重要となれば、今度は法人からの寄付も集まるという循環過程が働
くわけです。財政基盤が強化されると良い教員を集めることができる。これまでは自分の出
身校で教員となって一生を過ごしてしまうことが多い。今後は、教員の流動化の時代が来る
でしょう。だから私立大学側の努力次第で、教育研究の質も上がって行くし、逆に努力しな
ければ停滞するということになりますね。
高田:教員の質とおっしゃいましたが、結局常にある一定のレベルまでに到達させて、その
後それを保っているのはどのような仕組みになるのでしょう。
清成:先程、文部科学省の政策が競争原理の導入に変わってきたと言いました。以前は、大
学間の競争という点で言えば国立も私学もみんな仲良くという護送船団です。実は大学内で
も一定の給与表があって業績に関わりなく、年功昇給で上がっていく日本的雇用慣行です。
これが明らかに壊れてきました。文部科学省が大学間の競争原理を導入すると、今度は大学
内部でも競争原理を導入しなくては駄目です。頑張った人には報奨金が付くというやり方は
一部の大学ではもう始まっています。おそらく各大学はこれからその方向に行くんじゃない
でしょうか。
高田:今までも教員評価というのはなかなか難しかったと思います。論文数が多数あればい
いとすると、教育に熱心ではなく研究だけしている人だけが評価される弊害が生じます。も
う少し違う形の評価はないのでしょうか。
清成:大学本来のミッションはやはり教育です。良い教育をしようと思ったら、研究のレベ
ルも高くなくてはいけない。ところが、教育に関して日本はファカルティー・デベロップメ
ントをほとんどやってこなかったため、教育効果の評価はきちんとできなかった。今後は
ファカルティー・デベロップメントをちゃんとやる、教育の評価をどうするかは大変大きな
課題になるし、研究面でも特に私学の場合、外部資金を投入しなくてはやっていけません。
教育研究に関しては、やはり第三者による的確な評価、情報公開、社会に対する説明責任が
ますます出てきますし、それを進めていくことです。だから、監査室は内部の業務をチェッ
クするところで、今年度は大学基準協会の相互評価に申請を出して、内部の自己点検、相互
評価という形で評価してもらおうと考えています。基本的には第三者評価がやはり必要だと
思います。学内評価の場合にも、例えば大学の中に外部の人が入った評価委員会を作ること
も進めています。
高田:本日は本質的なお話をいただきましてありがとうございました。
(インタビュー:TOEFL事業部長 高田幸詩朗)
∼株式会社三菱総合研究所 研究員 高橋衛 氏∼
高橋さんは2001年8月に『日本の大学はここまで変わる−大予
測10年後の大学』を大学未来問題研究会より出版されていま
す。常に古くて新しい「日本の英語問題」。今回は、憂える立
場から寄稿していただきました。
(この記事は、2002年2月15日に配信されました。)
高橋衛(たかはし・まもる) 氏 プロフィール
1981年
1981年
1989年
主な著書
(いずれも共
著):
早稲田大学政治経済学部卒業
日本ビクター株式会社入社
株式会社三菱総合研究所入社
以後、幅広いリサーチ、コンサルティ
ングプロジェクトに従事。
現在、情報通信政策部主任研究員。
『環境創造の経営』(講談社)、『三
菱総研ヒット商品開発ノート』(プレ
ジデント社)、『加速的に成長する4
大市場を読む』(中小企業国際セン
ター)、『大予測21世紀の大学』
(東洋経済新報社)
低すぎないか、大学生の英語能力
年間1,782万人(2000年)もの日本人が海外に出る時代である。企業の国際化も急速に進
み、外資と提携した大手自動車会社の事例、生産拠点との連絡の必要から社内公用語を英語
にした企業の事例などをあげるまでもなく、英語の必要性は高まるばかり。また「インター
ネット上で流通する文書量の8割以上は英語である」という調査結果もある。今や世界の果
てでも日本人をみかけるが、それでも日本人全体の英語能力が世界の水準から大きく見劣る
との議論がある。
例えばTOEFLの国別のスコアも、同じアジアでも英語を公用語とするシンガポールなどは
600点前後を誇る中、日本は受験者の平均で500点を行ったり来たり(99年は501点)。ア
ジアの国々の中でも最低クラス(21ヶ国中18位)、全世界で国別でも下から数えた方が早い
という現実を嘆く声も多い。
TOEFLの得点が諸外国に見劣るということは、受験者のプロフィールを考えれば日本の大学
生の英語能力も低い、と断言してもよかろう。ただし日本からは年間10万人以上が受験して
いるから、中には英語の達人も相当いるのだろう。おまけに最近は帰国子女も多い。どうし
ても、という場合には彼らに通訳してもらうことも可能だ。ただしこれだけの国際化の時代
である。日本を背負う一握りの超エリートだけが外国と接点を持つわけではなく、大学とい
う高等教育(いちおう)を受けた社会人であれば、様々に海外と接点を持つのが当然の時代
に、一々通訳頼みでは心もとない。
とは言っても、少なくとも従来までは中学高校で大量の授業時間と受験英語だけはみんな通
り過ぎてきていたから、大学生ともなればコミュニケ−ション能力は劣りながらも、「読み
書き」だけは多少はできてきたはずだが、最近ではそれさえも大分怪しくなってきた。ま
ず、少子化時代に入って学校もお客様(=学生)の確保に必死で、付属校からのエスカレー
ターや、AO入試(≒論文と面談で合格させる)も増え、受験競争がだいぶ緩和。「受験英
語」の必要性が低下したのに加え、中学∼高校での英語授業時間が減少していることも加
わって、偏差値上位校の学生でさえ英語力(読解)はお粗末極まるとされる。2002年(中
学)・2003年(高校)からの新学習指導要領でゆとり教育が実施されて英語の授業時間が減
少する。従来の読解からコミュニケーション能力主体に授業をシフトするというが、読解も
コミュニケーションもダメ、とならないか心配である。
一方、こうした学生を受け入れて育てる日本の大学側も、現代版「読み書きそろばん」の英
語とパソコン教育には必死に注力しているし、国際化した学部を設置するなどの努力をして
いる。その努力は多とするのだが、果たして今のようなペースで大丈夫なのだろうか。英語
教育に関する限り中国や韓国に遅れをとっていないだろうか。文部行政にも改革の風が吹い
ている昨今、もっと思いきった改革が出てきても良いだろう。例えば、英語教育に関して国
内の大学では数少ない成功例である国際基督教大学(ICU)などを参考に、主要な大学の授業
は1/3英語にしてしまうなど、色々できることはあるはずだ。
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このコーナーではエクステンションセンター等でTOEFL関係、
または英語講座を開いている機関を紹介していきます。是非ご
覧になってご参考にして下さい。興味のある方は各エクステン
ションセンターへ!!今回は大学のエクステンションセンター
を特集しています。
(この記事は、2002年2月15日に配信されました。)
エクステンションセンター一覧
大学名(50音順)
愛知学院大学
愛知淑徳大学
関西大学
熊本学園大学
札幌学院大学
上智大学
玉川大学
北陸大学
龍谷大学
早稲田大学
桜美林大学
名称
愛知学院大学エクステンションセンター
愛知淑徳大学エクステンションセンター
関西大学エクステンションセンター・リードセ
ンター
熊本学園大学エクステンションセンター
札幌学院大学エクステンションセンター
上智大学コミュニティ・カレッジ
玉川大学継続学習センター
北陸大学オープン大学
龍谷エクステンションセンター(REC)
早稲田大学エクステンションセンター
桜美林大学オープンカレッジ
* 国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部では、各エクステンションセン
ターに関するご質問にはお答えすることが出来ません。ご質問がござい
ましたら、直接各大学までお願い申上げます。
* 各大学担当者の皆様エクステンションセンターを上記のような目的で活
用されていらっしゃれば、当協議会までご連絡下さい。ホームページ上
にて掲載させて頂きます。
⇒ご連絡先:[email protected]
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∼第6回:東京・茅場町テストセンター∼
このコーナーでは、アール・プロメトリック株式会社のご協力に
より、全国のテストセンターを順次紹介してまいりました。(南
麻布会場は、テンプル大学のご協力により紹介いたしました。)
シリーズ第6回目は、東京に3つあるテストセンターの2つ目、
「茅場町テストセンター」でした。
(この記事は、2002年2月15日に配信されました。)
意外と便利な交通立地
隅田川のほとり、永代橋のたもとにある茅場町テストセンターは、東
西線・日比谷線の「茅場町」駅から徒歩で約8分の永代通り沿いにあり
ます。
若者達にはあまり馴染みの無い場所のせいか、不便だと思われがちで
すが、徒歩10分以内のところに八丁堀駅(営団日比谷線・JR京葉
線)、水天宮前駅(半蔵門線)があり、千葉方面、渋谷方面からのア
クセスも楽々です。 それに、東京駅からはバスも出ているので(丸の
内北口で錦糸町方面行きに 乗ってください)、地方から新幹線に乗っ
てきた人にも安心。おまけにバス停 「永代橋」はテストセンターの正
面にあります。ほら、意外と便利だということがお解りいただけたでしょう。
眺めのいいテストセンター
15階という全国屈指の高さ(?)を誇る茅場町テストセンターには4室のテストルームがあ
り、一度に56名の方の受験が可能です。
日・月・祝日を除く火∼土曜日に試験を実施していますが、土曜日は席が埋まりやすいので、
ご予約はお早めに。
ゆったりとした待合室
15階のエレベーターを降りたら、看板のとおりに廊下を進んでく
ださい。ガラス張りの大きな扉を開ければそこが受付です。廊下
の一番奥にはIT系のテストセンターがありますので、お間違えの
ない様に!
受付で所定の手続きを済ましていただいたら、クラシックの流れ
るゆったりした待合室で心を落ち着けて試験に臨んでください。
何かわからないことがありましたら、お気軽にスタッフへどうぞ。
気分転換は、隅田川テラスでどうぞ
長い試験がやっと終了したら、気分転換に隅田川テラスを散歩なんてい
かがですか?天気が良ければ川風に吹かれながらの日向ぼっこもステキ
ですよ。他にも、永代橋を渡って10分くらい歩けば、下町情緒溢れる
門前仲町、ちょっと足を伸ばせば銀座、お台場と、遊びや買い物に便利
なスポットがたくさんあります。地方から泊まりがけでいらした方な
ら、ディズニーランドで楽しい思い出を作ってください。 それでは、茅場町でのご受験があなたにとって素敵な思い出となることを心よりお祈りいたし
ます。
(聞き手:TOEFL事業部)
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