1605 イタリアワイン.indd - Consorzio Vino Chianti

特集
イタリアワイン
トスカーナDOCG / DOCワイン試飲会
アンテプリマ・ディ・トスカーナ2016
2 月 13 日のフィレンツェは、とても冷たい雨
メディチが、当時のトスカーナのワイン産地を
がとても高かった。しかし 9 月になって漸く天
だった。しかし翌週に天気は回復し徐々に暖
キアンティ、ポミーノ、カルミニャーノ、ヴァル
候は回復し、10 月前半は日中が夏のような暑
かくなった。例年、底冷えのする大きな試飲
ダルノ・スペリオーレの 4 つに分けそれぞれ
さで夜は急激に冷える日が続いた。葡萄は完
会場だが、今年はそれほど寒さを感じなかった。
の境界線を確定した。これは実質的な DOC
熟に向かい 10 月半ばにはよく熟した葡萄を収
毎 年 2 月、トスカ ー ナ の す べ て の DOCG/
の 始まりで、この 時 の キアンティが 現 在 の
穫できた。つまり 2014 年はこれまでの型には
DOC ワインがその年のプリムール、その年に
まらない風変わりな収穫年になった。香りは豊
市場にリリースするワインを一堂に集めて見せ
DOCG キアンティ・クラッシコに相当するため、
今年が 300 周年ということになる。
る「アンテプリマ・ディ・トスカーナ」を開催
今回のキアンティ・クラッシコ・コレクショ
かだがアルコール度はそれほど高くないワイン
になっている。
ンは一連の 300 周年記念行事の一つに位置
< 2013 年>
今年の試飲日程は、2 月 14 日 DOCG キア
付けられた。今年の試飲ワインは 2013 年とリ
は大量の雨が降り、平年より気温は低かった。
ンティ(フィレンツェ)
、15 日、16 日キアンティ・
ゼルヴァ 2012 年、グラン・セレッツィオーネ
クラッシコ
(フィレンツェ)
、17 日ヴェルナッチャ・
7 月半ばから暑さが戻って生育スピードが速く
なった。9 月は完璧で昼夜の温度差が大きかっ
する。
生産量 26 万 hl。生育期の前半
ゲリ、テッラティコ・ディ・ビッボーナ、エルバ、
2011 年が中心。このほかに 2014 年、2012 年、
2011 年、2010 年、 リゼ ル ヴァ 2013 年、 同
2011 年、同 2010 年、同 2009 年、同 2006 年(1
本)
、グラン・セレッツィオーネ 2013 年、同
2012 年、同 2010 年、同 2009 年(1 本)、同
2008 年(1 本)という試飲構成だった。
2010 年から 20015 年までのヴィンテージの
ヴァル・ディ・コルニア、モンテクッコ、モレッ
特徴は次のとおり。
徐々に葡萄のバランスがとれるようになり、9
リーノ・ディ・スカンサーノ、コルトナ、ヴァル
< 2015 年>
月末から 10 月初めにかけて収穫した。収穫期
ダルノ・ディ・ソプラのワイン協会が参加した。
十分満足のいく葡萄が収穫できた。量的にも
は平年並みできちんと帳尻があっている。
これらの中から試飲して印象に残ったボトルを
2014 年並みの収穫になった。発芽、開花、ヴェ
< 2011 年>
紹介する。
レイゾンはともに良い天気に恵まれて順調だっ
ら 7 月初めがとても暑くて生育スピードが加速
た。アントシアン、ポリフェノール、サンジョ
された。8 月は極端に暑く乾燥したが、9 月に
ディ・サン・ジミニャーノ(サン・ジミニャー
、
ノ)
、18 日ヴィノ・ノビレ(モンテプルチャーノ)
19 日、20 日がブルネッロ(モンタルチーノ)。
これら以外のワインは 13 日にフィレンツェで試
飲に供された。そこにはカルミニャーノ、ボル
キアンティ・クラッシコ・コレクション
2016Chianti Classico Collection 2016
通常の気候に戻り品質的には
た。
ワインはとてもバランスの良いものになった。
< 2012 年>
生産量 23 万 5,000hl。 干ばつ
の影響でとても生産量の少ない年。夏は乾燥
して近年まれにみる暑さを記録した。8 月の終
わりになって漸く恵みの雨が降り、葡萄樹は一
息つくことができた。9 月にも適度の雨が降り
生産量 20 万 8,000hl。6 月末か
ヴェーゼ固有のアロマがしっかり凝縮している。
なると穏やかな気候が戻り昼夜の温度差が大
エクセレントなヴィンテージ。
きくなった。生産量はとても少ないが近年では
< 2014 年>
生産量 29 万 hl。降水量の非常
最も素晴らしい年のひとつに数えられる。葡萄
キアンティ・クラッシコは今年 9 月に生産地
に多かった年。夏の終わりには歴史的にみて
はとても健全で糖度が高かった。
域が策定されて 300 年の節目を迎える。1716
も極めて厳しい年になると予想された。8 月末
< 2010 年>
年 9 月 24 日にトスカーナ大公コジモ 3 世・デ・
の時点でまだ葡萄は十分に熟しておらず酸度
平年よりも低めで推移した。寒くて雨勝ちの春
6
生産量 24 万 8,310hl。 気温は
ロ ッ カ・ デ ィ・ モ ン テ グ ロ ッ シ Rocca di
Montegrossi Vigneto San Marcellino 2011
新鮮
な果実のアロマ、口中は軽快で熟した果実の
味わい、タンニンと酸のバランスがとても良い。
こ の 他 に も San Vicenti 2011、Terra di Setta
2011、Castelvecchi Modonnino della Piave 2011、
Fattoria di Valiano 6.38 2010、 Felsina Colonia
2010、Losi Querciavalle Milennium 2010、Villa
Montepaldi 2010、Castello di Cacchiano Millenno
2009 がとても強く印象に残った。
ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ
Vino Nobile di Montepulciano
いまから 50 年前の 1966 年。イタリアの 10
の産地が DOC に認定された。ヴィノ・ノビレ
はそのうちのひとつで、ことし DOC 認定 50
キアンティ・クラッシコ試飲会場
周年を迎えた。そして 1980 年に DOCG に昇
格する。当時はブルネッロより認知度の高いワ
インだったが、その後は市場へのアプローチ
のあとも涼しい日が続き、芽吹きも開花も平年
フィエトリ Fietri まだ閉じている。ほのかに熟
の仕方の違いから今ではすっかり水をあけられ
より遅かった。6 月末から暑くなりややスピー
した果実があって、フレッシュな口当たり。軽
た感じである。しかし品質と価格のバランスを
ドアップしたが、8 月、9 月があまり暑くならず、
快でバランスよく複雑味もある。
考慮すれば、ヴィノ・ノビレはもっと評価され
全体としてゆっくりと成熟し品質の良い葡萄に
ラモーレ・ディ・ラモーレ Lamole di Lamole
てしかるべきワインであろう。
なった。黴に冒された畑も一部あった。
ほんのりスモーキーで焙煎した香り、赤い果実
最も大きな市場はドイツで全体の 46% を占
の香り。まるいタンニンときれいな酸味がバラ
める。これにアメリカ 20%、スイス 17%が続き、
は全体にバランスがとれていて軽快な味わい
ンスよく、ミッドパレットに強さがある。
この 3 か国で全体の 83%になる。ちなみに国
のワインが多かった。印象に残ったのは次のワ
レ・フォンティ Le Fonti
試飲したキアンティ・クラッシコ 2013 年産
チェリーとリコリス。口中は爽やかで色合いか
イン。
ボルゴ・ラ・ステッラ Borgo la Stella
チャーミングな香り、
熟した
果実、いちじく、ラズベリーの香り。やさしい
口当たりクリーミーな舌触り。すばらしい構成、
らは想像できないパワーがあり凝縮している。
フィニッシュはきれいな酸とともに。
また、グラン・セレッツィオーネは次のワイ
内需要は全体のわずか 20%にすぎない。
今年のアンテプリマは 2013 年産が中心で、
リセルヴァは 5 つ星の 2012 年産である。
2013 年は 5 月の初めに雨が降り寒い日が続
いた。その影響で開花と結実の時期が遅くな
り、これが最終的に平年より遅い収穫(9 月
タンニンと酸とのバランスがよい。
ンが良かった。
カステッリヌッツァ・エ・ピウカ Castellinuzza e
カ ス テッロ・ ディ・ ア マ Castello di Ama San
20 日開始)という結果になった。ただ 9 月初
Piuca 固い小粒の果実、リキュール漬けの果
Lorenzo 2013 熟したフルーツ、イチジク、乾
めの気温は 30℃近い日が続き生育スケジュー
実。味わいは力強くアルコールがあってパワフ
燥ハーブなどの香り。熟した果実の甘さがあっ
ルが加速したので、収穫が極端に遅くなると
ル。タンニンは美しい。
て、ミッドパレットに強さがありタンニンは丸い。
いう事態は避けることができた。生育のそれ
フィニッシュには酸味ときれいなフルーツがあ
ぞれの段階で細かい気配りが必要だったので、
る。
栽培家にはなかなか骨の折れる一年だったと
カステッロ・ディ・フォンテルトリ Castello di
いえる。
Fonterutoli 2012 赤い果実、熟した果実、リコ
同時にワイン造りの段階でもていねいな選
リスなどの香り。フレッシュな果実の甘み、しっ
別が必要で、生産家による品質のばらつきが
かりした構成で味わいに力強さがあり余韻が長
生まれた。全体の評価は 4 つ星だった。
い。
2013 年産をテイスティングして印象に残った
プリンチ ペ・コルシ ニ Principe Corsini Villa le
ワインは次の通り。
Corti Don Tommaso 2012 リキュール漬けのフ
コントゥッチ Contucci
ルーツ、赤いフルーツなどの上品な香り。やさ
ブの香り。やさしいアタックで味わい力強く、
しいアタック、味わいにフレッシュなフルーツ
厚みがありギュッと引き締まったタンニン、後
赤い果実、ドライハー
が活きている。上質な酸味ときれいなタンニ
口のきれいな酸味が特徴的。
ンのバランスが良い。
アヴィニョネージ Avignonesi
赤いフレッシュ
7
特集
イタリアワイン
モンテプルチャーノのアンドレア・ナタリーニ会長
な果実、花の香り。軽快な味わいで、焙煎のニュ
ヴェルナッチャ試飲会場
ゴやナッツが広がり、さわやかな酸が引き締
韻がとても長い。
試 飲 に 供 され た の は 38 社 84 アイテム、
2015 年 産 が 主 体でリセルヴァは 2014 年 産。
2015 年のヴェルナッチャは 6 月から 8 月初め
テ ヌ ー タ・ ト レ ロ ー ゼ Tenuta Trerose Santa
まで気温の高い日が続きしっかり熟した。その
テ ヌ ー タ・ レ・ カ ル チ ナ イ エ Tenuta Le
Caterina チェリーなどの果実が主体の香り。
後は昼夜の温度差の大きい日が続き、9 月中
Calcinaie Vigna ai Sassi 2013 透明感があり、洋
アタックはほのかに甘く、なめらかでチャーミ
旬に健全で完熟した葡萄を収穫した。
梨や澱由来の香り。アタックは甘みがあって、
アンスがある。酸とタンニンのバランス良く余
ングなタンニンときれいな酸味、バランスがよ
くとてもエレガントな仕上がり。
印象に残ったワインは次の通り。
洋梨、青リンゴ、柑橘の香り。口中にも青リン
めてくれる。
口中は厚みがあり、きれいな酸と果実味のバ
カ ン テ ィ ー ネ・ メリ ー ニ Cantine Melini Le
ランスが取れている。品種の特徴はやや薄い。
このほかには、Salcheto、Fattoria La Braccesca、
Grillaie 2015 柑橘、熟した果実の香り。厚み
トッレーナ Tollena Signorina Vittoria Riserva 2012
Il Molinaccio La Spinosa、 Lunadoro Pagliareto、
Priorino Viola、Il Macchione、Vecchia Cantina di
Montepulciano、 La Ciarliana、 Montemercurio
Messaggero 、 Tiberini Podere Le Caggiole 、
Lombardo がよかった。
があってたっぷり熟した果実の味わい、きれい
な酸が後口を引き締める。
厚みがあって滑らか、バニラのニュアンスをも
Cantine Melini Le Grllaie 2014 こちらはさらに
つ力強く大きなワイン。
厚みと複雑味が増している。
カサレ・ファル キ ー ニ Casale Falchini Vigna a
Solatio Riserva 2013 柑橘の香りにナッツやペ
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ
Vernaccia di San Gimignano
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノも
トロールが加わって複雑な香り。しっかり凝縮
した味わい、少し甘みも感じる。とてもきれい
な酸味。
ファットリ ア・ サ ン・ ド ナ ート Fattoria San
1966 年に DOC に認定されており、今年が 50
Donato Angelica 2013 桃、洋梨、熟したフルー
周年にあたる。
ツの香り。口中にペトロールのヒント、厚みが
サン・ジミニャーノの周囲には広大な葡萄
あって酸が生きている。
畑があるが、白品種ヴェルナッチャの栽培はそ
イ ル・ パ ラ ジ オ ー ネ Il Palagione Ori Riserva
う多くはない。DOCG ヴェルナッチャ・ディ・
2014 少し閉じている。熟したリンゴの香りに
サン・ジミニャーノに認証された 2015 年ヴィン
澱由来の香りが混ざる。厚みがあって複雑味
テージのワインは 730ha、41,056hl だけである。
がある。クリーンなワイン。
この地域で栽培されているサンジョヴェーゼや
パニッツィ Panizzi Vigna Santa Margherita 2014
その他の品種は DOCG キアンティか DOCG
柑橘や洋梨の香り。フレッシュでナッティな口
キアンティ・コッリ・セネージ、もしくは IGT
当たり、とてもきれいな酸。
トスカーナとして販売されている。
サン・ベネデット San Benedetto Riserva 2013
8
香りに洋梨、熟柿、煙のニュアンスがある。
サンジミニャーノの街かど
トスカーナDOCG / DOCワイン試飲会
アンテプリマ・ディ・トスカーナ2016
ツと持ち前の酸味が活きている。こういう難し
い年にはルフィナの山のキアンティの個性が
いっそう際立つように思った。印象に残ったワ
インは次の通り。
コロニョーレ Colognole
赤い果実の香りにミ
ネラルがある。滑らかでチャーミングなタンニ
ン。バランスがよくフィニッシュの酸味が口を
すっきりしてくれる。
ファットリア・ラヴァッキオ Fattoria Lavacchio
バラの花弁、熟した赤いフルーツ、ペトロール
の香り。アタックはやさしく滑らかで膨らみがあ
り余韻の長いエレガントなワイン。
フラスコレ Frascole
小粒の赤いフルーツ、乾
燥したハーブの香り。リキュールのような甘さ、
厚みと力がある。きれいな酸味、余韻は長い。
ヴィッラ・トラヴィニョーリ Villa Travignoli イチ
ゴや乾燥ハーブの香り。力強くアルコールの強
キアンティ試飲会場
さがある。
ファットリア・イル・ラーゴ Fattoria Il Lago しっ
かりした構成で厚みがあり、フィニッシュにきれ
ヴィノ・キアンティ
Vino Chianti
く、試飲の時間よりワインを待っている時間が
るに留まった。
DOCG キアンティの試飲は 2 月 14 日バレン
しかも試飲に供されたのはなんと 2015 年
タインデーに開催された。“ キアンティ・ラヴァー
ヴィンテージ。収穫からわずか 5 か月しか経っ
ズ ” と銘打った試飲会は、ワイン関係者だけで
ていないまだ殆どジュースのような状態。試飲
なく広くワイン愛好家にも開放されている。大
用のグラスが糖分でべっとりする。
きな試飲会場はたくさんのキアンティ・ラヴァー
いな酸味が口中をすっきりさせてくれるワイン。
長く、半日を費やして漸く 80 アイテムを試飲す
その中で “ 山のキアンティ ” と呼ばれるキア
ベンヴェヌート・ブルネッロ 2016
Benvenuto Brunello 2016
2 月末に行われたベンヴェヌート・ブルネッ
ロでは、大きく「50」と書かれたロゴマークが
ひときわ目についた。これはブルネッロ・ディ・
ンティ・ルフィナは、2014 年産の 11 アイテム
モンタルチーノが DOC に認定されてからちょ
コンソルツィオ・ヴィノ・キアンティ(キア
が供された。しかし 2014 年は雨が多くて難し
うど 50 周年を迎えた記念すべき年だというこ
ンティ協会)は、1927 年にフィレンツェ、シエナ、
い年。キアンティ・スペリオーレを試飲すると
とを示していた。そして来年は、もうひとつの
で埋め尽くされた。
アレッツォ、
ピストイアの各県の生産者が集まっ
そのバランスの悪さがはっきりわかる。ただキ
50 周年を祝うことになる。今度はブルネッロ・
て組織したもの。現在は 3,600 社で構成されて
アンティ・ルフィナはさすがにきれいなフルー
ディ・モンタルチーノ生産者協会設立からちょ
いる。昨年からこの試飲会はキアンティ協会だ
うど半世紀を数えることになるのだ。現在モン
けでなく、三つのサブゾーンの協会(ルフィナ、
タルチーノに存在する生産者 258 社のうち 208
コッリ・フィオレンティーニ、コッリ・セネージ)
社が自前で瓶詰めを行いコンソルツィオに加盟
との共催になっている。
している。
コッリ・フィオレンティーニ協会は 1994 年に
組織され、現在は 27 生産者で構成されている。
また、ベンヴェヌートで発表された昨年 2015
年ヴィンテージの星の数は、モンタルチーノの
コッリ・セネージ協会はシエナ近郊の生産者
祝賀ムードを盛り上げるかのように満点の「5
300 社が 2001 年に設立した。また、ルフィナ
協会は 1980 年の設立。わずか 20 社で構成し
7 つのサブゾーン協会の中で最も小さい組織
つ星」を輝かせた。
だが、他のキアンティと異なる個性をもち近年
テージは、どの生産者に聞いても皆満面の笑
< 2015 年ヴィンテージ>
堂々の「5 つ星」を獲得した 2015 年ヴィン
は大いに注目を集めている。
みで答えてくれるほど一律に素晴らしいできと
DOCG キアンティの 葡 萄 畑 は 15,500ha に
及びその生産量は 80 万 hl(約 900 万ケース)
にものぼる。その中から約 100 社 400 アイテム
なったようだ。公式発表でも、もちろん絶賛の
が試飲に供された。昨年から席に着いて試飲
会メンバーの誰もが 2015 年の収穫にとても満
できるようになったが、サービスの段取りが悪
言葉が続いた。各人の言葉を引用する。
生産者協会会長ファブリツィオ・ビンドッチ「協
足している。しばらく見られなかったほど疑い
9
ブルネッロ 2015のタイル画
なく並外れたヴィンテージだ。夏は暑く葡萄の
成長を促すのにちょうど適度な雨が降った」。
フィレンツェ大学教授シモーネ・オリアンディー
ストへ依頼していた。
蝶のアートはベルトッツィ&カソーニ、赤い
ンテージだ。公式評価は 4 つ星。
単一畑ものも含めて約 160 銘柄を試飲した。
衣はトランスアヴァンギャルドのメンバーの一
軽快で今でも美味しく飲めるもの。果実がドラ
人サンドロ・キア、パステルカラーのグラスを
イになり始めているもの。スパイシーでタンニ
より少なかったが熱波が来ることはなかった。
持つ人はピノ・デオダート、華やかな薔薇はジャ
ンが表立つがっちりしたタイプ。果実風味が生
一方、収穫期の気温は平均よりも少し低めで
ン・マルコ・モンテサーノ、ブルーの仮面はミッ
き生きとして、まろやかでボリュームのあるタ
雨は皆無だった」。
モ・パラディーノによる。
ニ「2015 年は、気温は平均より高く雨は平均
カルロ・フェッリーニ「素晴らしく健全な葡萄
イプ。テンションがありストラクチャーもしっか
5 つを組み合わせたことでひとつの面積が小
りとしてバランスよく、しばらく置いておきたい
が収穫できた。色が濃く素晴らしいバランスの
さいため、少々もったいないような気もするが、
もの。様々な姿が見られたが、概して果実の
マストとなり、期待以上の結果が得られている」。
大変華やかな記念のタイルとなった。
熟度が高くなめらかな食感のものが多かった。
< 2011 年ブルネッロ、2010 年リゼルヴァ>
早めに飲み始められるものが多いヴィンテージ
パオロ・カチオーニャ「ヴィンテージを評価す
るためにモンタルチーのあらゆる場所からサン
ベンヴェヌートの 2 日間で、今年 1 月から発
プリングしたが、いずれも偉大な潜在能力を
売開始可能となったブルネッロ 2011 年とリゼ
だといえる。
2010 年は、若干収穫が遅めだったが夏の晴
見せてくれた。アロマが豊かでポリフェノール
ルヴァの 2010 年を試飲した。参加したワイナ
天が功を奏し、バランスよく長期熟成型ができ
のバランスもよく、ストラクチャーがあり、長期
リーは 127 社だった。
たと、公式評価で 5 つ星を獲得した。
熟成型だ」。
ヴィットリオ・フィオーレ「自分の 50 年のキャ
2011 年は、8 月末にアフリカからの熱波が
来た年で、標高の高い畑に有利に働いたヴィ
試飲した約 90 銘柄のすべてが素晴らしい、
とまでは言えない が、 出 来のよいものが 多
リアの中で少なくとも 40 年はモンタルチーノを
かった。果実の熟度が高く、タンニンも豊かで、
見てきたが、2015 年のような偉大なバランス
凝縮感とストラクチャーのあるタイプが、2010
があり量も確保できた長期熟成型の年は他に
年らしいリゼルヴァといえる。
覚えがない」。
<モンタルチーノ訪問レポート連載開始>
また、実際に訪問したいくつかの生産者で
樽から試飲させてもらうと、確かに光沢を感じ
このベンヴェヌート試飲会の前後にモンタル
るような生き生きとした果実が感じられるバラ
チーノに滞在し、多くの生産者を訪問した。ひ
ンスのよいワインだった。熟成し成長した姿が
とつの命題はゾナツィオーネ=エリア分けが可
とても楽しみな偉大な年だ。
能かどうか。また、生産者数が 200 を超えた今、
< 2015 年記念タイル>
規模も歴史も異なる様々な造り手がひしめい
恒例の前年ヴィンテージを飾る記念タイル
ている現状を把握することを念頭に走り回った。
が、ベンヴェヌートの期間に壁に埋め込まれた。
次号 6 月号から連載で訪問記を綴る予定にし
今回の 2015 年は豪華にも 5 名の著名アーティ
ている。
10
ブルネッロ 50周年ロゴ
◆