第 59 回 保育研究大会 第 4 分科会 「「地域の子育て支援の充実に向けて」 「全ての保育園が子育て支援」 市川市会 国府台保育園 園長 小室 香 ≪はじめに≫ 市川市は東京都に隣接しているが、自然にも恵まれ住みやすく人口が増え続けている。毎年保育園が増え ているにもかかわらず、待機児童は増えている現状である。 「安心して子どもを産み育てたい!」と思える社会にしたいという思いで、市川市の私立保育園では千葉県 下で一番に、平成2年一時預かり事業、平成5年子育て支援センターモデル事業を取り入れ、熱心に子育て 支援に取り組み現在に至っている。 子育て支援の特徴として、子育て支援センター拠点事業は、私立保育園が市川市より 10 園委託を受け、 それぞれの私立保育園の特色を生かし、地域性や親子のニーズに合わせ様々な活動を取り入れている。つど いの広場や子育てサークルと共に、親子が安心して繋がることができる居場所になれるよう日々取り組んで いる他、支援センターを持たない保育園も、園庭開放や行事を一緒に楽しんだりしている。 長い歴史を経て保育園の地域子育て支援活動を、試行錯誤しながら取り組んできた今、原点に戻り保育園 の子育て支援を継続する価値を探っていく研究に進む。 取り組み 研究 1 ≪研究に取り組むにあたり、鈴木眞廣先生を招き勉強会を行う≫ (資料 1) 研究 2 <3 グループに分かれて検討>(資料 2)研究 3 <鈴木眞廣先生を迎えもう一歩、研究を深める> ≪まとめ≫ 今回の研究を通して、子育て支援は保育の充実の土台の上にあり、私たちは子育ての専門職として自分自 身や保育の見直しをする事が出来た。 「よくあそぶ」の中に子どもの育ちがたくさん含まれていて、あそぶ 中で子どもが自分で「みて、きいて、かんじて、かんがえる」事が出来るように環境を整え、子どもの心の 育ちを支える事が保育士の役割と確信する。 保育園が地域の核となり「私たち、こんな保育をしているんですよ。見てください。子どもは、このよう に育っていき、大人はどのように関わっていくか見てください。一緒に子育てしていきましょう」と伝えて いく使命を感じた。 私たちは、子育てのモデルになれるよう、誠実に関わっていける人間性を磨き、自立できる子どもを育て ていきたい。 全ての保育園が子育て支援をする事が、社会の親子の安心に繋がっていく。働いていても、いなくても一 緒に子育てしていける居場所、仲間となることが、親の不安を解消し、親としての回復力を高め、そして親 子の自立する力をつけるものになる。 社会的に保育園が働いていない親子の居場所として、もっとオープンに活用できるようにすることが望ま れる。遊び場として開放し、園児と一緒に遊べるだけで子育ては孤独でなくなり、安心に繋がっていく。子 育て支援をする事は、保育の充実、保育士のスキルアップにも繋がっていく。 親子と一緒に私たちも共に成長していく保育者、保育園になって行く。 各園で子育て支援に対する温度差がある現状ですが、市川市子ども・子育て支援施設協会に加盟している 40 施設全体で、今回の研究を各園長が現場に伝え実践していく。今後も引き続き研究活動を行い、経過報 告や学び合いをしていく。 第 59 回 保育研究大会 第 4 分科会 「「地域の子育て支援の充実に向けて」 「これから出産する妊婦さんのニーズと保育園ができること」 印旛支会 施設長部会 昭苑保育園 園長 堀口義也 1.はじめに 印旛支会は7ブロック9市町から組織され、千葉県北西部に位置し、公立保育園、私立保育園、こども園 を合わせて計93園です。特に印西・北総地域は急激な人口増加により保育園数が増えています。現在、地 域子育て支援として各保育園では園庭開放、園開放、一時預り事業、支援センターの設置、また平成27年 度から子ども子育て新制度の発足に伴う地域子育て支援拠点事業の受託など様々な取り組みがなされ、その 内容も年々充実し、利用する親子も増えてきています。 しかし、その一方で昨年度の研究で浮き彫りにされたように地域には現時点で支援を受け関わっている 人と、地域で孤立し一人で悩んでいる親子がいるように思われます。保育園の支援センターや子育て支援拠 点に来園している親子への支援だけでなく、来園できていない親子への支援が昨年度からの課題となってい る中で、今年は妊婦さんへアプローチやプレママ・プレパパの子育て体験なども含め、さらに保育園の門戸 を広げ、敷居を低くし、孤立しがちな親を、子どもが産れる前の妊婦さんの時点から支援していく方法を考 えてみることにしました。 2.取り組み (1)妊婦さんへのアンケート:在園中の保護者及び園の職員の出産経験者に ①妊娠中に不安だったこと、②あったらいいなと思った子育て支援を回答してもらう。 (2)機関紙、ホームページ、パンフレット、ポスターなどの改善(プレママ、妊婦さん、これから妊娠、 出産予定の方も大歓迎等の文言を加える等の工夫を試みる) (3)機関紙等の改善による効果から、改善のあり方が的確な物であったかを検証する。 (4)各園ごとに取り組める範囲に違いがあるので出来るところからはじめていく。 3.まとめ 産まれる前からの子育て支援を考えるにあたり情報発信の方法についてはまだまだ改善すべき点がある ことが分かりました。これから妊娠、出産予定の方を「妊婦さん」と呼ぶのか「プレママ」と呼ぶのかのネ ーミングの問題や、敷居を下げるための呼びかけ方にも工夫が必要であり、「妊婦さんあつまれ」より「施 設見学会~妊婦さんも大歓迎~」の方が人が集まりやすい等のことが分かってきました。 保育園としてできることとしては公立私立、各園の状況において違いはありますが、地域に密着している 保育園のメリットを生かし、地域の子育て中の親子だけでなく、これから子育てする「産まれる前の子育て 支援」を着目する中で、 「保育園が地域の子育て支援施設であること」をもっとPRすることが課題と思わ れます。保育園の間口を広げ、敷居を低くする事で、祖父母の参加を含めた子育て支援の可能性も広がって いくように思われます。アンケート調査からも見られる、これから産み育てる妊婦さんの不安や孤立を軽減 し、子育てに関する相談体制を充実させるほか、気軽に親子が交流できる場づくりや、必要な情報の提供を 行う等、子どもに関わるすべての人が利用できる場所となるために、求められる多様なニーズに合わせ、一 人ひとりの職員について資質向上及び職員全体の専門性の向上を図っていきたいと思います。 第 59 回 保育研究大会 第 4 分科会 「「地域の子育て支援の充実に向けて」 「それぞれの園の特性を生かした支援を考える」 長生支会 長南保育所 木島美恵子 はじめに 房総半島のほぼ中央部、長生郡の南西に位置している睦沢町、長柄町、長南町は、それぞれに町村が合併 し、平成27年に60周年を迎えました。自然が豊かで穏やかな気候に恵まれた農村地帯で、現在、人口は 7千から8千人となっています。 全国的に少子高齢化が叫ばれている中、長生郡も過疎化が進んでおり例外ではありません。核家族化や小 さな子どもを持ち、働く女性が増えている現状を顧み、地域の子育て拠点であるこども園、保育所が、それ ぞれの取り組みについて見つめ直し、情報交換を行い、そこから、この先どのような支援を行っていけばよ いのか考えてみることにしました。その中で、睦沢こども園は就園させている家庭への支援、ながらこども 園は就園させていない家庭への支援、長南保育所は就園している子に対しての個別支援という観点から、ど のような子育て支援をしていくことができるのかという点をテーマにして取り組みました。 取り組み ① 地域の認定こども園、保育所の子育て支援活動を持ち寄る。 ② それぞれの園の子育て支援について話し合い、検討する。 ③ 今後の子育て支援のあり方について考察する。 まとめ 過疎化による人口減少や少子化が進んでいる町ではありますが、都市型の人口密集地域とは違い、こど も園、保育所に通う子どもの全家庭の状況が概ね把握できるという利点もあります。今回、こども園・保育 所お互いの園の支援活動の情報交換を行った中で、それぞれの園だからこそ行えている支援をあらためて知 ることができ、また、これからできうる支援のあり方を考察することができました。睦沢、ながらそれぞれ のこども園は、地域の子育て家庭に対し、更に園や支援センター活動へと親子を取り込みながら子育てをサ ポートすることが、保護者ニーズへの対応へとつながっていくことになるのだと思います。また、長南保育 所は、保健師と連絡を密にしながら、地域の専門機関と連携することで、個々の子育て家庭や子どもたち一 人ひとりに応じた支援を行っていけるのではないかと考えます。小さな町の特性を生かしながら、限られた 財源の中での、人的、物的資源を最大限に活用することで、地域に根ざした子育て家庭への支援や、子ども たち一人ひとりに寄り添った支援をしていくことができるのではないかと思っています。
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