知の花を咲かせる子どもの育成

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研究主題
知の花を咲かせる子どもの育成
~思考力・表現力を育てるために~
2
目指す子どもの姿
言語の力を身に付け,自分の考えを深めて表現できる子ども
①自分の問いを持ち続ける
②的確に読み取り,自分の考えをもつ
③相手に分かりやすく表現し,考えを伝え合う
④学びを関連付けて,自分の考えを評価し,思考を深め,新たな課題を発見する
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主題設定の理由
(1)今日的課題から
新しい学習指導要領は,学校教育において「生きる力」を支える「確かな学力」
「豊かな心」
「健やかな体」の調和を重視している。現代社会を担う子どもたちに基礎的・基本的な知識及
び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表
現力等を育むと共に,主体的に学習に取り組む態度を育て,子どもたちに生きる力を育成する
ことが求められている。
全国学力・学習状況調査や PISA 調査など各種の調査の結果から,思考力・判断力・表現力
等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用する問題に課題があることがわかった。また,
学習意欲,学習習慣・生活習慣にも個人差が広がっているという課題も見られる。
そこで本校では,子どもたちの基礎的・基本的な学力の定着を図り,課題解決のための思考
力・判断力・表現力を育て,子どもたちが主体的に学習に取り組めるよう,本主題を設定した。
(2)学校教育目標から
本校では学校教育目標を「夢いだき
花を咲かそう
東由利の子」とし,めざす子ども像と
して「知の花を咲かせる子」「創造の花を咲かせる子」「絆の花を咲かせる子」を掲げている。
健康と体力を基盤にし,豊かな人間性,確かな学力,生きる力の育成をめざしている。「知の
花を咲かせる子ども」を育成することは,一人一人の言語の力を高めながら確かな学力を身に
付けさせ,主体的に思考し表現しようとする本校の教育目標の具現化につながると考える。
(3)児童の実態から
本校では,一昨年度から思考力と表現力を育てるために,国語科を中心にして,一人一人の
考える力を育て,その考えを主体的に表現する子どもの育成を図ってきた。子どもたち一人一
人が課題解決をしながら確かな学力を身に付け,集団のかかわり合いの中で表現し合い高め合
っていく学習過程を大切にすることにより,思考力と表現力の花を大きく成長させ,知の花を
咲かせる子ども(言語の力を身に付け,自分の考えを深めて表現できる子ども)を育てたいと
考えたからである。
-1-
昨年度の実践から,次のような成果と課題が明らかになった。
[成果]
・考えを深め合うための手だてや場を工夫した授業づくりが行われた。
・「読みの手引き」の活用により,授業構成が工夫され,子どもたちの主体的な学びの高まり
が見られた。
・語彙数が増え,言語の力に伸びが見られた。
[課題]
・表現力を支えるための読み取る力はまだ十分とはいえない。
・主体的に読んだり,思いや考えをもち,それを深め合ったりする力が不足している。
・学んだ語彙や言語力を活用する力が十分とはいえない。
90.0
これらのことは,県の学習状況
H24.国語観点別比較
%
グラフ①
調査や CRT の結果からも読み取る
80.0
こ と が で き る 。( グ ラ フ ① ~ ③ 参
70.0
照)グラフ①は今年度の CRT の結
60.0
果である。どの観点も全国を上回
50.0
東由利小
40.0
H24年全国
30.0
っている。これは昨年度までの研
究の成果といえよう。
20.0
グラフ②は 23 年度と 24 年度の
10.0
0.0
意欲
話・聞
書く
読む
県学習状況調査の比較である。国
言語
語の結果を見ると,昨年度は県比
全県比
県状況調査 本校と全県との比較の推移
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
23年度
3.0
24年度
2.0
1.0
0.0
グラフ②
国語
社会
算数
理科
4教科
年度
国語
社会
算数
理科
4教科
23年度
3.2
3.2
1.7
6.1
3.6
24年度
7.5
3.2
6.6
2.6
5.0
較は 3.2 ポイントだったのに対し,
今 年 度 は 7.5 ポ イ ン ト と 大 幅 に 上
昇 し て い る 。「 読 み の 手 引 き 」 の
活用の仕方に慣れ,習熟すること
によりさらに力を伸ばすことがで
きたと考えている。
し か し ,「 全 校 国 語 ア ン ケ ー ト
(H24.紀要「資料集」参照)」にお
ける全校の読書傾向を見ると,本
好きな子どもは多いが,学年相応
の本に親しんだり,いろいろなジャンルの本に親しんだりしている子どもは少なく,身に付け
た語彙を活用するところまで至っていないことがうかがわれる。また,教師を対象にしたアン
ケートでは「子どもたちの表現力が高まった」という意見が多く出された反面,「分かりやす
く伝える」「思考を深め合える話し合い」の力はまだ不足しているという意見が出され,今年
度の課題として研究を深めていく必要があることも明らかになった。
本校では,国語科で培った思考力・表現力を様々な教科・領域で活用できるようになること
が「言語活動の充実」であると捉えており,言語活動の充実は更なる思考力・表現力の高まり
を生むと考える。今年度は三年次研究のまとめの年となる。このような実態を踏まえ今年度は
「単元を貫く言語活動」「読みの手引きの更なる活用と習熟」「生きてはたらく言語力の育成」
に力を入れ,研究の充実を図っていく。
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4
研究の全体構想
学校教育目標
夢いだき
研究主題
花を咲かそう
東由利の子
知の花を咲かせる子どもの育成
~思考力・表現力を育てるために~
目指す子どもの姿
言語の力を身に付け,自分の考えを深めて表現できる子ども
①自分の問いを持ち続ける
②的確に読み取り,自分の考えをもつ
③相手に分かりやすく表現し,考えを伝え合う
④学びを関連付けて自分の考えを評価し,思考を深め,新たな課題を発見する
研究の仮説
ねらいに応じた単元を貫く言語活動を展開すること,読みの方法を身に付けるこ
と,学んだ言語の力を他教科に生かすこと,を改善・充実することにより主体的に
学び,問いを持ち続ける子どもが育つだろう。
①問いをもたせる授業づくり
・付けたい力に合わせた
適切で必然性のある単
元を貫く言語活動の設
定
・子どもの思いを大切に
した課題設定や学習計
画の工夫
・言語活動で必要な語彙
や表現の習得(国語用
語等)
②思考の喜びを味わわせる
授業づくり
③他教科と関連させた
言語活動
・相手意識・目的意識をも
ち,全員が自分の言葉で
伝え合う場の設定
・他の教科や活動と関連させ
た年間指導計画の見直し
・「 読 み の 手 引 き 」 の 活 用
を位置づけた授業展開
・多様な資料を用いた,目
的に合った「読み」の指
導(学年相応の新聞活用)
(横の連携→教育内容のつながり)
(縦の連携→教育内容の発展性)
・読書活動の推進
(
「話す・聞く」
「書く」活動
における図書館利用 ・ 新
聞等,多様な図書資料
の活用)
学びの支え①〔日常実践における言語活動の充実〕
○言語力を高める日常的な言語活動の工夫
・表現活動の充実(今月の詩,音読や児童委員会,縦割り等の集会活動)
・創作活動の工夫(言語の力を磨く環境,各種コンクールへの参加)
学びの支え②〔家庭学習の充実〕
(1)小・中及び家庭との連携による家庭学習→ 家庭学習の手引きの活用,学年間ノート交流
(2)授業とリンクする家庭学習→ 個に応じた学習内容の工夫
学びの支え③〔学習の基盤づくり〕
(1)言語環境の整備
(2)自立した学習習慣
(3)絆を深める学級づくり(思いやりと規律のある学級経営,認め合う雰囲気)
-3-
○学びのスタイル
活用する
生かす
このやり方は他の教科でも
使えそうだ。
あれ?・・・はどうなるん
だろう?考えてみたいな。
・次時,他教
科に生かす
組みの評価
伝え合い
学び合う
・相互理解
・比較,関連,
統合
考えを
もつ
・既習事項や
付けたい力に合わせた単元を貫く言語活動
評価する
・自他の取り
振り返る
深める
取り組む
手引き活用
・判断・解決
問いをもつ
・課題解決
の見通し
つかむ
見通す
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~という方法で解決できたぞ。
今日の課題は~を使うと解ける
んだ。
~さんの考えで今日の課題が分
かったよ。
今日は分かりやすく伝えられた
な。
今日の方法を使って違うことに
も挑戦してみたいな。
なるほど。○○さんのような方
法もあるのか。
△△さんのやり方は分かりやす
いな。
違う方法だけど,やってみたい
な。
~という考え方もあるかも。
□□さんの説明は分かりやすい
な。
今まで習ってきた~が使え
そうだな。
このやり方なら答えが出せ
そうだ。
今日の課題は?どうしたら
解決できるかな?
どんな方法が使えるかな?
これならできるかも。
多分こうなるよ。
5
年次研究計画
23年度(1年目)…考える力と学び合う力
24年度(2年目)…伝える力と学び合う力
25年度(3年目)…考え・伝え・学び合う力
知の花を咲かせる子ども
(言語の力を身に付け,自分の考えを深めて表現できる子ども)
6 研究の基本的な考え方
(1)『思考力・表現力』とは
生きる力を知の側面から見た確かな学力の中の 1 つである。①思考力に判断力を包括したものを「考
える力」とし,②表現力を「伝える力」とし,それらを一体化した思考力・表現力を目指していく。
①『考える力』とは
自分の知識や経験,既習事項を生かして思考したり,判断したりすることである。課題
解決のために習得したことを活用し,思考活動に積極的に取り組む姿を考える力と捉える。
②『伝える力』とは
考える力は,相手の発言を受け止めて認め,自分の考えを表現するという「関わり合い」
を通して伸びる力である。そこで何をどう考えたのか表すために伝える力が必要となり,
また,どうすれば伝わるのかという思考力と表現力が一体となる力が大切である。さらに,
伝えられたことに,反応して受けて返したり,感動や批判したりなど双方向性の伝え合う
力を育てていきたい。
つま り ,伝 える 力( 表現 力) とは ,自 分の 考え をも って 友達とかかわり合い,自分を高
めていく姿と捉える。
(2)『言語活動の充実』とは
言 語 の 能 力 を 高 め , 各 教 科 の 知 識 ・ 技 能 を 活 用 さ せ る 学 習活 動 の充 実 と 捉え る 。 国 語
科で培った思考力・表現力を各教科・領域で活用できるようになることを目指す。
(国語科では)
・的確に理解したり,論理的に思考したり,表現したり,互いの考えを伝え合っ
たりするための土台となる「読み方」「書き方」を身に付ける。
・実生活に必要な言語活動の知識や方法を身に付ける。
(教科の連携として)
・横の連携→教育内容の関連を考えて行う。例えば社会科の「情報」の内容と
国語の学習内容が深く関連している場合,「情報」をキーワードとして,単元
を貫く言語活動を行う。
・縦の連携→教育内容の発展としての関連を考えて行う。例えば,国語で報告文
の学習と関連させて社会科や理科の調べ学習レポートや実験・観察レポートを
書く。あるいは算数でグラフを学習するときに理科の観察や国語の新聞づくり
を行い,グラフを生かす等の言語活動を行う。
-5-
7
研究の仮説
ねらいに応じた単元を貫く言語活動を展開すること,読みの方法を身に付けること,学
んだ言語の力を他教科に生かすこと,を改善・充実することにより主体的に学び,問いを
持ち続ける子どもが育つだろう。
8
仮説の検証計画
検証の視点
検証方法
重点①
問いをもたせる授業づくり
・座席表による授業記録・観察〔抽出児・学級全体〕
・教師アンケート調査〔対象項目についての評価が5段
階のうち 3.5 以上で概ね良好とする。〕(7月 12 月)
重点②
思考の喜びを味わわせる授業づくり
重点③
他教科と関連させた言語活動
9
・児童のノートやシート,発言や観察〔自力解決,考え
の変容がみられる。〕
・学習アンケート調査〔対象項目について「よくできた」
「できた」の割合が80%以上で概ね良好とする。〕
(7月 12 月)
・単元末テスト〔単元末テストで8割の子どもが設定通
過率を通過すれば概ね良好とする。)
・ノート・発言〔(結論→理由・根拠)の型で考えを書
いたり,話したりすることが8割以上できていれば概
ね良好とする。〕
・県学習状況調査〔県平均と同等以上であれば概ね良好
とする。〕
・標準学力検査〔全国平均と同等以上であれば概ね良好
とする。〕
・年間計画の工夫〔縦・横の関連が図られた年間計画の
見直しが図られ,実践されている。〕
・学習アンケート調査〔対象項目について「よくできた」
「できた」の割合が80%以上で概ね良好とする。〕
(7月 12 月)
研究推進体制
校
研究推進委員会
教
校長
長
教頭
教務主任
研究主任
頭
研修会議
情報調査部
○柴田
武田・髙恒
授業改善部
○大須賀・栁田・菊地
・情報調査部…
言語活動部
○太田
吉成・中井
アンケート調査,各種学力検査分析,家庭学習の提案・推進, 単元評価問題結果
入力(算数→菊地,理科→髙橋)
・言語活動部… 言語活動についての計画・実施,音読集会や全校の表現活動の計画・実施,言語
環境の経営,読書活動の推進
・授業改善部… 授業における実践研究
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