直接雇用しない 労働局へ是正指導の申告

坂井化学工業株式会社(本社:神戸市須磨区大池町 3-1-26)は、西区玉津に明石工場があり、塗料
やウレタンゴム、接着剤などを製造しています。
派遣労働者として働いてきたAさんは、2006 年 2 月 1 日から明石工場に派遣され、商品受注などの
業務に 3 年余にわたって従事してきました。ところが、Aさんは、今年 3 月 31 日で契約更新されず、
雇い止めされました。労働者派遣法では、「3 年を超えて働かせた場合には、派遣先には直接雇用の義
務が発生する」としており、同社にはAさんを「直接雇用」する義務が生じています。
7 月 3 日、兵庫労働局は同法違反で同社に対して是正を指導しました。
★直接雇用しない
坂井化学工業と派遣元会社とは 3 月から交渉を重ねてきました。
派遣元会社は当初から、
「
(専門職で契約していたが)専門業務では
なく、一般業務」であることを認め、坂井化学工業(派遣先)に対し、
労働者派遣法に従って対応するよう求めてきました。
他方、坂井化学は「仕事は専門業務」で違反がないと主張してきま
したが、ようやく 5 月 14 日になって、
「一般業務」であったことを認
めました。しかし、
「業績悪化で新たな人の採用は考えておりません」
と義務である直接雇用を拒否しました。
私たちが求めているのは、「新たな人の採用」ではありません。派
遣労働者として法律で定められた 3 年を超えて働いてきたAさんを、労働者派遣法に従って「直接雇用」
することです。
★労働局へ是正指導の申告
坂井化学が法違反を改めないため、5
月 26 日、兵庫労働局に行き、同社に対
労働者派遣法
26 条の 1
26 条の 5
として、是正指導を行いました。
「是正指導」は、違反した事実に対し
26 条の 7
て未来に向けて改善指導するもので、過
去の違反事実の責任を問うものではあ
りません。これでは、法違反しても “や
衛生、派遣労働者からの苦情に関する事項
の明示
会社を調査し、7 月 3 日、労働者派遣法
26 条の 1・5・7、40 条の 2 に違反した
容
業務内容・就業場所などの労働条件、安全
する是正指導を求める申告をしました。
労働局は 1 ヵ月間坂井化学と派遣元
内
40 条の 2
派遣先が派遣元に対して、3 年を超える最
初の日を通知する義務
派遣先が派遣労働者を特定する行為(事前
面談)
派遣期間を超えて、派遣労働者を受け入れ
てはならない
り得”になってしまいます。
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★国から支援を受けても“派遣切り”
兵庫労働局からの指導に対し、ユニオンは「労働局の指導に従い、法違反を是正し、Aさんを直接雇
用して社会的責任を果たす」よう申し入れました。ところが会社は、
「A様に関する当社と派遣元会社
との労働者派遣個別契約書の業務内容については、派遣元会社の説明に従い処理しておりましたが、
結果的に業務内容が専門業務外の業務に該当することとなり、A様にはご迷惑をお掛けすることに
なりました。直接雇用の件につきましては、以前より申しあげている様に、当社の売上高は減少し
ており、今期の見通しは大幅な赤字を予測しております。このような業績の悪化で新たな人材採用
は考えておりません。誠に申し訳ありませんが直接雇用のご要望には応じられません」と法違反を
派遣元会社の責任にし、法の指導に従えないのは「赤字」のせいだとして、企業として社会的責任を果
たそうとする姿勢がありません。
回答で「結果的に業務内容が専門業務外の業務に該当することとなり」としていますが、「結果的
に専門外業務」になったのではなく、坂井化学が派遣元会社に業務を依頼したときから「専門外業務」
だったのですから、坂井化学の法違反は「意図的」だったと言えます。
「大幅な赤字を予測」という回答ですが、いまどの企業も苦しいのです。坂井化学は、国から「雇
用調整助成金」を受けて社員の雇用を守りました。雇用を守るための「雇用調整助成金」をもらいなが
ら、法違反にほおかむりし派遣労働者を切ることは、許されることではありません。
雇用を奪うことは、生活を奪うことです。
「A様にはご迷惑をお掛けすることになりました。
」など
と、まるで商品に手違いがあったような対応は、労働者を「人」として見ていない企業姿勢の現れです。
★企業の責任って?
Aさんは、坂井化学に派遣されていた間、課長から正社員をエサに「サービス残業」を強要されてい
ました。木村課長に深夜まで拘束されるなどパワハラも受けてきました。これを指摘すると、会社は事
実を認め謝罪はしましたが、「熱血漢ある課長でちょっと行き過ぎた」とパワハラした木村課長をかば
う有り様です。パワハラされたAさんは解雇され、パワハラ課長はおとがめなしで働いている――これ
が、この坂井化学の企業実態です。
仮に厳しい経営状況があるにしても、企業として法違反したAさんの問題に対して、きちんとケジメ
をつける=責任を取ることが、企業として社会的信頼性を高めることにつながるはずです。そうではな
く、法律違反を犯して「ご迷惑をお掛けすることに」なったにもかかわらず、罰せられないからとほお
かむりでは、坂井化学工業の企業としての姿勢が問われます。
労働者は「使い捨ての商品」ではありません。坂井化学工業が、監
督行政当局から法違反に対して、
「行政指導」があっても、罰せられな
いからとほおかむりし、派遣労働者を切り捨てることが許されていい
はずがありません。
企業は人があって成り立つものであり、人の権利は守られなければ
なりません。私たちは、坂井化学工業が今回の問題に正しい姿勢でケ
ジメをつけ、今後、労働法規を尊重し、企業としての社会的責任を果
たす企業に生まれ変わるよう求めます。
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