高齢者等の買い物の不便を解消するための取り組み

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〔岡山県〕
高齢者等の買い物の不便を解消するための取り組み
~移動販売とミニ店舗運営~
森分 幸雄(流通・サービス産業課長)
[email protected]
TEL 082-224-5655
近隣の商店の撤退や高齢化等の進展から、日常の買い物に不便を感じる「買い物弱者」と
言われる方が増えています。
このため、経済産業省は平成 24 年度補正予算において「地域自立型買い物弱者対策支援
事業」という補助金制度を設け、民間事業者等による買い物機会を提供する新たな取り組み
を支援させていただきました。具体的には、徒歩で行ける範囲に生鮮三品等を扱う商店が不
足しているため、居住する高齢者等が日常の買い物に不便を感じている「買い物困難地域」に
おいて、①移動販売事業、②ミニ店舗事業、③宅配事業等による買い物機会の提供につなが
る取り組みの開始を支援させていただきました。全国で 111 件の事業が採択され、岡山県下で
は4件の事業が行われています。
今回は、「中山間地に必需品を届ける移動販売事業」と「地域住民主体のミニ店舗の運営」
という2つの事例を現地取材しましたのでご紹介します。
■山あいを駆け巡る移動販売車
㈱ケンジャミン・フランクリン(岡山県加賀郡吉備中央
町)の「移動スーパー、ロンドン」(以下、「ロンドン
号」)は軽トラックを改造(冷蔵ショーケース、冷凍庫
を完備)し、肉・魚・野菜・果物など生鮮食料品、乳製
品、惣菜、お菓子などの食品や日用雑貨も積み込ん
で、吉備中央町の山間部を月~土曜日(木曜日定
休)に曜日ごとに異なる 5 つのルートを駆け巡ってい
本日は、成田社長のご両親が地域を巡ります
ます。
山あいの集落を巡るため、1日の走行距離は約 70Km にもなるそうです。ロンドン号は昨年
11月から稼働しており、約半年を経過した現在、徐々に利用者は増えており、1 ルート当たりの
1 日の利用客は約50人くらいになっています。
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吉備中央町の買い物困難地域は範囲が広いうえに、くねくねした細い道や坂道も多いため、
ふれあい広場等の広いスペースに車を止めての営業だけでなく、そこまで出かけるのも難しい
高齢者に対しては、軽トラックを改造したロンドン号ならではの機動力を活かし、顧客の玄関先ま
で出向いていくなど、御用聞きにも力をいれています。
買い物をされていたお客様にお話しを伺うと、「足が悪いので、玄関先まで来てくれるのはあり
がたい」「遠くまでいかないと買い物ができないので、週一回でもこうして来てもらえると助かる」
「商品が並んでいるのを見るのが楽しい。買い物を楽しんでいる」などの声がありました。
成田さんは、「肉、魚、野菜など生鮮品は毎朝仕入れて、安心安全なものを提供しています。
お客様が何を求めているかをいつも考えており、例えば、最近暑くなってきたので、アイスクリー
ムを扱いはじめたところ、とっても評判がいいんですよ。また、毎月の特価セールや商品の陳列
の工夫など、毎回変化をつけることで売り上げが伸びています。まだまだ試行錯誤している段階
ですが、お客様が買い物を本当に楽しみにしてくださるので、本当にありがたく、励みになります。
これからも皆さまとともにあるお店作りを心がけていきます。」とおっしゃっていました。
買い物に来られた方の様子を見ているうちに、ロンドン号が運ぶのは、新鮮な食品や日用品
だけでなく、笑顔も運んでいると思いました。また、高齢者のすぐ近くにまで出向くことで、見守り
活動にもなっている、ということがわかりました。
(左)「今日は卵がお安くなってます」商品を手に取り選ぶ高齢者。(中央)中山間地は坂道が多いため、家の
玄関口までロンドン号は行きます。
(右)ロンドン号が来るのを待っているお客様も・・・。世間話もはずみます。
≪ちょっと寄り道:吉備中央町の人気洋食店≫
㈱ケンジャミン・フランクリンは、「ベルネーゼ」というレストランを吉備中央町で2005年から経
営しており、こちらが本業のようです。移動販売は地域への恩返しということから始めた事業であ
り、異業種からの挑戦とも言えます。筆者は、ロンドン号に密着取材する前に、原点である「ベル
ネーゼ」にも訪問してみました。
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「ベルネーゼ」は肉、米、野菜をすべて契約農家から仕入れており、顔の見える安心安全な食
材を使った料理を提供しています。ロンドン号が扱う新鮮な食品へのこだわりの原点はここにあ
ると思いました。シェフも兼ねる成田社長は英国留学やドイツ修業の経験があるそうで、店内は
温かみのある英国カントリー調の落ち着いた雰囲気であり、BGMは、もちろんビートルズでし
た。
(左写真)成田社長(左)と筆者(中央)落ち着いた店内(右写真上)人気のベイクドチーズケーキ(右写真
下)ビートルズのリンゴ・スターさんからいただいたサイン入りのポストカード
■ベルネーゼのブログ
http://blog.livedoor.jp/bernese1/
■酒蔵を改造したミニ店舗の運営
日本酒メーカーの(株)板野酒造本店(岡山市北区大井)
は、昨年9月、本社敷地内にある築150年以上の酒蔵
を改造し、ミニ店舗「上之蔵」をオープンしました。同社が
ある足守地区にはスーパーやコンビニ店舗が少ないた
め、高齢者の日常の買い物に支障がでていました。
そのため、酒や味噌・醤油に地元特産品や肉や魚の切り
身などの生鮮品や焼きたてパンなどを取り扱い、地元高齢
者の方から好評を博しています。
「上之蔵」の外観
岡山市の観光資源と言えば、後楽園や岡山城が有名ですが、足守地区は公共交通アクセス
があまりよくないため観光客が多く訪れるというわけではありませんが、「桃太郎の鬼退治」の原
型とも言われる「吉備津彦命の温羅(うら)退治」伝説にちなんだ名所旧跡や武家屋敷や土蔵など
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歴史的な建造物などが多く残っている地区であり、観光資源の豊富な地区であると言えます。
板野酒造本店は、江戸時代から続く歴史ある蔵元であり、岡山県杜氏清酒自醸品評会におけ
る長年の功績が認められ、県下初の鳳凰賞を受賞されておられます。
「上之蔵」では、同社の銘酒や、岡山県下の地ビール、醤油、味噌、ソース、おかきなど岡山
県が誇る特産品を数多く取り揃えており、観光客に対する県産品の PR 拠点としての機能も有し
ています。日本酒にちなんだイベントも積極的に開催するなど、地域内外を問わず、多くの人を
呼び込むコミュニティスペースとしての機能も提供しています。
筆者は、「地元高齢者にとっては生鮮品が手軽に買えるお店、一方、こだわりのある商品を求
める地元消費者や観光客にとっては、厳選された商品が豊富に並んでいる、見ているだけでも
楽しい、岡山県産品のセレクトショップ」という印象を持ちました。
店を切り盛りしている板野桂子さんにお話を伺うと、「お菓子類は、お客様がご高齢の方が多
いため、食べきりサイズなど少量のものを選ぶようにしています。醤油やソースといった調味料も
昔からある岡山県産のいいものを選んで置いています。」と商品の選別にも地域の高齢者への
配慮が感じられました。
(左写真)店内の様子。県内から厳選された特産品が並ぶ(右写真)店を切り盛りしている板野桂子さ
ん(左)と筆者
■㈱板野酒造本店
http://www10.ocn.ne.jp/~futamo/
■おわりに
中国地域は中山間地域や離島が多く、過疎化や高齢化の進展により、日常の買い物に不便
を感じている、いわゆる買い物弱者が増えている傾向にあると言われています。都市部にあって
も、高度成長時代に造成された団地などでは居住人口の減少に伴う店舗の撤退・閉鎖などによ
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り、買い物弱者が増えているとの指摘もあります。
こうしたことから、一部の百貨店、スーパー、農協、生協などによる移動販売や宅配事業の取
組や、空き店舗等を活用したミニ店舗の開設、あるいは大型店・商店街等への買い物の移動に
対するデマンドバス・乗合タクシーなど、さまざまな支援の動きがみられます。経済産業省では毎
年度、地方自治体の施策についてとりまとめて公表しておりますので、ご関心のある方はチェッ
クしてみてください。
■平成 26 年度買い物弱者対策関連事業予算等(国・地方公共団体)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/kaimonoshien26.html
■取材協力
㈱ケンジャミン・フランクリン、㈱板野酒造本店
■写真
全て当課職員による撮影(写真の無断使用はご遠慮ください。)
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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Copyright 2014 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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