確定拠出年金法について

2001.10.
No.402
目 次
確定拠出年金法について
確定拠出年金法について
〜Q & A〜
1.はじめに
Q−2.3 複数の企業型年金に加入することは可
本誌において、7月号・8月号・9月号と確定
能か?
拠出年金法をテーマにとりあげてきました。今
A−2.3 同時に2つ以上の企業型年金の加入者
月号では、確定拠出年金(企業型年金)におい
になることはできず、いずれかひとつの企業型
て関心の高いと思われる事項について、基本的
年金を選択しなければならない。
な考え方や基準を、Q&Aの形式で、より詳し
く解説いたします。
3.掛金に関するQ&A
Q−3.1 適格退職年金における加入資格のない
2.加入に関するQ&A
者について、企業型年金における拠出限度額は
Q−2.1 企業型年金において、加入や脱退は任
いくらか?
意に行うことができるのか?
A−3.1 適格退職年金において加入資格がない
A−2.1 規約で加入資格を希望する者としてい
者は、適格退職年金を実施していない企業の従
る場合には、任意加入は可能。ただし、一度加
業員と同様に、月36,000円となる。なお、厚
入した後は、退職しない限り、任意脱退するこ
生年金基金の加入員については、加算部分の適
とはできない。
用のない加算非適用加入員も、加算適用加入員
と同様に、月18,000円の拠出限度額が適用さ
Q−2.2 企業型年金において、加入資格を一定
れる。(
【図1】ご参照)
の年齢以上とすることは可能か?
A−2.2 このような取扱いは認められない。年
Q−3.2 企業型年金において、掛金額又は掛金
齢による制限は合理的な理由がない限り認めら
率を勤続期間や年齢に応じて定めることは可能
れない。なお、50歳以上の一定年齢未満の者
か?
を加入者とする取扱いは、合理的な理由が認め
A−3.2 基本的には、加入者全員に対して同じ
られるため可能。
(9月号ご参照)
「定額」、「一定の率」又は「定額+一定の率」
−1−
確定拠出年金法について
【図1】月間拠出限度額
従業員(厚生年金保険被保険者)
36,000円
適
年
加
入
者
18,000円
厚
加 年
入 基
員 金
【図2】年金額の決め方の例(支給予定期間5年の場合)
個
人
別
管
理
資
産
額
給
付
請
求
月
の
前
月
末
日
現
在
の
20
等
①
②
③
1年目
4
2
1
2年目
4
3
10
3年目
4
4
3
4年目
4
5
3
5年目
4
6
3
20
20
20
分
合
計
・・・
(注)・各年の年金額は、給付請求月の前月末日現在の個人別管理資産額の20分の1以上2分の1以下でなければならない。つ
まり、上図の各年の年金額は、1から10の範囲内でなければならない。
・支給予定期間の最後の月の末日に、個人別管理資産の残高があるときは、規約の定めるところにより、速やかに一括
支給しなければならない。
を用いることとされているので、このような取
事業主と加入者等でその負担割合等を規約に記
扱いはできない。
載しなければならない。なお、③の投資教育等
については、事業主の責務として、全額事業主
Q−3.3 企業型年金において、事務費とはどの
負担とされることが想定される。
ようなものか?
A−3.3 ①確定拠出年金運営管理機関(以下
4.給付に関するQ&A
「運営管理機関」という。)に係る事務費、②資
Q−4.1 年金額は、毎年一定でなければならな
産管理機関に係る事務費、③投資教育等に要す
いのか。
る費用、及び、④資産管理機関が加入者等の運
A−4.1 上限と下限の範囲内(給付の請求月の
用指図を実行するのに必要となる費用があり、
前月末日における個人別管理資産の20分の1以
−2−
【図3】年金額の変更の例(【図2】①のケース)
年間最後の月末日現在の
予定の個人別管理資産額(注)
4年目年金
5年目年金
4→2
4→1
年間最後の月末日現在の
実際の個人別管理資産額
3年目の最後の月末日に、 個人
別管理資産額が当初の予定額
16
16
12
12
の半分以下となった
8
3
1 年目最後
2 年目最後
3 年目最後
の月末日
の月末日
の月末日
(注)簡単のため利息を考慮していません。
上2分の1以下)で、毎年の年金額を、規約に
予定期間にわたって、給付を受けられるように
定めるところにより、自由に決めることができ
することができる。(【図3】ご参照)一方、年
る。例えば、個人別管理資産2,000万円が原資
金支給開始から5年経過すれば、規約の定める
となるとき、1年目200万円、2年目300万円、
ところにより、一時金選択することも可能と
3年目400万円、4年目500万円、5年目600万
なる。
円というように決めることができる。なお、支
給予定期間の最後の月の末日において、個人別
Q−4.3 老齢給付金は年金でしか受けとれない
管理資産がある場合には、残額を速やかに一括
のか。また、支給はいつから始まるのか?
して支給する必要がある。
A−4.3 規約に定められていれば年金の全部ま
(【図2】ご参照)
たは一部を、一時金選択することは可能。支給
は、60歳以降の、通算加入者等期間に応じて
Q−4.2 年金の支給予定期間は変更できないの
法律に定められた年齢に達した者が、老齢給付
か?
金の支給を請求して始まる。言い換えると、
A−4.2 支給予定期間の変更はできないが、個
60歳に到達するまでは、給付を受けられない。
人別管理資産額が過少(個人別管理資産額の当
また、支給の請求をせずにいた者でも、遅くと
初予想額の半分以下)となり、支給予定期間に
も70歳に到達したときには、給付の裁定が行
わたって、給付を受けることが困難になった場
われ、支給が開始される。
合には、1回に限り、年金額を減らして、支給
−3−
確定拠出年金法について
5.運用に関するQ&A
また、加入者等に、運用プランモデルを示す場
Q−5.1 従業員に対する投資教育等はどのよう
合には、元本確保型の運用方法のみによる運用
な内容になるのか?
プランモデルを必ず含んでいなければならない。
A−5.1 制度への加入時及び加入後の必要な時
期に、次の事項を加入者等に情報提供しなけれ
Q−5.2 運用に関する情報提供は、どのような
ばならない。
方法で行うのか?
① 確定拠出年金制度等の具体的な内容
A−5.2 次のような方法による。
ア わが国の年金制度の概要及び年金制度に
① 資料やビデオの配布(電磁的方法による提
おける確定拠出年金の位置づけ
供を含む。)
、説明会の開催等
イ 確定拠出年金制度の概要
② 加入者等からの質問や照会等に対して、速
やかに対応する。
・ 加入者の範囲とその拠出限度額
・ 運用商品の範囲、提示方法及び預替え機
会の内容
Q−5.3 運用指図はいつ行うのか?
・ 給付の種類、受給要件、給付の開始時期
A−5.3 加入者等が運用の指図を行うことがで
及び給付の受取方法
・ 転職又は離職時の資産の移換方法
きる期日は規約に明記される。少なくとも3月
・ 拠出、運用及び給付時の税制措置
に1回以上運用の指図を行うことができるよう
・ 事業主、国民年金基金連合会、運営管理
になっている。
機関及び資産管理機関の役割や行為準則
の内容
Q−5.4 投資教育は事業主が自ら行う必要があ
② 金融商品の仕組みと特徴
預貯金、信託商品、投資信託、債券、株式、
るのか?
保険商品等それぞれの金融商品についての
A−5.4 A−6.2ご参照
次の事項
・ その性格又は特徴
6.行為準則に関するQ&A
・ その種類
Q−6.1 事業主の行為準則とは、どのようなも
・ 期待リターン
のか?
・ 考えられるリスク
A−6.1 事業主の行為準則は、確定拠出年金法
・ 有価証券や変額保険等については、価格
第43条に規定されている。①忠実義務を果た
に影響を与える要因等
すこと、②個人情報を保護しなければならない
③ 資産の運用の基礎知識
こと、③自社株式の推奨等をしてはならないこ
・ 資産の運用を行うに当たっての留意点
とが、事業主に求められる。
・ リスクの種類と内容(金利リスク、為替
リスク、信用リスク、価格変動リスク、
インフレリスク等)
Q−6.2 事業主の忠実義務とは何か?
・ リスクとリターンの関係
・ 長期運用の考え方とその効果
A−6.2 事業主の行為準則として、忠実義務を
・ 分散投資の考え方とその効果
果たすことが求められているが、その主な内容
−4−
は、以下のとおり。
A−6.4
事業主や運営管理機関は、加入者等
の氏名、住所、生年月日、個人別管理資産額そ
・ 運営管理機関及び資産管理機関の選任に際して
の他の個人情報の保管・使用に当たっては、そ
は、その専門的能力の水準、業務・サービス内
容、手数料の額等を適正に評価し、加入者等の
の適正な保管・使用に万全を期さなければなら
利益の観点から選任すること。
ないこととされている。具体的には、次のよう
また、運営管理機関や資産管理機関を選定した
な事項に留意しなければならない。
理由は、従業員に示さなければならない。
・ 投資教育等を運営管理機関等に委託する場合に
・ 個人情報を確定拠出年金業務以外の別の目的の
は、加入者等の利益のみを考慮して、適切な評
ために保管・使用してはならない。
価のもとに行うこと。
・ 記録関連運営管理業務を行う運営管理機関は、
・ 自社株式又は関連企業の発行する株式を、運用
加入者等の同意がある場合を除き、事業主や他
の方法として提示するのは、もっぱら加入者等
の利益のみを考慮して、忠実義務の趣旨に照ら
の運営管理機関に対し、個人別管理資産額を提
供してはならない。また、加入者等の同意があ
し妥当であると認められる場合に限られる。こ
る場合を除き、記録関連業務を行う運営管理機
のとき、当該株式を発行する企業が倒産した場
関に対し、個人別管理資産額の提供の申入れ等
合には、当該株式の価値がゼロとなる可能性が
を行うことも禁止されている。なお、裁判所、
高いことを十分説明すること。
税務署等から個人情報の提出命令等があった場
・ 加入者等からの照会又は苦情に対して、事業主
合には、この限りではない。
自らが誠実かつ迅速に対応するか又は運営管理
機関に誠実かつ迅速に対応させなければなら
ない。
・ 事業主が選任した運営管理機関及び資産管理機
Q−6.5 確定拠出年金法第100条第6項で、運
関から、少なくとも年1回以上定期的に業務の
営管理機関として、提示した運用の方法のうち
実施状況等に関する報告を受け、加入者等の立
特定のものを、加入者等に対して勧めることは
場から、業務の委託に問題がないかチェックし
禁止されているが、具体的には、どのようなこ
なければならない。そして、必要なときは、委
とが禁止されているのか?
託先を変更する。
A−6.5 次のようなことが、禁止されている。
Q−6.3 自社株を運用商品として提示する場合
・ 特定の金融商品への資産の投資、預替え等を推
奨又は助言(注)すること。
に留意すべきことは何か?
・ 価格変動リスク又は為替リスクが高い金融商品
A−6.3 次のような行為は禁止されているの
について、将来利益が生じることや将来の利益
で、該当するおそれのある行為を行わないよう
の見込み額が確実であると告げ、又は表示する
こと。
・ 提示した他の金融商品と比較して、特定の金融
に留意する必要がある。
・ 自社株式、自社債券などの特定の金融商品の運
商品が有利であることを告げ、又は表示すること。
用指図を行うことや行わないことを勧めること
・ 加入者等に対し、事業主又は関連会社に運用の
(注)
推奨…特定の金融商品への運用の指図の善し悪しを加入者等
に伝えること。
助言…特定の金融商品への運用の指図を行うよう加入者等に
伝えること。
指図を委託することを勧めること
Q−6.4 個人情報はどのようにして保護しなけ
ればならないのか?
−5−
確定拠出年金法について
Q−6.6 運営管理機関が、運用の方法に係る金
Q−7.2 厚生年金基金の加入員や適格退職年金
融商品の提示を行う際、留意しなければならな
の加入者が負担した掛金を原資とする部分は、
いのは、どのようなことか?
資産移換の対象としてはならないが、この部分
A−6.6 運営管理機関が選定した運用の方法に
の算定方法はどのようになるのか?
係る金融商品の名称(例えば、「○○銀行の1
A−7.2 次の例により算定する。
年もの定期預金の預入」等)を加入者等に示す
・ 加入員等が負担した掛金に基づく給付が明確と
ことが、運用の方法に係る金融商品の提示であ
なっている場合における当該部分(注1)に相当す
る。この際に、特定の金融商品への運用指図を
る額から当該部分の過去勤務債務の償却のため
に事業主が負担した額を控除した額
推奨又は助言してはならない。
・ 掛金総額に占める加入員等が負担した掛金額の
割合(注2)を移換時における積立金額に乗じた額
7.資産移換に関するQ&A
(注1)給付設計が複数に分かれており、加入員等の拠出に基づ
く給付部分であることが明確になっている部分、又は、
給付設計において加入員等が脱退した場合等に加入員等
の負担した掛金額の元利合計を支給することとなってい
る場合における当該部分
(注2)概ね過去20年程度の掛金総額に占める加入員等が負担し
た掛金額の割合
Q−7.1 適格退職年金又は厚生年金基金の年金
受給者で退職している者は、加入者と同様に、
企業型年金へ資産を移換できるのか?
A−7.1 資産の移換は、企業型年金の加入者の
個人別管理資産に充てることが条件となってお
り、既に企業を退職した年金受給者は、企業型
年金の加入者となることができないため、資産
を移換することはできない。
企業年金ノート No.402
平成 13年 10月
大和銀行発行
年金・法人信託企画部
〒541-0051 大 阪 市 中 央 区 備 後 町 2 ー 2 ー 1 TEL. 06
(6268)
1810
年金・法人信託企画部(東京)
〒100-0004 東京都千代田区大手町 2 ー1 ー1 TEL. 03
(5202)
5415
大和銀行はインターネットにホームページを開設しております。
【http://www.daiwabank.co.jp/】
大和銀行は、インターネットを利用して企業年金の各種情報を提供する「ダイワ企業年金ネットワーク」を開設しております。
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(TEL 06(6268)1810)
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