建設学科(シビルエンジニアリングコース) Ⅰ このような学生を求めています 1 シビルエンジニアリングとは何か? 英語の「シビルエンジニアリング(Civil Engineering)」は,日本語では「土木工学」 と訳されています。シビルエンジニアリングは「市民あるいは民間(すなわち civil) のための工学」と定義されており,もともとは軍事工学(Military Engineering)と相対 する学問として生まれたものです。 土木工学は,四大文明以来,人類が文明を築き,発展させる上で必要となる文明の 基盤,すなわち社会基盤(infrastructure)をつくり,それを守っていく上で必要不可欠 な学問,技術として発展してきました。今日では,道路,鉄道,港湾,空港,橋,ト ンネル,ダム,堤防,公園,ごみ処理施設など,社会生活をより豊かなものにする社 会基盤の整備に貢献する学問として位置づけられます。 橋や港湾あるいは道路といった社会基盤をつくるときに知っておくべきことは,設 計に必要な力学の素養とともに総合的な視野での理解力です。力学が基本であること は想像に難くないでしょう。では,総合的な視野とは何でしょう。例えば,日本は平 坦地が少なく,人口は都市部に集中しており,地震や台風などによる自然災害の多い 国です。このような自然災害から人々を守る安全な社会基盤でなくてはなりません。 また,全世界的に環境問題への関心が高まっている中で,環境と共生できる社会基盤 でなくてはなりません。しかも,国際的な視点での取り組みが必要となってきます。 さらに,せっかくつくった社会基盤施設がすぐに壊れてしまうようではまずく,維持 管理および運用,すなわちマネジメントの技術も重要です。交通についていえば,道 路や鉄道をつくれば良いというわけではなく,それらをより効率的に有効に活用して もらうための工夫(例えば交通需要マネジメント)についての議論も,土木工学の中 でされます。情報技術の急速な発展により,施工技術の高度化と共に,マネジメント 技術の高度化も進んでいます。これらに加えて,より都市を住みよくするための都市 計画にも土木工学が強く関わってきます。社会基盤を基本とした都市のあり方や都市 の再生の議論は,土木工学の視点なくしてはあり得ません。 以上からわかるように,シビルエンジニアリング(土木工学)は,社会基盤を対象 に,力学を基本としながら,国際的な視点で,環境や情報も含め,総合的な視野でも のづくりに挑む学問です。 2 横浜国立大学のシビルエンジニアリングコースでは 横浜国立大学工学部建設学科のシビルエンジニアリングコースでは,先に述べたよ うな学問の基本を学ぶことができます。講義体系では土木工学の基本と総合的視点を 全般的に学習します。 研究活動は,5つの分野を重点的に行っています。卒業研究そして大学院での研究 は,これらの分野(研究室)の1つに所属して行います。それぞれの分野では以下のよう な研究が展開されています。 〔橋と風環境の分野〕 • 美しい橋を自然環境の元で長く使い続けるための研究 • 人と環境に優しい構造物振動への対処法 • 地球温暖化が強風環境に与える影響 〔水環境の分野〕 • 沿岸域の自然災害から人々の暮らしを守るための研究 • 世界の内湾の水質や生態系の保全と再生のための研究 • 藻場の保全・修復に関する研究 〔地盤と環境の分野〕 • 地盤沈下のメカニズムに関する研究 • 断層のずれから構造物を守る対策方法 • ゴミ最終処分場に用いる高性能遮水材料の開発 〔都市と交通の分野〕 • 公共交通を活かしたまちづくりに関する研究 • 安全で安心なみちづくりに関する研究 • 開発途上国の交通システムの効率化に関する研究 〔複合構造の分野〕 • 地震による被害を受けた構造物の残存性能に関する研究 • 種々の材料を用いたコンクリートの高性能化に関する研究 • コンクリート構造物のメインテナンスに関する研究 専門的な用語がたくさん含まれているので,分かりにくいとは思いますが,社会基 盤施設に関して,世の中で求められていることに対して,専門的に価値のある研究成 果が数多くあります。 他大学の土木工学のコースに比べて教員数が15人と少ないため,土木のあらゆる 分野を研究分野としてカバーできているわけではありませんが,反面,各学年が30 人ちょっとの人数です(平成17年は38人)ので,良い意味で教員と学生の距離が 近いことが特徴です。お互いに顔と名前が一致する環境の中で,少人数の教育が実現 できています。 各分野で行っている研究については,シビルエンジニアリングコースで用意してい るパンフレット(オープンキャンパスで配布している他,希望される方に,土木工学 棟事務室にて無償で頒布しています)やホームページ(http://www.cvg.ynu.ac.jp/ index-j.html)上で,より詳細に知ることができます。 3 シビルエンジニアリングコースが求める学生像 現在から将来にかけて,人類が豊かに文明を享受して生活をしていくための社会基 盤や環境を整備する熱意のある人材を求めています。世界最速の鉄道(新幹線),世界 最長の海底トンネル(青函トンネル),世界最長の橋梁(明石海峡大橋)の建造や,世 界最悪の水銀中毒(水俣病)の克服など,我が国の土木・環境技術は世界最高水準で す。これらの技術は,我が国だけに留めておくべきものではなく,ニーズが高い開発 途上国にも積極的に移転して国際協力に貢献すべきものです。よって,我々は海外に も高い関心を持ち,社会や我々の子孫のために地球スケールで貢献しようとする高い 志を持つ人材を求めています。 Ⅱ カリキュラム 1 カリキュラムの特色 大学に入学してから卒業するまで,どのような科目をとればよいのか,最低限の基 準が,各学科各コースによって決まっています。 科目は,大きくは教養教育科目と専門教育科目に分かれています。 教養教育科目は,大学を卒業して社会人になるにあたって,持っていて然るべき学 を身につける科目です。文化,社会,自然などに関する科目,語学,スポーツ等があ ります。以上に加えて,シビルエンジニアリングコースでは, 「土木工学と社会」を教 養教育科目として用意しており,シビルエンジニアリングコースの学生が全員受講し ています。この科目は土木工学の歴史的な意義や社会的な役割を理解するのに役立ち ます。 専門教育科目は,物理や数学などの専門基礎科目と,シビルエンジニアリングコー ス独自に提供する専門科目からなります。専門科目のほうは1年生の後学期の「構造 の力学Ⅰ」からはじまり,2 年生,3年生の間に集中的にとることになります。1(1) でも述べたように,土木工学の基本が力学的素養ですので,力学に関する科目が中心 となります。 「構造の力学」 (橋や構造物の設計の基本), 「流れの力学」 (水の流れの解 析法),「土の力学」(土の力学的特性),「材料複合の力学」(コンクリートなどの土木 材料の力学的特性)などの科目があります。総合的な視野を深める意味では, 「地域都 市計画」,「土木事業と社会システム」,「建設マネジメント」,「資源と地盤環境」とい った科目があります。シビルエンジニアリングコースに所属している15人の教員で はすべての講義を提供しきれませんし,社会との関係が重要であることもあって,民 間企業あるいは行政機関に勤務されている方に講師をお願いしている科目もいくつか あります。 それぞれの講義科目について,1学期の間(90分の講義が15回)でどのような ことを学ぶのか,あらかじめスケジュールが決まっています。どの学年にどのような 専門科目の講義があって,それらがどのように関連づけられているか,すなわちコー スの講義全体の体系については,ホームページ上で公開されています。 なお,講義科目以外に,演習科目と実験実習科目があります。具体的な計算練習な どを通して,土木工学の基礎的な学力を高める演習は,1年生前学期の「土木工学基 礎演習」から3年生後学期の「建設工学演習」まで続きます。ちなみに, 「土木工学基 礎演習」は,高校で学んだ物理や数学の復習から,読書を通しての土木工学の理解や, 橋のスケッチを通しての構造物の理解などの演習をします。 「建設工学演習」は,社会 に出て土木工学の技術者として活躍するために必要なスキルを磨く演習や,それまで 学んだことを総復習する科目です。実験は 3 年生の前学期に集中して行います。実習 としては2年生前学期の「測量学実習」と3年生夏休みの「学外実習」があります。 「測量学実習」は,距離や高低さ,土地の大きさなどを実測する基礎的な演習です。 「学外実習」は,土木工学に関する民間企業や行政機関で数週間の実習を行うもので す。 各科目については,必修,選択必修,選択という区分があります。必ず履修しなく てはいけない基本的科目と卒業研究は必修となっています。選択必修科目は,ある範 囲の中で選択の余地のある科目群です。シビルエンジニアリングコースの多くの学生 は,専門科目については,選択必修科目も選択科目も積極的に履修しています。 2 カリキュラム表 〔科目の関連表を挿入〕 Ⅲ 専任教員一覧 平成17年4月現在のシビルエンジニアリングコースを担当する教員を,構成5分 野に分けて主な担当授業科目と共に示します。 〔橋と風環境の分野〕 • 山田 均 教授 「構造の力学Ⅱ」,「鋼構造」 • 勝地 弘 助教授 「構造の力学Ⅰ」,「振動の力学」 • 佐々木栄一 助教授 • Dragomirescu Elena 助手 〔水環境の分野〕 • 柴山知也 教授 「土木事業と社会システム」,「水理学」 • 佐々木淳 助教授 「流れの力学」,「環境水理学」 〔地盤と環境の分野〕 • 今井五郎 教授 「土の力学」,「地盤の力学」 • 谷 和夫 教授 「地盤地質学」,「地盤工学」,「資源と地盤環境」 • 大向直樹 助手 〔都市と交通の分野〕 • 中村文彦 教授 「地域基盤計画」,「地域・都市計画」,「交通計画」 • 岡村敏之 助教授 「測量学」,「交通工学」 • 矢部 助手 努 〔複合構造の分野〕 • 椿 • 細田 • 林 龍哉 暁 和彦 教授 「材料複合の力学」,「コンクリート構造」 助教授 「構造の力学Ⅲ」 助手 Ⅳ 学生生活 1 学生の4年間 入学式のその日の午後に,オリエンテーションがあります。ここで,具体的な科目 履修の手続きなどについて説明を受けます。その翌々日から早速講義がはじまります。 シビルエンジニアリングコースの学生の 4 年間は,大きくは最初の 3 年間と最後の 1 年間に分かれます。最初の3年間も各学年で特色があります。 1 年生は,教養教育科目と専門基礎科目の履修が中心となります。時間割は自分で 履修する科目を選んで決めますが,標準的な時間割が履修の手引きの巻末に載ってい るので,それをベースにします。教養教育科目としてどのような科目をとるのか,語 学として何語を選ぶのかは,自分で決めなくてはなりません。平均的には,1週間に 90分の講義を15〜20コマ履修しているようです。専門科目が少なく,実験実習 科目や演習科目もほとんどありません。また平成 16年度には, 9 月に首都高速中央 環状線およびつくばエキスプレスの工事現場と電力中央研究所を見学しました。 2年生になると少しずつ専門科目が増えてきます。 「測量学実習」がはじまり,毎週 水曜の午前中は,キャンパスの中を測量します。実習は数人の班単位で行うので,ク ラスに仲間意識が芽生えてくるのもこの頃です。 「測量学実習」は2年の前学期に毎回 行った後,夏休み終りの1週間にも行います。ここでは,人工衛星との交信データを もとにした,最新の測量技術を学びます。専門科目の中には, 「地域都市計画」など現 地見学会を何回か実施する科目があります。幸いなことに,土木工学に関する実際の 事例は,神奈川県内に多数存在します。それらに触れる機会が増えるのもこの頃です。 教養教育科目や専門基礎科目の履修が終わるのも,標準的には2年生の後学期です。 出席状況が悪かったり,レポートの提出がなかったり,試験の成績が悪いと「不可」 の成績をもらってしまい,再履修をしなくてはならなくなります。なるべく2年生の うちに教養教育科目と専門基礎科目の履修を終わらせておきたいところです。 3年生になると,土木工学の実験(科目名は「土木工学実験演習ⅠⅡ」)が始まりま す。前学期は,月曜の午後と火曜の午後が実験漬けになります。6つの班にわかれて, 構造関係の実験,水理関係の実験,土質関係の実験,都市と交通に関する演習,コン クリート関係の実験,の5つの課題をこなしていきます。4つの実験はそれぞれの実 験室で行われます。構造関係の実験では,ブリッジコンテストをし,また風洞実験施 設を使って実際に風の影響を観測します。横浜国立大学の風洞実験施設は,比較的大 規模なもので,いろいろな分析に貢献しています。少し話がそれますが,最近では, 横浜トリエンナーレの一環で,インターコンチネンタルホテルの壁面にかかげた巨大 バッタがどのように風の影響を受けるか,我々の実験施設を用いて模型実験と分析を しました。水理関係の実験では,人工的に波をつくりだす装置を用いて水の特性につ いての実験をします。土質関係の実験では,土の物理的な特性についての実験をしま す。コンクリート関係の実験では,材料の特性を把握し,コンクリートを実際に練っ て,梁構造の破壊特性を調べます。各実験とも,月曜と火曜の実験の後,レポートの 作成をしなくてはならず,提出前の週末に徹夜をする学生も少なくありません。都市 と交通の演習では,新横浜地区の都市マスタープランの作成と信号交差点の特性の解 析をします。都市マスタープランの作成演習では,製図室にて3週間ほどかけて作成 した各自のマスタープラン案について,横浜市役所の職員の方を前にして,発表会を 行っています。後学期になると,「建設工学演習」があります。先にも述べましたが, この科目は,これまでに履修した専門科目の総復習と,基礎的素養やプレゼンテーシ ョン能力の育成を目的とした科目です。この科目の中で,就職担当の教員が全学生の 面接を行います。これは,学生が就職あるいは大学院進学をどのように考えているか を把握し,卒業までの間に適切な指導を行うためのものです。シビルエンジニアリン グコースでは,土木工学の分野での就職を考えている学部生については,教員全体で 各学生の希望や能力を把握し,一方で企業などからの要請を踏まえて,一括して就職 の指導をします。不況といわれる現在においても,シビルエンジニアリングコースの 卒業生の就職率がほぼ 100%なのは,このように綿密な指導体制のおかげであるとい っても過言ではありません。 ここまでの3年間は,履修の手引きの巻末にある標準的な時間割に沿って,単位を 修得すればスムーズに進みます。ところが,単位が取れないと,たいていの場合は留 年します。ある必修科目の単位を落とすと,その科目を翌年に履修しなくてはなりま せん。同じ時間,例えば月曜日の2限という枠に,2つの科目を同時に履修するわけ にいきませんから,本来その時間に開講されている科目は,また翌年に取ることにな ります。こういう状態が積み重なっていくと,3年生の終りに本来とるべき単位数が 取れなくなってしまい,結局は留年してしまいます。 シビルエンジニアリングコースでは,3年生から4年生に進級するときに審査を行 います。履修の手引きに記されている,3 年生の終りまでに取っておいて欲しい単位 数を満たしている学生は,無条件で 4 年生に進級でき,卒業研究への着手が許可され ます。そうではない学生は,4 月初旬に呼び出され,単位が足りないことを確認した 上で,卒業研究に着手できないことを決定します。いわゆる留年生になり,卒業が1 年遅れます。 さて,4年生になって卒業研究への着手が許可されてからすぐに,研究室(Ⅰで紹 介した5つの研究分野のこと)への配属を行います。学生の希望をもとに,各研究室 への配属学生数がほぼ均等になるよう必要に応じて調整を行い,配属を決定します。 配属決定後は,研究室によって活動スタイルが若干異なりますが,研究室あるいは実 験室でほぼ毎日を過ごすようになります。4年生の前学期は,就職試験や大学院入試 試験の準備をしながら研究の準備を始めます。後学期は,研究活動に集中して過ごす 毎日が続きます。4 年生の終りの 2 月の下旬頃に,卒業論文審査会を行います。ここ で,1 人ずつ数分間,自分の研究成果を,教員全員を前にして発表し,質疑応答を行 います。この審査会に合格すると,必修科目の卒業研究の単位がもらえます。最終的 にシビルエンジニアリングコースで定めた必要とする単位数をすべて満たしていれば, 卒業ができます。3月25日頃に行われる卒業式では,卒業証書を授与されて,晴れ て学士(工学)という学位が与えられます。 シビルエンジニアリングコースでは,担任制を取り入れています。各学生に1名の 教員が担任として割り当てられています(教員1名が各学年の3名程度の学生を受け 持っています)。大学生活を過ごす中でのいろいろな相談を,担任教員と自由にできま す。冒頭にも書きましたが,一学年が30人ちょっとである一方で,教員が15名い ますので,全体的に教員と学生が緊密な関係にあります。学生が,いろいろなことを 教員に相談する場面は,土木工学棟でしばしば見受けられる光景です。 2 学生の1日 1年生から3年生までは,講義,演習,実験などで平日を過ごします。講義は,1 限が午前8時50分に始まり,午前中に2コマ,午後に2〜3コマとなっています。 4コマの場合は午後4時10分に,5コマの場合は午後5時45分に終わります。 多くの学生は,クラブ活動,サークル活動あるいはアルバイトなどをその後の時間 帯に行っています。多くの講義で出席をとっていますので,朝寝坊して遅刻したり, 昼間にアルバイトをして講義を休むというようなことは,シビルエンジニアリングコ ースではあり得ません。勉強と部活あるいはアルバイトなどとの両立というのも実際 には難しいようです。学生は1人前の大人であり,すべてが個人の責任の範囲ですの で,教員が直接注意や勧告をすることはまずありませんが,部活やアルバイトにのめ り込んだ学生は,結局卒業が遅れてしまうケースが多いようです。 専門科目が増えてくる2年生から3年生にかけては,宿題や小テスト,中間テスト などの準備などに割く時間も多くなってくるので,1日の過ごし方もかなり変わって きます。自宅で,あるいは図書館で夜遅くまで勉強している学生も少なくありません。 4年生は,特に後学期は研究三昧の毎日になりますので,実験の経過の観察や,ゼ ミの前の資料準備などで,徹夜が続く学生も少なくありません。ゼミのやり方は研究 室で異なりますが,研究室単位で,研究経過の報告と議論をする活動と思ってくださ い。 Ⅴ 就職状況 シビルエンジニアリングコースを卒業して就職をする学生,あるいは大学院の博士 前期課程(いわゆる修士課程)を修了して就職する学生が,毎年あわせて40名程度 います。彼ら彼女らは,都庁や県庁などの役所あるいはそれに準ずる各公団,ゼネコ ンといわれる建設会社,コンサルタント会社,研究機関やシンクタンク会社に就職を 決めています。 われわれのシビルエンジニアリングコースの卒業生は,土木工学関連の企業などか らは大変高い評価を得ています。入社試験などでも,優秀な成績をとるのは,横浜国 立大学の卒業生という場合が多いようです。 なお,学部を卒業した学生のおよそ6割〜7 割は,後に述べる大学院に進学してい ます。参考までにこれまでの主な就職先を以下に列挙しておきます。 • 行政機関・公団等 国土交通省,農林水産省,北海道開発庁,特許庁,警視庁,東京都庁,神奈川県庁, 静岡県庁,富山県庁,山口県庁,高知県庁,沖縄県庁,千葉市役所,横浜市役所, 川崎市役所,日本道路公団,首都高速道路公団,本州四国連絡橋公団,都市基盤整 備公団,横浜国立大学,東京工業大学,埼玉大学,計量計画研究所 • 民間企業 三菱重工業,NKK,三井造船,日立造船,石川島播磨重工業,川崎重工業,横河 ブリッジ,宮地鉄工所,JR東日本,JR東海,東京急行電鉄,相模鉄道,鉄道総 合技術研究所,東京電力,鹿島建設,大成建設,清水建設,大林組,戸田建設,五 洋建設,西松建設,前田建設工業,住友建設,東亜建設工業,日本鋪道,日揮,ピ ーエス,CRC総研,国際航業,建設技術研究所,オリエンタルコンサルタンツ, パシフィックコンサルタンツ,総合技術コンサルタント,八千代エンジニアリング, 基礎地盤コンサルタンツ,日本工営,長大,北海道開発コンサルタンツ,日本技術 開発 Ⅳ 大学院進学 1 大学院進学の必要性について 大学院は,大学を卒業してからさらに専門的な研究を行うところです。横浜国立大 学では,博士課程前期の2年間と博士課程後期の3年間の2つに分かれています。博 士課程前期は,いわゆる修士課程あるいはマスターコースと呼ばれるもので,2年間 の課程を修了し,修士論文の審査に合格すると,修士(工学)の学位が与えられます。 さらに研究を続ける場合は,博士課程後期へと進学します。こちらはいわゆる博士課 程あるいはドクターコースと呼ばれるもので,3年間の課程を修了し,博士論文の審 査に合格すると,博士(工学)の学位いわゆる博士号が与えられます。昔は「末は博 士か大臣か」と言われていたようですが,工学の分野では,日本全国で見るとかなり の数の博士号が毎年授与されています。特に,大学の教員や研究者として人生を歩む 場合には,博士号が絶対に必要となります。 先ほども述べたように,シビルエンジニアリングコースの場合,学部卒業生の半数 以上が大学院に進学し,修士(工学)の学位を取ってから就職しています。これは,民間 企業の多くが,修士(工学)の学位をもった学生を求めていることと,学部の4年間 で土木工学への興味が高まり,さらに高度な教育を受けたいという学生の純粋な向学 心があることの2つが理由と思われます。特に最初の理由は,近年顕著になっていま す。土木工学の専門分野について,専門的な高度な知識を有し,実際に研究活動を行 った経験のある修士(工学)の学位をもった学生は,民間企業や公団あるいは研究機関に 配属後,貴重な戦力として,また土木工学技術の最先端を担う技術者あるいは研究者 として,第一線での活躍が求められます。大学院への進学,特に修士課程への進学に ついては,これからも高い必要性があると思われます。 2 大学院進学状況 (1) 学大学院への進学 平成13年4月に組織変更があり,工学府と環境情報学府の2つの大学院が設立し ました。シビルエンジニアリングコースを担当している15人の教員のうち11人が 工学府で,4人が環境情報学府で大学院の指導をしています。学生もこれに対応して, 工学府あるいは環境情報学府のいずれかの大学院に進学します。いずれの学府に進学 しても,土木工学の専門的な高度な知識と研究経験を得て社会に飛び立っていけるよ うな指導をしています。進学率は,両学府で併せると 6 割〜7割です。 (2)他大学大学院への進学 他大学大学院への進学の事例はまったくないわけではありませんが,ほとんどあり ません。この数年間では,東京大学に 2 名,京都大学に 1 名,慶応大学に 1 名,千葉 大学に1名進学しただけです。土木工学以外の分野,または本学ではカバーできない 範囲の土木工学を勉強しようとするケースです。他大学大学院への進学が非常に少な いのは,4年間の学部教育と卒業研究を通じて,本学の大学院への進学が適切である と判断されてきたことによると思われます。シビルエンジニアリングコースの教員が 行う修士課程での研究教育活動は,全国的にもレベルが高いようです。土木学会をは じめ関連する学会での論文発表会などでも,修士課程の学生あるいは修了生が高い評 価を受けています。ですから,本学で提供している研究分野で研究活動を続けようと 思う限りは,他大学への進学の理由は見当たりません。一方,他大学からの本学の大 学院へ進学を希望する数は増えてきています(平成 17 年は 6 名)。 Ⅶ 入試概要 入試に関する全般的なことは,入学者募集要項,入学者選抜要項を参照してくださ い。平成17年度入試では,AO入試,前期日程,後期日程の3回の入試があります。 前期日程,後期日程はセンター試験で5教科7科目の受験が必要です。AO入試は, センター試験は必要ありません。自己推薦書で出願でき,理数基礎学力などをためす 面接試験を突破すれば合格です。 1 高等学校の調査書で特に重視する点 調査書では,高校生の時にどのような勉強をしていたのか,どのような高校生活を していたのか,が重視されます。学業の面では,特に数学や物理や英語をどのように 履修しているのか,どの程度の成績なのかに注目します。さらに,健康的な高校生活 を送っていたかどうかも重要です。 2 面接で特に重視する点 面接では,志望動機や高校での生活について質問する他,数学や物理に関する基礎 知識をためす口頭試問がなされます。志望動機では,シビルエンジニアリングあるい は土木工学という分野が何を行うところで,社会にとっていかに重要な分野であるか どうか,どの程度理解しているかが,ひとつの鍵となります。たまにですが,土木と 建築の違いがうまく説明できない受験生がいますが,非常に困ります。また,志望動 機として,横浜という歴史ある地で勉強したいということを言う受験生がいますが, ご存知のように大学は山の上にあり,学生も大学の近辺に住まうわけですから,横浜 の地への憧れで大学を選ばれるという答えはあまり期待していません。むしろ,そう いう受験生は,合格後,憧れの横浜の地で遊びだすのではないかという疑念を教員が 抱く場合もあります。ときどき,緊張し過ぎて,本来の自分を出し切れない受験生も いますが,自分の進学への思いを素直に伝えていただければよいでしょう。口頭試問 については,高校で学んだ基礎的な事項を理解していることが求められます。 3 今後の入試方法 平成18年度の入試方法は,平成17年度と比べて,AO入試に変更がありました。 センター試験が不要となりました。しかし,調査書および面接試験において理数系能 力などを確認しますから,しっかりと数学、物理、英語を勉強して,チャレンジして ください。 我々は,世界中の人々が,そして我々の子孫が,末永く文明を享受できるように, 優れた社会基盤を整備しながら豊かな環境を育むためのシビルエンジニアリングを修 得しようとする熱意ある若者を喜んで受け入れます。 おわり
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