JCCME 駐在員レポート 妻たちのリヤド生活 ジェトロ・リヤド事務所 佐 竹 繁 春 サウジでの生活のユニークな点は,豚・酒禁 ATM に現金が入っていない等のことは頻繁に 止,アバヤ(女性が外出時に着用を義務付けら 起こる。常に多めの現金を財布に入れておく必 れている黒い服)だけでは当然ないが,家族目 要がある。 線の情報は意外に少ない。赴任前の準備で大変 女性の運転が禁止されている当地での買い物 役に立ったのが,実は駐在員妻たちのブログで の足は,外国人コンパウンド提供のショッピン あった。 グバスか,駐在員自身が運転する車(※交通事 そこで,今回は帯同している私の家族(妻と, 情が悪く事故が多発しているため,禁止または 就学前の息子2人)と,その「ママ友」達の目 自粛している企業が多い),社用車,タクシー等 線で, リヤドでの生活の一端を描写してみたい。 となり,妻はこの点にストレスを感じているよ 当然,認識には個人差があり,客観的な描写に うだ。 はなり得ないので, この点は了承いただきたい。 2.食事事情(特に,日本食) 1.買い物事情 日本食材は一般に入手しづらい。豆腐,醤油 宗教上の理由もあり娯楽が少ないサウジアラ (ただしイスラム対応のため風味が異なる),う ビアで,女性たちのお金の主な使いどころは買 どん・そばの乾麺程度なら,韓国食材スーパー い物である。このためか,ショッピングモール などで入手可能だが,割高である。 やカルフール, IKEA,ローカル系ハイパーマー レストランは,中東系をはじめ,中華,韓国, ケット等が多く立地し,物も豊富である。ただ インド,フレンチ,イタリアン等豊富にあり, し,一般的に葉物野菜や果物などの鮮度は良く 困ることはない。日本食レストランは,知る限 ない。また,品切れの場合,店員も入荷時期が りリヤド市内に6店舗。日本人シェフがいるの わからないことが多い。 はうち1店舗のみであり,それ以外では握り過 消費税・付加価値税がないこともあり,物価 ぎた寿司,チキンストックで出汁を取ってしま は総じて安いものの,輸入物の加工食品や生鮮 った味噌汁が出てくる等,品質は厳しい。 食品は,日本で買うより高価な場合がある。 レストランでは,男性専用の「シングルセク 服屋では,店舗内に女性が使える試着室がな ション」と,女性も入れる「ファミリーセクシ いことが多く, 一度購入してトイレ等で試着し, ョン」に分かれる。ファミリーセクションがな 合わなければ返品・交換するしかない。 い店では,女性はテイクアウトするしかない。 レジでクレジットカードが使えないとか, 買い物事情と共通だが,サウジでは1日5回, 76 中東協力センターニュース 2013・6/7 お祈りの時間があり,1回あたり20-30分間, た際には,病院到着から CT 撮影,支払まで1 ホテル内を除き全ての店舗が営業を停止する。 時間弱で完了した。ただし,救急車を頼んだ場 レストラン内でこの時間を迎えた場合,店によ 合の所要時間は未知数だ。道路事情も悪く,渋 って追い出される場合と食事を続行できる場合 滞にはまることも予想される。 があり,後者の場合も消灯されることがある。 薬は効き目や副作用が強いものが多く,症状 金曜日は一般に夕方4時までは多くの店が開か が出ていないか弱い時に飲ませると却って危険 ない。 な場合もあるので,特に子供が小さい場合には 注意が必要である。 3.医療事情 4.子育て事情 病院にもランクがあり,日本のように駅前の クリニックで納得のいくレベルの医療を受けら 子供のいる家族連れに対しては,みな優しく, れるということはない。日本人は地元の大病院 スーパーやレストランで子供が騒いでも,嫌な にかかることを勧められている。 顔はされない。しかし,それに慣れているため 受付から診療までのシステムが日本と異な か,特にサウジ人女性による列への横入り等が る。初診の場合,保険の登録とファイル(カル 目立ち,マナーは良くない。 テ)番号の発行から始まり,診療費はいつも前 子供の遊び場は少ない。映画館,劇場の類は 払いする。 皆無。子供が遊べる場所は,ショッピングモー 救急医療のレベルは低くない。下の息子が頭 ル内の遊園地,公園,砂漠等に限られる。夏場 を強打し,自分で車を呼んで病院に連れて行っ は昼間50℃に達することもあり,屋外で遊ばせ ショッピングモールの遊園地 貴重な子供の遊び場のひとつ 77 中東協力センターニュース 2013・6/7 外国人コンパウンド 塀で囲まれセキュリティに守られた敷地内は安全だ るのは難しい。 に安全なうえ,お国柄,国籍を問わず住人同士 教育については,リヤドには小・中学生向け 助け合う風習があり,英語が苦手な妻にとって に日本人学校があるものの,就学前の場合は高 もこの点は助けになっている。在リヤドの日本 額なインターナショナルスクールか,教育効果 人数は二百数十名と多いため,結束が堅く,人 の期待できない託児所(多くのコンパウンド内 付き合いが活発である。 に立地)が選択肢となる。 これから駐在予定の方には,むしろユニーク なサウジライフを楽しむぐらいの気概で臨んで おわりに いただきたい。また,仕事中心になりがちな我々 以上,いろいろ書いたものの,来てしまえば 駐在員を,日頃の生活で苦労しながらも支えて 何とかなるし,意外に良いところもある。 くれている妻たちに,この場を借りて感謝申し 例えば,総じて治安は良い。家族帯同の駐在 上げたい。 員の多くが住む外国人コンパウンド内は基本的 78 中東協力センターニュース 2013・6/7
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