本当に魅力的?安価すぎる物件は、理由を探れ

失敗しない物件選び①
本当に魅力的?
安価すぎる物件は、理由を探れ
手頃な家賃は絶対条件
物件決定の最大のネックと言えば「家賃」。
儲かっても儲からなくても、必ず毎月支払わなければならない上に決して安い金額ではありません。
「気に入った物件があったが家賃が高かった」という経験は、物件探しをしたことがある人なら、必ず体験してい
るのではないでしょうか?
家賃に執着した物件探しをしたばかりに、痛い思いをした例を紹介します。
安さ追求で見つけた超格安物件
焼鳥店で独立したいと思っていたAさんは、地元で人気の焼鳥店に長年勤めてきました。
手元に 200 万円の敷金が出来た段階で独立を決意。
焼鳥の味に関しては、これまで何年もかけて培ってきたものに、オリジナル要素を加え、師匠も認める味が完
成。ついに本格的な物件探しを開始しました。
Aさんは「とにかく安い物件」を要望。
立地や物件の状態より、家賃を優先しました。
話を聞いていた担当者は、地域の相場から比較的安価な物件をいくつか紹介しましたが、Aさんは「もっと安い
物件はないか」と繰り返しました。
数ヵ月後、駅から 10 分の立地に、驚くほど格安な物件が出ました。
しかも、居抜きでありながら造作譲渡料 0 円。
家賃は、地域の相場の半額に近いものでした。Aさんは物件を見に行き、入ってすぐ「ここに決めます」と言いま
した。
場所は大通りから 20 メートルほど細い道を入った、まさに「路地裏」。カウンターのみでしたが、席数は 10 席あ
りゆったりとした造りでした。ただし、物件は昭和 50 年代に造られた木造物件で、とにかく古いもの。
それまで何軒の店が営まれてきたのか分かりませんが、おそらく一度も手を入れていないであろう箇所がいく
つもありました。
担当者は「メンテナンスにお金がかかり、決してお得ではない」と忠告しましたが、結局Aさんは譲りませんでし
た。
修理費がかさむ老朽化
Aさんは、内装にお金をかけずオープンしたいと思っていましたが、建てつけが悪くなった裏口や形だけの換気
扇、旧式の空調など、気になる点があちこちに見つかりました。
さらに契約後、冷蔵庫の温度が十分に下がらないことが判明。通常-18 度以下でなければならないのが、-5 度
が精一杯。これでは品質が保てないため、修理を依頼すると「老朽化のため、その場しのぎの処置しかできな
い」と告げられました。
入口の引き戸も、決して滑りがいいわけではなく、ここも工務店を呼んで手を加えました。他にも小さな修理を
繰り返し、想定外の出費がかさみました。
オープン後もこの状態は続きます。
応急処置しかできなかった冷蔵庫は壊れ、結局新しい物を購入。空調も燃費が極端に悪いことが分かり、最新
のものにつけ替えました。しかし、天井に埋め込むタイプのものは大がかりな工事が必要だったため、置き型タ
イプにせざるを得ませんでした。
開業時に借りた資金はごくわずか。運転資金に取っておいた費用は、これらで消えてしまいました。
Aさんの焼鳥は味に定評があり、オープン当初は行列もできました。が、次第に客足が遠のいてしまいました。
店の存在を十分にアピールしようにも、20 メートルも路地を入る状態では、できることは限られます。
創意工夫を繰り返しながら約1年営業しましたが、排水管がつまり、汚水が厨房に溢れ出る事態に。その箇所
は、店舗の排水システムではなく、家主が管理すべき箇所の老朽化であることが判明。ところが、排水に含ま
れる油分がつまりの原因だと家主が主張。話し合いは物別れとなり、結局Aさんは閉店を決意。元の焼鳥店に
戻ることとなりました。
家賃は安いに越したことはありません。しかし、その安さが悪条件を理由にしたものであれば、金額以上のリス
クを負う可能性が出てきます。
店舗は儲けを出さなければ継続はできません。
一歩踏み込んだ分析で、その妥当性を図りましょう。