第1章 職業能力開発を進めるための国の政策

第二編
チェコにおける職業能力開発とその実施状況
第 1 章 職業能力開発を進めるための国の政策
(1) 重要戦略文書
1) 欧州主要戦略(リスボン戦略:Lisbon Objectives)
欧州評議会は 2000 年リスボンにおいて、欧州連合 (EU) の 2000∼2010 年に向けた
主要戦略目標を策定した。この中で、職業教育に関連する戦略目標として、 (i) 教育・
職業訓練制度の品質と効率性の向上、 (ii) すべての者に対して教育・職業訓練への
アクセスの保証、 (iii) 外部世界に開かれた教育及び職業訓練などを盛り込んでいる。
これらの目標は、チェコ共和国の政策文書にもチェコの事情を反映した形で明記され
ている。
2) 経済及び雇用戦略
国家改革プログラム(2005∼2008 年)において主要な国家目標を掲げているが、教
育に関しては、カリキュラム改革、高等専門教育へのアクセスの拡大、雇用者と教育
実施機関との協力、導入教育と継続教育との連携、企業内継続職業教育訓練 (CVET)
の拡充、情報リテラシー水準の向上などが強調されている。
3) 一般教育
教育開発国家計画(いわゆる教育白書)は教育の国家的優先課題を掲げている。これ
を基にして、以下の戦略文書が作成され、2 年ごとに改訂される。
① 国家レベル
教育省は、教育の長期計画及び教育制度開発計画(最近では 2007 年 5 月 に承認)
を策定する。この計画は、教育省が所管する国家政策と地域政策との整合性を確
保する手段となっており、特にリスボン戦略及び生涯学習のコンセプトを考慮に
入れている。
② 地域レベル
国家レベルの長期計画に基づき、地方ごとに地域教育開発長期計画が策定される。
4) 高等教育
① 政府により採用された高等教育改革コンセプト(2005 年改訂)は、高等教育の構
造及び品質の改善を目指すものである。
② 高等教育機関における教育・科学・研究・芸術その他の創造的活動の発展を目的
とする長期計画には、学術的活動の国際化・品質・エクセレンス(最高水準)及
び学究生活の文化および品質が含まれている。
③ 教育省により高等教育白書の第 1 次草稿が用意されており、政府による高等教育
制度改革への寄与が期待される。
5) 生涯学習
① 人的資源開発戦略(2003 年)は、継続教育開発を目的とする中心的な提言を打ち
出している。地域レベルでは、助言及び調整機関として人的資源開発評議会が設
立されている。
② 生涯学習戦略(2007 年)は、チェコ共和国における生涯教育開発を目的とする 7
つの戦略的方針を設定しており、その実施計画は 2008 年末までに策定される予
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定である。
(2) 主要政策
前述の政策文書は、教育分野における主要な開発優先課題を提示しているが、その優先
課題は以下のとおりである。
1) カリキュラム改革
暗記中心の教育から、鍵となるコンピテンシー(能力)を開拓する教育への転換を基
本とするカリキュラム改革の実施。(7 章(3)参照)
2) 教育の品質確保・教育効果のモニタリング及び評価
比較的大幅に与えられている学校の自治に関しては、計画的な外部評価及び自己評価
を通してその教育効果が保証される。
3) 後期中等教育改革に向けた展開
職業教育プログラムである ISCED3C の最終試験は、すべての内容を目的指向型に変
更することによりその質の強化が図られる。改革の対象となるのは、筆記・口頭試験
及び特に、労使双方などの社会的パートナーの幅広い協力が必要となる実務試験であ
る。また、Maturita と呼ばれる ISCED3A レベルの卒業試験の改革は、全国規模の
試験及び適性・職業関連試験の 2 部構成の導入により実施される。
4) 教育における機会均等の確保
この目的は、特別の学習が必要な児童、社会的に不利な立場にある児童及び才能に恵
まれた児童のいずれにも配慮した統合的な教育制度の開発である。
5) 教員の専門的水準及び社会的地位の向上
この目的は、教員の質の向上、教員の高齢化の予防及びカリキュラム改革に関連した
学校における改革プロセスへの参加を支援することである。
6) 高等教育開発への支援
当改革の主たる目的は、高等教育の三層構造への移行達成(7 章(4)参照)、非大
学型高等教育機関の設立支援、評価体制の促進、研究開発・生涯学習プログラム・国
際化の支援となっている。
7) 生涯学習の一部を構成する継続職業教育訓練 (CVET) の開発
優先課題として提示されているものには、この分野を規定する法律の制定、人的資源
開発投資及び継続職業教育訓練への参加者の拡大、教育訓練実施機関のデータベース
を含むカウンセリング・情報システムの開発の終了などがある。一方、すでに施行さ
れている「継続職業教育訓練の検証及び認証に関する法律」によって、個別の専門的能
力水準(コンピテンス・レベル)に関する認定資格証明は、当該能力の獲得方法に係
りなく取得が可能となった。これに関連して、国家職業資格制度 (National System
Qualifications : NSQ) の中に、検証及び認定が可能となる完全な資格あるいは部
分認定資格の種類とその評価基準がリスト化されている。
〔なお、これらの政策に係る資金手当については、中項目 3 章を参照のこと。〕
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