鶏ガラ加工品の栄養的価値の解明 焼成ガラ及びスープ成分について 食品開発部:岡本 ● 背 景 並びに 目 佳乃 的 鶏ガラは、ラーメンを始め、中華料理には欠くことのできない素材であり、スープ等の味付けに広く 利用されている。しかし、生の鶏ガラ(生ガラ)はアクや臭みがあるため、茹でこぼしや蒸しなど加熱 した後、洗浄処理して用いる。外食産業や給食センターなどではこの処理に要する時間や人件費が大き な負担となっているため、高知食鶏加工㈱社ではオーブンで高温加熱処理し、臭みや余剰の脂肪を除去 した「焼成ガラ」を開発した。 本研究では、焼成ガラの特徴を調べるため焼成ガラ、生ガラ及び蒸ガラについて、一般成分を分析し、 比較した。また、焼成ガラ、生ガラ及び蒸ガラから製造したスープについては、旨味の強さの指標とな る遊離アミノ酸を分析した。 ● 結 果 及び 考 察 生ガラと焼成ガラ、スープ、乾燥ガラの一般成分、遊離アミノ酸の分析結果から、次のことが明らか になった。 ① 焼成ガラは生ガラに比べ、水分が少なく、粗タンパク質が多かった。また、蒸ガラよりも粗タン パク質が多く、粗脂肪が少なかった。焼成ガラは高温加熱処理によって水分や脂肪が除去された ため、相対的に粗タンパク量が増加した。そのため、焼成ガラスープは旨味が強く、鶏臭(油っ ぽさ)がないと評価されている。 ② 鶏ガラに同量(重量)の水を加えてスープをとると、生ガラに比べて焼成ガラは旨味成分である 遊離アミノ酸(グルタミン酸など)が多く含まれていた。このため生ガラ等からスープをとるよ うに、長時間煮詰める必要がないので、短時間で濃縮スープがとれる。 ③ スープを調味料として加工食品へ利用する場合、添加物無添加と表示できる。 ④ 乾燥焼成ガラをけずり節状に加工すれば、そのままでもトッピングとして美味であり、更に骨ご と摂取できるので、カルシウム源としても有望である。 蒸ガラ 焼成ガラ 生ガラ 0 グルタミン酸 リジン トリプトファン 800 μg/ml グリシン メチオニン ヒスチジン アラニン シスチン アルギニン バリン フェニルアラニン アスパラギン酸 イソロイシン チロシン プロリン スープ中の遊離アミノ酸 (鶏ガラ1羽分に対し、3倍重量の水を加え、3時間加熱してとったスープ) 9 生ガラ 焼ガラ 蒸ガラ 炭水化物 灰分 脂質 たんぱく質 水分 0 10 20 30 40 50 60 一般成分の比較 70 % (生ガラ100%とした場合、前処理により焼成ガラ75%、蒸ガラ81%の歩留まりとなる) 焼成ガラスープ入り商品 ペットフード ポン酢 冷凍ピザ ラーメンとスープ 金山寺みそ ~ 解 説 ~ ●合わせ出汁の効果 「グルタミン酸」は、旨味成分の代表的なもの で 30mg%(30mg/100g)以上含まれると単 独で旨味を感じはじめ、量に比例して旨味が強く 感じられます。一方で「イノシン酸」は 25mg% 以上で旨味を感じますが、量が多くなっても旨味 を感じる強さはそれほどあがりません。しかし、 両者が合わさることで、旨味を感じる強さは足し 算ではなく、掛け算的に強くなることが知られて います。 10
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