泥土リサイクル協会 建設汚泥や浚渫土等の高含水泥土の 再資源化を支援 建設汚泥のリサイクル促進は、 国土交通省ならびに環境省が平成17年度より積極的に推進してきましたが、 コンクリート塊・アスファルト塊に比べ未だリサイクル率が低いことから、国土交通省では「建設リサイク ル推進計画 2008」において「2008 年度から建設汚泥のリサイクル対策に力を注いでいく」と明記され ています。そこで平成 19 年度のリデュース・リユース・リサイクル推進協議会の選考において、建設リサ イクルの重要課題である建設汚泥リサイクルに取り組んできた成果が評価され「国土交通大臣賞」を受賞 されました、泥土リサイクル協会の理事長 大根 義男 様にリサイクルの理念などお尋ねしました。 泥土リサイクル協会理事長 大 根 義 男 【主な経歴】中央大学工学部卒、工学博士(東京 工業大学) 。現在、愛知工業大学総長補佐、NPO 養賢科学技術研究所理事長、中国・河海大学名誉 教授、泥土リサイクル協会理事長など役職多数。 【受賞歴】地盤工学会功労賞(1989 年)、JICA 功 労賞(2000 年) 、防衛施設庁功労賞(2003 年)、 ダム工学会特別功績賞(2006 年)、著作賞(実務 者のための土木工学、技報堂出版、ダム工学会、 2008 年)など多数。 44 ̶̶3R 推進協議会での「国土交通大 ため現状では民間が国をリードしてい 臣賞」などの広報を通じて、泥土リサ く以外にリサイクルを推進していく術 イクル協会の活動を知りました。協会 が無いということも協会を設立する大 設立の経緯をお聞かせください きな理由になっています。 将来、最終処分場が満杯になること ̶̶(社) 日本土木工業協会でもリサイ が容易に考えられる中、「何とか泥土 クルを推進しており、そのリサイクル をリサイクルすることが出来ないか」 率は非常に高いですが、理念の違い等 ということから始まりました。協会設 をお感じになられますか ? 立当初は、まだ最終処分場には余裕が リサイクル率が高いこと自体は素晴 あり、将来を心配せずに廃棄すること らしいことです。しかし残念ながら実 が出来る時期でしたので「時期尚早で 際に道路を作る . など、リサイクルし はないか ?」との声も少なからずあり たものを更に有効活用するという「将 ました。しかし私たちは「必ずいつか 来に対するビジョン」が欠けると感じ は満杯になる」という将来の課題に対 られるのが残念です。今の社会情勢か し、リサイクルするという本当の意味 ら、先を見越して「何を将来に向けて −リサイクルすることによって経費削 行っていくべきか」舵取りをしていく 減を同時に図る−という理念の元に設 ことが非常に重要ですし、土木工学全 立しました。幸い協会のメンバーには 般についての深く広い知識とノウハウ 「土」を専攻された優秀な技術者が多 を持つ私共は、それが出来ると自負し く、リサイクルによる新たな土作りを ています。 行い、道路・河川などの都市・地域整 ̶̶会員の皆さんに望まれていること 備をする上で中心となる建設工事に還 は・・・・・ 元・貢献することを設立当初から念頭 リサイクルすることで価格が高く に置いています。 なっては意味がありません。高いコス 処分場はいつか満杯になるという事 トを掛けてリサイクルが出来ても意味 実は勿論ですが、満杯になる・ならな は無いのです。常にリサイクルによっ いは別にして、廃棄するよりもそれを てコストを下げることを念頭に置かな 使って何か新しい物を生み出す方が良 くてはなりません。そうすることで直 お問い合わせ先 いに決まっています。しかし政府や役 接的・間接的に会員である建設会社に 泥土リサイクル協会 人には「真の意味のリサイクル」と「リ 還元することができます。それを願っ 〒 492-8266 愛知県稲沢市横地町 12 TEL 0587-23-2713 FAX 0587-23-2734 URL http://www.deido-recycling.jp/ サイクルに対する将来像」が残念なが て日々尽力しております。 環境・エネルギー ら希薄だと言わざるを得ません。その 【泥土リサイクル協会について】 当協会はゼロエミッションの観点か ら、従来廃棄処分されることが多い建設 汚泥や浚渫土等の高度リサイクル技術の 普及・活用を通し、資源の有効利用、生 活環境の保全を図り、もって循環型社会 の構築に寄与することを目的とし、この 建設汚泥処理状況全景 分野における社会情勢を鑑み、取り組み 処理土 効果の「視える化」を目指して活動して 理場に廃棄されています。しかし、各地 います。 に建設された廃棄物処理場の容量には限 (1) 設立趣旨 界があり、間もなく満杯になると懸念さ 建設廃材の再資源化については、今や れています。当研究会の成果はすでに実 ■技術革新の促進 建設産業に携わる者自らが解決しなけれ 務に使用され、学会等を通じ一般公表し 泥土処理に携わる排出事業者、材料・ ばならない問題であり、様々な機関で研 たところ大変な好評を頂きました。そこ 機械メーカー、産業廃棄物処理業者が 究が行われています。その結果、コンク で建設汚泥等のリサイクルを積極的に促 それぞれの立場から問題提起を行い、 リート廃材については 100%近くまでの 進するために、当協会を設立しました。 土木工学・応用化学の専門家等の意見、 再資源化率を達成しましたが、泥土に関 (2) 事業内容 情報を多角的に取り込んだ技術革新を しては平成 14 年度の建設副産物調査に ①技術の向上に関する事項 おいて、70%にも満たないことが確認 ■技術関連のデータ、資料等の収集・分 されています。建設汚泥の再資源化が遅 れている理由には、泥土の質的多様性か ら利用目的に応じた再生物質の生産が困 析・整理 ■工法の改良及びコストダウン等を目指 す実験・試験施工 ■各種環境技術イベントへの参加 (3)活動状況 促進しています。 ■関係法令等の整理と指導 法律等の解釈の不明瞭な点について環 境行政と情報交換を行い、 「法規・法 令 等 Q&A」、「 泥 土 再 生 利 用 技 術 マ 難であり、また生産に多額の費用を必要 ■技術・法令等の勉強会の開催 ニュアル」を作成、リサイクルの具現 とする等が挙げられます。 ■その他技術の向上に関する事項 化への支援・指導を行っています。 そこで平成 13 年より、大根義男愛知 ②工法の普及に関する事項 ■建設汚泥リサイクル啓蒙活動 工業大学教授が中心となり「廃泥土ゼロ ■官公庁、各種団体等の、新技術・新工 国土交通省や(社)日本土木工業協会 エミッション研究会」 を設立し、 土木工学・ 法の登録 の主催講演会・講習会、当協会ホーム 応用科学の専門家を交えて研究を重ねて ■環境省、地方自治体産業廃棄物関連部 ページを通じ、建設汚泥の適正処理に きました。その成果としてこの度地盤改良 局、土工協、建設団体、コンサルタント、 ついての教育やリサイクル促進の啓蒙 時に発生する自硬性汚泥や土圧式並びに 発注者等への広報活動 活動を行っています。 泥水式シールド工に於いて排出される非 ■技術情報共有化研修会の実施 ■他のリサイクル技術へのアプローチ 自硬性汚泥等の廃棄物の経済的な処理方 ■その他工法普及に関する事項 電力・製紙・石膏ボード業界から発生す 法を確立し、有効利用法を提案致しまし ③その他本協会の目的を達成するために た。自硬性・非自硬性汚泥は、これまで 必要な事項 る建設副産物を汚泥処理用の固定材と して有効利用できるよう異業種分野と はその大部分を建設廃材として廃棄物処 ■ホームページ、パンフレット等製作 ̶̶最後になりますが、協会の展望に 地質的にも災害に対し脆弱な国土環境 生土と産業廃棄物の区分は明確でなく、 ついてお聞かせください 下にあるため、近年、地震や集中豪雨 これらの高含水比の土砂がいずれの範 都市部の大型シールド工事において により河川堤防の決壊、土石流などが 疇に属するかにより、技術的な処理方 はリサイクルを前提に計画される事案 生起し、大量の泥土・泥水が居住域に 法は同じでも扱い方によってはコンプ が増加していますが、施工ヤードが狭 流入した事例が散見されています。従 ライアンスに係る問題が発生します。 い場合が多く、コンパクトで処理能力 来より災害復旧は限られたスペースで そこで当協会では、今まで以上にリ の高い技術が要求されています。 短期間にその機能を回復するすること サイクルの「質」にこだわり、コンプ また、建設発生土として取り扱われ が求められており、水分を多量に含ん ライアンス遵守の理念を持って、啓蒙 ている浚渫土砂においても従来の汚泥 だ泥土を早急に処理することが必要と 活動を具体的かつ積極的に実施してま 処理技術では達成できない高品質な改 なります。 いりたいと存じます。 良土が要求されています。 このように建設汚泥だけでなく広く ̶̶本日は貴重なお話をありがとうご その他、 我が国は急峻な地形を有し、 泥土の処理が求められていますが、発 ざいました の情報交換を積極的に行っています。 環境・エネルギー 45
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