ナンシー便り(1)(世界史分野 井上まな 2014年9月~2015年6月)

ナンシー便り(1)
世界史分野 3 年:井上まな
研究テーマのキーワード:
「ルネサンス、美術史、図像学」
私は現在、
2014 年 9 月から 2015 年 6 月までの予定で、
フランス北東部の街、ナンシー市にあるロレーヌ大学の交
換留学生として来ています。ナンシー市は、パリから
TGV(高速新幹線)で 1 時間半ほどのドイツ国境近くに位置
しており、世界遺産のスタニスラス広場、花や植物を基に
した曲線美アール・ヌーヴォー発祥の街として知られてい
ます。至る所にアール・ヌーヴォー建築があるので、街全
体が美術館のようです。2 日もあれば十分に街の見どころ
を見て回れるので、決して規模の大きい街とは言えません
が、落ち着いた美しい街です。
私が、
フランスに着いたのは、2014 年 9 月 1 日。
パリのシャルルドゴール空港に不安とそれ以上の
胸の高まりと共に降り立ったとき、20 時だという
のに空はまだ明るく、とても美しかったのを覚えて
います。フランスを含め、ヨーロッパでは、夏季は
21 時ぐらいまで日が出ています。また、夏は暑く
乾燥しています。日本の夏のような息苦しい暑さで
はないので、同じ気温でも過ごしやすいです。これ
が、フランスに来て私が初めて感じた、日本との大
きな違いでした。
世界遺産:スタニスラス広場
フランスに来たのは、まだ夏の暑さが残る時期
でしたが、秋、雪の降る長い冬を越え、ついにこちらで春を迎えました。私の留学期間も終わりが近づ
いてきましたが、これまでのことを振り返りつつ、学習、生活、旅行など私の留学生活に関することを
数回に分けて綴っていきたいと思います。
【生活面】
私は、大学から徒歩 20 分ぐらいの学生寮
に住んでいます。私の部屋は、12 ㎡で、シ
ャワー、トイレ付の 1 人部屋です。キッチン
は、各階に 2 か所あり、約 50 人で共用して
います。部屋にこもっていると人と関わる機
会はないですが、キッチンに行くと他の国の
留学生やフランス人の学生に出会います。プ
寮の一人部屋
ライベートな部屋にいる間はフランス語を話すことがないので、私はキッチンで出会う学生に自分から話
しかけ、そこでフランス語を使うように心がけています。
寮のすぐ近くにはスーパーがあり、駅からは徒歩 30 分ほどです。ナンシーにはバスやトラムも通って
いますが、私はいつも徒歩で街中を移動しています。盆地なので坂道も多いですが、良い運動になってい
ると思います。
フランスは、ヨーロッパの中でも物価が高いと言われています。確かに、文房具や日用品は、日本より
値段が高く、質も良いとは言えません。日本の 100 円均一ショップがどれほど便利なものであるか、非
常に思い知らされました。
一方で、農業・酪農国だけあって、野菜、果物、乳製品は日本より安いように思います。例えば、じ
ゃがいも(こちらでは、じゃがいもは主食として代用されます)は、2 キロで 1 ユーロ(140 円)ぐらいで
購入できます。日本では良い値段のするチーズも、こちらでは三分の一以下の値段で購入することがで
きます。もちろん、東欧の国々と比べると、これらのものも高くなってしまうのですが。
フランス料理は、バターがふんだんに使われる料理、お菓子が多い
です。美味しいですが、日本食の繊細で淡白な味ではないので、留学
初めの頃は、日本にいた頃と同じぐらいの量を食べて、胃もたれをす
ることがありました。日本食が恋しくなったら、アジアンショップで
材料を購入することができます。しかし、日本で購入できる金額の倍
以上なので、日本食が大好きな人はあらかじめ、日本から調味料を持
参していくことをおすすめします。街には、日本食レストランが何軒
かあり、お寿司やラーメンを食べることができますが、正直美味しく
ありません。
とはいえども、美食の国、フランス。「パン・ワイン・チーズ」は
フランスの食でいう三種の神器です。まず、街を歩いていると 100m
スーパーのジャム売場
ごとにパン屋さんがあります。1 日に 3 回以上は、フランスパンを抱
えて通りを歩くマダムとすれ違います。パンにつきもののジャムの種
類も豊富で、スーパーに行くと、ラック 1 台分をジャムが占領していることもあります。
フランス人は、友人や家族で時間を共有して過ごす
ことが好きです。週末になると知人を家に招いてソワ
レ(夕方以降のパーティ)が開かれます。たいてい、
ソワレは「アペリティフ」と呼ばれる食前に飲むお酒
から始まります。特に指定はありませんが、度数の高
くないアルコールやワインを飲むことが多いです。食
後には、再びワイン、そしてここでチーズが登場しま
す。チーズに関しては、村の数だけ存在すると言われ
ており、フランス人でさえも全種類を把握している訳
ではありません。フランス人は、多様なワインとチー
ズのマリアージュ(フランス語で“結婚”)を楽しみ
つつ、皆と語り合って時を過ごします。
ソワレでの 1 コマ